説明

電気コネクタ

【課題】プラグ受け部22が横に移動でき、しかもプラグ受け部22の幅方向の短い寸法で全体を構成できる電気コネクタ10を提供する。
【解決手段】導電性と弾性を有する板材からなる電気コネクタ10であって、基板の表面に重ねて裁置して半田付け固定される半田付け部14と、この半田付け部14の一端側を上方に向けて板厚方向に折り曲げた立ち上げ部16と、さらにその上側を略U字状または略コ字状に板厚方向に折り曲げた弾性部18と、その先端側に基板の上方を開口側とする略U字状または略コ字状に幅方向の両側を板厚方向に折り曲げて対向する両面に内側に凸なる接点部24を設けたプラグ受け部22とで構成する。立ち上げ部16と弾性部18の捩れおよび弾性部18の弾性変形により、プラグ受け部22の接点部24が横方向に移動し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の電気接続に用いられ、プラグ端子が挿入されて電気的接続がなされる小型の電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器にバッテリーパック等を着脱自在に構成するために、電子機器とバッテリーパック等を電気的に接続および分離可能とする電気コネクタが汎用されている。その技術の一例として、特開2006−19296号公報(以下、特許文献1と称する。)に示されたものがある。この特許文献1に示された技術は、プラグ端子が挿入されるプラグ受け部が、ばね部材を介してベース部材に板金で一体に構成されたものである。その構造をより詳細に説明すると、プラグ受け部の幅方向の両外側で略U字状に板厚方向に折り曲げられ、さらにその先端がさらに幅方向の外側で略U字状に板厚方向に折り曲げられてばね部材が形成され、このばね部材の先端側の下端部が板厚方向に折り曲げられてベース部材が形成されている。このベース部材は、半田付けにより基板に固定される。かかる構成にあっては、ばね部材が板厚方向に弾性変形するとともに略U字状の折り曲げ部の曲げが変形して、プラグ受け部が両側方の横方向に容易に移動できる。そこで、プラグ端子が挿入または引き抜かれる際に、プラグ端子の相対的な横方向の位置ずれがあってプラグ受け部に横方向への力が加えられても、これがばね部材の弾性変形により吸収され、基板に固定されるベース部材に横方向への大きな力が作用しない。もって、ベース部材が基板から剥離される等の事故を生ずることがない。
【特許文献1】特開2006−19296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
小型の携帯電話機等の電子機器にあっては、かかる電気コネクタを複数個ほど横に並べて配設される場合が多い。すると、特許文献1に記載された従来技術にあっては、プラグ受け部の幅方向の両外側にばね部材を配設しているので、電気コネクタ全体の幅方向の寸法が、プラグ受け部の幅方向の寸法よりかなり大きくならざるを得ない。そこで、特許文献1記載の技術にあっては、電気コネクタを狭いピッチで配列するのに適したものでない。これは、携帯電話等の小型化が強く要請される電子機器にあっては、小型化を阻害する要因ともなる。
【0004】
本発明は、上述のごとき従来技術の事情に鑑みてなされたもので、プラグ受け部の幅方向の短い寸法で全体を構成できる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、本発明の電気コネクタは、導電性と弾性を有する板材からなり、基板に半田付けにより固定され、プラグ端子が挿入されて電気的接続される電気コネクタであって、前記基板の表面に重ねて裁置して半田付け固定される半田付け部と、この半田付け部の一端側を前記基板の上方に向けて板厚方向に折り曲げて形成される立ち上げ部と、さらに前記立ち上げ部の上側を略U字状または略コ字状に板厚方向に折り曲げて形成される弾性部と、この弾性部の先端側に前記基板の上方を開口側とするように略U字状または略コ字状に幅方向の両側を板厚方向に折り曲げるとともにその対向する両面に内側に凸なる接点部を設けて形成されるプラグ受け部とを備え、前記立ち上げ部および前記弾性部の捩れと弾性変形で前記プラグ受け部の前記接点部が横に移動できるように構成されている。
