説明

電気加熱装置のための熱発生素子とその製造方法

本発明は、特に自動車用の電気補助加熱装置において空気を加熱する、熱発生素子(1)であって、少なくとも1つのPTC加熱素子(5)と、前記PTC加熱素子(5)と前記PTC加熱素子(5)をはさんでその両側に配置された電気導体片(6;7,10)とを囲む絶縁ハウジング(2、3)と、を具備する熱発生素子(1)に関する。このような熱発生素子(1)を作るために、導体片と少なくとも1つのPTC素子との間の良好な接触を確保することができ、熱発生素子は、PTC素子を高絶縁の状態で収容するのに適しており、本発明では、密閉片(4、21)を挿入した状態で互いに対向して配置され、少なくとも1つのPTC加熱素子(5)を密閉して囲む、ハウジングシェル要素(2)とシェルカウンタ要素(3)を有する、2つの部品からなるハウジング(2、3)を具現化することを提案する。本発明は、さらにフレーム内に収容された層構造を有し、少なくとも1つの熱発生装置(1)を含む自動車用電気補助加熱装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのPTC加熱素子と、PTC加熱素子のみならずPTC加熱素子をはさんでその両側に配置された電気導体片をも囲む絶縁ハウジングと、を有する熱発生素子に関する。
【背景技術】
【0002】
このような熱発生素子は、例えば特許文献1により自動車用の補助加熱装置として知られている。他の熱発生素子は例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4により知られている。
【0003】
基本的には、一般的な熱発生素子では、PTC素子への相界面での大きな発熱が生じることなしに熱発生素子への電流供給が可能となるように、導体片とPTC素子との間の良好な機械的接触によって低い境界抵抗を提供すべきであるという課題がある。この要求は熱発生素子が約500ボルトまたはそれ以上の高い作動電圧を印加する場合に特に重要となる。
【0004】
一般的な電気加熱素子では、通常電気的金属導体板片により形成された導体片は、熱発生素子を囲むスリーブによりカプセル化されており、そのスリーブは導体片が少なくとも1つのPTC素子に対していくらかの圧力をかけるようにその導体片を配置している(特許文献2で示されるように)。この先行技術では、その両側に導体片が隣接するPTC素子は、内部でシリコンラバーでコーティングされた金属スリーブにより囲まれており、その結果、金属導体板片は絶縁された状態でスリーブ内に保持される。この配置だけでは導体片がPTC素子に対して押圧するための十分な接触圧力を実現するには十分ではない。これに対応して、層構造全部がプレス板により囲まれる。公知の熱発生素子は比較的受動的であり、すなわちPTC素子により発生する熱の外部への伝導性は比較的良くない。公知の熱発生素子はこれに対応して熱効率が悪く、熱条件の変化に対しての応答が比較的遅い。
【0005】
熱の発散については、例えば特許文献1から曲がりくねった状態の金属板片により形成されたラジエータ要素を熱発生素子の両側に対して配置することが知られている。これらのラジエータ要素は熱発生素子に対してばねによるプリテンションがかかるように置かれている。ラジエータと少なくとも1つのPTC素子の間の導体片は、自由に動けるように具備されているので、導体片はそのばね力によってPTC素子を押すように配置される。この構造は、特に高電圧で熱発生素子を作動させる場合にラジエータ要素および/またはフレームを介して流れる漏れ電流が避けられないという問題を伴う。さらに、熱発生素子の外側の、電流が流れる部品が露出するので安全上の重大な問題もある。
【0006】
特許文献4で知られる加熱棒にはまた熱伝導が悪いという上述の問題点がある。この加熱棒では3つの一般的な熱発生素子が円筒軸に関して互いに120°の角度差をもって配置されている。個々の熱発生素子の間で、電気絶縁材の円筒部分が配置されており、それぞれに加熱棒により加熱される液体のためにフロー経路のくぼみが作られている。このような構成では、特にPTC素子により発生した熱の空気による対流発散に関しては十分でない。ここではPTC素子から熱を必要な程度発散させることができない。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0350528号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第3208802号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第3046995号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第2804749号明細書
