説明

電気化学素子モジュール

【課題】電気化学素子が膨張又は収縮しても、それによる寸法変動を吸収でき、体積エネルギー効率及び安全性が高い電気化学素子モジュールを提供する。
【解決手段】本発明の電気化学素子モジュールは、単電池20を複数積層して外装体40の内部に収納し、隣接する単電池20の間、及び、単電池20の主面と外装体40の内面との間には、粘着性を有する薄膜状のスペーサ21が配置されていることを特徴とする。スペーサ21の厚さは、50μm以上5mm以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する外装材を備えた電気化学素子を複数備えた電気化学素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される電気化学素子は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューター等の携帯機器の電源として広く用いられている。また、携帯機器の高性能化に伴ってリチウムイオン二次電池の高容量化が更に進む傾向にあり、エネルギー密度を更に向上させるため、可撓性を有するラミネート外装材を用いた電気化学素子が多く使用されている。
【0003】
一方、最近では電気化学素子の高性能化に伴い、電気化学素子が携帯機器の電源以外の電源としても用いられ始めた。例えば、自動車用やバイク用の電源、ロボット等の移動体用の電源等に電気化学素子が用いられ始めた。
【0004】
また、電気化学素子を自動車用やバイク用の電源、ロボット等の移動体用の電源等に用いる場合には、更なる高容量化のため電気化学素子を複数組み合わせてモジュール化して用いられる。電気化学素子をこのようにモジュール化して用いる場合には、各電気化学素子の寸法安定性がモジュール全体の寸法安定性に直結し、延いてはモジュール全体の安全性に影響するため、各電気化学素子の寸法安定性を更に向上させる必要がある。
【0005】
例えば、モジュールを構成する各電気化学素子の寸法精度が変動すると、モジュール内における各電気化学素子の固定精度の低下の原因となり、モジュールに振動等が加わった場合に、モジュールの安全性の低下に繋がることとなる。特に、ラミネート外装材を用いた電気化学素子では、その充放電に伴うガスの発生又は使用温度等により電気化学素子内の内圧が変動し、それにより電気化学素子を構成するラミネート外装材が膨張又は収縮して、電気化学素子の寸法が変動する場合がある。このため、各電気化学素子の使用中におけるモジュール全体の寸法安定性の向上が、モジュール全体の安全性を向上させるために重要となる。
【0006】
従来、モジュールを構成するラミネート外装材を用いた電池の膨張又は収縮の対策として、例えば、特許文献1には、各電池の間にスペーサを配置して、各電池の寸法変動に対応する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4070798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載のスペーサを用いる方法では、モジュール構造が複雑になるとともに、各電池間の間隔が大きくなりすぎて、モジュール全体の体積エネルギー効率が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題を解決したもので、電気化学素子の膨張又は収縮を簡便な構造により吸収し、体積エネルギー効率及び安全性が高い電気化学素子モジュールを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電気化学素子モジュールは、電気化学素子を複数積層して外装体の内部に収納した電気化学素子モジュールであって、隣接する前記電気化学素子の間、及び、前記電気化学素子の主面と前記外装体の内面との間には、粘着性を有する薄膜状のスペーサが配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、各電気化学素子が膨張又は収縮しても、それによる寸法変動を吸収でき、体積エネルギー効率及び安全性が高い電気化学素子モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1Aは実施形態1の単電池で用いる電極体を説明するための斜視図であり、図1Bは電極体を外装材に収納している状態を示す斜視図であり、図1Cは電極体を外装材に収納した状態の斜視図である。
【図2】実施形態1の単電池を積層して電池積層体を形成した状態を示す側面図である。
【図3】図3A〜Dは、片面粘着テープを二重に折り畳んで積層テープを作製する工程を示す図である。
【図4】外装体を構成する板状体を電池積層体の上下に配置した状態を示す側面図である。
【図5】外装体を形成して実施形態1の電池モジュールを完成した状態を示す透視斜視図である。
【図6】図5のI−I線の矢視断面図である。
【図7】実施形態2の電気化学モジュールの断面図である。
【図8】実施形態3の電気化学モジュールの断面図である。
