説明

電気掃除機

【課題】電気掃除機において、安価でかつ単純な構成で精度よく異常スパークを検出し、瞬時電圧低下や停電時の誤検知も防止できる制御を実現する。
【解決手段】電動送風機2に流れる交流電流を検出する電流検出手段5と、電源電圧を検出する電圧検知手段15とを有し、電動送風機2に流れる交流電流波形の内、少なくともその半波間が非通電状態となっている周期が存在し、且つそのときの電源電圧が所定値以上である場合に、電動送風機2への通電量を所定量まで下げるか又は停止するもので、いわゆる「半波抜け」の検出により、「電流が流れている/流れていない」の判断で異常スパークを検知でき、誤検知の可能性が極めて少なく、且つ近年の電気掃除機の大半に搭載されている電流検知手段を用いることで、安価な構成も実現できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンと整流子モータからなる電動送風機を用いた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電気掃除機の課題のひとつとして、整流子とカーボンブラシとの接触面から発生するモータースパークが挙げられる。特に電気掃除機に内蔵されるモータにおいては、その使用条件の過酷さ故に、モータースパークが発生し易く、更に一旦スパークが発生すると、次第に悪化していく傾向にある。このスパークが大きくなれば、大幅な寿命低下や振動、動作不良等、様々な不具合を引き起こすことは周知の事実であり、スパーク対策としてモータ自体の改良が進められてきたが、制御による対策も依然必要とされている。従来のこの種の対策としては、スパーク発生時に交流電流波形に重畳される高周波数成分を検出することで、スパークを検出する方法(例えば、特許文献1参照)や、光検出素子によって直接スパークを検出する方法(例えば、特許文献2参照)等がある。尚、これらの手段によってスパークの発生を検出した場合は、異常であることを報知すると共に、モータを停止することが一般的である。
【特許文献1】特開2001−136780号公報
【特許文献2】特開2006−204470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたスパーク判定方法によれば、複雑な演算処理が必要となり、電源自体にノイズが重畳している場合でもスパークであると誤検知する可能性もある。更に、無視してもよいレベルの軽いスパーク(3号〜4号程度)と、重度のスパーク(7号〜8号:以降、「異常スパーク」と呼ぶ)とで電流波形に重畳される高周波成分の差を検知するのはかなりの精度が必要であり、実際に不具合に繋がる異常スパークのみを検出することは非常に困難である。又、交流電流波形からスパークを検出しようとした場合、その電源波形自体の乱れ、例えば、瞬時電圧低下や、瞬時停電が発生した時に、誤検知しないよう考慮されたアルゴリズムが必要となる。
【0004】
また、上記特許文献2に記載されたスパーク判定方法によれば、確かに精度の高い検出は可能であるが、高価なものになるのは必至である上に、光検出素子の配置や、光検出素子の汚れによる感度低下等、実現には大きな課題を有している。
【0005】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、安価でかつ単純な構成で異常スパークを検出し、且つ瞬時電圧低下や瞬時停電が発生した場合も考慮した、精度の高いスパーク検知制御を搭載した高品質の電気掃除機を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために本発明は、ファンと整流子モータを有する電動送風機と、前記電動送風機を駆動するための双方向性サイリスタと、前記双方向性サイリスタのトリガ位相角を変えることによって前記電動送風機の通電量を制御する制御手段と、前記電動送風機に流れる交流電流を検出する電流検出手段と、電気掃除機に入力されている電源電圧を検出する電圧検知手段とを有し、前記電動送風機に流れる交流電流波形の内、少なくともその半波間が非通電となっている周期が存在しており且つ、そのときの電源電圧が所定値以上である場合に、前記電動送風機への通電量を所定量まで下げるか又は前記電動送風機を停止するようにした。
【0007】
