説明

電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材及びこれを用いた電子機器並びに立体合成樹脂部材の製造方法

【課題】 バネ状接触部と配線部とを一体にした電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材及びこれら部材を用いた電子機器並びに立体合成樹脂部材の製造方法を得る。
【解決手段】 簡単な工程によってバネ状接触部と配線部とを一体にした電気接続機能配線部材102Aを有する立体合成樹脂部材90を形成する場合に、射出成型時に電気接続機能配線部材102Aは固定金型27に保持され、立体合成樹脂部材90の成型後は固定金型27から外れる配線部構造及び射出成型金型構造並びに成型時にバネ状接触部の湾曲部24を合成樹脂41の混入から保護する目的のバネ接触部保護金型1,2を有する電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材及びこれを用いた電子機器並びに立体合成樹脂部材の製造方法を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続機能配線部材を有する立体的形状面の立体合成樹脂部材及びこれら部材の製造方法に係わり、特に、バネ状接触部と配線部とを一体にした電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材及びこれら部材を用いた電子機器並びに立体合成樹脂部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から 電気接続機能配線部材を有する合成樹脂部材を用いた製造方法として、比較的大型の立体モールドフレームにおける配線パターンの製造方法が特許文献1に開示されている。
【0003】
図8は特許文献1に開示された一部の立体モールドフレームの配線パターンを示す斜視図であり、複雑で、かつ大型の立体モールドフレームに対して容易に配線パターンを形成するために。図8に示す様にモールド成型されたフレーム本体80に配線パターン81をプリント形成する際に、フレーム本体80に、配線パターン81の走行経路の段差、及びオーバーハングを解消する表面が平坦なリブ82をフレーム本体80の底板80bから膨出させ、リブ82の表面に配線パターン81を形成して、配線パターン81を補強リブ83の突出部やフレーム本体80の側壁部80aで直角に折り返さない様に構成した立体モールドフレームにおける配線パターンの製造方法が開示されている。
【0004】
上述の構成では、フレーム本体80と一体に設けた端子用舌片84上に配線パターン81(配線)と共に端子パット85(バネ状接触部)が一体に設けられた構成が示されているが、本発明に於いては、上述のバネ状接触部85は弾性を有するバネ状のコンタクトと成し、このバネ状のコンタクトと配線81を一体に枠体や筐体に形成した電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材及びこれら部材を用いた電子機器並びにこれらの製造方法を得ようとするものである。
【0005】
又、電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材として、図9(A)に示す様に合成樹脂で枠状に形成された枠状樹脂基板90に電子デバイス部品としてコネクタ91等を形成し、このコネクタ91のコンタクト92に配線を施す場合には、一般にはFPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)が利用され、又、枠状樹脂基板90の形成と共に配線をインサート成型させて配線を同時に形成したものなども知られている。
【0006】
即ち、従来構成では、図9(B)に示す様に、枠状樹脂基板90の形成と同時にコネクタ91のバネ状のコンタクト(接触子〕92が挿入可能な段部溝93が形成され、この段部溝93内に先端が略コ字状或いはJ字状に折れ曲がったバネ状のコンタクト92を挿入固定した後にバネ状のコンタクト92にFPCやFFCのケーブル94の先端に半田付け95されている。然し、この様な配線にFFCやFPCを用いると、このFPCと電子部品としての例えば、圧電素子の導電化処理や半田付け及びFPCの折り曲げ工程等の後工程が増加し、煩雑となるだけでなく高値となる。
