説明

電気光学装置および電子機器

【課題】隣り合う画素電極間の横電界の影響を受け難い電気光学装置、電子機器を提供すること。
【解決手段】電気光学装置としての液晶装置100は、複数の画素電極15が設けられた第1基板としての素子基板10と、共通電極23が設けられた第2基板としての対向基板20と、両基板に挟持された液晶層50とを有し、対向基板20は、素子基板10の隣り合う画素電極15間に対向する部分であって、隣り合う画素電極15の外縁部と平面的に重なる光透過性の凸部22aを備え、共通電極23は、凸部22aを覆うように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記電気光学装置として、液晶層を挟持する一対の基板のうちの一方の基板に画素電極と該画素電極を駆動するスイッチング素子とを設け、他方の基板に該画素電極に対向する共通電極を設けたアクティブ駆動型の液晶装置が知られている。
このようなアクティブ駆動型の液晶装置は、画素電極と共通電極との間に駆動電位を与えて生じた電界効果により、正または負の誘電異方性を有する液晶分子の配向状態を制御して、液晶層を通過しようとする偏光を光変調することにより表示を実現するものである。その一方で、隣り合う画素電極間に異なる電位が与えられると、共通電極との間だけでなく隣り合う画素電極間にも電界(横電界)が生じ、液晶分子の配向制御状態を妨げてコントラストなどの光学特性を低下させてしまうという課題があった。
【0003】
このような課題を改善するために、特許文献1には、一方の基板の表面における非開口領域に段差を形成し、当該段差に掛かるように隣り合う画素電極のうちの一方の画素電極を形成して、隣り合う画素電極の相隣接する縁部の高さを異ならせる構成が開示されている。また、特許文献2には、画素の開口領域に重なる第1画素電極部分と、開口領域よりも外側の非開口領域に形成され、第1画素電極部分よりも膜厚が厚い第2画素電極部分とを有するように画素電極を構成することが開示されている。
【0004】
上記特許文献1および特許文献2によれば、隣り合う画素電極の相隣接する縁部と、共通電極(対向電極)との間の距離が、開口領域の部分に比べて狭くなり、当該縁部における画素電極と共通電極(対向電極)との間の電界強度が強まるので、横電界による光学特性の低下を抑制できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−121805号公報
【特許文献2】特開2009−192829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のように非開口領域に設けられた段差に掛かるように一方の画素電極を精度よくパターニングすることは、画素が高精細になるほど難しいという課題を有している。
また、上記特許文献2では、第1画素電極部分の非開口領域に重なる部分において膜厚が厚い第2画素電極部分を形成する方法として、少なくとも2回のフォトリソグラフィー工程(パターニング工程)を用いており、第2画素電極部分を精度よくパターニングすることが難しく、製造工程が複雑であるという課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例の電気光学装置は、複数の画素電極が設けられた第1基板と、共通電極が設けられた第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とに挟持された液晶層とを有する電気光学装置であって、前記第2基板は、前記第1基板の隣り合う前記画素電極間に対向する部分であって、隣り合う前記画素電極の外縁部とそれぞれ平面的に重なる光透過性の凸部を備え、前記共通電極は、前記凸部を覆うように設けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、電気光学装置の駆動時に液晶層を挟んで互いに対向する凸部を覆う共通電極の部分と画素電極の外縁部との間の電界強度が、他の共通電極の部分と画素電極との間の電界強度に比べて強くなる。したがって、隣り合う画素電極に横電界が生じた場合でも、該横電界に起因する画素電極の外縁部近傍の液晶分子の配向の乱れを抑制できる。すなわち、該横電界におけるコントラストなどの光学特性の低下が抑制され、高い表示品位を有する電気光学装置を提供できる。
また、画素電極を有する第1基板側に凸部を設ける場合に比べて、第2基板側に凸部を設けているので、共通電極のパターニングには影響を及ぼさず、画素電極のパターニング精度を低下させることがない。
【0010】
[適用例2]上記適用例の電気光学装置において、前記複数の画素電極は、前記第1基板上において第1方向と前記第1方向に交差する第2方向とに配置され、前記凸部は、前記第1方向と前記第2方向とに沿った前記画素電極間に対向する部分に設けられているとしてもよい。
この構成によれば、画素電極の配列に対応して、第1方向および第2方向において隣り合う画素電極間の横電界による液晶分子の配向の乱れを抑制できる。すなわち、複数の画素電極を備えた表示領域の行方向と列方向とにおいて、横電界による表示品位の低下を抑制できる。
【0011】
[適用例3]上記適用例の電気光学装置において、前記凸部によって前記第2基板の前記液晶層に面する側の表面に生じた段差の大きさが、前記画素電極と前記共通電極との間の前記液晶層の厚みの5%以上20%以下であることが好ましい。
