説明

電気コネクタ

【課題】電気コネクタにおいて、配線基板側への水の浸入を完全に防止し、防水性能をさらに向上させる技術を提供する。
【解決手段】相手側コネクタを受け入れ可能な嵌合開口105を有する筒状の導電性のシェル101と、相手側コネクタの端子と電気接続可能な接点部106と、配線基板107上の端子と電気接続可能な基板実装部109とを含み、シェル101の内側に配置される複数の端子片102と、複数の端子片102を支持し、シェル101の嵌合開口105の反対側を塞ぐように固着された絶縁性のハウジング103と、ハウジング103の外周の少なくとも一部と、複数の端子片102の基板実装部109とを覆うように、ハウジング103に固着された防水ゴム104と、を備えて電気コネクタ100を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関し、特に、携帯電話機、タブレット型パーソナルコンピュータなどの電子機器に使用可能なインターフェイス用の電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、パーソナルコンピュータ等の電子機器は一般的に水に弱く、防水対策を施すことが望まれる。従来の電子機器では、例えば、外部連絡可能な開口部を、シリコンゴムの蓋で閉じる等といった方法で防水対策がなされていた。
【0003】
しかしながら、蓋を付け忘れる、或いは、不完全な状態で蓋を取り付けることにより、電子機器に水が浸入してしまう危険がある。水の浸入を想定し、電気コネクタ自体を防水するために、例えば、電気コネクタを構成するコンタクト端子やこれを内包するシェルを、ハウジングを形成し得る樹脂によって一体成形することも考えられる。
【0004】
携帯電話機等の電子機器に使用される電気コネクタに係る防水対策として、例えば、特許文献1(特開2009−176734号公報)に記載された技術がある。特許文献1記載の技術は、シール部材をハウジングの外側に実装し、そのシール部材により水の浸入を防ぐというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−176734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術における電気コネクタでは、特許文献1の図3等からも分かるように、コンタンクト端子を一体成形したハウジングを、シェルに対して組み付けているものである。また、ハウジングに対して、その外周に防水用のシール部材14を組み付けているため、ハウジング11とシール部材14との間には、水が浸入可能な隙間が生じる。さらに、コンタクト端子はハウジングと一体成形によって成形されているが、コンタクト端子の周囲にはわずかな隙間が生じており(樹脂から成るハウジングは、コンタクト端子に対して隙間を生じることなく接着することができない)、ここからも水が浸入してしまう。すなわち、特許文献1記載の技術に係る電気コネクタでは、(1)シール部材14とハウジング11との間、(2)コンタクト端子13を囲むハウジング11との間、の2箇所で水が浸入してしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、電気コネクタにおいて、配線基板側への水の浸入を完全に防止し、防水性能をさらに向上させる技術を提供することにある。
【0008】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
すなわち、本発明による電気コネクタは、相手側コネクタを受け入れ可能な嵌合開口を有する筒状の導電性のシェルと、前記相手側コネクタの端子と電気接続可能な接点部と、配線基板上の端子と電気接続可能な基板実装部とを含み、前記シェルの内側に配置される複数の端子片と、前記複数の端子片を支持し、前記シェルの前記嵌合開口の反対側を塞ぐように固着された絶縁性のハウジングと、前記ハウジングの外周の少なくとも一部と、前記複数の端子片の前記基板実装部とを覆うように、前記ハウジングに固着された防水部材と、を有することにより、防水性能をさらに向上させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。
(1)シェルと端子片とを一括成形することによってハウジングを形成し、ハウジングに対して防水部材をさらに設けているため、防水性能をさらに向上させることができる。
(2)嵌合開口側は、シェルのみ(すなわち、シェルの外周には何も設けていない)であるため、高さを最小にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態による電気コネクタの組み立て経過を示す斜視図である(端子片をシェルに挿入する前)。