【特許文献5】米国特許6,147,330号明細書
【発明の開示】
【0007】
本発明の基礎をなす課題は、導体片と少なくとも1つのPTC素子との間の良好な接触を確保することができ、改良された方法で周囲の領域と電気的に絶縁されている、熱発生素子を提供することである。さらに、本発明により自動車用の改良された電気補助加熱装置が提供される。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、請求項1の特徴を有する熱発生素子を提供する。この熱発生素子は、ハウジングシェル素子とシェルカウンタ素子からなるハウジングを有する。このハウジングシェル素子とシェルカウンタ素子は、密閉片を挿入して互いに対向した状態で配置され、少なくとも1つの加熱素子を密閉した状態で取り囲む。
【0009】
本発明により、例えば特許文献1で知られる保持フレームは、さらに改良され、PTC素子を保持する。このPTC素子は、その電気補助加熱装置のための熱発生素子において、通常、1つのレベルの上に他のレベルを重ねる状態で配置される。そして、この保持フレームは、その位置において、特にPTC加熱素子のそれぞれが補助加熱装置から脱落しないように働く。本発明により、公知技術で知られる保持フレームは、所定の方法で1つのレベル内で1つのまたは複数のPTC加熱素子を保持し、PTC加熱素子同士を互いに離すばかりでなく、さらにPTC加熱素子を周囲の領域から密閉するハウジングとして実現される。この目的を達成するため、本発明は、ハウジングシェル要素と、シェルカウンタ要素を具備するシェルタイプハウジングを提案する。2つのハウジング要素は、密閉片を挿入して互いに対向した状態で配置され、少なくとも1つのPTC加熱素子を端部にてしっかりつかむハウジング要素の端部は、PTC素子を密閉して取り囲む。1つの熱発生素子に数個のPTC加熱素子がある場合、ハウジングは好ましくは長方形、細長い片状の平面部品として具体化され、部品の高さは対応するPTC加熱素子の高さより大きくないことが好ましい。少なくとも1つのハウジング要素、すなわちハウジングシェル要素は、PTC加熱素子をその端部でしっかりつかむ。この端部側の取付は、密閉片の挿入とともにシェルカウンタ要素に接近した位置でなされる。シェルカウンタ要素は例えばハウジングシェルまたはその他のように本質的には平面片として実現することができ、その結果、ハウジングシェル要素の側面方向端部は本質的にPTC加熱素子の高さ全体を覆うように延びている。
【0010】
特許文献5から、PTC素子を収容する2つのハウジング要素を有する熱発生素子は公知であり、このハウジング素子は、圧縮可能な素子の弾性的プリテンション力によるプリテンションがかかった状態で保持される。これに対応して、2つのハウジング素子は、互いにオーバラップしてこれらの間の弾性的な圧縮素子をクランプするウェブを具備する。この2つのハウジング要素は、圧縮素子を挿入する組み立て中に、一方が他方の上に長手方向にシフトしなければならない。これらの圧縮素子は、プリテンションをかけてラジエータ要素が多層PTC素子の電極に対して接触するように機能する。この目的のため、ハウジング要素はラジエータ要素と底部においてオーバラップする。
【0011】
特許文献5による圧縮素子は、似たようにラジエータ要素のボトムエンド(bottom ends)に挿入することで2つのハウジング要素に互いにプリテンションをかける機械的プリテンション手段として動作する。
【0012】
しかしながら、この公知の熱発生素子の構造は、非常に多くの努力を必要とする。特に、製造時に、圧縮素子がハウジング要素のそれぞれのウェブの間に位置する一方で、2つのハウジング要素は、一方が他方の上に縦方向にシフトすることが必要である。さらに圧縮素子により発生する圧縮力は、電極とPTC素子との間の良好な接触を確保するには十分ではない。この良好な接触は、抵抗分を生じないかまたは電流が電極からPTC素子への電流が低抵抗で流れることを、PTC加熱素子によって発生する熱を良好に取り出すことともに確実にするのに必要である。
