説明

電気光学装置および電子機器

【課題】第1基板と第2基板の間隔の面内ばらつきを低減し、表示品質と歩留まりを向上させる。
【解決手段】駆動トランジスタ24が形成された第1基板51と、有機エレクトロルミネッセンス素子25が形成された第2基板52を、スペーサー54を含有する絶縁性接着剤55で接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置およびそれを備えた電子機器に関する。ここで、「電気光学装置」とは、電気的作用によって発光するあるいは外部からの光の状態を変化させる電気光学素子を備えた装置一般をいい、自ら光を発するものと外部からの光の通過を制御するもの双方を含む。例えば、電気光学素子として、液晶素子、電気泳動素子、EL(エレクトロルミネッセンス)素子、電界の印加により発生した電子を発光板に当てて発光させる電子放出素子を備えたアクティブマトリクス型の表示装置等をいう。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置として、例えば、有機エレクトロルミネッセンス表示装置が知られている。有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、表示装置として先行する液晶表示装置に比べ、薄型軽量、高視野角、高コントラスト等の特徴を有し、さらに、特許文献1に記載されているように、アクティブマトリックス方式で駆動することにより、高精細化、低消費電力化、長寿命化が可能なため、精力的に研究開発が行なわれている。
【0003】
特に、特許文献2および特許文献3に記載されているように、有機エレクトロルミネッセンス素子が形成された第1基板と、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光を制御するための画素回路が形成された第2基板を、有機エレクトロルミネッセンス素子と画素回路が対向するように貼り合わせ、有機エレクトロルミネッセンス素子と画素回路を電気的に接続してなる有機エレクトロルミネッセンス表示装置においては、有機エレクトロルミネッセンス素子からの発光は、有機エレクトロルミネッセンス素子が形成されている第1基板を通過して観察者に視認されるため、画素回路や配線等に遮蔽されることが無いので開口率が飛躍的に向上する。これにより、さらなる低消費電力化、高精細化および長寿命化が可能となり、さらに画素回路と有機エレクトロルミネッセンス素子の設計および製造プロセスを個別に最適化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−241048号公報
【特許文献2】特開平10−333601号公報
【特許文献3】特開平11−3048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2および3に開示された有機エレクトロルミネッセンス表示装置においては、基板の歪みに起因して、第1基板と第2基板の間隔に面内ばらつきが生じ易いという課題が有った。
【0006】
特に有機エレクトロルミネッセンス素子と画素回路を導電性接着剤により接続した場合、第1基板と第2基板の間隔が小さい場所では、導電性接着剤は押しつぶされるので、電流の流れる方向に対して短くなり、且つ、電流の流れる方向に巣直な面に沿って広がるため、電気抵抗が小さくなる。一方、第1基板と第2基板の間隔が大きい場所では、逆に導電性接着剤の電気抵抗が大きくなる。これにより導電性接着剤の電気抵抗にばらつきが生じるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光輝度がばらつき、輝度むらが生じていた。
【0007】
また、第1基板と第2基板の間隔が導電性接着剤の厚さより大きな場所では、有機エレクトロルミネッセンス素子と画素回路が電気的に接続出来ず、第1基板と第2基板の間隔が小さ過ぎる場所では、導電性接着剤が著しく横方向に広がることにより、隣り合う画素回路間や隣り合う有機エレクトロルミネッセンス素子間等で短絡を生じ、製造歩留まりを著しく低下させていた。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決する電気光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明は、電気光学素子が形成された第1基板と、画素回路が形成された第2基板を、前記電気光学素子と前記画素回路が対向するように貼り合わせ、前記電気光学素子と前記画素回路を電気的に接続してなる電気光学装置において、前記第1基板と前記第2基板の間にスペーサーを有することを特徴とする電気光学装置である。
【0010】