【図2】本発明の一実施の形態による電気コネクタの組み立て経過を示す斜視図である(端子片を位置決めした状態)。
【図3】本発明の一実施の形態による電気コネクタの組み立て経過を示す斜視図である(ハウジングを一体成型した状態)。
【図4】本発明の一実施の形態による電気コネクタの組み立て経過を示す斜視図である(配線基板の端子と接続した状態)。
【図5】本発明の一実施の形態による電気コネクタの組み立て経過を示す斜視図である(図4と同じ状態の背面側から見た図)。
【図6】本発明の一実施の形態による電気コネクタの構造を示す斜視図である(防水ゴムを取り付けた状態)。
【図7】本発明の一実施の形態による電気コネクタの構造を示す斜視図である(図6と同じ状態の背面側から見た図)。
【図8】本発明の一実施の形態による電気コネクタの構造を示す側面図である(図6と同じ状態の側面側から見た図)。
【図9】本発明の一実施の形態による電気コネクタの構造を示す平面図である(図6と同じ状態の上面側から見た図)。
【図10】本発明の一実施の形態による電気コネクタを電子機器に組み込んだ状態を示す中心線断面図である(図9のA−A線における断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
図1〜図5は、本発明の一実施の形態による電気コネクタの組み立て経過を示す斜視図であり、図1は端子片をシェルに挿入する前、図2は端子片を位置決めした状態、図3はハウジングを一体成型した状態、図4は配線基板の端子と接続した状態、図5は図4と同じ状態の背面側から見た状態を示す。また、図6〜図9は、本発明の一実施の形態による電気コネクタの構造を示す図であり、図6は防水ゴムを取り付けて組み立てが完了した状態を示す斜視図、図7は図6と同じ状態の背面側から見た図、図8は図6と同じ状態の側面側から見た図、図9は図6と同じ状態の上面側から見た図である。
【0015】
まず、図1〜図9により、本発明の実施の形態による電気コネクタの構成の一例を説明する。
【0016】
本発明の一実施の形態による電気コネクタ100は、携帯電話機、タブレット型パーソナルコンピュータなどの電子機器(情報端末機)に使用可能なインターフェイス用のコネクタであって、特に、防水が必要とされる環境において適した電気コネクタである。
【0017】
図1,図3,図6等に示されるように、本実施の形態による電気コネクタ100は、例えば、筒状の導電性材料(金属等)からなるシェル(シ−ルド)101と、シェル101の内側に配置される複数の端子片102と、複数の端子片102を支持する絶縁性材料(液晶ポリマーなどの樹脂)からなるハウジング103と、ハウジング103の外側に設けられたゴム材料からなる防水ゴム104(防水部材)と、から構成される。シェル101は、相手側コネクタ(図示せず)を受け入れ可能な嵌合開口105(相手側コネクタの受入部)を有する。複数の端子片102のそれぞれは、相手側コネクタの端子と電気接続可能な接点部106と、配線基板107上の端子108と電気接続可能な基板実装部109とを有する。ハウジング103は、シェル101の嵌合開口105の反対側110を塞ぐようにシェル101に固着されている。防水ゴム104は、ハウジング103の外周の少なくとも一部と、端子片102の基板実装部109とを覆うように、ハウジング103に固着されている。
【0018】
シェル101は、例えば、ステンレス等の板状の導電性材料をプレス機などで打ち抜き、筒状に丸めて形成される。丸められた板状の導電性材料の縁同士はシェル101の中央部において互いに繋ぎ合わされ、略逆台形の形態となっている。また、シェル101は、嵌合開口105の反対側110に、延長し折り曲げられた2つのグランド片(シールド端子片)111を有し、グランド片111は、水平方向に延長した延長部分112と、垂直部分113と、配線基板107上のGND端子(接地端子)114に接続される基板実装部115とを有する。また、実装後、グランド片111は、配線基板107上のGND端子114と接続され、グランド片111は、防水ゴム104に覆われている。
【0019】
また、シェル101は、上面、下面及び側面に、電子機器の筐体に当接する、外側に突出した複数の凸部116を有する。また、シェル101は、上面に、相手側コネクタの嵌合時に当該相手側コネクタを固定するためのロック孔117を有する。
【0020】
複数の端子片102のそれぞれは、例えば、銅合金、ステンレスなどの板状の導電性材料をプレス機などで打ち抜き、折り曲げることによって形成される。端子片102は、相手側コネクタの端子と接触して電気接続される水平方向に延長した接点部106と、垂直部分118と、配線基板107上の端子108に接続される基板実装部109とを有する。なお、本実施の形態では、端子片102の個数は、一例として5個の場合を示しているが、これに限定されるものではなく、端子片102の個数は、いくつであってもよい。
