説明

電気化学デバイス及び回路基板

【課題】電極パッドとリードとの間の固定強度を向上可能な電気化学デバイス及び回路基板を提供する。
【解決手段】電気化学デバイスのリード3は、Alを含むリード本体3Aと、リード本体3Aの先端部に設けられ、この先端位置から突き出した第1及び第2の金属薄膜3aを有している。これらの金属薄膜3aは、Niを含む薄膜本体と、薄膜本体の少なくとも外側表面を被覆しSnを含むメッキ層とを有している。薄膜本体の内側表面の特定領域と、リード本体3Aの表面とは、所定領域において、メッキ層を介することなく、直接接触して溶接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EDLC(電気二重層キャパシタ)等の電気化学デバイス及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフラット型の電気化学デバイスは、例えば特許文献1に記載されている。このようなフラット型の電気化学デバイスでは、平面形状が四角形の外装体の内部から外方に向けて、複数のリードが延びている。これらのリードは、電解液に対する耐性と電気導電性の双方を満たす必要から、一般にはアルミニウムからなり、半田材料によって、電極パッドに電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−515083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルミニウムからなるリードの場合、半田材料に対する濡れ性が低いため、電極パッドとリードとの間の固定強度が低くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、電極パッドとリードとの間の固定強度を向上可能な電気化学デバイス及び回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に係る電気化学デバイスは、外装体内に収容された充放電体と、前記充放電体から延びたリードと、を有する電気化学デバイスにおいて、前記リードは、Alを含むリード本体と、前記リード本体の先端部において、前記リード本体の上下面にそれぞれ溶接された第1及び第2金属薄膜と、を備え、前記第1及び第2金属薄膜のそれぞれの端面位置は、前記リード本体の側面位置よりも突き出た位置にあり、前記第1及び第2金属薄膜は、それぞれの内側表面が対向しており、それぞれの前記第1及び第2金属薄膜においてそれぞれの内側表面に対向する表面を外側表面とすると、それぞれの前記第1及び第2金属薄膜は、Niを含む薄膜本体と、前記薄膜本体の少なくとも外側表面を被覆しSnを含むメッキ層と、を有し、前記薄膜本体の内側表面の特定領域と、前記リード本体の表面とは、前記メッキ層を介することなく、直接接触して溶接されていることを特徴とする。なお、回路基板上に電気化学デバイスを搭載する場合において、リード本体における回路基板側に位置する面を下面とし、これとは逆側の面を上面とする。
【0007】
それぞれの金属薄膜の表面にはSnを含むメッキ層が含まれており、半田材料との濡れ性が高いため、金属薄膜と電極パッドとは半田材料を介して強固に固定される。外側にメッキ層を有する第2金属薄膜と電極パッドとの間にも半田材料が介在している。ここで、メッキ層が形成される薄膜本体にはNiが含まれているため、NiとSnとは強固に接合している。また、上側に位置する第1金属薄膜の外側の上面まで、半田材料は這い上がることができるため、更に電極パッドと第1金属薄膜との間の固定強度を高めることができる。それぞれの金属薄膜のメッキ層が形成されていない領域は、Alを含むリード本体に溶接されているが、NiとAlとは強固に溶接可能であるため、金属薄膜とリード本体とも強固に固定される。また、それぞれの金属薄膜は、リード本体よりもその長手方向又は幅方向に突き出しており、金属薄膜の突き出た部分の領域間にも半田材料が入り込むことが可能である。したがって、電極パッドとリードとの間の固定強度を著しく向上させることが可能となる。
【0008】
また、本発明に係る電気化学デバイスでは、それぞれの前記第1及び第2薄膜本体の内側表面上には、前記薄膜本体の幅方向両端位置近傍において、その長手方向に沿って前記メッキ層が形成されていることを特徴とする。
【0009】
メッキ層は、外側表面から側面を経て両端位置近傍に至るが、この位置にメッキ層を形成しておくことで、メッキ層の断面形状(例:リード長手方向に垂直な断面形状)の輪郭線が直線性を帯びてくる。換言すれば、メッキ層の厚みのバラツキが少なくなるため、製品誤差が少なくなり、安定した品質の電気化学デバイスを提供することができる。
【0010】
また、本発明の電気化学デバイスでは、前記メッキ層の厚みは、0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする。すなわち、厚みが0.5μm未満の場合、メッキ層に欠陥が発生する可能性があり、10μmを超える場合には溶接を妨害する傾向があるからである。
【0011】
また、本発明の電気化学デバイスでは、前記薄膜本体の厚みは、50μm以上500μm以下であることを特徴とする。薄膜本体の厚みが50μmを下回る場合には、上述のメッキ層構造を形成する場合において、薄膜本体の非メッキ領域に粘着テープを貼り付けてから、メッキを行い、しかる後に、粘着テープをはがすことになるが、この際に、薄膜本体が振動して、薄膜本体にシワ、よじれ、折れ曲がりなどが生じる傾向があり、このような不良は制御できないので、製品の品質に誤差が発生する。また、薄膜本体の厚みが500μmを超える場合には、リードとの接合が困難になるという現象が生じるため好ましくない。本発明では、薄膜本体の厚みを上述の範囲内に設定することにより、これらの不具合を抑制することが可能となる。