スパークの発生は、整流子とカーボンブラシとの電気的接触不良によって起こるものであるため、スパーク発生時には断続的に電動送風機に電流が流れない期間が発生する。電流が流れない期間の長さ及び周期は、スパークのレベルによって異なるが、基本的にスパークが大きいほど、電流が流れない期間と周期は長くなる。このため、スパークが小さい時は、周波数が高く、振幅の小さい高調波成分が交流電源波形に重畳され、逆にスパークが大きい時は周波数が低く、振幅の大きい高調波成分が重畳されることになる。一方、整流子モータの制御には双方向サイリスタを用いた位相制御が一般的であるが、この双方向性サイリスタのトリガパルス幅よりも、上記の電流が流れない期間の方が長い場合、双方向性サイリスタがオンしなくなり、その半波間は、電流が流れないことになる。本発明は、この「半波抜け」の検出によって、異常スパークを検知するもので、判断としては、「電流が流れている/流れていない」の判断で行なえ、誤検知の可能性が極めて少なく、且つ近年の電気掃除機の大半に搭載されている電流検知手段のみで検知できるために、新しく部品を追加することなく安価な構成で実現できるものである。
【0008】
又、「電流が流れている/流れていない」の判断閾値は、通常、部品(回路素子)ばらつきを含めて設定することもあり、ゼロに設定することはできないが、それ故、電源電圧が低い時には、電流が流れているにも関らず、電流値が判断閾値未満となるケースがあり、その場合、「電流が流れていない」と誤検知することになる。本発明によれば、電源電圧が所定値未満の時には、スパークの検知を行わないようになるため、瞬時電圧低下や瞬時停電時の誤検知も完全に防止できるものである。
【0009】
尚、第2〜第4の発明は、全て前述した電圧検知手段を用いずに、瞬時電圧低下や瞬時停電時にスパークの検知を行わないようにするものであり、基本の考え方は、前述したものと同様のものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気掃除機は、安価で単純な構成で誤検知の可能性が極めて低い異常スパーク検知が実現できるものであり、高品質の電気掃除機を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、ファンと整流子モータを有する電動送風機と、前記電動送風機を駆動するための双方向性サイリスタと、前記双方向性サイリスタのトリガ位相角を変えることによって前記電動送風機の通電量を制御する制御手段と、前記電動送風機に流れる交流電流を検出する電流検出手段と、電気掃除機に入力されている電源電圧を検出する電圧検知手段とを有し、前記電動送風機に流れる交流電流波形の内、少なくともその半波間が非通電となっている周期が存在し、且つ、そのときの電源電圧が所定値以上である場合に、前記電動送風機への通電量を所定量まで下げるか又は前記電動送風機を停止することを特徴とする電気掃除機としたものであり、「半波抜け」の検知であるので誤検知の可能性が極めて低い上に、電源電圧が所定値未満の時には、スパークの検知を行わないようになるため、瞬時電圧低下や瞬時停電時の誤検知も完全に防止できるものである。
【0012】
第2の発明は、ファンと整流子モータを有する電動送風機と、前記電動送風機を駆動するための双方向性サイリスタと、前記双方向性サイリスタのトリガ位相角を変えることによって前記電動送風機の通電量を制御する制御手段と、前記電動送風機に流れる交流電流を検出する電流検出手段とを有し、前記電動送風機に流れる交流電流波形の内、少なくともその半波間が非通電となっている周期が存在し、且つ、その半波の連続発生数が所定回数未満である場合に、前記電動送風機への通電量を所定量まで下げるか又は前記電動送風機を停止することを特徴とする電気掃除機としたものである。
【0013】
通常、瞬時電圧低下や瞬時停電が発生した場合も半波間が非通電となるため、これらの非通電となる半波の連続発生を、モータのスパークと誤検知しないようにするもので、上記非通電となる半波の連続発生数が所定回数以上となる場合は、瞬時電圧低下又は停電であると判断してスパーク検知は行わないものである。通常、瞬時電圧低下や瞬時停電が発生した場合には、その復電までには0.07秒以上かかる。即ち、半波にして約7回(50Hz地域)の間は電圧低下・停電状態が継続することになる。本発明では、例えば上記非通電となる半波の連続発生数の所定回数を7回と設定し、7回以上連続して非通電状態が継続した場合、瞬時電圧低下又は停電であると判断して、スパーク検知をおこなわないようにするものであり、第1の発明よりも精度は劣るものの、電圧検知手段を必要としないため、安価に構成できるものである。
【0014】
