説明

電気光学装置、電子機器、および電気光学装置の製造方法

【課題】強化された基板を含む電気光学装置、電子機器、および当該電気光学装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る液晶表示装置1は、ガラス基板11上に、TFT素子70、絶縁層68、透明樹脂層69を備える。また、ガラス基板21上に、カラーフィルタ50、オーバーコート52を備える。ここで、絶縁層68は、その中心部近傍に仮想された中央部61における厚さの平均値が、当該中央部61を除いた周辺部62における厚さの平均値より大きくなっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に代表されるような、少なくとも1枚の基板と電気光学物質とを備えた電気光学装置、電子機器、および当該電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置は、表示装置として種々の電子機器に組み込まれて用いられている。こうした電子機器の設計の自由度を向上させるため、電気光学装置に対しては薄型化の要望が強い。電気光学装置を薄型化するために有効な手段の一つとして、最も厚い部材の一つである基板を薄くすることが挙げられる。
【0003】
一般に基板の薄さと基板の強度とはトレードオフの関係にあり、基板を薄くすると強度が得られにくくなる。しかし、基板表面が圧縮応力を有するように基板を加工することで基板の強度を向上させることができる。基板表面を押圧すると、その反対側の表面に引張応力(引っ張って広げようとする力)が発生し、この力によって基板が破壊されるところ、当該引張応力に抗する圧縮応力(縮めようとする力)を基板表面が有するように加工すれば破壊強度を向上させることができるためである。こうした加工の方法としては、加熱状態の基板表面を急冷する方法や、基板表面のイオンをより大きなイオンに置換する方法などが知られている。なお、逆に基板表面が引張応力を有するように加工する方法としては、基板表面に引張応力を生じさせるように薄膜を形成する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−168167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の急冷、イオン置換等の加工は、電気光学装置の製造工程において行うことは困難である。このため、基板表面に圧縮応力をもたせて強化するためのより容易な方法を含んだ電気光学装置の製造方法の開発が望まれていた。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、強化された基板を含む電気光学装置、電子機器、および当該電気光学装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置は、基板と、前記基板上に形成され、前記基板の中央部における厚さが、当該中央部の周辺部の厚さよりも大きい機能層と、前記基板の前記機能層側に配置された電気光学物質と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記を満たす厚さ分布を有する機能層は、基板上にあっては、その面積を広げようとする(すなわち厚さを均一にしようとする)方向の内部応力をもつ。一方、基板は、当該内部応力に抗するに十分な硬度を有しているので、実際には上記のような機能層の面積の拡大は起こらず、機能層は前記内部応力を内包した状態で基板上に形成される。このため、基板表面には当該内部応力の抗力としての圧縮応力が発生する。この状態において、基板の、機能層が形成されていない面に外力が印加され、機能層形成側表面に引張応力が発生したとしても、上記圧縮応力がこれに抗するので、基板が割れにくくなる。特に、上記構成によれば、基板の強度が最も弱くなる基板中央部において最も大きな圧縮応力が働くこととなるので、強度の弱い部分を効果的に補強することができる。このように、上記構成によれば、強化された基板を有し、外力に対して堅牢な電気光学装置が得られる。
【0009】
ここで、中央部とは、機能層が略点対称な領域に形成されているときはその対称の中心の近傍を指す。また、基板と機能層との間、または機能層と電気光学物質との間に他の薄膜等の構成要素が配置されていてもよい。
【0010】
上記電気光学装置において、前記機能層は、前記中央部における厚さの平均値が、前記周辺部における厚さの平均値よりも大きいことが好ましい。
【0011】
こうした構成によっても、基板の機能層形成側表面には圧縮応力が発生し、割れにくくなる。すなわち、機能層の厚さ分布は、中央部が最も厚く、外縁部に近付くに従って連続的に薄くなる構成が最も好ましいものの、機能層の一部に穴が開けられていたり、中央部から外縁部にかけて厚さが連続的に減少しておらず多少の凹凸があったとしても、中央部における厚さの平均値が周辺部における厚さの平均値より大きければ基板表面に圧縮応力が働き、基板が強化される。
【0012】
上記電気光学装置において、前記機能層は絶縁層であることが好ましい。こうした構成によれば、前記機能層に絶縁層としての役割をも持たせることにより、電気光学装置の構造および製造プロセスを簡略化することができる。
【0013】
上記電気光学装置において、前記機能層はパッシベーション膜であることが好ましい。こうした構成によれば、前記機能層にパッシベーション膜としての役割をも持たせることにより、電気光学装置の構造および製造プロセスを簡略化することができる。
【0014】