【0007】
又、MID(Molded Interconnection Device)技術を応用して枠状樹脂基板90と電気接続機能配線部材を一体化して形成する構造もよく知られている。この種のMID技術に関連して、特許文献2には、立体成型回路部品の形成方法と立体形成回路部品が記載されている。
【0008】
この立体成型回路部品の形成方法は、合成樹脂を射出成形して立体成形部品を形成し、この立体成形部品をエッチングして下地処理をし、下地処理した領域において、回路パターン形成領域以外にレジストを塗布し、このレジスト膜で画定された回路パターン形成領域に触媒を塗布し、その後、触媒塗布領域に鍍金を施して回路パターンを形成するようになされる。このように回路パターンを形成すると、配線が容易に形成できるというものである。然し、この様なMID技術による回路パターンの成型方法によるとバネ状のコンタクトとMIDで形成した回路パターンを接合させる必要があり、半田付け、超音波接合等の接合方法を選択することになるが、これらの接合工程も全体に対して煩雑な工程を増やし大きなコストを占める課題を有する。
【0009】
上述の図9(A)に示す枠状樹脂基板90の表面を図10(A)に示すが、この図10(A)に於いて、例えば、枠状樹脂基板90の枠部材上に圧電素子101等の電子デバイスを配設する突出部に圧電素子装着部100が設けられているが、この様な電子デバイスと枠部材上に配設される配線102と電気的に接続させる際に、図10(A)のA部拡大断面図は従来では図10(B)乃至図10(D)に示す様に接続されている。即ち、図10(B)では圧電素子101を枠状樹脂基板90の圧電素子装着部100に装着した圧電素子101の接続端子103と配線102を接続するためには上述の様に半田付け等で接合するか、図10(C)に示す様に配線102の先端に弾性を有するバネ状の押圧部104を形成するか、或いは図10(D)に示す様に圧電素子101の接続端子103の先端に弾性を有するバネ状の押圧部105を形成し、配線102と接続させる様に成されていた。
【0010】
更に、図10(A)のB部の一部拡大斜視図の図10(E)に示す様に、配線102を枠状樹脂部材90のコーナなどで所定の角度に折り曲げる必要が生じた場合には配線の折曲部106を得る為の工程を必要とする課題もある。
【特許文献1】特開平5−259608号公報
【特許文献2】特開平8−288621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の様にFFCやFPCを用いた場合これら自体の及びハンドリング工程でコストが高くなるだけでなく工程が煩雑化してしまう。又、MID化する場合はFFCやFPC自体はなくなるものの、MID化自体が煩雑な工程を有し、特に、電気配線のメッキ工程において、比較的大きな体積の立体合成樹脂部材(フレーム)の場合、鍍金工程で長時間を要し、鍍金浴槽には大きな立体合成樹脂部材全体を投入する必要があり、いわゆる“取り数“が悪く、コストが増大し高価となる。又、配線102と圧電素子101を電気的な接合をするために、板バネのような、“自ら弾性的に変位して、接触安定性を得るための接圧を発生する部材”を追加でして接合する必要があり、接触部の接触状態を高めることが難しかった。
【0012】
本発明は叙上の課題を解消するためになされたもので、発明が解決しようとする課題は簡単な工程によってバネ状接触部と配線部とを一体にした電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材を形成する場合に、射出成型時に電気接続機能配線部材は金型に保持され、立体合成樹脂部材成型後は金型から外れる配線部構造及び射出成型金型構造並びに成型時にバネ状接触部を樹脂の混入から保護する目的のバネ状接触部保護金型を有する電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材及びこれを用いた電子機器並びに立体合成樹脂部材の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の本発明の立体合成樹脂部材は、断面形状が中央部に括れ部を有し、この括れ部から上下方向にテーパ部を形成した帯状の電気接続機能配線部材の上下方向のいずれか一方のテーパ部を立体合成樹脂部材内に埋め込み、他方のテーパ部を配線部と成し、電気接続機能配線部材の一端は弾性を保持するように折り曲げてバネ状接触部と成してバネ状接触部と配線部とを一体に形成したものである。