【0013】
本発明は、電極が外側から層構造へ作用するばね力のプリテンションによりPTC素子に対して押される導体片により形成されるという原則を守っている(特許文献1参照)。
【0014】
しかし、本発明は、フレームを有する対応する補助加熱装置用の熱発生素子を提供する。ここでは、導体片と少なくとも1つのPTC素子との間の良好な接触を確実にし、この熱発生素子は、より改良された方法で、周囲の領域から電気的に絶縁される。このために、対向するハウジング要素の正面側に提供される密閉片が決め手となっている。特に、ハウジング要素のこれらの表面は、対応するハウジングシェル要素により形成された、少なくとも1つのPTC素子を収容する領域を直接限定するハウジング要素の正面側と考えられる。ハウジング要素の正面側は、対応するハウジングシェル要素により形成された接触面と本質的に平行に延びており、その接触面と同じ方向となっている。すなわち、少なくとも1つのPTC加熱素子の収容領域においてハウジングシェル要素の上から見た平面図においてみることができる。密閉片は、ハウジングシェル要素を最初に互いに連結させ、圧縮可能な方法でPTC素子をハウジングシェル要素との接触面に対して強く押すことを可能にする接着用テープであり得る。密閉片に働く考えられる圧縮力は、言い換えれば、ハウジングシェル要素を引き離すように動作する。密閉片は、しかし、他のハウジング要素における凹部形状の開口と係合する溝(groove)として形成されてもよい。密閉片にとっては、2つのハウジングシェル要素の間に生じたギャップを密閉した状態を保って橋渡しをし、さらに好ましくは前記ギャップが外に対して開くことなしにハウジングシェル要素が互いにある程度動くか、または互いに離れることができることを可能とすることが本質的である。
【0015】
密閉片は本発明の意味では、例えば、それぞれ正面側で支持されたハウジングシェル要素の対向する2つの正面側の間に配置された密閉要素である。代替え的には、密閉片は、ハウジングシェル要素またはハウジングカウンタ要素と一体的に形成されていてもよい。ここでは特に溝とばねの連結を考える。このような溝とばねの連結では、ばねは密閉片を形成する。ばねは他のハウジング要素において形成された溝と係合し、2つのハウジング要素が導体片と平行に延びた平面を越えてある限度内に動きうるように寸法が決められることが好ましい。溝とばねの連結は、さらにハウジングの外部から内部への直接のアクセスを防止し、本発明の意味での密閉片を形成する。
【0016】
上記の2つのハウジング要素が2つの導体片に平行に延びた平面を越える方向に互いに相対的に動くことにより、平行に設けられた導体片間のすき間距離の調整がある程度できる。その結果、PTC加熱素子の作業上の許容誤差は、1つのPTC加熱素子または複数のPTC加熱素子のそれぞれの導体片との平坦で良好な接触を免除する必要もなく、補償することができる。対応する移動可能性は、ある程度圧縮可能でありハウジング要素の対向する正面側の間に支持される密閉片に起因している。2つのハウジング要素がハウジングの内部の密閉が失われることなく導体片に平行して延びている平面を越えてお互いに少なくとも僅かに動き得ることが唯一の重要な点である。PTC加熱素子の異なる厚さおよび/または熱発生素子の動作中の熱応力に起因にした上記の作業上の許容誤差が、2つのハウジング要素の間の相対的動きにより追従され得るように、この移動可能性は実現されることが好ましい。この目的を達成するためには、20〜30mmもあれば十分であると考えられる。これは、より大きく移動する可能性を積極的に回避しなければならないことを必ずしも意味しない。この熱発生素子は、熱発生素子とラジエータ要素からなる、圧縮応力下で保持される層構造にて組み立てられるのにかなり適している。その結果、導体片は常にPTC加熱素子と接して配置され、ハウジングの構造的一体性は、外側から働くこの圧縮力によって確実にされる。
【0017】
本発明の記述がPTC加熱素子の密閉に向けられる限りにおいて、ここで特に円周方向において見える有様が有効である。熱発生素子は通常、少なくとも1つの、好ましくは2つの、熱発生素子の対向する側に接しているラジエータ要素を具備する層構造の片状の層を形成する。これらはフレーム内に配置されている。ラジエータ要素と熱発生素子は、フレーム内で層構造の長方形(oblong)の層に接している。ここで、ハウジング素子は、熱発生素子の層内で1つまたは複数のPTC加熱素子を、熱発生素子の縦方向の延長を横切る方向のみならず、好ましくは熱発生素子の縦方向にも固定するのに役立つ。この目的を達成するために、スペーサ等をハウジングに用意することができ、PTC加熱素子を所定の距離を置いて1つのレベルの上に他のレベルを重ねて配置して保持することができる。