上記電気光学装置において、前記機能層は無機物質であり、前記第1領域における当該機能層の厚さの最大値が1μm以上10μm以下であることが好ましい。当該最大値が1μm以上であれば、基板表面に圧縮応力を発生させて基板を強化することができる。一方、当該最大値が10μm以下であれば、電気光学装置の製造プロセスにおける処理時間を大幅に増加させることなく機能層を形成することができる。また、機能層を金属によって形成した場合には、当該機能層の厚さの最大値は100Å以上5000Å以下とすることが好ましい。当該最大値が100Å以上である場合は、基板の強化に効果があり、また、電気光学装置の製造プロセスにおける処理時間を鑑みれば5000Å以下とすることが好ましい。
【0015】
上記電気光学装置において、前記基板は、前記機能層に覆われてなるスイッチング素子と、当該機能層上に配置された画素電極とを有し、前記スイッチング素子と前記画素電極は、前記機能層に設けられたコンタクトホールを介して電気的に接続されていることが好ましい。こうした構成によれば、スイッチング素子によって画素電極への信号の印加を制御することが可能な電気光学装置が得られる。また、この電気光学装置においては、スイッチング素子が形成された基板が強化されているため、外力が印加されたときのスイッチング素子への影響を小さく抑えることができる。
【0016】
上記電気光学装置において、前記機能層の前記電気光学物質側の表面形状は、前記中央部から前記周辺部に向かって厚さが減少する曲面であることが好ましい。こうした構成によれば、絶縁層は連続的な厚さ分布を持つこととなり、断面形状が「アーチ型」となる。絶縁層がこうした厚さ分布を有していると、基板表面における圧縮応力の分布に局所的な偏りがなくなるため、効率的に基板が強化される。
【0017】
上記電気光学装置においては、前記機能層に重ねて形成された平坦化膜をさらに有し、
前記平坦化膜が前記基板に及ぼす応力は、前記機能層が前記基板に及ぼす応力よりも小さいことが好ましい。こうした構成によれば、機能層に基板を強化する機能を持たせつつ、機能層が有する厚さの不均一を当該平坦化膜によって平坦化することができ、機能層上に配置される構成要素の、当該機能層の厚さの不均一に起因する不具合の発生を防止することができる。当該平坦化膜には、無機物質又は有機物質を用いることができる。
【0018】
本発明による電子機器は、上記電気光学装置を備えることを特徴とする。こうした構成の電子機器は、基板が強化された電気光学装置を有するので、外部からの外力や衝撃の印加に強いという特徴を有する。
【0019】
本発明による電気光学装置の製造方法は、基板の面の中心部近傍に第1の薄膜を形成する工程と、前記基板上に、前記第1の薄膜を覆って前記第1の薄膜と同一の物質を含む第2の薄膜を形成することにより、前記基板上に前記第1の薄膜と前記第2の薄膜とからなる機能層を形成する工程と、前記機能層上に電気光学物質を配置する工程とを有することを特徴とする。
【0020】
このような方法によって形成される機能層は、第1の薄膜が形成された領域においては厚く、それ以外の領域においては薄くなる。また、第2の薄膜の形成の際には第1の薄膜による段差が緩和され、全体として、中央部における厚さが、当該中央部の周辺部における厚さよりも大きい機能層が得られる。このような機能層は、基板の当該機能層が形成された側の表面に圧縮応力を発生させる。このため、基板の、機能層が形成されていない面に外力が印加され、機能層形成側表面に引張応力が発生したとしても、上記圧縮応力がこれに抗するので、基板が割れにくい。このように、上記方法によれば、絶縁層の存在によって強化された基板を有し、外力に対して堅牢な電気光学装置が得られる。ここで、前記機能層を形成する工程の後であって前記電気光学物質を配置する工程の前には、当該機能層に重ねて平坦化膜を形成する工程をさらに含んでいてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0022】
(第1の実施形態)
<A.液晶表示装置の構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る「電気光学装置」としての液晶表示装置1の斜視図であり、図2は、液晶表示装置1の画素部の拡大断面図である。液晶表示装置1は、TFT素子70をスイッチング素子とするアクティブマトリクス方式の半透過反射型表示装置である。
【0023】
図1に示すように、液晶表示装置1は、シール剤35を介して互いに対向して固着されたガラス基板11、ガラス基板21を有している。シール剤35は、ガラス基板21の外縁部近傍に形成されている。ガラス基板11が、本発明における「基板」に対応する。ガラス基板11上には素子側機能層12が、また、ガラス基板21上には対向側機能層22が形成されている。以下では、ガラス基板11および素子側機能層12をまとめて「素子基板10」とも呼び、またガラス基板21および対向側機能層22をまとめて「対向基板20」とも呼ぶ。観察者は、素子基板10の側から液晶表示装置1を観察する。
【0024】
素子基板10、対向基板20、シール剤35が作る空間には液晶80が封入されている。液晶80が、本発明における「電気光学物質」に対応する。液晶表示装置1は、この液晶80の作用により、表示領域32において表示を行う装置である。素子基板10上には、液晶80を駆動するためのドライバ39が実装されている。表示領域32は、マトリクス状に配列された画素からなり、ドライバ39はこれらの各々の画素に対して液晶80を所望の状態に駆動させるための駆動信号を出力する。
【0025】
図2に示すように、ガラス基板11には、アルミニウムなどの金属からなるゲート電極71が設けられ、その上にはゲート絶縁膜72とアモルファスシリコン層73、およびアルミニウムなどの金属からなるソース電極74とドレイン電極75が設けられている。ゲート電極71、アモルファスシリコン層73、ソース電極74、ドレイン電極75が、TFT素子70を構成する。
【0026】
