説明

電極線材およびその線材によって形成された接続用リード線を備えた太陽電池

【課題】 平坦化ロールや無端ベルトを用いることなく製造することができ、はんだ付け性に優れた電極線材、およびこの電極線材をはんだ付けした接続用リード線を備えた太陽電池を提供する。
【解決手段】 帯板状の導電材で形成された芯材(2)と、前記芯材(2)の表面に積層形成された溶融はんだめっき層(5A)を備えた電極線材であって、前記芯材(2)は長さ方向に沿って溶融はんだ収容用凹部(6)が形成され、前記溶融はんだめっき層(5A)は前記凹部(6)に充填形成される。前記溶融はんだ収容用凹部(6)は、その芯材幅方向の開口幅が前記芯材(2)の幅の90%以上とすることが好ましい。また、前記芯材(2)は低熱膨張Fe合金で形成された中間層(3)の両面に銅層(4),(4)が積層形成されたクラッド材で形成することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽電池などの電子部品の接続用リード線として用いられる電極線材に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、PN接合を有するシリコン半導体で形成された半導体基板と、前記半導体基板の表面に線状に設けられた複数の表面電極にはんだ付けされた接続用リード線を備えており、通常、所望の起電力を得るために複数の太陽電池を直列に接続して使用される。直列接続は一の太陽電池の表面電極にはんだ付けされた接続用リード線を他の太陽電池の裏面電極に接続することによってなされる。
【0003】
前記接続用リード線が半導体基板の表面電極にはんだ付けされる前の電極線材は、図5に示すように、円形断面の銅線が圧延されて平坦状に潰された潰し銅線で構成された芯材51と、その両面に積層形成された溶融はんだめっき層52,52を備える。前記溶融はんだめっき層52,52は、前記芯材51の両面に溶融めっき法、すなわわち酸洗等により表面が清浄化された芯材51を溶融はんだ浴に通すことによって積層形成されたものである。前記溶融はんだめっき層52は、芯材51の上に付着した溶融はんだが凝固する際に表面張力の作用によって、図5に示すように、端部から中央部にかけて膨らんだ山形となっている。
【0004】
前記電極線材を半導体基板にはんだ付けするに際し、加熱温度ははんだ材の融点近傍の温度に厳格に制御される。その理由は、電極線材の芯材51を形成する銅と半導体基板を形成する、例えばシリコンとの熱膨張率が大きく相違するためである。すなわち、高価な半導体基板にクラックを発生させる原因となる熱応力をできるだけ小さくするように低温ではんだ付けするためである。なお、はんだ付けの際の加熱は、通常、半導体基板をホットプレートに載置し、このホットプレートからの加熱と、半導体基板に載置された電極線材の上方からの加熱とを併用して行われる。
【0005】
しかし、電極線材の溶融はんだめっき層は、図5に示すように、中央部が膨らんだ山形をしているため、電極線材を半導体基板の表面電極にはんだ付けする際、前記表面電極に導通するように予め半導体基板の表面に形成されたはんだ帯と溶融はんだめっき層との接触領域が小さくなり、半導体基板側から溶融はんだめっき層への熱伝導が不十分になり易い。このため、はんだ付け温度の低温化と相まってはんだ付け不良が生じやすく、著しい場合には太陽電池の取り扱い中に接続用リード線が半導体基板から外れるという問題がある。
【0006】
そこで、電極線材の溶融はんだめっき層は、できるだけ均一厚さとなるように溶融めっきの段階で種々の工夫がなされている。例えば、特開平7−243014号公報(特許文献1)には、溶融めっき浴から導出した帯板状材料を、その表面に付着しためっき層が溶融状態にあるうちに、ロールに巻き付けた状態でめっき層を凝固させたり、あるいは前記めっき層が付着した帯板状材料を一対の無端ベルトに挟みながら凝固させる技術が記載されている。一方、半導体材料との熱膨張差が小さい導電性材料として、例えば特開昭60−15937号公報(特許文献2)には、Fe、Niの合金であるインバー(代表的組成:Fe−36%Ni)板の両面に銅板を積層一体化したクラッド材が提案されている。
【特許文献1】特開平7−243014号公報
