説明

電気サーボブレーキを備えるブレーキシステム

ブレーキシステムが、サーボブレーキ(200)により駆動されマスターシリンダ(100)のピストン(110)を作動させるスラストロッド(130)を備える。このサーボブレーキ(200)は、液圧アクチュエータ(270)によりブレーキペダル(PF)の制御ロッド(230)にリンクされる。
サーボブレーキ(200)は、電気モータ(265)によりラックドライブ(260)を介して制御されるアクチュエータピストン(220)を備える。
液圧アクチュエータ(270)により境界画定されるシミュレータチャンバ(250)が、中間ピストン(240)によってそれぞれ境界画定された後方ボリューム(V1)および前方ボリューム(V2)に中間ピストン(240)によって下位分割される。
ダクト(L1)が、第1の電磁弁(EV1)により前方ボリューム(V2)にリンクされたダクト(L2)に後方ボリューム(V1)をリンクし、ダクト(L2)は、第2の電磁弁(EV2)によりタンク(115)にリンクされる。
ピストン(240)は、アクチュエータピストン(220)により押されることとなる当接部(132)を有するロッド(130)にリンクされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボブレーキにより駆動されてマスターシリンダのピストン(プライマリピストン)を作動させるスラストロッドを介してマスターシリンダに対して制御された態様で作用するサーボブレーキを備える電気サーボブレーキを備えるブレーキシステムに関する。このサーボブレーキは、液圧アクチュエータによりブレーキペダルの制御ロッドにリンクされる。
【背景技術】
【0002】
かかるブレーキシステムは、一般的に、および文献DE102007016864A1により知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、作用力/圧力特性または運動/圧力特性を調節し、サーボブレーキの特性を変更し、さらにブレーキペダルに対する作用とは無関係に作動機能を付加するために、ブレーキペダルとマスターシリンダとの間の分離制動を可能にする、サーボブレーキを備えるブレーキシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これを目的とし、本発明は、上述において規定されるタイプの電気サーボブレーキを備えるブレーキシステムにおいて、このサーボブレーキが、
電気モータによりラックドライブを介して制御されるアクチュエータピストンと、
液圧アクチュエータにより境界画定され、中間ピストンにより可変の後方ボリュームおよび前方ボリュームに下位分割される、シミュレータチャンバであり、
後方ボリュームが、液圧アクチュエータおよび中間ピストンにより境界画定され、
前方ボリュームが、シミュレータチャンバ内において中間ピストンにより境界画定される、シミュレータチャンバと、
第1の電磁弁を介して前方ボリュームにリンクされたダクトに後方ボリュームをリンクするダクトであり、前者のダクトが、第2の電磁弁によりタンクにリンクされ、
第1の電磁弁が、開位置において制御され、第1の電磁弁の非制御位置が、この閉位置であり、
第2の電磁弁が、閉位置において制御され、第2の電磁弁の非制御位置が、この開位置である、ダクトと
を備え、
中間ピストンが、アクチュエータピストンにより押されることとなる当接部を有するスラストロッドにリンクされ、
スラストロッドが、アクチュエータピストンとは無関係に中間ピストンにより押され得ることを特徴とする、ブレーキシステムに関する。
【0005】
電気サーボブレーキを備えるこのブレーキシステムにより、分離制動、換言すれば、ブレーキペダルに対する作用がマスターシリンダに直接的には伝達されず、サーボブレーキを介して伝達される制動が、可能となる。この制御は、平常作動においては切り離される。この制御は、緊急作動においては制御ロッドを介して管理され、液圧アクチュエータが、マスターシリンダのプライマリピストンに作用する。
【0006】
このブレーキシステムにより、電子制御によって作用力/圧力特性のみならず運動/圧力特性を調節することが可能となる。
【0007】
本発明によるブレーキシステムにより、ブレーキペダルを要さずに、サーボブレーキの特徴を変更し、プリファイリングプログラム、ACCプログラム、ABB−Hプログラムなどの作動機能を付加することが可能となる。
【0008】
別の有利な特徴によれば、第1の電磁弁の出力部のダクトが、ブレーキシミュレータにリンクされる。