第3の発明は、ファンと整流子モータを有する電動送風機と、前記電動送風機を駆動するための双方向性サイリスタと、前記双方向性サイリスタのトリガ位相角を変えることによって前記電動送風機の通電量を制御する制御手段と、前記電動送風機に流れる交流電流を検出する電流検出手段とを有し、前記電動送風機に流れる交流電流波形の内、少なくともその半波間が非通電となっている周期が存在し、且つ、前記非通電状態となっている半波の発生分布に極端な偏りがなく更に、単位時間あたりの、その半波の発生数が所定数以下である場合に、前記電動送風機への通電量を所定量まで下げるか又は前記電動送風機を停止することを特徴とし、前記「所定数」を、前記単位時間の全半波数の50%以上〜100%未満に設定したことを特徴とする電気掃除機としたものである。
【0015】
通常、瞬時電圧低下や停電等は、短期間に連続して発生することは非常に稀である。即ち、瞬時電圧低下や停電が発生した場合、非通電状態となる半波の発生は極端に偏った分布になる。本発明は、その分布によって、瞬時電圧低下や停電と、スパークとを見分けるものである。尚、分布とは別に、非通電状態となっている半波の数も見ているのは、非通電判定の電流閾値近辺へ電圧低下した場合の誤検知を防止するためであり、その値(50%〜100%)は、経験値であり、その機器の特性によって設定値を変更する必要があるが、第2の発明よりも検出精度は上である。
【0016】
第4の発明は、ファンと整流子モータを有する電動送風機と、前記電動送風機を駆動するための双方向性サイリスタと、前記双方向性サイリスタのトリガ位相角を変えることによって前記電動送風機の通電量を制御する制御手段と、前記電動送風機に流れる交流電流を検出する電流検出手段とを有し、前記電動送風機に流れる交流電流波形の内、少なくともその半波間の電流値が、第1の所定値以下となっている周期が存在し、且つ、第2の所定値以下となっている半波の発生分布に極端な偏りがなく更に、単位時間あたりの、その半波の発生数が所定数以下である場合に、前記電動送風機への通電量を所定量まで下げるか又は前記電動送風機を停止することを特徴とし、前記「第1の所定値」を非通電状態である略ゼロに、「第2の所定値」を前記「第1の所定値」よりも大きい値に、「所定数」を、前記単位時間の全半波数の50%以上〜100%未満に設定することを特徴とする電気掃除機としたものである。
【0017】
「第2の所定値」を「第1の所定値」よりも大きく設定することで、「非通電」の判断と「電圧低下」判断にヒステリをもたせることになり、第4の発明よりもアルゴリズムは複雑であるが、より精度の高い検出が行えるものである。
【0018】
第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明に加えて、瞬時停電を検出する瞬停検知手段を有し、瞬時停電を検出した時点から、復電して所定の時間経過するまでの間は、非通電である半波の個数をカウントせず、且つ、それまでにカウントした非通電である半波数のカウント値をリセットすることを特徴とする電気掃除機としたものである。
【0019】
電気掃除機の使用時においては、通常の停電以外にも、例えばコンセントと電源プラグとの接触不良等によって、瞬間的に電力供給が遮断されるケースがある。本発明は、瞬停検知手段によってこれらの瞬断を検出して、スパーク検知を行わないようにするものである。一般的に瞬停検知手段は、電圧検知手段よりも安価に構成できるため、第2〜第4の発明と組み合わせることによって、第1の発明とほぼ同精度の検出が安価に実現できるものである。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態における電気掃除機について、図1〜図4を用いて説明する。図2は、本実施の形態における電気掃除機の全体斜視図であり、図2において、掃除機本体21は、後部に電動送風機2を内蔵した電動送風機室22が配され、前部に、塵埃を捕集する集塵室23が配され、掃除機本体21の前部には、ホース24の一端に設けた接続パイプ25が着脱自在に接続される吸気口26が設けられている。ホース24の他端には、掃除の際に握ると共に掃除機本体21の運転を操作するための操作部9を有する把手27を備えた先端パイプ28が設けられている。29は伸縮自在の延長管で、下流側端部が前記先端パイプ28に着脱自在に接続され、他端は、塵埃掻き上げ用の回転ブラシ30とその回転ブラシ30を回転駆動するモータ10を内蔵した吸込み具31に着脱自在に接続される。又、掃除機本体21の後部には、コンセント(商用電源)に接続して、掃除機本体21に内蔵されている回路基板32(図示せず)に電源を供給するための電源コード13が設けられている。図3は前記操作部9の詳細図であり、「強」スイッチ9a、「中」スイッチ9b、「弱」スイッチ9c、「切」スイッチ9d及び異常表示ランプ9eより構成されている。