【特許文献2】特開昭60−15937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、半導体基板にはんだ付けする電極線材のはんだ付け性を向上させるには、電極線材に積層形成された溶融はんだめっき層をできるだけ平坦にすればよいが、特許文献1に記載されているように、めっき層を平坦状に凝固させるためには平坦化ロールや、無端ベルトを設け、被めっき材である芯材(帯板状材料)の張力を厳格に制御し、まためっき温度やめっき速度に応じてロール径やベルト長を変える等の煩雑な操作が必要となる。
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、平坦化ロールや無端ベルトのようなめっき層平坦化凝固手段を用いることなく製造することができ、はんだ付け性に優れた電極線材、およびこの電極線材によって接続用リード線が形成された太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電極線材は、帯板状の導電材で形成された芯材と、前記芯材の表面に積層形成された溶融はんだめっき層を備え、前記芯材は長さ方向に沿って溶融はんだ収容用凹部が形成され、前記溶融はんだめっき層は前記凹部に充填形成されたものである。
この電極線材によれば、電極線材の芯材には、溶融はんだ収容用凹部が形成されるので、前記凹部に供給された溶融はんだが凝固する際、溶融はんだに表面張力が働いても溶融はんだの中央部は膨らみ難く、前記溶融はんだめっき層は平坦状になりやすい。このため、半導体基板のはんだ帯などの被はんだ付け部に前記溶融はんだめっき層が当接するように電極線材を被はんだ付け部の表面に載置すれば、被はんだ付け部と溶融はんだめっき層との接触領域は従来の山形の溶融はんだめっき層に比して広くなり、熱電導性が向上する。このため、電極線材のはんだ付け性が向上し、優れた接合性が得られる。
【0010】
前記電極線材において、前記溶融はんだ収容用凹部に供給された溶融はんだが凝固する際に芯材の幅全体に渡って平坦化し易いように、前記溶融はんだ収容用凹部をその芯材幅方向の開口幅が前記芯材の幅の90%以上となるように形成することが好ましい。また、前記溶融はんだ収容用凹部の開口幅を大きく形成するには、溶融はんだ収容用凹部を長さ方向に対して垂直方向の断面形状が皿状ないし湾曲状に形成された前記芯材の凹み側に形成することが好ましい。このような形状は単純形状であり、加工が容易なため、工業的生産性にも優れる。
【0011】
また、前記芯材は、インバーなどのFe−Ni合金、コバール(登録商標)などのFe−Ni−Co合金からなる低熱膨張Fe合金で形成された中間層の両面に銅層が積層形成されたクラッド材で形成することが好ましい。芯材をかかるクラッド材で形成することによって、銅材に比して熱膨張率を大幅に低下させることができるため、電極線材のはんだ付け対象である半導体基板に生じる熱応力をより軽減することができ、厚さがより薄い半導体基板の使用が可能となり、半導体基板の軽量化、材料コストの低減を図ることができる。
【0012】
また、前記溶融はんだめっき層は、融点が130℃以上、300℃以下で、鉛を含まないはんだ材によって形成することができる。このようなろう材は、鉛による環境汚染のおそれがなく、また低融点であるため、電極線材を半導体基板にはんだ付けする際に、熱応力が生じ難いという利点がある。
【0013】
また、本発明の太陽電池は、PN接合を有する半導体で形成された半導体基板と、前記半導体基板の表面に設けられた複数の表面電極にはんだ付けされた接続用リード線を備え、前記接続用リード線は溶融はんだめっき層によって前記半導体基板に設けられた複数の表面電極にはんだ付けされた前記電極線材によって構成されたものである。
この太陽電池によれば、溶融はんだ収容用凹部により平坦化された溶融はんだめっき層によって前記電極線材を半導体基板の表面電極にはんだ付けし、その電極線材によって接続用リード線を構成したものであるから、半導体基板に対し接続用リード線が強固に接合し、半導体基板から外れにくく、耐久性に優れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電極線材によれば、芯材の溶融はんだ収容用凹部に充填形成された溶融はんだめっき層は従来のものに比してその表面が平坦化されやすいので、半導体基板などに形成された被はんだ付け部に対して、はんだ付け性が向上し、電極線材の接合耐久性を向上させることができる。
また、本発明の太陽電池によれば、前記電極線材を用いて溶融はんだ収容用凹部に充填形成した溶融はんだめっき層を半導体基板の複数の表面電極にはんだ付けすることによって接続用リード線を構成したので、接続用リード線は半導体基板に強固にはんだ接合され、半導体基板から外れ難いため、取り扱い性、耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