【0006】
また、導電性と弾性を有する板材からなり、基板に半田付けにより固定され、プラグ端子が挿入されて電気的接続される電気コネクタであって、前記基板の表面に重ねて裁置して半田付け固定される半田付け部と、この半田付け部の一端側を前記基板の上方に向けて板厚方向に折り曲げて形成される立ち上げ部と、さらに前記立ち上げ部の上側を略U字状または略コ字状に板厚方向に折り曲げて形成される弾性部と、この弾性部の先端側に前記基板と平行方向を開口側とするように略U字状または略コ字状に幅方向の両側を板厚方向に折り曲げるとともにその対向する両面に内側に凸なる接点部を設けて形成されるプラグ受け部とを備え、前記立ち上げ部および前記弾性部の捩れと弾性変形で前記プラグ受け部の前記接点部が横に移動できるように構成しても良い。
【0007】
そして、前記弾性部の先端側に前記基板と平行方向に向けた第2の弾性部を形成し、その先端側に前記プラグ受け部を形成して構成することもできる。
【0008】
さらに、前記弾性部の一部と前記第2の弾性部を側方から見て略S字状に折り曲げて構成しても良い。
【0009】
また、前記弾性部の先端側に幅方向の寸法が狭い前記第2の弾性部を形成して構成しても良い。
【0010】
そして、前記弾性部をその幅方向の中央に長さ方向のスリットを設けて2本の弾性片に形成して構成することもできる。
【0011】
また、前記立ち上げ部から前記弾性部に跨り、その幅方向の中央に長さ方向のスリットを設けて2本の弾性片に形成して構成することもできる。
【0012】
そして、前記立ち上げ部の上側を前記半田付け部側に折り曲げて前記弾性部を形成して構成しても良い。
【0013】
さらに、前記半田付け部の他端側に上方に凸なる突起部を形成し、前記プラグ受け部の下方への弾性変位で前記略U字状または略コ字状の底部が前記突起部に当接して前記下方への弾性変位を規制するように構成することもできる。
【0014】
また、前記半田付け部の他端側に上方に凸なる突起部を形成し、前記プラグ受け部の先端側の一部を前記他端側に伸ばしてこれを下方に折り曲げて係合部を形成し、前記プラグ受け部の前記半田付け部の一端側への弾性変位で前記係合部が前記突起部に当接して前記半田付け部の一端側への弾性変位を規制するように構成することもできる。
【0015】
そして、前記プラグ受け部の先端側を前記基板と平行方向に伸ばして、前記プラグ受け部の下側で前記基板の上方を開口側とするように略U字状または略コ字状に幅方向の両側を板厚方向に折り曲げて前記プラグ受け部の両側外方に規制部を形成するとともに、この規制部の対向する内面を前記プラグ受け部の両側外面に接しまたは隙間を設けて配設するようになし、前記規制部により前記プラグ受け部の前記接点部の開きを規制するように構成しても良い。
【0016】
また、前記弾性部の先端側に前記基板と平行方向で前記半田付け部の他端側に向けて前記半田付け部の上方に達する延設部を形成し、前記半田付け部の前記他端側に上方に凸なる突起部を形成し、前記プラグ受け部の下方への弾性変位で前記延設部が前記突起部に当接して前記下方への弾性変位を規制するように構成することもできる。
【0017】
また、前記弾性部の先端側に前記基板と平行方向で前記半田付け部の他端側に向けて前記半田付け部の上方に達する延設部を形成し、前記延設部の先端側の一部をさらに伸ばしてこれを下方に折り曲げて係合部を形成し、前記半田付け部の前記他端側に上方に凸なる突起部を形成し、前記プラグ受け部の前記半田付け部の一端側への弾性変位で前記係合部が前記突起部に当接して前記半田付け部の一端側への弾性変位を規制するように構成することもできる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の電気コネクタにあっては、半田付け部とプラグ受け部を一体に結ぶ立ち上げ部および弾性部の捩れと弾性変形により、プラグ受け部の接点部が横方向に容易に変位し得る。もって、プラグ受け部に対して挿入されたプラグ端子の相対的な横方向の位置ずれが吸収される。そして、本発明の電気コネクタは、正面から見て、プラグ受け部の後ろ側に立ち上げ部および弾性部が全て配設されていて、プラグ受け部の幅方向の両外側には何も設けられていないので、全体の幅方向の寸法が狭くて足りる。そこで、複数個の電気コネクタを基板に横に並べて配設する場合に、配設するピッチを小さくでき、それだけ小型化に好適である。また、プラグ受け部が基板の上方を開口側とする略U字状または略コ字状に形成されているので、基板に対して上方からプラグ端子を挿入する電気コネクタに好適である。