【0009】
これにより、システムが完全に切り離されても、ブレーキ回路の応答を模倣した応答からドライバが恩恵を被ることが可能となる。
【0010】
別の特徴によれば、アクチュエータピストンは、スリーブからなり、このスリーブの外方表面は、シミュレータチャンバに部分的に重畳するアクチュエータピストンを並進的に案内および駆動するために、システムの軸に対して対角線上において対向し合う位置にラックを備える。
【0011】
この実施形態により、簡単にかつかさを殆ど増やさずに、サーボブレーキのハウジング内にラックドライブを組み込むことが可能となる。
【0012】
別の有利な特徴によれば、中間ピストンは、液圧アクチュエータの断面よりも大きな断面を有する。
【0013】
この断面の違いにより、ブレーキシステムがサーボブレーキの支援を伴わずに緊急モードにおいて作動している際に、作用力の減速が可能となる。
【0014】
別の有利な特徴によれば、サーボブレーキの本体が、前方部分および後方部分からなり、
実質的に円筒状の前方部分は、アセンブリリングを介してマスターシリンダのハウジングの後部と、ラックドライブの2つのピニオンと、ラックを支持するアクチュエータピストンとを受け、この前方部分は、伝動装置と、ラックドライブのモータと、当接部および戻しばねを有するスラストロッドの前方部分とをさらに備え、
後方部分は、スラストロッドの後方部分に装着された中間ピストンと、中間ピストンの戻しばねと、液圧アクチュエータおよびその戻しばねとを備える。
【0015】
別の有利な特徴によれば、後方部分は、2つのピースからなり、これらの2つのピースの中の前方ピースは、中間ピストンを受けるジャケットによりシミュレータチャンバを形成し、後方ピースは、液圧アクチュエータを収容し、液圧アクチュエータの戻しばねは、液圧アクチュエータと中間ピストンとの間に配置される。
【0016】
別の有利な特徴によれば、ブレーキシステムは、制御回路と、液圧アクチュエータと中間ピストンとの間に収容されたシミュレータチャンバの後方ボリュームにリンクされた圧力センサとを備え、それにより、このボリューム内の圧力を検出し、圧力信号を制御回路に伝送し、制御回路は、第1の電磁弁に、第2の電磁弁に、およびラックドライブのモータにリンクされ、それにより、サーボブレーキの平常作動および緊急作動を制御する。
【0017】
さらに、本発明は、電気サーボブレーキを備えるブレーキシステムを管理するための方法において、この方法が、平常作動モードにおいては、制御回路が、サーボブレーキのラックドライブのモータおよび第1の電磁弁を制御して、シミュレータチャンバの後方ボリュームおよび前方ボリュームを連通させて、液圧アクチュエータおよび中間ピストンの相互作用を無効化し、スラストロッドが、アクチュエータピストンのみにより駆動されることを特徴とする、方法に関する。緊急作動モードにおいては、制御回路は、閉位置に切り替わってシミュレータチャンバの後方ボリュームと前方ボリュームとの間の流体連通を切り離す第1の電磁弁と、前方ボリュームを開きタンクに連通させる第2の電磁弁とを制御し、スラストロッドが、液圧アクチュエータの変位により制御される中間ピストンの変位によってのみ作動され、隔離されたボリュームが、第1の電磁弁の閉鎖により一定に維持される。
【0018】
ブレーキシステムを管理するためのこの方法により、ブレーキペダルのおよびマスターシリンダの作用の分離による、もしくはサーボブレーキの故障の際の分離を伴わない直接リンクによる、および速度制御、前方の車両に対する距離がサーボ制御される単線走行モードなどの車両の種々の自動作動モードのための、ブレーキペダルに対する作用とは無関係なサーボブレーキの直接制御による、平常モードにおける、または、ドライバとは無関係な緊急制動における作動が可能となる。
【0019】
緊急作動の場合には、リンクがシミュレータとの間で切断されるため、ドライバにより加えられる作用力は、シミュレータにより吸収されない。
【0020】
以下、添付の図面に示す本発明の一実施形態を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】平常作動モードに関して示した、電気サーボブレーキを備えるブレーキシステムの概略図である。
【図2】緊急作動モードに対応する、図1の図と同様ではあるが簡略化した図である。
【図3】本発明によるブレーキシステムの一実施形態の、図4のIII−IIIに沿った軸方向断面図である。
【図4】ブレーキシステムの側面図である。