[図1]本発明の実施形態にかかる電極線材の横断面図である。
[図2]本発明の他の実施形態にかかる電極線材の横断面図である。
[図3]本発明の他の実施形態にかかる電極線材の横断面図である。
[図4]本発明の実施形態にかかる太陽電池の概略斜視図である。
[図5]従来の電極線材の横断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の第1実施形態に係る電極線材を示しており、この電極線材1は、導電材で形成された帯板状の芯材2と、その両面に積層形成された溶融はんだめっき層5A,5Bを有している。
【0017】
前記芯材2は、インバーで形成された中間層3の両面に断面積の等しい銅層4,4が積層形成されたクラッド材で構成されている。前記インバーはNiを35〜38mass%程度含んだFe−Ni合金であり、加工性が良好で、その熱膨張係数は1.2×10−6/℃程度(Ni=36.5mass%の場合)であり、銅の16.5×10−6/℃に比して相当低い。前記芯材2を構成する中間層3と銅層4との構成比率は、板面方向の熱膨張率が、ろう付け対象とする半導体基板の材料、例えばシリコン(熱膨張率:3.5×10−6/℃)と同等になるように決定すればよく、通常、電極線材1の長さ方向に対して垂直方向における断面(横断面)において中間層3の面積比を概ね20〜60%とすればよい。前記芯材2の幅や厚さは、電極線材を使用する用途に応じて適宜決定されるが、後述の太陽電池の接続用リード線の場合では、芯材のサイズは、幅1〜3mm程度、厚さ0.1〜0.3mm程度である。
【0018】
前記芯材2は、長さ方向に沿って、横断面の形状が一方の表面(図例では下面)の中央部が平坦状に凹んだ皿状(皿断面状)に形成されており、その凹み側に溶融はんだ収容用凹部6が形成されている。前記凹部6には溶融はんだが凝固して形成された溶融はんだめっき層5Aが形成され、その表面はほぼ平坦状とされている。前記凹部の深さは、最も深い部分で10〜30μm程度とすることが好ましく、またその幅(下面開口幅)は芯材2の幅の90%程度以上とすることが好ましい。幅の上限は特に制限はなく、下面全幅に渡って開口していてもよい。
【0019】
前記溶融はんだ収容用凹部6は、前記クラッド材からなる帯板材(芯材素材)に適宜の塑性加工、曲げ加工等を施すことによって容易に加工形成することができる。例えば、帯板材をロール隙間が皿状断面形状とされた型ロールに通すことにより容易に加工することができる。また、平板状クラッド材をスリットして帯板材を得る際に、スリッターの回転刃の間隔や回転速度を調整することによってスリットされた帯板材の側端部に曲げ加工を施すようにしてもよい。
【0020】
上記のように皿状に加工された芯材2は、酸洗や有機溶剤等により表面を清浄化した後、芯材2を溶融はんだ浴に通すことによって、芯材2の凹部6に溶融はんだを供給する。芯材2の凹部6に充填供給された溶融はんだは、表面張力の作用によって、凹部6を設けない場合(図5参照)と比較して、凹部6の中央部における溶融はんだの膨らみが抑制され、その表面が平坦化され易い。
このため、前記凹部6をほぼ満たすように溶融はんだを充填供給することによって、前記芯材2の幅全体に渡って前記凹部6に収容された溶融はんだの表面、引いては凝固後の溶融はんだめっき層5Aの表面を容易に平坦化することができる。
前記凹部6をほぼ満たすように溶融はんだを充填供給するには、溶融はんだめっきを行う際に溶融はんだ浴温、めっき速度を適宜制御することにより、あるいは芯材2を溶融はんだ浴に浸漬して引き上げた後に、凹部6の開口部から盛り上がった余分な溶融はんだを熱風の吹き付けによって除去したり、適宜のかき取り部材によってかき取り除去することによって行うことができる。
【0021】
