説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】液晶装置等の電気光学装置において、電気光学物質の配向不良を抑制しつつ、表
示画像の高品位化を図る。
【解決手段】電気光学装置は、基板(10)上に、画素電極(9)と、画素電極より誘電
体膜(72)を介して下層側に配置され、画素電極の各々に少なくとも部分的に重なるよ
うに形成された下側電極(71)と、下側電極の下地面上に配置され、下側電極非形成領
域の少なくとも一部に形成され、下側電極の上側表面と下側電極非形成領域における下地
面との段差を低減するための段差低減膜(19)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた、例えば液
晶プロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置の一例である液晶装置は、一対の基板間に電気光学物質の一例で
ある液晶を挟持して構成される。一対の基板のうち一方の基板上には、画素スイッチング
用のTFT(Thin Film Transistor)や走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構
造が形成され、該積層構造の最上層側に複数の画素電極がマトリクス状に設けられる。こ
のような電気光学装置では、表示画像の高コントラスト化等を目的として、画素スイッチ
ング用のTFTと画素電極との間に蓄積容量が設けられることがある。例えば特許文献1
には、画素電極に容量絶縁膜を介して対向するように容量電極を形成することで蓄積容量
を構成する技術が開示されている。
【0003】
また、このような電気光学装置では、画素電極の上層側に、電気光学物質の配向状態を
規制するための配向膜が形成される。ここで、配向膜の下地層の表面に段差があると、配
向膜の表面形状の平滑性が乱され、電気光学物質の配向不良を引き起こしてしまう。特許
文献2では、配向膜の下地層の表面に、液晶の配向方向に対して垂直な方向に凹凸パター
ンを形成することによって、配向不良を改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−148684号公報
【特許文献2】特開2008−39892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示画像の高品位化を図るべく蓄積容量を積層構造中に設ける場合、蓄積容量の容量値
を最適化する必要がある。この最適化は、例えば蓄積容量の電極の面積を変更し、容量値
を調整することによって行うことができる。この場合、蓄積容量の電極はパターニングさ
れることになるので、基板上で平面的に見ると、基板上には電極が形成されている領域と
、電極が形成されていない領域が必然的に生じる。そのため、電極の表面と、電極の下地
層の表面との間には段差が生じており、このような段差上に画素電極を形成すると、配向
膜の下地層である画素電極の表面にもまた段差が生じてしまう。ここで、特許文献2のよ
うに画素電極の下地層に凹凸パターンを形成すると、当該凹凸パターンの形状は、電気光
学物質の種類及び下地膜の表面に存在する段差の形状に依存するため、基板上の構成条件
によっては、凹凸パターンの形状が複雑になってしまうという問題点がある。特に高精細
化の要請の下で画素ピッチを小さくした液晶装置においては、凹凸パターンを画像表示領
域全体に渡って均一に精度よく形成することは、技術的な困難性を伴う。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、電気光学物質の配向不良を
抑制しつつ、高品位な画像表示が可能な電気光学装置及びそのような電気光学装置を備え
る電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の電気光学装置は上記課題を解決するために、基板上に、画素領域に配列
された複数の画素電極と、前記複数の画素電極よりも誘電体膜を介して下層側に配置され
ると共に、前記基板上で平面的に見て、前記複数の画素電極の各々に少なくとも部分的に
重なるように形成された下側電極と、前記下側電極の下地面上に配置されると共に、前記
画素領域のうち前記下側電極が形成された下側電極形成領域を除く下側電極非形成領域の
少なくとも一部に形成されており、前記下側電極の上側表面と前記下側電極非形成領域に
おける前記下地面との段差を低減するための段差低減膜とを備える。
【0008】
本発明の第1の電気光学装置では、基板上に、例えば、走査線、データ線等の配線や画
素スイッチング用のトランジスタ等の電子素子が、絶縁膜を介して相互に絶縁されつつ必
要に応じて積層されることで画素電極を駆動するための回路が構成され、その上層側に画
素電極が配置されている。電気光学装置の動作時には、例えば、走査線を通じて、画素電
極に電気的に接続された画素スイッチング用のTFTのスイッチング動作が制御されると
共に、データ線を通じて画像信号が供給されることで、該TFTを介して画素電極に対し
、画像信号に応じた電圧を印加する。これにより、複数の画素電極が配列された画素領域
或いは画素アレイ領域(又は「画像表示領域」とも呼ぶ)における画像表示が可能となる

【0009】
下側電極は、複数の画素電極よりも誘電体膜を介して下層側に配置される。即ち、下側
電極は画素電極との間に誘電体膜を挟持することで、画素電極に電気的に接続された蓄積
容量を形成している。このように積層構造中に蓄積容量を形成することで、画素電極に印
加された、表示画像に対応する電圧信号を一定期間保持することができ、電気光学装置の
表示画像の品質を向上させることができる。
【0010】
また、下側電極は、基板上で平面的に見て、複数の画素電極の各々に少なくとも部分的
に重なるように形成される。つまり、本発明にかかる下側電極は、形成すべき蓄積容量の
容量値に応じた所定の形状にパターニングされている。即ち、パターニングされることに
よって基板上での面積を調整することで、蓄積容量の容量値を調整している。尚、下側電
極は、基板上で平面的に見て複数の画素電極の各々に少なくとも部分的に重なるように形
成されている限りにおいて、その形状は種々の態様を取り得る。例えば、下側電極は、基
本的に画素領域全体に渡ってベタ状に形成されている一方で、画素毎に一定の領域が開口
するように(即ち、画素毎に穴が開けられるように)開口部が形成されていてもよいし、
画素電極のように、画素毎に島状に形成されており、その一部が部分的に切欠かれた切欠
部を有していてもよい。
【0011】
このように、下側電極は、基板上で平面的に見た場合、画素領域には、下側電極が形成
された領域(即ち、下側電極形成領域)と、画素領域のうち下側電極が形成されていない
領域(即ち、下側電極非形成領域)とが含まれている。
【0012】
ここで、下側電極の下地面を基準として見ると、下側電極形成領域における下側電極の
表面と、下側電極非形成領域における下地面との間には段差が生じている。仮に、この段
差上に層間絶縁膜をベタ状に形成し、その上に画素電極を形成すると、画素電極の表面に
も対応する段差が形成されてしまう。すると、画素電極の表面付近における電界の分布が
乱れてしまい、電気光学物質の配向状態に不良をきたしてしまう。また、画素電極の表面
の平滑性が損なわれるため、電気光学物質の配向不良が生じるリスクはより一層大きくな
ってしまう。そこで、本発明にかかる電気光学装置は、このようなリスクを軽減すべく、
以下に説明する段差低減膜を備えている。
【0013】
段差低減膜は、下側電極の下地面上に配置されると共に、下側電極形成領域を除く下側
電極非形成領域の少なくとも一部に形成されることにより、下側電極の上側表面と下側電