【図5A】タンデムマスターシリンダおよびサーボブレーキの前方部分からなるシステムの前方部分を示す図である。
【図5B】サーボブレーキの後方部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に説明する電気サーボブレーキを備えるブレーキシステムにおいては、説明を容易にするために、慣例に従い、構成要素がブレーキペダル側もしくはマスターシリンダ側のいずれに位置しているかに従って、または構成要素がシステムのどちらの端部に向いているかに従って、種々の構成要素に関して後側と前側とを区別する。このシステムは、マスターシリンダおよびサーボブレーキのいくつかの部品が整列される軸XXを有する。
【0023】
初めに、原理に基づき、図1および図2を参照として概略的に説明を行い、次に、図3乃至図5を用いてさらに詳細に説明を行う。
【0024】
図1によれば、電気サーボブレーキを備えるブレーキシステムが、ブレーキペダルPFにかけられる作用に従い2つのブレーキ回路C1、C2に加圧された液圧油を供給するプライマリピストン110およびセカンダリピストン120を有する、例えばタンデムマスターシリンダなどのマスターシリンダ100を備える。マスターシリンダ100は、電気モータ265により作動されるアクチュエータピストン220を有する電気サーボブレーキ200と組み合わされる。アクチュエータピストン220は、スラストロッド130によって貫通される底部222を有するスリーブ221により形成される。
【0025】
この例においては、ピストン220は、ラック伝動装置により駆動される。
【0026】
ラックドライブ260は、ブレーキシステムの軸XXに対して対称的な2つの位置においてスリーブ221の外方側部により支持される2つのラック261からなる。ラック261は、伝動装置263にリンクされた2つのピニオン262と噛合する。この伝動装置263は、例えば、それぞれが2つのピニオン262の中の一方と、モータ265の出力シャフトが有するねじと噛合する各ウォーム歯車(図示せず)とを支持する、2つの軸からなる。実際には、モータ265の出力シャフトは、逆のねじ山を有する2つのねじを備え、それにより、これらの各ねじが、逆方向への回転運動によって、ウォーム歯車およびその軸に装着されたピニオン262を駆動することが可能となる。したがって、ウォーム歯車がピニオン262よりも大きな直径を有することにより、モータ265によってもたらされる動作量が低減される。
【0027】
アクチュエータピストン220は、スラストロッド130と協働してプライマリピストン110を押す。スラストロッド130は、ロッド130に固定された中間ピストン240により2つの可変ボリュームV1、V2に分割されたシミュレータチャンバ250内に通じている。
【0028】
頭部131によりプライマリピストン110を圧迫するスラストロッド130は、プライマリピストン110の推力方向においてアクチュエータピストン220に圧迫される当接部132を備えるが、対照的に、スラストロッド130は、「バックアップ」作動とも呼ばれる緊急作動の場合には、アクチュエータピストン220とは無関係に前進することが可能である。
【0029】
サーボブレーキのハウジング201およびアクチュエータピストン220の底部に対して押し付けられた圧縮ばね255により、ピストン220の戻りが確保される。
【0030】
スラストロッド130の戻りによるアクチュエータピストン220の圧迫は、シミュレータチャンバ250と中間ピストン240との間の戻しばね271によって確保される。
【0031】
液圧アクチュエータ270は、シミュレータ410の作動により、および中間ピストン240と液圧アクチュエータ270との間に配置された戻しばね274により、ブレーキペダルの作動に対して押し戻される。運動センサ235が、ロッド230の変位を検出して、後に説明する条件においてサーボブレーキを制御する。
【0032】
制御ロッド230にリンクされた液圧アクチュエータ270により境界画定されるシミュレータチャンバ250において、
− 後方ボリュームV1は、液圧アクチュエータ270と中間ピストン240との間に収容される。
【0033】
− 前方ボリュームV2は、シミュレータチャンバ250の底部222と中間ピストン240との間に収容される。
【0034】
