説明

電気化学電池構造及びその製造方法

【課題】 本発明は一般に電気化学電池構造に関し、より具体的には、電気化学電池構造の改良及びこれに関連する製造及び処理技術の向上に関する。
【解決手段】 電気化学電池支持構造体は、複数の孔を定める導電性ベースと、導電性ベース上に配置されるグリッド層とを含む。多孔質支持層は、導電性ベース又は孔の少なくとも1つにグリッド層を少なくとも部分的に相互貫通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に電気化学電池構造に関し、より具体的には、電気化学電池構造の改良及びこれに関連する製造及び処理技術の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学電池は、電解セル又は燃料電池のいずれかとして通常分類されるエネルギー変換装置である。電解セルは、水を電気分解して水素及び酸素ガスを生成することにより、水素発生器として機能することができる。燃料電池は、水素ガスを交換膜又は電解質にわたって酸化剤と電気化学的に反応させて、電気を発生させ、水を生成する。固体電解質型燃料電池のような燃料電池は、高効率で低公害の可能性を示しており、大規模な発電、分散電力及び自動車用途を含む多数の潜在的な用途を有する。
【0003】
電気化学電池の進歩に関連する主要課題の1つは、特に大きな表面積を有する電極及び電解質材料を製作するコスト効果の良いプロセスを開発することである。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0048699号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0134170号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0180602号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0224238号公報
【特許文献5】米国特許第6,256,095号公報
【特許文献6】米国特許第6,492,053号公報
【特許文献7】国際特許出願第02/078111号公報
【特許文献8】国際特許出願第02/101859号公報
【特許文献9】米国特許出願第 11/235552号明細書
【特許文献10】米国特許出願第 11/235555号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、電気化学電池設計及び関連する製作技術の改良に対するニーズが当該技術分野において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電気化学電池支持構造体は、複数の孔を定める導電性ベースと、導電性ベース上に配置されるグリッド層とを含む。多孔質支持層は、導電性ベース又は孔の少なくとも1つにグリッド層を少なくとも部分的に相互貫通させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の上記及び他の特徴、態様並びに利点は、図面全体を通じて同じ符号が同じ要素を表す添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むとより理解されるであろう。
【0007】
電池支持構造体10は、図1に示すように、貫通する複数の孔14を定める導電性ベース12と、該導電性ベース12上に配置されたグリッド層16と、該グリッド層16を少なくとも部分的に相互に貫通させる多孔質支持層18とを含む。
【0008】
上述のように、電気化学電池に関連する課題の1つは、特に大きな表面積用途に対する関連の製作及び製造技術である。幾つかの従来の電池設計において、電池は、通常のセラミックス処理技術を用いて製作され、セラミック電池は、接着ペーストを使用して金属性相互接続に接着される。接着ペーストは、電池構造体内部の抵抗損失の発生源である。燃料電池の直接堆積のような代替的なプロセスでは、電解質の品質は、下にある電極(電解質が堆積されている)の粗度及び欠陥に依存する。電極層内の起伏は、電池製作において、特に高速堆積技術において欠陥を生じる可能性がある。生成される欠陥の1つは、電池を貫通するピンホールリークである。この問題に対する1つの解決策は、堆積後に電極表面を研磨することであった。しかしながら、本解決方法は、大面積堆積に対して堅牢ではないことが予想される別のプロセス段階をもたらし、既に非効率なプロセスに非効率を上乗せする。
【0009】