極非形成領域における下地面との段差を低減している。言い換えれば、段差低減膜は、上
述したリスクを軽減すべく、下側電極形成領域における下側電極の表面と、下側電極非形
成領域における下地面との間に生じている段差を埋めるように形成されている。従って、
典型的には段差低減膜は、下地面上に、下側電極と同層に形成される。このように段差低
減膜を設けることによって、下側電極の上側表面と下側電極非形成領域における下地面と
の段差が解消されるので、下側電極の上層側に形成される画素電極の表面にも段差は生じ
ない。その結果、画素電極の表面の平滑性が損なわれることがなく、画素電極の表面付近
における電界分布が乱れることはないので、電気光学物質の配向不良を効果的に防止する
ことができる。
【0014】
尚、段差低減膜は、下側電極非形成領域の少なくとも一部に形成されていればよい。つ
まり、下側電極の凹みに段差低減膜が形成されていれば、画素電極や配向膜の表面におけ
る段差を少なからず軽減することができるので、上述のメリットを少なからず得ることが
できる。
【0015】
以上説明したように、本発明の第1の電気光学装置によれば、段差低減膜を形成するこ
とによって画素電極及び配向膜に段差が形成されることを抑制又は防止することができる
。その結果、液晶等の電気光学物質の配向不良を効果的に防止することができ、高品位な
画像が表示可能な電気光学装置を実現することができる。
【0016】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記下側電極及び前記段差低減膜の上側表面が
揃えられている。
【0017】
この態様によれば、段差低減膜は、下側電極形成領域における下側電極の表面と、下側
電極非形成領域における下地面との段差をより効果的に解消すべく、下側電極及び段差低
減膜の夫々の上側表面が揃うように形成されている。即ち、理想的には同一又はほぼ同一
にされ、少なくとも同一又はほぼ同一に近付けられている。
【0018】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記下側電極及び前記段差低減膜の上側表面に
は、相互間における段差を低減する平坦化処理が施されている
このように構成すれば、下側電極形成領域における下側電極の表面と、下側電極非形成
領域における下地面との間に生じている段差が、平坦化処理を施した分だけ軽減すること
ができる。尚、平坦化処理には、例えば、CMP(化学的機械研磨)処理を施すことや、
下側電極及び段差低減膜を適当な膜厚で形成した後に、下側電極及び段差低減膜にまとめ
てエッチング処理を施すことなどがある。
【0019】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記複数の画素電極及び前記下側電極は、透明
導電材料から形成される。
【0020】
この態様によれば、画素電極及び下側電極は、例えばITO(Indium Tin Oxide)など
の透明導電材料で形成されていることから、画素毎の開口領域(即ち、例えば、各画素に
おいて表示に寄与する光が出射される領域)を小さくしなくて済む。
【0021】
本発明の第2の電気光学装置は上記課題を解決するために、トランジスタと、前記トラ
ンジスタに対応して設けられた画素電極と、前記トランジスタと前記画素電極との間の層
に配置され、前記画素電極と誘電体膜を介して対向することで蓄積容量を構成する下側電
極と、前記下側電極と同一層であって、平面視で前記下側電極の開口部の内側に配置され
、前記トランジスタと前記画素電極とを互いに電気的に接続する第1中継層と、平面視で
前記下側電極と前記第1中継層との間に配置される段差低減膜とを備える。
【0022】
本発明の第2の電気光学装置では、基板上に、例えば、走査線、データ線等の配線や画
素スイッチング用のトランジスタ等の電子素子が、絶縁膜を介して相互に絶縁されつつ必
要に応じて積層されることで画素電極を駆動するための回路が構成され、その上層側に画
素電極が配置されている。電気光学装置の動作時には、例えば、走査線を通じて、画素電
極に電気的に接続された画素スイッチング用のTFTのスイッチング動作が制御されると
共に、データ線を通じて画像信号が供給されることで、該TFTを介して画素電極に対し
、画像信号に応じた電圧を印加する。これにより、複数の画素電極が配列された画素領域
或いは画素アレイ領域(又は「画像表示領域」とも呼ぶ)における画像表示が可能となる

【0023】
下側電極は、画素電極よりも誘電体膜を介して下層側に配置される。即ち、下側電極は
画素電極との間に誘電体膜を挟持することで、画素電極に電気的に接続された蓄積容量を
形成している。このように積層構造中に蓄積容量を形成することで、画素電極に印加され
た、表示画像に対応する電圧信号を一定期間保持することができ、電気光学装置の表示画
像の品質を向上させることができる。
【0024】
また、下側電極は、基板上で平面的に見て、複数の画素電極の各々に少なくとも部分的
に重なるように形成される。つまり、本発明にかかる下側電極は、形成すべき蓄積容量の
容量値に応じた所定の形状にパターニングされている。具体的には、下側電極は、画素毎
に一定の領域が開口するように(即ち、画素毎に穴が開けられるように)互いに隣り合う
二つの画素に跨る開口部が形成されている。
【0025】
下側電極の開口部においては、画素電極と下側電極とが誘電体膜を介して対向配置され
ないため、蓄積容量が形成されない。従って、下側電極の開口部の大きさを調整すること
で、蓄積容量の容量値を調整することが可能である。下側電極の開口部の内側には、下側
電極と同一層に、トランジスタと画素電極とを電気的に接続する第1中継層が設けられて
いる。尚、ここでの「同一層」とは、下側電極と同一の成膜工程によって成膜される層を
指す趣旨である。
【0026】
上述した開口部を有するため、基板上で平面的に見た場合、画素領域には、下側電極が
形成された領域(即ち、下側電極形成領域)と、画素領域のうち下側電極が形成されてい
ない領域(即ち、下側電極非形成領域)とが含まれている。さらに下側電極非形成領域に
は第1中継層が形成された領域と第1中継層が形成されていない領域とがある。
【0027】
ここで、下側電極の下地面を基準として見ると、下側電極形成領域における下側電極の
表面あるいは下側電極非形成領域における第1中継層の表面と、下側電極非形成領域にお
ける下地面との間には段差が生じている。仮に、この段差上に誘電体膜である容量絶縁膜
を形成し、その上に画素電極を形成すると、画素電極の表面にも対応する段差が形成され
てしまう。すると、画素電極の表面付近における電界の分布が乱れてしまい、電気光学物
質の配向状態に不良をきたしてしまう。また、画素電極の表面の平滑性が損なわれるため
、電気光学物質の配向不良が生じるリスクはより一層大きくなってしまう。そこで、本発
明にかかる電気光学装置は、このようなリスクを軽減すべく、以下に説明する段差低減膜
を備えている。
【0028】
段差低減膜は、下側電極の下地面上に配置されると共に、下側電極形成領域を除く下側
電極非形成領域の少なくとも一部、例えば平面視で下側電極と第1中継層の間に形成され
ることにより、下側電極や第1中継層の上側表面と下側電極非形成領域における下地面と
の段差を低減している。言い換えれば、段差低減膜は、上述したリスクを軽減すべく、下
側電極形成領域における下側電極の表面と、下側電極非形成領域における下地面との間に
生じている段差を埋めるように形成されている。従って、典型的には段差低減膜は、下地
面上に、下側電極と同層に形成される。このように段差低減膜を設けることによって、下
側電極の上側表面と下側電極非形成領域における下地面との段差が解消されるので、下側
電極の上層側に形成される画素電極の表面にも段差は生じない。その結果、画素電極の表
