説明

電気コネクタ組立体

【課題】リセプタクルコネクタとプラグコネクタとの嵌合を、効率よく、かつ確実に行うことのできる電気コネクタ組立体を提供することを目的とする。
【解決手段】レバー40Bの変形片61に、第一係合爪62と第二係合爪とを備え、第一係合爪62によりレバー40Bをリセプタクルハウジング21に本係合させ、第二係合爪によりレバー40Bをプラグハウジング31に仮係合させるようにした。そして、プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21に嵌合するまでの間は、レバー40Bを倒した状態のままプラグハウジング31に仮固定することで、係合部60とプラグハウジング31との隙間に配線等が入り込むのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方のコネクタを保持したプラグハウジングを有するプラグコネクタと、他方のコネクタを保持し、プラグハウジングを受容するリセプタクルコネクタとからなる電気コネクタ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント配線基板等の回路基板(以下、単に基板という)に実装され、基板と他の電気回路とを接続する電気コネクタ(以下、単にコネクタという)が広く使われている。このコネクタは、コンタクトと、このコンタクトを保持するハウジングとを主たる構成要素としている。コネクタには、雌型のリセプタクルコネクタと雄型のプラグコネクタとが存在する。リセプタクルコネクタは、筒状のフードを有しており、このフード内に複数のコンタクトが配置されている。プラグコネクタは、フード内に挿入されるハウジングを有しており、このハウジングに、リセプタクルコネクタのコンタクトに嵌合するコンタクトが設けられている。
【0003】
リセプタクルコネクタにプラグコネクタを嵌合する際のリセプタクルコネクタへのプラグコネクタの挿入力を低減するために、レバー付きのコネクタが従来より提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
レバー付きのコネクタは、プラグコネクタに対し、レバーが回動自在に設けられている。レバーの先端側(支点から離れた側)を作業者が手で回動操作することで、レバーの支点近傍に設けられた作用点部から、リセプタクルコネクタとプラグコネクタとの間に、双方を互いに接近または離間させる方向の力(この力を倍力と称する。)を作用させる。このレバーの発する倍力により、リセプタクルコネクタとプラグコネクタとをより軽い力で挿抜できる。
【0004】
【特許文献1】特開2007−188663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のようなレバーを備えたコネクタ組立体には、以下に示すような課題が存在する。
レバーによりプラグコネクタをリセプタクルコネクタに嵌合させる場合、双方に設けた爪を噛み合わせることにより、その嵌合状態を維持するのが一般的である。しかし、固定状態にある爪同士の場合、プラグコネクタをリセプタクルコネクタに繰り返し着脱したりすると、爪同士が摩耗し、その係合力が弱くなったり、摩耗により異物が発生する等の問題が生じることもある。
【0006】
また、上記したようなレバーを備えるプラグコネクタにおいては、プラグハウジングに保持されたコンタクトに配線を予め接続しておく。そして、このプラグコネクタをリセプタクルコネクタに嵌合する。しかし、プラグコネクタに配線を接続した工程以降、プラグコネクタをリセプタクルコネクタに嵌合する工程までの間に、搬送中等に、配線がレバーとプラグハウジングとの間に挟み込まれてしまうことがある。配線がレバーとプラグハウジングとの間に挟み込まれると、プラグコネクタをリセプタクルコネクタに嵌合するに先立ち、挟み込まれた配線を作業者が取り外さなければならず、これに手間がかかり、生産効率の低下に繋がる。また、配線がレバーとプラグハウジングとの間に挟み込まれたまま、レバーに想定外の力が加えられた場合には、配線が断線してしまう可能性がある。
【0007】
さらに、プラグコネクタをリセプタクルコネクタに嵌合させるときには、レバーを起こした状態で、プラグハウジングをリセプタクルコネクタのフード内に挿入した後、レバーを押し下げて、レバーにより発揮される倍力を利用してプラグプラグとリセプタクルプラグとを嵌合させる。しかし、不慣れな作業者等により、レバーを押し下げた状態のまま、プラグコネクタをリセプタクルコネクタに嵌合させようとしてしまう可能性もある。プラグコネクタをリセプタクルコネクタに無理やり嵌合させると、ハウジングやコンタクトが変形する可能性もあるため、確実に作業を行うことが望まれる。