電気化学電池支持構造体10は、これらの問題の各々に対処する。グリッド層16は、導電性ベース12上に配置されて、多孔質支持層18はグリッド層16内に相互貫通している。この構成は、接着ペーストを必要とせず、構成部品の使用中に分離される可能性が従来構成に較べてはるかに少なく、従って、構造的により安定している。更に、多孔質支持層18は、比較的滑らかな表面を提供し、化学気相成長法(CVD)、プラズマCVD法(PE−CVD)、物理気相成長法(PVD)、電子ビーム物理気相成長法(EB−PVD)、スパッタ堆積法、イオンビーム堆積法、分子線エピタキシー法(MBE)、プラズマ溶射法、フレーム溶射法又は高速フレーム溶射法(HVOF)などの噴霧熱分解又は粒子状堆積技術、或いは他の堆積技術といった原子論的堆積技術に対応する。
【0010】
図1〜図3に示すように、導電性ベース12は、貫通する一連の孔14を含むプレート型構造体を含み、例えば、燃料又は酸化剤流などの流体流が導電性ベース12の一方側から反対側まで流れるのを可能にする。1つの実施形態では、孔は、約0.25インチから約0.50インチまでの間の直径を有する。本明細書で説明する用語「孔」とは、流体流が導電性ベース12の一方側から反対側まで流れるのを可能にする、あらゆるタイプの空隙、溝又は他のキャビティ構成を意味する。導電性ベース12は通常、固体電解質型燃料電池(SOFC)及び固体電解質水蒸気電解装置(SOEC)用途に関連する動作条件、すなわち高温高圧下で緩慢に酸化する金属で作られる。導電性ベース12は通常、鉄、クロム、ニッケル、スズ、その組合せ又は、特にSOFC及びSOEC用途で相互接続材料として通常使用される他の材料で作られる金属の相互接続である。このような材料は通常、例えば鉄クロム(FeCr)、ニッケルクロム(NiCr)又はニッケル鉄クロム(NiFeCr)基合金のようなクロム含有合金を含む。1つの実施形態では、導電性ベース12は、フェライト系ステンレス鋼で作られる。導電性ベース12及び付随する孔14の寸法は、用途及びサイズ要件に応じて大きく異なる可能性がある。1つの実施形態では、導電性ベース12は、孔14の無い外周を有し、これによって電解質又は密閉材料が外周と重なりその中にガス流を密閉することができるようにする。
【0011】
グリッド層16は、導電性ベース12上に配置される。グリッド層16は通常、孔14を含む導電性ベース12の上面を覆うように位置付けられる。グリッド層16は通常、例えばろう付け又は溶接のような接着を確実に行うあらゆる利用可能なプロセスを用いて構造的一体性を確保するために導電性ベース12に取り付けられる。説明の目的で、グリッド層16内部の各空きスペースを隙間20と呼ぶことにする。グリッド層16は通常、スチールワイヤグリッド、スクリーン、金属性ワイヤグリッド、導電性発泡体、クロミア成形グリッド又は類似材料である。グリッド層16は通常、固体電解質型燃料電池(SOFC)及び固体電解質水蒸気電解装置(SOEC)用途に関連する動作条件、すなわち高温高圧下で緩慢に酸化する金属で作られる。グリッド層16は通常、鉄、クロム、ニッケル、スズ、その組合せ、或いは、特にSOFC及びSOEC用途で相互接続材料として通常使用される他の材料で作られる金属の相互接続である。このような材料は通常、例えばFeCr、NiCr又はNiFeCr基合金のようなクロム含有合金を含む。1つの実施形態では、グリッド層は、フェライト系ステンレス鋼で作られる。
【0012】
グリッド層16の機能要件は、これが構造的一体性を確保すべく導電性ベース12に取り付け可能であり、以下に更に詳述するように流体の流れを促進し且つ多孔質支持層18を係合する開口又は隙間20を提供することである。隙間20は、様々な寸法を有することができ、同じ形の断面を有する必要はない。1つの実施形態では、隙間20は、約20から約2500ミクロンの範囲内の幅を有する。
【0013】
図1〜図3に示すように、多孔質支持層18は、グリッド層16上に配置され、隙間20を貫通又は相互貫通し、更にグリッド層16の上面を被覆して平滑な外面22を生成する。1つの実施形態では、多孔質支持層18は電極材料である。多孔質支持層18の機能要件は、これが隙間20を貫通し、流体がその多孔質構造体を通って流れるのを促進し、更に、堆積技術を可能にするような比較的滑らかな外面22を提供することである。1つの実施形態では、多孔質支持層18の熱膨張率(CTE)は、グリッド層16のCTEに実質的に一致して、熱サイクル中の亀裂を回避する。
【0014】
電気化学電池構造体30を完成するために、高密度電解質24(図3)が、多孔質支持層18、すなわちこの事例では第1の電極18に塗布される。1つの実施形態では、電解質24は、例えば物理気相成長法(PVD)又はプラズマ溶射法のような直接堆積法を使用して多孔質支持層18の平滑な外面22上に堆積される。通常、高密度電解質24は、第1の電極18の平滑な外面22を完全に覆い、平滑な外面22のどの部分も露出されないようにする。最後に、第2の電極26が第1の電極18の反対側の電極24に塗布される。1つの実施形態では、第2の電極26は、例えばPVDのような直接堆積法を使用して、或いは代替的に、液体分散粒子のスクリーン印刷法又は塗料吹付け法の使用により高密度電解質24上に堆積される。