面の平滑性が損なわれることがなく、画素電極の表面付近における電界分布が乱れること
はないので、電気光学物質の配向不良を効果的に防止することができる。
【0029】
尚、段差低減膜は、下側電極非形成領域の少なくとも一部に形成されていればよい。つ
まり、下側電極の凹みに段差低減膜が形成されていれば、画素電極や配向膜の表面におけ
る段差を少なからず軽減することができるので、上述のメリットを少なからず得ることが
できる。
【0030】
以上説明したように、本発明の第1の電気光学装置によれば、段差低減膜を形成するこ
とによって画素電極及び配向膜に段差が形成されることを抑制又は防止することができる
。その結果、液晶等の電気光学物質の配向不良を効果的に防止することができ、高品位な
画像が表示可能な電気光学装置を実現することができる。
【0031】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記画素電極、前記下側電極、及び前記第1中
継層は、透明導電材料で形成される。
【0032】
画素電極及び下側電極は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電材料で形
成されていることから、各画素において表示に寄与する光が出射される領域が小さくなら
ない。
【0033】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記トランジスタと前記下側電極との間の層に
配置され、前記トランジスタと電気的に接続されたデータ線と、前記データ線と同一層に
配置され、前記トランジスタと前記画素電極とを互いに電気的に接続する第2中継層とを
備え、平面視で前記開口部の内側に設けられたコンタクトホールを介して、前記第1中継
層と前記第2中継層とが電気的に接続される。
【0034】
この態様によれば、少なくとも第1中継層と第2中継層とを介してトランジスタと画素
電極とを電気的に接続する。第2中継層はデータ線と同一層に配置される。これにより、
画素電極とトランジスタとの間の層間を確実に電気的に接続することができる。
【0035】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記第1中継層は、前記第2中継層より前記デ
ータ線が延在する方向の長さが長い。
【0036】
この態様によれば、データ線と同一層に配置される第2中継層が第1中継層よりも画素
内で小さく形成される。第2中継層はデータ線と同じく金属材料で形成されるので、画素
においては表示に寄与しない領域を形成する。この第2中継層が走査線と重なる領域で納
まるように配置され、透明な第1中継層が第2中継層よりも画素電極に向かって突出する
形状で設けられることにより、表示に寄与する領域を狭めることなく、画素電極とトラン
ジスタとの間の層間を確実に電気的に接続することができる。
【0037】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記下側電極、前記第1中継層、及び前記段差
低減膜の表面が平坦に揃えられている。
【0038】
この構成により、画素電極を形成する下地となる層が平坦になるため、画素電極の凹凸
に起因する画素電極の表面付近における電界分布の乱れや、電気光学物質の配向不良を効
果的に防止することができる。
【0039】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し
、その各種態様を含む)を備える。
【0040】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気光学装置を備えてなるので、高品質
な画像表示を行うことが可能な、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワード
プロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステ
ーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。ま
た、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置、電子放出装置(Fi
eld Emission Display及びConduction Electron-Emitter Display)、これら電気泳動装
置、電子放出装置を用いた表示装置を実現することも可能である。
【0041】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされ
る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係る液晶装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´断面図である。
【図3】本実施形態に係る液晶装置の電気的な構成を示す回路図である。
【図4】本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域10aにおける配線等の位置関係を透過的に示す模式図である。
【図5】図4のA−A´断面図である。
【図6】本実施形態に係る液晶装置の基板上における容量電極の位置関係を周辺配線と共に透過的に示した模式図である。
【図7】比較例に係る液晶装置における、図5と同趣旨の断面図である。
【図8】本実施形態及び比較例に係る液晶装置における、画像表示領域における基板間の電界の様子を示す断面図である。
【図9】本実施形態に係る液晶装置のTFTアレイ基板上の積層構造の製造方法を工程毎に示す工程断面図である。
【図10】第2実施形態に係る液晶装置を構成する各層の位置関係を透過的に示す平面図(その1)である。
【図11】第2実施形態に係る液晶装置を構成する各層の位置関係を透過的に示す平面図(その2)である。
【図12】第2実施形態に係る液晶装置の積層構造を示す断面図である。
【図13】本実施形態に係る電気光学装置を適用した電子機器の例である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、
本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方
式の液晶装置を例にとる。
【0044】
<液晶装置>
<第1実施形態>
先ず、本実施形態に係る液晶装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明す
る。
【0045】
図1は、TFTアレイ基板10を、その上に形成された各構成要素と共に、対向基板2
0の側から見た液晶装置の構成を示す概略的な平面図であり、図2は、図1のH−H´断
面図である。
【0046】
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶装置は、対向配置されたTFTアレイ基
板10と対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板10は例えば石英基板、ガラス
基板等の透明基板又はシリコン基板である。対向基板20は例えば石英基板、ガラス基板
等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封
入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、電気光学動作の行われる画像
表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着
されている。
【0047】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等
からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、
加熱等により硬化させられたものである。また、例えばシール材52中には、TFTアレ
イ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファ
イバ或いはガラスビーズ等のギャップ材56が散布されている。
【0048】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領
域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、この
ような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設
けられてもよい。
【0049】
TFTアレイ基板10上における、画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域には
、データ線駆動回路101、サンプリング回路7、走査線駆動回路104及び外部回路接
続端子102が夫々形成されている。
【0050】
TFTアレイ基板10上における周辺領域において、シール領域より外周側に、データ
線駆動回路101及び複数の外部回路接続端子102が、TFTアレイ基板10の一辺に
夫々沿って設けられている。
【0051】
また、TFTアレイ基板10上の周辺領域のうちシール領域より内側に位置する領域に
は、TFTアレイ基板10の一辺に沿う画像表示領域10aの一辺に沿って且つ額縁遮光
膜53に覆われるようにしてサンプリング回路7が配置されている。
【0052】
また、走査線駆動回路104は、TFTアレイ基板10の一辺に隣接する2辺に沿い、
且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示
領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間を電気的に接続するため、
TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ額縁遮光膜53に覆われるようにして複数
の配線105が設けられている。
【0053】
また、TFTアレイ基板10上の周辺領域において、対向基板20の4つのコーナー部
に対向する領域に、上下導通端子106が配置されると共に、このTFTアレイ基板10
及び対向基板20間には上下導通材が上下導通端子106に対応して該端子106に電気
的に接続されて設けられている。
【0054】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、
データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成されている。画像表示領域10aには、
画素スイッチング用TFTや走査線、データ線等の配線の上層に画素電極9がマトリクス
状に設けられている。画素電極9は、ITO膜からなる透明電極として形成されている。
画素電極9上には、配向膜16が形成されている。
【0055】
他方、対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成
されている。遮光膜23は、例えば遮光性金属膜等から形成されており、対向基板20上
の画像表示領域10a内で、例えば格子状等にパターニングされている。そして、遮光膜
23上(図2中遮光膜23より下側)に、ITO膜からなる対向電極21が複数の画素電
極9と対向して例えばベタ状に形成され、更に対向電極21上(図2中対向電極21より
下側)には配向膜22が形成されている。
【0056】
液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、こ
れら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。そして、液晶装置の駆動時、夫々に電圧
が印加されることで、画素電極9と対向電極21との間には液晶容量が形成される。
【0057】
尚、ここでは図示しないが、TFTアレイ基板10上には、データ線駆動回路101、
走査線駆動回路104の他に、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画
像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品
質、欠陥等を検査するための検査回路等が形成されていてもよい。
【0058】
次に、本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域の電気的な構成について、図3を参照
して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域を構成するマト
リクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【0059】
図3において、画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素の
各々には、画素電極9及び画素スイッチング用のTFT30が形成されている。TFT3
0は、画素電極9に電気的に接続されており、本実施形態に係る液晶装置の動作時に画素
電極9をスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6は、TFT30のソー
ス領域に電気的に接続されている。データ線6に書き込む画像信号S1、S2、…、Sn
は、この順に線順次に供給しても構わないし、互いに隣り合う複数のデータ線6同士に対
して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0060】
TFT30のゲートには走査線11が電気的に接続されており、本実施形態に係る液晶
装置は、所定のタイミングで、走査線11にパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを
、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9は、TFT30のドレイ
ンに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのス
イッチを閉じることにより、データ線6から供給される画像信号S1、S2、…、Snが
所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの
画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板20(図2参照)に形成された対向電極21
(図2参照)との間で一定期間保持される。
【0061】
液晶層50(図2参照)を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配
向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイ
トモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少
し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光
に対する透過率が増加され、全体として液晶装置からは画像信号に応じたコントラストを
もつ光が出射される。
【0062】
ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9と対向電極21