【0008】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、リセプタクルコネクタとプラグコネクタとの嵌合を、効率よく、かつ確実に行うことのできる電気コネクタ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもとになされた本発明は、電気コネクタ組立体であって、第一のハウジングと、第一のハウジングに嵌合する第二のハウジングと、第一のハウジングに保持される第一のコンタクトと、第二のハウジングに保持され、第一のコンタクトに接続される第二のコンタクトと、を備え、第一のハウジングは、第二のハウジングを受容する空間を形成するフードを備え、第二のハウジングは、フード内への第二のハウジングの挿入力を軽減するため、支軸を介して回動自在に設けられたレバーを備える。そして、レバーは、第二のハウジングを第一のハウジングに嵌合させた状態でフードの内壁面に対向する位置に、内壁面に対して接近・離間する方向に変形可能な可撓性を有した変形片を有する。この変形片に、第二のハウジングを第一のハウジングに嵌合させたときにフードに係合する第一の係合部と、第二のハウジングに係合する第二の係合部と、を備えることを特徴とする。
このように変形片に、第一の係合部と第二の係合部とを備えることで、レバーを倒して第二のハウジングを第一のハウジングに嵌合させたときに第一の係合部をフードに係合させれば、第二のハウジングと第一のハウジングを嵌合状態にロックすることができる。また、第二の係合部を第二のハウジングに係合すれば、第二のハウジングを第一のハウジングに嵌合させていない状態において、レバーを第二のハウジングに仮固定することができる。
第一の係合部または第二の係合部を係合対象のフードまたは第二のハウジングに係合させるとき、あるいは係合対象との係合を解除するときには、可撓性を有した変形片を、係合対象から離間する方向に撓ませる。したがって、第一の係合部とフード、第二の係合部と第二のハウジングの接触圧を軽減させた状態で双方の係合動作・解除動作を行える。
ここで、変形片の具体的な構造については何ら限定する意図はないが、一端側が固定端とされ、他端側が自由端とされた板状あるいはビーム(梁)状のバネと同様の構成とするのが好ましい。このような構成において、自由端側に、第一の係合部、第二の係合部を設けるのである。
【0010】
ここで、変形片は、第二のハウジングを第一のハウジングに嵌合させたときに、第一の係合部のみがフードに係合し、第二の係合部は、第二のハウジングと非係合状態とされるのが好ましい。つまり、第二のハウジングを第一のハウジングに嵌合させて第一の係合部のみがフードに係合した状態では、第二の係合部は第二のハウジングに係合しない。第二のハウジングを第一のハウジングに嵌合させた状態で、第一の係合部がフードに係合するだけでなく、第二の係合部が第二のハウジングに係合されてしまうと、レバーを起こす場合等において、変形片を変形させて第一の係合部、第二の係合部との係合を同時に解除しなければならず、解除が困難になるからである。
これには、レバーを、第一の係合部がフードに係合する状態と、第二の係合部が第二のハウジングに係合する状態とで、第二のハウジングに対する傾斜角度が互いに異なるものとするのが好ましい。さらに、第二の係合部が第二のハウジングに係合する状態においては、レバーが、第一の係合部がフードに係合する状態よりもさらに倒れるようにすれば、第二の係合部が第二のハウジングに係合した状態では、レバーが干渉して第二のハウジングを第一のハウジングに完全に嵌合させることができなくなる。
【0011】
また、変形片にスリットが形成されるとともに、第二のハウジングの側面に、スリットに挿入可能な突条が形成され、第二の係合部を第二のハウジングに係合させた状態で、スリットに突条が挿入される構成とするのが好ましい。
これにより、第二の係合部を第二のハウジングに係合させ、スリットに突条が挿入された状態では、レバーと第二のハウジングの間に、配線等が不用意に入り込んでしまうのを防止できる。
【0012】