後方ボリュームV1は、第1の電磁弁EV1を備える2つのダクトL1、L2により前方ボリュームV2にリンクされる。後方ボリュームV1は、ダクトL1により圧力センサ350にリンクされる。電磁弁EV1の下流のダクトL3は、ブレーキシミュレータ410にリンクされ、第2の電磁弁EV2およびダクトL4を介してブレーキ流体タンク115にリンクされる。
【0035】
電磁弁EV1およびEV2は、2つの位置、すなわち、開位置すなわち通過位置と、閉位置すなわち遮断位置とを有する。これらの位置は、単純なばね復帰式電磁弁である2つの電磁弁EV1、EV2に関するものである。
【0036】
第1の電磁弁EV1は、制御回路400により供給される電圧の印加により、開位置へと設定される。開位置においては、この第1の電磁弁EV1は、ダクトL1をダクトL2およびL3にリンクする。制御信号がない場合には、電磁弁EV1は、閉じられた不作動位置に切り替わり、ダクトL1とダクトL2およびL3との間の連通を遮断する。
【0037】
第2の電磁弁EV2は、制御信号により閉じられた作動位置において制御される。この閉位置においては、電磁弁EV2は、ダクトL3とダクトL4との間の連通を遮断する。この電磁弁EV2は、制御信号がない場合には戻しばねにより不作動位置に戻される。開位置においては、電磁弁EV2は、ダクトL3をダクトL4にリンクする。
【0038】
このシステムは、制御回路400を備え、制御回路400には、運動センサ235および圧力センサ350がリンクされて、電磁弁EV1およびEV2の、およびサーボブレーキの電気モータ265の作動を詳述しない制動プログラムに従って制御する。
【0039】
圧力センサ350は、ブレーキペダルPFに対する作用の影響下でシミュレータチャンバ250の後方ボリュームV1内において液圧アクチュエータ270によりもたらされる圧力上昇を検出する。信号SPは、制御回路400に伝達されるが、この制御回路400は、運動センサ235から信号SCAをさらに受けており、ドライバの意図をモニタリングするためのこの冗長性を利用する。制御回路400は、モータ265を始動させる(信号SA)。モータ265は、ロッド130の当接部132に当接されるピストン220によりスラストロッド130を駆動し、したがって、このロッド130が、プライマリピストン110を押す。次いで、ドライバは、ボリュームV1内のブレーキ流体に対してシミュレータ410によって加えられる応答を受ける。
【0040】
シミュレータ410のこの圧力は、ダクトL3ならびにダクトL2およびL1によりボリュームV1およびV2に伝達され、したがって、ボリュームV1およびV2は同一の圧力となる。中間ピストン240との両側におけるボリュームV1およびV2の圧力のこの均衡により、アクチュエータピストン220によるスラストロッド130の駆動は妨げられず、液圧アクチュエータ270、制御ロッド230、したがっておよびブレーキペダルPFに、模擬的な応答の形態でブレーキシステムの応答を伝達することが可能となる。
【0041】
次に、平常作動モード、緊急作動モード、およびプログラミングされた自動作動モードを区別することにより、このブレーキシステムの作動を説明する。これらの各作動モードは、運動センサ235(絶対運動センサとも呼ばれる)により供給される信号SCA、圧力センサ350により供給される信号SP、および緊急作動モード(モータ265に対する電力供給がない場合)またはブレーキペダルPFに対する作用とは無関係にブレーキシステムを作動させる自動制御作動モードに対応する外部信号SEに従って、制御回路400によって管理される。
【0042】
A)平常作動モード(図1)
作動の開始時に、制御回路400は、一方においては電磁弁EV1を開いて弁V1、V2を連通させ、他方においては電磁弁EV2を閉じてボリュームV1にリンクされたダクトL1をタンク115から遮断する。
【0043】
ボリュームV1、V2が連通され、中間ピストン240がシミュレータチャンバ250内において中立の流体圧力状態となる。この動作は、当接部132によりロッド130を押すアクチュエータピストン220のみに従う。
【0044】
シミュレータチャンバ250のボリュームV1内の流体の圧力は、シミュレータのばねの特性に応じて変化する応答をドライバに認知させ得るシミュレータ410により制御される(詳細は示さない)。全体的には、シミュレータ410の応答は、非線形応答曲線に倣いブレーキペダルに加えられる推力と共に上昇する。シミュレータのこの応答は、詳述しない既知の関数となる。
【0045】
