説明

電子黒板システムにおける描画オブジェクトの隠蔽処理方法及び電子黒板システム

【課題】 隠蔽したい描画オブジェクトを煩雑な操作を行うことなく容易に隠蔽可能にすること。
【解決手段】 描画オブジェクトの属性に隠蔽対象属性を持たせ、文字オブジェクトを識別して隠蔽対象とする機能を持たせ、隠蔽対象属性を持つ描画オブジェクトのみ各描画オブジェクトの外接矩形を自動的に測定し、各描画オブジェクトの外接矩形と同等の隠蔽用オブジェクトを重ねることによって視覚的に隠蔽することを可能とし、各隠蔽対象となる描画オブジェクトを無作為に隠蔽可能とし、隠蔽オブジェクトの表示・非表示を電子ペンによる単純操作で切り替えを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子黒板システムにおいて、隠蔽対象となる文字オブジェクトを自動的で識別して隠蔽用オブジェクトを用いて隠蔽する隠蔽処理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、パーソナルコンピュータから成る画面生成装置で生成した描画オブジェクトの操作画面を表示画面投影装置に入力し、この表示画面投影装置により操作画面を大型の電子黒板に投影して表示し、表示された操作画面上で文字や図形などの描画オブジェクトを描画する電子黒板システムが知られている。
この電子黒板システムにおいては、電子黒板上の投影画面上で電子ペンを用いて画面処理や各種操作を行うことを可能としている。また、電子ペンで描かれた描画オブジェクトは、黒板上の板書のように、電子黒板に投影された画面に書き込まれる描画ツールを有する。
【0003】
近年では、学校などの教育現場に電子黒板システムを取り入れた授業形態が注目されている。パーソナルコンピュータの画面を電子黒板に投影することで、教師が操作するパーソナルコンピュータの操作画面を大勢の生徒が共有できる。また、教師は電子ペンを用い、描画オブジェクトを電子黒板に書き込むことで、黒板を使用した場合と変わりない授業を行うことができる。
この電子黒板システムを利用した授業では、例えば計算問題のように、生徒に計算式は見せたいが解答部分は隠したいという、画面内に見せたい描画オブジェクトと隠したい描画オブジェクトが入り混じることがありうる。この隠したい描画オブジェクトを隠蔽する手段として、画面サイズと同等の長方形画像を上下左右に移動させるアプリケーションが考案されている。このアプリケーションは、長方形画像を隠蔽したい領域を覆うような位置に移動させることで実現している。
【0004】
しかし、上記アプリケーションでは上下左右の一定領域を隠蔽できるが、隠蔽したい領域が画面上に入り混じっている場合、長方形画像を隠蔽したい領域全てを覆うような位置に移動させると、見せたい領域まで覆ってしまう問題がある。
また、不要なデータを隠蔽することによって画面上には必要なデータのみを表示させる技術として、下記特許文献1に記載するものがある。
【0005】
特許文献1は、カーソル下のデータに隠蔽属性を付加する隠蔽設定ボタンと、隠蔽属性を持つデータを全て隠蔽する隠蔽有効設定ボタンにより、表示したいデータと隠したいデータが入り混じっていても隠したいデータのみを隠蔽することを実現するものである。また、隠蔽属性を持つデータが隠蔽状態で隠蔽有効設定ボタンを押すと、隠蔽設定が有効なデータが存在する場合は有効から無効に設定し、隠蔽属性を持つデータを再度表示することにより、隠したいデータの表示と非表示を切り替えている。
【0006】
【特許文献1】特開平07−110747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1の技術では、データを隠すためには、まず隠したいデータを選択し、次にそのデータの隠蔽設定を変更するという操作を手動で行わなければならない。隠したいデータが増えれば増えるほどこの操作量は増加する。