第一の係合部、第二の係合部は、いかなる配置としても良いが、第二の係合部は、変形片の幅方向の中央部に配置し、第一の係合部は、第二の係合部の両側の二か所に設けるのが好ましい。
また、変形片において、フードの内壁面に対向する側とその反対側のいずれか一方の面に第一の係合部が形成され、他方の面に第二の係合部が形成される構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レバーの変形片に、第一の係合部と第二の係合部とを備え、第一のハウジングと第二のハウジングとを嵌合させるときには、第一の係合部によりレバーを第一のハウジングに本係合させるようにした。また、第二の係合部によりレバーをプラグハウジングに仮係合させるようにした。このように、一つの変形片において、レバーの第一のハウジングへの本係合と、第二のハウジングへの仮係合とを実現できる。
また、第一の係合部または第二の係合部を係合対象のフードまたは第二のハウジングに係合させるとき、あるいは係合対象との係合を解除するときには、可撓性を有した変形片を、フードまたは第二のハウジングから離間する方向に撓ませて弾性変形させる。したがって、第一の係合部とフード、第二の係合部と第二のハウジングの接触圧を軽減させた状態で双方の係合動作・解除動作を行える。これにより、第一の係合部とフード、第二の係合部と第二のハウジングの係合部分の摩耗や、異物の発生を防ぐことができる。
【0014】
変形片は、第二のハウジングを第一のハウジングに嵌合させたときに、第一の係合部のみがフードに係合し、第二の係合部は、第二のハウジングと非係合状態とすることもできる。これにより、レバーを起こす場合等において、第一の係合部による第一のハウジングへの係合を解除する際には、同時に第二の係合部による第二のハウジングへの係合を解除する必要がなく、軽い操作力で容易に第一の係合部によるフードへの係合を解除できる。
さらに、第二の係合部を第二のハウジングに係合させた状態から、第二のハウジングを第一のハウジングに嵌合させるときには、第二の係合部の第二のハウジングへの係合を、変形片の押圧操作により解除する必要がある。この動作により、作業者は、変形片による第二のハウジングへの仮係合の解除を認識でき、作業を確実に行うことができる。
【0015】
第二の係合部を第二のハウジングに係合させた状態で、変形片に形成されたスリットに、第二のハウジングの側面に形成された突条が挿入される構成とすることで、レバーと第二のハウジングの間に、配線等が不用意に入り込んでしまうのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における電気コネクタ組立体を、プラグコネクタ側から見た斜視図である。図2は、本実施の形態における電気コネクタ組立体を、リセプタクルコネクタ側から見た斜視図である。図3は、本実施の形態における電気コネクタ組立体の正面図である。図4は、リセプタクルコネクタの斜視図である。図5において、(a)はプラグコネクタの左側面図、(b)はプラグコネクタの正面図、(c)はプラグコネクタの右側面図である。図6において、(a)はレバーの斜視図、(b)はレバーを起こした状態におけるプラグコネクタを示す斜視図である。図7は、レバーを本係合させた状態のプラグコネクタの一部分を、図5(c)のA−A断面で断面視した図である。図8は、レバーを仮係合させた状態のプラグコネクタの一部分を、図5(c)のB−B断面で断面視した図である。
【0017】
図1から図3に示すように、コネクタ(電気コネクタ組立体)10は、プリント配線板側に固定されるリセプタクルコネクタ20と、このリセプタクルコネクタ20に嵌合可能なプラグコネクタ30とから構成される。
本実施の形態において、リセプタクルコネクタ20には、例えば三つのプラグコネクタ30A、30B、30Cが一方向に並べて嵌合される。なお、リセプタクルコネクタ20に対して嵌合するプラグコネクタ30の数は、本発明においては何ら限定する意図はなく、一つのみ、あるいは二つ、四つ以上等とすることもできる。
【0018】
図2および図4に示すように、リセプタクルコネクタ20は、樹脂製のリセプタクルハウジング(第一のハウジング)21と、銅系材料等の導電性材料から形成されたコンタクト(第一のコンタクト)22とから構成される。
【0019】
リセプタクルハウジング21には、複数のコンタクト22を、互いに間隔を隔てて配列した状態で保持するコンタクト保持壁23が設けられている。