【0018】
ハウジング素子は、好ましくは高度に絶縁されたプラスティックで形成されており、例えば電気的に高品質なポリアミドまたはテフロン(登録商標)で形成されている。各ケースで用いられる材料は、大きなクリープ抵抗をもつべきである。ハウジング内に収容されたPTC素子のCTI値(比較トラッキング指数値)は少なくとも400、好ましくは600とすべきである。もし少なくとも1つのハウジング要素が成型された部品として実施化された場合、射出成型により絶縁層をハウジング要素に付着させることにより、絶縁層を設け、および/または金属板片をハウジング要素に固定して設けることが実際的である。ここでは絶縁層は、通常熱発生素子の外側を形成し、PTC加熱素子の上部側または下部側に平行に延びている。金属板片は、好ましくは絶縁層と、金属板片と接触するPTC加熱エレメントとの間に直接接して存在しており、電流をPTC加熱素子に供給する役目をする。上記の成型された部品は、従来は成型されたプラスティックであり、すでに上述したように電気的に高品質なプラスティックからできていることが好ましい。代替え的には、どの場合もハウジング要素は、CIM(Ceramic Injection Molding:セラミック射出成型)部品で形成され得る。この目的を達成するために、射出成型装置で処理される自由に流れる懸濁した組成物(free-flowing suspension)を取得するため少なくとも1つのハウジング素子の製造のためのセラミック粉末がプラスティックと混合される。その後、結合剤が成型されたグリーンコンパクトから除去される。その後、このようにして得られたブラウンコンパクトが圧縮されて焼結したセラミック部品を形成する。
【0019】
例えば、焼結したセラミック部品として形成されたハウジング要素は、成型されたプラスティックのハウジング要素と協働することができる。このセラミック部品は、平面板として例えばU字形断面をもち密閉片を挿入した状態で少なくとも1つのPTC加熱素子を横方向からつかむ成型されたプラスティック部品と接触する。これにより、簡単な方法で、PTC素子のための円周状の絶縁を作ることができる。ベルト状のプラスティック部品が順にハウジングの外側を形成する。内部では通常、セラミック部品とPTC加熱素子との間で、さらに金属板片が備えられ、PTC加熱素子は金属板片に対して直接接するように配置され、PTC加熱エレメントは金属板片から電流を供給される。
【0020】
当然、セラミック部品としてPTC加熱素子を収容する本質的にU字形のハウジング要素を形成することも考えられる。セラミック部品をアルミナで形成された焼結部品として形成することが特に実際的であることが明らかになった。同様に、ハウジング要素は両方とも成型されたプラスティック部品により実施化され得る。
【0021】
両方のハウジング要素、すなわちハウジングシェル要素とシェルカウンタ要素をそれぞれがU字形断面を有し、PTC加熱素子の部分の端部をしっかりとつかむ同一の部品として実現することが特に実際的であることを示した。この場合、ハウジングシェル要素とシェルカウンタ要素は本質的にPTC加熱素子の厚み部分を半分だけつかむ。シェル要素としてのハウジング要素のそれぞれは、PTC加熱素子の部分を横方向に囲い込む。この実施の形態は、ハウジング要素の両方が1つの同一の型で製造し得る利点を提供する。さらに商品管理、貯蔵、生産ロジスティクスは、ハウジングが2つの同一の部品で実現されることで容易になる。
【0022】
密閉片の手段による2つのハウジング要素の密閉接触は、外部の力により有効となり、その外部の力は、電気加熱装置へ熱発生素子を実装した後に外部から熱発生素子に働く。これは、外部から層構造に働くばね力であり得る。これは例えば例えば特許文献1により知られている。
【0023】