(図2参照)との間に形成される液晶容量に対して電気的に並列に、蓄積容量70が付加
されている。蓄積容量70の一方の電極は、画素電極9と並列してTFT30のドレイン
に電気的に接続され、他方の電極は、所定電位となるように、電位固定の容量配線300
に接続されている。例えば、画素電極9の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3
桁も長い時間だけ蓄積容量70により保持されるので、保持特性が改善される結果、高コ
ントラスト比が実現されることとなる。
【0063】
次に、図4及び図5を参照して、画像表示領域10aにおける具体的な積層構造につい
て詳しく説明する。
【0064】
図4は、本実施形態に係る液晶装置の走査線、データ線、画素スイッチング用のTFT
、及び中継層の位置関係を透過的に示した模式図である。図5は、図4及び図5における
A−A´線断面図である。また、図4及び図5では、各層・各部材を図面上で認識可能な
程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0065】
TFTアレイ基板10上には、図4に示すように、走査線11及びデータ線6が、夫々
X方向及びY方向に沿って配置されており、データ線6と走査線11の交差付近にTFT
30が形成されている。
【0066】
走査線11は、遮光性の導電材料、例えば、W(タングステン)、Ti(チタン)、T
iN(窒化チタン)等から形成されており、TFTアレイ基板10上で平面的に見て半導
体層30aを含むように、半導体層30aより幅広に形成されている。走査線11は半導
体層30aより下層側に配置されているので、このように走査線11をTFT30の半導
体層30aよりも幅広に形成することによって、TFTアレイ基板10における裏面反射
や、複板式のプロジェクタ等で他の液晶装置から発せられ合成光学系を突き抜けてくる光
などの、戻り光に対してTFT30のチャネル領域30bを殆ど或いは完全に遮光できる
。その結果、液晶装置の動作時に、TFT30における光リーク電流は低減され、コント
ラスト比を向上させることができ、高品位の画像表示が可能となる。
【0067】
TFT30は、半導体層30a及びゲート電極30bを有している。半導体層30aは
、ソース領域30a1、チャネル領域30a2、ドレイン領域30a3を含んで形成され
ている。ここで、チャネル領域30a2とソース領域30a1との間、又は、チャネル領
域30a2とドレイン領域30a3と間にはLDD(Lightly Doped Dr
ain)領域が形成されていてもよい。
【0068】
ゲート電極30bは、TFTアレイ基板10上で平面的に見て、半導体層30aのチャ
ネル領域と重なる領域にゲート絶縁膜13を介して、半導体層30aの上層側に形成され
ている。ゲート電極30bは、例えば導電性ポリシリコンから形成されており、下層側に
配置された走査線11にコンタクトホール34(図4参照)を介して電気的に接続されて
いる。
【0069】
TFT30のソース領域30a1は、第1層間絶縁膜14上に形成されたデータ線6と
、コンタクトホール31を介して電気的に接続されている。一方、ドレイン領域30a3
は、データ線6と同層に形成された中継層7に、コンタクトホール32を介して電気的に
接続されている。中継層7は更に、コンタクトホール33を介して、後述する画素電極9
に電気的に接続されている。即ち、TFT30のドレイン領域30a3と画素電極9とは
、中継層7によって電気的に中継接続されている。
【0070】
データ線6及び中継層7の上層側には、第2層間絶縁膜15を介して蓄積容量70が形
成されている。上述したように蓄積容量70を液晶容量に並列に電気的に接続することで
、画素電極9の電圧を、実際に画像信号が印加されている時間よりも、例えば3桁も長い
時間だけ保持することが可能となり、液晶素子の保持特性が改善されるため、高コントラ
スト比を有する液晶装置を実現することができる。
【0071】
容量電極71は、液晶容量に電気的に並列に接続された蓄積容量70の片方の電極とし
て機能し、容量配線300に電気的に接続されることによって、固定電位に保持されてい
る。
【0072】
容量電極71上には、容量絶縁膜72が形成されている。容量絶縁膜72は、容量電極
71上を覆うようにベタ状に形成されている。尚、窒化シリコンは透明な誘電性材料であ
るため、容量絶縁膜72を、開口領域を含む画像表示領域10aに広く形成しても、開口
領域における光透過率を殆ど或いは実践上全く低下させることはない。
【0073】
容量絶縁膜72上には画素電極9が形成されている。図4に示すように、画素電極9は
、データ線6及び走査線11によってマトリクス状に区分けされた画素毎に、島状に形成
されている。尚、図4では、画素電極9の輪郭を点線ライン9´で図示している。
【0074】
本実施形態では特に、画素電極9は、液晶層50を構成する液晶分子の配向状態を電圧
制御するという本来の機能に加えて、蓄積容量70の片方の電極としての機能も有する。
即ち、画素電極9を、容量電極71に対向する容量電極として利用することで、容量絶縁
膜72上に画素電極9とは別個に、画素電極9とは異なる層に、容量電極71に対向する
容量電極を設ける場合に比べて、積層構造をシンプルにすることができる。従って、画素
サイズを高精細化することが容易になるというメリットを得ることができる。
【0075】
画素電極9上には、液晶層50(図2参照)に含まれる液晶分子の配向状態を規制する
ための配向膜16が形成されている。
【0076】
ここで、図6を参照して容量電極71の平面構造について説明する。図6は、容量電極
71の平面構造を示す平面図であり、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさと
するため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0077】
容量電極71は、走査線11及びデータ線6によって区切られた画素毎に、島状に形成
されている。逆に言えば、容量電極71は各画素の中心付近の領域に形成されており、走
査線11及びデータ線6に沿った領域付近には形成されていない。また、画素電極9及び
中継層7を中継接続するためのコンタクトホール33を形成するために、容量電極71は
一部に切欠部190を有している。
【0078】
ここで、蓄積容量70の容量値は、容量電極71の面積を増減させることによって、調
整することができる。仮に、蓄積容量70の容量値が小さい場合、画像信号を保持できる
時間が短いため、表示画像の画質はあまり改善しない。一方、蓄積容量70の容量値が大
きい場合、画像信号を長期間保持できるため表示画像の画質の改善を期待することができ
るものの、画像信号の供給回路や配線等が大型化してしまう。そのため、実際の液晶装置
では、蓄積容量70の容量値を好適な値に調整する必要がある。
【0079】
本実施形態では、第2層間絶縁膜15上にベタ状に導電層を形成した後、走査線11及
びデータ線6の付近の領域において導電層を除去するようにパターニングすることで、図
6に示す形状を有する容量電極71を形成している。即ち、容量電極71は蓄積容量70
の容量値を好適に調整するために、図6に示す形状にパターニングされている。
【0080】
画像表示領域10aのうち容量電極71が形成されていない領域(図6参照)には、容
量電極71と同層に、本発明にかかる「段差低減膜」の一例たる平坦化絶縁膜19が形成
されている。本実施形態では特に、平坦化絶縁膜19は、容量電極71及び平坦化絶縁膜
19の夫々の上側表面が同じ高さに揃うように形成されている。尚、容量電極71及び平
坦化絶縁膜19は、夫々の上側表面が揃うように、CMP(化学的機械研磨)処理等の平
坦化処理が施されているとよい。
