説明

電気光学装置、その駆動方法および電子機器

【課題】1フィールドを複数に分割したサブフィールドにおいて画素をオンまたはオフさ
せる場合の階調表現特性を改善する。
【解決手段】画素は、それぞれ1フィールドの期間にわたってオン電圧またはオフ電圧の
印加期間が占める割合に対して明るさの変化率が高階調側または低階調側の一方で他方よ
りも大きくなる。表示すべき1フィールド分の画像を解析して、高階調側または低階調側
の一方の階調とする画素が少ないか否かを判定し、当該画素が少ないと判定した場合、1
フィールドを16個に等分割したサブフィールド毎に、画素の各々に対し、階調に応じて
オン電圧またはオフ電圧が印加されるように制御する。一方、当該画素が少なくないと判
定した場合、16個のサブフィールドの各期間を短縮するとともに、短縮したサブフィー
ルド毎に、画素の各々に対して、階調に応じてオン電圧またはオフ電圧が印加されるよう
に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1フィールドを複数のサブフィールドに分割するとともに、各サブフィール
ドにおいて画素をオンまたはオフすることにより階調を表現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶容量のような表示素子を画素に有する電気光学装置において階調表示を行う場合、
電圧変調方式に代わるものとして次のような技術が提案されている。すなわち、1フィー
ルドを複数のサブフィールドに等分割するとともに、等分割した各サブフィールドにおい
て画素(液晶容量)をオンまたはオフさせて、1フィールドにおいて画素がオンする時間
の割合を変化させることによって中間階調表示を行う技術が提案されている(特許文献1
参照)。
【特許文献1】特開2003−114661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記技術において、例えばノーマリーホワイトモードとした場合に、明
るい階調側の表現が低下する、具体的には、グレースケールを表示させたときに明るい側
の領域における階調の差が、他の領域における階調の差よりも大きくなって現れる、とい
った問題が発生した。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、1フィールドを
複数に分割したサブフィールドにおいて画素をオンまたはオフさせる場合に階調表現特性
を改善した電気光学装置、その駆動方法および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の画素を有し、前記複数の画素は、それぞ
れ1フィールドの期間にわたってオン電圧またはオフ電圧の印加期間が占める割合に対し
て明るさの変化率が高階調側または低階調側の一方で他方よりも大きくなる電気光学装置
において、表示すべき画像を解析して、前記高階調側または低階調側の一方の階調とする
画素が少ない否かを判定する判定回路と、前記判定回路において当該画素が少ないと判定
された場合、1フィールドを複数に等分割したサブフィールド毎に、前記画素の各々に対
し、階調に応じてオン電圧またはオフ電圧が印加されるように制御する一方、当該画素が
少なくないと判定された場合、複数のサブフィールドの各期間を短縮するとともに、短縮
したサブフィールド毎に、前記画素の各々に対して、階調に応じてオン電圧またはオフ電
圧が印加されるように制御する制御回路と、を具備することを特徴とする。本発明によれ
ば、明るさの変化率が高階調側または低階調側の一方で他方よりも大きくなる場合に、当
該一方の階調とする画素が少ないと判定されると、サブフィールドの期間が短縮されるの
で、一方側における階調の差を小さく改善することが可能となる。
【0005】
ここで、本発明において、前記複数のサブフィールドの各々に対し、階調に応じてオン
電圧またはオフ電圧を印加することについて、テーブルを参照して定めるとともに、当該
テーブルの内容を、前記判定回路の判定結果に応じて変更する構成としても良い。さらに
、この構成において、前記画素の周辺温度を検出する温度センサを有し、前記テーブルの
内容は、検出された温度に応じて変更されても良い。
本発明は、電気光学装置のみならず、電気光学装置の駆動方法、さらには、当該電気光
学装置を有する電子機器としても概念することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。この図
に示されるように、電気光学装置1は、表示パネル10、映像処理回路20、タイミング
制御回路30、データ変換回路40および温度センサ50を有する。
【0007】
図2は、電気光学装置1のうち、表示パネル10の構成を示す図であり、図3は、表示