電子黒板システムを利用した授業では、円滑に授業が進められるよう、隠蔽処理の操作量は少ない方が望ましい。特許文献1の技術は、隠したいデータの量に応じて操作量が多くなる問題があり、授業等に使用する電子黒板システムでは使い難いという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、隠蔽したい描画オブジェクトを煩雑な操作を行うことなく容易に隠蔽することができる電子黒板システムにおける描画オブジェクトの隠蔽処理方法及び電子黒板システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、文字などの描画オブジェクトを描画するための操作画面を生成する画面生成装置と、生成された操作画面を電子黒板の投影面に投影して表示させる投影装置と、投影表示された操作画面上で文字等の描画オブジェクトを描画し、描画軌跡の連続する位置座標データ群を前記画面生成装置に入力して描画オブジェクトとして前記画面生成装置内の記憶手段に記憶させる電子ペンとから成る電子黒板システムにおいて、
前記画面生成装置が、
前記記憶手段に記憶された描画オブジェクトについて前記電子ペンの操作によって指定された隠蔽対象属性を設定して記憶させる第1の手段と、前記記憶手段に記憶された各描画オブジェクトが文字オブジェクトであるか否かを識別する第2の手段と、前記記憶手段に記憶された各描画オブジェクトのうち文字オブジェクトを前記記憶手段から読み出し、当該文字オブジェクトの隠蔽対象属性が有効に設定されていた場合は、当該文字オブジェクトの外接矩形に対応するサイズの隠蔽オブジェクトを生成し、当該文字オブジェクトと関連付けて前記記憶手段に記憶させる第3の手段と、前記記憶手段に記憶された描画オブジェクトを読出し、当該描画オブジェクトが文字オブジェクトであった場合は、当該文字オブジェクトに対応する隠蔽オブジェクトを前記記憶手段から読出し、当該隠蔽オブジェクトを対応する文字オブジェクトに重ね表示して隠蔽表示する第4の手段とを備えることを特徴とする。
また、前記第3の手段は、隠蔽対象属性が有効に設定されている文字オブジェクトについて無作為に隠蔽オブジェクトを生成し、当該文字オブジェクトと関連付けて前記記憶手段に記憶させる第5の手段を備えることを特徴とする。
また、前記第5の手段による無作為の隠蔽オブジェクト生成処理を行うか否かは、電子黒板上に表示された所定のボタンを電子ペンによって指示されるものであることを特徴とする。
【0010】
また、文字などの描画オブジェクトを描画するための操作画面を生成する画面生成装置と、生成された操作画面を電子黒板の投影面に投影して表示させる投影装置と、投影表示された操作画面上で文字等の描画オブジェクトを描画し、描画軌跡の連続する位置座標データ群を前記画面生成装置に入力して描画オブジェクトとして前記画面生成装置内の記憶手段に記憶させる電子ペンとから成る電子黒板システムにおける描画オブジェクトの隠蔽処理方法であって、
前記画面生成装置が、
前記記憶手段に記憶された描画オブジェクトについて前記電子ペンの操作によって指定された隠蔽対象属性を設定して記憶させる第1のステップと、前記記憶手段に記憶された各描画オブジェクトが文字オブジェクトであるか否かを識別する第2のステップと、前記記憶手段に記憶された各描画オブジェクトのうち文字オブジェクトを前記記憶手段から読み出し、当該文字オブジェクトの隠蔽対象属性が有効に設定されていた場合は、当該文字オブジェクトの外接矩形に対応するサイズの隠蔽オブジェクトを生成し、当該文字オブジェクトと関連付けて前記記憶手段に記憶させる第3のステップと、前記記憶手段に記憶された描画オブジェクトを読出し、当該描画オブジェクトが文字オブジェクトであった場合は、当該文字オブジェクトに対応する隠蔽オブジェクトを前記記憶手段から読出し、当該隠蔽オブジェクトを対応する文字オブジェクトに重ね表示して隠蔽表示する第4のステップとを実行し、電子黒板上に表示され描画オブジェクトを隠蔽して表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、文字オブジェクトの自動認識および無作為隠蔽処理により、見せたい領域と隠したい領域が混在した画面内で隠したい領域のみを容易に隠蔽することが可能となる。
また、隠蔽・表示を電子ペンによる単純操作で切り替えることができる。従って、電子黒板システムを使用した学校の授業のように、問題と解答を同一画面上で表示する環境で円滑に利用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施する場合の一形態を、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の実施の一形態に関わるシステム全体の概略構成を示すブロック図である。
図1(a)に示す電子黒板システム1は、制御用コンピュータ2と、制御用コンピュータ2に接続されたプロジェクタ等の表示画面投影装置3と、表示画面投影装置3からの投影像が投影される電子黒板4と、入力装置としての電子ペン5と、入力装置からの入力座標を検出する座標読み取り装置6とを備える。