【0019】
請求項2記載の電気コネクタにあっては、請求項1と同様に、電気コネクタの幅方向の寸法を狭くすることができる。また、プラグ受け部が基板と平行方向を開口側とする略U字状または略コ字状に形成されているので、基板に対して平行方向にプラグ端子を挿入する電気コネクタに好適である。
【0020】
請求項3記載の電気コネクタにあっては、弾性部の先端側に基板と平行方向に向けて第2の弾性部を形成して、その先端側にプラグ受け部を形成したので、立ち上げ部と弾性部および第2の弾性部と、捩れおよび弾性変形し得る部分がより長く形成され、プラグ受け部の接点部が横方向により一層容易に変位し得る。
【0021】
請求項4記載の電気コネクタにあっては、弾性部の一部と第2の弾性部を側方から見て略S字状に折り曲げて形成したので、捩れおよび弾性変形し得る部分がより長く形成され、プラグ受け部の接点部が横方向により一層容易に変位し得る。
【0022】
請求項5記載の電気コネクタにあっては、弾性部の先端側に幅方向の寸法が狭い第2の弾性部を形成したので、この第2の弾性部の捩れと弾性変形により、プラグ受け部の接点部が横方向に容易に変位し得る。
【0023】
請求項6記載の電気コネクタにあっては、弾性部をその幅方向の中央に長さ方向のスリットを設けて2本の弾性片に形成したので、弾性部はそれぞれの弾性片毎に捩れと弾性変形が可能であり、プラグ受け部の接点部が容易に横方向に変位し得る。
【0024】
請求項7記載の電気コネクタにあっては、立ち上げ部から弾性部に跨り、その幅方向の中央に長さ方向のスリットを設けて2本の弾性片に形成したので、それぞれに捩れと弾性変形できる部分がより一層長くなり、プラグ受け部の接点部が容易に横方向に変位し得る。
【0025】
請求項8および12記載の電気コネクタにあっては、立ち上げ部の上側を半田付け部側に折り曲げて弾性部を形成したので、弾性部が半田付け部側にあり、奥行きの短い電気コネクタを構成できる。
【0026】
請求項9記載の電気コネクタにあっては、前記半田付け部の他端側に上方に凸なる突起部を形成したので、プラグ受け部の下方への弾性変位で略U字状または略コ字状の底部が突起部に当接して、下方への弾性変位が規制され、過度の弾性変形による塑性変形を生ずることがない。
【0027】
請求項10記載の電気コネクタにあっては、半田付け部の他端側に上方に凸なる突起部を形成し、プラグ受け部の先端側の一部を他端側に伸ばしてこれを下方に折り曲げて係合部を設けたので、プラグ受け部の半田付け部の一端側への弾性変位で係合部が突起部に当接して、半田付け部の一端側への弾性変位が規制され、過度の弾性変形による塑性変形を生ずることがない。
【0028】
請求項11記載の電気コネクタにあっては、プラグ受け部の両外側に接しまたは隙間を設けて規制部を形成したので、プラグ受け部の略U字状または略コ字状の開きが規制部に当接することで規制され、過度の弾性変形によりプラグ受け部の略U字状または略コ字状に塑性変形を生ずることがない。
【0029】
請求項13記載の電気コネクタにあっては、弾性部の先端側に基板と平行方向で半田付け部の他端側に向かって半田付け部の上方に達する延設部を形成し、半田付け部の他端側に上方に凸なる突起部を形成したので、プラグ受け部の下方への弾性変位に伴い延設部も下方に変位して突起部に当接し、下方への弾性変位が規制される。
【0030】