【0015】
1つの実施形態では、電気化学電池構造体10(図1)は、ろう付け又は溶接のような従来の処理を用いて金属グリッド層16を金属の有孔導電性ベースプレート12に最初に取り付けることによって製作される。次に、第1の電極18(多孔質支持層)が、金属性グリッド層16に塗布される。1つの実施形態では、第1の電極18は、スクリーン印刷法のようないずれかの従来処理技術を使用して、変形可能質量体をグリッド層16の隙間20内に押し込むことによって塗布される。別の実施形態では、第1の電極18は、粉体形態の第1の電極18をグリッド層16内にスリップキャストし、あらゆる水を除去するために多孔質裏打ちシートを用いることにより金属性グリッド層16に塗布される。別の実施形態では、第1の電極18は、金属性グリッド層16及び導電性ベースプレート12をスリップ内に浸漬して、電圧印加状態下で粒子を隙間20に充填させることによる電気泳動堆積法を使用して金属性グリッド層16に塗布される。
【0016】
別の実施形態では、第1の電極18は、テープキャスト法のような共キャスト技術を使用して、金属性グリッド層16に塗布される。金属性グリッド16、ベースプレート12及び第1の電極18は次いで、約800℃と約1200℃の間の温度で加熱され、第1の電極18の粒子間に強い結合を生成する。第1の電極18又は第2の電極26(図3)の触媒作用を強化するために、これらは、電極材料の液体前駆体又は粒子の細かな分散によって浸潤されて、触媒作用が利用可能な3相境界領域を強化するであろう微細スケール構造体を生成することができる。
【0017】
本発明の別の実施形態では、電極電池構造50は、図4に示すように、メッシュ基板52と、該メッシュ基板52上に堆積されてこれを相互貫通する多孔質電極材料54とを含む。
【0018】
上述のように、電気化学電池に関連する課題の1つは、特により大きな表面積用途に対する関連の製作及び製造技術である。幾つかの従来の電池設計では、セルは、通常のセラミックス処理技術を使用して製作され、セラミック電池は、接着ペーストを使用して金属性相互接続に接着される。通常のセラミックス処理に関連する1つの問題は、結果として得られる電極材料が厚みが低減された有利な微小構造体で形成されるようになることである。
【0019】
電極電池構造50は、これらの課題の各々に対処する。メッシュ基板52は、通常はステンレス鋼又はニッケルスクリーンのいずれかのスクリーン、或いは複数の隙間56又は開口を有する金属性薄片である。例えば、ニッケル(Ni)及びイットリア安定化ジルコニア(YSZ)のような好適な電極材料54がメッシュ基板52に適用され、メッシュ基板52の隙間56において多数の柱状細孔を有し、より小さな開口に先細になる微小構造体を生成する。この柱状細孔構造体は、電極電池構造50内への流体(燃料又は酸化剤)の浸透を促進させることになる。1つの実施形態では、電極材料54は、メッシュ基板52の上側及び下側の双方に施工される。本実施形態では、メッシュ基板52は、得られる電極に対して、柱状細孔を促進し、電極を構造的に支持し、更に亀裂を抑制するための支持骨格として機能する。
【0020】
本発明の1つの実施形態では図5に示すように、電極材料54は、例えば電子ビーム物理気相成長システム(EB−PVD)又は他のいずれかの適切な堆積システムのような堆積システム58を使用してメッシュ基板52上に堆積される。EB−PVDシステムの使用によってもたらされる1つの利点は、典型的にはEB−PVDが、電気化学電池構造において望ましいサブミクロンの粒径を有する超微小構造をもたらす点にある。
【0021】
1つの実施形態では、ステンレス鋼スクリーンが、約50μmの厚さと約75μm以下の隙間の直径を有するメッシュ基板52として使用される。隙間の間隔もまた極めて小さく、例えば中心で約150μmである。電極材料54は、EB−PVDプロセスによってメッシュ基板52上に堆積される。1つの実施形態では、例えばニッケル及びYSZのような2つの発生源からの同時蒸着が使用される。1つの実施形態では、堆積システム58は、メッシュ基板52に関する法線に対し角度θで位置付けられる。1つの実施形態では、角度θは、約25°と約65°の間であり、約35°と約55°の間が好ましい。これらの角度では、シャドウイングが発生し、隙間56を漸次的に閉じることが可能となる。
【0022】
1つの別の実施形態では、隙間56は、堆積の前に例えば塩化ナトリウムのような消失材料で覆われる。隙間内の消失材料は、隙間のサイズを減少させると共に、その場所で成長欠陥がもたらされる。塩化ナトリウムの蒸発はまた、電極内に高レベルの空隙率を生じることになる。
【0023】