【0021】
ハウジング103は、複数の端子片102をシェル101の内側に挿入して金型等で位置決めした後、絶縁性の樹脂などを金型に注入することにより、複数の端子片102及びシェル101とともに一括成型されて、嵌合開口105の反対側110に形成される。ハウジング103は、本体部123と、シェル101の内部で本体部123から嵌合開口105に向けて突出した嵌合突部127(図10参照)と、嵌合開口105と反対側に延びる一対の側壁部124を有する。この際、複数の端子102の接点部106は、嵌合突部127にてシェル101の内側において露出しているとともに、接点部106と垂直部分118の間の部分128は、ハウジング103に埋没している。また、複数の端子102の基板実装部109は、配線基板107上の端子108と接続するためにハウジング103から突出している。端子片102の基板実装部109と、グランド片111の基板実装部115とは、一対の側壁部124間に位置している。
【0022】
防水ゴム104は、ハウジング103の外側に、配線基板107と密着性があり、ある程度の弾性を有するゴムをアウトサートすることにより形成される。この際、複数の端子102の基板実装部109と、グランド片111の基板実装部115は、防水ゴム104によって覆われており、さらに、複数の端子102の露呈部126(ハウジングから露出している根元部分)と、グランド片111の露呈部125(ハウジングから露出している根元部分)は、防水ゴム104によって覆われている。また、防水ゴム104には、防水ゴム104の外周に沿って、水の浸入を防ぐための凸部119がハウジング103の外側(図10参照)に位置するように設けられている。この凸部119は、電気コネクタ100を電子機器に取り付ける際、電子機器の筐体120の取り付け部の内壁に圧入される。
【0023】
配線基板107としては、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)等のフレキシブルなプリント基板、またはPCB(Printed Circuit Board)等の通常のプリント基板を使用することが可能である。
【0024】
次に、図1〜図10により、本発明の実施の形態による電気コネクタの組み立て工程の一例を説明する。図10は、本発明の一実施の形態による電気コネクタを電子機器に組み込んだ状態を示す中心線断面図である(図9のA−A線断面図)。また、図10の左側が電子機器の筐体の外側、右側が筐体の内側である。
【0025】
まず、複数の端子片102が、シェル101の後ろ側(嵌合開口105の反対側110)からシェル101の内側に挿入され、金型によって所定の位置に位置決めされる(図1,図2)。
【0026】
その後、金型に樹脂が注入されることにより、複数の端子片102及びシェル101とともに一括成形し、ハウジング103が形成される(図3)。
【0027】
そして、端子片102の基板実装部109を配線基板107上の端子108に接続し、グランド片111の基板実装部115を配線基板107上のGND端子114に接続し、配線基板107(例えば、フレキシブルな基板であるFPC)に実装する(図4,図5)。これらの接続には、例えば、半田付け等が用いられる。
【0028】
この状態(図4,図5)で、さらに、ハウジング103の後方側(実装部側)に防水ゴム104を成型(アウトサート)する(図6,図7,図8,図9)。このとき、端子片102の基板実装部109、グランド片111の基板実装部115、端子片102の露呈部126およびグランド片111の露呈部125は、防水ゴム104によって完全に覆われる。なお、各基板実装部109,115と各端子108,114との接点部分は、一対の側壁部124の間に設けられているため、ハウジングより軟質な防水ゴム104に外力が加えられたとしても、これらの接点部分に悪影響(例えば、基板実装部と端子との剥離など)を及ぼすおそれが無い。
【0029】
最後に、電子機器の筐体120の所定の取り付け位置に電気コネクタ100を取り付ける。電気コネクタ100の取り付けは、電子機器の筐体120の内側から圧入するか、もしくは、2分割した電子機器の筐体の上側と下側によって挟み込むことによって取り付けられる(図10)。このとき、防水ゴム104の凸部119は、電子機器の筐体120の取り付け部の内壁に圧入され、凸部119と内壁とが密着することで防水が実現される。なおこの際、凸部119が内側(ハウジング側)に向けて押しつぶされるように作用するが、凸部119がハウジング本体123の外周に位置するよう設けられているため、内壁に対して確実に密着される。また、筐体120と電気コネクタ100の間には、空間121、コネクタ取り付け空間122が存在する。