請求項14記載の電気コネクタにあっては、弾性部の先端側に基板と平行方向で半田付け部の他端側に向かって半田付け部の上方に達する延設部を形成し、その先端側の一部をさらに伸ばして下方に折り曲げて係合部を形成し、半田付け部の他端側に上方に凸なる突起部を形成したので、プラグ受け部の半田付け部の一端側への弾性変位に伴い係合部も一端側に変位して突起部に当接し、一端側への弾性変位が規制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の第1実施例を、図1ないし図10を参照して説明する。図1は、本発明の電気コネクタの第1実施例の前方斜め上方から見た外観斜視図である。図2は、図1の電気コネクタの後方斜め下方から見た外観斜視図である。図3は、図1の電気コネクタの三面図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は右側面図である。図4は、図1の電気コネクタを3個ほど横に並べて基板に配設して構成したコネクタユニットの外観斜視図である。図5は、図4のコネクタユニットを実装したバッテリーパックとこれに挿入するプラグ端子ユニットの外観斜視図である。図6は、コネクタユニットにプラグ端子ユニットが挿入された状態でケースが一部切り欠かれた外観斜視図である。図7は、電気コネクタに対してこれに挿入されるプラグ端子が図面で左側にずれた場合に、プラグ受け部が左側に変位する動作を説明するための図である。図8は、電気コネクタに対してこれに挿入されるプラグ端子が図面で右側にずれた場合に、プラグ受け部が右側に変位する動作を説明するための図である。図9は、プラグ受け部の下方への過度の弾性変位が規制されることを示す図である。図10は、プラグ受け部の半田付け部の一端側への過度の弾性変位が規制されることを示す図である。
【0032】
まず、図1ないし図3に示すごとく、本発明の電気コネクタ10の第1実施例にあっては、導電性と弾性を有する板材からなり、後述する基板12の表面に重ねて裁置されて半田付けにより固定される半田付け部14の一端側(正面から見て後側)から基板14の表面にほぼ垂直に上方に向けて板厚方向に折り曲げられて立ち上げ部16が形成され、さらにその上側で半田付け部の他端側(正面から見て前側)に向けて板厚方向に折り曲げられて弾性部18が形成される。この弾性部18は、側方から見て、略S字状に板厚方向に折り曲げられ、その先端が再び略前方に向くようになされるとともに幅方向の寸法が狭くされて基板12とほぼ平行な第2の弾性部20が形成される(なお、この第1実施例では、第2の弾性部20の長さは短い)。そしてさらに、第2の弾性部20の先端に上方を開口部とするように略U字状または略コ字状に幅方向の両側が板厚方向に折り曲げられたプラグ受け部22が形成される。このプラグ受け部22には、対向する両側の面に内側に凸なる接点部24、24がそれぞれに設けられる。また、プラグ受け部22の上縁および前縁は外方に向けて拡がる曲面に形成される。さらに、立ち上げ部16の上側部分および弾性部18に跨り、幅方向の中央に長さ方向のスリットが設けられて、2本の平行な弾性片18a、18bとされている。そしてまた、半田付け部14の他端側に上方に凸なる突起部26が形成され、プラグ受け部22の前端の一部をさらに前方に伸ばした部分が下方に板厚方向に折り曲げられて係合部28が形成されている。なお、図3(c)の側面図に示されるように、外部から力が加わらない自然状態で、プラグ受け部22の底部と突起部26の間にはある程度の隙間が設けられるように形成され、また係合部28は突起部26より前方にあるように形成される。
【0033】
かかる構成の第1実施例において、図4に示すごとく、3個の電気コネクタ10、10、10を基板12に横に並べて、半田付け部14、14、14がそれぞれに半田付けにより固定されて、コネクタユニット30が構成される。図4において、符号32は、電気コネクタ10、10、10を覆う絶縁樹脂からなるカバーであり、プラグ受け部22、22、22に臨んで外方からプラグ端子38、38、38が挿入できる孔が開口されていることは勿論である。そして、このコネクタユニット30が、図5に示すごとく、一例としてバッテリーパック34に実装され、このバッテリーパック34が携帯電話機等の電気機器に装着および取り外しできるように構成され、装着状態で電子機器に設けたプラグ端子ユニット36のプラグ端子38、38、38が、コネクタユニット30の電気コネクタ10、10、10のプラグ受け部22、22、22にそれぞれ挿入できるようになされる。