図6は、本発明に関連する1つのプロセスを示すフロー図である。S1で、メッシュ基板52が堆積のために位置付けられる。次いでS2で、堆積源58が、メッシュ基板に対して角度θで位置付けられる。次にS3で、消失材料が任意選択的にメッシュ基板に塗布される。最後にS4で、多孔質電極材料54がメッシュ基板52上に堆積される。
【0024】
本発明の別の実施形態では、電気化学電池構造体100は、図7に示すように例えば金属性発泡体などの多孔質導電性ベース102と、多孔質導電性ベース102上に堆積され、部分的に多孔質導電性ベース102内に相互貫通する支持層104とを含む。1つの実施形態では、多孔質導電性ベース102は、ニッケル発泡体を含む。別の実施形態では、支持層104は電極材料である。
【0025】
支持層104は、多孔質導電性ベース102上に配置され、多孔質導電性ベース102内に相互貫通する。この構成は、接着ペーストを必要とせず、構成部品が使用中に分離される可能性が従来構成に較べてはるかに少なく、従って構造的により安定している。加えて支持層104は、比較的滑らかな表面を提供し、化学気相成長法(CVD)、プラズマCVD法(PE−CVD)、物理気相成長法(PVD)、電子ビーム物理気相成長法(EB−PVD)、スパッタ堆積法、イオンビーム堆積法、分子線エピタキシー法(MBE)、プラズマ溶射法、フレーム溶射法又は高速フレーム溶射法(HVOF)などの噴霧熱分解又は粒子状堆積技術、或いは他の堆積技術といった原子論的堆積技術に対応する。1つの実施形態では、支持層104は、PVD又はEB−PVDのような堆積技術を使用して多孔質導電性ベース102上に堆積される。
【0026】
本明細書で説明するように、電極材料は、いずれかの従来型の電極材料を含むことができ、例えば、イットリア安定化ジルコニア;ランタンガレート;ドープ酸化セリウム;セリア安定化ジルコニア;CaO安定化ジルコニア、MgO安定化ジルコニア、M安定化ジルコニア(ここでMはY、Sc、Yb、Nd、Sm又はGdからなるグループから選択される)などの安定化ジルコニア;La(1−x−w)Sr(x−w)Ga(1−y)Mg(y+z)3−0.5(x+y+5w−2x)の一般組成を有するランタンガレート(ここで0.3=x=0.1、0.3=y=0.1、0.04=w=0.01、0.15=z=0.03);CeOがLa、Y、Sm、Gd、他の希土類酸化物、Gd+Pr、CaO、SrOからの1つ又は1つの混合物でドープされたドープ酸化セリウム;特定の物質で安定化されたビスマス三二酸化物Bi−MO(ここでMはカルシウム、ストロンチウム又はバリウム);一般式A、特にLnZrの酸化バイロクロア(ここでLnは、Gd(ZrTi1−x(GZT)及びY(ZrTi1−x(YZT)のようなランタノイド);或いは、BeCe0.9Gd0.1、CaAl0.7Ti0.3、SrZr0.9Sc0.1又はこれらの組み合わせなどのペロフスカイト構造体を含む。
【0027】
本明細書で説明されるように、電極材料は、アノード材料及びカソード材料を含むことができる。アノード材料は、例えば、金属及び実質的に還元されて金属を形成することになる金属酸化物の少なくとも1つのような電子伝導性材料とイオン伝導性材料とから構成される混合物;ニッケル、酸化ニッケル、白金族金属の少なくとも1つ;電子伝導性材料の単一相;Ni、Co、Pt、Pd又はRuを含む特定の金属;ZrO−Y−TiO系を含む混合酸化物導体;又はそれらの組み合わせを含む、あらゆる従来のアノード材料を含むことができる。カソード材料は、例えば、金属及び実質的に還元されて金属を形成することになる金属酸化物の少なくとも1つのような電子伝導性材料とイオン伝導性材料とを含む混合物;ニッケル、酸化ニッケル、又は白金族金属の少なくとも1つ;ランタンストロンチウム亜マンガン酸塩;ドープランタン輝コバルト鉱;白金族金属、ランタンストロンチウム亜マンガン酸塩、ドープランタンフェライト、及びドープランタン輝コバルト鉱及び電子伝導性材料の少なくとも1つから構成される混合物;ドープランタン亜マンガン酸塩;Ba、Ca、Cr、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、K、Rb、Na、Sr、Ti又はYのような種々の陽イオンで置換されたLaMnO;一般式La(1−x)SrMnOを有し、更にCo又はCrでドープ可能なランタンストロンチウム亜マンガン酸塩;ランタン輝コバルト鉱;伝導率又は熱膨張率を調整するためにSr、Ca、Mn又はNiでドープされたLaCoO;例えばLa0.8Sr0.2FeCoのようなドープランタンフェライト;又はこれらの組合せを含むあらゆる従来のカソード材料を含むことができる。
【0028】