【図9】実施形態4の電気化学モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電気化学素子モジュールは、電気化学素子を複数積層して外装体の内部に収納し、隣接する上記電気化学素子の間、及び、上記電気化学素子の主面と上記外装体の内面との間には、粘着性を有する薄膜状のスペーサが配置されている。
【0014】
上記スペーサを配置することにより、隣接する電気化学素子の間、及び、電気化学素子の主面と外装体の内面との間には、間隙が生じ、この間隙を電気化学素子が膨張した場合の緩衝領域として利用することができる。このため、電気化学素子の膨張をこの間隙で吸収でき、モジュール全体としての寸法安定性が向上し、延いてはモジュール全体の安全性を向上させることができる。
【0015】
また、上記スペーサは、粘着性を有しているので、モジュール内での電気化学素子の位置安定性が向上し、延いてはモジュール全体の耐振動性が大きくなる。更に、上記スペーサは、薄膜状であるため、モジュール内で過度のスペースを必要とせず、モジュール全体の体積エネルギー効率が大きく低下することがない。
【0016】
上記スペーサの厚さは、50μm以上5mm以下であることが好ましく、100μm以上3.5mm以下がより好ましい。スペーサの厚さが、50μm未満では生じる間隙が小さすぎて緩衝領域として機能しにくくなる傾向がある。一方、スペーサの厚さが、5mmを越えると生じる間隙が大きすぎて緩衝領域としては充分機能するが、モジュール全体としての体積エネルギー効率が低下する傾向があり、また、隣接する電気化学素子の間に後述する放熱部材を配置した場合、放熱効率が低下する傾向がある。
【0017】
上記電気化学素子は、電気化学素子要素と、上記電気化学素子要素を収納した可撓性を有する外装材と、上記外装材から外部に引き出された電極リード端子部とを含み、上記外装材の外周は、矩形状に形成され、上記外装材の外周辺のうち、谷折りされた一辺以外の三辺が所定の幅をもって接合されて封止部を形成し、上記封止部の三辺のいずれかの辺から上記電極リード端子部が引き出されている構成とすることができる。また、上記外装材を谷折りせずに、矩形状の2枚の外装材を準備し、その2枚の外装材の間に上記電気化学素子要素を収納し、その2枚の外装材の四辺を接合して封止部を形成し、上記封止部の四辺のいずれかの辺から上記電極リード端子部を引き出してもよい。
【0018】
上記電気化学素子を上記構成とすると、通常、電気化学素子と外装体との間には空隙が生じるが、上記空隙には、膨張性部材が充填されていることが好ましい。これにより、電気化学素子が収縮して、隣接する電気化学素子の間、及び、電気化学素子の主面と外装体の内面との間に更に空隙が生じても、上記膨張性部材がその空隙を塞ぐことができ、各電気化学素子の固定精度の低下を防止でき、延いてはモジュール全体の安全性を向上させることができる。
【0019】
上記膨張性部材は、熱伝導性材料を含むことが好ましい。これにより、モジュール全体の放熱性を向上できる。
【0020】
また、隣接する上記電気化学素子の間には放熱部材を更に配置することが好ましく、上記放熱部材は、シート状の金属部材からなることが好ましい。これにより、モジュール全体の放熱性を更に向上できる。
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。但し、図1〜図9では、同一部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する場合がある。また、図1〜図9では、図面の理解の容易のために実際の部材の大きさと異なる比率で表している部分もある。
【0022】
(実施形態1)
先ず、本発明の電気化学素子モジュールに用いる電気化学素子の実施形態について説明する。本発明で用いる電気化学素子には、一次電池、二次電池、電気二重層コンデンサ(キャパシタ)等が含まれるが、本実施形態では、電気化学素子として扁平型リチウムイオン二次電池(以下、単電池と言う場合がある。)を例に挙げて説明する。図1Aは本実施形態の単電池で用いる電極体を説明するための斜視図であり、図1Bは電極体を外装材に収納している状態を示す斜視図であり、図1Cは電極体を外装材に収納した状態の斜視図である。
【0023】
図1Aにおいて、電池要素(電気化学素子要素)に含まれる電極体10は、矩形状の正極11と矩形状の負極12とを、矩形状のセパレータ13を介して積層して作製される。正極11の一端には、正極リード端子11aが設けられ、負極12の一端には、負極リード端子12aが設けられている。
【0024】
図1Bにおいて、可撓性を有する矩形状の外装材14は、辺18で谷折りされて第1外装面14aと第2外装面14bとから構成されている。第1外装面14aには、深絞り成形により電極収納部15が形成されている。また、各正極リード端子11a(図1A)及び各負極リード端子12a(図1A)は、それぞれ重ね合わされて溶接されて、それぞれ正極リード端子部16a及び負極リード端子部16bを形成している。
【0025】
図1Cにおいて、電極体10は、電解液とともに谷折りされた第1外装面14aと第2外装面14bとが形成する空間部(電極収納部15)に収納される。また、外装材14の外周辺のうち、谷折りされた辺18以外の三辺が所定の幅をもって接合されて封止部17a、17b、17cを形成している。正極リード端子部16a及び負極リード端子部16bは、外装材14の谷折りされた辺18と対向する封止部17cから外部に引き出されている。このようにして、単電池20が作製される。
