説明

電気めっき装置およびその方法

【課題】電気めっきにより円板上にめっき層を形成する方法において、簡便な装置を用いて円板上のめっき膜厚の面内均一性を可能にし、かつ両面8枚同時にめっきする方法を提供する。
【解決手段】円板上の外周部から給電リングにより、給電する給電冶具をカソード電極1とし、その両側に対向させてアノード電極3を配置し、カソード電極1とアノード電極3の両者に平行に円形の孔を持つ電流遮蔽板2を配置し、攪拌ノズル4により、給電冶具上にめっき液を均一な流速に流しながらめっきを行い、かつ給電リングは一部分を開放し、補助カソード機能を兼ね備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板上の基板に電気めっきを施すための電気めっき装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、半導体分野において、サブミクロンのビア加工したシリコンウェハー上に電気銅めっきを行い、それをCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)によって、研磨することで、銅配線回路が形成されている。このCMP工程において、前工程のめっき工程での膜厚バラツキが大きいとCMP研磨でのエッチングレートに差が生じ、膜厚が薄い箇所で、エッチング過多となり、銅配線に凹みが生じ、いわゆるディッシングが発生する原因となる。そこでめっき工程での面内での膜厚均一化は重要であり、電気銅めっきの膜厚を均一化する多くの試みが、これまでに行われてきた。電気めっきにおける膜厚均一化は、被めっき物であるカソード電極上での電流密度分布を均一化することである。電流密度は、一般的にカソード電極の周辺部で高く、中央部で低くなる。また、半導体ウェハー上に形成された導電性薄膜をカソード電極とする場合、薄膜の抵抗が高いため、カソード電極の周辺部と中央部の電流密度比がさらに大きくなる。このため、めっき膜厚が給電点(カソード電極の周辺部)付近で厚くなり、膜厚分布が不均一になる。めっき膜厚が厚くなった周辺部は薄膜抵抗が低くなり、さらに電流集中しやすくなり、膜厚バラツキがさらに大きくなる。
【0003】
しかしながら、近年、益々半導体チップの小型化、高集積化により、さらなる高精度化が求められている。また、ウェハーをより高効率に利用するために、半導体チップがウェハーの縁部の近く、例えば縁部から5mm程度の距離まで形成されるようになってきている。これに伴い、近年は、ウェハーの縁部付近まで、かつウェハー全面にわたって、より厳しく均一な厚さのめっきを形成することが求められている。
【0004】
そこで、その欠点を解消する方策として、従来より、めっき槽内の構造を工夫することによって、電流密度分布を改善し、均一化を図ることが行われている。めっき槽内の工夫としては、遮蔽板の設置と、めっき設備の機構および補助カソードの設置である。例えば、アノード電極を上部、カソード電極を下部に水平対向させ、被めっき物の形状に応じた開口径と開口形状を有する遮蔽板をアノードとカソード間に設置し、電気めっきの際にアノード電極とカソード電極間を流れる電流は全て遮蔽板の開口部を経由し、かつスキージによって攪拌しながらめっきを行っている。また、めっき液を噴流状にして半導体ウェハーに吹き付けながらめっきを行っている。半導体ウェハーは噴流に垂直に当たるように配置され、これにより均一めっき層を得ている。さらに、表裏の異なる面積のコア基板に対して、その両側にアノード電極を配置し、面積の小さい面のアノード電極の裏側に補助カソード電極を設けて補助カソード電極に電流集中させることで両面の面内での膜厚均一性を得ている。
【0005】
すなわち、該従来技術では、被めっき物上の電流密度分布あるいはめっき液の濃度を極力均一にすることでめっき層の膜厚バラツキを抑制している。
【0006】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3が知られている。
【特許文献1】特開平8−100292号公報
【特許文献2】特開平8−31834号公報