更に、本発明は、間に電解質が配置されたカソード及びアノードの2つの電極に関して説明したが、別の実施形態では、追加の層を含むことができる。例えば、特定の実施形態は、電極と電解質との間に堆積されるバッファー層を含むことができる。これらのバッファー層は、限定ではないが、他の層間の有害な化学的相互作用を阻止することを含む、様々な理由から含むことができる。例えば幾つかの実施形態は、セリウム−ガドリニウム酸化物の中間層又は同様のものを含むことができ、これらを用いて、YSZの層と、ランタン輝コバルト鉱、ランタンストロンチウムフェライト又はその混合物の層との間の相互拡散及び化学的相互作用を低減することができる。同様に、サマリウムドープの酸化セリウム(Ce1−xSm2−0.5x)の中間層を用いて、NiO:CeOの複合アノードとLSGM(La1.8Sr0.2Ga1−yMg2.9−0.5y、ここで0.05<y<0.3)と間の相互拡散及び化学的相互作用を低減することができる。
【0029】
本明細書内で説明した実施形態の幾つかは、特に大表面積に対する堆積における堆積用の高空隙率支持体又は基板を提供し、各支持体は、ガス輸送抵抗が低く機械的及び熱的ストレスに対し堅牢であるように調整されている。加えて、実施形態の幾つかは、様々な堆積方法に好適な比較的滑らかな外面を提供する。本発明で説明された導電性ベースは、典型的には相互接続であり、より具体的には金属相互接続である。多孔質又は細孔質支持材料又は基板材料は、カソード材料又はアノード材料のいずれかを含むことができ、又は代替的に、多孔質又は細孔質支持材料は、ガス拡散層のような別の層を含んでもよい。実施形態の多くでは、多孔質又は細孔質支持材料は電極であり、残りの電池層の堆積に対し比較的滑らかな表面を提供する。加えて、実施形態の多くは、導電性ベースに取り付けられるスクリーンのようなメッシュ材料の使用を伴う。通常、メッシュ材料は、導電性ベースと同じか、又は類似の材料で作られる。導電性ベース及びメッシュ材料が各々相互接続材料で作られる場合、結果として得られる構造は、機械的耐久性が改善され、電流はメッシュ材料に、次いで導電性ベースに対して横方向に進むことができるので、電流路は、電極/相互接続表面に平行に通常は生じる亀裂の影響をあまり受けない。更に、支持されていない電極及び電解質層の寸法は、メッシュ材料の隙間のより小さな寸法までに大幅に縮小され、得られる電池に対し機械的耐久性が更に上乗せされる。
【0030】
本発明の特定の特徴部のみを本明細書で図示し説明してきたが、当業者であれば、多数の修正及び変更が想起されるであろう。例えば、本発明の実施形態の幾つかは、燃料電池スタック構成に関して説明したが、これは本発明を限定するものではなく、実際に本発明は、例えば管状燃料電池バンドル又は構成を含む別の燃料電池構成の範囲内で使用することが企図される。従って、添付の請求項は、本発明の真の精神に含まれる全てのこのような修正及び変更を保護するものとされる点を理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】要素が取り除かれた状態の本発明の1つの実施形態の斜視図。
【図2】要素が取り除かれた状態の本発明の1つの実施形態の別の斜視図。
【図3】本発明の1つの実施形態の側断面図。
【図4】要素が取り除かれた状態の本発明の別の実施形態の平面図。
【図5】本発明の1つの実施形態の概略表示。
【図6】本発明の1つの実施形態に関連する方法段階を示すフローチャート。
【図7】本発明の別の実施形態の側断面図。
【符号の説明】
【0032】
10 電池支持構造
12 導電性ベース
14 孔
16 グリッド層
18 多孔質支持層、第1の電極
20 隙間
22 外面
24 電解質
26 第2の電極
30 電池構造
50 電極電池構造
52 メッシュ基板
54 多孔質電極材料
56 隙間
58 堆積システム
100 電池支持構造
102 多孔質導電性ベース
104 支持層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学電池支持構造体(10)であって、
複数の貫通孔(14)を定める導電性ベース(12)と、
前記導電性ベース(12)上に配置されたグリッド層(16)と、
前記導電性ベース(12)又は前記孔(14)の少なくとも1つに前記グリッド層(16)を少なくとも部分的に相互貫通させる多孔質支持層(18)と、
を含む電気化学電池支持構造体(10)。
【請求項2】
前記導電性ベースが、鉄、クロム、ニッケル、スズ、又はその組合せの少なくとも1つで作られた金属相互接続を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項3】
前記導電性ベースが、フェライト系ステンレス鋼で作られた金属相互接続を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項4】