パネル10における画素110の構成を示す図である。
図2に示されるように、表示パネル10は、表示領域100の周辺にYドライバ(走査
線駆動回路)130およびXドライバ(データ線駆動回路)140を配置した構成となっ
ている。本実施形態において表示領域100では、1080行の走査線112が行(図に
おいて横)方向に延在するように設けられ、また、1920列のデータ線114が列(図
において縦)方向に延在するように、かつ、各走査線112と互いに電気的に絶縁を保つ
ように設けられている。さらに、1080行の走査線112と1920列のデータ線11
4との交差に対応して、画素110がそれぞれ配列している。したがって、本実施形態で
は、表示領域100において画素110が縦1080行×横1920列でマトリクス状に
配列することになるが、本発明をこの配列に限定する趣旨ではない。
【0008】
図3は、i行及びこれと1行下で隣接する(i+1)行と、j列及びこれと1列右で隣
接する(j+1)列との交差に対応する2×2の計4画素分の構成を示している。なお、
i、(i+1)は、画素110が配列する行を一般的に示す場合の記号であって、この説
明では、1以上1080以下の整数である。また、j、(j+1)は、画素110が配列
する列を一般的に示す場合の記号であって、1以上1920以下の整数である。
【0009】
図3に示されるように、各画素110は、nチャネル型のトランジスタ116と液晶容
量120とを含む。ここで、各画素110については互いに同一構成なので、その構成に
ついてi行j列に位置する画素で代表させると、当該i行j列の画素110において、ト
ランジスタ116のゲート電極はi行目の走査線112に接続される一方、そのソース電
極はj列目のデータ線114に接続され、そのドレイン電極は画素電極118に接続され
ている。
表示パネル10は、特に図示しないが、素子基板と対向基板との一対の基板が一定の間
隙を保って貼り合わせられるとともに、この間隙に液晶105が封止された構成となって
いる。このうち、素子基板には、走査線112や、データ線114、トランジスタ116
、画素電極118などが形成される一方、対向基板にコモン電極108が形成されて、こ
れらの電極形成面が互いに対向するように一定の間隙を保って貼り合わせられている。こ
のため、本実施形態において液晶容量120は、画素電極118とコモン電極108とが
液晶105を挟持することによって構成されることになる。
【0010】
コモン電極108には、本実施形態では、時間的に一定の電圧LCcomが印加されてい
る。また、本実施形態では、液晶容量120において保持される電圧実効値がゼロに近け
れば、液晶容量を通過する光の透過率が最大となって白色表示になる一方、電圧実効値が
大きくなるにつれて透過する光量が減少して、ついには透過率が最小の黒色表示になるノ
ーマリーホワイトモードに設定されている。
また、画素110には、蓄積容量109が画素毎に形成されている。この蓄積容量10
9の一端は、画素電極118(トランジスタ116のドレイン)に接続される一方、その
他端は、全画素にわたって容量線107に共通接続されている。この容量線107は、時
間的に一定の、例えばコモン電極108と同じ電圧LCcomに保たれている。
【0011】
この構成において、走査線112に選択電圧を印加して、トランジスタ116をオン(
導通)させるとともに、画素電極118に、データ線114およびオン状態のトランジス
タ116を介して、データ信号を供給すると、選択電圧を印加した走査線112とデータ
信号を供給したデータ線114との交差に対応する液晶容量120には、当該データ信号
の電圧とコモン電極108に印加された電圧LCcomとの差電圧が書き込まれる。この後
に走査線112が非選択電圧になると、トランジスタ116がオフ(非導通)状態となる
が、液晶容量120では、トランジスタ116が導通状態となったときに書き込まれた電
圧が、その容量性により保持される。
【0012】
通常のアナログ方式で階調表示する場合には、データ信号を階調に応じた電圧として、
液晶容量120に書き込んでいたが、このアナログ方式では、配線抵抗などに起因する表
示ムラが発生したり、別途D/A変換回路等が必要となったりする。
このため、本実施形態では、データ信号の電圧については、液晶容量120をオン状態
とさせるオン電圧またはオフ状態とさせるオフ電圧の2値とする。このように液晶容量1
20にオン電圧とオフ電圧との2値のみを用いて階調表示を行うためには、基本周期であ
る1フィールドのうち、オン電圧(またはオフ電圧)を印加する期間の割合を階調に応じ
て変化させれば良いはずである。なお、ここでいう1フィールドとは、1枚分の画像を形