【0081】
ここで、図7は、平坦化絶縁膜19を有しない比較例における、図5と同趣旨の断面図
である。比較例では、平坦化絶縁膜19(図5参照)が存在しないために、容量電極71
の上側表面と、第2層間絶縁膜15の上側表面との間(図7において点線で囲んだ部分)
に、段差部3が形成されている。そのため、段差部3上にベタ状に形成された容量絶縁膜
72、及び画素電極9の表面にも、段差部3に起因して生じた段差が形成されている。
【0082】
尚、本実施形態では、平坦化絶縁膜19を形成することで段差を軽減しているが(即ち
、平坦化絶縁膜19及び第2層間絶縁膜15を別々の構成要素として形成しているが)、
平坦化絶縁膜19及び第2層間絶縁膜15を一体的に形成してもよい。即ち、第2層間絶
縁膜15の上側表面は、容量電極71が形成されていない領域(即ち、本発明における下
側電極非形成領域)において、凸状の段差を有するように形成されていてもよい。
【0083】
次に、本実施形態及び比較例に係る液晶装置における、基板間(即ち、TFTアレイ基
板10及び対向基板20間)における電界の分布について説明する。図8(a)及び(b
)は夫々、本実施形態及び比較例において、液晶装置を動作させた状態における電界の分
布を模式的に示す断面図である。
【0084】
図8(a)に示すように、本実施形態に係る液晶装置では、平坦化絶縁膜19を形成す
ることで、容量電極71及び平坦化絶縁膜19の上側表面が揃っている。そのため、容量
電極71及び平坦化絶縁膜19の上層側に形成される容量絶縁膜72及び画素電極の表面
には、段差部は形成されない。その結果、対向基板20側に形成された対向電極21との
間に分布する電界(図8(a)において点線矢印で表示)は、TFTアレイ基板10から
対向基板20に向かう方向に、比較的均一に発生するため、液晶層50に含まれる液晶分
子の配向状態は、画素電極に印加される画像信号に従って正常に制御される。また、この
ように画素電極9の表面の平滑性が損なわれないので、剥離又は破損のしにくい、良好な
状態の配向膜を形成することができる。その結果、より高品位な画像表示が可能な液晶装
置を実現することができる。
【0085】
一方、図8(b)に示すように、比較例に係る液晶装置では、平坦化絶縁膜19が形成
されていないため段差部3が生じ、容量電極71上に形成される容量絶縁膜72及び画素
電極の表面にも段差が形成されてしまう。そのため、対向基板20に形成された対向電極
21との間に分布する電界は、画素電極9の端部付近において乱されてしまう。その結果
、液晶層50に含まれる液晶分子の配向状態に不良が生じ、液晶装置の画質が低下してし
まう。また、比較例では、画素電極9の表面の平滑性が損なわれているので、表面上に形
成された配向膜16が破損又は剥離しやすくなってしまい、電気光学物質の配向不良が生
じるリスクはより一層大きくなってしまう。
【0086】
このように、本実施形態に係る液晶装置では、平坦化絶縁膜19を形成することで、画
素電極9の表面に段差が生じることを防ぐことによって、液晶層50の液晶分子の配向不
良を抑制し、高品位な画像表示が可能となる。
【0087】
以上に説明した平坦化絶縁膜19を有するTFTアレイ基板10上の積層構造は、以下
に説明する工程によって形成することができる。図9は、TFTアレイ基板10上の積層
構造の形成方法を工程ごとに示す工程断面図である。ここでは、上述した液晶装置が備え
る平坦化絶縁膜19の形成に関する工程について主に説明し、その他の構成要素の形成に
関する工程については適宜説明を省略する。
【0088】
まず、図9(a)に示すように、TFTアレイ基板10上にベタ状に形成された導電層
をパターニングすることで、容量電極71を形成する。容量電極71上には更に、図9(
b)に示すように、容量電極71を覆うように、容量電極71及び下地層上に絶縁膜19
´が形成される。
【0089】
次に、容量電極71及び絶縁膜19´上から、TFTアレイ基板10全体に平坦化処理
を施す。具体的には、容量電極71及び絶縁膜19´にエッチング処理を行うことで、容
量電極71及び絶縁膜19´の表面を削り取り、両者の高さが揃えられる。その結果、図
9(c)に示すように、隣り合う容量電極71の隙間に、容量電極と同じ高さを有する平
坦化絶縁膜19を形成することができる。そして、容量電極71及び平坦化絶縁膜19の
上層側に、容量絶縁膜72、画素電極9及び配向膜16
が形成され(図9(d)参照)、TFTアレイ基板10上の積層構造が完成する。
【0090】
このようにして完成した基板は、対向電極21及び配向膜等が積層された対向基板20
とシール材を介して張り合わされ、その間に液晶50が封入されることによって、前述の
液晶装置を完成させることができる。
【0091】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る液晶装置について、図10から図12を参照して説明する。
尚、第2実施形態は、上述の第1実施形態と比べて、一部の構成が異なり、その他の構成
については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分につ
いて詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0092】
図10及び図11は夫々、第2実施形態に係る液晶装置を構成する各層の位置関係を透
過的に示す平面図である。図12は、第2実施形態に係る液晶装置の積層構造を示す断面
図である。尚、図10では、第4中継層91及び第3中継層92より下層側の各層を示し
ており、図11では、第4中継層91及び第3中継層92より上層側の各層を示している
。また図10、図11及び図12では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさ
とするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。図12は、図10及び図1
1のA−A’線における断面を示すものであるが、上述したように各層・各部材の縮尺を
異ならしめてあるため、一部で完全にはA−A’線と対応していない部分が存在している

【0093】
図10及び図12において、TFTアレイ基板10上には、走査線11がX方向に沿っ
て配置されており、走査線11より下地絶縁膜12を介して上層には、半導体層30a及
びゲート電極30bを有するTFT30が配置されている。
【0094】
走査線11は、遮光性の導電材料、例えば、W(タングステン)、Ti(チタン)、T
iN(窒化チタン)等から形成されており、TFTアレイ基板10上で平面的に見て半導
体層30aを含むような形状とされている。具体的には、図10に示すように、半導体層
30aに沿ってY方向に突出するように設けられた突出部を有している。走査線11は半
導体層30aより下層側に配置されているので、上述した突出部を有することによって、
TFTアレイ基板10における裏面反射や、複板式のプロジェクタ等で他の液晶装置から
発せられ合成光学系を突き抜けてくる光などの、戻り光に対してTFT30のチャネル領
域30bを殆ど或いは完全に遮光できる。その結果、液晶装置の動作時に、TFT30に
おける光リーク電流は低減され、コントラスト比を向上させることができ、高品位の画像
表示が可能となる。
【0095】
半導体層30aは、ソース領域30a1、チャネル領域30a2、ドレイン領域30a
3を含んで形成されている。ここで、チャネル領域30a2とソース領域30a1との間
、又は、チャネル領域30a2とドレイン領域30a3と間にはLDD(Lightly
Doped Drain)領域が形成されていてもよい。
【0096】
ゲート電極30bは、TFTアレイ基板10上で平面的に見て、半導体層30aのチャ