【0034】
この電気コネクタ10のプラグ受け部22に、プラグユニット36のプラグ端子38をそれぞれに挿入する際に、互いの相対位置が正しければ、プラグ受け部22は略U字状または略コ字状の開きが少し開くように弾性変形してプラグ端子38の挿入を許容する。特に、プラグ受け部22を横方向に移動させるような力は作用せず、何ら問題はない。しかしながら、実際の装着にあっては、プラグ端子38に対してバッテリーパック34が所定の装着位置で必ずしも装着されず、位置がずれた状態で装着される場合が多々ある。かかる位置がずれた状態での装着にあっては、ずれに応じてプラグ受け部22が弾性変位してずれを吸収する必要がある。なぜならば、ずれを吸収しないと、ずれによる力が半田付け部14と基板12との間に作用して、半田付け部14が基板12から剥離等して確実な電気的接続が維持し得ない虞があるためである。
【0035】
そこで、本発明の電気コネクタ10において、半田付け部14に対してプラグ受け部22の接点部24が、プラグ端子38のずれに応じて弾性変位する動作を図7および図8を参照して説明する。まず、図7において、電気コネクタ10に対してプラグ端子38が図面で左側にずれている場合につき説明する。ずれを吸収するには、正面から見て、左側の接点部24が、半田付け部14に対して左側に相対的に変位すれば良い。そこで、弾性部18において、図7で右側の弾性片18bは先端側が少し前方かつ上方位置となるように弾性変位するとともに左側の弾性片18aは先端側が少し後方かつ下方位置となるように弾性変位する。また、図7(a)で紙面に垂直方向を軸として、立ち上げ部16全体が時計回りに少し捩れるとともに、弾性部18の前方に向けて伸びる部分が全体として、図7(b)で紙面に垂直方向を軸として反時計方向に少し捻れ、さらに弾性部18の側方から見て略S字状の部分が全体として図7(a)で紙面に垂直方向を軸として少し時計回りに捻れ、そしてさらに第2の弾性部20が図7(b)で紙面に垂直方向を軸として反時計方向に捩れる。もって、立ち上がり部16と弾性部18および第2の弾性部20の捩れと弾性部18の伸縮による弾性変形により、プラグ受け部22が半田付け部14に対して相対的に左側方向に移動でき、プラグ端子38のずれが容易に吸収され得る。
【0036】
また、図8において、電気コネクタ10に対してプラグ端子38が図面で右側にずれている場合につき説明する。ずれを吸収するには、図7で説明したのと同様に、正面から見て、右側の接点部24が、半田付け部14に対して右側に相対的に変位すれば良い。そこで、弾性部18において、図8で右側の弾性片18bは先端側が少し後方かつ下方位置となるように弾性変位するとともに左側の弾性片18aは先端側が少し前方かつ上方位置となるように弾性変位する。また、図8(a)で紙面に垂直方向を軸として、立ち上げ部16全体が反時計回りに少し捩れるとともに、弾性部18の前方に向けて伸びる部分が全体として、図8(b)で紙面に垂直方向を軸として時計方向に少し捻れ、さらに弾性部18の側方から見て略S字状の部分が全体として図8(a)で紙面に垂直方向を軸として少し反時計回りに捻れ、そしてさらに第2の弾性部20が図8(b)で紙面に垂直方向を軸として時計方向に捩れる。もって、立ち上がり部16と弾性部18および第2の弾性部20の捩れと弾性部18の伸縮による弾性変形により、プラグ受け部22が半田付け部14に対して相対的に右側方向に移動でき、プラグ端子38のずれが容易に吸収され得る。
【0037】
さらに、プラグ端子38の挿入の際に、図9に示すごとく、プラグ受け部22が基板12に対して垂直方向に下方に向かう過大な力が作用すると、プラグ受け部22は下方に弾性変位して,その底部が突起部26に当接してそれ以上の弾性変位が規制される。もって、過度の弾性変位による塑性変形を生ずることがない。また、プラグ端子38の挿入の際に、図10に示すごとく、プラグ受け部22に基板12と略平行で後方に向かう過大な力が作用すると、プラグ受け部22は後方に弾性変位するが、その先端側に設けた係合部28が突起部26に当接してそれ以上の弾性変位が規制され、過度の弾性変位による塑性変形を生ずることがない。