成するのに要する期間をいい、ノンインターレース方式におけるフレームと同義であって
、16.7ミリ秒(60Hzの1周波数分)で一定である。
【0013】
図6は、1フィールドを80個のサブフィールドに等分割したときに、オン電圧を印加
するサブフィールドの数(左寄パルス数)と、液晶容量120の透過率との関係を示す図
である。なお、液晶容量120の実際の透過率は、オン電圧が印加される期間の積分値に
おおよそ比例するので、オン電圧を印加するサブフィールドを時間的に前方に寄せて連続
させている。また、この図において、透過率は、最も暗い状態の値を0%とし、最も明る
い状態の値を100%として正規化した相対値で示している。
【0014】
この図に示されるように、1フィールドのうち、オン電圧を印加するサブフィールドの
数を増減させることによって、透過率がほぼ0〜100%で変化するので、多くの階調を
表現することが可能である。ただし、ノーマリーホワイトモードにおいて左寄パルス数が
少ない領域Bでは、左寄パルス数の増減に対して透過率の変化が、他の領域と比較して大
きくなっていることが判る。このことは、1フィールドの等分割数が少ないと、明るい領
域Bでの階調表現性が悪化することを意味する。
すなわち、図6では、1フィールドを等分割するサブフィールドの数が「80」である
場合を示しているが、これが例えば「16」に減少したとき、同図において、黒丸の透過
率に相当する階調となって、領域Bでの明るい階調の差が大きくなる。領域Bの階調の差
を改善するためには、1フィールドの分割するサブフィールドの個数を増加させれば良い
のであるが、分割した各サブフィールドにおいてデータ転送するなどの必要が生じるので
、制約も多い。
【0015】
そこで、本実施形態では、明るい領域での階調表現性を重視しない場合には通常映像表
示モードとし、図4(a)に示されるように1フィールドを「16」に等分割したサブフ
ィールドを用いて、各サブフィールドにおいてオン電圧またはオフ電圧を印加する構成と
する。ここで、通常映像表示モードにおいて1フィールドを16個のサブフィールドに等
分割した1サブフィールドの期間をTaとする。
一方、明るい領域での階調表現性を重視する場合には高階調表示モードとし、図4(b
)に示されるように16個のサブフィールドをそれぞれ短くして、明るい領域での階調の
差を小さくする。ここで、高階調表示モードにおける1サブフィールドの期間をTbとし
たとき、当然のことながらTa>Tbとなる。また、図において、16個のサブフィールド
については、便宜的に1フィールドの最初から順番にsf1、sf2、sf3、…、sf
16と表記している。
なお、高階調表示モードにおいて1サブフィールドを構成するサブフィールドを短くし
たとき、余りの期間nullが生じるが、この期間nullにおける液晶容量120の状態は、
直前のサブフィールドsf16で書き込まれたオンまたはオフ電圧がそのまま保持されこ
とになる。
本実施形態において、通常映像表示モードとするか、高階調表示モードとするかについ
ては、縦1080行×横1920列の画素110における1フィールド分の階調ヒストグ
ラムを作成して、明るい階調成分が少ないか否かによって判定することにしている。
また、本実施形態では、1フィールドを構成するサブフィールドの数を「16」として
いるが、これに限られないことは言うまでもない。
【0016】
説明を再び図1に戻すと、映像処理回路20は、図示省略した外部上位回路から同期信
号Syncに同期して供給されるとともに各画素110の階調を指定する映像データDinに
対して、各種の映像処理、例えばノイズリダクション処理、ゴースト除去処理などを施し
て映像データDaとして出力する。また、映像処理回路20は、各種の映像処理を施した
映像データDaの1フィールド分を出力する毎に階調ヒストグラムを作成して、通常映像
表示モードとするか、高階調表示モードとするかについて判定する。映像処理回路20は
、この判定結果を示す信号a/bを、出力する。
タイミング制御回路30は、同期信号Syncで規定される1フィールドから、信号a/
bで示される判定結果に応じた期間でサブフィールドsf1〜sf16を分割するととも
に、当該サブフィールドsf1〜sf16に応じてYドライバ130およびXドライバ1
40を制御するものである。
【0017】
データ変換回路40は、概略的には、映像データDaで指定される階調を、サブフィー
ルドsf1〜sf16のそれぞれについてオン電圧またはオフ電圧を指定するデータDsf
に変換するものである。このため、データ変換回路40は、フィールドメモリ410、ル
ックアップテーブル(LUT)412、LUT選択回路414、418、LUT展開回路
416およびLUT合成回路420を有する。