これと同時に、運動センサ235からの信号SCAおよび圧力センサ350により検出された圧力の信号SPが、制御回路400に伝達され、この制御回路400が、作動信号SAを生成して、サーボブレーキ200のモータ265を作動させ、このサーボブレーキ200が、アクチュエータピストン220を駆動し、アクチュエータピストン220が、マスターシリンダ100のプライマリピストン110を押す。液圧アクチュエータ270とスラストロッド130との間に接触はない。
【0046】
B)緊急作動モード(図2)
停電の場合には、サーボブレーキ200は、制動を支援することができない。停電により、戻しばねによって2つの電磁弁EV1、EV2が被作動位置に戻される。電磁弁EV1は閉じられ、電磁弁EV2は開かれ、それにより、
− ボリュームV1が隔離され、
− ボリュームV2がタンク115に連通自在となる。
【0047】
これにより、制御ロッド230により伝達される、ブレーキペダルPFにかけられた推力の影響下における液圧アクチュエータ270の変位によって、非可変のボリュームV1の流体が変位され、これにより、不動状態に留まるアクチュエータピストン220に対して前進するスラストロッド130によってプライマリピストン110が押される。
【0048】
ボリュームV2は、中間ピストン240の前進に対する応答に逆らうことなく、ダクトL2、L3、L4を経由して電磁弁EV2を通りタンク115内に排出される。
【0049】
液圧アクチュエータ270の断面S1が、中間ピストン240の断面S3よりも小さい場合には、減速効果があり、これにより、ブレーキペダルに対して加えられる力よりも大きな力を、中間ピストン240を介してプライマリピストン110に加えることが可能となり、仕事量が維持される。
【0050】
加速器ペダルに対して急速加圧が加えられる場合には、ブレーキシステムの作動は、少なくとも開始時においては、上述した作動と同一になる。
【0051】
C)機械的緊急作動モード
チャンバV1およびV2内において合計推力損失が生ずる場合には、ブレーキペダルPFの動作が、アクチュエータ270、圧縮ばね274、およびスラストロッド130によって直接的に伝達される。
【0052】
D)プログラミングされた制御による作動(図1)
制御回路400は、例えば速度調整、前方の車両に対する距離調整を伴う作動のために、または緊急制動のために、ブレーキペダルに対する作用とは無関係に、車両の作動をブレーキシステムに対して直接的に作用させるように管理するためのシステムから、命令を受けることも可能である。
【0053】
次いで、制御回路400は、信号SAをモータ265に送出して、ブレーキペダルに対する作用とは無関係に、アクチュエータピストン220およびスラストロッド130を駆動させ、マスターシリンダ100を制御する。中間ピストンは、ボリュームV1およびV2がダクトL1およびL2を経由して第1の電磁弁EV1を通り連通自在であるため、中立となる。
【0054】
プログラミングされた制御によるこの作動は、ラックドライブ260のモータ265が作動することが可能であることを前提とするものであり、換言すれば、図1に図示される状況に少なくともこの時点において一致する、電力供給が確保されることを前提とするものであり、モータ265の制御は、制御信号SAを送出制御回路400によって実施される。
【0055】
プログラミングされた制御によるこの作動は、ブレーキペダルPFに対する作用とは無関係に制御回路400に直接的に印加される外部信号SEにかかわらず、ボリュームV1、V2が連通されて、中間ピストン240が中立状態となることを前提としており、これは、電磁弁EV1、EV2が図1に示す位置にあること、または2つのボリュームEV1、EV2がタンク115にリンクされることを前提としており、これは、弁EV1が図1の位置をとり、弁EV2が非制御位置をとり、それによりダクトL2およびL4がリンクされることを前提としている。
【0056】
ブレーキペダルPFに対する作用とは無関係にプログラミングされたこの制御に関して、シミュレータ410は、ブレーキペダルにいかなる応答も伝達する必要はない。
【0057】
いくつかの作動条件において、制御回路400は、第1の電磁弁EV1を作動させ、ダクトL1、L2、L3、L4の全てがブレーキ流体タンク115にリンクされるように、第2の電磁弁EV2を停止位置に設定することが可能である。
【0058】
次に、図3乃至図5を用いて、ブレーキシステムのマスターシリンダのおよびサーボブレーキの詳細な構造を説明する。
【0059】
このシステムは、3つの下位アセンブリにより、すなわち、
− マスターシリンダ100と、