制御用コンピュータ2で生成された操作画面が電子黒板4に投影され、操作者7は電子黒板5の操作画面上で電子ペン5を使用して制御用コンピュータ2に対する操作を行う。傍聴者8は、操作者7が電子黒板4の上で行う操作を閲覧する。
電子ペン5には、図1(b)に示すようなスイッチ9が設けられている。
このスイッチ9は電子ペン5の先端を電子黒板4の表面に押圧することによりONとなる。2回連続して押し当てると、ダブルクリック操作として制御用コンピュータ2が識別する。
電子黒板4の表面位置に電子ペン5の先端を押圧した場合の座標位置は、座標読み取り装置6により検出される。検出した座標位置のデータは制御用コンピュータ2に接続ケーブルを介して伝達される。
制御用コンピュータ2は、入力された電子ペン2の押圧座標データによって、どの描画オブジェクトが選択されたかを識別する。文字などの描画オブジェクトは、描画軌跡の連続する押圧位置座標データ群として制御用コンピュータ2の記憶手段に記憶される。
【0013】
図2は、本発明の実施の一形態に関わる描画ツールの概略構成を示すブロック図である。
描画ツール200は、電子ペン5による入力を受け付ける描画領域201と描画ツール200の機能を切り替えるツールバー202を有する。
電子ペン5は描画領域201内で操作を行うことにより、描画オブジェクト203を隠蔽することが可能となっている。また、ツールバー202で機能を切り替えることにより、描画領域201に描画オブジェクト203を書き込むことと、描画オブジェクト203の隠蔽対象属性を変更することが可能となっている。また、書き込んだ描画オブジェクト203は隠蔽オブジェクト204により、視覚的に隠蔽可能になっている。
ここで、描画オブジェクトとは電子ペン5によって一定時間内に連続して入力した点の集まりである。また、隠蔽オブジェクトは領域内が塗りつぶされた矩形のオブジェクトとする。
【0014】
図3は、本発明の実施の一形態に関わる電子黒板システム1の制御用コンピュータ2に備えられた描画オブジェクト隠蔽機能の概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように、描画オブジェクト隠蔽基本機能300は、文字列描画オブジェクト識別手段301と、隠蔽対象オブジェクトサイズ測定手段302と、無作為隠蔽処理手段303と、隠蔽オブジェクト作成手段304と、隠蔽オブジェクト表示手段305と、隠蔽対象設定手段306と、描画オブジェクト記憶手段307と、隠蔽オブジェクト記憶手段308を有する。
また、描画オブジェクト隠蔽機能310は描画オブジェクト隠蔽・表示切り替え手段311と、無作為描画オブジェクト隠蔽手段312と、電子ペン操作隠蔽手段313とを有する。描画オブジェクト隠蔽機能310の各手段は描画オブジェクト隠蔽基本機能300の各手段から構成される。描画オブジェクト隠蔽機能310の各手段の処理手順は後述する。
これら描画オブジェクト隠蔽基本機能300および描画オブジェクト隠蔽機能310の各手段は、具体的には、制御用コンピュータ2のメモリに格納されたプログラムによって実現されるものである。
【0015】
文字列描画オブジェクト識別手段301は、図2の描画領域201内の描画オブジェクトの中で文字オブジェクトを識別し、識別した文字オブジェクトに対して隠蔽対象属性を有効にするものである。文字オブジェクトの識別には、例えば特許文献「特開2004−139281号」に開示された手書き入力データに対する文字および図形認識の技術を使用することで可能であるため、詳細な説明は省略する。文字オブジェクトとして識別されなかった描画オブジェクトは図形オブジェクトとする。
隠蔽対象オブジェクトサイズ測定手段302は、隠蔽対象となる描画オブジェクトの外接矩形を測定するものである。測定方法は、横は描画オブジェクトを構成する点の最右端のX座標値から最左端のX座標値の差分とし、縦は最上端のY座標値から最下端点のY座標値の差分とする。
無作為隠蔽処理手段303は、隠蔽対象となる描画オブジェクトに対してそのまま隠蔽対象とするかを無作為に決定するものである。隠蔽対象とするか否かの判定処理は、乱数を生成し、その乱数が偶数か否かで行う。乱数が偶数ならばその描画オブジェクトを隠蔽対象とし、奇数ならば隠蔽対象としない。隠蔽対象にしないと決定した場合、隠蔽対象属性は有効であっても、この描画オブジェクトに対して隠蔽オブジェクトは作成されない。