このうち、フィールドメモリ410は、タイミング制御回路30の制御によって、少な
くとも1フィールドの分の映像データDaを格納するとともに、格納した映像データDaを
サブフィールドsf1〜sf16毎に読み出すものである。
【0018】
LUT412には、LUT合成回路420によって合成されたテーブルがセットされる
。このテーブルは、フィールドメモリ410から読み出された映像データDaで規定され
る階調に対し、サブフィールドsf1〜sf16の各々についてオン電圧とするか、オフ
電圧とするかを規定する。
ここで、データDsfに変換するためには、映像データDaのほかに、いずれかのサブフ
ィールドに対応させるのかを示す情報が必要となる。このため、タイミング制御回路30
は、サブフィールド番号を示すデータNsfをLUT412に供給し、LUT412は、フ
ィールドメモリ410から読み出された映像データDaが指定する階調およびデータNsf
が示すサブフィールドに対応するデータDsfを出力することになる。
【0019】
ところで、LUT合成回路420によって合成されるテーブルの変換内容は、おおよそ
次のような内容である。すなわち、最も明るい階調については、全サブフィールドについ
てオフ電圧を指定し、暗い階調となるにつれて、サブフィールドsf1を起点としてオン
電圧を指定するサブフィールドが時間的に後方に延びるような内容となっている。なお、
液晶の応答速度は遅いので、上記特許文献1に説明されているように、オン電圧を印加す
るサブフィールドの間にオフ電圧を印加するサブフィールドを介挿することによって、1
フィールドにおけるサブフィールドの個数以上の階調数を表現することが可能である。
また、上述したように本実施形態では、1フィールド分の画像を通常映像表示モードで
表示する場合には1サブフィールドを期間Taとする一方、高階調表示モードで表示する
場合には、1サブフィールドを期間Tbに短く変更するので、2つの表示モードでテーブ
ルの変換内容を変更する必要がある。
テーブルの変換内容については、通常映像表示モードおよび高階調表示モードのいずれ
においても、表示パネル10の特性等に合わせて実験的に求めたものが用いられる。
【0020】
このテーブルの変換内容を変更する構成が、LUT選択回路414およびLUT展開回
路416である。LUT選択回路414は、通常映像表示モードで用いるテーブルaと、
高階調表示モードで用いるテーブルbとをそれぞれコード圧縮して予め記憶するとともに
、信号a/bに示される判定結果にしたがっていずれかのテーブルを選択する。詳細には
、LUT選択回路414は、信号a/bによって通常映像表示モードが選択されることが
示された場合にはテーブルaを選択し、高階調表示モードが選択されることが示された場
合にはテーブルbを選択する。なお、コード圧縮としては例えばランレングス法など様々
な方式が用いられる。LUT展開回路416は、LUT選択回路414により選択された
テーブルを展開(伸長)する。
【0021】
これにより、信号a/bで示される通常映像表示モードまたは高階調表示モードのテー
ブルを得ることができる。このテーブルをそのままLUT412にセットしても良いが、
図6に示した特性は温度によっても変化するので、本実施形態では、さらに温度によって
もテーブルの変換内容を変更する構成としている。
温度センサ50は、表示パネル10、特に画素110近傍の温度を検出して、検出した
温度のデータTmpを出力する。LUT選択回路418は、温度範囲に対応したテーブルを
予め複数有するとともに、データTmpで示される温度を範囲とするテーブルを出力する。
このテーブルの変換内容についても、表示パネル10における温度特性に合わせて実験
的に求めたものが用いられる。
LUT合成回路420は、LUT展開回路416により展開されたテーブルと、LUT
選択回路418によって温度に対応したテーブルとを合成して、LUT412にセットす
る。
したがって、LUT412にセットされるテーブルの変換内容は、通常映像表示モード
または高階調表示モードに対応するものであって、表示パネル10の温度特性を反映させ
たものが、1フィールド毎に更新される。
【0022】
このような構成において、映像処理回路20は、外部上位回路から供給された映像デー
タDinを映像処理して、処理した映像データDaによって表現される1フィールド分の画
像の画素において明るい階調成分が少ないと判定した場合、表示パネル10は、1フィー
ルドをサブフィールドsf1〜sf16に等分割した通常映像表示モードで駆動される。
【0023】
詳細には、タイミング制御回路30は、1フィールドを16個に等分割したサブフィー
ルドsf1〜sf16の各々において、図5(a)に示されるように、1、2、3、…、