請求項1の構成によれば、スペーサーの存在により第1基板と第2基板の間隔を精度良く制御することが可能となり、輝度むらのない電気光学装置を高い歩留まりで得ることが出来る。
【0011】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の電気光学装置において、前記スペーサーは球状または円柱状の粒子であることを特徴とする電気光学装置である。
【0012】
請求項2の構成によれば、スペーサーの高さがスペーサーの向きに依存しないため、スペーサーを印刷法や散布法などの簡便な方法で配置することが可能となり、且つ、第1基板と第2基板の間隔を高い精度で制御することが可能となる。
【0013】
請求項3記載の本発明は、請求項2記載の電気光学装置において、前記第1基板と前記第2基板は、前記スペーサーを含有する絶縁性接着剤により接合されていることを特徴とする電気光学装置である。
【0014】
請求項3の構成によれば、第1基板と第2基板を接合するための絶縁性接着剤を配置する工程とスペーサーを配置する工程を兼ねることが出来るので製造コストを下げることが可能となる。また、スペーサーは絶縁性接着剤により固定されるので、スペーサーの移動に起因する電気光学素子や画素回路の損傷が皆無となり、製造歩留まりをさらに上げることが出来る。
【0015】
請求項4記載の本発明は、請求項2記載の電気光学装置において、前記電気光学素子と前記画素回路は導電性接着剤により接続され、前記スペーサーは前記導電性接着剤中に含有されていることを特徴とする電気光学装置である。
【0016】
請求項4の構成によれば、スペーサーを配置する工程と導電性接着剤を配置する工程を兼ねることが出来るので製造コストを下げることが可能となる。また、スペーサーは導電性接着剤により固定されるので、スペーサーの移動に起因する電気光学素子や画素回路の損傷が皆無となり、製造歩留まりをさらに上げることが可能となる。さらに、スペーサーが導電性接着剤中に存在することにより、導電性接着剤の高さをより精密に制御出来るため、輝度むらをさらに抑制することが可能となる。
【0017】
請求項5記載の本発明は、請求項4記載の電気光学装置において、前記スペーサーが導電性を有することを特徴とする電気光学装置である。
【0018】
請求項5の構成によれば、導電性接着剤中にスペーサーを含有する場合であっても電気光学素子と画素回路の接続抵抗の増大を防止することが出来る。これにより、駆動電圧及び消費電力を下げることが可能となる。
【0019】
請求項6の本発明は、請求項1記載の電気光学装置において、前記スペーサーは感光性樹脂材料からなり、前記第1基板と前記第2基板の何れか一方あるいは両方の所定の位置に、フォトリソグラフィーを用いて形成されていることを特徴とする電気光学装置である。
【0020】
請求項6の構成によれば、スペーサーを所望の位置に所望の形状で精度良く形成出来るので、第1基板と第2基板の間隔をさらに高い精度で制御することが可能となる。
【0021】
請求項7記載の本発明は、請求項1記載の電気光学装置において、前記スペーサーは、前記第1基板上で前記電気光学素子を囲うように設けられた逆テーパ隔壁であることを特徴とする電気光学装置である。
【0022】
請求項7の構成によれば、スペーサーを電気光学素子のカソードセパレータとして利用することが可能である。ここで言うカソードセパレータとは、電気光学素子の陰極を蒸着等により製膜した際に、逆テーパ部分で陰極を切断しうる部材である。第1基板上にカソードセパレータを形成することにより、陰極を蒸着する際のマスクが不要となるとともに、基板とマスクの位置合わせ工程を省くことが可能となるが、逆テーパ隔壁がカソードセパレータとスペーサーを兼ねることによりさらに製造工程が短縮され、製造コストを下げることが可能となる。
【0023】
請求項8記載の本発明は、請求項2記載の電気光学装置において、前記スペーサーはプラスチックを主成分とすることを特徴とする電気光学装置である。
【0024】
スペーサーを用いて第1基板と第2基板の間隔を制御する場合、スペーサーを介在させた状態で第1基板と第2基板を圧着する必要があるが、その際にスペーサーと第1基板の接触する部分および、スペーサーと第2基板の接触する部分に応力が集中するため、電気光学素子または画素回路を構成する素子が破壊される可能性がある。請求項6の構成によれば、スペーサーの適度な弾性により、スペーサーと第1基板の接触する部分および、スペーサーと第2基板の接触する部分に集中する応力を緩和することが可能となる。これにより、電気光学素子または画素回路を構成する素子の破壊を防ぐことが出来る。
【0025】
請求項9記載の本発明は、請求項1から請求項8記載の電気光学装置において、前記スペーサーと前記電気光学素子が、前記第1基板の法線方向に重なる部分を持たないように配置してある事を特徴とする電気光学装置である。