図3に示したように、リセプタクルハウジング21は、コンタクト保持壁23の一面側を電装ユニット等のユニットハウジング100内に挿入し、コンタクト保持壁23の他面側をユニットハウジング100の外方に向けた状態でユニットハウジング100に取り付けられる。コンタクト保持壁23の一面側には、ユニットハウジング100内に収められるプリント配線板(図示無し)に接続される複数のコンタクト22を覆う、庇状のカバー部24が形成されている。
【0020】
図4に示したように、コンタクト保持壁23の他面側には、プラグコネクタ30A、30B、30Cが嵌合される嵌合部25が設けられている。嵌合部25は、コンタクト保持壁23から他面側に立ち上がる矩形の外周壁部25aと、外周壁部25a内を三つに区分する区分壁25b、25cとから形成されている。そして、外周壁部25a内が区分壁25b、25cによって三つに区分されることで、三つの筒状のフード26A、26B、26Cが形成されている。フード26A、26B、26Cの内側は、プラグコネクタ30A、30B、30Cを挿入するための受容空間27A、27B、27Cとされている。
【0021】
コンタクト保持壁23には、フード26A、26B、26C内において、複数のコンタクト22を互いに間隔を隔てて配列された状態で保持するための挿通孔(図示無し)が貫通して形成されている。
コンタクト保持壁23には、両端部のフード26A、26Cに隣接して、フード26A、26B、26Cの並ぶ方向の外側(フード26Bに隣接する側とは反対側)に突出する突出部29が形成されている。
【0022】
図1に示したように、プラグコネクタ30A、30B、30Cは、それぞれ、リセプタクルハウジング21のフード26A、26B、26Cに嵌合する樹脂製のプラグハウジング(第二のハウジング)31と、銅合金等の導電性材料からなるコンタクト(第二のコンタクト:図示無し)とから構成されている。
【0023】
図1および図5に示すように、プラグハウジング31は、リセプタクルハウジング21のフード26A、26B、26Cに嵌め合う断面形状を有している(図5においては、プラグコネクタ30Bの例を示している。)。図1に示したように、プラグハウジング31には、リセプタクルコネクタ20の複数のコンタクト22に対応して、複数のコンタクト保持孔32が互いに間隔を隔てて形成されている。これらコンタクト保持孔32のそれぞれにコンタクト(図示無し)が保持されている。
【0024】
プラグハウジング31の上面側に開口したコンタクト保持孔32には、電線(図示無し)が挿入されている。この電線(図示無し)は、コンタクト保持孔32内のコンタクト(図示無し)に電気的に接続されている。
【0025】
このようなプラグコネクタ30A、30B、30Cは、プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21のフード26A、26B、26Cに挿入することでリセプタクルコネクタ20に嵌合される。すると、プラグコネクタ30A、30B、30C側のコンタクト(図示無し)が、リセプタクルハウジング21のフード26A、26B、26C内に位置するコンタクト22に電気的に接続される。
【0026】
図1に示したように、プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21に対して挿抜する時に必要な力を軽減するため、プラグハウジング31には、レバー40がその一端部40a側を回動自在に支持されて設けられている。プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21に対して挿抜する時には、レバー40を回動させる。
また、レバー40は、プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21に係合する機能をも有する。レバー40で、プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21に係合するには、他端部40bを押してレバー40を倒し、他端部40bをリセプタクルハウジング21に係合させる。
以下、その構造について詳述する。ここで、説明の理解を容易にするため、プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21に嵌合させたときに、コンタクト保持壁23に対向する側を下方、その反対側を上方として説明を行う。
【0027】