これらに積層して、シリコン窒化膜からなる絶縁層68、透明樹脂層69、およびITO(Indium Tin Oxide)からなる画素電極79がこの順に積層されている。ここで、絶縁層68は、本発明における「機能層」に対応し、透明樹脂層69は、本発明における「平坦化膜」に対応する。また、シリコン窒化膜は、本発明における「無機物質」の一つであるが、「無機物質」には、この他にも酸化シリコンを始めとする素子基板の絶縁層として用いられる材料等が含まれる。画素電極79は、絶縁層68および透明樹脂層69を貫通して開けられたコンタクトホール77を介してドレイン電極75と電気的に接続されている。なお、画素電極79上には配向膜が形成されているが図示を省略した。以上の、ガラス基板11上に形成された構成要素が、前述の素子側機能層12に対応する。
【0027】
一方、ガラス基板21上には、アルミニウムの反射膜78、カラーフィルタ50、オーバーコート52およびITOからなる対向電極84がこの順に積層されている。反射膜78は、画素の一部にのみ形成されており、反射膜78が形成された領域が反射表示部となり、反射膜78が形成されない領域が透過表示部となる。良好な光学特性を得るために、透過表示部においては、絶縁層68および透明樹脂層69が形成されておらず、液晶80の層の厚さが反射表示部に比べて大きくなっている。また、反射表示の視野角を向上させるために、反射膜78は細かな散乱パターンをもって形成されている。カラーフィルタ50は、入射した光のうちの特定の波長成分を吸収することによって透過光を着色する樹脂である。オーバーコート52は、カラーフィルタ50を保護するとともにカラーフィルタ50によってできた凹凸を平坦化するための透明な樹脂層である。なお、対向電極84上には配向膜が形成されているが図示を省略した。以上の、ガラス基板21上に形成された構成要素が、前述の対向側機能層22に対応する。
【0028】
続いて、こうした構成の液晶表示装置1の電気的な構成について、図3を用いて説明する。図3は、液晶表示装置1の画素おける各種素子、配線等の等価回路を示した模式図である。
【0029】
図3に示すように、液晶表示装置1には、データ線6および走査線7が格子状に配置されており、これらの交差に対応してマトリクス状に画素が形成されている。画像信号が供給されるデータ線6は、TFT素子70のソース電極74に電気的に接続されている。データ線6には、ドライバ39から画像信号S1,S2,…,Snがこの順に線順次に供給される。あるいは、相隣接する複数のデータ線6同士に対して、グループ毎に供給される構成であってもよい。
【0030】
また、TFT素子70のゲート電極71には、走査線7を介して、ドライバ39から所定のタイミングでパルス的に走査信号G1,G2,…,Gmがこの順に線順次に印加される。画素電極79は、TFT素子70のドレイン電極75に電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT素子70を一定期間だけ閉じることにより、データ線6から供給される画像信号S1,S2,…,Snが所定のタイミングで印加される。
【0031】
上記画像信号S1,S2,…,Snは、画素電極79および対向電極84に挟持された液晶80に印加され、一定期間保持される。ここで保持された画像信号S1,S2,…,Snがリークするのを防ぐために、画素電極79と対向電極84との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量85が設けられている。蓄積容量85は、画素電極79と、定電位に固定された容量電極8との間に設けられている。
【0032】
液晶80は、印加される電圧レベルに応じて配向状態が変化し、配向状態に応じて透過する光の偏光状態を変化させることができる。液晶表示装置1は、この偏光状態の変化を利用して入射光の透過率を変化させることにより、階調表示を含む様々な表示を行うことができる。すなわち、液晶表示装置1は、画像信号S1,S2,…,Snに応じた輝度の光を射出して表示を行うことができる。
【0033】
<B.ガラス基板の強化>
上記液晶表示装置1を、一部の層構造を厚さ方向に拡大して示した断面図が図4である。図4においては、ガラス基板11上に形成されたTFT素子70、絶縁層68および透明樹脂層69と、ガラス基板21上に形成されたカラーフィルタ50、オーバーコート52が厚さ方向に拡大して描かれている。この図に示すように、絶縁層68は、その中心部近傍に仮想された略円形の中央部61(図1参照)における厚さの平均値が、当該中央部61の周辺部62における厚さの平均値より大きくなっている。そして、絶縁層68の液晶80側の表面形状は、中央部61の中心部から周辺部62の外縁部に向かって厚さが減少する曲面となっている。このため、絶縁層68の断面は、図4に示すように「アーチ型」となる。
【0034】
このような構成の絶縁層68は、ガラス基板11上にあっては、その面積を広げようとする(すなわち厚さを均一にしようとする)方向の内部応力をもつ。一方、ガラス基板11は、当該内部応力に抗するに十分な硬度を有しているので、実際には上記のような機能層68の面積の拡大は起こらず、機能層68は前記内部応力を内包した状態でガラス基板11上に形成される。このため、ガラス基板11の表面には当該内部応力の抗力としての圧縮応力が発生する。この状態において、ガラス基板11の、機能層68が形成されていない面に外力が印加され、機能層68形成側表面に引張応力が発生したとしても、上記圧縮応力がこれに抗するので、ガラス基板11が割れにくくなっている。すなわち、ガラス基板11は、絶縁層68によって強化されている。特に、ガラス基板11の強度が最も弱くなる中央部61において最も大きな圧縮応力が働くこととなるので、強度の弱い部分を効果的に補強することができる。また、上記および図4のように絶縁層68がいわゆる「アーチ型」の厚さ分布を有していると、応力分布に局所的な偏りがないため効率的にガラス基板11が強化される。本実施形態では、絶縁層68の中央部61における厚さの最大値は5μmである。当該最大値は、1μm以上であればガラス基板11の強化に効果があり、製造プロセスにおける処理時間を鑑みれば10μm以下とすることが好ましい。なお、絶縁層68の存在によってガラス基板11には若干の引張応力も発生するが、これは上記圧縮応力に対する影響がほとんどない程度のものである。