【0026】
スペーサーを用いて第1基板と第2基板の間隔を制御する場合、スペーサーを介在させた状態で第1基板と第2基板を圧着する必要があるが、その際にスペーサーと第1基板の接触する部分に応力が集中するため、スペーサーと電気光学素子が第1基板の法線方向に重なる部分を持つように配置してあると、電気光学素子が破壊される可能性がある。請求項9の構成によれば、電気光学素子の破壊を防止することが可能となる。
【0027】
請求項10記載の本発明は、請求項1から請求項9記載の電気光学装置において、前記画素回路を構成する素子と前記スペーサーが、前記第2基板の法線方向に重なる部分を持たないように配置してある事を特徴とする電気光学装置である。
【0028】
スペーサーを介在させた状態で第1基板と第2基板を圧着する際、スペーサーと第2基板の接触する部分に応力が集中するため、画素回路を構成する素子とスペーサーが第2基板の法線方向に重なる部分を持つように配置してあると、画素回路を構成する素子が破壊される可能性があるが、請求項10の構成によれば、画素回路を構成する素子の破壊を防止することが可能となる。
【0029】
請求項11記載の本発明は、請求項1から請求項10記載の電気光学装置において、前記画素回路は多結晶シリコン薄膜トランジスタにより構成してあることを特徴とする電気光学装置である。
【0030】
請求項11の構成によれば、画素回路表面の凹凸が最小限で済むため、スペーサーを用いた第1基板と第2基板の間隔の制御が容易となるとともに、十分な駆動能力をもつ画素回路を製造することが出来る。
【0031】
請求項12記載の本発明は、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例に用いた画素回路の回路図。
【図2】本発明の一実施例に用いた第1基板の一画素分の断面図。
【図3】本発明の一実施例に用いた第2基板の一画素分の平面図。
【図4】本発明の一実施例に用いた第2基板の一画素分の断面図。
【図5】本発明の一実施例である有機エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図。
【図6】本発明の一実施例に用いた第1基板の一画素分の断面図。
【図7】本発明の一実施例である有機エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図。
【図8】本発明の一実施例に用いた第1基板の一画素分の断面図。
【図9】本発明の一実施例である有機エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
なお、以下、有機エレクトロルミネッセンス素子(表示装置)を例にとって説明するが、本発明の適用範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
図1は本発明の第1の実施例である有機エレクトロルミネッセンス表示装置の回路図である。図1に示してある通り、一つの画素は画素回路21と有機エレクトロルミネッセンス素子25からなる。一つの画素回路21は選択トランジスタ22と、保持容量23と、駆動トランジスタ24と、有機エレクトロルミネッセンス素子25を備え、選択トランジスタ22のゲートは走査線26に、選択トランジスタ22のソースは信号線27に、選択トランジスタ22のドレインは保持容量23の一方の端子に、保持容量23の他方の端子は電源線28に、駆動トランジスタ24のゲートは選択トランジスタ22のドレインに、駆動トランジスタ24のソースは電源線28に、駆動トランジスタ24のドレインはエレクトロルミネッセンス素子25の陰極に、それぞれ接続され、エレクトロルミネッセンス素子25の陽極は、所定の電位に保たれる。
【0036】
走査線26を介して選択トランジスタ22をON状態にすると、輝度に対応した電圧が、信号線27を介して保持容量23と駆動トランジスタ24のゲートに印可され、有機エレクトロルミネッセンス素子25は所望の輝度で発光する。選択トランジスタ22をOFF状態にした後も、駆動トランジスタ24のゲートには、保持容量23に保持される電圧が印可されるため、有機エレクトロルミネッセンス素子25は所望の輝度で発光を続ける。
【0037】
図2は、本発明の第1の実施例である有機エレクトロルミネッセンス表示装置の、第1基板の一画素分の断面図である。図2に示してある通り、第1基板は基板10上に、透明導電材料からなる陽極11と、有機発光層14と、陰極15と、隔壁12を有し、陽極11と、有機発光層14と、陰極15が一つの有機エレクトロルミネッセンス素子25を構成する。
【0038】
以下に、本実施例における第1基板の製造過程を説明する。
【0039】