【0012】
また、本発明の電気化学デバイスでは、前記第1及び第2金属薄膜の前記リード長手方向の寸法は、それぞれ1mm以上であることを特徴とする。
【0013】
この寸法が1mm未満の場合には半田による電極パッドとの接合強度が低下する傾向があり、1mm以上の場合、特に2mm以上の場合には接合強度が得られる。なお、この寸法は5mm以下であることが好ましく、この場合には十分な接続強度を得ることができる。
【0014】
また、本発明の電気化学デバイスでは、前記メッキ層は、98±1(質量%)のSnと2±1(質量%)のCuを含むことを特徴とする。±1(質量%)は許容される誤差である。
【0015】
この場合には、半田接合時に半田の融点が下がり、容易に接合することができるという効果がある。
【0016】
また、リード本体の幅よりも、それぞれの金属薄膜の幅の方が大きい場合、リード本体から突き出た部分の金属薄膜にも半田材料がのりやすくなり、引っ張り強度やねじり強度などが増すことになる。
【0017】
また、本発明の回路基板は、上述のいずれかの電気化学デバイスと、前記電気化学デバイスが搭載され、電極パッドを備えた基板と、前記外装体の裏面と、前記基板との間に介在する両面粘着テープと、前記電極パッドと前記第2金属薄膜との間に介在すると共に、前記第1金属薄膜の外側上面上に至る半田材料と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この場合、リードと電極パッドとが強固に固定されると共に、外装体の裏面と基板とが両面粘着テープによって強固に固定されるため、振動に対して強い回路基板となる。
【0019】
また、本発明の回路基板において、前記半田材料は、Sn及びCuを含むことを特徴とする。このような材料の場合にはメッキ層に含まれるSnとの親和性がよいため、半田材料の濡れ性が高くなるが、Cuが含まれているため半田接合時に半田の融点が下がり,容易に接合することができるという効果がある。また、この半田材料には微量のAgが含まれていることが更に好ましい。この場合には、半田接合後の耐久性が向上するという効果がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電気化学デバイス及び回路基板によれば、電極パッドとリードとの間の固定強度を向上させることができるため、信頼性に優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電気化学デバイスの斜視図である。
【図2】電気化学デバイスのII−II矢印断面図である。
【図3】電気化学デバイスのIII−III矢印断面図である。
【図4】金属薄膜の斜視図である。
【図5】金属薄膜の断面図である。
【図6】リード本体と金属薄膜の溶接工程を示す斜視図である。
【図7】リード本体と金属薄膜の固定方法を示す図である。
【図8】電気化学デバイスが基板に取り付けられてなる回路基板の断面図である。
【図9】実施例に係る実験方法を説明するための図である。
【図10】比較例1に係る実験方法を説明するための図である。
【図11】比較例2に係る実験方法を説明するための図である。
【図12】各種実施例に係る金属薄膜の構造と取付法を説明するための図である。
【図13】実験結果を示す図表である。
【図14】電気化学デバイスの内部構造を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態に係る電気化学デバイスについて説明する。同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0023】
図1は、実施形態に係る電気化学デバイスの斜視図、図2は、この電気化学デバイスのII−II矢印断面図、図3は、この電気化学デバイスのIII−III矢印断面図である。また、図8は、電気化学デバイスが取り付けられた回路基板のXZ断面図である。
【0024】
この電気化学デバイス10は、外装体1内に収容された充放電体2と、充放電体2から延びた複数のリード3とを有している。外装体1は、方形の上部ラミネートシート1Aと、方形の下部ラミネートシート1Bとを重ね合わせ、これらの周囲の4辺近傍領域を接着してなる。ラミネートシート1A,1Bは、それぞれアルミニウム薄膜の内側表面を樹脂層で被覆してなるものである。外装体1の厚み方向をZ軸とし、幅方向をY軸、長さ方向をX軸として、図1に記載のように三次元直交座標系を設定する。外装体1のY軸方向の両端近傍部位1Y1,1Y2は、X軸に沿った境界線を境に内側に折り曲げられており、外装体1の機械的強度が向上している。
【0025】
外装体1の密閉された内部空間内には、電解液と共に電池素体としての充放電体2が配置されている。リード3を介して、充放電体2には電荷を蓄積することができると共に、蓄積された電荷を放出することも可能である。充放電体2の構造としては、種々のものがあるが、ここでは直列接続されたキャパシタであるものとする。すなわち、この場合には電気化学デバイス10は、EDLC(電気二重層キャパシタ)を構成している。
【0026】
ここで、EDLCの内部の電気回路構造を図14に示す。
【0027】