【0035】
絶縁層68の厚さの不均一は、これを覆って形成された透明樹脂層69によって平坦化されている。したがって、絶縁層68の厚さの不均一が液晶表示装置1に対して不具合(例えば液晶80の層の厚さのバラツキによる光学特性の低下等)を発生させることはない。また、透明樹脂層69は、絶縁層68に比べてガラス基板11表面に発生させる応力が小さいので、ガラス基板11の強度にはほとんど影響を与えない。
【0036】
なお、絶縁層68および透明樹脂層69には、上述したようにコンタクトホール77が形成されているが、これが上記圧縮応力に及ぼす影響は小さく、コンタクトホール77がない場合とほぼ同程度にガラス基板11が強化される。同様に、中央部61の中心部から周辺部62の外縁部にかけて、絶縁層68の厚さが連続的に減少しておらず多少の凹凸があったとしても、中央部61における厚さの平均値が周辺部62における厚さの平均値より大きければガラス基板11の表面に圧縮応力が働き、ガラス基板11が強化される。
【0037】
以上のように、ガラス基板11は、急冷やイオン置換等の加工を施さなくても、絶縁層68の存在によって強化される。このため、薄膜形成プロセスを有する既存の液晶表示装置の製造装置を用いてガラス基板11を強化することができる。また、例えば液晶表示装置1の製造後にガラス基板11をエッチングによって薄くするような場合であってもガラス基板11を強化された状態に保つことができる。液晶表示装置1は、観察側表面において表示を行うという機能上、電子機器等に組み込んだ際に観察側表面を十分に保護できないことが多いが、本実施形態の構成によれば、観察側表面から印加される外力に対してある程度抗することができ、液晶表示装置1、ひいてはこれを組み込んだ電子機器の堅牢性を効果的に向上させることができる。
【0038】
<C.液晶表示装置の製造方法>
次に、液晶表示装置1の製造方法について、図5の工程図および図6の断面図を用いて説明する。図5において、工程P11から工程P17は複合素子基板を製造するための工程であり、工程P24から工程P28は複合対向基板を製造するための工程である。工程P31から工程P35は、複合素子基板および複合対向基板を組み合わせて液晶表示装置1を製造するための工程である。工程P11から工程P17、および工程P24から工程P28は、それぞれ独立に行われる。図6(a)から(e)は、上記各製造工程において、一つの液晶表示装置1に着目したときの断面図である。
【0039】
ここで、複合素子基板は、ガラス基板11上に複数の液晶表示装置1に対応する素子側機能層12をマトリクス状に形成したものであり、複数の素子基板10を内包する。同様に、複合対向基板は、ガラス基板21上に複数の液晶表示装置1に対応する対向側機能層22をマトリクス状に形成したものであり、複数の対向基板20を内包する。個々の液晶表示装置1は、複合素子基板および複合対向基板を貼り合わせて複合基板を形成した後に、これを行方向に1次ブレイクして一つの行からなる短冊状の複合基板を取り出し、さらに当該短冊状の複合基板を個々の液晶表示装置1に対応する形状に2次ブレイクする工程を経て製造される。
【0040】
まず、工程P11では、ガラス基板11上に、公知の成膜技術等を用いてTFT素子70を形成する(図6(a))。
【0041】
次に、工程P12では、ガラス基板11の面の中心部近傍に、一部のTFT素子70を覆った状態に第1の薄膜68aを形成する(図6(b))。第1の薄膜68aは、後に絶縁層68の一部を構成する薄膜であり、シリコン窒化膜からなる。この工程は、ガラス基板11上にシリコン窒化膜を形成した後、フォトリソグラフィーによってパターニングして行われる。
【0042】
続く工程P13では、ガラス基板11上に、第1の薄膜68aを覆って、第2の薄膜68bを形成する(図6(c))。第2の薄膜68bは、第1の薄膜68aと同じくシリコン窒化膜からなり、一つの液晶表示装置1に対応する領域に形成される。この工程も、ガラス基板11上にシリコン窒化膜を形成した後、フォトリソグラフィーによってパターニングして行われる。
【0043】
工程P12、工程P13で形成された第1の薄膜68a、第2の薄膜68bは、絶縁層68を構成する。絶縁層68は、第1の薄膜68aが形成された領域においては厚く、それ以外の領域においては薄くなる。また、第2の薄膜68bの形成の際には第1の薄膜68aによる段差が緩和されるので、全体として中心部が厚く、外縁部に向かうにつれて薄くなる構成となる。
【0044】
次に、工程P14では、ガラス基板11上の全体に透明樹脂層69を形成する(図6(d))。この工程は、スピンコート法によって行われる。この結果、絶縁層68が有する表面の凹凸が平坦化される。
【0045】
続く工程P17では、コンタクトホール77、画素電極79を形成し(図2参照)、さらに配向膜形成、ラビング処理を行う。これらは、液晶表示装置の製造方法として公知の技術を用いて行われる。こうして複合素子基板が完成する。
【0046】
次に、複合対向基板の製造工程について説明する。まず、工程P24では、ガラス基板21上に反射膜78を形成する。この工程は、ガラス基板21にアルミニウムをスパッタした後、フォトリソグラフィーによってパターニングすることによって行われる。
【0047】
次に、工程P25では、ガラス基板21上に、反射膜78を覆ってカラーフィルタ50を形成する。この工程は、スピンコート法やフォトリソグラフィー等の公知の技術を用いて行われる。
【0048】
続く工程P26では、カラーフィルタ50上に、透明樹脂からなるオーバーコート52を形成する。この工程は、スピンコート法やフォトリソグラフィー等の公知の技術を用いて行われる。
【0049】