− エンジンコンパートメントと乗員コンパートメントとを隔離する車両のファイアウォールに固定されるように結合ロッドによって接合された前方部分280および後方部分290からなるサーボブレーキ200と
によって、形成される。
【0060】
チャンバV1、V2の、ならびにブレーキ流体タンク115および制御回路400の要素は、図3乃至図5Bには図示せず、また説明もしない。
【0061】
タンデムマスターシリンダ100は、図3において詳細に示す既知の構造を有するが、簡単にその説明をする。このタンデムマスターシリンダ100のハウジング101は、プライマリピストン110およびセカンダリピストン120を備え、これらのピストンは、ブレーキ回路にそれぞれリンクされたプライマリチャンバ111およびセカンダリチャンバ121を画成する。プライマリピストン110は、後部にて開口する延在部113と、サーボブレーキ200により、またはサーボブレーキの故障時には制御ロッド230により作動されるスラストロッド130の頭部131を受けるための軸方向延在部114とを備える。タンデムマスターシリンダ100が休止位置にある場合には、プライマリピストン110の延在部113は、サーボブレーキ200のチャンバ202内に突出する。
【0062】
この実施形態によれば、サーボブレーキの前方部分280は、マスターシリンダ100の本体101の後部102を受け、モータ265、例として提示され図4ではモータの出力シャフトのための凹部として示される伝動装置263、および大きな直径のウォーム歯車とそれぞれ噛合するその2つのねじを有する。これらのウォーム歯車はそれぞれ、ハウジング264内に収容されるが、ウォーム歯車により支持されるピニオン262は、図3、図5A、図5Bにおいて示される。ラック261およびピニオン262は、分散され均等化された態様でトルクをアクチュエータピストン220に伝達するように、軸XXに対して対称的な一にある。
【0063】
スラストロッド130は、サーボブレーキの製造および組立を容易にするように、前方要素130Aおよび後方要素130Bからなる。
【0064】
前方要素130Aは、その頭部131により、プライマリピストン110の底部を圧迫する。前方要素130Aは、当接部132を有し、アクチュエータピストン220の底部222中の中央穴222Aを(この位置において)貫通することにより当接部132を越えて後方に延在される。
【0065】
後方要素130Bは、中間ピストン240を支持するロッドの延在部からなる(図3、図5B)。
【0066】
後方部分290は、実際には、2つのピース290A、290Bからなり、これらの一方(290A)が、中間ピストン240および戻しばね271のためのジャケット251を受けるシミュレータチャンバ250を形成する。このジャケット251により、ピース290Aの製造および組立が容易になる。
【0067】
ピース290Bは、液圧アクチュエータ270および制御ロッド230を受け、液圧アクチュエータ270の後部を囲むベローズ292を支持する。さらに、後方ピース290Bは、運動センサ235の連結のためのコネクタ295を備える。
【0068】
図5A、図5Bによれば、ロッド130の前方部分130Aは、サーボブレーキ200の本体の前方部部分280内に設置され、ロッド130の後方部分130Bは、サーボブレーキ200の後方部分290内に設置される。
【0069】
マスターシリンダ100のハウジング101とサーボブレーキ200の前方部分280との組付けは、本体101の延在部102と前方部分280の管形状の縁部282との間に配置されるアセンブリリング281を介して実現される。この組付けは、後方部分290のピース290B内に固定された結合ロッド310により実現される。
【0070】
電気サーボブレーキを備えるブレーキシステムは、自動車ブレーキ備品産業に適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
100 タンデムマスターシリンダ
101 タンデムマスターシリンダの本体
102 本体の後部
103 フランジ
110 プライマリピストン
113 プライマリピストンの延在部
115 ブレーキ流体タンク
121 セカンダリピストンのチャンバ
130 スラストロッド
130A ロッド130の前方要素
130B ロッド130の後方要素
131 スラストロッド130の頭部
132 スラストロッド130の当接部
200 電気サーボブレーキ
201 サーボブレーキハウジング
202 チャンバ