ネル領域30a2と重なる領域にゲート絶縁膜13を介して、半導体層30aの上層側に
形成されている。ゲート電極30bは、例えば導電性ポリシリコンから形成されており、
下層側に配置された走査線11にコンタクトホール34a及び34bを介して電気的に接
続されている。
【0097】
TFT30のソース領域30a1は、第1層間絶縁膜14上に形成された第4中継層9
1と、コンタクトホール31を介して電気的に接続されている。一方、ドレイン領域30
a3は、第4中継層91と同層に形成された第3中継層92に、コンタクトホール32を
介して電気的に接続されている。
【0098】
図11及び図12において、第4中継層91は、第2層間絶縁膜15上に形成されたデ
ータ線6と、コンタクトホール34を介して電気的に接続されている。一方、第3中継層
92は、データ線6と同層に形成された第2中継層7’に、コンタクトホール34を介し
て電気的に接続されている。第2中継層7’は更に、コンタクトホール36を介して、後
述する容量電極71と同層に設けられた第1中継層75と電気的に接続されている。また
第1中継層75は、画素電極9と電気的に接続されている。即ち、TFT30のドレイン
領域30a3と画素電極9とは、第3中継層92、第2中継層7’、及び第1中継層75
を順に介して、電気的に中継接続されている。
【0099】
データ線6及び第2中継層7’の上層側には、第3層間絶縁膜16が形成され、その上
に蓄積容量70が形成されている。蓄積容量70を液晶容量に並列に電気的に接続するこ
とで、画素電極9の電圧を、実際に画像信号が印加されている時間よりも、例えば3桁も
長い時間だけ保持することが可能となり、液晶素子の保持特性が改善されるため、高コン
トラスト比を有する液晶装置を実現することができる。
【0100】
第3層間絶縁膜16の上に形成されている容量電極71は、液晶容量に電気的に並列に
接続された蓄積容量70の片方の電極として機能し、容量配線300に電気的に接続され
ることによって、固定電位に保持されている。容量電極71は、例えばITO等の透明電
極によって構成されている。このため、容量電極71を、開口領域を含む画像表示領域1
0aに重なるように形成しても、光透過率を殆ど或いは実践上全く低下させることはない

【0101】
容量電極71は、島状に形成された第1中継層75を囲うように、そして互いに隣り合
う二つの画素に跨るように形成された開口部を有している。この容量電極71の開口部を
除いた部分と画素電極9とが対向する部分において蓄積容量70が構成されることになる
。蓄積容量70の容量値は、容量電極71の開口部の面積を増減させることによって、調
整することができる。ここで仮に、蓄積容量70の容量値が小さい場合、画像信号を保持
できる時間が短いため、表示画像の画質はあまり改善しない。一方、蓄積容量70の容量
値が大きい場合、画像信号を長期間保持できるため表示画像の画質の改善を期待すること
ができるものの、画像信号の供給回路や配線等が大型化してしまう。そのため、実際の液
晶装置では、蓄積容量70の容量値が好適な値に調整される。
【0102】
第1中継層75は、平面視で容量電極71の開口部の内側に形成されている。第2中継
層7’は、走査線11が延在する部分に重なる位置で画素の間に形成されており、第1中
継層75は第2中継層7’よりもデータ線6が延在する方向に長い形状で形成されている
。すなわち第1中継層75がコンタクトホール36によって第2中継層7’と接続されて
いる箇所から画素電極9に向かう方向に突出している。そしてこの部分で第1中継層75
と画素電極9とが接続される。しかしながら第1中継層75は透明な材料なので画素電極
と重なる部分においても画像表示領域10aにおける光透過率を下げることはない。
【0103】
容量電極71上には、誘電体膜として容量絶縁膜72が形成されている。容量絶縁膜7
2は、第1中継層75が形成されている部分に開口部が設けられている他は、容量電極7
1上を覆うようにベタ状に形成されている。尚、容量絶縁膜72は透明な誘電性材料であ
る窒化シリコン等で構成されるため、容量絶縁膜72を、開口領域を含む画像表示領域1
0aに広く形成しても、開口領域における光透過率を殆ど或いは実践上全く低下させるこ
とはない。
【0104】
容量絶縁膜72上には画素電極9が形成されている。図11に示すように、画素電極9
は、データ線6及び走査線11によってマトリクス状に区分けされた画素毎に、島状に形
成されている。尚、ここでの図示は省略しているが、画素電極9上には、液晶層50(図
2参照)に含まれる液晶分子の配向状態を規制するための配向膜16が形成されている。
【0105】
本実施形態では、画素電極9は、液晶層50を構成する液晶分子の配向状態を電圧制御
するという本来の機能に加えて、蓄積容量70の片方の電極としての機能も有する。即ち
、画素電極9を、容量電極71に対向する容量電極として利用することで、容量絶縁膜7
2上に画素電極9とは別個に、画素電極9とは異なる層に、容量電極71に対向する容量
電極を設ける場合に比べて、積層構造をシンプルにすることができる。従って、画素サイ
ズを高精細化することが容易になるというメリットを得ることができる。
【0106】
本実施形態では更に、第3層間絶縁膜16上の容量電極71及び第1中継層75が形成
されていない領域(図12参照)には、本発明に係る「段差低減膜」の一例たる平坦化絶
縁膜19が形成されている。本実施形態では特に、平坦化絶縁膜19は、容量電極71及
び平坦化絶縁膜19の夫々の上側表面が同じ高さに揃うように形成されている。具体的に
は、容量電極71を形成した後に平坦化絶縁膜19を形成し、CMP(科学的機械研磨)
処理を行なった後、エッチバックして平坦化している。
【0107】
尚、本実施形態では、平坦化絶縁膜19を形成することで段差を軽減しているが(即ち
、平坦化絶縁膜19及び第3層間絶縁膜16を別々の構成要素として形成しているが)、
平坦化絶縁膜19及び第3層間絶縁膜16を一体的に形成してもよい。即ち、第3層間絶
縁膜16の上側表面は、容量電極71が形成されていない領域(即ち、本発明における下
側電極非形成領域)において、凸状の段差を有するように形成されていてもよい。
【0108】
本実施形態に係る液晶装置では、平坦化絶縁膜19を形成することで、容量電極71及
び平坦化絶縁膜19の上側表面が揃っている。そして容量絶縁膜72は薄い膜であるため
、画素電極が形成される下地の平坦性が高くなる。その結果、対向基板20側に形成され
た対向電極21(図2参照)との間に分布する電界は、TFTアレイ基板10から対向基
板20に向かう方向に、比較的均一に発生する。このため、液晶層50に含まれる液晶分
子の配向状態は、画素電極に印加される画像信号に従って正常に制御される。また、この
ように画素電極9の表面の平滑性が損なわれないので、剥離又は破損のしにくい、良好な
状態の配向膜を形成することができる。その結果、より高品位な画像表示が可能な液晶装
置を実現することができる。
【0109】
以上説明したように、第2実施形態に係る液晶装置によれば、第1実施形態と同様に、
平坦化絶縁膜19を形成することで、画素電極9の表面に段差が生じることを防ぐことが
できる。これにより、液晶層50の液晶分子の配向不良を抑制し、高品位な画像表示が可
能である。
【0110】
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について
説明する。
【0111】
図13は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライ
トバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。
【0112】