【0022】
次に、図1を用いて制御回路構成を説明する。商用電源1には、電源波形のゼロクロスを検出するためのゼロクロス検出回路8と、電源電圧を検出するための電圧検知手段15と、信号制御手段14に電源を供給するための電源回路7と、電動送風機2と、モータ10が接続されている。前記電動送風機2とモータ10はそれぞれ双方向性サイリスタA3と双方向性サイリスタB11をオンすることによって、前記商用電源1から電源が供給されるように構成されている。前記双方向性サイリスタA3及びB11は、それぞれ駆動手段A4と駆動手段B12を介して、前記信号制御手段14により位相制御されるように構成されている。この時の位相制御角は、信号制御手段14に接続された操作部9の各スイッチ9a〜9dからの入力信号に応じて決定されている。位相制御を行なうために必要となるゼロクロス検出回路8は、前記信号制御手段14に接続されている。前記電動送風機2の電源供給ライン上には電流検出手段5が設けられ、この電流検出手段5によって、電動送風機2の交流電流波形を全波整流した信号波形が前記信号制御手段14に入力されると共に、前記信号波形をピークホールド回路6により平滑した電流波形も前記信号制御手段14に入力されるように構成されている。異常表示ランプ9eは、前記信号制御手段14に接続されており、異常発生時に点灯するようになっている。
【0023】
次に、上記のように構成された、本実施の形態における電気掃除機の動作、作用について、図4を参照しながら説明する。
【0024】
図4の波形は、上から順に電源電圧波形、双方向性サイリスタA3に入力されるトリガパルス波形、正常時の電流波形、異常スパーク時の電流波形、双方向性サイリスタA3が半波導通モードで故障している時の電流波形であり、図5の波形は、前記図4のA部の詳細図であり、上から順に電源電圧波形、ゼロクロス検出回路8の出力波形、双方向サイリスタA3に入力されるトリガパルス波形、正常時の電流波形、電流検出手段5の出力波形である。電源投入時にはトリガパルスは常時オフ即ち電動送風機2は停止状態であるため、電流波形は0Vとなる。使用者の操作によって、操作部9の各スイッチ9a〜9cが押された場合、図のようなトリガパルスを信号制御手段14から駆動手段A4を介して双方向性サイリスタA3に入力することで、図5のように前記トリガパルス入力と同時に前記双方向サイリスタA3が導通して電動送風機2に電流が流れ、次のゼロクロスで電流が遮断されるようになる。即ち、トリガパルスの位相角t1(=ゼロクロス検出回路の出力波形によって、ゼロクロスを検出してからトリガパルスをオンするまでの時間)を変えることで、電動送風機2に流れる電流(入力)を制御している。信号制御手段14は、操作部9のどのスイッチが押されたかを判断し、押されたスイッチに応じて、電動送風機が狙いの入力で駆動するように、トリガパルスの位相角を決定し、駆動手段A3に信号を出力している。
【0025】
又、電動送風機2が駆動している時に「切」スイッチ9dを押すと、信号制御手段14からのトリガパルス出力が常時オフになり、電動送風機2も停止する。
【0026】
以降、異常スパーク検知のアルゴリズムと異常スパーク検知後の制御について、図6を参照しながら説明する。
【0027】
電動送風機2を駆動している間、信号制御手段14は常に、トリガパルス出力の1ms後(図5の▲のタイミング・t3=1ms)の、電流検出手段5の出力値及び、90°位相の電圧検知手段15の出力値をモニターしている。信号制御手段14は、前記電流検出手段5の出力値が1V未満であったなら「半波抜け」と判断し、その時の前記電圧検知手段15の出力値が30V未満であれば、「半波抜け」と判断した回数を積算し、1秒毎にこの積算値を用いて異常スパークの判定と異常スパーク確定後の制御を行なっている。具体的には前記積算値が2回以下であれば「異常スパークではない」と判断し、3回以上であれば「異常スパークである」と判断して、電動送風機2の入力を下げるように制御する。図6においては、ステップ2で電動送風機2を駆動しているかどうかの判断を行い、駆動中であるならばステップ3で「半波抜け」かどうかの判断を行い、電源電圧が30V未満であれば、ステップ4で「半波抜け」の回数を積算している。更にステップ5で判定のタイミング(1秒毎)であるかを判断し、判定タイミングであれば、ステップ6で「半波抜け」回数積算値の判定を行なう。積算値が3回以上であれば「異常スパークである」と判断して、入力を下げて、異常表示ランプ9eを点灯させている。