代替え的に、あるいは追加的に、密閉片は接着機能も有し得る。その結果、ハウジングシェル要素とシェルカウンタ要素が密閉片の手段によって互いに接着する。この接着により固定した状態で部品が永久的に互いに接近して置かれる。対向するハウジング要素に引っ張り力が働くように密閉片を適用することも考えられる。その結果、とりわけPTC加熱素子に起因する作業上の許容誤差および温度差に起因する膨張は、密閉片によって補償され得る。密閉片は、通常それぞれが1つの金属板片を具備するハウジング要素の一様な弾性的プリテンションを提供する。金属板片は、常にPTC加熱素子の上部側または下部側である1つの側に直接接する。金属板片は、電流をPTC加熱素子に供給する。特に、もし高電圧が供給された場合、金属板片とPTC加熱素子との間の相界面において電流がPTC加熱素子に供給されるところで遷移抵抗があまり起こらないように注意しなければならない。この目的のために、2つのハウジング素子は好ましくはプリテンションの下で互いに近接するように置かれる。このプリテンションは、密閉片により生じるか、または外からハウジングに働く張力(tension)により(これが多分標準になるだろう)生じる。これにより、2つのハウジング要素が互い十分密閉することができる密閉片の圧縮が可能となる。
【0024】
もし本発明による熱発生素子が、例えば特許文献1のように、層構造の一部としてフレーム内にばねのプリテンションの下で構成された場合、組み立て中に取り扱いや取付けがより容易に行うことができる装置をつくるために接着密閉片を2つのハウジング素子に加えることができる。
【0025】
本発明による熱発生素子の好ましい更なる発展は、請求項2乃至請求項13により与えられる。
【0026】
本発明により、さらに、フレームと前記フレーム内に収容された層構造を有する電気補助加熱装置が特許請求の範囲となっており、前記電気補助加熱装置は、請求項1から請求項13のいずれかに記載の少なくとも1つの熱発生装置と、前記熱発生装置と平行に延びる少なくとも1つのラジエータ要素とを具備する。ラジエータ要素としては、ここでは好ましくは、良好な熱伝導体であって肋骨状のものによりラジエータ要素に対して流れる空気に熱を伝えるものを意味し、その熱は熱発生素子により熱伝導により導入される。ラジエータ要素は、曲がりくねった金属板片で形成されたか、または押出アルミニウム部として形成され、熱発生素子をそこに置くための少なくとも1つの平坦な接触面を有することが好ましい。さらに、本発明による電気補助加熱装置の更なる発展は、請求項13と請求項14で与えられる
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、2つの実施の形態によって図面を参照して以下により詳細に説明する。
【0028】
図1は、それぞれが焼結アルミナの部品として実現された2つの長方形のU字形ハウジング要素2、3を有する熱発生素子の第1の実施の形態の横断面図を示す。互いに対抗する位置にある個々のハウジング要素2、3のそれぞれのウェブ(web)は、密閉片4を間に挿入して互いに表面を向き合った状態に位置している。このようにして作られた、周囲から電気的に密閉された空間に、熱発生素子1の長手方向に(図面の平面を横切って)順々に配置された状態で数個のPTC加熱素子が収容される。ここでは1つの加熱素子5のみを示している。
【0029】
PTC加熱素子5と2つのハウジング要素2、3との間に、金属板片6、7がそれぞれPTC加熱素子5に電流を供給する導体片として具備される。熱発生素子を囲み熱発生素子に層構造内でプリテンションをかけて保持するフレームの外側から場合により導体片が突出するために導体片はハウジング要素2、3からそれらの前部において突出し得る。その結果、電気的フレーム端子をそこで設けることができる。
【0030】
密閉片4の厚さは、少なくとも1つのPTC素子5の厚さに関しては考えられる作業上の許容誤差を、2つのハウジング要素が接することなしに密閉片4を圧縮することにより補償することができるように選ばれる。これに関して、PTC加熱素子は、製造に起因するある寸法のばらつきを免れないことに注意すべきである。もし密閉片4弾性特性と寸法とが適合化されれば、厚み(矢印hの方向)に関するこのような許容誤差は、密閉片の圧縮によって補償され得る。そしてその結果、厚みに関する考えられるばらつきがある場合でもPTC加熱素子を収容する内部の円周方向の密閉は、常に確保される。
【0031】