1080行目の走査線112に、順番にHレベル(選択電圧VH)となる走査信号G1、
G2、G3、…、G1080が供給されるようにYドライバ30を制御する。すなわち、
走査線112は、サブフィールドsf1〜sf16の各々において、1〜1080行目の
順で選択される。なお、同図では、通常映像表示モードにおいて、各サブフィールドで1
行分の走査線112が選択される期間(走査信号がHレベルとなる期間)をHaと表記し
ている。
【0024】
タイミング制御回路30は、Yドライバ30に対する制御に合わせて、フィールドメモ
リ410から、走査信号をHレベルとさせる走査線に位置する1〜1920列の画素1行
分の映像データDaを読み出す。これにより、LUT412では、当該走査線に位置する
1行分の映像データDaが、データNsfで示されるサブフィールド番号に対応するデータ
Dsfにそれぞれ変換される。ここで、LUT412には、通常映像表示モードおよび表示
パネル10の温度を反映させた変換内容がセットされている。
そして、タイミング制御回路30は、変換された1〜1920列目の画素に対応するデ
ータDsfをXドライバ140に転送し、Xドライバ140は、転送された1〜1920列
目の画素に対応するデータDsfを、それが示すオンまたはオフ電圧に再変換し、データ信
号d1〜d1920として1〜1920列目のデータ線114に、タイミング制御回路3
0の制御にしたがって当該行の走査信号がHレベルとなるのに合わせて供給する。走査線
112がHレベルに相当する選択電圧VHとなっていると、当該走査線112にゲート電
極が接続されたトランジスタ116がオンするので、データ線114に供給されたオンま
たはオフ電圧が画素電極118に印加されることになる。
【0025】
なお、液晶105に直流成分が印加されるのを防止するため、オン電圧は正極性および
負極性の2種類があり、1フィールド期間毎に交互に用いられる。このため、Xドライバ
140は、例えば奇数フィールドにおいてオン電圧が示されたならば、当該オン電圧を正
極性で供給し、偶数フィールドにおいてオン電圧が示されたならば、当該オン電圧を負極
性で供給する構成となる。なお、ここでいう正極性とは、コモン電極108に印加される
電圧LCcomよりも高位側をいい、負極性とは、電圧LCcomよりも低位側をいう。また、
オフ電圧は、液晶容量120の差電圧をゼロとさせる電圧であれば、極性を分けることな
く電圧LCcomとすれば良い。
【0026】
このようにデータ信号を供給して、画素電極に書き込む動作は、サブフィールドsf1
〜sf16の各々において1〜1080行目の走査線112が順番に選択される毎に繰り
返される。
このような通常映像表示モードでは、サブフィールドsf1〜sf16の各々は、1フ
ィールドの期間を16個に等分割した期間となるから、上述したように明るい領域での階
調表現特性が低下するが、通常映像表示モードとなる前提が明るい階調となる画素が多く
ない場合であるから、その表現特性の低下は目立たない。
【0027】
一方、映像処理回路20が処理した映像データDaによって表現される1フィールド分
の画像の画素において明るい階調成分が少なくない(多い)と判定した場合、表示パネル
10は、高階調表示モードで駆動される。
詳細には、タイミング制御回路30は、サブフィールドsf1〜sf16の各期間をT
bに短縮するとともに、図5(b)に示されるように、1、2、3、…、1080行目の
走査線112に、順番にHレベルとなる走査信号G1、G2、G3、…、G1080が供
給されるようにYドライバ30を制御する。なお、同図では、通常映像表示モードにおい
て、各サブフィールドで1行分の走査線112が選択される期間をHbと表記している。
【0028】
ここで、タイミング制御回路30における、フィールドメモリ410からの映像データ
Daの読み出し、転送、およびXドライバ140の制御は、各サブフィールドの期間がTa
からTbに短縮されている点以外、通常映像表示モードと同様である。また、LUT41
2には、高階調表示モードおよび表示パネル10の温度を反映させた変換内容がセットさ
れる。
このような高階調表示モードでは、サブフィールドsf1〜sf16の各期間がTbに
短縮されるので、明るい領域での階調表現特性を通常映像表示モードと比較して改善する
ことが可能となる。なお、高階調表示モードでは、反面、余りの期間nullが生じるので
、暗い領域での階調表現特性が低下する可能性があるが、高階調表示モードとなる前提が
明るい階調となる画素が多い場合であるから、その表現特性の低下があったとしても目立
たない。
【0029】
また、上記実施形態では、画素電極118には、1フィールドを分割した16個のサブ
フィールドの各々においてオンまたはオフ電圧が印加されるので、アナログ方式による駆