【0028】
以上のように、本実施の形態によれば、安価に且つ単純な構成でスパーク検知が構成でき又、「半波抜け」の検知であるので誤検知の可能性を極めて低く抑えられ、且つ電源電圧が低い場合には、「半波抜け」の回数を積算しないため、電源電圧低下や瞬時停電等による誤検知も防止でき、精度良く「異常スパーク」を検知できるものである。
【0029】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態における電気掃除機の制御について、図7を用いて説明する。尚、本実施の形態における電気掃除機の全体構成は実施の形態1と同一、制御回路構成は、実施の形態1から電圧検知手段15を除いただけのものであるため、その詳細な説明は省略する。
【0030】
電動送風機2を駆動している間、信号制御手段14は常に、トリガパルス出力の1ms後(図5の▲のタイミング・t3=1ms)の、電流検出手段5の出力値をモニターしている。信号制御手段14は、前記電流検出手段5の出力値が1V未満であったなら「半波抜け」と判断し、「半波抜け」と判断した回数を積算し、1秒毎にこの積算値を用いて異常スパークの判定と異常スパーク確定後の制御を行なっている。具体的には前記積算値が3回以上で且つ、連続して「半波抜け」と判断した回数が7回未満であれば「異常スパークである」と判断して、電動送風機2の入力を下げるように制御する。図6においては、ステップ2で電動送風機2を駆動しているかどうかの判断を行い、駆動中であるならばステップ3で「半波抜け」かどうかの判断を行い、「半波抜け」の回数を積算している。同時にステップ4で、前回も「半波抜け」であったならば、連続「半波抜け」カウンタを+1し、ステップ5で、その最大連続数を更新している。更にステップ6で判定のタイミング(1秒毎)であるかを判断し、判定タイミングであれば、ステップ7で「半波抜け」回数積算値の判定を行なう。加えてステップ8で連続「半波抜け」回数を判定し、最終的に積算値が3回以上で且つ連続「半波抜け」回数が7回未満であれば「異常スパークである」と判断して、入力を下げて、異常表示ランプ9eを点灯させている。
【0031】
通常、瞬時電圧低下や瞬時停電が発生した場合、その復電までには0.07秒以上かかる。即ち、半波にして7回(50Hz地域)の間は電圧低下・停電状態が継続することになる。本発明は、異常スパークの判定に、連続「半波抜け」回数が7回未満であるかどうかを用いているために、第1の発明よりも精度は劣るものの、電圧検知手段を用いずに瞬時電圧低下や停電による誤検知を防止できる異常スパーク検知回路を、安価に構成できるものである。
【0032】
尚、本実施の形態において、積算値が3回以上で且つ、積算値が3回以上で且つ、連続して「半波抜け」と判断した回数が7回未満であれば「異常スパークである」と判断が7回未満であれば「異常スパークである」と判断するようにしたが、各回数は必ずしもこの回数に限られるものではない。
【0033】
但し、通常瞬時電圧低下や瞬時停電が発生した場合には、その復電までには0.07秒以上かかり、半波にして約7回(50Hz地域)の間は電圧低下・停電状態が継続することになるため、連続して「半波抜け」と判断する回数は、7回以上が望ましい。
【0034】
(実施の形態3)
本発明の第3の実施の形態における電気掃除機の制御について、図8を用いて説明する。尚、本実施の形態における電気掃除機の全体構成は実施の形態1と同一、制御回路構成は、実施の形態1から電圧検知手段15を除いただけのものであるため、その詳細な説明は省略する。
【0035】