220 アクチュエータピストン
221 スリーブ
222 底部
222A 中央孔
230 制御ロッド
231 制御ロッドの頭部
235 運動センサ
240 中間ピストン
250 シミュレータチャンバ
251 ジャケット
255 戻しばね
260 ラックドライブ
261 ラック
262 ピニオン
263 伝動装置
264 ウォーム歯車ハウジング
265 電気モータ
270 液圧アクチュエータ
271 戻しばね
274 戻しばね
280 サーボブレーキの本体の前方部分
281 リング
282 前方部分280の縁部
290 サーボブレーキの本体の後方部分
290A、290B 後方部分290を形成するピース
291 フランジ
292 ベローズ
295 コネクタ
310 結合ロッド
350 圧力センサ
400 制御回路
410 ブレーキシミュレータ
C1、C2 ブレーキ回路
EV1、EV2 電磁弁
V1 前方ボリューム
V2 後方ボリューム
L1乃至L4 ダクト
SP 圧力信号
SE 外部信号
SA 作動信号
SCA 運動信号
PF ブレーキペダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボブレーキにより駆動されマスターシリンダのピストン(プライマリピストン)を作動させるスラストロッドを介して前記マスターシリンダに対して制御された態様で作用するサーボブレーキを備えた電気サーボブレーキを備えたブレーキシステムであって、前記サーボブレーキは、液圧アクチュエータによりブレーキペダルの制御ロッドにリンクされた、ブレーキシステムにおいて、
前記サーボブレーキ(200)は、
電気モータ(265)によりラックドライブ(260)を介して制御されるアクチュエータピストン(220)と、
前記液圧アクチュエータ(270)により境界画定され、中間ピストン(240)により可変の後方ボリューム(V1)および前方ボリューム(V2)にさらに分割された、シミュレータチャンバ(250)であって、
前記後方ボリューム(V1)は、前記液圧アクチュエータ(270)および前記中間ピストン(240)により境界画定され、
前記前方ボリューム(V2)は、前記シミュレータチャンバ(250)内において前記中間ピストン(240)により境界画定される、シミュレータチャンバ(250)と、
第1の電磁弁(EV1)を介して前記前方ボリューム(V2)にリンクされたダクト(L2)に前記後方ボリューム(V1)をリンクするダクト(L1)であって、前記ダクト(L2)は第2の電磁弁(EV2)によりタンク(115)にリンクされ、
前記第1の電磁弁(EV1)は、開位置において制御され、前記第1の電磁弁(EV1)の非制御位置は前記閉位置であり、
前記第2の電磁弁(EV2)は、閉位置において制御され、前記第2の電磁弁(EV2)の非制御位置は前記開位置である、ダクト(L1)とを備え、
前記中間ピストン(240)は、前記アクチュエータピストン(220)により押されることとなる当接部(132)を支持する前記スラストロッド(130)にリンクされ、
前記スラストロッド(130)は、前記アクチュエータピストン(220)とは無関係に前記中間ピストン(240)により押され得ることを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキシステムにおいて、
前記第1の電磁弁(EV1)の出力部のダクト(L3)は、ブレーキシミュレータ(410)にリンクされたことを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のブレーキシステムにおいて、
前記アクチュエータピストン(220)は、スリーブ(221)からなり、前記スリーブ(221)の外方表面は、前記シミュレータチャンバ(250)に部分的に重なる前記アクチュエータピストン(220)を並進的に案内および駆動するための前記システムの軸(XX)に対して正反対の位置に、ラック(261)を備えたことを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のブレーキシステムにおいて、
前記中間ピストン(240)は、前記液圧アクチュエータ(270)の断面(S2)よりも大きな断面(S1)を有することを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のブレーキシステムにおいて、
前記サーボブレーキ(200)の本体(201)は、前方部分(280)および後方部分(290)からなり、