先ず、基板10として厚さ0.7mmのガラス基板を用意し、基板10上に陽極11を形成した。陽極11としては、有機発光層14が発する光を基板10側から取り出すために、透明導電材料であるITO(インジウム錫酸化物)を用い、スパッタリングにより基板10上に50nm製膜した。
【0040】
次に、有機発光層14を正確に区画するための仕切り部材として、隔壁12を形成した。隔壁12としては、有機発光材料の溶液を適度にはじくこと、数μm程度の厚さで形成出来ること、などが要求される。本実施例では感光性のアクリル樹脂を用い2μmの厚さで隔壁12を形成した。
【0041】
次に、有機発光層14をインクジェット法により形成した。有機発光層14の材料としては、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)やポリフルオレン等の高分子系の発光材料が挙げられる。また、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等を積層して有機発光層14とすることが可能である。本実施例では、発光材料溶液を滴下するに先立って、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)をインクジェット装置により隔壁12に囲まれた領域に滴下し、正孔注入層を形成した。その後に、赤の画素においてはローダミン101をPPVに添加したものを、緑の画素においてはPPVを、青の画素においてはポリジオクチルフルオレンを、それぞれ発光材料として用い、インクジェット装置を用いて隔壁12に囲まれた領域に滴下し、有機発光層14を形成した。
【0042】
次に、陰極材料をマスク越しに蒸着することで陰極15を形成した。陰極15の材料としては、有機発光層14に効率よく電子を注入出来るように、なるべく仕事関数の小さな金属が適しており、例えば、カルシウム、マグネシウム、或いはそれらの合金若しくは化合物等が利用可能である。また、これらの陰極材料が、酸素や水分によりに酸化するのを防ぐため、アルミや銀等の比較的安定な金属を、陰極材料の上に形成することが好ましい。本実施例においては、カルシウムを50nmの厚さで有機発光層14の上に蒸着し、さらにその上にアルミを250nmの厚さで蒸着し、陰極15とした。
【0043】
以上のようにして、第1基板を製造した。なお、本実施例では有機発光層14として、高分子系の発光材料をインクジェット法により形成したが、Alq3(アルミキノリノール錯体)等の低分子系の発光材料を蒸着法等により形成することも可能である。
【0044】
図3は、本発明の第1の実施例である有機エレクトロルミネッセンス表示装置の、第2基板の一画素分の平面図である。一つの画素回路21は選択トランジスタ22と、保持容量23と、駆動トランジスタ24からなる。
【0045】
図4は、図3のC−D断面を描いたものである。基板10上に形成された駆動トランジスタ24は、能動層32と、ソース33と、ドレイン34と、ゲート絶縁膜35と、ゲート電極36から構成され、駆動トランジスタ24のソースは電源線28に、駆動トランジスタ24のドレインは電極パッド40を通じて画素電極42に接続される。
【0046】
以下に、本実施例における第2基板の製造過程を説明する。なお、本実施例では、請求項11に記載したとおり、選択トランジスタ22および駆動トランジスタ24として、多結晶シリコン薄膜を半導体層とする多結晶シリコン薄膜トランジスタを利用した。
【0047】
基板10としては、厚さ0.7mmの無アルカリガラスを用いた。本実施例の場合、有機エレクトロルミネッセンス素子からの発光は、第1基板側に取り出されるため、基板10は透明である必要はないが、既存の多結晶シリコン薄膜トランジスタ製造装置をそのまま活用するため、ガラス基板を使用した。
【0048】
先ず、基板10上にPECVD装置を用いてアモルファスシリコン薄膜を堆積した後、アモルファスシリコン薄膜にエキシマレーザーを照射することにより厚さ50nmの多結晶シリコン薄膜を得た。そのようにして形成した多結晶シリコン薄膜を、フォトリソグラフィーとエッチングにより島状にパターニングした。
【0049】
次に、PECVD装置を用いて厚さ75nmのSiO2薄膜を製膜し、ゲート絶縁膜35とした。
【0050】
ゲート絶縁膜35を形成した後、イオン注入装置を用いて、多結晶シリコン薄膜の、保持容量23を形成する領域に燐イオンを注入した。
【0051】
次に、スパッタリングにより厚さ400nmのタンタル薄膜を製膜し、このタンタル薄膜をフォトリソグラフィーとエッチングにより所定の形状にパターニングしてゲート電極36とした。
【0052】