充放電体2は、キャパシタ2Aとキャパシタ2Bとを直列に接続してなり、これらの接続点にはリード3が電気的に接続され、キャパシタ2A及びキャパシタ2Bの前述の接続点とは異なる端子にはリード3及びリード3がそれぞれ電気的に接続されている。外装体1の内部は、ポリプロピレン等からなるシーラント1Sにより2つの収容部に仕切られており、各収容部にキャパシタ2Aとキャパシタ2Bとが別々に収容されている。外装体1内部の各収容部には、電解液LQ1,LQ2が充填されている。キャパシタ2A,2Bを構成する各端子電極は、活物質層と集電体を積層してなる。また、キャパシタ2A,2Bを構成する各端子電極間には、絶縁層としてのセパレータS1,S2がそれぞれ介在している。EDLCにおいては、分極性導電体と電解質(液)との間には電荷が薄い層となって配列し、これらの間のバイアス印加によって電荷が蓄えられるが、中央のリード3は、直列接続されたキャパシタ2A及び2Bの接続点における電位を制御するために用いられている。
【0028】
活物質層は分極性電極である。この分極性電極は、多孔質材料からなり、活性炭にバインダ樹脂を混ぜて製造する。バインダ樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素を含む高分子化合物、又は、スチレンブタジエンゴムのようなゴム系の高分子化合物や,カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。必要に応じてカーボンブラック、カーボンナノチューブ、又は黒鉛の微粒子、微細繊維を導電助剤として配合することもできる。製造時においては、これらの材料を、集電体の片面もしくは両面に塗布する。
【0029】
集電体は金属箔からなり、平滑面を有するアルミニウム箔やチタン箔の他、これらの表面をエンボス加工やエッチング処理によって粗く加工したもの使用することができる。なお、電極製造方法として、活性炭に導電補助剤とバインダを加えてシート状にして集電体に接着する方法のほか、活性炭をスラリー状にして集電体に塗工する方法などもある。塗工する方法としては、アプリケータ方式、グラビア方式、リバースロール方式、エクストルージョン(ノズル)方式、ディップ方式等がある。
【0030】
セパレータS1,S2は、例えば質量比10%以上のポリオレフィン系樹脂を含有した不織布または多孔質フィルムからなる。ポリオレフィン系樹脂の軟化点温度以上の温度環境下で、一対の分極性電極に圧力を加えることにより、分極性電極とセパレータとは接着することもできる。セパレータとして、セルロース不織布やアラミド繊維の不織布を用いることもできる。
【0031】
電解液としては水溶液系と有機系のものが知られている。有機系の電解液の溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、スルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリルなどあり、溶質としては、アンモニウム塩、アミン塩、或いはアミジン塩などが知られている。
【0032】
図1〜図3に戻り、電気化学デバイス10の構造について説明する。
【0033】
電気化学デバイス10において、リード3は、Alを含むリード本体3Aとその先端に固定された一対の金属薄膜3aとを備えている。それぞれの金属薄膜3aは、リード本体3Aの先端部に固定されており、リード本体3Aの先端から突き出ている。また、図1に示す例では、それぞれの金属薄膜3aは、リード本体3Aの上下面(XY面)をそれぞれ被覆している。更に、図2に示すように、それぞれの金属薄膜3aの所定領域(R3U,R3L)はリード本体3Aの上下面にそれぞれ溶接されている。なお、リード本体3Aにおいては、Alは主成分であるが、微量の不純物を含んでいても良い。リード本体3AにおけるAlの含有率は少なくとも50質量%以上であり、電気伝導性と電解液に対する耐性を考慮すると、好適には95質量%以上である。
【0034】
上側に位置する第1金属薄膜3aと下側に位置するび第2金属薄膜3aとは、それぞれの内側表面が対向している。それぞれの第1及び第2金属薄膜3aにおいて、それぞれの内側表面に対向する表面を外側表面とする。それぞれの前1及び第2金属薄膜3aは、Niを含む薄膜本体3a1と、薄膜本体3a1の少なくとも外側表面を被覆しSnを含むメッキ層3a2とを有している。溶接される所定領域は上下の領域R3UとR3Lである。溶接される箇所は、金属薄膜3aの全領域ではなく、一部領域である。すなわち、それぞれの薄膜本体3a1の内側表面の特定領域(所定領域R3U,R3Lを含み、メッキ層3a2で被覆されていない露出領域)と、リード本体3Aの表面(XY面)とは、メッキ層3a2を介することなく、直接接触しており、リード本体3Aの先端部において、所定領域R3U,R3Lにおいて、露出した特定領域とリード本体3Aの上下の表面は溶接されている。
【0035】
ここで、第1及び第2金属薄膜3aのそれぞれの先端位置(X軸正方向先端位置)は、リード本体3Aの先端位置よりも、寸法Lだけ、突き出た位置にある。それぞれの金属薄膜3aは、リード本体3Aよりもその長手方向に突き出しており、金属薄膜3aの突き出た部分(図2参照)の領域間にも半田材料が入り込むことが可能であり、固定強度を高めることができる。
【0036】