図1で示される実施の形態においては、少なくとも1つのPTC加熱素子を側面からつかむ側部端の寸法は、PTC加熱素子5の幅bより15%以上広くない幅Bとなるように選択される。セラミックハウジング要素2、3の上側および下側での高さHとPTC加熱素子5の高さhとの比は、0.7:10である。高さHはこの場合、ハウジング要素2、3の上側または下側と、金属板片7との接触面を形成する要素2、3の内側との距離として定義される。これに対応して熱発生素子は比較的平らである。PTC加熱素子5の支持体、すなわち素子2または素子3のセラミック背後部の厚みは、PTC加熱素子5の高さの7.5%を超えない。この背後部だけがPTC加熱素子への支持を提供する。
【0032】
2つのハウジング要素2、3の向かいあった正面にて支持された圧縮可能なプラスティックの密閉片の圧縮により、2つのハウジング要素2、3が上部の金属板片6または下部の金属板片7に平行に延びる平面を越えてある程度動くことが可能となる。
【0033】
図2では、第2の実施形態の横断面図が示されている。図1で示された実施の形態における部品と同じ部品に対しては同じ参照符号を付すようにしている。
【0034】
図2で示される実施の形態でも、生産を容易にするために2つの全く同じのハウジング要素2、3を有する。端部により形成されたハウジング要素2、3のそれぞれの正面側の1つは、溝20(groove)を有しており、他の正面側からはばね21が突出している。ハウジング要素2、3の1つのばね21は、他のハウジング要素3、2の相補的に形成された溝20と係合する。その結果、ハウジング2、3の内部は密閉される。このため、溝20の幅は、ばね21の厚さよりもわずかだけ大きくなるように注意するべきである。溝20の深さまたはばね21の長さは、PTC素子5がハウジングの中に収容されている場合は、これらのPTC素子は金属板片6、7に対して平坦に位置するように選ばれ、ハウジング要素2、3が、収縮した場合、および/または総量を設定する場合、または作業上の許容誤差のために、PTC素子5の側上のハウジング要素2、3が少なくとも僅かに互いに動き得るように、また、想定される作業上の許容誤差または熱膨張があっても、溝20またはばね21がハウジングを密閉するのに十分な重なりが生じて係合するように選定される。
【0035】
図3では、熱発生素子1の代替的な実施の形態を横断面図にて示す。この実施形態では、ハウジングシェル要素2ばかりでなく、シェルカウンタ要素3もシェルのように実現される。ハウジング要素2、3は、両方とも成型されたプラスティック部品として作られ、絶縁層としてのアルミナ片8が金属板片10と同様にハウジング要素2、3のそばに成型されている。金属板片10は、内側からアルミナ層8と直接対向する位置にあり、PTC加熱素子5と接触している。アルミナ層8は、上部側と下部側とで熱発生素子1の外側を形成している。この方向に、この熱発生素子1は比較的薄く、その結果、PTC加熱素子により発生する熱は、殆ど障害物なしにラジエータ要素11に伝導により到着する。示された実施の形態では、ラジエータ要素11は、追加的に2つのハウジング要素2、3のプラスティック材料によって側面をしっかりつかまれており、したがってその位置が保持される。特にハウジング要素のそばでそれらを成型することにより生成したハウジング要素2、3の端部は、アルミナ層8の外側に突出している。これにより、アルミナ層8に対して当接しているラジエータ要素11は、図2に示されるような層構造を越えて移動することができない。
【0036】
図3に示される自動車用電気補助加熱装置は、熱発生装置1とラジエータ要素11を収容するフレームにより囲まれている。通常、ラジエータ要素11の数個の層と熱発生素子1が提供され、ばねのプリテンションによりフレームに保持される。この目的のために、ばねがフレームの端部領域に収容され、フレーム内に一体化され、または層構造内でフレームの中心に収容される。通常、ラジエータ要素11は、ラジエータ要素1に直接隣接して配置され、2つのラジエータ要素に抗してプリテンションをかけて層構造を保持するようにばねをセットする。このようにして形成された層構造は、フレーム内で露出され、フレームに対する空気の流れが層構造を通過することができる。熱発生素子1の電気的接続は、通常個々の金属板片がフレームを越えて外部まで側面方向に延びることにより実現できる。
【0037】
電気補助加熱装置の実現のために、側面から入る空気が、もしそれが湿気や汚れをもたらすのであれば、PTC加熱素子に直接到達できないように、PTC加熱素子5を円周(circumferential)方向に密閉することが重要である。さらに、互いに向かい合った金属板片6、7の間の考えられる漏れ電流だけを防止することが示された。したがって、もし湿気および/または汚染空気は、熱発生素子と接触せずに、異なる極性の導体片の間で電気放電の原因となり得るなら、導体片6、7は、層構造を越えて延びるフレームのスパー(spar)にてそれ自体知られた方法で容易に外に接続(expose)できる。