【0016】
隠蔽オブジェクト作成手段304は、対象となる描画オブジェクトの外接矩形と同等サイズの隠蔽オブジェクトを作成するものである。隠蔽オブジェクトは隠蔽対象属性として有効・無効ではなく「隠蔽オブジェクト」という設定値を持つように設定される。
隠蔽オブジェクト表示手段305は、対象となる描画オブジェクト上に隠蔽オブジェクトを重ねて表示するものである。隠蔽オブジェクトの左上点の座標が、対象となる描画オブジェクトの(最左端点のX座標,最上端点のY座標)となる位置に隠蔽オブジェクトを表示する。この位置に隠蔽オブジェクトを表示することで、対象となる描画オブジェクトを隠蔽する。
隠蔽対象設定手段306は、選択された描画オブジェクトの隠蔽対象属性を切り替えるものである。隠蔽対象設定は状態として「未設定」、「無効」、「有効」、「隠蔽オブジェクト」の4つの状態を持つ。描画オブジェクト入力時の隠蔽対象設定は「未設定」である。
隠蔽対象設定手段306により、隠蔽対象設定が「未設定」は「無効」に、「無効」は「有効」に、「有効」は「無効」に切り替わる。
隠蔽対象設定が「隠蔽オブジェクト」の場合、隠蔽対象の設定は切り替わらない。
描画オブジェクト記憶手段307には、全ての描画オブジェクトのオブジェクト情報が記憶される。
描画オブジェクト情報には、描画オブジェクトを一意に識別するための描画オブジェクト番号、各オブジェクトを構成する点の座標データ、隠蔽対象属性で構成される。描画オブジェクトは電子ペン5により入力された際に、制御用コンピュータ2の記憶装置内に設けられた描画オブジェクト記憶手段307に記憶される。この記憶の際に、隠蔽対象属性が付加されて記憶される。隠蔽対象属性は、文字列描画オブジェクト識別手段301により識別された文字オブジェクト、無作為隠蔽処理手段303により無作為に決定された描画オブジェクト、そして隠蔽対象設定手段306により選択された描画オブジェクトに対して付加される。
隠蔽オブジェクト記憶手段308には、作成された全ての隠蔽オブジェクトのオブジェクト情報が記憶される。隠蔽オブジェクト情報には、対象となる描画オブジェクトの描画オブジェクト番号である。
描画オブジェクト隠蔽・表示切り替え手段311は、描画ツール200の描画領域201内の描画オブジェクトに対して、隠蔽対象設定に応じて隠蔽と表示を切り替える。隠蔽対象設定が有効かつ隠蔽されていない描画オブジェクトが存在する場合、その描画オブジェクトを隠蔽する。隠蔽対象設定が有効である描画オブジェクトが全て隠蔽されている場合は全ての描画オブジェクトを表示する。
無作為描画オブジェクト隠蔽手段312は、描画ツール200の描画領域201内の描画オブジェクトに対し、無作為隠蔽処理手段303を使用して、描画オブジェクトを無作為に隠蔽する。ただし隠蔽対象設定手段306により隠蔽対象属性を無効にした文字オブジェクトおよび隠蔽対象属性を有効にした図形オブジェクトは、使用者が明示的に隠蔽対象属性を変更しているため、無作為判定の対象外である。
電子ペン操作隠蔽手段313は、電子ペン5のスイッチ9によるダブルクリック操作により描画ツール200の描画領域201内の描画オブジェクトの隠蔽と表示を切り替える。ダブルクリック操作を行った位置に描画オブジェクトが存在する場合、その描画オブジェクトに対してのみ隠蔽と表示を切り替える。ダブルクリック操作を行った位置に描画オブジェクトが存在しない場合は隠蔽・表示切り替え手段314を実行する。
【0017】
図4は、本発明の実施の一形態に関わる描画オブジェクト隠蔽・表示切り替え手段311の処理手順を示すフローチャートである。
描画オブジェクト隠蔽・表示切り替え手段311は、描画オブジェクト記憶機能307を参照して(すなわち、描画オブジェクトを読出し)、描画オブジェクトの総数を取得する(ステップS401)。
描画オブジェクト総数を元に、描画オブジェクト番号に対応する描画オブジェクトに対して順に以降の処理を行う(ステップS402)。
まず、描画オブジェクトnの隠蔽対象属性が有効であるかを判定し(ステップS403)、かつ描画オブジェクトnに対応する隠蔽オブジェクトが存在しないかを判定する(ステップS404)。これにより、隠蔽対象属性が有効でも隠蔽オブジェクトが表示されていない描画オブジェクトが存在するか探索する。この条件を満たす描画オブジェクトが存在しない場合、探索回数nは描画オブジェクトの総数Nと等しくなる(ステップS405)。