薄膜本体3a1におけるNiの含有率は少なくとも50質量%以上であり、Alとの溶着が強固に行われる点を考慮すると、好適には95質量%以上である。また、メッキ層3a2におけるSnの含有率は、半田材料との親和性等を考慮して決定されるが、本例の電気化学デバイスにおいては、メッキ層3a2は、98±1(質量%)のSnと2±1(質量%)のCuを含む。±1(質量%)は許容される誤差である。この場合には、半田濡れ性とウィスカの非成長において改善効果がある。
【0037】
金属薄膜3aの表面にはSnを含むメッキ層3a2が含まれており、半田材料SD(図8参照)との濡れ性が高いため、金属薄膜3aと電極パッドE1とは半田材料SDを介して強固に固定される。図8の半田材料SDは、メッキ層3a2及び電極パッドE1の双方に接触している。ここで、図2及び図3に示されるメッキ層3a2が形成される薄膜本体3a1にはNiが含まれているため、NiとSnとは強固に接合している。
【0038】
また、外側にメッキ層3a2を有する第2金属薄膜3aと電極パッドE1(図8参照)との間にも半田材料SDが介在している。なお、第1金属薄膜3aの外側表面の上面(Z軸正方向のXY面)まで、図8の半田材料SDは這い上がる(半田材料を上から滴下した場合に上面に残留する)ことができるため、更に電極パッドE1と金属薄膜3aとの間の固定強度を高めることができる。すなわち、Alは溶融した半田材料を弾く性質を有しており、Alのリード本体3Aの側面が単に露出している場合には、この露出面が障害となって、半田材料SDがそれ以上の高さまで這い上がることができず、上側から押さえるような形状で半田材料SDを塗布することができないが、上述の実施形態に係る構造の場合には、リード本体3AのAl先端の側面から離隔した箇所まで金属薄膜3aが突出しているので、半田材料がこれらの金属薄膜3a間を伝わり、かかる不具合を解消し、強固な固定状態を形成することができる。
【0039】
図2を参照すると、上部に示す第1金属薄膜3a(3a1,3a1)及び下部に示す第2金属薄膜3a(3a1,3a1)のメッキ層3a2が形成されていない領域(Y軸方向の中央領域を通りX軸に沿って延びた領域(図4参照))の一部は所定領域R3U,R3Lにおいて、Alを含むリード本体3Aの上下面にそれぞれ溶接されているが、NiとAlとは強固に溶接可能であるため、金属薄膜3aとリード本体3Aとも強固に固定される。したがって、電極パッドE1(図8)とリード3との間の固定強度を著しく向上させることが可能となる。
【0040】
更に、図2を参照すると、一対の金属薄膜3aのリード長手方向(X軸方向)の寸法Xaは、1mm以上であること好ましい。この寸法Xaが1mm未満の場合には半田による電極パッドとの接合強度が低下する傾向があり、1mm以上の場合、特に2mm以上の場合には接続に必要な接合強度が得られる。なお、この寸法は5mm以下であることが好ましく、この場合には十分な接続強度が得られる。また、外装体1との境界位置からリード3のX軸方向の先端位置までのリード3の寸法XAと、寸法Xaの比率ra(=XA/Xa)は、1.2以上であることが好ましい。寸法の比率raが1.2未満の場合には、外装体と接して外装体表面の樹脂層を傷つける場合があり、ショート不良率を増加させる傾向がある。なお、外装体1との境界位置からリード本体3AのX軸方向の先端位置までの距離(XA−L)は、寸法XAよりも短い。なお、突き出し量L、アルミニウムのリード本体3Aの厚みTAl、Niの薄膜本体3aの厚みTNiは、以下の関係を有している。
L>TAl×2
TAl×0.2<TNi<TAl×3
【0041】
この関係式が成立する場合、半田材料のフィレットを容易に形成することができ、この結果、接合強度が増し、また抵抗が低く抑えられる。突き出しの方向は、X軸方向であってもよいが、Y軸方向であってもよい。
【0042】
図4は、一対の金属薄膜3aの斜視図であり、図5(A)には一方の金属薄膜3aのYZ断面図が示されている。
【0043】
メッキ層3a2(メッキ層3a21、3a22、3a23、3a24、3a25を含む)に関して説明すると、各薄膜本体3aの内側表面上には、薄膜本体3aの幅方向両端位置近傍(各側面(XZ面)から金属薄膜3aの幅方向(Y軸)の寸法の1%から20%以内の領域)において、薄膜本体3a1の長手方向(X軸)に沿って帯状のメッキ層3a21、3a22が、外側面及び側面のメッキ層3a23、3a24、3a25に連続して形成されている。
【0044】
図4のY軸方向両端位置(リードの幅方向両端位置)近傍において、メッキ層3a21、3a22(図5参照)を形成しておくことで、メッキ層3a2の断面形状(リード長手方向に垂直な断面形状(YZ断面))の輪郭線が、これを形成しない場合(B)に比較して、直線性を帯びてくる。図5(B)では、図5(A)に対応するメッキ層3a21,3a22は形成されておらず、両端位置近傍のメッキ層が丸みを帯びて厚くなっている。一方、図5(A)の形状の場合、側面のメッキ層3a23,3a24は均一な厚みであって、YZ断面内において輪郭線が直線性を有しており、裏面側のメッキ層3a25の輪郭線に対して概ね直交している。このように、図5(A)の形状の場合、メッキ層3a2の厚みのバラツキが少なくなるため、製品誤差が少なくなり、安定した品質の電気化学デバイスを提供することができる。
【0045】
このようなメッキ層の形成は、一般に良く知られている方法を用いれば良い。メッキ層の形成方法はアルカリ性、酸性、中性のメッキ浴で大別できる。
【0046】
アルカリ性のメッキ浴は,スズ酸カリウムまたはスズ酸ナトリウムと、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムとから構成される。4価のスズから電着を行い、70℃前後の温度で反応を行うと安定したメッキ層が形成できる。なお、後述の実施例に係る実験では、メッキ用の溶液として、スズ酸カリウムと水酸化カリウムの水溶液を用いたアルカリ性のメッキ浴を採用した。