【0038】
本発明の電気コネクタ10は、以上説明したごとく構成されるとともに動作しており、基板12に対して上方から略垂直方向および斜め前方からプラグ端子38が挿入されるものに好適である。そして、半田付け部14に対してプラグ受け部22を横に移動し得るようにする構造が、正面から見て、プラグ受け部22の後方に全て配設されいて、幅方向の両外側に張り出して配設されていないので、幅方向の寸法を狭く構成することができる。そこで、複数個の電気コネクタ10、10、10を基板12に横に並べて配列する場合に、その配列ピッチが狭くて良い。したがって、コネクタユニット30の幅方向の寸法が短くて足り、小型化に好適である。
【0039】
次に、本発明の第2実施例を図11を参照して説明する。図11は、本発明の電気コネクタの第2実施例の前方斜め上方から見た外観斜視図である。図11において、図1ないし図10と同じ部材には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。図11において、第2実施例の電気コネクタ40が、第1実施例と相違するところは、立ち上げ部16からその上側で前方に向けて板厚方向に折り曲げられて形成される弾性部42が、幅の狭い1本の弾性片で形成された点にある。この第2実施例にあっては、主として弾性部42の捩れによりプラグ受け部22の横方向への弾性変位がなされる。
【0040】
さらに、本発明の第3実施例を図12を参照して説明する。図12は、本発明の電気コネクタの第3実施例の前方斜め上方から見た外観斜視図である。図12において、図1ないし図10と同じ部材には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。図12において、第3実施例の電気コネクタ50にあっては、立ち上げ部16の上側で略U字状に板厚方向に折り曲げられて弾性部52が形成され、立ち上げ部16の上部の一部から弾性部52に跨り幅方向の中央にスリットが設けられて、弾性部52は2本の平行な弾性片52a、52bとされている。さらに、これらの2本の弾性片52a、52bの立ち下がる途中の部分から、前方を開口側とする略U字状または略コ字状のプラグ受け部54が形成され、対向する両面に内側に凸なる接点部24、24が形成される。さらに、弾性部52の先端はプラグ受け部54の下側で前方に向けて板厚方向に折り曲げられて延設部が形成され、その延設部の半田付け部14と略平行に形成された部分で、幅方向の両側を上方に板厚方向で折り曲げて上方を開口側とする略U字状または略コ字状の規制部56が形成される。この規制部56の対向する両側の内面は、プラグ受け部54の対向する両面の外側に接しまたは適宜な隙間が設けられるように形成される。さらに、規制部56の先端側の一部を前方にさらに伸ばして下方に向けて折り曲げて係合部28が形成される。
【0041】
かかる構成からなる本発明の第3実施例の電気コネクタ50にあっては、基板12に対して略平行方向にプラグ端子38が挿入されるものに好適である。そして、プラグ端子38の相対的な横方向のずれに対して、弾性片52a、52bが捩れることでプラグ受け部54の略U字状または略コ字状が開いて接点部24が横方向にずれる。もって、挿入されたプラグ端子38の相対的な位置ずれが吸収され得る。しかも、プラグ受け部54の略U字状等の弾性変形による開きが、規制部56により適宜に規制され、過度の開きによる塑性変形が生ずることがない。
【0042】
なお、上記実施例において、立ち上げ部16の上側を半田付け部14側に折り曲げて弾性部18、42、52を形成しているが、かかる構成に限られず、電気コネクタの奥行き寸法が長くなるが、立ち上げ部16の上側を半田付け部14と反対側に折り曲げて弾性部18、42、52を形成しても良い。また、コネクタユニット30は、基板12に複数個の本発明の電気コネクタ10が配列されれば良く、3個に限られないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の電気コネクタの第1実施例の前方斜め上方から見た外観斜視図である。