動に比べてオフリークの影響は小さいので、蓄積容量109の容量値は少なくて済む。
【0030】
なお、実施形態では、液晶容量120における透過率特性をノーマリーホワイトモード
として説明したが、液晶容量120において保持される電圧実効値がゼロに近ければ、透
過率が最小となって黒色表示になる一方、電圧実効値が大きくなるにつれて透過する光量
が増加して、ついには透過率が最大の白色表示になるノーマリーブラックモードに設定し
ても良い。
ノーマリーブラックモードとする場合、逆に暗い領域での階調表現特性が低下するので
、上述した実施形態において映像処理回路20は、暗い階調成分が少ない場合に通常映像
表示モードとして、1フィールドを等分割したサブフィールドで駆動する一方、低い階調
成分が少なくない(多い)場合に低階調表示モードとして、サブフィールドの期間を短縮
すればよい。さらに、ノーマリーブラックモードとする場合、LUT選択回路414は、
テーブルaとして通常映像表示モードで用いるものを、テーブルbとして低階調表示モー
ドで用いるものを、ぞれぞれ記憶するとともに、表示モードに応じていずれかのテーブル
を選択する構成とすればよい。
【0031】
また、実施形態では、1フィールド分の画像における階調ヒストグラムを作成して、こ
の階調ヒストグラムに基づいて1フィールド毎に表示モードを判定したが、複数フィール
ド分に判定して、当該複数フィールド毎に表示モードを判定しても良い。
さらに、R(赤)、G(緑)、B(青)の3画素で1ドットを構成して、カラー表示を
行うとしても良い。また、透過型に限られず、反射型や、両者の中間的な半透過半反射型
であっても良い。
【0032】
<電子機器>
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置を用いた電子機器の一例として、上述した
電気光学装置1をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。図7は、こ
のプロジェクタの構成を示す平面図である。
この図に示されるように、プロジェクタ2100の内部には、ハロゲンランプ等の白色
光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102か
ら射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイ
ックミラー2108によってR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離されて、各原
色に対応するライトバルブ10R、10Gおよび10Bにそれぞれ導かれる。なお、B色
の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レ
ンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系
2121を介して導かれる。
【0033】
このプロジェクタ2100では、表示パネル10を含む電気光学装置が、R、G、Bの
各色に対応して3組設けられて、R、G、Bの各色に対応する映像データがそれぞれ外部
上位回路から供給される構成となっている。ライトバルブ10R、10Gおよび10Bの
構成は、上述した実施形態における表示パネル10と同様であり、各色に対応して設けら
れるタイミング制御回路(図7では省略)から供給されるR、G、Bのデータ信号で、サ
ブフィールド毎にそれぞれ駆動されるものである。
ライトバルブ10R、10G、10Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイッ
クプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム211
2において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。したが
って、各色の画像が合成された後、スクリーン2120には、投射レンズ2114によっ
てカラー画像が投射されることとなる。
【0034】
なお、ライトバルブ10R、10Gおよび10Bには、ダイクロイックミラー2108
によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必
要はない。また、ライトバルブ10R、10Bの透過像は、ダイクロイックプリズム21
12により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ10Gの透過像はそのまま投
射されるので、ライトバルブ10R、10Bによる水平走査方向は、ライトバルブ10G
による水平走査方向と逆向きにして、左右を反転させた像を表示する構成となっている。