両端側のフード26A、26Cに接続されるプラグコネクタ30A、30Cにおいては、フード26A、26Cにプラグハウジング31が挿入された状態でレバー40A、40Cを倒すと、レバー40A、40Cはフード26A、26Cの外側に突出する長さを有している。そして、レバー40A、40Cは、フード26A、26Cの外側に設けられた係合部70において、リセプタクルハウジング21に設けられた係止爪71と係合される。
【0028】
一方、フード26A、26Cの間に位置するフード26Bに接続されるプラグコネクタ30Bにおいては、フード26Bにプラグハウジング31が挿入された状態で、レバー40Bはフード26Bの内側においてリセプタクルハウジング21に係合される。
【0029】
図5に示すように、レバー40Bは、その一端部40a側において、プラグハウジング31の側面に設けられた支軸41に回動自在に連結されている。支軸41は、プラグハウジング31の中心に対し、一端部40a側にオフセットして設けられている。
【0030】
図1に示したように、レバー40Bは、レバー40Bを倒して係合状態としたときに、プラグハウジング31の両側の側面に沿うよう形成されている。図5に示すように、レバー40Bにおいて、プラグハウジング31の両側の側面に沿う部分は薄板状のプレート部42により形成されている。そして、プレート部42を補強するために、プレート部42の上端部に、トラス構造状の補強ビーム部43が一体に形成されている。
【0031】
図5に示したように、プレート部42において、支軸41よりもレバー40Bの一端部40a側に突出した位置に、レバー40Bを回動させたときにその操作力をリセプタクルハウジング21に伝達するためのカム突起55が突出形成されている。
一方、図4に示したように、リセプタクルハウジング21の嵌合部25の外周壁部25aには、このカム突起55をガイドするカム溝56が形成されている。このカム溝56は、外周壁部25aの上端部から下方に向かって形成され、レバー40Bを回動させるとカム突起55がカム溝56に沿って移動する。このとき、レバー40Bを起こした状態でプラグハウジング31をリセプタクルハウジング21のフード26Bに挿入すると、カム突起55がカム溝56に入り込む。そして、レバー40Bの他端部40bを押してレバー40Bを倒していくと、カム突起55がカム溝56に沿って変位する。このときに、レバー40Bの他端部40bに入力される操作力が、てこの原理により、カム突起55とカム溝56との間に作用し、これによってプラグハウジング31がリセプタクルハウジング21に挿抜される。したがって、カム溝56は、プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21に挿抜させるための倍力を発揮する適宜の形状に形成されている。
【0032】
また、プレート部42の先端部には、支軸41よりもレバー40Bの一端部40a側に突出した位置に、ストッパ部44が形成されている。
図5(a)に示すように、プラグハウジング31には、レバー40Bを回動させたときに上下方向に移動するストッパ部44が入り込むスリット45が形成されている。スリット45には、レバー40Bを起こしていったときにストッパ部44が当たってそれ以上の移動を規制するストッパ部46が形成されている。また、スリット45には、ストッパ部44に形成された爪44aと係合するストッパ爪47が形成されている。ストッパ爪47が爪44aに係合することで、レバー40Bを、プラグハウジング31から起き上がった状態に保持できる。レバー40Bを倒すときには、爪44aは、ストッパ爪47を乗り越えていく。
【0033】
図5、図6に示すように、レバー40Bの他端部40bには、係合部60が設けられている。係合部60は、プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21のフード26Bに挿入し、さらにレバー40Bを倒したときに、レバー40Bをリセプタクルハウジング21に係合させるものである。
係合部60には、下端部61aがレバー40Bに固定され、上端部61bが上方に向けて延びる変形片61が設けられている。変形片61の上端部61bは、レバー40Bの他端部40b側(一端部40aから離間した側)の側面に露出している。変形片61は、可撓性を有した樹脂材料から形成されており、変形片61の上端部61bをレバー40Bの一端部40a側に向けて接近・離間する方向に押圧すると、板状あるいはビーム状のバネのように弾性変形し、下端部61a側を中心として上端部61b側が変位する。