前記複数の孔が、5と13ミリメータの範囲内の寸法を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項5】
前記グリッド層(16)が、スチールワイヤグリッドを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池支持構造体(10)。
【請求項6】
前記グリッド層(16)が、スクリーン、金属ワイヤグリッド、導電性発泡体、クロミア成形グリッド又はその組合せの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池支持構造体(10)。
【請求項7】
前記グリッド層が、複数の隙間を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項8】
前記複数の隙間が、20と2500ミクロンの範囲内の寸法を有することを特徴とする請求項7に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項9】
前記多孔質支持層が電極を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項10】
前記電極が複合材料を含むことを特徴とする請求項9に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項11】
前記多孔質支持層が、その上の堆積を担持するために十分に平滑な表面を提供することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項12】
電極及び電解質の少なくとも一方が前記多孔質支持層上に堆積されることを特徴とする請求項11に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項13】
前記電極又は前記電解質が、化学気相成長法(CVD)、プラズマCVD法(PE−CVD)、物理気相成長法(PVD)、電子ビーム物理気相成長法(EB−PVD)、スパッタ堆積法、イオンビーム堆積法、分子線エピタキシー法(MBE)、プラズマ溶射法、フレーム溶射法又は高速フレーム溶射法(HVOF)などの噴霧熱分解又は粒子状堆積技術のような原子層堆積技術の少なくとも1つを用いて堆積されることを特徴とする請求項12に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項14】
電極電池構造体(50)であって、
メッシュ基板(52)と、
前記メッシュ基板(52)上に配置され、相互貫通する多孔質電極材料(54)と、
を含む電極電池構造体(50)。
【請求項15】
前記多孔質電極材料が、Ni及びイットリア安定化ジルコニアであることを特徴とする請求項14に記載の電極電池構造体。
【請求項16】
前記多孔質電極材料が、物理気相成長法(PVD)を用いて堆積されることを特徴とする請求項14に記載の電極電池構造体。
【請求項17】
前記多孔質電極材料が、化学気相成長法(CVD)、プラズマCVD法(PE−CVD)、物理気相成長法(PVD)、電子ビーム物理気相成長法(EB−PVD)、スパッタ堆積法、イオンビーム堆積法、分子線エピタキシー法(MBE)、噴霧熱分解法、プラズマ溶射法、フレーム溶射法又は高速フレーム溶射法(HVOF)を用いて堆積されることを特徴とする請求項14に記載の電極電池構造体。
【請求項18】
前記メッシュ基板(52)が、ステンレス鋼スクリーン又はニッケルスクリーンのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項14に記載の電極電池構造体。
【請求項19】
前記メッシュ基板(52)が、細かい孔を有する金属性薄片であることを特徴とする請求項14に記載の電極電池構造体。
【請求項20】
前記メッシュ基板が、25μmと75μmの範囲内の厚さを有することを特徴とする請求項14に記載の電極電池構造体。
【請求項21】
前記メッシュ基板が、複数のグリッド隙間を含むことを特徴とする請求項14に記載の電極電池構造体。
【請求項22】
前記グリッド隙間の寸法が、その最も広い箇所で75μmを下回ることを特徴とする請求項21に記載の電極電池構造体。
【請求項23】
隣接するグリッド隙間の間の間隔が、中央で150μmより小さいことを特徴とする請求項21に記載の電極電池構造体。
【請求項24】
前記グリッド隙間の少なくとも一部に配置された消失材料を更に含む請求項21に記載の電極電池構造体。
【請求項25】
前記消失材料が塩を含むことを特徴とする請求項24に記載の電極電池構造体。
【請求項26】
前記塩が、塩化ナトリウムを含むことを特徴とする請求項25に記載の電極電池構造体。
【請求項27】
電気化学電池支持構造体(100)であって、
多孔質導電性ベース(102)と、
前記多孔質導電性ベース(102)上に堆積されて、前記多孔質導電性ベース(102)内に部分的に相互貫通する支持層(104)と、