探索回数nが描画オブジェクトの総数Nと等しくない場合、隠蔽対象属性が有効でも隠蔽されていない描画オブジェクトが存在するため、隠蔽対象属性が有効である全ての描画オブジェクトに対して隠蔽処理を行う(ステップS406)。ステップS406の詳細な処理手順は図5で示す。
【0018】
探索回数nが描画オブジェクトの総数Nと等しい場合、隠蔽オブジェクトにより隠蔽されている全ての描画オブジェクトを表示する。再度、描画オブジェクト総数を元に、描画オブジェクト番号に対応する描画オブジェクトに対して順に以降の処理を行う(ステップS407)。
描画オブジェクトnに対応する隠蔽オブジェクトが存在する(ステップS408)場合、隠蔽オブジェクトを非表示とすることで隠蔽されていた描画オブジェクトを表示する(ステップS409)。
ステップS408〜ステップS409の処理を全ての描画オブジェクトに対して行うことで、隠蔽オブジェクトにより隠蔽されていた描画オブジェクトを全て表示する。
【0019】
図5は、本発明の実施の一形態に関わる描画オブジェクト隠蔽・表示切り替え手段311の処理手順の中の、描画オブジェクト隠蔽処理手順を示すフローチャートである。
描画オブジェクト隠蔽機能310の描画オブジェクト隠蔽・表示切り替え手段311の処理手順の中の描画オブジェクト隠蔽処理は、描画オブジェクト記憶手段307に記憶された描画オブジェクトの総数Nを取得する(ステップS501)。
次に、描画オブジェクトの総数Nを元に、描画オブジェクト番号に対応する描画オブジェクトに対して順に以降の処理を行う(ステップS502)。
まず、描画オブジェクト記憶機能307を参照して、文字列描画オブジェクト識別手段301により描画オブジェクト番号nの描画オブジェクトが文字オブジェクトであるかを識別する(ステップS503)。
描画オブジェクトnが文字オブジェクトであると識別した場合、隠蔽対象属性が無効であるかを判定する(ステップS504)。このステップで明示的に隠蔽対象属性を無効に設定しているかを判定する。文字オブジェクトは、明示的に無効に設定されている場合は隠蔽せず、未設定および有効の場合は隠蔽処理を行う。
【0020】
描画オブジェクトnが図形オブジェクトとして識別された場合、隠蔽対象属性が有効であるかを判定する(ステップS505)。図形オブジェクトは隠蔽対象設定手段306で明示的に有効に設定されている場合に隠蔽処理を行い、未設定および無効の場合は隠蔽しない。
【0021】
隠蔽処理を行う場合、隠蔽オブジェクト記憶手段308を参照して(すなわち、隠蔽オブジェクトを読出し)、描画オブジェクトnに対応する隠蔽オブジェクトが存在するかを判定する(ステップS506)。隠蔽オブジェクト記憶手段308が記憶する隠蔽オブジェクトの中に、対象描画オブジェクトが描画オブジェクトnである隠蔽オブジェクトが存在する場合、隠蔽オブジェクトは作成済みであるとして不要な隠蔽オブジェクトを作成しない。
隠蔽オブジェクトが既存ではない場合、描画オブジェクト記憶手段307を参照して、隠蔽対象オブジェクトサイズ測定手段302により描画オブジェクトnの外接矩形サイズを測定する(ステップS507)。
【0022】
次に、隠蔽オブジェクト作成手段304により測定した外接矩形サイズと同等の外接矩形サイズとなる隠蔽オブジェクトを作成する(ステップS508)。この際に作成された隠蔽オブジェクトの情報は隠蔽オブジェクト記憶手段308に記憶させる。
作成された隠蔽オブジェクトは、隠蔽オブジェクト表示手段305により対象となる描画オブジェクトの外接矩形となる位置に表示する(ステップS509)。
【0023】
以上、ステップ502〜ステップ509の処理を全ての描画オブジェクトに対して行うことで、文字オブジェクトを識別し、隠蔽対象属性の設定に応じて隠したい描画オブジェクトを全て必要最小限の領域で隠蔽することが可能である。
【0024】
図6は、本発明の実施の一形態に関わる無作為描画オブジェクト隠蔽手段312の処理手順を示すフローチャートである。
無作為描画オブジェクト隠蔽手段312は、図5で示した描画オブジェクトの隠蔽処理手順とほぼ同じであり、ステップS506までは同じ手順である。ステップS506の後、無作為隠蔽処理手段303により描画オブジェクトnに対して隠蔽処理を行うかを無作為に判定する(ステップ601)。
隠蔽処理を行わないと判定した場合は、隠蔽対象属性が有効であっても隠蔽処理を行わず、次の描画オブジェクトの処理に移る。