【0047】
酸性のメッキ浴は、硫酸スズやほうフッ化スズなどで構成される。
【0048】
中性のメッキ浴は、塩化スズを用いる。
【0049】
要求される密着度合によって、メッキ下地処理として銅やニッケルメッキを1〜10μm厚で形成する場合もある。ウィスカ対策として、メッキ後、溶融加熱処理や約180℃で約1時間程度加熱する場合もある。
【0050】
また、メッキ層3a2の厚み(平均値)は、0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする。すなわち、厚みが0.5μm未満の場合、メッキ層に欠陥(ピンホール)が発生する可能性があり、10μmを超える場合には溶接を妨害する傾向があるからである。Snメッキ層3a2の厚みは、2μm程度あれば半田濡れ性は良好となる。半田の濡れ性は、例えば、標準化機関である半導体技術協会(JEDEC)の半導体電子部品の単体での信頼性試験の規格(JESD22−B102E)により規定される。このような条件で作製された薄膜上のスズメッキ層では、例えば半田温度245℃、浸漬速度1.8mm/秒、浸漬時間3秒、浸漬深さ2mmの条件で、半田浸漬面積の95%以上に半田の層を形成することができる。
【0051】
また、本発明では、Niの薄膜本体3a1は折り曲げることなく、平坦な状態で適用されているので、内部応力が発生せず、原則的には、これにクラックが入ることがない。このようなクラックは接合強度を低下させる傾向がある。また、Snメッキ層3a2に応力が多く残っている場合にはウィスカが発生しやすく、その結果、端子近傍でショートを生じやすくなる傾向がある。Snメッキ層3a2を有する金属薄膜3aをAlリード本体3Aに取り付けることで、半田濡れ性(フィレット形成容易性)は著しく改善する。
【0052】
更に、薄膜本体3a1の厚みは、50μm以上500μm以下であることが好ましい。薄膜本体3a1の厚みが50μmを下回る場合には、上述のメッキ層構造を形成する場合において、薄膜本体3a1の非メッキ領域(図4においてX軸方向に延びるライン状露出領域)に粘着テープを貼り付けてから、メッキを行い、しかる後に、粘着テープをはがすことになるが、この際に、薄膜本体3a1が振動して、薄膜本体にシワ、よじれ、折れ曲がりなどが生じる傾向がある。このような不良は制御できないので、製品の品質に誤差が発生する。また、薄膜本体3a1の厚みが500μmを超える場合には、リードとの接合が困難になるという現象が生じるため好ましくない。薄膜本体の厚みを上述の範囲内に設定することにより、これらの不具合を抑制することが可能となる。
【0053】
上述のように、Snメッキした面のNiタブ(金属薄膜)とAlリード本体3Aとの接合(超音波融着)は困難であることから、接合面にはメッキ処理は施していない。金属薄膜3aの全ての側面はSnメッキ層で被覆されている方がフィレット形成に優位であるため好ましいが、Ni下地が露出していても多少の効果はある。Snメッキ処理は連続して行い、Alリード本体3Aと接合前に必要量(例えば20mm程度)を切り出して使用する。そのため、切断面にはSnメッキ層は存在しないが、Niは半田を弾かず、その濡れ性は高くないが、濡れることはできる。
【0054】
図8は、上述の電気化学デバイス10が基板に取り付けられてなる回路基板のXZ断面図である。特徴の明確化のため、外装体1の部分は断面ではなく側面を示すこととする。
【0055】
この回路基板は、電気化学デバイス10が搭載され、電極パッドE1を備えた基板SBとを備えている。基板SBの主材料は絶縁体であり、その表面上に電極パッドE1が形成されている。基板SB上には各種の電子部品を搭載することができるが、本例では特徴となる電気化学デバイス10の部分のみを示している。
【0056】
この回路基板は、外装体1の裏面と、基板SBとの間に介在する両面粘着テープ4と、電極パッドE1と下部の第2金属薄膜3aとの間に介在すると共に、上部の第1金属薄膜3aの外側上面上に至る半田材料SDとを備えている。
【0057】
この場合、上述のように、リード3と電極パッドE1とが強固に固定されると共に、外装体1の裏面と基板SBとが両面粘着テープ4によって強固に固定されるため、振動に対して強い回路基板となる。
【0058】
また、この回路基板において、半田材料SDは、Sn及びCuを含んでいる。このような材料は、メッキ層3a2(図4参照)に含まれるSnとの親和性がよいため、半田材料SDの濡れ性が高くなるが、Cuが含まれているおり、融点が下がるため、半田作業性が向上したり、半田濡れ性が向上するという効果がある。また、この半田材料には微量のAgが含まれていることが更に好ましい。この場合には、半田接合後の耐久性が向上するという効果がある。本例における半田材料SDにおける各元素の比率(質量パーセント比)は、以下の通りであり、各数値は±1(質量%)の変動を許容できる(但し、Cuの比率>0質量%である)。
Sn:Cu:Ag=96.5(質量%):0.5(質量%):3(質量%)
【0059】
次の上述のリードの組み立て方法について説明する。
【0060】
図6は、リード本体と金属薄膜の溶接工程を示す斜視図である。
【0061】