次に、多結晶シリコン薄膜のソース33およびドレイン34を形成する領域に、イオン注入装置を用いて不純物を注入した。なお、選択トランジスタ22と駆動トランジスタ24は、双方がn型でも、双方がp型でも、あるいは一方がp型で他方がn型であっても駆動回路として機能させることが可能であり、n型のトランジスタを形成する領域には燐イオンを、p型のトランジスタを形成する領域にはボロンイオンを注入するのが好ましい。また、不純物の注入はゲート電極36をマスクとして自己整合的に行うことが好ましい。
【0053】
不純物の注入が終わった後、基板全体を摂氏400度で1時間加熱し、注入した不純物の活性化を図った。
【0054】
上述のようにして、駆動トランジスタ24および保持容量23を形成した。なお、図4に図示されていない選択トランジスタ22も駆動トランジスタ24と同じ工程により形成した。
【0055】
駆動トランジスタ24、選択トランジスタ22、および保持容量23を形成した後、PECVD装置を用いて層間絶縁膜38を製膜し、フォトリソグラフィーとエッチングによりコンタクトホールを形成した。層間絶縁膜38には厚さ500nmのSiO2を用いた。
【0056】
次に、信号線27、電源線28および電極パッド40を形成した。信号線27、電源線28および電極パッド40には、厚さ800nmのアルミを用いたが、アルミによりソース33およびドレイン34のシリコン薄膜が侵食されないように、アルミの製膜に先立って厚さ50nmのチタンを製膜し、チタンとアルミの積層膜をフォトリソグラフィーとエッチングによりパターニングした。
【0057】
次に、第二層間絶縁膜41を製膜し、コンタクトホールを形成した後、画素電極42を形成した。第二層間絶縁膜41には感光性を有するアクリル樹脂を用い、画素電極42には厚さ500nmのアルミを用いた。
【0058】
以上のようにして第2基板を製造した。なお、本実施例では第2基板上に画素回路のみ製造したが、必要に応じて、走査線駆動回路、信号線駆動回路などを集積することが可能である。
【0059】
次に、上述のようにして製造された第1基板と第2基板を貼り合わせる工程を、図5を参照しつつ説明する。
【0060】
図5は本発明の第1の実施例である有機エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図である。
【0061】
本実施例では、第1基板51と第2基板52を機械的且つ電気的に接続するために導電性接着剤53を用い、請求項4に記載したとおり、導電性接着剤53中にスペーサー54を含有させることで、第1基板51と第2基板52の間隔を制御した。
【0062】
導電性接着剤53としては、例えば、株式会社スリーボンドの3300シリーズや、太陽金網株式会社のCHO−BOND SV712等の熱硬化型の導電性接着剤が利用可能であるが、導電性接着剤53中に溶剤が含まれると有機エレクトロルミネッセンス素子の有機発光層に悪影響を与えるため、溶剤を含まない接着剤を用いるのが好ましい。本実施例では株式会社スリーボンドの3301Bを用いた。この導電性接着剤は、120℃で1時間加熱することにより硬化する無溶剤タイプの導電性接着剤である。
【0063】
スペーサー54としては、球状のプラスチック粒子に金メッキを施したものを用い、導電性接着剤に10%の割合で混合した。
【0064】
スペーサー54の混入した導電性接着剤53を、スクリーン印刷機を用いて画素電極42上に印刷した後、第1基板51と第2基板52を、有機エレクトロルミネッセンス素子25の陰極15と駆動トランジスタ24の画素電極42が対向するように位置合わせし、第1基板51と第2基板52を圧着した状態でオーブン内に移し、オーブン内を窒素ガスでパージしながら摂氏120度で60分加熱することで導電性接着剤53を硬化させた。
【0065】
導電性接着剤53が硬化した後、貼り合わされた第1基板51と第2基板52を、窒素置換されたグローブボックス中に移し、第1基板51と第2基板52の外周部にシール剤(図示せず)を塗布し、第1基板と第2基板で挟まれた空間を完全に密閉した。シール剤としては、二液性常温硬化タイプのエポキシ接着剤を用い、塗布後にグローブボックス中で一昼夜放置することで硬化させた。
【0066】
上述のようにして得られた有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、輝度むらがなく、良好な表示性能を示した。
【0067】
特に、請求項4に記載したとおり導電性接着剤53中にスペーサー54を含有させることで、スペーサー54を配置する工程と導電性接着剤53を配置する工程を兼ねることが可能となり、これにより製造コストを下げることが出来た。さらに、スペーサー54は導電性接着剤53により固定されるので、スペーサー54の移動に起因する有機エレクトロルミネッセンス素子25や画素回路21の損傷を防止することが出来た。また、スペーサー54が導電性接着剤53中に存在することにより、導電性接着剤53の高さを精密に制御することが出来た。