【0026】
正極11は、正極活物質、正極用導電助剤、正極用バインダ等を含む混合物に、溶剤を加えて十分に混練して得た正極合剤ペーストを、正極集電体の両面に塗布して乾燥した後に、その正極合剤層を所定の厚さ及び所定の電極密度に制御することにより形成できる。
【0027】
上記正極活物質としては、例えば、LiCoO2等のリチウムコバルト酸化物、LiMn24等のリチウムマンガン酸化物、LiNiO2等のリチウムニッケル酸化物等が使用できるが、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であればこれらに限定はされない。
【0028】
上記正極用導電助剤は、正極合剤層の導電性向上等の目的で必要に応じて添加すればよく、導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、繊維状炭素、黒鉛等の炭素粉末や、ニッケル粉末等の金属粉末を利用することができる。
【0029】
上記正極用バインダには、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
上記溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン等が使用できる。
【0031】
上記正極集電体としては、構成された電池において実質的に化学的に安定な電子伝導体であれば特に限定されない。正極集電体としては、例えば、厚さが10〜30μmのアルミニウム箔等が用いられる。
【0032】
正極11の厚さは特に限定されないが、通常は110〜230μmである。
【0033】
負極12は、負極活物質、負極用導電助剤、負極用バインダ等を含む混合物に、溶剤を加えて十分に混練して得た負極合剤ペーストを、負極集電体の両面に塗布して乾燥した後に、その負極合剤層を所定の厚さ及び所定の電極密度に制御することにより形成できる。
【0034】
上記負極活物質としては、例えば、天然黒鉛又は塊状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等の人造黒鉛等の炭素材料が用いられるが、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であればこれらに限定はされない。
【0035】
上記負極用導電助剤、負極用バインダ、溶剤については、正極に用いたものと同様のものを使用できる。
【0036】
上記負極集電体としては、構成された電池において実質的に化学的に安定な電子伝導体であれば特に限定されない。負極集電体としては、例えば、厚さが5〜20μmの銅箔等が用いられる。
【0037】
負極12の厚さは特に限定されないが、通常は65〜220μmである。
【0038】
セパレータ13としては、大きなイオン透過度及び所定の機械的強度を有する絶縁性の微多孔性フィルムが用いられる。また、一定温度以上(100〜140℃)で微孔を閉塞し、抵抗を上げる機能を有するものが、電池の安全性向上の点から好ましい。具体的には、上記セパレータとしては、耐有機溶剤性及び疎水性を有するポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー又はガラス繊維からなるシート、不織布、織布、又はオレフィン系の粒子を接着剤で固着した多孔質体層等が用いられる。
【0039】
セパレータ13の厚さは特に限定されないが、通常は20〜90μmである。
【0040】
外装材14としては、アルミニウム等の金属層の両面に熱可塑性樹脂層を形成したラミネートフィルム等を用いることができる。これにより、封止部17a、17b、17cは、熱溶着により確実に接合できる。
【0041】
上記電解液としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン等の有機溶媒を1種類又は2種類以上混合した溶媒に、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3等から選ばれる少なくとも1種類のリチウム塩を溶解させた電解液を用いればよい。この電解液中のLiイオンの濃度は、0.5〜1.5mol/Lとすればよい。
【0042】
次に、本発明の電気化学素子モジュールの実施形態について説明する。本発明の電気化学素子モジュールは、上記扁平型リチウムイオン二次電池(単電池)を複数積層して外装体の内部に収納したものである。各単電池の電気的接続は、直列接続及び並列接続のいずれでもよい。
【0043】
図2は、本実施形態の単電池を3個積層して電池積層体を形成した状態を谷折りされた辺18(図1B、C)側から見た側面図である。図2において、単電池20は、粘着性を有する薄膜状のスペーサ21を介して積層されて電池積層体30を形成している。図2では、スペーサ21を隣接する単電池20の間に、単電池20の幅方向にそれぞれ2個配置しているが、これに限定されない。スペーサ21は、粘着性を有しているため、各単電池20を相互に固定できる。
【0044】