この構成によれば、凸部を設けることにより生ずる共通電極上の段差を5%以上とすることで横電界の影響を受け難い共通電極と画素電極の外縁部との間の電界強度を確保できる。また、当該段差を20%以下にすることにより、共通電極と画素電極の外縁部との間の液晶層の厚みが他の部分に比べて薄くなることによる光学的な透過率の減少などの影響を受け難くすることができる。すなわち、コントラストなどの光学特性の最適化を図ることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例の電気光学装置において、前記凸部は、前記第2基板と前記共通電極との間に設けられた層間膜層に設けられているとしてもよい。
これによれば、例えば層間膜層をパターニングして凸部を構成できるので、第2基板に凸部を形成する工程を専用に設けなくてもよい。
【0013】
[適用例5]上記適用例の電気光学装置において、前記複数の画素電極は、前記第1基板上において第1方向と前記第1方向に交差する第2方向とに配置され、前記画素電極を有する画素は、光学的に光が通過する開口部と光が遮光される非開口部とを備え、前記凸部の前記第1方向または前記第2方向における幅は、前記非開口部の前記第1方向または前記第2方向の幅よりも広いことが望ましい。
この構成によれば、非開口部に沿った部分における横電界の影響を低減し、開口部において所望の光学特性を確保できる。
【0014】
[適用例6]上記適用例の電気光学装置において、前記凸部の前記第1方向または前記第2方向における幅は、前記非開口部の前記第1方向または前記第2方向の幅に0.5μmを加えた長さ以上、かつ前記開口部の前記第1方向または前記第2方向の幅の40%以下の長さであることが好ましい。
この構成によれば、非開口部に沿った部分における横電界の影響を確実に低減し、開口部における透過率の低下を抑制して、所望の光学特性を確保できる。
【0015】
[適用例7]上記適用例の電気光学装置において、隣り合う前記画素電極の外縁部は、前記非開口部と平面的に重なっていることが望ましい。
この構成によれば、横電界による液晶分子の配向の乱れに起因するコントラストなどの光学特性の低下をより目立ち難くすることができる。
【0016】
[適用例8]本適用例の電子機器は、上記適用例の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、高い表示品位を有する電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、(b)は(a)のH−H’線で切った概略断面図。
【図2】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】画素の構造を示す概略平面図。
【図4】図3のF−F’線で切った液晶装置の概略断面図。
【図5】従来の液晶装置における画素の概略断面図。
【図6】凸部の構成例と表示品質の評価結果との関係を示す表。
【図7】横電界による表示品質への影響を評価する方法を説明する概略平面図。
【図8】電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図。
【図9】(a)は対向基板における凸部の平面的な形状を示す概略斜視図、(b)は変形例の凸部の平面的な形状を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0019】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0020】
本実施形態では、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor;TFT)を画素のスイッチング素子として備えた電気光学装置としてのアクティブマトリクス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0021】
<液晶装置>
まず、本実施形態の液晶装置について、図1および図2を参照して説明する。図1(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は同図(a)のH−H’線で切った概略断面図、図2は液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0022】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の液晶装置100は、第1基板としての素子基板10と、第2基板としての対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層50とを有する。素子基板10および対向基板20は、透明な例えば石英などのガラス基板が用いられている。
【0023】
素子基板10は対向基板20よりも一回り大きく、両基板は、額縁状に配置されたシール材40を介して接合され、その隙間に正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50を構成している。シール材40は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材40には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0024】