を含む電気化学電池支持構造体(100)。
【請求項28】
前記多孔質導電性ベース(102)が、金属性発泡体を含むことを特徴とする請求項27に記載の電気化学電池支持構造体(100)。
【請求項29】
前記金属性発泡体が、ステンレス鋼発泡体又はニッケル発泡体の少なくとも1つであることを特徴とする請求項28に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項30】
前記支持層材料が、化学気相成長法(CVD)、プラズマCVD法(PE−CVD)、物理気相成長法(PVD)、電子ビーム物理気相成長法(EB−PVD)、スパッタ堆積法、イオンビーム堆積法、分子線エピタキシー法(MBE)、噴霧熱分解法、プラズマ溶射法、フレーム溶射法又は高速フレーム溶射法(HVOF)を用いて堆積されることを特徴とする請求項27に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項31】
前記支持層が、電子ビーム物理気相成長法(EB−PVD)を用いて堆積されることを特徴とする請求項27に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項32】
前記支持層が電極であることを特徴とする請求項27に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項33】
前記支持層が、その上の別の堆積を担持するために十分に平滑な表面を提供することを特徴とする請求項27に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項34】
電極及び電解質の少なくとも1つが、前記支持層上に堆積されることを特徴とする請求項33に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項35】
前記電極又は前記電解質が、化学気相成長法(CVD)、プラズマCVD法(PE−CVD)、物理気相成長法(PVD)、電子ビーム物理気相成長法(EB−PVD)、スパッタ堆積法、イオンビーム堆積法、分子線エピタキシー法(MBE)、プラズマ溶射法、フレーム溶射法又は高速フレーム溶射法(HVOF)などの噴霧熱分解又は粒子状堆積技術のような原子層堆積技術の少なくとも1つを用いて堆積されることを特徴とする請求項34に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項36】
電気化学電池構造体であって、
複数の貫通孔を定める導電性ベースと、
前記導電性ベース上に配置されたグリッド層と、
前記導電性ベース又は前記孔の少なくとも1つに対し前記グリッド層を少なくとも部分的に相互貫通させる多孔質支持層と、
第1の電極層及び第2の電極層と、
前記第1の電極層及び第2の電極層の間に介在する電解質と、
を含む電気化学電池構造体。
【請求項37】
電気化学電池構造体であって、
複数の貫通孔を定める導電性ベースと、
前記導電性ベース上に配置されたグリッド層と、
前記導電性ベース又は前記孔の少なくとも1つに対し前記グリッド層を少なくとも部分的に相互貫通させる多孔質支持層と、
前記多孔質支持層上に配置された電解質と、
前記電解質上に配置された電極と、
を含む電気化学電池構造体。
【請求項38】
前記多孔質支持層が電極であることを特徴とする請求項37に記載の電気化学電池構造体。
【請求項39】
前記電解質が、前記多孔質支持層に密閉して重なることを特徴とする請求項38に記載の電気化学電池構造体。
【請求項40】
電気化学電池支持構造を製作する方法であって、
複数の貫通孔を含む導電性ベースを準備する段階と、
前記貫通孔を覆うように前記導電性ベースにグリッド層を取り付ける段階と、
前記導電性ベース又は前記孔の少なくとも1つに前記グリッド層を部分的に相互貫通するように多孔質支持層を堆積させる段階と、
を含む方法。
【請求項41】
前記電気化学電池が固体電解質型燃料電池であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池支持構造体。
【請求項42】
前記電気化学電池が、固体電解質水蒸気電解セルであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池支持構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−113114(P2007−113114A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−258595(P2006−258595)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】