電動送風機2を駆動している間、信号制御手段14は常に、トリガパルス出力の1ms後(図5の▲のタイミング・t3=1ms)の、電流検出手段5の出力値をモニターしている。信号制御手段14は、前記電流検出手段5の出力値が1.3V未満であったなら「電圧低下」と判断し、その回数を積算する。又、前記電流検出手段5の出力値が1V未満であったなら「半波抜け」と判断し、「半波抜け」と判断した回数を積算し、0.3秒毎に、それぞれの判断回数の最大値、最小値を更新していく。更にそれを3回繰り返したあと即ち、0.9秒毎にこの積算値と、各判断回数の最大値、最小値を用いて異常スパークの判定と異常スパーク確定後の制御を行なっている。具体的には前記「半波抜け」積算値が3回以上で且つ、0.3秒毎の「半波抜け」最大値と最小値の差が7回未満すなわち、「半波抜けの」発生分布に極端な偏りがなく且つ、0.3秒毎の「低電圧」積算値の最大値が20回未満であれば「異常スパークである」と判断して、電動送風機2の入力を下げるように制御する。図6においては、ステップ2で電動送風機2を駆動しているかどうかの判断を行い、駆動中であるならばステップ3で「低電圧」かどうかの判断を行い、「低電圧」の回数を積算し、同時にステップ4で「半波抜け」かどうかの判断を行い、「半波抜け」の回数を積算している。ステップ5は、0.3秒毎に行われる、「低電圧」判断回数の最大値更新及び、「半波抜け」回数の最大値及び最小値の更新処理である。更にステップ6で判定のタイミング(0.9毎)であるかを判断し、判定タイミングであれば、ステップ7で「半波抜け」回数積算値の判定を行なう。加えてステップ8で「半波抜け」の発生分布に極端な偏りがないかを、0.3秒毎の「半波抜け」最大値と最小値との差で判定している。更にステップ9では、「低電圧」発生回数最大値が20回未満であるかを判定し、最終的に0.9秒間の「半波抜け」積算値が3回以上で且つ、0.3秒毎の「半波抜け」最大値と最小値の差が7回未満すなわち、「半波抜けの」発生分布に極端な偏りがなく且つ、0.3秒毎の「低電圧」積算値の最大値が20回未満であれば「異常スパークである」と判断して、入力を下げて、異常表示ランプ9eを点灯させている。
【0036】
一方、瞬時停電の検出は、ゼロクロス検出回路8を用いて常時行っている。通常であれば、ゼロクロスは電源周波数に同期して出力されるため、50Hz地域では10ms毎に、60Hz地域では8.33ms毎に出力されるが、このゼロクロスの出力周期が、前述の10ms/8.33msよりも長くなった時に瞬時停電であると判断できる。このような瞬時停電の検知アルゴリズムは、ごく一般的なものであるため、本実施の形態のフローチャートには記載していないが、ステップ1の直前で、瞬時停電であると判断してから、復電後の100ms間は、全てのカウンタをリセットし続ける処理を行っている。
【0037】
通常、瞬時電圧低下や停電等は、短期間に連続して発生することは非常に稀である。即ち、瞬時電圧低下や停電が発生した場合、非通電状態となる半波の発生は極端に偏った分布になる。本実施の形態によれば、0.3秒毎の「半波抜け」最大値と最小値の差によって、「半波抜け」の発生分布の偏りを見ており、且つ「半波抜け」の判定値と、「低電圧」の判定値に0.3Vのヒステリを持たせ、更に「低電圧」の回数が多い場合には、「異常スパーク」としないため、「半波抜け」判定値近辺へ電圧低下した場合の誤検知も防止できる。又、瞬時停電を検出した場合、各カウンタをリセットすることで、通常の停電時はもちろん、例えばコンセントと電源プラグとの接触不良等によって、瞬間的に電力供給が遮断されるケースにおいても誤検知が防止でき、精度の高い「異常スパーク検知」を、安価な構成で実現できるものである。
【0038】
尚、請求項3に記載の発明は、本実施の形態において、「低電圧」判定閾値(1.3V)を「半波抜け」判定値(1V)と同じ値に設定したものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明はモータースパークに対する対策が必要とされる機器、特に電気掃除機に対して効果を発揮するものであり、家庭用だけでなく、ビルトインタイプ(セントラルクリーナ)のような電気掃除機にも応用・展開できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態1における電気掃除機の回路ブロック図
【図2】同、電気掃除機の全体斜視図
【図3】同、電気掃除機の操作部詳細図
【図4】同、電気掃除機の電流波形図
【図5】同、電気掃除機の電流波形詳細図
【図6】同、電気掃除機の制御フローチャート
【図7】本発明の実施の形態2における電気掃除機の制御フローチャート
【図8】本発明の実施の形態3における電気掃除機の制御フローチャート
【符号の説明】
【0041】
1 商用電源
2 電動送風機
3 双方向性サイリスタA
4 駆動手段A
5 電流検出手段
6 ピークホールド回路
7 電源回路
8 ゼロクロス検出回路(瞬停検知手段)