【0025】
隠蔽処理を行うと判定した場合は、隠蔽オブジェクト作成手段304により隠蔽オブジェクトを作成し、隠蔽オブジェクト表示手段305により描画オブジェクトに重なるように隠蔽オブジェクトを表示する(ステップS602)。ステップS602は図5におけるステップS507〜ステップS509と同じである。
この無作為描画オブジェクト隠蔽手段312により、隠蔽対象属性を持つ描画オブジェクトを無作為に隠蔽することが可能となる。
【0026】
図7は、本発明の実施の一形態に関わる電子ペン操作隠蔽手段313の処理手順を示すフローチャートである。
電子ペン5のスイッチ9によるダブルクリック操作により、描画オブジェクトの表示と隠蔽を切り替える。
まず、電子ペン5のスイッチ9によるダブルクリック操作かを判定する(ステップS701)。
次に、ダブルクリック操作した位置に描画オブジェクトが存在するかを判定する(Sステップ602)。
描画オブジェクトが存在しない場合は、描画領域201内の全ての描画オブジェクトに対して隠蔽対象属性に応じて表示するか隠蔽するかを判定し、実行する(ステップS703)。この処理手順は図4に示した描画オブジェクト隠蔽・表示切り替え手段311と同様である。
【0027】
ダブルクリック操作した位置に描画オブジェクトが存在した場合、その描画オブジェクトが隠蔽オブジェクトであるかを判定する(ステップS704)。隠蔽オブジェクトの場合、隠蔽オブジェクトを非表示とすることで隠されている描画オブジェクトを表示する(ステップS705)。この際に、対象となる隠蔽オブジェクトを隠蔽オブジェクト記憶手段308が記憶する隠蔽オブジェクトの中から削除する。
【0028】
ダブルクタップした位置に存在した描画オブジェクトが隠蔽オブジェクトではない場合、まずダブルクリック操作した位置の描画オブジェクトの隠蔽対象属性が有効であるかを判定する(ステップS706)。隠蔽対象属性が有効ではない場合(無効となっている場合)は有効にする(ステップ707)。
次に、隠蔽オブジェクトを作成し、描画オブジェクトに重なるように隠蔽オブジェクトを表示する(ステップ602)。
以上より、電子ペン5のダブルクリック操作により、個々の描画オブジェクトに、あるいは描画領域内全ての描画オブジェクトに対して、表示と隠蔽を切り替えることが可能となる。
【0029】
図8は、本発明の実施の一形態に関わる電子黒板システム1おける描画ツール200の一例を示す図である。
描画ツール200は、授業で傍聴者となる生徒に見せる前の教師準備用のユーザインタフェース810と、実際に生徒に見せるための生徒傍聴用のユーザインタフェース820を有する。
教師準備用のユーザインタフェース810および生徒傍聴用のユーザインタフェース820のツールバー811は、無作為隠蔽ボタン812、隠蔽対象属性変更ボタン813を備えている。
無作為隠蔽ボタン812は、電子ペン5の先端によるスイッチ9押下後に無作為描画オブジェクト隠蔽手段312を実行させる。無作為隠蔽ボタン812を使用することで、虫食い算問題のように、計算問題の一部を隠蔽した問題の作成が容易となる。また、隠蔽する描画オブジェクトは無作為になるため、問題の種類も容易に増やすことが可能となる。
隠蔽対象属性変更ボタン813は、電子ペン5により目的の描画オブジェクトを選択してから電子ペン5の先端で押下することで、選択状態の描画オブジェクトに対して隠蔽対象設定手段306を実行させる。
【0030】
隠蔽対象属性変更ボタン813は、選択した描画オブジェクトの隠蔽対象属性が有効の場合に押下状態になり、無効の場合に押下状態にならない。また、隠蔽対象属性が未設定である描画オブジェクトは、その描画オブジェクトが選択されたときに隠蔽対象属性を無効に変更する。そのため、隠蔽対象属性が未設定である描画オブジェクトを選択しても、隠蔽対象属性変更ボタン813は押下状態にならない。
教師準備用のユーザインタフェース810では、隠蔽対象属性が有効である描画オブジェクトの外接矩形が識別可能な色(図では点線の矩形)で表示される。これにより、現時点で隠蔽対象属性が有効に設定されている描画オブジェクトを全体的に識別することが可能である。
生徒傍聴用のユーザインタフェース820では、隠蔽対象属性が有効である描画オブジェクトの外接矩形は識別可能な色で表示されない。生徒視聴用のユーザインタフェース820では、その描画オブジェクトが「隠蔽対象である」こと自体が解答になる可能性がある。