まず、リード本体3Aと、第1金属薄膜3aとを用意し、これらの長手方向がX軸に一致するように一部領域を重ねる。リード本体3AのY軸方向の幅Y2、金属薄膜3aの幅Y1、溶接領域R3Uの幅Y0はX軸に沿って一定であるが、溶接領域R3Uの幅Y0は、リード本体3Aの幅Y2よりも小さく、溶接領域R3Uは、Y軸方向の両端に位置するメッキ層3a21,3a22(図4参照)には原則的には重なっていない。
【0062】
リード本体3AのY軸方向の幅Y2は、金属薄膜3aの幅Y1以下であり、同図では、リード本体3Aの幅Y2が、金属薄膜3aの幅Y1よりも小さく示されているが、これらは一致していてもよい。厚み方向の上下位置には、超音波溶接を行うための超音波振動ヘッド20,21が位置しており、これらの少なくとも一方に機械的に接続された振動子を振動させることで、超音波振動ヘッド20,21に接触した溶接領域R3Uが溶解し、Alからなるリード本体3Aと、金属薄膜3aの下面露出領域(Ni)とが融着する。
【0063】
図7は、リード本体と金属薄膜の固定方法を示す図である。
【0064】
図6に示した工程は、図7の(a)に示されている。この工程では、リード本体3Aと第1金属薄膜3aとを超音波溶接して物理的及び電気的に接続している。次に、図7の(b)に示すように、リード本体3Aの下部に第2金属薄膜3aを新たに配置し、工程(a)と同様に超音波溶接を行い、これらを物理的及び電気的に接続する。なお、これらの工程(a)、(b)は同時に行うこともできる。
【0065】
上述の電気化学デバイスについて、取り付けの強度を測定するための実験を行った。
【0066】
本例では、以下の手順を経てEDLCを製造した。まず、活性炭と導電助剤、バインダー(PVDF:ポリフッ化ビニリデン)及び溶剤(NMP:(N-メチルピロリドン)を混合して塗料を作製し、これを集電箔(アルミニウム箔)に塗布して乾燥させ、キャパシタの電極端子となる電極シートを得た。この電極シートを12mm×17mmに打抜き、セパレータを介して電極面が対向するように積層した。各箔の電極取り出し部にAlリード(アルミニウム:厚み100μm)を超音波溶接し、アルミリード付きの積層体を得た。これをPP(ポリプロピレン)を介して2つ、外装体を構成するアルミニウムラミネート箔に入れて3辺を封口し、電解液を注液した後、最後の1辺を封口し、EDLCを得た。このAlリード先端を下記例のように作製した。評価は、ガラスエポキシ(FlameRetardant Type 4)(1.6mm厚み)からなる基板SB上に5mm×3mmの電極パッドE1を配置し、EDLCのリード先端部を半田材料SDで接続して、水平引張り強度試験を行い、その強度を測定した。
【0067】
図9は、実施例に係る実験方法を説明するための図である。
【0068】
回路基板SBの電極パッドE2上に、電気化学デバイス10のリード3を配置し、このリード3上に、半田材料SDを溶融して滴下した後、冷却して、これらを固定した。なお、図8に示した粘着テープは用いずに、同図の矢印方向(X軸の負方向)に、電気化学デバイス10を引っ張り、水平方向の引張り強度を測定した。
【0069】
図10は、比較例1に係る実験方法を説明するための図である。
【0070】
比較例1では、実施例と比較して、一対の金属薄膜3aの代わりに、単一のNi薄膜本体をSnメッキした金属薄膜3bを用い、これをリード本体3Aの下面に上記と同様の方法で超音波融着接続したものを用いた。半田材料SDは、金属薄膜3bと電極パッドE1との間に介在するが、アルミニウムからなるリード本体3Aの露出側面を這い上がることはできず、上方から溶融した半田材料SDを滴下すると、この半田材料SDは、リード本体3Aの下側に移動してから固化した。この電気化学デバイス10も、同図の矢印方向(X軸の負方向)に、引っ張り、水平方向の引張り強度を測定した。
【0071】
図11は、比較例2に係る実験方法を説明するための図である。
【0072】
比較例2では、比較例1と比較して、金属薄膜3bの先端が、リード本体3Aの先端から突出するようにこれに取り付け、金属薄膜3bの先端に、溶融した半田ボール3cを滴下後に冷却して固定し、半田ボール3cと電極パッドE1とを半田材料SDで固定した。半田材料SDは、半田ボール3cと電極パッドE1との間及び半田ボール3cの上面上に位置することができるが、金属薄膜3bの露出側面を這い上がることはできず、上方から溶融した半田材料SDを滴下すると、この半田材料SDは、半田ボール3cの近傍に集まってから固化した。この電気化学デバイス10も、同図の矢印方向(X軸の負方向)に、引っ張り、水平方向の引張り強度を測定した。
【0073】
図12は、各種実施例に係る金属薄膜の構造と取付法を説明するための図である。
【0074】
(実施例1)
実施例1(実施例1−1〜実施例1−7)では、リード本体3Aの幅Y2と、金属薄膜3aの幅Y1(図6参照)とが、同一であり、リード先端部において、X軸方向の先端から金属薄膜3aが露出している。図2及び図6を参照して、各寸法は以下の通りである。
X0=2mm
Y0=2mm
Y1=3mm
Y2=3mm
XA=5.5mm
Xa=3.5mm
【0075】
なお、各実施例において、図2における金属薄膜3a2のリード本体3AからのX軸方向の突き出し量Lは、0.5mmとした。
【0076】
また、薄膜本体3a1の厚みは100μmであり、Snメッキ層3a2の厚みは、0.3μm(実施例1−1)、0.5μm(実施例1−2)、2μm(実施例1−3)、5μm(実施例1−4)、7μm(実施例1−5)、10μm(実施例1−6)、10.5μm(実施例1−7)である。なお、超音波融着には、Branson社製のEa2000を用い、ウェルディングエネルギー=12.0J、ウェルディング時間=0.1sec)とし、金属薄膜の折り返し前と後に、それぞれ上下から超音波融着を行った。