額縁状に配置されたシール材40の内側には、同じく額縁状に見切り部21が設けられている。見切り部21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、見切り部21の内側が複数の画素Pを有する表示領域Eとなっている。見切り部21は遮光性を有することから、以降、遮光膜21と呼ぶこともある。
【0025】
素子基板10の1辺部に沿ったシール材40との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材40の内側に検査回路103が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材40の内側に走査線駆動回路102が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部のシール材40の内側には、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続端子104に接続されている。
以降、該1辺部に沿った方向をX方向(第1方向)とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向(第2方向)として説明する。
なお、検査回路103の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路101と表示領域Eとの間のシール材40の内側に沿った位置に設けてもよい。
【0026】
図1(b)に示すように、素子基板10の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた光透過性を有する画素電極15およびスイッチング素子としての薄膜トランジスター30と、信号配線と、これらを覆う配向膜18とが形成されている。
【0027】
対向基板20の液晶層50側の表面には、見切り部21と、これを覆うように成膜された層間膜層22と、層間膜層22を覆うように設けられた共通電極23と、共通電極23を覆う配向膜24とが設けられている。
【0028】
見切り部21は、図1(a)に示すように平面的にデータ線駆動回路101や走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置において額縁状に設けられている。これにより対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0029】
層間膜層22は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して見切り部21を覆うと共に、素子基板10の画素電極15間に対向する部分に凸部22a(図4参照)が設けられている。このような凸部22aを有する層間膜層22の形成方法としては、例えば見切り部21を覆って無機材料を成膜し、CMPなどの平坦化処理を施して表面を一旦平坦化した後に、凸部22aを形成する部分をレジストで被覆して湿式または乾式のエッチングを施す方法が挙げられる。見切り部21を覆って形成される層間膜層22を利用して凸部22aを形成しているので、凸部22aを形成するために新たな光透過性材料を対向基板20に成膜する工程は不要である。凸部22aの詳細については後述する。
【0030】
共通電極23は、例えばITOなどの透明導電膜からなり、層間膜層22を覆うと共に、図1(a)に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
【0031】
画素電極15を覆う配向膜18および共通電極23を覆う配向膜24は、例えばポリイミドなどの有機材料を用いて成膜され、その表面を所定の方向にラビングすることにより略水平配向処理が施されたものや、SiOx(酸化シリコン)などの無機材料を斜方蒸着して略垂直配向処理が施されたものを採用することができる。
【0032】
図2に示すように、液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する信号線としての複数の走査線3aおよび複数のデータ線6aと、走査線3aに対して一定の間隔を置いて平行するように配置された容量線3bとを有する。
【0033】
走査線3aとデータ線6aならびに容量線3bと、これらの信号線類により区分された領域に、画素電極15と、TFT30と、保持容量16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0034】
走査線3aはTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30のソースに電気的に接続されている。画素電極15はTFT30のドレインに電気的に接続されている。