この後の工程P27では、オーバーコート52上に対向電極84を形成し、さらに配向膜形成、ラビング処理を行う。これらは、液晶表示装置の製造方法として公知の技術を用いて行われる。
【0050】
続く工程P28では、ガラス基板21上の所定の位置にシール剤35を形成する。この工程は、スクリーン印刷やディスペンサーによる塗布等によって行われる。こうして複合対向基板が完成する。
【0051】
工程P31では、工程P11から工程P17を経て製造された複合素子基板と、工程P24から工程P28を経て製造された複合対向基板とを貼り合せて、複合基板を形成する。貼り合わせは、複合素子基板と複合対向基板との間でアライメント(位置合わせ)をした後、シール剤35を介して接触、圧着して行われる。
【0052】
続く工程P32では、上記複合基板に対して1次ブレイクを行う。1次ブレイクは、ガラス基板11,21の表面をスクライブした後に、外力を印加して分割することによって行われる。この工程を経て、液晶表示装置1に対応する構成要素が一行に並んだ短冊状の複合基板が得られる。この短冊状の複合基板の一つの端面には、各液晶表示装置1に対応する液晶注入口(不図示)が露出している。
【0053】
次に、工程P33では、工程P32で得られた短冊状の複合基板に注入口から液晶80を注入し、注入口を封止する。液晶の注入は、真空下で注入口に液晶80を浸し、素子基板11、対向基板21、シール剤35によって囲まれた領域に毛細管現象によって液晶80を導入して行う。封止は、注入口に紫外線硬化性樹脂を塗布した後に紫外線を照射し、当該樹脂を硬化させて行う。なお、封止工程の後には基板の洗浄が行われるが、図示を省略した。
【0054】
次に、工程P34では、液晶注入および封止が完了した短冊状の複合基板に対して2次ブレイクを行う。2次ブレイクは、液晶表示装置1の外形に沿ってガラス基板11,21の表面をスクライブした後に、外力を印加して分割することによって行われる。この工程を経て、単一の素子基板11および対向基板21を備えた、液晶表示装置1に対応する液晶パネルが得られる(図6(e))。
【0055】
最後に、工程P35において素子基板10上にドライバ39を実装して、液晶表示装置1が完成する。
【0056】
以上の製造方法によれば、ガラス基板11上にアーチ状の厚さ分布をもつ絶縁層68を有する液晶表示装置1を製造することができる。これにより、ガラス基板11に対して急冷やイオン置換等の加工を施すことなく、薄膜形成技術を用いてガラス基板11、ひいては液晶表示装置1を強化することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態は、素子基板10が観察側に配置され、当該素子基板10を構成するガラス基板11を強化する構成であるが、これに代えて、対向基板20を観察側に配置し、当該対向基板20を構成するガラス基板21を強化する構成とすることもできる。以下では、こうした構成の第2の実施形態に係る液晶表示装置1Aについて、第1の実施形態に係る液晶表示装置1との相違点を中心に説明する。
【0058】
液晶表示装置1Aの外観は、第1の実施形態の液晶表示装置1と同様であり、その斜視図は図1に示されている。ただし、観察者が対向基板20の側から表示を観察する点において液晶表示装置1と異なる。液晶表示装置1Aの画素部の拡大断面図を図7に、また、液晶表示装置1Aを、一部の層構造を厚さ方向に拡大して示した断面図を図8に示す。
【0059】
図7および図8からわかるように、液晶表示装置1Aの素子基板10は、TFT素子70を覆って形成された絶縁層67の厚さが均一であり、透明樹脂層69を持たない。また、絶縁層67上の一部に反射膜78が形成されている。素子基板10は、これらの点において液晶表示装置1と異なるが、その他の構成については液晶表示装置1と同様である。
【0060】
一方、液晶表示装置1Aの対向基板20は、ガラス基板21とカラーフィルタ50との間に反射膜がなく、代わりに機能層58および透明樹脂層59が形成されている。機能層58、透明樹脂層59は、上述の液晶表示装置1における絶縁層68、透明樹脂層69と同一の材料からなり、構成も略同等である。より詳細には、導通のためのコンタクトホール77が形成されない点を除けば絶縁層68、透明樹脂層69と同等の構成である。すなわち、機能層58は、その中心部近傍に仮想された略円形の中央部61(図1参照)における厚さの平均値が、当該中央部61の周辺部62における厚さの平均値より大きくなっている。また、機能層58の厚さの不均一は、これを覆って形成された透明樹脂層59によって平坦化されている。透明樹脂層59上には、カラーフィルタ50、オーバーコート52がこの順に積層されている。本実施形態においては、ガラス基板21が本発明の「基板」に対応し、透明樹脂層59が本発明の「平坦化膜」に対応する。
【0061】
以上のような構成によれば、ガラス基板21の背面側表面には、機能層58の影響により圧縮応力が発生する。このため、ガラス基板21の強度が第1の実施形態のガラス基板11と同様に向上する。これにより、ガラス基板21は、観察側表面から印加される外力に対してある程度抗することができ、液晶表示装置1A、ひいてはこれを組み込んだ電子機器の堅牢性が向上する。
【0062】
次に、液晶表示装置1Aの製造方法について、図9の工程図および図10の断面図を用いて説明する。図9において、工程P11から工程P17は複合素子基板を製造するための工程であり、工程P21から工程P28は複合対向基板を製造するための工程である。工程P31から工程P35は、複合素子基板および複合対向基板を組み合わせて液晶表示装置1を製造するための工程である。工程P11から工程P17、および工程P21から工程P28は、それぞれ独立に行われる。図10(a)から(e)は、上記各製造工程において、一つの液晶表示装置1Aに着目したときの断面図である。
【0063】