【0038】
漏れ電流を避けるために、漏れ電流の経路を最大化すべきである。図1の実施の形態において、漏れ電流経路は、上部の金属板片6の端部からハウジングシェル2の内部表面に沿って、一部はハウジングシェル要素2の端部の正面側を通り、密閉片4の円周(circumferential)表面の一部分を通り、シェルカウント要素3の正面側に到達し、さらにこのシェルカウンタ要素3の内部壁を通って端部の側の下部金属板片7の正面側に到達する。この漏れ電流経路は、この500ボルトまでの電圧にて、ここで考慮すべき応用では少なくとも2.5mmはあるべきである。この漏れ電流経路は、もし密閉片4内でこれが形成されるのであれば、例えば、ハウジング要素2、3の正面側にて経路をつくることによって延長することができる。あるいは、2つのハウジング要素2、3の内側の壁に漏れ電流経路を延長するために経路をつくってもよい。同じように、金属板片の幅はPTC加熱素子5の寸法と等しくなるまでどの場合でも減らすことができる。同じ理由で、図3で示される金属板片10のまわりの成型をしないで済ませ、代わりにセラミック板8と接するように金属板片10を配置し得る。このような実施の形態は、熱発生素子が特許文献1と似た補助加熱装置を形成するフレームにおける層構造の一部として配置されるのであれば特に役に立つ。ここでは熱発生の個々の層と熱放散の層構造が少なくとも1つのばねの圧力下でフレーム内に保持される。
【0039】
本発明は、示された実施の形態に限定されない。圧縮し得る密閉片4は、プラスティックにより形成されたハウジング要素2とハウジング要素3それぞれによって一体的に具現化されてもよい。特に、ハウジング要素2とハウジング要素3の具現化は、それぞれ熱可塑性のエラストマーによって、密閉が可能となるようにそれ自体十分に圧縮可能であり、ハウジング要素2とハウジング要素3が互いに相対的に動き得ると考えることができる。ハウジング要素2とハウジング要素3の厚さは、図1によれば高さHまたは幅Bを意味し、1,5mmを超えるべきでない。この寸法では、どんな場合でも、下限は現在のところ安定上の理由から、0.45mmと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】熱発生素子の第1の実施の形態の横断面図を示す。
【図2】熱発生素子の第2の実施の形態の横断面図を示す。
【図3】本発明による電気補助加熱装置のラジエータ要素を有する熱発生素子の第3の実施の形態の横断面図を示す。
【符号の説明】
【0041】
1 熱発生素子
2 ハウジングシェル要素
3 シェルカウンタ要素
4 密閉片
5 PTC加熱素子
6 金属板片
7 金属板片
8 セラミック板
9 セラミック板
10 金属板片
11 ラジエータ要素
20 溝
21 ばね
H PTC加熱素子の支持体の高さ
h PTC加熱素子の高さ
B PTC加熱素子の側壁の幅
b PTC加熱素子の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車の電気補助加熱装置において空気を加熱する、熱発生素子(1)であって、
少なくとも1つのPTC加熱素子(5)と、
前記PTC加熱素子(5)と、前記PTC加熱素子(5)をはさんでその両側に配置された電気導体片(6;7、10)と、を囲む絶縁ハウジング(2、3)と、
を具備し、
前記ハウジング(2、3)は、向かい合った前記ハウジング要素(2、3)の正面側同士を橋渡しする密閉片(4、21)を挿入した状態で互いに対向して配置されたハウジングシェル要素(2)とシェルカウンタ要素(3)を具備し、
前記密閉片は、前記ハウジング要素(2、3)を外側から前記熱発生素子(1)へ働き少なくとも1つのPTC加熱素子に対して前記導体片(6、7、10)を押圧する圧縮力により、前記ハウジング要素(2、3)を密閉し、前記少なくとも1つのPTC加熱素子を密閉して囲む、熱発生素子。
【請求項2】
前記密閉片(4、21)は、密閉の維持によって前記ハウジング要素(2、3)が前記導体片(6;7、10)に平行に延びた平面を越えて互いに僅かに動き得るように具現化された、請求項1記載の熱発生素子。
【請求項3】