データ線6aはデータ線駆動回路101(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路101から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは走査線駆動回路102(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路102から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。データ線駆動回路101からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣接する複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路102は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
【0035】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極15に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極15を介して液晶層50に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極15と液晶層50を介して対向配置された共通電極23との間で一定期間保持される。
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極15と共通電極23との間に形成される液晶容量と並列に保持容量16が接続されている。保持容量16は、TFT30のドレインと容量線3bとの間に設けられている。
【0036】
なお、図1(a)に示した検査回路103には、データ線6aが接続されており、液晶装置100の製造過程において、上記画像信号を検出することで液晶装置100の動作欠陥などを確認できる構成となっているが、図2の等価回路では省略している。また、検査回路103は、上記画像信号をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング回路、データ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して供給するプリチャージ回路を含むものとしてもよい。
【0037】
このような液晶装置100は透過型であって、画素Pが非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードや、非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光学設計に応じて、液晶の誘電異方性や配向膜18,24の選定が行われると共に、光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が配置されて用いられる。
【0038】
図3は画素の構造を示す概略平面図、図4は図3のF−F’線で切った概略断面図、図5は従来の液晶装置における画素の概略断面図である。
【0039】
図3に示すように、液晶装置100における画素Pは、例えば平面的に略四角形の開口部を有する。開口部は、X方向とY方向とに延在し格子状に設けられた遮光性の非開口部により囲まれている。格子状の非開口部における交差部はX方向とY方向とにおいて拡幅されている。
【0040】
X方向に延在する非開口部には、図2に示した走査線3aや容量線3bが設けられている。言い換えれば、低抵抗配線材料からなる走査線3aや容量線3bによって非開口部の少なくとも一部が構成されている。
【0041】
同じく、Y方向に延在する非開口部には、図2に示したデータ線6aが設けられている。言い換えれば、低抵抗配線材料からなるデータ線6aによって非開口部の少なくとも一部が構成されている。
【0042】
上述した非開口部の交差部には、図2に示したTFT30や保持容量16が設けられている。また、図3においては図示省略したが、TFT30の光誤動作を防止するために、当該交差部に遮光膜を設けて非開口部の少なくとも一部を構成している。
【0043】
非開口部は、素子基板10側に設けられ、X方向およびY方向に延在している上記信号線類や上記交差部に対応して設けられた上記遮光膜によって構成されるだけでなく、対向基板20側において格子状にパターニングされた遮光膜21により構成されるとしてもよい。
【0044】
図4に示すように、素子基板10は、前述した信号線類やTFT30や保持容量16を含む画素回路部11と、画素回路部11上に設けられた複数の画素電極15とを有する。また、画素回路部11は、隣り合う画素電極15の外縁部と平面的に重なり合う位置に設けられた遮光膜13を有する。
【0045】
対向基板20は、素子基板10の遮光膜13と平面的に重なる位置に設けられた遮光膜21と、遮光膜21を覆う層間膜層22とを有する。層間膜層22には、画素電極15間に対向する部分に凸部22aが設けられている。共通電極23は、凸部22aを覆って層間膜層22上に設けられている。
【0046】
すなわち、素子基板10に設けられた遮光膜13と対向基板20に設けられた遮光膜21とによって非開口部が構成されている。凸部22aは非開口部に重なって配置されており、凸部22aのX方向における幅L2は、非開口部のX方向の幅L1よりも広い(大きい)。なお、Y方向における凸部22aの幅も同様であるが、凸部22aのX方向の幅とY方向の幅とを同じにする必要はない。非開口部のX方向の幅およびY方向の幅に対応して設定される。