【0031】
図9は、本発明の実施の一形態に関わる教師準備用のユーザインタフェース810における一動作例を示す説明図である。
電子ペン5によるペン入力で計算式および図形を入力しているのが図9(a)である。
図9(b)は、(a)の後に描画オブジェクトのない領域で電子ペン5によるダブルクリック操作を行ったときの状態である。隠蔽対象となる描画オブジェクトを識別し、隠蔽処理を行っている。隠蔽対象となる描画オブジェクトが全て隠蔽されている。
図9(c)は、(b)の後に、再度、描画オブジェクトのない領域で電子ペン5によるダブルクリック操作を行った時の状態である。隠蔽対象となる描画オブジェクトが全て隠蔽されていたため、隠蔽されている描画オブジェクトが全て表示される。
図9(d)は、(a)の後に描画オブジェクトのある位置で電子ペン5によるダブルクリック操作を行った時の状態である。ダブルクリック操作をした位置にある描画オブジェクトは隠蔽オブジェクトにより隠蔽されていないため、隠蔽オブジェクトが生成され、隠蔽される。
図9(e)は、(d)の後に、再度、描画オブジェクトのある位置で電子ペン5によるダブルクリック操作を行った時の状態である。ダブルクリック操作をした位置にある描画オブジェクトは隠蔽オブジェクトにより隠蔽されているため、隠蔽オブジェクトを削除し、隠蔽されていた描画オブジェクトを表示する。また、この描画オブジェクトは隠蔽対象属性が有効になっているため、識別用の色で外接矩形が表示される。
【0032】
図10は、本発明の実施の一形態に関わる教師準備用のユーザインタフェース810のツールバー811の一動作例を示す説明図である。
電子ペン5によるペン入力で計算式および図形を入力しているのが図10(a)である。
図10(b)は、(a)の後に無作為隠蔽ボタン812の押下後の状態である。隠蔽対象となる文字オブジェクトを無作為に隠蔽する。
図10(c)は、(a)の後、描画オブジェクト101を選択し、隠蔽対象属性変更ボタン813を押下した後の状態である。選択した時に描画オブジェクト101の隠蔽対象属性が未設定から無効に変更され、隠蔽対象属性変更ボタン813を押下することで隠蔽対象属性が有効になり、隠蔽対象属性変更ボタン813は押下状態となる。
図10(d)は、(b)の後、再度、同じ描画オブジェクト101を選択した後の状態である。選択した描画オブジェクト101の隠蔽対象属性が有効から無効に変更される。隠蔽対象属性変更ボタン813は押下しない状態になる。
【0033】
以上のように、本実施形態においては、描画オブジェクトに隠蔽対象属性を付加して記憶し、かつその隠蔽対象属性は電子ペン5の操作により有効、無効に切り替えられるようにし、隠蔽対象属性が有効となっている文字オブジェクトについては当該文字オブジェクトを隠蔽する隠蔽オブジェクトを生成して隠蔽するように構成したため、隠蔽したい文字オブジェクトを煩雑な操作を行うことなく容易に隠蔽することができ、授業等での利用に際して極めて有効なものとなる。
また、無作為に隠蔽する機能により、隠蔽する文字オブジェクトを指定する操作をさらに容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の一形態である電子黒板システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態である描画ツールの概略構成を示す図である。
【図3】描画オブジェクト隠蔽機能の概略構成を示すブロック図である。
【図4】描画オブジェクト隠蔽・表示切り替え手段の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】描画オブジェクト隠蔽・表示切り替え手段の描画オブジェクト隠蔽処理手順を示すフローチャートである。
【図6】無作為描画オブジェクト隠蔽手段の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】電子ペン操作隠蔽手段の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施の形態である描画ツールの一例を示す図である。
【図9】教師準備用のユーザインタフェースの一動作例を示す図である。