【特許文献3】特開平14−20897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、めっき槽構造が複雑となり、さまざまな配置スペースが制限される。前述のアノード電極を上部、カソード電極を下部にしためっき槽が筒型の遮蔽板方式は、膜厚分布精度においては比較的性能を出しやすいが、めっき槽の構造が複雑であり、筒型の電流路を長く設定する必要があり、めっき槽の大きさも大型で大掛かりなものとなる。前述の半導体ウェハーへの噴流状で吹き付けながらのめっきにおいては、液が自重でウェハー下部へ流れることにより、面内での流速均一性に課題があり、また、吹き付けノズルの設置により、アノード電極の設置方法が制限される。さらに、前述の補助カソード電極を用いた方法は、膜厚均一性に最も効果があるが、めっき槽内でカソード電極、アノード電極に継ぐ第三の補助カソード電極が必要となり、配置するスペースを設ける必要があり、これにおいてもまた、めっき槽が大型化し大掛かりなものになるという問題点を有していた。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、簡便なめっき槽構造で、円板上基板への面内の膜厚均一性に優れた電気めっき装置およびその方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
【0010】
本発明の請求項1に記載の発明は、前記、めっき槽と被めっき物を保持した給電冶具を、前記めっき槽内のめっき液中に浸漬された状態に保持するとともに、カソード電極に接続する給電冶具と、前記めっき槽内に、前記給電冶具の両側に対向するように配置したアノード電極と、前記めっき槽内にカソード電極とアノード電極との間に平行に絶縁体からなる電流遮蔽板を備え、前記給電冶具を挟むように設置された攪拌ノズルから層流状に流速を均一にしながらめっきを行い、また、前記給電冶具はリング給電を行い、その一部分は開放されており、補助カソード電極の機能も併せもち、そのことで円板上のめっき膜厚を均一にすることを可能にするという作用効果が得られる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記給電冶具は片面上下各々2枚ずつの計4枚保持し、両面で8枚同時にめっき可能で生産能力を向上させることができるという作用効果が得られる。
【0012】
本発明の請求項3に記載の発明は、前記電流遮蔽板はカソード電極から平行に20〜30mmの位置に配置され、その開口径は円板上の被めっき物径の0.8〜0.9倍であり、外周部に集中する電流線を制御し、めっき膜厚を均一にすることを可能にするという作用効果が得られる。
【0013】
本発明の請求項4に記載の発明は、前記電流遮蔽板は1枚の絶縁体である板状に前記、請求項2に記載の給電冶具の片面上下各々2枚ずつの計4枚に対してそれぞれ口径をもち、計両面8枚に対して、遮蔽効果をもつという作用効果が得られる。
【0014】
本発明の請求項5に記載の発明は、給電冶具を挟み込む形で攪拌ノズルが両側に設置されており、給電冶具上を層流状に流速を均一にして、めっきすることが可能となり、膜厚の均一性が向上するという作用効果が得られる。
【0015】
本発明の請求項6に記載の発明は、前記給電冶具の給電リングは基本的には絶縁材料に埋め込まれており、めっき液に触れないようになっているが、部分的に開放することで、電流線がその部位に集中し、被めっき物におけるめっき膜厚のバラツキを抑制するという作用効果が得られる。
【0016】
本発明の請求項7に記載の発明は、前記請求項6に記載の給電リングの開放位置が被めっき面から2〜16mmの部位を開放することでめっき膜厚のバラツキを抑制するという作用効果が得られる。
【0017】
本発明の請求項8に記載の発明は、被めっき物に下側から層流状に均一にめっき液を流しながらめっきする電気めっき方法により、膜厚バラツキに優れためっきが可能であるという作用効果が得られる。
【0018】
本発明の請求項9に記載の発明は、半導体ウェハーの全面において膜厚を均一にできるという作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による電気めっき装置およびその方法によれば、円板上の全面においてめっき膜厚のバラツキを抑えためっきをすることが可能となり、膜厚均一性に優れためっき形成に大きな効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施の形態)