スペーサ21としては、フィルム状の基材の両面に粘着剤を塗布した粘着テープ、接着剤をシート状に塗布して形成した接着剤層等を使用できるが、これらに限定はされない。
【0045】
上記粘着テープとしては、例えば、両面粘着テープ、片面粘着テープを二重に折り畳んだ積層テープ等を用いることができる。
【0046】
図3A〜Dに片面粘着テープを二重に折り畳んで積層テープを作製する工程を示す。先ず、図3Aに示すように、片面粘着テープ19を準備する。次に、図3B及びCに示すように、片面粘着テープ19を、粘着面19aを外側にしてリング状に変形させ、片面粘着テープの両端を固定する。最後に、図3Dに示すように、リング状の片面粘着テープ19を押しつぶして両面に粘着面19aが配置されたスペーサ21を形成する。
【0047】
また、上記両面粘着テープ及び片面粘着テープとしては、市販の各種テープを使用できる。
【0048】
スペーサ21に上記接着剤層を用いる場合の、接着剤としては、例えば、合成ゴム系、エポキシ系、シアノアクリル系等の有機系接着材を用いることができる。
【0049】
スペーサ21の厚さは、前述のとおり、50μm以上5mm以下とすればよい。スペーサ21の厚さの調整は、使用する両面粘着テープ及び片面粘着テープの厚さ、テープに塗布される粘着剤の量又は接着剤の量等で調整すればよい。
【0050】
図4は、外装体を構成する板状体22a及び22bを電池積層体30の上下に配置した状態を示す側面図である。図4では、板状体22a及び22bと単電池20との間にもスペーサ21を配置した。これにより、電池積層体30と外装体とを強固に固定できる。
【0051】
図5は、更に外装体を構成する板状体22c、22d、22e及び22fを電池積層体30(図4)の側面に配置して、外装体40を形成して本実施形態の電池モジュールを完成した状態を示す透視斜視図である。図5では、外装体40の構成の理解の容易のため、内部に収納されている電池積層体の図示を省略している。
【0052】
板状体22a〜22fは、モジュール全体の放熱性を高めるためシート状の金属部材から形成することが好ましい。金属部材としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等を使用できる。板状体22a〜22fの厚さは特に限定されず、例えば、0.5〜10mmとすればよい。
【0053】
板状体22a〜22fの接合方法も特に限定されず、例えば、溶接、粘着テープ等により接合すればよい。溶接による接合は、接合強度に優れ、粘着テープによる接合は、外装体40の開放が容易である。
【0054】
図6は、図5のI−I線の矢視断面図である。但し、図6では、外装体40を構成する板状体22a、22b、22c及び22dのみに断面を示すハッチングを付している。図6に示すように、スペーサ21により、隣接する単電池20の間、及び、単電池20と外装体40の内面との間には、間隙23及び空隙部24が形成されている。間隙23及び空隙部24は、単電池20が膨張した際の緩衝領域として機能する。但し、単電池20の膨張は、通常その厚さ方向に大きく生じるため、単電池20が膨張した際の緩衝領域としては主として間隙23が機能する。
【0055】
また、本実施形態では、図示していないが、間隙23及び空隙部24には、膨張性部材を更に充填することが好ましい。これにより、単電池20が収縮して空隙が生じても、上記膨張性部材が上記空隙を塞ぐことができ、各単電池20の固定精度の低下を防止できる。また、何らかの事故により、単電池20の外装材14(図1B、C)が破断して電解液等が流出しても、上記膨張性部材によりモジュール外への流出を防止することができる。更に、外装体40の内部には、過充電等の誤動作を防止する保護回路等が組み込まれている場合が多く、上記膨張性部材は、保護回路等への電解液等の付着防止の機能も有する。膨張性部材としては、例えば、海綿状体、繊維体、発泡体等の柔軟性空孔部材が使用でき、これらの柔軟性空孔部材を間隙23及び空隙部24に加圧状態で充填しておけばよい。
【0056】
上記膨張性部材としては、粘着性を有することが更に好ましい。これにより、各単電池20の固定精度の低下を更に効果的に防止できる。粘着性を有する膨張性部材としては、上記海綿状体、繊維体、発泡体等に粘着剤成分を含ませたもの等が使用できる。
【0057】
更に、上記膨張性部材は、熱伝導性材料を含むことが好ましい。これにより、モジュール全体の放熱性を向上できる。熱伝導性材料としては、例えば、金属粉末、金属繊維等を用いることができる。
【0058】
(実施形態2)
次に、本発明の電気化学素子モジュールの他の実施形態について説明する。図7は、本実施形態の電気化学モジュールの断面図であり、実施形態1の図6に対応する図である。図7でも、外装体40を構成する板状体22a〜22dのみに断面を示すハッチングを付している。本実施形態の電気化学素子モジュールは、スペーサ21の同一面での配置数を交互に2個と1個とした以外は、実施形態1の電気化学素子モジュールと同様の構成であり、同様の作用・効果を奏する。更に、本実施形態では、スペーサ21の数が実施形態1の電気化学素子モジュールに比べて少ない分、前述の緩衝領域を大きくできる。
【0059】
(実施形態3)