【図2】図1の電気コネクタの後方斜め下方から見た外観斜視図である。
【図3】図1の電気コネクタの三面図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は右側面図である。
【図4】図1の電気コネクタを3個ほど横に並べて基板に配設して構成したコネクタユニットの外観斜視図である。
【図5】図4のコネクタユニットを実装したバッテリーパックとこれに挿入するプラグ端子ユニットの外観斜視図である。
【図6】コネクタユニットにプラグ端子ユニットが挿入された状態でケースが一部切り欠かれた外観斜視図である。
【図7】電気コネクタに対してこれに挿入されるプラグ端子が図面で左側にずれた場合に、プラグ受け部が左側に変位する動作を説明するための図である。
【図8】電気コネクタに対してこれに挿入されるプラグ端子が図面で右側にずれた場合に、プラグ受け部が右側に変位する動作を説明するための図である。
【図9】プラグ受け部の下方への過度の弾性変位が規制されることを示す図である。
【図10】プラグ受け部の半田付け部の一端側への過度の弾性変位が規制されることを示す図である。
【図11】本発明の電気コネクタの第2実施例の前方斜め上方から見た外観斜視図である。
【図12】本発明の電気コネクタの第3実施例の前方斜め上方から見た外観斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
10、40、50 電気コネクタ
12 基板
14 半田付け部
16 立ち上げ部
18、42、52 弾性部
18a、18b、52a、52b 弾性片
20 第2の弾性部
22、54 プラグ受け部
24 接点部
26 突起部
28 係合部
30 コネクタユニット
32 カバー
34 バッテリーパック
36 プラグ端子ユニット
38 プラグ端子
56 規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性と弾性を有する板材からなり、基板に半田付けにより固定され、プラグ端子が挿入されて電気的接続される電気コネクタであって、前記基板の表面に重ねて裁置して半田付け固定される半田付け部と、この半田付け部の一端側を前記基板の上方に向けて板厚方向に折り曲げて形成される立ち上げ部と、さらに前記立ち上げ部の上側を略U字状または略コ字状に板厚方向に折り曲げて形成される弾性部と、この弾性部の先端側に前記基板の上方を開口側とするように略U字状または略コ字状に幅方向の両側を板厚方向に折り曲げるとともにその対向する両面に内側に凸なる接点部を設けて形成されるプラグ受け部とを備え、前記立ち上げ部および前記弾性部の捩れと弾性変形で前記プラグ受け部の前記接点部が横に移動できるように構成したことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
導電性と弾性を有する板材からなり、基板に半田付けにより固定され、プラグ端子が挿入されて電気的接続される電気コネクタであって、前記基板の表面に重ねて裁置して半田付け固定される半田付け部と、この半田付け部の一端側を前記基板の上方に向けて板厚方向に折り曲げて形成される立ち上げ部と、さらに前記立ち上げ部の上側を略U字状または略コ字状に板厚方向に折り曲げて形成される弾性部と、この弾性部の先端側に前記基板と平行方向を開口側とするように略U字状または略コ字状に幅方向の両側を板厚方向に折り曲げるとともにその対向する両面に内側に凸なる接点部を設けて形成されるプラグ受け部とを備え、前記立ち上げ部および前記弾性部の捩れと弾性変形で前記プラグ受け部の前記接点部が横に移動できるように構成したことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項3】
請求項1記載の電気コネクタにおいて、前記弾性部の先端側に前記基板と平行方向に向けた第2の弾性部を形成し、その先端側に前記プラグ受け部を形成して構成したことを特徴とした電気コネクタ。