【0035】
電子機器としては、図7を参照して説明した他にも、テレビジョンや、ビューファイン
ダ型・モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子
手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ディジ
タルスチルカメラ、携帯電話機、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして
、これらの各種の電子機器に対して、本発明に係る電気光学装置が適用可能なのは言うま
でもない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同電気光学装置における表示パネルの構成を示す図である。
【図3】同表示パネルにおける画素の構成を示す図である。
【図4】同表示パネルにおけるフィールド構成を示す図である。
【図5】各サブフィールドにおける動作を説明するための図である。
【図6】同表示パネルにおける透過率特性を示す図である。
【図7】同電気光学装置を適用したプロジェクタの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1…電気光学装置、10…表示パネル、20…映像処理回路、30…タイミング制御回路
、40…データ変換回路、50…温度センサ、105…液晶、108…コモン電極、11
0…画素、112…走査線、114…データ線、116…トランジスタ、120…液晶容
量、130…Yドライバ、140…Xドライバ、412…LUT、414…LUT選択回
路、2100…プロジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有し、
前記複数の画素は、それぞれ1フィールドの期間にわたってオン電圧またはオフ電圧の
印加期間が占める割合に対して明るさの変化率が高階調側または低階調側の一方で他方よ
りも大きくなる電気光学装置において、
表示すべき画像を解析して、前記高階調側または低階調側の一方の階調とする画素が少
ないか否かを判定する判定回路と、
前記判定回路において当該画素が少ないと判定された場合、1フィールドを複数に等分
割したサブフィールド毎に、前記画素の各々に対し、階調に応じてオン電圧またはオフ電
圧が印加されるように制御する一方、
当該画素が少なくないと判定された場合、複数のサブフィールドの各期間を短縮すると
ともに、短縮したサブフィールド毎に、前記画素の各々に対して、階調に応じてオン電圧
またはオフ電圧が印加されるように制御する制御回路と、
を具備することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記複数のサブフィールドの各々に対し、階調に応じてオン電圧またはオフ電圧を印加
することについて、テーブルを参照して定めるとともに、
当該テーブルの内容を、前記判定回路の判定結果に応じて変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記画素の周辺温度を検出する温度センサを有し、
前記テーブルの内容を、検出された温度にも応じて変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
複数の画素を有し、
前記複数の画素は、それぞれ1フィールドの期間にわたってオン電圧またはオフ電圧の
印加期間が占める割合に対して明るさの変化率が高階調側または低階調側の一方で他方よ
りも大きくなる電気光学装置の駆動方法において、
表示すべき画像を解析して、前記高階調側または低階調側の一方の階調とする画素が少
ないか否かを判定し、
当該画素が少ないと判定した場合、1フィールドを複数に等分割したサブフィールド毎
に、前記画素の各々に対し、階調に応じてオン電圧またはオフ電圧が印加されるように制
御する一方、
当該画素が少なくないと判定した場合、複数のサブフィールドの各期間を短縮するとと
もに、短縮したサブフィールド毎に、前記画素の各々に対して、階調に応じてオン電圧ま
たはオフ電圧が印加されるように制御する
ことを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気光学装置を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−128405(P2009−128405A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300201(P2007−300201)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】