【0077】
この方法は、Alリード本体3Aの先端に一部重ならないように上部の金属薄膜3aを配置した後に、これらを接続し、その重ならない部分をAlリード本体3Aの先端から突き出し、Alリード本体3Aと接続されていない面の下部の金属薄膜3aをAlリード本体3Aと接続し、Alリード本体3Aに上下の金属薄膜3aを取り付ける方法である。
【0078】
(実施例2)リード本体3Aの幅Y2よりも、金属薄膜3aの幅Y1が広く、X軸方向の先端から金属薄膜3aは突出していないが、Y軸に垂直な一方のみの側面から、双方の金属薄膜3aが突出している。各寸法は以下の通りである。
X0=2mm
Y0=2mm
Y1=3.5mm
Y2=3mm
XA=5mm
Xa=3mm
その他の条件は実施例1−3と同一であるが、メッキ層の形成されていない領域(図4)は、Y軸方向に延びるように形成した。
【0079】
(実施例3)実施例2と比較して、金属薄膜3aが、Y軸に垂直な両方の側面から、金属薄膜3aが突出している点が相違する。各寸法は以下の通りである。
X0=2mm
Y0=2mm
Y1=4mm
Y2=3mm
XA=5mm
Xa=3mm
その他の条件は実施例2と同一である。
【0080】
(実施例4)リード本体3Aの幅Y2よりも、金属薄膜3aの幅Y1が広く、先端から金属薄膜3aが突出しているのみでなく、Y軸に垂直な一方のみの側面からも、金属薄膜3aが突出している。各寸法は以下の通りである。
X0=2mm
Y0=2mm
Y1=3.5mm
Y2=3mm
XA=5.5mm
Xa=3.5mm
X軸方向に突出した寸法=0.5mm
その他の条件は実施例2と同一である。
【0081】
(実施例5)実施例4と比較して、Y軸に垂直な双方の側面から、一対の金属薄膜3aが突出している。各寸法は以下の通りである。
X0=2mm
Y0=2mm
Y1=4mm
Y2=3mm
XA=5.5mm
Xa=3.5mm
その他の条件は実施例4と同一である。
【0082】
図13は、実験結果を示す図表である。サンプル数nは100個であり、水平引っ張り強度の平均値(N)と標準偏差(N)が示されている。
【0083】
実施例1〜5では、25Nの力を水平方向に加えても、リードが断線したり外れたりすることはなかった。また、実施例1−1〜実施例1−7に示されるように、メッキの厚みを0.3μm以上10.5μm以下の範囲内で変更しても、水平方向の引張り強度に変化はなかった。なお、25Nは測定装置の測定限界である。一方、比較例1,2では、それぞれ7.8N、17.3Nの力を加えると、リードが電極パッドE1から外れた。比較例1,2では、ばらつきもある。
【0084】
リードの接続状態に関した結果について、実施例1−1においては、サンプル100個中において、94個は良品(○)であったが、6個は、半田濡れ性が十分でない箇所が観察された(接続状態評価結果:△)。実施例1−7においては、サンプル100個中において、98個は良品であったが、2個は、切断したエッジ部分にクラック、部分的な剥離が見られた。であった(接続状態評価結果:△)。
【0085】
比較例1では、サンプル100個中において、98個は、半田濡れ性が悪い箇所が観察された(接続状態評価結果:×)。比較例2では、サンプル100個中において、80個のサンプルにおいて、半田濡れ性が悪い箇所が観察された(接続状態評価結果:×)。その他の実施例1−2〜1−6及び実施例2〜5においては、全てのサンプルにおいて、良品であり、上記のような半田濡れ性が十分でない箇所や、クラックが発生する箇所の存在は認められなかった(接続状態評価結果:○)
【0086】
なお、半田濡れ性が十分でないとは、具体的には、上方から溶融した半田材料SDを滴下したあと、金属薄膜3aの上面で充分に広がらず、上面の50%以下しか覆わない状態を指す。これはメッキ層の欠陥(ピンホール)によるもので、実施例1−1では、メッキ層に多数の欠陥が存在したためである。半田濡れ性が悪いとは、具体的には、上方から溶融した半田材料SDを滴下したあと、金属薄膜3aの上面で充分に広がらず、上面の25%以下しか覆わない、もしくは全く覆わない状態を指す。比較例1においてはリードの上面がアルミニウムであり、滴下した半田材料SDが弾かれて上面に残っていなく、比較例2においては、半田ボール3cの近傍で固化したが、リード3b上面に流れるように広がらなかったため、接続状態が悪い結果となった。
【0087】
これらの結果を考察するに、比較例1の構造の場合、半田材料は、Alに弾かれて十分なフィレットを形成することができず、信頼性が十分ではないと考えられる。これに対し、Alリード本体に金属薄膜(Niタブ)を形成した実施例1〜5の構造では、金属薄膜の上面から電極パッドまで綺麗なフィレットを形成することができ、十分な接続強度を得ることができており、十分な信頼性が得られている。
【0088】
リード本体3Aの先端部に金属薄膜3aを取り付けた場合において、実施例2,3,4,5に記載のように、金属薄膜3aの幅がリード本体3Aより大きいときは、半田材料(フィレット)SDの体積が増すだけでなく、幅方向の側面部分にもフィレットが形成されやすくなる。X軸方向先端部、Y軸方向側面部、及びリードの下面部位の3箇所(3方向)にフィレットが形成されることで各方向への引っ張り強度やねじり強度などが増すことになる、リード本体3Aの幅よりも、金属薄膜3aの幅の方が大きいため、リード本体3Aから横方向に突き出た部分の金属薄膜3aにも半田材料がのりやすくなり、引っ張り強度やねじり強度などが増すことになる。