まず、工程P11では、ガラス基板11上に、公知の成膜技術等を用いてTFT素子70を形成する。
【0064】
次に、工程P15では、TFT素子70を覆って絶縁層67を形成する。ここでは、第1の実施形態とは異なり、均一な厚さのシリコン窒化膜を一度に形成する。すなわち、複合素子基板側の絶縁層67にはアーチ状の厚さ分布をもたせない。
【0065】
次に、工程P16では、絶縁層67上であって反射表示部に対応する領域に反射膜78を形成する(図7参照)。この工程は、アルミニウムをスパッタした後、フォトリソグラフィーによってパターニングすることによって行われる。
【0066】
続く工程P17では、コンタクトホール77、画素電極79を形成し(図7参照)、さらに配向膜形成、ラビング処理を行う。これらは、液晶表示装置の製造方法として公知の技術を用いて行われる。こうして複合素子基板が完成する。
【0067】
次に、複合対向基板の製造工程について説明する。まず、工程P21では、ガラス基板21の面の中心部近傍に第1の薄膜58aを形成する(図10(a))。第1の薄膜58aは、後に機能層58の一部を構成する薄膜であり、シリコン窒化膜からなる。この工程は、ガラス基板21上にシリコン窒化膜を形成した後、フォトリソグラフィーによってパターニングして行われる。
【0068】
続く工程P22では、ガラス基板21上に、第1の薄膜58aを覆って、第2の薄膜58bを形成する(図10(b))。第2の薄膜58bは、第1の薄膜58aと同じくシリコン窒化膜からなり、一つの液晶表示装置1Aに対応する領域に形成される。この工程も、ガラス基板21上にシリコン窒化膜を形成した後、フォトリソグラフィーによってパターニングして行われる。
【0069】
工程P21、工程P22で形成された第1の薄膜58a、第2の薄膜58bは、機能層58を構成する。機能層58は、第1の薄膜58aが形成された領域においては厚く、それ以外の領域においては薄くなる。また、第2の薄膜58bの形成の際には第1の薄膜58aによる段差が緩和されるので、全体として中心部が厚く、外縁部に向かうにつれて薄くなる構成となる。
【0070】
次に、工程P23では、ガラス基板21上の全体に透明樹脂層59を形成する(図10(c))。この工程は、スピンコート法によって行われる。この結果、機能層58が有する表面の凹凸が平坦化される。
【0071】
次に、工程P25では、ガラス基板21上に、反射膜78を覆ってカラーフィルタ50を形成する。この工程は、スピンコート法やフォトリソグラフィー等の公知の技術を用いて行われる。
【0072】
続く工程P26では、カラーフィルタ50上に、透明樹脂からなるオーバーコート52を形成する。この工程は、スピンコート法やフォトリソグラフィー等の公知の技術を用いて行われる。
【0073】
この後の工程P27では、オーバーコート52上に対向電極84を形成し、さらに配向膜形成、ラビング処理を行う。これらは、液晶表示装置の製造方法として公知の技術を用いて行われる。
【0074】
続く工程P28では、ガラス基板21上の所定の位置にシール剤35を形成する。この工程は、スクリーン印刷やディスペンサーによる塗布によって行われる。こうして複合対向基板が完成する。
【0075】
この後の工程P31から工程P35は、上記工程で得られた複合素子基板および複合対向基板を組み合わせて液晶表示装置1Aを製造するための工程であるが、これらの工程は第1の実施形態と全く同様に行われるので説明は省略する。
【0076】
以上の製造方法によれば、ガラス基板21上にアーチ状の厚さ分布をもつ機能層58を有する液晶表示装置1Aを製造することができる。これにより、ガラス基板21に対して急冷やイオン置換等の加工を施すことなく、薄膜形成技術を用いてガラス基板21、ひいては液晶表示装置1Aを強化することができる。
【0077】
(第3の実施形態)
上記第2の実施形態は、観察側に配置されたガラス基板21上に機能層58を配置することによって当該ガラス基板21を強化する構成であるが、これに代えて、ガラス基板21上のオーバーコートによって強化する構成とすることもできる。以下ではこうした構成の第3の実施形態に係る液晶表示装置1Bについて、第2の実施形態に係る液晶表示装置1Aとの相違点を中心に説明する。特に、液晶表示装置1Bの素子基板10の構成については液晶表示装置1Aの素子基板10の構成と全く同じであるので説明を省略する。
【0078】
液晶表示装置1Bを、一部の層構造を厚さ方向に拡大して示した断面図を図11に示す。この図からわかるように、液晶表示装置1Bの対向基板20は、ガラス基板21上にカラーフィルタ50、第1オーバーコート51、第2オーバーコート52が形成された構成となっている。ここで、ガラス基板21が本発明における「基板」に対応し、第1オーバーコート51が本発明における「機能層」および「パッシベーション膜」に対応し、第2オーバーコート52が本発明における「平坦化膜」に対応する。
【0079】
第1オーバーコート51は、第2の実施形態における機能層58と同様、その中心部近傍に仮想された略円形の中央部61における厚さの平均値が、当該中央部を除いた周辺部62における厚さの平均値より大きくなっている。第1オーバーコート51は、第2オーバーコート52に比べてガラス基板21の表面に大きな応力を発生させる樹脂材料からなる。第2オーバーコート52は、第2の実施形態におけるオーバーコート52と同一の材料からなり、第1オーバーコート51の厚さの不均一を平坦化する役割を担う。
【0080】
上記のようないわゆるアーチ型の厚さ分布を有する第1オーバーコート51は、ガラス基板21の面の中心部近傍に当該第1オーバーコート51の材料からなる第1の薄膜を形成し、その後同一の材料からなる第2の薄膜を、第1の薄膜を覆って形成することによって形成することができる。
【0081】