9 操作部
9a 「強」スイッチ
9b 「中」スイッチ
9c 「弱」スイッチ
9d 「切」スイッチ
9e 異常表示ランプ
10 モータ
11 双方向性サイリスタB
12 駆動手段B
13 電源コード
14 信号制御手段
15 電圧検知手段
21 掃除機本体
22 電動送風機室
23 集塵室
24 ホース
25 接続パイプ
26 吸気口
27 把手
28 先端パイプ
29 延長管
30 回転ブラシ
31 吸込み具
32 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンと整流子モータを有する電動送風機と、前記電動送風機を駆動するための双方向性サイリスタと、前記双方向性サイリスタのトリガ位相角を変えることによって前記電動送風機の通電量を制御する制御手段と、前記電動送風機に流れる交流電流を検出する電流検出手段と、電気掃除機に入力されている電源電圧を検出する電圧検知手段とを有し、前記電動送風機に流れる交流電流波形の内、少なくともその半波間が非通電となっている周期が存在し、且つ、そのときの電源電圧が所定値以上である場合に、前記電動送風機への通電量を所定量まで下げるか又は前記電動送風機を停止することを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
ファンと整流子モータを有する電動送風機と、前記電動送風機を駆動するための双方向性サイリスタと、前記双方向性サイリスタのトリガ位相角を変えることによって前記電動送風機の通電量を制御する制御手段と、前記電動送風機に流れる交流電流を検出する電流検出手段とを有し、前記電動送風機に流れる交流電流波形の内、少なくともその半波間が非通電となっている周期が存在し、且つ、その半波の連続発生数が所定回数未満である場合に、前記電動送風機への通電量を所定量まで下げるか又は前記電動送風機を停止することを特徴とする電気掃除機。
【請求項3】
ファンと整流子モータを有する電動送風機と、前記電動送風機を駆動するための双方向性サイリスタと、前記双方向性サイリスタのトリガ位相角を変えることによって前記電動送風機の通電量を制御する制御手段と、前記電動送風機に流れる交流電流を検出する電流検出手段とを有し、前記電動送風機に流れる交流電流波形の内、少なくともその半波間が非通電となっている周期が存在し、且つ、前記非通電状態となっている半波の発生分布に極端な偏りがなく更に、単位時間あたりの、その半波の発生数が所定数値以下である場合に、前記電動送風機への通電量を所定量まで下げるか又は前記電動送風機を停止することを特徴とし、前記「所定数」を、前記単位時間の全半波数の50%以上〜100%未満に設定したことを特徴とする電気掃除機。
【請求項4】
ファンと整流子モータを有する電動送風機と、前記電動送風機を駆動するための双方向性サイリスタと、前記双方向性サイリスタのトリガ位相角を変えることによって前記電動送風機の通電量を制御する制御手段と、前記電動送風機に流れる交流電流を検出する電流検出手段とを有し、前記電動送風機に流れる交流電流波形の内、少なくともその半波間の電流値が、第1の所定値以下となっている周期が存在し、且つ、第2の所定値以下となっている半波の発生分布に極端な偏りがなく更に、単位時間あたりの、その半波の発生数が所定数以下である場合に、前記電動送風機への通電量を所定量まで下げるか又は前記電動送風機を停止することを特徴とし、前記「第1の所定値」を非通電状態である略ゼロに、「第2の所定値」を前記「第1の所定値」よりも大きい値に、「所定数」を、前記単位時間の全半波数の50%以上〜100%未満に設定したことを特徴とする電気掃除機。
【請求項5】
瞬時停電を検出する瞬停検知手段を有し、瞬時停電を検出した時点から、復電して所定の時間経過するまでの間は、非通電である半波の個数をカウントせず、且つ、それまでにカウントした非通電である半波数のカウント値をリセットすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気掃除機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−88649(P2010−88649A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261452(P2008−261452)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】