【0089】
上述のように、実施例に係るリードでは、第1及び第2金属薄膜3aのそれぞれの端面位置(X軸方向先端面(実施例1,4,5)、又は、Y軸方向に垂直な端面(実施例2〜5))は、リード本体3Aの側面位置(先端面又は幅方向に垂直な側面)よりも突き出た位置にある。各実施例の構造によれば、リードの接合後に想定されるEDLCへの負荷(引っ張りやねじれ)に対して強くなる。
【0090】
リード本体3Aと金属薄膜3aとの超音波融着は、上下の金属薄膜3aとリード本体3Aがしっかりと接続されている方が好ましい。大電流(例えば1アンペア以上)を扱う場合には、これらの間の接触抵抗が非常に大きなロスを生むことになってしまうため,リード本体3Aと金属薄膜3aは上下からしっかりと融着し、その接触抵抗を極力小さくすることもできる。
【0091】
また、比較例2では、予備半田としての半田ボールが不均一であるため、形成されるフィレットも不均一となり(底面のみの場合もある)、接続強度にばらつきが生じる。その結果、長期信頼性での接続寿命に問題を生じるものが混在する可能性があるが、実施例1〜6に係る構造の場合、メッキ面にフィレットを形成することができることから、安定した接続強度を確保できるようになる。したがって、実施例の構造によれば、長期信頼性での接続寿命が著しく改善される。
【0092】
以上、説明したように、ラミネート外装体を用いた薄型EDLCは、プリント基板への半田接続能が要求されるが、EDLCのリードには電解液に対する耐性と電気導電性の双方を満たす必要から、半田濡れ性の悪いAlが採用されてきたが、接続強度を向上させることができなかった。本実施形態では、一対の金属薄膜を用いることで、その固定強度を向上させることができた。この手法は、メッキと溶着という再現性に優れた工程を採用しているため、自動化が容易であり、生産性の面でも望ましい。このような平型リード端子形状を有する電子部品としては、EDLCの他、リチウムイオン電池や、電解コンデンサが知られており、本発明はこれらの部品に適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
3…リード、3A…リード本体、3a…金属薄膜、3a1…薄膜本体、3a2…メッキ層、R3U,R3L…所定領域。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体内に収容された充放電体と、前記充放電体から延びたリードと、を有する電気化学デバイスにおいて、
前記リードは、
Alを含むリード本体と、
前記リード本体の先端部において、前記リード本体の上下面にそれぞれ溶接された第1及び第2金属薄膜と、
を備え、
前記第1及び第2金属薄膜のそれぞれの端面位置は、前記リード本体の側面位置よりも突き出た位置にあり、
前記第1及び第2金属薄膜は、それぞれの内側表面が対向しており、それぞれの前記第1及び第2金属薄膜においてそれぞれの内側表面に対向する表面を外側表面とすると、
それぞれの前記第1及び第2金属薄膜は、
Niを含む薄膜本体と、
前記薄膜本体の少なくとも外側表面を被覆しSnを含むメッキ層と、
を有し、
前記薄膜本体の内側表面の特定領域と、前記リード本体の表面とは、前記メッキ層を介することなく、直接接触して溶接されている、
ことを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
それぞれの前記第1及び第2薄膜本体の内側表面上には、前記薄膜本体の幅方向両端位置近傍において、その長手方向に沿って前記メッキ層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記メッキ層の厚みは、0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記薄膜本体の厚みは、50μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記第1及び第2金属薄膜の前記リード長手方向の寸法は、それぞれ1mm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
前記メッキ層は、98±1(質量%)のSnと2±1(質量%)のCuを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記リード本体の幅よりも、前記第1及び第2金属薄膜のそれぞれの幅の方が大きいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電気化学デバイスと、
前記電気化学デバイスが搭載され、電極パッドを備えた基板と、
前記外装体の裏面と、前記基板との間に介在する両面粘着テープと、
前記電極パッドと前記第2金属薄膜との間に介在すると共に、前記第1金属薄膜の外側上面上に至る半田材料と、
を備えることを特徴とする回路基板。
【請求項9】
前記半田材料は、Sn及びCuを含むことを特徴とする請求項8に記載の回路基板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−222911(P2011−222911A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93461(P2010−93461)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】