【0034】
変形片61には、下端部61a側から上端部61bに向けてスリット61cが形成されている。変形片61には、レバー40Bの一端部40aから離間した側の面(フード26Bの内壁面に対向する面)において、スリット61cの両側のそれぞれに、係合部60をリセプタクルハウジング21のフード26Bに係合させるための第一係合爪(第一の係合部)62が形成されている。
一方、図7に示すように、リセプタクルハウジング21のフード26Bにおいて、第一係合爪62と対向する位置、すなわち嵌合部25の区分壁25cの上端部には、2か所の第一係合爪62のそれぞれに係合する本係合突起63が突出形成されている。
【0035】
プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21のフード26Bに挿入し、さらにレバー40Bを倒すと、変形片61が弾性変形することで、係合部60の第一係合爪62がフード26Bの本係合突起63を乗り越え、係合部60の第一係合爪62とフード26Bの本係合突起63とが互いに係合する。これにより、レバー40Bが倒された状態のままロックされ、プラグハウジング31がリセプタクルハウジング21のフード26Bに嵌合された状態でロックされる。なおこの状態で、レバー40Bは、補強ビーム部43が、プラグハウジング31の上面に平行となる。
また、変形片61は、プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21のフード26Bに挿入し、レバー40Bを倒した状態で押圧操作が可能となるよう、上端部61bが、フード26Bよりも上方に突出するよう形成されている。
レバー40Bのロックを解除するには、変形片61の上端部61bを、レバー40Bの一端部40aに接近する方向に押圧する。すると、変形片61の上端部61b側がレバー40Bの一端部40aに接近する方向に弾性変形し、係合部60の第一係合爪62とフード26Bの本係合突起63との係合を解除できるので、そのままレバー40Bを起こせば良い。
【0036】
また、図8に示すように、変形片61には、レバー40Bの一端部40aに対向した側(プラグハウジング31に対向する側)の面において、スリット61cの終端61dの近傍に、レバー40Bをプラグハウジング31に仮係合させる第二係合爪(第二の係合部)64が突出形成されている。
【0037】
図6(b)、図8に示すように、プラグハウジング31には、第二係合爪64と対向する側面に、上下方向に連続する突条65が形成されている。突条65は、レバー40Bを倒したときに、変形片61のスリット61cに入り込む位置に形成されている。
突条65の上端部には、第二係合爪64側に突出する仮係合突起66が形成されている。図8に示すように、プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21のフード26に挿入せず、単体のままの状態で、レバー40Bを倒していくと、変形片61が弾性変形することで、第二係合爪64がプラグハウジング31の仮係合突起66を乗り越え、第二係合爪64とプラグハウジング31の仮係合突起66とが互いに係合する。すると、レバー40Bは、第二係合爪64とプラグハウジング31の仮係合突起66との係合位置よりも上方に起こすことができず、プラグハウジング31に仮係合される。
このとき、レバー40Bは、プラグハウジング31の上面31a(図1参照)に対し、一端部40a側から他端部40b側に向けて補強ビーム部43が徐々に低くなるよう傾斜して仮係合される。
レバー40Bのプラグハウジング31への仮係止を解除するには、変形片61の上端部61bを、レバー40Bの一端部40aから離間する方向に押圧する。すると、変形片61の上端部61bがレバー40Bの一端部40aから離間する方向に弾性変形し、係合部60の第二係合爪64と仮係合突起66との係合が解除されるので、そのままレバー40Bを起こせば良い。
【0038】
このようにして、レバー40Bの変形片61に、第一係合爪62と第二係合爪64とを備えることで、一つの変形片61において、レバー40Bのリセプタクルハウジング21への本係合と、レバー40Bのプラグハウジング31への仮係合とを実現できる。