【0068】
また、スペーサー54にメッキを施してあるので、請求項5に記載したとおりスペーサーが導電性を有するため、有機エレクトロルミネッセンス素子25と画素回路21の接続抵抗の増大を防止することが出来た。これにより、駆動電圧及び消費電力を下げることが可能となった。
【0069】
また、請求項8に記載したとおりプラスチックを主成分とするスペーサーを用いたため、スペーサーの適度な弾性により、スペーサー54と第1基板51の接触する部分および、スペーサー54と第2基板52の接触する部分に集中する応力を緩和出来た。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子25および画素回路21を構成する素子が破壊されるの防ぐことが出来た。
【実施例2】
【0070】
図6は本発明の第2の実施例である有機エレクトロルミネッセンス表示装置の第1基板の断面図である。図6に示してある通り、第1基板は基板10上に、透明導電材料からなる陽極11と、有機発光層14と、陰極15と、隔壁12を有し、陽極11と、有機発光層14と、陰極15が一つの有機エレクトロルミネッセンス素子25を構成する。本実施例における第1基板の構成は第1の実施例と同じであり、その製造工程も第1の実施例と全く同じであるが、有機エレクトロルミネッセンス素子25を若干小さめに製造してある。
【0071】
図7は本発明の第2の実施例である有機エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図である。本実施例の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の回路構成は、第1の実施例と全く同じであり、第2基板には第1の実施例と同じ物を用いた。
【0072】
本実施例においては、第1基板51と第2基板52を電気的且つ機械的に接続するために導電性接着剤53を用いるとともに、請求項3に記載したとおり、スペーサー54を含有する絶縁性接着剤55により第1基板51と第2基板52を接合した。
【0073】
以下、その製造工程について説明する。
【0074】
前述の如く、本実施例に用いた第1基板51および第2基板52は、第1の実施例と全く同じ工程で製造したものである。但し、第1基板51に関しては、有機エレクトロルミネッセンス素子25を若干小さめに製造してあり、有機エレクトロルミネッセンス素子25を避けた位置に、スペーサー54を含有する絶縁性接着剤55を、スクリーン印刷機を用いて印刷した。
【0075】
絶縁性接着剤55としては熱硬化型のエポキシ接着剤を用いた。また、スペーサー54としては球状のガラス粒子を用い、絶縁性接着剤55中に15%の割合で混合した。
【0076】
次に、導電性接着剤53を、スクリーン印刷機を用いて画素電極42上に印刷した後、第1基板51と第2基板52を、有機エレクトロルミネッセンス素子25の陰極15と駆動トランジスタ24の画素電極42が対向するように位置合わせし、第1基板51と第2基板52を圧着した状態でオーブン内に移し、オーブン内を窒素ガスでパージしながら摂氏120度で60分加熱することで導電性接着剤53および絶縁性接着剤55を硬化させた。なお、導電性接着剤53には第1の実施例と同じ物を利用した。
【0077】
導電性接着剤53および絶縁性接着剤55が硬化した後、貼り合わされた第1基板51と第2基板52を、窒素置換されたグローブボックス中に移し、第1基板51と第2基板52の外周部にシール剤(図示せず)を塗布し、第1基板と第2基板で挟まれた空間を完全に密閉した。シール剤としては、二液性常温硬化タイプのエポキシ接着剤を用い、塗布後にグローブボックス中で一昼夜放置することで硬化させた。
【0078】
上述のようにして得られた有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、輝度むらがなく、良好な表示性能を示した。
【0079】
特に、請求項3に記載したとおり、スペーサー54を含有する絶縁性接着剤55により第1基板51と第2基板52を接合したことにより、スペーサー54を配置する工程と絶縁性接着剤55を配置する工程を兼ねることが出来た。また、スペーサー54は絶縁性接着剤55により固定され、スペーサー54の移動に起因する有機エレクトロルミネッセンス素子25および画素回路21の損傷を防止することが出来た。
【0080】
また、請求項9に記載したとおり、スペーサー54と有機エレクトロルミネッセンス素子25が、第1基板51の法線方向に重なる部分を持たないように配置してあるため、スペーサー54による有機エレクトロルミネッセンス素子25の破壊を確実に防止出来た。