前記溶融はんだめっき層5A,5Bを形成するはんだ材としては、融点が130〜300℃程度のSn−Pb合金、Sn−0.5〜5mass%Ag合金、Sn−0.5〜5mass%Ag−0.3〜1.0mass%Cu合金、Sn−0.3〜1.0mass%Cu合金、Sn−1.0〜5.0mass%Ag−5〜8mass%In合金、Sn−1.0〜5.0mass%Ag−40〜50mass%Bi合金、Sn−40〜50mass%Bi合金、Sn−1.0〜5.0mass%Ag−40〜50mass%Bi−5〜8mass%In合金などが使用される。Pbは人体、自然環境を汚染するおそれがあるので、汚染防止の観点からはPbフリーのSn−Ag合金、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Cu合金、Sn−Ag−In合金、Sn−Ag−Bi合金などのはんだ材が好ましい。また、前記各はんだ材において、溶融はんだの酸化防止のため、50〜200ppm程度のP、数〜数十ppmのGa、数〜数十ppmのGd、数〜数十ppmのGeの内から1種または2種以上を添加することができる。また、前記溶融はんだめっき層5A,5Bとしては、Sn、Ag、Cuなどの種々の純金属、あるいはこれらの合金を用いて多層構造としてもよい。この場合、溶融後に所期の合金成分となるように各層の厚さを調節する。このように多層構造にすれば、各層の厚さを調整するだけで目的とするはんだ材の成分を容易に調整することができる利点がある。多層構造は、所定の金属めっきを順次施すことによって簡単に形成することができる。
【0022】
上記実施形態では、前記芯材2はその横断面形状が前記凹部6の中央底部が平坦状とされた皿状をしているが、芯材の断面形状はかかる形状に限定されるものではなく、例えば図2に示す電極線材1Aのように芯材2の断面形状全体を湾曲状としてもよい。この場合、溶融はんだ収容用凹部6Aは底面が湾曲形の断面形状となる。また、図3に示す電極線材1Bのように、芯材2の下面側の銅層4に断面形状が三角形の二つの部分凹部6B,6Bが形成された断面形状でもよい。この場合、溶融はんだ収容用凹部はそれらの部分凹部6B,6Bから構成される。前記部分凹部6B,6Bは、一方のロール表面に複数個の三角状突起が形成された型ロールにクラッド材の帯板材を通して圧下することによって容易に形成することができる。勿論、部分凹部の断面形状や個数は図例のものに限らず、適宜の形状、個数とすることができる。なお、図2および図3で示した実施形態において、前記図1の実施形態の電極線材1と同様の構成は同符合が付されている。
【0023】
また、上記実施形態にかかる電極線材1,1A,1Bでは、前記芯材2をFe−35〜38mass%Ni合金で形成された中間層3の両面に銅層4,4が積層形成されたクラッド材で構成したが、中間層はコバール(登録商標)などの低膨張率のFe−29〜37mass%Ni−6〜18mass%Co合金、あるいは純Feで形成してもよい。芯材全体を銅材で形成することもできるが、芯材を前記クラッド材(特に中間層を前記Fe−Ni合金、Fe−Ni−Co合金のような低熱膨張Fe合金)で構成することで、熱膨張率がシリコン等の半導体に近似したものとすることができ、電極線材を半導体基板にはんだ付けする際の熱応力をより軽減することができる。
【0024】
図4は、前記第1実施形態に係る電極線材1を用いて接続用リード線を形成した太陽電池を示しており、PN接合を有するシリコン半導体で形成された半導体基板11と、前記半導体基板11の表面に線状に設けられた複数の表面電極12にはんだ付けされた接続用リード線13を備えている。なお、前記半導体基板11の裏面には、裏面電極が設けられている。
【0025】
前記接続用リード線13がはんだ付けされる前の半導体基板11には、複数の線状表面電極12に導通するように、これらの表面電極に直交して配置されたはんだ帯が形成されている。このはんだ帯に沿って、前記電極線材1の溶融はんだめっき層5Aが前記はんだ帯に当接するように電極線材1を半導体基板11に載置し、半導体基板11のはんだ帯および電極線材1の溶融はんだめっき層5Aを共に溶融して電極線材1を半導体基板11の表面にはんだ付けする。これによって半導体基板11に前記電極線材1によって形成された接続用リード線13が接合される。
【0026】
この太陽電池によれば、電極線材1に形成された溶融はんだめっき層5Aは凹部6に充填され、その表面が平坦状とされているため、はんだ付け性に優れ、接続用リード線13が強固に半導体基板11に接合される。このため接続用リード線が半導体基板から外れ難く、耐久性に優れる。なお、上記太陽電池の接続用リード線13としては、第1実施形態の電極線材1に限らず、他の実施形態にかかる電極線材1A、1Bを用いることができ、いずれの電極線材を用いても同様の効果を奏する。
【0027】
以下、本発明の電極線材について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【実施例】
【0028】