【0014】
第2の本発明の電子機器は、断面形状は中央部に括れ部を有し、この括れ部から上下方向にテーパ部を形成した帯状の電気接続機能配線部材の上下方向のいずれか一方のテーパ部を立体合成樹脂部材内に埋め込み、他方のテーパ部を配線部と成し、電気接続機能配線部材の一端は弾性を保持するように折り曲げてバネ状接触部と成してバネ状接触部と配線部とを一体に形成した立体合成樹脂部材を用い、バネ状接触部に設けたコネクタを介し配線部の所定位置に配した電子デバイスを駆動する様に成したものである。
【0015】
第3の本発明の立体合成樹脂部材の製造方法は、バネ状接触部と配線部とを一体に所定の形状に形成した断面形状が中央部に括れ部を有し、この括れ部から上下方向にテーパ部を形成した帯状の電気接続機能配線部材の上下方向のいずれか一方のテーパ部を射出成型機の第1の射出成型金型の内壁に保持する工程と、第2の射出成型金型の型締め後に合成樹脂を第1及び第2の射出成型金型内に射出後に立体合成樹脂部材を成型する工程と、第2の射出成型金型の型開き後に電気接続機能配線部材の一方のテーパ部は第1の射出成型金型より離脱し、他方のテーパ部は立体合成樹脂部材に保持され、立体合成樹脂部材を第2の射出成型金型から取り出す工程とより成るものである。
【0016】
第4の本発明の立体合成樹脂部材の製造方法は、バネ状接触部と配線部とを一体に所定の形状に形成した断面形状が中央部に括れ部を有し、この括れ部から上下方向にテーパ部を形成した帯状の電気接続機能配線部材の上下方向のいずれか一方のテーパ部を射出成型機の第1の射出成型金型の内壁に保持する工程と、帯状の電気接続機能配線部材のバネ状接触部を保護するためのバネ状接触部保護金型又は/及び第2の射出成型金型を第1の射出成型金型内に装着する工程と、第2の射出成型金型の型締め後に合成樹脂を第1及び第2の射出成型金型内に射出後に前記立体合成樹脂部材を成型する工程と、バネ状接触部保護金型を型開きする工程と、第2の射出成型金型の型開き後に電気接続機能配線部材の一方のテーパ部は第1の射出成型金型より離脱し、電気接続機能配線部材の他方のテーパ部は立体合成樹脂部材に保持され、立体合成樹脂部材を第2の射出成型金型から取り出す工程とより成るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材及びこれを用いた電子機器並びに立体合成樹脂部材の製造方法によれば、MIDやFPC、FFCを採用せずにバネ状接触部と配線部とを一体にした電気接続機能配線部材を用いることで、製造工程数が極めて簡略化され、配線部とバネ接触部の接合工程が省略され、組み立て工程のみで立体合成樹脂部材を成型可能となり信頼性の向上した廉価な立体合成樹脂部材及びこれを用いた電子機器並びに立体合成樹脂部材の製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の1形態例の立体合成樹脂部材及びこれを用いた電子機器並びに立体合成樹脂部材の製造方法を図1乃至図7により詳記する。図1は、本発明の立体合成樹脂部材の形成方法説明用の斜視図、図2(A)乃至(F)は,本発明の電気接続機能配線部材の製作工程及び金型への挿入方法を説明するための一部斜視図、図3(A)は本発明の電気接続機能配線部材の入出力コネクタ部への装着状態を説明するための要部斜視図、図4(A)乃至図4(D)は本発明の電気接続機能配線部材を金型に装着し、立体合成樹脂部材を形成する工程を説明するための側断面図、図5は本発明の立体合成樹脂部材成型時に電気接続機能配線部材のバネ接触部を保護するためのバネ状接触部保護金型説明用の斜視図、図6は図5と同様のバネ状接触部保護金型の詳細を示す説明図、図7は本発明の立体合成樹脂部材部材を電子機器に適用したタッチパネル表示装置の分解斜視図である。
【0019】
図1乃至図7において、図1乃至図6を説明するに、先だち図7により本発明の立体合成樹脂部材が用いられる電子機器としてのタッチパネル付表示装置の全体的構成を説明する。
【0020】