【実施例3】
【0081】
図8は本発明の第3の実施例である有機エレクトロルミネッセンス表示装置における第1基板の断面図である。なお、本実施例の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の回路構成は、第1の実施例と全く同じである。
【0082】
以下、第1基板の製造工程を説明する。
【0083】
基板10上に、第1の実施例と同様にして陽極および隔壁を形成した後、逆テーパ隔壁13を形成した。この逆テーパ隔壁13は、第1基板と第2基板間隔を制御するためのスペーサーとして働くのみならず、有機エレクトロルミネッセンス素子25のカソードセパレータとして機能する部材である。
【0084】
ここで言うカソードセパレータとは、有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極を蒸着等により製膜した際に、逆テーパ部分で陰極を切断しうる部材である。第1基板上にカソードセパレータを形成することにより、陰極を蒸着する際のマスクが不要となるとともに、基板とマスクの位置合わせ工程を省くことが可能となるが、逆テーパ隔壁13がカソードセパレータとスペーサーを兼ねることによりさらに製造工程が短縮され、製造コストを下げることが可能となる。
【0085】
逆テーパ隔壁13を形成した後、第1の実施例と同様にして、有機発光層14をインクジェット法により形成し、その上から陰極材料を蒸着した。陰極材料は逆テーパ隔壁13により画素ごとに分断され、陰極15が形成された。
【0086】
以上のようにして第1基板を製造した。なお、有機発光層14および陰極15の材料は、第1の実施例と同じ物を用いた。
【0087】
図9は本発明の第3の実施例である有機エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図である。
【0088】
本実施例においては、第1基板51と第2基板52を機械的且つ電気的に接続するために導電性接着剤53を用い、前述したとおり、逆テーパ隔壁13をスペーサーとして利用した。
【0089】
以下、その製造工程について説明する。
【0090】
本実施例に用いた第2基板52は、第1の実施例と全く同じ工程で製造したものである。
【0091】
スクリーン印刷機を用いて、第2基板52の画素電極42上に導電性接着剤53を印刷した後、第1基板51と第2基板52を、有機エレクトロルミネッセンス素子25の陰極15と駆動トランジスタ24の画素電極42が対向するように位置合わせし、第1基板51と第2基板52を圧着した状態でオーブン内に移し、オーブン内を窒素ガスでパージしながら摂氏120度で60分加熱することで導電性接着剤53を硬化させた。なお、導電性接着剤53には第1の実施例と同じ物を用いた。
【0092】
導電性接着剤53が硬化した後、貼り合わされた第1基板51と第2基板52を、窒素置換されたグローブボックス中に移し、第1基板51と第2基板52の外周部にシール剤(図示せず)を塗布し、第1基板と第2基板で挟まれた空間を完全に密閉した。シール剤としては、二液性常温硬化タイプのエポキシ接着剤を用い、塗布後にグローブボックス中で一昼夜放置することで硬化させた。
【0093】
上述のようにして得られた有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、輝度むらがなく、良好な表示性能を示した。
【0094】
特に、前述したとおり、逆テーパ隔壁13がカソードセパレータとスペーサーを兼ねることにより製造工程が大幅に短縮され、製造コストを下げることが出来た。
【0095】
また、請求項9に記載したとおり、スペーサーとして機能する逆テーパ隔壁13と有機エレクトロルミネッセンス素子25が、第1基板51の法線方向に重なる部分を持たないように配置してあるため、スペーサーによる有機エレクトロルミネッセンス素子25の破壊を確実に防止出来た。
【0096】
また、請求項10に記載したとおり、スペーサーとして機能する逆テーパ隔壁13と、画素回路21を構成する素子とが、第1基板51の法線方向に重なる部分を持たないように配置してあるため、スペーサーにより画素回路21を構成する素子が破壊されるのを確実に防止出来た。
【0097】
本発明に係る表示装置は、あらゆる電子機器に適用可能である。例えば、モバイル型パーソナルコンピュータ、携帯電話、ビューワ、ゲーム機等の携帯情報端末、電子書籍、電子ペーパ、表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイなどにも活用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、例えばアモルファスシリコン薄膜トランジスタや単結晶シリコントランジスタで駆動回路を構成する場合や、低分子型の有機エレクトロルミネッセンス素子を利用する場合にも適用可能である。