前記実質的に円筒状の前方部分(280)は、アセンブリリング(281)を介して前記マスターシリンダ(100)のハウジング(101)の後部(102)と、ラックドライブ(260)の2つのピニオン(262)と、前記ラック(261)を支持する前記アクチュエータピストン(220)とを受け、この前方部分(280)は、伝動装置(263)と、前記ラックドライブ(260)の前記モータ(265)と、前記当接部(132)および戻しばね(255)を有する前記スラストロッド(130)の前方部分(130A)とをさらに備え、
前記後方部分(290)は、前記スラストロッドの後方部分(130B)に装着された前記中間ピストン(240)と、前記中間ピストン(240)の戻しばね(271)と、前記液圧アクチュエータ(270)およびその戻しばね(274)とを備えたことを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のブレーキシステムにおいて、
前記後方部分(290)は、2つのピース(290A、290B)からなり、これらの2つのピース(290A、290B)のうちの前方ピース(290A)は、前記中間ピストン(240)を受けるジャケット(251)により前記シミュレータチャンバ(250)を形成し、後方ピース(290B)は、前記液圧アクチュエータ(270)およびを収容し、
前記液圧アクチュエータ(270)の前記戻しばね(274)は、前記液圧アクチュエータ(270)と前記中間ピストン(240)との間に配置されたことを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキシステムは、制御回路(400)と、前記液圧アクチュエータ(270)と前記中間ピストン(240)との間に収容された前記シミュレータチャンバ(250)の前記後方ボリューム(V1)にリンクされた圧力センサ(350)とを備えて、このボリューム(V1)内の圧力を検出し、圧力信号(SP)を前記制御回路(400)に伝送し、
前記制御回路(400)は、前記第1の電磁弁(EV1)に、前記第2の電磁弁(EV2)に、および前記ラックドライブ(260)の前記モータ(265)にリンクされて、前記サーボブレーキの平常作動および緊急作動を制御することを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項8】
前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気サーボブレーキを備えるブレーキシステムを管理するための方法において、
平常作動モードにおいては、前記制御回路(400)は、前記サーボブレーキの前記ラックドライブ(260)の前記モータ(265)および前記第1の電磁弁(EV1)を制御して、前記シミュレータチャンバ(250)の前記後方ボリューム(V1)および前記前方ボリューム(V2)を連通させて、前記液圧アクチュエータ(270)および前記中間ピストン(240)の相互作用を無効化し、前記スラストロッド(130)は、前記アクチュエータピストン(220)のみにより駆動され、
緊急作動モードにおいては、前記制御回路(400)は、閉位置に切り替わって前記シミュレータチャンバ(250)の前記後方ボリューム(V1)と前記前方ボリューム(V2)との間の流体連通を切り離す前記第1の電磁弁(EV1)と、前記前方ボリューム(V2)を開き前記タンク(115)に連結させる前記第2の電磁弁(EV2)とを制御し、前記スラストロッド(130)は、前記液圧アクチュエータ(270)の変位により制御される前記中間ピストン(240)の変位によってのみ作動され、前記隔離されたボリューム(V1)は、前記第1の電磁弁(EV1)の閉鎖により一定に維持されることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a−5b】
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【公表番号】特表2013−503774(P2013−503774A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527292(P2012−527292)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062625
【国際公開番号】WO2011/026804
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】