【0047】
図4では、配向膜18および配向膜24を図示省略したが、素子基板10と対向基板20とによって挟持された液晶層50の厚みをt0とする。層間膜層22の凸部22aの高さをhとする。凸部22aを覆う共通電極23と画素電極15の外縁部との間の液晶層50の厚みは、凸部22aの高さhの分だけt0よりも小さく(薄く)なる。
【0048】
図5に示すように、従来の液晶装置300は、基本的に本実施形態の液晶装置100から層間膜層22における凸部22aの構成を除いたものである。したがって、画素電極15に対向する共通電極23の表面には凹凸が無い構成となっている。
【0049】
このような従来の液晶装置300において、画素電極15と共通電極23との間に電位を与えて液晶層50を駆動するとき、隣り合う画素電極15間に横電界(図5では円弧状の矢印で示した)が生じた場合には、隣り合う画素電極15の外縁部と共通電極23との間の電界方向(図5では同じく直線的な矢印で示した)は横電界の影響を受ける。
【0050】
正の誘電異方性を有する液晶分子は電界方向にほぼ平行な状態に配列する。また、負の誘電異方性を有する液晶分子は電界方向にほぼ直交する方向に配列する。したがって、ノーマリーホワイトモードの画素P(開口部)における液晶層50の配向状態は、液晶層50の駆動によって光の透過率が非駆動時に比べて下降するも、隣りの画素Pが駆動状態でない所謂横電界が生ずる状態では、非開口部における液晶分子の配列が横電界の影響を受けるので、駆動されていない隣の画素Pからの光漏れが生じ易い。すなわち、コントラストの低下をもたらす。
【0051】
これに対して、図4に示すように、本実施形態の液晶装置100では、対向基板20において非開口部と平面的に重なると共に非開口部の幅L1よりも幅広の凸部22aを有している。したがって、共通電極23の凸部22aを覆う部分と画素電極15の外縁部との間に生ずる電界は、当該部分の液晶層50の厚みが他の部分に比べて小さく(薄く)なるので、電界強度が他の部分に比べて強くなる。よって、隣り合う画素電極15間に横電界が生じても、従来の液晶装置300に比べて横電界の影響を受け難くなる。それゆえに、横電界に起因する液晶分子の配向の乱れでコントラストなどの光学特性が低下することを抑制できる。
【0052】
横電界の影響を開口部内に生じさせないという観点で、凸部22aは非開口部の幅L1よりも幅広に設定し、且つ開口部にはみ出させるので、開口部における透過率を低下させないように透明性を有することが必要である。
【0053】
また、同じく隣り合う画素電極15の横電界の影響を開口部内に生じさせないという観点では、画素電極15の外縁部が平面的に非開口部に重なるように画素電極15を配置することが好ましい。これにより横電界の影響が液晶層50に及ぶ範囲を少なくして、所望の光学特性を確保することができる。
【0054】
次に、より具体的な凸部22aの構成例を挙げて、その効果を説明する。図6は凸部の構成例と表示品質の評価結果との関係を示す表、図7は横電界による表示品質への影響を評価する方法を説明する概略平面図である。
この場合、図3に示した画素Pの開口部は、略正方形であって、開口部の幅L3はおよそ11.3μm、非開口部の幅L1は1.3μmである。すなわち画素ピッチはおよそ12.6μmである。図4に示した液晶層50の厚みt0はおよそ2.9μmである。素子基板10と対向基板20との間には正の誘電異方性を有する液晶が充填されており、液晶分子は配向膜18,24に対して所定のプレチルトが与えられた状態で初期的に略水平な状態に配向し、液晶層50においてほぼ90度ツイストしている。
【0055】
図6に示すように、凸部22aの幅L2を1.4μm〜2.0μmの5水準を設定し、且つ高さhを3水準設定して、合計15水準に亘る試作品を製造し、その表示品質を評価した。
【0056】
図7に示すように、横電界による表示品質への影響を評価する方法としては、ノーマリーホワイトモードの液晶装置100において、少なくとも1列(Y方向)に配列した画素Pを駆動状態(ON;100%;暗表示)とし、隣接する画素Pの列を中間駆動状態(例えばON;50%;暗と明の中間調)とする。さらに、その外側の画素Pの列を非駆動状態(OFF;明表示)とする。
【0057】
このようにすれば、駆動状態の画素Pと中間駆動状態の画素Pとにおける境界部分において横電界に起因する光漏れ(白線状のコントラストムラ)を目視で確認できる。駆動状態の画素Pと非駆動状態の画素Pとを比べる場合に比べて、隣り合う画素電極15間の横電界の電界強度が小さくても、その影響度合いを見極めることができる。
なお、ノーマリーブラックモードとすると駆動状態の画素Pが明表示となるので、横電界に起因する光漏れは、駆動状態の画素Pと中間駆動状態の画素Pとの境界部分で黒線状のコントラストムラとして目視で確認できる。表示品質の評価における駆動状態とする画素Pの列は、Y方向だけに限らず、X方向あるいはX方向とY方向とを組み合わせたものとしてもよい。
【0058】
図6に示すように、凸部22aの高さhが100nm(液晶層50の厚みt0=2.9μmに対して約3.4%)の場合、凸部22aの幅L2を1.4μmから2.0μmの間で異ならせても横電界による光漏れが視認された。すなわち、凸部22aの高さhが不足し、横電界の影響を抑制できなかったと考えられる(×)。