前記ハウジングシェル要素(2)と前記シェルカウンタ要素(3)は、前記密閉片(4)の手段によって互いに接着されている、請求項1または請求項2記載の熱発生素子。
【請求項4】
少なくとも1つの前記ハウジング要素(2、3)は、焼結セラミック部品(8)として具現化され、導体片としての金属板片(6、7)は、前記PTC加熱素子(5)に隣接した状態で前記セラミック部品(8)に接して配置されている、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の熱発生素子。
【請求項5】
前記セラミック部品(8、9)は、アルミナで形成された焼結部品である、請求項4記載の熱発生素子。
【請求項6】
絶縁層(8)および/またはまわりに前記絶縁層(8)を成型することにより前記絶縁層に固着された金属板片(10)を具備する成型されたプラスティック部品を含む、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の熱発生素子。
【請求項7】
前記ハウジングシェル要素(2)と前記シェルカウンタ要素(3)は、本質的に前記PTC加熱素子(5)の厚み部分を半分だけ横方向につかむように具現化されている、請求項1から請求項6までのいずれかに記載の熱発生素子。
【請求項8】
前記ハウジングシェル要素(2)と前記シェルカウンタ要素(3)は、同一の設計である、請求項6記載の熱発生素子。
【請求項9】
前記密閉片(4)は、前記少なくとも1つのPTC加熱素子(5)の厚みに関する、考えられる作業上の許容誤差が、前記2つのハウジング要素(2、3)が接することなしに前記密閉片を圧縮することにより補償されるように、その寸法が定められる、請求項1から請求項8までのいずれかに記載の熱発生素子。
【請求項10】
前記密閉片(4)は、ハウジング要素(2;3)から突出したばね(21)により形成され、他のハウジング要素(3;2)において構成された溝(20)に係合する、請求項1から請求項8までのいずれかに記載の熱発生素子。
【請求項11】
前記ハウジング要素(2、3)によって形成され、前記少なくとも1つのPTC加熱素子(5)を横方向につかむ端部の幅(B)は、1.5mmより広くない、請求項1から請求項10までのいずれかに記載の熱発生素子。
【請求項12】
前記ハウジング要素(2、3)により形成された、PTC加熱素子の支持体は、前記PTC加熱素子(5)の高さの10%未満であり、好ましくは5%未満である、請求項1から請求項11までのいずれかに記載の熱発生素子。
【請求項13】
PTC加熱素子(5)の支持体は、金属板片(10)および/またはセラミック部品(8)によってのみ形成される、請求項1から請求項12までのいずれかに記載の熱発生素子。
【請求項14】
フレームと前記フレーム内に収容された層構造を有する電気補助加熱装置であって、
少なくとも1つの請求項1から請求項13のいずれかに記載の熱発生素子(1)と、
それ自体と平行に延びた少なくとも1つのラジエータ要素(11)と、を具備し、
前記圧縮力は、ばねによるプリテンションをかけてフレーム内の層構造を保持するばねの力により生じる、電気補助加熱装置。
【請求項15】
層構造は、ばねによるプリテンションをかけてフレーム内に保持される、請求項14記載の電気補助加熱装置。
【請求項16】
ハウジングシェル要素(2)とこれに関係付けられたハウジングカウンタ要素(3)は、ばねの力によって前記密閉片(4)の手段により互いに向き合って密閉された状態で配置される、請求項14または請求項15記載の電気補助加熱装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−528655(P2009−528655A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556730(P2008−556730)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009280
【国際公開番号】WO2008/049619
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(501324823)エーベルスパッヒャー・カテム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディットゲゼルシャフト (23)
【Fターム(参考)】