また、レバー40Bとリセプタクルハウジング21、あるいはレバー40Bとプラグハウジング31とを、互いに係合させるとき、あるいは係合を解除するときには、可撓性を有した変形片61を撓ませて弾性変形させる。したがって、レバー40Bとリセプタクルハウジング21、あるいはレバー40Bとプラグハウジング31との接触圧を軽減させた状態で双方の係合動作・解除動作を行える。これにより、レバー40Bとリセプタクルハウジング21、あるいはレバー40Bとプラグハウジング31との係合部分の摩耗や、異物の発生を防ぐことができる。
【0039】
また、レバー40Bを倒した状態のままプラグハウジング31に仮固定することで、プラグコネクタ30をリセプタクルコネクタ20に嵌合するまでの間、レバー40Bが折れたり、係合部60とプラグハウジング31との隙間に配線等が挟み込まれるのを防止できる。特に、プラグハウジング31の突条65が、レバー40Bの変形片61のスリット61cに入り込むことで、係合部60とプラグハウジング31との隙間に配線等が入り込むのを確実に防止できる。
【0040】
図7に示したように、プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21に嵌合させ、レバー40Bを倒して係合部60によりリセプタクルハウジング21に係合させた状態(以下、この状態を本固定と称することがある。)では、レバー40Bは、プラグハウジング31の上面31aに平行になる。一方、図5に示したように、レバー40Bをプラグハウジング31に仮固定した状態では、レバー40Bは、プラグハウジング31の上面31aに対し、さらに倒された状態とされ、一端部40a側から他端部40b側に向けて補強ビーム部43が徐々に低くなるよう傾斜する。
リセプタクルハウジング21を本固定した状態においては、第二係合爪64と仮係合突起66とは互いに係合していない。したがって、プラグコネクタ30をリセプタクルコネクタ20から引き抜くに際してレバー40Bを本固定状態から起こすときには、変形片61を弾性変形させて第一係合爪62とフード26Bの本係合突起63との係合のみを解除すれば良く、容易かつ軽い操作力でレバー40Bのリセプタクルハウジング21への係合を解除できる。
【0041】
レバー40Bをプラグハウジング31に仮固定した状態では、レバー40Bは、リセプタクルハウジング21に本固定した状態よりも、さらにプラグハウジング31の下方に向けて押し込まれた状態である。したがって、このままの状態では、レバー40Bがフード26Bと干渉するので、プラグハウジング31とリセプタクルハウジング21とを完全に嵌合させることができず、誤挿入を防止できる。
プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21のフード26Bに挿入する前の段階では、前記したように、レバー40Bは、レバー40Bを倒した状態のまま仮固定されている。プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21のフード26に挿入するに際しては、レバー40Bを必ず引き起こす必要がある。レバー40Bを引き起こすときには、作業者は、変形片61の上端部61bを、レバー40Bの一端部40aから離間する方向に押圧して、レバー40Bのプラグハウジング31への仮係止を解除する必要がある。この、変形片61の上端部61bを押圧するという動作により、作業者は、変形片61によるプラグハウジング31への仮係合を解除することを認識する。したがって、レバー40Bを確実に引き起こしてから、プラグハウジング31をリセプタクルハウジング21のフード26Bに挿入するという手順を確実に認識しながら作業を進めることができる。その結果、作業を正確に進めることができ、プラグハウジング31がリセプタクルハウジング21のコンタクト22に干渉してコンタクト22が変形する等の問題が生じるのを回避できる。
【0042】
なお、上記実施の形態で示した構成は一例に過ぎず、具体的な構造等は、上記実施の形態で示した以外に変更することが可能である。例えば、変形片61、第一係合爪62、第二係合爪64を、レバー40Bの他端部40bにおいて、一端部40aから離間した側の側面に設けられているが、これを、レバー40Bの側面に設けても良い。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施の形態における電気コネクタ組立体を、プラグコネクタ側から見た斜視図である。