以上のような構成によれば、ガラス基板21の背面側表面には、第1オーバーコート51の影響により圧縮応力が発生する。このため、第2の実施形態と同様、ガラス基板21の強度が向上する。これにより、ガラス基板21は、観察側表面から印加される外力に対してある程度抗することができ、液晶表示装置1B、ひいてはこれを組み込んだ電子機器の堅牢性が向上する。
【0082】
(第4の実施形態)
上記各実施形態は、観察側基板のみを強化する構成であるが、これに代えて、観察側基板と背面側基板の両方を強化する構成とすることもできる。以下では、こうした構成の第4の実施形態に係る液晶表示装置1Cについて説明する。
【0083】
液晶表示装置1Cを、一部の層構造を厚さ方向に拡大して示した断面図を図12に示す。液晶表示装置1Cの素子基板10は、第1の実施形態の液晶表示装置1における素子基板10と同一の構成である。また、液晶表示装置1Cの対向基板20は、第2の実施形態の液晶表示装置1Aにおける対向基板20と同一の構成である。すなわち、液晶表示装置1Cは、絶縁層68によって素子基板10のガラス基板11を強化し、かつ機能層58によって対向基板20のガラス基板21を強化する構成となっている。
【0084】
こうした構成によれば、ガラス基板11,21の表面に圧縮応力が発生するので、液晶表示装置1Cは、観察側表面、背面側表面のいずれから外力が印加されたとしてもこれに対してある程度抗することができ、液晶表示装置1C、ひいてはこれを組み込んだ電子機器の堅牢性が向上する。
【0085】
液晶表示装置1Cは、液晶表示装置1の製造方法および液晶表示装置1Aの製造方法を組み合わせた製造方法によって製造することができる。すなわち、複合素子基板については図5における工程P11から工程P17を、複合対向基板については図9における工程P21から工程P28を、また貼り合わせ以降の工程については図5における工程P31から工程P35をそれぞれ採用した製造方法によって製造することができる。
【0086】
(電子機器への搭載例)
本発明を適用した液晶表示装置1(液晶表示装置1Aないし1Cを含む)は、例えば、図14に示す携帯電話機500に搭載して用いることができる。携帯電話機500は、表示部510および操作ボタン520を有している。表示部510は、内部に組み込まれた液晶表示装置1によって、操作ボタン520で入力した内容や着信情報を始めとする様々な情報を表示することができる。携帯電話機500は、観察側ガラス基板が強化された液晶表示装置1を有するので、一般に強度不足となりやすい表示部510においても外部からの衝撃に強いという特徴を有する。また、液晶表示装置1の堅牢性に起因して、主に表示部510に用いる材料の強度などに関して設計の自由度が高いという特徴を有する。
【0087】
なお、本発明を適用した液晶表示装置1は、上記携帯電話機500の他、モバイルコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器、プロジェクタなどの各種電子機器に用いることができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0089】
(変形例1)
上記各実施形態はすべて、少なくとも観察側基板を強化する構成であるが、本発明はこれに限定する趣旨ではなく、背面側基板のみを強化する構成とすることもできる。
【0090】
(変形例2)
上記第4の実施形態においては、対向基板20を観察側、素子基板10を背面側に配置し、両基板とも強化する構成であるが、対向基板20と素子基板10の配置は逆であってもよい。ただし、このときは反射膜78を対向基板20に形成することが好ましい。
【0091】
(変形例3)
上記各実施形態において、絶縁層68、機能層58、第1オーバーコート51は、中央部61の中心部が最も厚く、周辺部62の外縁部に向かうにつれて徐々に薄くなっていく構成となっているが、本発明はこれに限定する趣旨ではない。例えば、図13の断面図における絶縁層68のように、断面が波状となっている構成などであってもよい。この図においては、領域62aおよび領域62bを合わせたものが周辺部62に相当する。ここで、絶縁層68の各領域における厚さの平均値は、中央部61>領域62b>領域62aとなっているが、中央部61における厚さの平均値が周辺部62における厚さの平均値より大きいことに変わりはなく、こうした構成においてもガラス基板11の表面には圧縮応力が働き、強化される。
【0092】
(変形例4)
上記各実施形態では、本発明の「機能層」に対応する薄膜は無機材料又は有機材料であるが、これに代えて金属材料を用いてもよい。基板に形成された金属の薄膜は、基板表面に発生させる応力が大きいため、無機材料の薄膜等よりも薄い薄膜で同様の効果を得ることができる。具体的には、厚さの最大値が100Å以上であれば基板の強化に効果があり、製造プロセスにおける処理時間を鑑みれば5000Å以下とすることが好ましい。
【0093】
(変形例5)
上記各実施形態では、中央部61を、図1に示すように本発明の「機能層」に対応する薄膜の中心部近傍に仮想された略円形の領域であるとしたが、本発明はこの形状に限定する趣旨ではなく、正方形、長方形、五角形その他の多角形、又は楕円形等、どのような形状に仮想してもよい。
【0094】
(変形例6)
本発明の「機能層」に対応する、厚さ分布を有する層を形成するための方法は、上記各実施形態に述べた方法以外に次のような方法を用いてもよい。すなわち、当該機能層の材料を基板上に一様に形成し、ドライエッチングによるパターニングの際にパターンの外縁部のレジストが損傷するようにレジストを配置しておく。このようにすれば、ドライエッチングの工程において機能層の周辺部が一部エッチングされて薄くなり、上記各実施形態と同様な厚さ分布をもつ機能層が得られる。
【0095】
(変形例7)