以下、実施の形態を用いて、本発明の特に請求項1〜9に記載の発明について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は本発明に係る電気めっき装置およびその方法の実施の形態を示すめっき槽の断面図である。円板となる半導体ウェハー8に形成した導電性薄膜にその外周部から給電リングにより給電する給電冶具をカソード電極1とし、その両側に対向させてアノード電極3を配置し、カソード電極1とアノード電極3の両者に平行に円形の孔を持つ電流遮蔽板2を配置し、リザーブ槽6から循環ポンプ7によりめっき液が攪拌ノズル4に供給され、給電冶具上をめっき液の流速を均一に層流に流しながらめっきを行う。カソード電極1とアノード電極3および遮蔽板2を垂設するのみでそれぞれの設置間隔も狭く、また給電冶具の下側からめっき液の流速均一化を行うため、めっき槽5を大きくする必要性はなく小型にできる。図2(a)は、本発明の実施の形態における給電冶具1の正面図であり、給電リング10が埋め込まれた絶縁材料9の4分割構造となっている。それにより、片面4枚が上下各2枚ずつで構成し、給電冶具は両側で計8枚の円板となる半導体ウェハーを保持している。かつ給電リング10はリングの中心線で4分割したエリアを60°ずつ絶縁材料から開放し、めっき実施時にこの開放部にも析出し、給電機能に加えて補助カソード電極として補助カソード機能をも兼ね備えた。実験ではリファレンスとして全く開放していない補助カソード機能なしのものについても評価を実施した。図2(b)は図2(a)の4分割構造の1箇所をリングの中心から開放部を含む箇所における断面図(A−A’)である。半導体ウェハー8の被めっき面から2〜16mmを開放しており、開放部に電流集中がおこり、半導体ウェハー8のめっき膜厚を特に均一にすることが可能となる。また、給電冶具上に補助カソード電極10を設けていることにより、補助カソード電極10設置のスペースを設ける必要はない。図3は本発明の実施の形態における遮蔽板の正面図である。遮蔽板2は1枚の板状の絶縁材料であり、図2の給電冶具の被めっき面に正対する形で配置されている。開口径は被めっき物である半導体ウェハーよりも径が小さいことが特徴である。実験ではリファレンスとして遮蔽板を用いないものについても評価を実施した。
【0022】
遮蔽板の孔となる開口部12はカソード電極1である被めっき物の径の中心に対して、上下各々2つずつの4つの口径を有している。
【0023】
図1の電気めっき装置を用いてめっきを行い、基板上のめっき膜厚分布を調べた。使用した円板の半導体ウェハー基板は8inchサイズ(200mm)を用い、厚みは750μmである。まず、シード層として無電解Cuめっき(膜厚0.2μm)を施し、その上に電解Cuめっきを行った。
【0024】
電解Cuめっきは以下の組成の硫酸銅めっき液を用いた。
【0025】
[めっき液組成]
硫酸銅5水塩:200g/L
硫酸:50g/L
塩素:50mg/L
添加剤 トップルチナFA−1(奥野製薬製):5ml/L
添加剤 トップルチナFA−2(奥野製薬製):0.4ml/L
添加剤 トップルチナFA−3(奥野製薬製):4ml/L
電流密度:2A/dm2
液温:25℃
それぞれのめっき条件による膜厚均一化の効果を調べると、めっき条件は以下の通りである。
(a)遮蔽板なし+補助カソードなし
(b)遮蔽板なし+補助カソードあり
(c)遮蔽板あり+補助カソードなし
(d)遮蔽板あり+補助カソードあり
(c),(d)の遮蔽板ありについては開口径100mm、140mmおよび180mmで半導体ウェハー8と遮蔽板の距離を10mm、20mmおよび30mmでの膜厚のバラツキが小さい最適な条件である開口径180mm、距離30mmから図3の遮蔽板の4つの開口径をいずれも円板上の被めっき物径の0.8〜0.9倍に相当する180mmとし、半導体ウェハー8と遮蔽板の距離を30mmとした。尚、距離20〜30mmでも、膜厚バラツキを抑制する効果は得られる。
【0026】
上記の条件で、実験を行い、めっき膜厚を微小抵抗式膜厚計で半導体ウェハー全面にわたって69ヶ所測定した。各めっき条件に対する膜厚バラツキCV値の実験結果を図4に示す。図4(b)は、めっき膜厚を69ヶ所測定し、AVE(平均)、3σを求め、CV値(%)(=3σ/AVE×100)を算出した。図4(a)に示すように、(a)遮蔽板なし+補助カソードなしの条件では膜厚バラツキCV値83%に対して、(d)の遮蔽板あり+補助カソードありの条件で15%と著しく均一な膜厚が得られた。また、いずれの実験においても両面8枚のバラツキはほぼ同等のバラツキであった。