次に、本発明の電気化学素子モジュールの更に他の実施形態について説明する。図8は、本実施形態の電気化学モジュールの断面図であり、実施形態1の図6に対応する図である。図8でも、外装体40を構成する板状体22a〜22dのみに断面を示すハッチングを付している。本実施形態の電気化学素子モジュールは、隣接する単電池20の間に放熱部材として放熱板25を配置し、放熱板25の両面にもスペーサ21を配置した以外は、実施形態1の電気化学素子モジュールと同様の構成であり、同様の作用・効果を奏する。
【0060】
本実施形態では、放熱板25を備えているので、モジュール全体の放熱性を向上できる。放熱板25は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼等の金属板で形成できる。放熱板25は、1種類の金属板を用いてもよいし、2種類以上の金属板を積層して用いてもよい。金属板25の厚さは、単電池20の大きさや厚さにより変動するが、例えば、200μm以上10mm以下とすることができ、500μm以下がより好ましい。
【0061】
また、本実施形態では、放熱板25により、単電池20の膨張を抑制することもできる。更に、本実施形態では、放熱板25の両面にスペーサ21を配置しているので、間隙23の領域が実施形態1の電気化学素子モジュールに比べて多くなり、より効率的に単電池20の膨張を吸収できる。
【0062】
(実施形態4)
次に、本発明の電気化学素子モジュールの更に他の実施形態について説明する。図9は、本実施形態の電気化学素子モジュールの断面図であり、実施形態1の図6に対応する図である。図9でも、外装体40を構成する板状体22a〜22dのみに断面を示すハッチングを付している。本実施形態の電気化学素子モジュールは、スペーサ21の同一面での配置数を交互に2個と1個とした以外は、実施形態3の電気化学素子モジュールと同様の構成であり、同様の作用・効果を奏する。更に、本実施形態では、スペーサ21の数が実施形態3の電気化学素子モジュールに比べて少ない分、前述の緩衝領域を大きくできる。
【0063】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明は、電気化学素子が膨張又は収縮しても、それによる寸法変動を吸収でき、体積エネルギー効率及び安全性が高い電気化学素子モジュールを提供できる。従って、本発明の電気化学素子モジュールは、過酷な使用環境が考えられる自動車用やバイク用の電源、ロボット等の移動体用の電源等として広く利用できる。
【符号の説明】
【0065】
10 電極体
11 正極
11a 正極リード端子
12 負極
12a 負極リード端子
13 セパレータ
14 外装材
14a 第1外装面
14b 第2外装面
15 電極収納部
16a 正極リード端子部
16b 負極リード端子部
17a、17b、17c 封止部
18 谷折りされた辺
19 片面粘着テープ
19a 粘着面
20 単電池
21 スペーサ
22a、22b、22c、22d、22e、22f 板状体
23 間隙
24 空隙部
25 放熱板
30 電池積層体
40 外装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学素子を複数積層して外装体の内部に収納した電気化学素子モジュールであって、
隣接する前記電気化学素子の間、及び、前記電気化学素子の主面と前記外装体の内面との間には、粘着性を有する薄膜状のスペーサが配置されていることを特徴とする電気化学素子モジュール。
【請求項2】
前記スペーサの厚さが、50μm以上5mm以下である請求項1に記載の電気化学素子モジュール。
【請求項3】
前記電気化学素子は、電気化学素子要素と、前記電気化学素子要素を収納した可撓性を有する外装材と、前記外装材から外部に引き出された電極リード端子部とを含み、
前記外装材の外周は、矩形状に形成され、
前記外装材の外周辺のうち、谷折りされた一辺以外の三辺が所定の幅をもって接合されて封止部を形成し、
前記三辺のいずれかの辺から前記電極リード端子部が引き出されている請求項1又は2に記載の電気化学素子モジュール。
【請求項4】
前記電気化学素子と前記外装体との間の空隙には、膨張性部材が充填されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学素子モジュール。
【請求項5】
前記膨張性部材は、熱伝導性材料を含む請求項4に記載の電気化学素子モジュール。
【請求項6】
隣接する前記電気化学素子の間に放熱部材が更に配置されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気化学素子モジュール。
【請求項7】
前記放熱部材は、シート状の金属部材からなる請求項6に記載の電気化学素子モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−69408(P2012−69408A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213899(P2010−213899)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】