【0030】
図10に示されるように、筐体120は、筐体の外側(左側)ほど高さが低くなり薄くなっている。これに対応するように、電気コネクタも筐体の外側では、特に低背が求められる。
【0031】
上記のように構成することにより、本発明に係る電気コネクタ100では、(1)シェル101と端子片102とを一括成形することによってハウジング103を形成し、(2)ハウジング103に対して防水ゴム104をさらに成形しているため、防水性能を向上させることができる。
【0032】
すなわち、本発明に係る電気コネクタ100では、特許文献1(特開2009−176734号公報)に記載された電気コネクタにおける「(1)シール部材14とハウジング11との間」に相当するハウジング103と防水ゴム104との間は、別体からなる「ハウジング」と「防水ゴム」とを組み付けるのではなく、『ハウジング103に対して防水ゴム104を成形(アウトサート)』しているため、ハウジング103と防水ゴム104との間には、隙間が生じない。
【0033】
さらに、特許文献1に記載された電気コネクタにおける「(2)コンタクト端子13を囲むハウジング11との間」に相当する部分についても、『ハウジング103に対して防水ゴム104を成形(アウトサート)』しているため、端子片102の基板実装部109まで水が浸入するおそれは無い。
【0034】
また、本発明に係る電気コネクタ100は、嵌合開口105側は、シェル101のみ(すなわち、シェル101の外周には何も設けていない)であるため、高さを最小にすることができる。よって、携帯電話機等の電子機器の筐体が、外側ほどスリム化(低背化)している場合にも、その要求を満たすことができる(図10参照)。
【0035】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0036】
100 電気コネクタ
101 シェル
102 端子片
103 ハウジング
104 防水ゴム
105 嵌合開口
106 接点部
107 配線基板
108 配線基板上の端子
109 基板実装部
110 嵌合開口の反対側
111 グランド片
112 延長部分
113 垂直部分
114 GND端子
115 基板実装部
116 凸部
117 ロック孔
118 垂直部分
119 凸部
120 筐体
121 空間
122 コネクタ取り付け空間
123 (ハウジングの)本体部
124 側壁部
125 (グランド片の)露呈部
126 (端子の)露呈部
127 嵌合突部
128 (ハウジングに埋没する)部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタを受け入れ可能な嵌合開口を有する筒状の導電性のシェルと、
前記相手側コネクタの端子と電気接続可能な接点部と、配線基板上の端子と電気接続可能な基板実装部とを含み、前記シェルの内側に配置される複数の端子片と、
前記複数の端子片を支持し、前記シェルの前記嵌合開口の反対側を塞ぐように固着された絶縁性のハウジングと、
前記ハウジングの外周の少なくとも一部と、前記複数の端子片の前記基板実装部とを覆うように、前記ハウジングに固着された防水部材と、を有することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記シェル及び前記複数の端子片が金型で位置決めされ、前記金型に樹脂が注入されることにより一体成型されて構成されることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記防水部材は、前記複数の端子片の基板実装部と前記配線基板上の端子とが電気接続された後、前記ハウジングに対して防水部材を成型することにより構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記防水部材は、前記防水部材の外周に沿って、電子機器の筐体に圧入される凸部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記シェルは、前記嵌合開口の反対側にシールド端子片を有し、前記シールド端子片は、前記配線基板上のGND端子と接続され、かつ前記シールド端子片は、前記防水部材に覆われていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−54844(P2013−54844A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190605(P2011−190605)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】