【0027】
このように本実施の形態では、遮蔽板+補助カソードを用いることにより、より、簡便な電気めっき装置で膜厚均一性の向上を図ることができ、また同時に両面8枚のめっきが可能であり生産能力を非常に高くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る電気めっき装置およびその方法は、円板基板の全面にわたってめっき膜厚を均一にすることが可能となり、さらに、両面8枚同時に膜厚バラツキの少ないめっき形成に大きく効果を有し、半導体ウェハーの製造方法などの用途として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態におけるめっき槽の断面図
【図2】本発明の実施の形態における給電冶具の構成図で(a)給電冶具の正面図、(b)給電冶具のA−A’断面図
【図3】本発明の実施の形態における遮蔽板の正面図
【図4】本発明の実施の形態における膜厚バラツキのCV値を示す図で(a)めっき条件とCV値を示す図、(b)膜厚バラツキCV値を示す図
【符号の説明】
【0030】
1 カソード電極(給電冶具)
2 遮蔽板(電流遮蔽板)
3 アノード電極
4 攪拌ノズル
5 めっき槽
6 リザーブ槽
7 循環ポンプ
8 半導体ウェハー
9 絶縁材料
10 給電リング(補助カソード電極)
12 開口部(孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板上に形成された導電性薄膜に前記円板外周部から補助カソード電極となる給電リングにより給電する給電冶具をカソード電極として前記円板にめっきする電気めっき装置において、めっき液を満たすめっき槽の中心にカソード電極、その両側に対向させてアノード電極を配置し、前記カソード電極と前記アノード電極の両者に平行に円形の孔を有する遮蔽板を配置し、下側の攪拌ノズルにより、前記給電冶具表面を下側から、層流状に均一に前記めっき液を流しながらめっきを行うことを特徴とする電気めっき装置。
【請求項2】
カソード電極である給電冶具は円板を両面8枚保持し、片面4枚が上下各々2枚ずつの構成を有していることを特徴とする請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項3】
カソード電極上からカソード電極とアノード電極の距離に対して20〜30mmの位置に円板上の被めっき物径の0.8〜0.9倍の口径の径をもつ電流遮蔽板を配置することを特徴とする請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項4】
電流遮蔽板は1枚の板状に、カソード電極である被めっき物の径の中心に対して、上下各々2つずつの4つの口径をもつことを特徴とする請求項3に記載の電気めっき装置。
【請求項5】
攪拌ノズルはカソード電極である給電冶具上を層流に均一に流すことを特徴とする請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項6】
給電リングは絶縁材料に埋め込まれており、補助カソードの部分は絶縁樹脂から開放された形状になっていることを特徴とする請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項7】
補助カソードは円板上の被めっき物の径から2〜16mm以上の範囲を開放することを特徴とする請求項6に記載の電気めっき装置。
【請求項8】
めっき液を満たしためっき槽の中心にカソード電極とその両側に対向させてアノード電極を配置し、
前記カソード電極と前記アノード電極の両者に平行に円形の孔を有する遮蔽板を配置し、
めっき槽下側の攪拌ノズルにより被めっき物を保持する給電冶具表面に対し、下側から層流状に均一にめっき液を流しながら前記被めっき物にめっきを行うめっき方法。
【請求項9】
被めっき物が半導体ウェハーであることを特徴とする請求項8に記載のめっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−308783(P2007−308783A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141168(P2006−141168)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】