【請求項4】
請求項3記載の電気コネクタにおいて、前記弾性部の一部と前記第2の弾性部を側方から見て略S字状に折り曲げて構成したことを特徴とした電気コネクタ。
【請求項5】
請求項3記載の電気コネクタにおいて、前記弾性部の先端側に幅方向の寸法が狭い前記第2の弾性部を形成して構成したことを特徴とした電気コネクタ。
【請求項6】
請求項1ないし3記載のいずれかの電気コネクタにおいて、前記弾性部をその幅方向の中央に長さ方向のスリットを設けて2本の弾性片に形成して構成したことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項7】
請求項1ないし3記載のいずれかの電気コネクタにおいて、前記立ち上げ部から前記弾性部に跨り、その幅方向の中央に長さ方向のスリットを設けて2本の弾性片に形成して構成したことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項8】
請求項1記載の電気コネクタにおいて、前記立ち上げ部の上側を前記半田付け部側に折り曲げて前記弾性部を形成して構成したことを特徴とした電気コネクタ。
【請求項9】
請求項8記載の電気コネクタにおいて、前記半田付け部の他端側に上方に凸なる突起部を形成し、前記プラグ受け部の下方への弾性変位で前記略U字状または略コ字状の底部が前記突起部に当接して前記下方への弾性変位を規制するように構成したことを特徴とした電気コネクタ。
【請求項10】
請求項8記載の電気コネクタにおいて、前記半田付け部の他端側に上方に凸なる突起部を形成し、前記プラグ受け部の先端側の一部を前記他端側に伸ばしてこれを下方に折り曲げて係合部を形成し、前記プラグ受け部の前記半田付け部の一端側への弾性変位で前記係合部が前記突起部に当接して前記半田付け部の一端側への弾性変位を規制するように構成したことを特徴とした電気コネクタ。
【請求項11】
請求項2記載の電気コネクタにおいて、前記プラグ受け部の先端側を前記基板と平行方向に伸ばして、前記プラグ受け部の下側で前記基板の上方を開口側とするように略U字状または略コ字状に幅方向の両側を板厚方向に折り曲げて前記プラグ受け部の両側外方に規制部を形成するとともに、この規制部の対向する内面を前記プラグ受け部の両側外面に接しまたは隙間を設けて配設するようになし、前記規制部により前記プラグ受け部の前記接点部の開きを規制するように構成したことを特徴とした電気コネクタ。
【請求項12】
請求項2記載の電気コネクタにおいて、前記立ち上げ部の上側を前記半田付け部側に折り曲げて前記弾性部を形成して構成したことを特徴とした電気コネクタ。
【請求項13】
請求項12記載の電気コネクタにおいて、前記弾性部の先端側に前記基板と平行方向で前記半田付け部の他端側に向けて前記半田付け部の上方に達する延設部を形成し、前記半田付け部の前記他端側に上方に凸なる突起部を形成し、前記プラグ受け部の下方への弾性変位で前記延設部が前記突起部に当接して前記下方への弾性変位を規制するように構成したことを特徴とした電気コネクタ。
【請求項14】
請求項12記載の電気コネクタにおいて、前記弾性部の先端側に前記基板と平行方向で前記半田付け部の他端側に向けて前記半田付け部の上方に達する延設部を形成し、前記延設部の先端側の一部をさらに伸ばしてこれを下方に折り曲げて係合部を形成し、前記半田付け部の前記他端側に上方に凸なる突起部を形成し、前記プラグ受け部の前記半田付け部の一端側への弾性変位で前記係合部が前記突起部に当接して前記半田付け部の一端側への弾性変位を規制するように構成したことを特徴とした電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−305659(P2008−305659A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151573(P2007−151573)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】