インバー(Fe−36.5mass%Ni)からなる厚さ60μmの中間層の両面に60μmの銅層が積層形成されたクラッド材(厚さ0.18mm)を準備した。このクラッド材からスリッターによって幅2mmの帯板材を製作し、さらにこの帯板材を長さ40mmに切断して実施例に係る芯材を得た。スリッターの際に、回転刃の間隔を調整して、図1に示すように芯材の幅方向端部に曲げ加工を施して、芯材の横断面形状が皿状となるように加工した。その断面形状を光学顕微鏡(倍率200倍)によって観察したところ、芯材の凹み側に形成された凹部の最大深さは約20μmであり、その開口幅は芯材幅の約95%であった。一方、厚さ0.18mm、幅2mmの銅製の潰し線から長さ40mmの比較例に係る芯材を製作した。
【0029】
これらの芯材の表面を有機溶剤(アセトン)で清浄化した後、溶融はんだ浴(はんだ組成:Sn−3.5mass%Ag、融点:220℃、浴温:300℃)に浸漬し、速やかに引き上げて芯材の表面に溶融はんだめっき層を形成し、電極線材を得た。実施例の電極線材では、溶融はんだめっき層は前記凹部に充填された状態で、芯材の幅全体に渡って表面がほぼ平坦状に積層形成されていたが、比較例の電極線材では図5に示すように芯材の側端部から中央部にかけて膨らんだ山形を呈した。
【0030】
以上のようにして製作した実施例、比較例の電極線材にフラックス(日本スペリア製、NS−30)を適量塗布し、それぞれ電極線材を無酸素銅帯板(厚さ0.5mm、幅4mm、長さ40mm)の上に、その長さ方向に沿って幅方向の中央部に溶融はんだめっき層が銅帯板に当接するように載置した。これらをホットプレートに載せて加熱(260℃で1分間保持)し、銅帯板に電極線材をはんだ付けした。
【0031】
その後、引っ張り試験機を用いて、前記電極線材と銅帯板とを反対方向に引っ張り、電極線材を銅板から引き剥がし、この引き剥がしに要した引っ張り力を測定した。試験は各試料につき、5回行い、その平均値を求めた。その結果、実施例では14.1Nであり、比較例では8.1Nであった。これより、実施例の電極線材は比較例に比して約1.7倍の接合力を得ることができ、はんだ付け性に優れることが確認された。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯板状の導電材で形成された芯材と、前記芯材の表面に積層形成された溶融はんだめっき層を備えた電極線材であって、
前記芯材は長さ方向に沿って溶融はんだ収容用凹部が形成され、前記溶融はんだめっき層は前記凹部に充填形成された電極線材。
【請求項2】
前記溶融はんだ収容用凹部は、その芯材幅方向の開口幅が前記芯材の幅の90%以上である請求項1に記載した電極線材。
【請求項3】
前記溶融はんだ収容用凹部は、長さ方向に対して垂直方向の断面形状が皿状ないし湾曲状に形成された前記芯材の凹み側に形成された請求項2に記載した電極線材。
【請求項4】
前記芯材は、Fe−Ni合金あるいはFe−Ni−Co合金からなる低熱膨張Fe合金で形成された中間層の両面に銅層が積層形成されたクラッド材で形成された請求項1から3のいずれか1項に記載した電極線材。
【請求項5】
前記溶融はんだめっき層は、融点が130℃以上、300℃以下で、鉛を含まないはんだ材によって形成された請求項1から3のいずれか1項に記載した電極線材。
【請求項6】
PN接合を有する半導体で形成された半導体基板と、前記半導体基板の表面に設けられた複数の表面電極にはんだ付けされた接続用リード線を備えた太陽電池であって、
前記接続用リード線は、溶融はんだめっき層によって前記半導体基板に設けられた複数の表面電極にはんだ付けされた請求項1から3のいずれか1項に記載された電極線材によって構成された太陽電池。
【請求項7】
前記電極線材の芯材は、Fe−Ni合金あるいはFe−Ni−Co合金からなる低熱膨張Fe合金で形成された中間層の両面に銅層が積層形成されたクラッド材で形成された請求項6に記載した太陽電池。
【請求項8】
前記電極線材の溶融はんだめっき層は、融点が130℃以上、300℃以下で、鉛を含まないはんだ材によって形成された請求項6に記載した太陽電池。

【国際公開番号】WO2004/105141
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506335(P2005−506335)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006725
【国際出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【出願人】(304051908)株式会社NEOMAXマテリアル (50)
【Fターム(参考)】