【0099】
また、上記実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた表示装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、インクジェットプリンター用ヘッド等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 基板、11 陽極、12 隔壁、13 逆テーパ隔壁、14 有機発光層、15 陰極、16 封止材、17 封止基板、19 隔壁開口部、21 画素回路、22 選択トランジスタ、23 保持容量、24 駆動トランジスタ、25 有機エレクトロルミネッセンス素子、26 走査線、27 信号線、28 電源線、32 能動層、33 ソース、34 ドレイン、35 ゲート絶縁膜、36 ゲート電極、38 層間絶縁膜、40 電極パッド、41 第二層間絶縁膜、42 画素電極、51 第1基板、52 第2基板、53 導電性接着剤、54 スペーサー、55 絶縁性接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学素子が形成された第1基板と、画素回路が形成された第2基板を、前記電気光学素子と前記画素回路が対向するように貼り合わせ、前記電気光学素子と前記画素回路を電気的に接続してなる電気光学装置において、前記第1基板と前記第2基板の間にスペーサーを有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1記載の電気光学装置において、前記スペーサーは球状または円柱状の粒子であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の電気光学装置において、前記第1基板と前記第2基板は、前記スペーサーを含有する絶縁性接着剤により接合されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の電気光学装置において、前記電気光学素子と前記画素回路は導電性接着剤により接続され、前記スペーサーは前記導電性接着剤中に含有されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項4記載の電気光学装置において、前記スペーサーが導電性を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項1記載の電気光学装置において、前記スペーサーは感光性樹脂材料からなり、フォトリソグラフィーを用いて前記第1基板と前記第2基板の何れか一方あるいは両方の所定の位置に形成してあることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項1記載の電気光学装置において、前記スペーサーは、前記第1基板上で前記電気光学素子を囲うように設けられた逆テーパ隔壁であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項2記載の電気光学装置において、前記スペーサーはプラスチックを主成分とすることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8記載の電気光学装置において、前記スペーサーと前記電気光学素子が、前記第1基板の法線方向に重なる部分を持たないように配置してある事を特徴とする電気光学装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9記載の電気光学装置において、前記画素回路を構成する素子と前記スペーサーが、前記第2基板の法線方向に重なる部分を持たないように配置してある事を特徴とする電気光学装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10記載の電気光学装置において、前記画素回路は多結晶シリコン薄膜トランジスタにより構成してあることを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−28283(P2011−28283A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205212(P2010−205212)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【分割の表示】特願2004−120320(P2004−120320)の分割
【原出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】