【0059】
これに対して、凸部22aの高さhを倍の200nm(液晶層50の厚みt0=2.9μmに対して約6.9%)とすると、凸部22aの幅L2が1.8μm(非開口部の幅L1に0.5μm加えた長さ)と、2.0μm(非開口部の幅L1に0.7μm加えた長さ)のときに横電界に起因する光漏れの低減効果を確認できた(○)。
【0060】
また、凸部22aの高さhを300nm(液晶層50の厚みt0=2.9μmに対して約10.3%)とすると、凸部22aの幅L2が1.6μm(非開口部の幅L1に0.3μm加えた長さ)では光漏れの低減効果がやや認められた(△)。そして、凸部22aの幅L2が1.8μm(非開口部の幅L1に0.5μm加えた長さ)以上では横電界に起因する光漏れの低減効果を確認できた(○)。
【0061】
横電界に起因する光漏れの低減効果が得られるのは、凸部22aの高さhが200nm以上で且つ凸部22aの幅L2が非開口部の幅L1に0.5μmを加えた長さ以上とすることが望ましい。
【0062】
液晶層50の厚みt0は、光学特性を確保する観点で液晶材料にもよるがおよそ2.0μm〜4.0μmの範囲で設定される。画素電極15と共通電極23との間の電界強度は、液晶層50の厚みt0に比例する。凸部22aの高さhが100nmと200nmとの間に横電界を抑制可能な閾値が存在すると考えられるので、凸部22aの高さhは、液晶層50の厚みt0に対して5%以上とすることが望ましい。
一方で凸部22aの高さhがあまりに高すぎると、対向基板20における配向膜面の凹凸によって、例えばラビング時にラビングムラを生じさせる。また例えば無機配向膜を斜方蒸着法で形成する場合には、凸部22aの部分に無機配向膜が形成されない影の部分が生じる。これらは、すべて配向ムラとなるおそれがある。ラビングムラは配向膜面の凹凸の高さ(段差)が400nm〜500nm程度以上であると発生し易いことが分かっている。斜方蒸着法では、基板表面の凹凸の高さ(段差)が200nm程度以上であると無機配向膜が形成されない影の部分が発生し易いことが分かっている。したがって、上記配向ムラを考慮して凸部22aの高さhを設定することが重要である。
【0063】
さらには、対向基板20において凸部22aを設けることは、開口部における液晶層50の厚みばらつきを生じさせることになり、開口部内における均質な光学特性(透過率)の確保の観点から凸部22aの高さhは、液晶層50の厚みt0の20%以下とすることが望ましい。同様に凸部22aの幅L2は、開口部における液晶層50の厚みばらつきが生ずる領域を規定することになるので、開口部の幅L3に対して40%以下とすることが望ましい。
【0064】
この場合、凸部22aの幅L2を1.8μmとすると、開口部の幅L3に対する割合は、約15.9%となり、凸部22a間の長さL4(図3参照)は開口部の幅L3に対して約95.6%となる。同じく幅L2が2.0μmのとき開口部の幅L3に対する割合は、約17.7%となり、凸部22a間の長さL4(図3参照)は開口部の幅L3に対して約93.8%となる。
【0065】
まとめると、凸部22aの高さhは液晶層50の厚みt0の5%以上20%以下であることが望ましく、また、凸部22aの幅L2は非開口部の幅L1に0.5μm加えた長さ以上、開口部の幅L3の40%以下の長さであることが望ましい。とりわけ、画素Pが高精細になってくると、素子基板10と対向基板20とを所定の位置で対向させる組立位置精度が課題となるので、凸部22aの幅L2は組立位置精度を十分考慮して設定することが好ましい。
【0066】
<電子機器>
図8は電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図である。図8に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0067】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0068】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0069】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。
ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。
ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0070】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0071】
液晶ライトバルブ1210は、上述した液晶装置100が適用されたものである。液晶装置100は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
【0072】
このような投射型表示装置1000によれば、液晶装置100の画素電極15間に生ずる横電界の影響が抑制され、高い表示品位が実現されている。
【0073】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0074】