【図2】本実施の形態における電気コネクタ組立体を、リセプタクルコネクタ側から見た斜視図である。
【図3】本実施の形態における電気コネクタ組立体の正面図である。
【図4】リセプタクルコネクタの斜視図である。
【図5】(a)はプラグコネクタの左側面図、(b)はプラグコネクタの正面図、(c)はプラグコネクタの右側面図である。
【図6】(a)はレバーの斜視図、(b)はレバーを起こした状態におけるプラグコネクタを示す斜視図である。
【図7】レバーを本係合させた状態のプラグコネクタの一部分を、図5(c)のA−A断面で断面視した図である。
【図8】レバーを仮係合させた状態のプラグコネクタの一部分を、図5(c)のB−B断面で断面視した図である。
【符号の説明】
【0044】
10…コネクタ(電気コネクタ組立体)、20…リセプタクルコネクタ、21…リセプタクルハウジング(第一のハウジング)、22…コンタクト(第一のコンタクト)、25…嵌合部、26A、26B、26C…フード、27A、27B、27C…受容空間、30、30A、30B、30C…プラグコネクタ、31…プラグハウジング(第二のハウジング)、40、40A、40B、40C…レバー、40a…一端部、40b…他端部、41…支軸、60…係合部、61…変形片、61c…スリット、62…第一係合爪(第一の係合部)、63…本係合突起、64…第二係合爪(第二の係合部)、65…突条、66…仮係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気コネクタ組立体であって、
第一のハウジングと、
前記第一のハウジングに嵌合する第二のハウジングと、
前記第一のハウジングに保持される第一のコンタクトと、
前記第二のハウジングに保持され、前記第一のコンタクトに接続される第二のコンタクトと、を備え、
前記第一のハウジングは、前記第二のハウジングを受容する空間を形成するフードを備え、
前記第二のハウジングは、前記フード内への前記第二のハウジングの挿入力を軽減するため、支軸を介して回動自在に設けられたレバーを備え、
前記レバーは、前記第二のハウジングを前記第一のハウジングに嵌合させた状態で前記フードの内壁面に対向する位置に、前記内壁面に対して接近・離間する方向に変形可能な可撓性を有した変形片を有し、
前記変形片に、前記第二のハウジングを前記第一のハウジングに嵌合させたときに、前記フードに係合する第一の係合部と、前記第二のハウジングに係合する第二の係合部と、を備えることを特徴とする電気コネクタ組立体。
【請求項2】
前記変形片は、前記第二のハウジングを前記第一のハウジングに嵌合させたときに、前記第一の係合部のみが前記フードに係合し、前記第二の係合部は、前記第二のハウジングと非係合状態とされることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項3】
前記レバーは、前記第一の係合部が前記フードに係合する状態と、前記第二の係合部が前記第二のハウジングに係合する状態とで、前記第二のハウジングに対する傾斜角度が互いに異なることを特徴とする請求項2に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項4】
前記変形片にスリットが形成されるとともに、前記第二のハウジングの側面に、前記スリットに挿入可能な突条が形成され、前記第二の係合部を前記第二のハウジングに係合させた状態で、前記スリットに前記突条が挿入されることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項5】
前記第二の係合部は、前記変形片の幅方向の中央部に配置され、前記第一の係合部は、前記第二の係合部の両側の二か所に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項6】
前記第一の係合部は、前記変形片において、前記フードの内壁面に対向する側とその反対側のいずれか一方の面に前記第一の係合部が形成され、他方の面に前記第二の係合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−108791(P2010−108791A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280515(P2008−280515)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】