【図10】教師準備用のユーザインタフェースのツールバーの一動作例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1…電子黒板システム、2…制御用コンピュータ、3…表示画面投影装置、4…電子黒板、5…電子ペン、6…座標読み取り装置、7…操作者、8…傍聴者、9…スイッチ、200…描画ツール、201…描画領域、202…ツールバー、203…描画オブジェクト、204…隠蔽オブジェクト、812…無作為隠蔽ボタン、813…隠蔽対象属性変更ボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字などの描画オブジェクトを描画するための操作画面を生成する画面生成装置と、生成された操作画面を電子黒板の投影面に投影して表示させる投影装置と、投影表示された操作画面上で文字等の描画オブジェクトを描画し、描画軌跡の連続する位置座標データ群を前記画面生成装置に入力して描画オブジェクトとして前記画面生成装置内の記憶手段に記憶させる電子ペンとから成る電子黒板システムにおいて、
前記画面生成装置が、
前記記憶手段に記憶された描画オブジェクトについて前記電子ペンの操作によって指定された隠蔽対象属性を設定して記憶させる第1の手段と、
前記記憶手段に記憶された各描画オブジェクトが文字オブジェクトであるか否かを識別する第2の手段と、
前記記憶手段に記憶された各描画オブジェクトのうち文字オブジェクトを前記記憶手段から読み出し、当該文字オブジェクトの隠蔽対象属性が有効に設定されていた場合は、当該文字オブジェクトの外接矩形に対応するサイズの隠蔽オブジェクトを生成し、当該文字オブジェクトと関連付けて前記記憶手段に記憶させる第3の手段と、
前記記憶手段に記憶された描画オブジェクトを読出し、当該描画オブジェクトが文字オブジェクトであった場合は、当該文字オブジェクトに対応する隠蔽オブジェクトを前記記憶手段から読出し、当該隠蔽オブジェクトを対応する文字オブジェクトに重ね表示して隠蔽表示する第4の手段と
を備えることを特徴とする電子黒板システム。
【請求項2】
前記第3の手段は、隠蔽対象属性が有効に設定されている文字オブジェクトについて無作為に隠蔽オブジェクトを生成し、当該文字オブジェクトと関連付けて前記記憶手段に記憶させる第5の手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項3】
前記第5の手段による無作為の隠蔽オブジェクト生成処理を行うか否かは、電子黒板上に表示された所定のボタンを電子ペンによって指示されるものであることを特徴とする請求項2に記載の電子黒板システム。
【請求項4】
文字などの描画オブジェクトを描画するための操作画面を生成する画面生成装置と、生成された操作画面を電子黒板の投影面に投影して表示させる投影装置と、投影表示された操作画面上で文字等の描画オブジェクトを描画し、描画軌跡の連続する位置座標データ群を前記画面生成装置に入力して描画オブジェクトとして前記画面生成装置内の記憶手段に記憶させる電子ペンとから成る電子黒板システムにおける描画オブジェクトの隠蔽処理方法であって、
前記画面生成装置が、
前記記憶手段に記憶された描画オブジェクトについて前記電子ペンの操作によって指定された隠蔽対象属性を設定して記憶させる第1のステップと、
前記記憶手段に記憶された各描画オブジェクトが文字オブジェクトであるか否かを識別する第2のステップと、
前記記憶手段に記憶された各描画オブジェクトのうち文字オブジェクトを前記記憶手段から読み出し、当該文字オブジェクトの隠蔽対象属性が有効に設定されていた場合は、当該文字オブジェクトの外接矩形に対応するサイズの隠蔽オブジェクトを生成し、当該文字オブジェクトと関連付けて前記記憶手段に記憶させる第3のステップと、
前記記憶手段に記憶された描画オブジェクトを読出し、当該描画オブジェクトが文字オブジェクトであった場合は、当該文字オブジェクトに対応する隠蔽オブジェクトを前記記憶手段から読出し、当該隠蔽オブジェクトを対応する文字オブジェクトに重ね表示して隠蔽表示する第4のステップと
を実行し、電子黒板上に表示され描画オブジェクトを隠蔽して表示することを特徴とする電子黒板システムにおける描画オブジェクトの隠蔽処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−17184(P2008−17184A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186678(P2006−186678)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】