(変形例1)図9(a)は本実施形態の対向基板における凸部の平面的な形状を示す概略斜視図、同図(b)は変形例の凸部の平面的な形状を示す概略斜視図である。本実施形態の対向基板20における凸部22aの平面的な形状は、図9(a)に示すように格子状であるが、これに限定されない。例えば、表示領域Eにおいて行方向(X方向)に配列する隣り合う画素Pの横電界の影響を重視する場合には、X方向に交差するY方向に沿って凸部22aを設けてもよい。同様に、列方向(Y方向)に配列する隣り合う画素Pの横電界の影響を重視する場合には、Y方向に交差するX方向に沿って凸部22aを設けてもよい。また、図9(b)に示すように、非開口部の交差部の形状に対応させて凸部22aの交差部22bにおいてもその幅を拡張させた構成としてもよい。非開口部の交差部には、隣り合う4つの画素電極15の外縁部が存在するので、駆動状態によっては平面的に様々な方向に横電界が生ずることが考えられ、そのような場合にも横電界の影響を抑制できる。
【0075】
(変形例2)上記実施形態の液晶装置100では、素子基板10側に設けられた遮光膜13と対向基板20側に設けられた遮光膜21とにより画素Pの非開口部を構成したが、これに限定されない。例えば、いずれか一方の基板に非開口部を構成する遮光膜などを備えるとしてもよい。
【0076】
(変形例3)上記実施形態の液晶装置100は、透過型に限定されない。例えば、画素電極15を光反射性を有する材料で構成することにより反射型としても、対向基板20に凸部22aを設け、隣り合う画素電極15間の横電界の影響を抑制することは可能である。同様に投射型表示装置1000における液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、反射型の液晶装置を採用することも可能である。
【0077】
(変形例4)上記実施形態の液晶装置100が適用される電子機器は、投射型表示装置1000に限定されない。例えば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)やデジタルカメラの表示部(エレクトリックビューファインダー(EVF))などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
10…第1基板としての素子基板、15…画素電極、20…第2基板としての対向基板、22a…凸部、23…共通電極、50…液晶層、100…電気光学装置としての液晶装置、1000…電子機器としての投射型表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素電極が設けられた第1基板と、共通電極が設けられた第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とに挟持された液晶層とを有する電気光学装置であって、
前記第2基板は、前記第1基板の隣り合う前記画素電極間に対向する部分であって、隣り合う前記画素電極の外縁部とそれぞれ平面的に重なる光透過性の凸部を備え、
前記共通電極は、前記凸部を覆うように設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記複数の画素電極は、前記第1基板上において第1方向と前記第1方向に交差する第2方向とに配置され、
前記凸部は、前記第1方向と前記第2方向とに沿った前記画素電極間に対向する部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記凸部によって前記第2基板の前記液晶層に面する側の表面に生じた段差の大きさが、前記画素電極と前記共通電極との間の前記液晶層の厚みの5%以上20%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記第2基板と前記共通電極との間に設けられた層間膜層に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記複数の画素電極は、前記第1基板上において第1方向と前記第1方向に交差する第2方向とに配置され、
前記画素電極を有する画素は、光学的に光が通過する開口部と光が遮光される非開口部とを備え、
前記凸部の前記第1方向または前記第2方向における幅は、前記非開口部の前記第1方向または前記第2方向の幅よりも広いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記凸部の前記第1方向または前記第2方向における幅は、前記非開口部の前記第1方向または前記第2方向の幅に0.5μmを加えた長さ以上、かつ前記開口部の前記第1方向または前記第2方向の幅の40%以下の長さであることを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
隣り合う前記画素電極の外縁部は、前記非開口部と平面的に重なっていることを特徴とする請求項5または6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−47781(P2012−47781A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186918(P2010−186918)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】