図13に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光
源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から
射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2
枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応す
るライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される

【0113】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等
であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるも
のである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズ
ム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、
R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成さ
れる結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることと
なる。
【0114】
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着
目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bに
よる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0115】
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1
108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設
ける必要はない。
【0116】
尚、図13を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュー
タや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコ
ーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワーク
ステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そ
して、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0117】
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCO
S)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、
有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等に
も適用可能である。
【0118】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から
読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更
を伴う電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に
含まれるものである。
【符号の説明】
【0119】
3 段差部、 6 データ線、 7 中継層、 7’ 第2中継層、 9 画素電極、
10 TFTアレイ基板、 10a 画像表示領域、 11 走査線、 12 下地絶
縁膜、 19 平坦化絶縁膜、 30 TFT、 30a 半導体層、 33 コンタク
トホール、 50 液晶、 70 蓄積容量、 71 容量電極、 72 容量絶縁膜、
75 第1中継層、91 第4中継層、92 第3中継層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、
画素領域に配列された複数の画素電極と、
前記複数の画素電極よりも誘電体膜を介して下層側に配置されると共に、前記基板上で
平面的に見て、前記複数の画素電極の各々に少なくとも部分的に重なるように形成された
下側電極と、
前記下側電極の下地面上に配置されると共に、前記画素領域のうち前記下側電極が形成
された下側電極形成領域を除く下側電極非形成領域の少なくとも一部に形成されており、
前記下側電極の上側表面と前記下側電極非形成領域における前記下地面との段差を低減す
るための段差低減膜と
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記下側電極及び前記段差低減膜の上側表面が揃えられていることを特徴とする請求項
1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記下側電極及び前記段差低減膜の上側表面には、相互間における段差を低減する平坦
化処理が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記複数の画素電極及び前記下側電極は、透明導電材料から形成されることを特徴とす
る請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
トランジスタと、
前記トランジスタに対応して設けられた画素電極と、
前記トランジスタと前記画素電極との間の層に配置され、前記画素電極と誘電体膜を介
して対向することで蓄積容量を構成する下側電極と、
前記下側電極と同一層であって、平面視で前記下側電極の開口部の内側に配置され、前
記トランジスタと前記画素電極とを互いに電気的に接続する第1中継層と、
平面視で前記下側電極と前記第1中継層との間に配置される段差低減膜と
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
前記画素電極、前記下側電極、及び前記第1中継層は、透明導電材料で形成されること
を特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記トランジスタと前記下側電極との間の層に配置され、前記トランジスタと電気的に
接続されたデータ線と、
前記データ線と同一層に配置され、前記トランジスタと前記画素電極とを互いに電気的
に接続する第2中継層とを備え、
平面視で前記開口部の内側に設けられたコンタクトホールを介して、前記第1中継層と
前記第2中継層とが電気的に接続されることを特徴とする請求項5又は6に記載の電気光
学装置。
【請求項8】
前記第1中継層は、前記第2中継層より前記データ線が延在する方向の長さが長いこと
を特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記下側電極、前記第1中継層、及び前記段差低減膜の表面が平坦に揃えられているこ
とを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電気光学装置を具備してなることを特徴とする
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−191408(P2010−191408A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263650(P2009−263650)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】