上記実施形態および各変形例は、TFTをスイッチング素子とするアクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置に関するものであるが、これに代えて、TFD(Thin Film Diode)をスイッチング素子とするもの、パッシブマトリクス駆動方式のもの、液晶モードがTN(Twisted Nematic)モードのもの、又はSTN(Super Twisted Nematic)モードのもの等のいずれにも適用することができる。この他にも、有機EL(Electro Luminescence)パネル、およびDMD(Digital Micromirror Device)等のガラス基板を有する種々の電気光学装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態に係る液晶表示装置の斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る液晶表示装置の画素おける各種素子、配線等の等価回路を示した模式図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の断面図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の製造工程を示す図。
【図6】(a)から(e)は、本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の製造工程を説明するための断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る液晶表示装置の断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る液晶表示装置の断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る液晶表示装置の製造工程を示す図。
【図10】(a)から(e)は、本発明の第2の実施形態に係る液晶表示装置の製造工程を説明するための断面図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る液晶表示装置の断面図。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る液晶表示装置の断面図。
【図13】本発明の変形例に係る液晶表示装置の断面図。
【図14】本発明の実施形態に係る携帯電話機の斜視図。
【符号の説明】
【0097】
1,1A,1B,1C…「電気光学装置」としての液晶表示装置、10…素子基板、11,21…ガラス基板、20…対向基板、50…カラーフィルタ、51,52…オーバーコート、58…機能層、58a,68a…第1の薄膜、58b,68b…第2の薄膜、59,69…透明樹脂層、61…中央部、62…周辺部、67…絶縁層、68…「機能層」としての絶縁層、70…「スイッチング素子」としてのTFT素子、77…コンタクトホール、78…反射膜、79…画素電極、80…液晶、84…対向電極、500…携帯電話機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成され、前記基板の中央部における厚さが、当該中央部の周辺部の厚さよりも大きい機能層と、
前記基板の前記機能層側に配置された電気光学物質と、
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置であって、
前記機能層は、前記中央部における厚さの平均値が、前記周辺部における厚さの平均値よりも大きいことを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気光学装置であって、
前記機能層は絶縁層であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電気光学装置であって、
前記機能層はパッシベーション膜であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記機能層は無機物質であり、前記第1領域における当該機能層の厚さの最大値が1μm以上10μm以下であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項1から3又は5のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記基板は、前記機能層に覆われてなるスイッチング素子と、当該機能層上に配置された画素電極とを有し、
前記スイッチング素子と前記画素電極は、前記機能層に設けられたコンタクトホールを介して電気的に接続されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記機能層の前記電気光学物質側の表面形状は、前記中央部から前記周辺部に向かって厚さが減少する曲面であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電気光学装置であって、
前記機能層に重ねて形成された平坦化膜をさらに有し、
前記平坦化膜が前記基板に及ぼす応力は、前記機能層が前記基板に及ぼす応力よりも小さいことを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
基板の面の中心部近傍に第1の薄膜を形成する工程と、
前記基板上に、前記第1の薄膜を覆って前記第1の薄膜と同一の物質を含む第2の薄膜を形成することにより、前記基板上に前記第1の薄膜と前記第2の薄膜とからなる機能層を形成する工程と、
前記機能層上に電気光学物質を配置する工程と
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−169076(P2007−169076A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364448(P2005−364448)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】