図7(A)及び図7(B)に於いて、図7(A)はタッチパネル付表示装置の組み立て状態図、図7(B)はタッチパネル付表示装置の分解斜視図であり、図4(A)に於いて、70は全体としてタッチパネル付表示装置(以下LCD「液晶表示装置」と記す)を示すものであり、額縁状のベゼル71の下端には枠状のタッチプレート72が嵌め込まれ、更に、タッチプレート72の下端には図9で説明したと同様の枠型の枠状樹脂基板90が配設されている。この枠状樹脂基板90は熱可塑性合成樹脂或いは熱硬化性合成樹脂によってトランスファ成形法あるいは射出成形法で形成されている
【0021】
上述の枠状樹脂基板90の直方形の枠体を構成する長手方向の桁部材75aの略中央位置には圧電素子101が挿入されて保持される圧電素子装着部100が設けられ、桁部材75aの手前側には入出力用のコネクタ91が形成されている。枠状樹脂基板90の枠体を構成する短辺方向の梁部材75b及び桁部材75aの上面には図2(A)乃至(F)で後述する入出力用コネクタ91と圧電素子装着部100に装着した圧電素子101間を接続する電気接続機能配線部材102Aが敷設されている。圧電素子101は圧電素子装着部100上に載置され、図10(C)で説明したと同様に圧電素子101から導出した接続端子103上にバネ状接触部と配線部とを一体にした電気接続機能配線部材102Aのバネ接触部を押圧接触させている。この枠状樹脂基板90に下端には更に、LCDモジュール79aが配設されている。79bはLCDモジュール79aの底面を覆う底板である。
【0022】
上述の様な各部品を組み上げたLCD70は電子機器の本体側の制御回路を介して入出力用のコネクタ91に所定の入力電圧が供給されて圧電素子101に与えられる。よって、この圧電素子101からの電圧出力に応じてタッチパネル72を変位させることで、タッチパネル72を操作しているユーザの指先には圧電素子101の変位感触を与えることが出来る様に成されている。
【0023】
上記した枠状樹脂基板90をLCDモジュール79aの下方向から視た斜視図が、従来例として説明した図9(A)及び図9(B)に示されている様に段部溝93内にコネクタ91のコンタクト92が挿入され、この段部溝93内に先端が略コ字状或いはJ字状に折れ曲がったコンタクト(バネ状接触部)92を挿入固定した後にFPCやFFCのケーブル94の先端に半田付けされている。
【0024】
本発明では上記した、電気接続機能配線部材102Aや枠状樹脂基板90を簡単に形成するように成したものである。先ず、図2によって電気接続機能配線部材102Aの構成を説明する。図2(A)に示す様に電気接続機能配線部材102Aは燐青銅やベリリュウム銅等のバネ用金属を引抜方法等で図2(A)及び図2(E)に示す様な断面形状の帯状体23を所定の長さLに形成する。即ち、断面形状は中央部に括れ部20を有し、この括れ部20から上下方向にテーパ部21,22を形成した帯状体23の電気接続機能配線部材102Aを引抜形成する。
【0025】
次に、図2(B)に示す様に立体合成樹脂部材となる枠状樹脂基板90に引き回す配線の形状に合うように所定の長さに切断する。更にこの帯状体23の先端部をプレス機で板バネ形状の湾曲部24を形成して所定の弾性力を付与するアニール等を施し、意図する配線形状に折り曲げて(手でも機械加工でもよい)折曲部25を構成し枠状樹脂基板90に配設する所望の配線部及びバネ接触部を有する電気接続機能配線部材102Aを形成する。
【0026】
図2(C)は図2(B)のD部拡大図であり、湾曲部24は図2(E)に示す様に帯状体23に段部25を形成し、この段部26に湾曲部24を形成しても良い。図3は上述で説明した電気接続機能配線部材102Aを枠状樹脂基板90の梁部材75bやコネクタ91に配設する状態を示す要部の概念図であり、実際には図9で説明した様に枠状樹脂基板90に予め配線用の溝が形成されているものではなく、図3の破線で示す部分26aに電気接続機能配線部材102Aの帯状体23が射出成形と同時に形成される様に成されている。
【0027】
図2(F)は射出成形機の例えば、固定金型27の係止溝29に電気接続機能配線部材102Aの下テーパ部22を係止溝29内に挿入し装着保持する様に成したもので、この構成では電気接続機能配線部材102Aの保持部28を構成する下テーパ部22が帯状体23の所定の一部にのみ配設した場合を示しているが固定金型27に形成した係止溝29の経路の全ての範囲に挿入されている。即ち、電気接続機能配線部材102Aの上下方向のいずれか一方のテーパ部21を枠状樹脂基板90内に埋め込み、他方のテーパ部22を固定金型27の係止溝29に係止し、固定金型27の係止溝29から離脱させた下部テーパ部22を配線部と成し、電気接続機能配線部材102Aの一端又は両端は弾性を保持するように折り曲げてバネ状接触部と成してバネ状接触部と該配線部とを一体にした電気接続機能配線部材102A射出形成することで立体合成樹脂部材(枠状樹脂基板90)を形成したものである。
【0028】
以下、図1及び図4(A)乃至図4(D)によって、立体合成樹脂部材(枠状樹脂基板90)の形成方法を詳記する。図1は図7で説明したと同様の枠状樹脂基板90を形成するための略線的な射出成形機の斜視図である。図Iに於いて、27は図2(F)で説明したと同様の固定金型であり、形成しようとする枠状樹脂基板90の外枠形状と同様の雌型27aを形成すると共に図2(F)で説明したように枠状樹脂基板90に配設される配線部には電気接続機能配線部材102Aの上下方向のいずれか一方のテーパ部22と係止する図1には示していないが係止溝29〔図4(B)参照〕が形成されている。
【0029】
102Aは図2(A)で説明したと同様の電気接続機能配線部材であり、燐青銅やベリリュウム銅等のバネ用金属を引抜方法等で図2(A)及び図2(E)に示す様な断面形状の帯状体23に形成する。即ち、断面形状は中央部に括れ部20を有し、この括れ部20から上下方向にテーパ部21,22を形成した帯状体23の電気接続機能配線部材102Aを引抜形成すると共に所定形状に折曲部25を形成してバネ部となる湾曲部24を形成する。
【0030】
1は後述するが電気接続機能配線部材102Aのバネ部を構成する湾曲部24を射出成型時に保護する為のバネ接触部保護金型Aであり、固定金型27に装着される。2は同様のバネ接触部保護金型Bであり、このバネ接触部保護金型Bは後述するも可動金型3に装着される、可動金型Bには図1に示す様に枠状樹脂基板90が形成可能な略方形状の雄型2a及び圧電素子装着部100の凹部を形成するための矩形状の雄型2bが設けられている。
【0031】
可動金型3は略方形状のステージ4上に載置されている。ステージ4はベース6上に配設され可動金型3はベース6から植立したイジェクトピン5により固定金型27の下面位置まで移動し、例えば、図4(C)の様に可動金型3に形成した射出孔40より金型内に合成樹脂41を注入し枠状樹脂基板90を形成するように成されている。
【0032】
この枠状樹脂基板90の材料としては、射出成型が可能で射出成型の温度に耐えるものであれば、特に指定はなく、枠状樹脂基坂90自体の機械的強度の観点から、例えば、ABS、PC、PC+ABS等の熱可塑性或いは熱硬化性合成樹脂を用いることが出来る。
【0033】
次に枠状樹脂基板90の形成時に電気接続機能配線部材102Aを一体に形成する方法を図4(A)乃至図4(D)によって説明する。図4(A)乃至図4(D)に於いて、図4(A)は電気接続機能配線部材102Aの図2(E)に示すと同様の側断面図を示し、断面形状は中央部に括れ部20を有し、この括れ部20から上下方向にテーパ部21,22を形成した帯状体23の電気接続機能配線部材102Aを引抜形成すると共に帯状体23の両端部に所定形状に折曲部25及びバネ部となる湾曲部24が形成されている。
【0034】
この様な電気接続機能配線部材102Aの下方テーパ部21を固定金型27に形成した係止溝29内に係止する様に挿入固定する。即ち、固定金型27の係止溝29は上方が狭く下方が広くなるように側面がテーパ状に成された溝となされ、この係止溝29内に下方テーパ部21が嵌り込む様に成されている。
【0035】
固定金型27に固定した電気接続機能配線部材102Aに可動金型3を図4(C)の矢印D方向に移動させ、可動金型3に形成した射出孔40から合成樹脂41を注入し、枠状樹脂基板90を形成する。この場合、射出成型用の固定金型27の係止溝29の内壁に、板バネ(湾曲部)を有する電気接続機能配線部材102Aが機械的に保持されており、射出成型時の合成樹脂41の流れ込みに対して安定に固定金型27に保持されている。射出成型冷却後に電気接続機能配線部材102Aの上テーパ部21は合成樹脂41に完全に保持され、型開き時においては、電気接続機能配線部材102Aの上テーパ部21は合成樹脂41の枠状樹脂基板90に保持されるので射出成型用の可動金型3を図(C)の様に矢印E方向に上動させることで固定金型27の係止溝29から電気接続機能配線部材102Aの下テーパ部22は離脱可能となり、上テーパ部22は合成樹脂41に保持されているので、可動金型3は成型した枠状樹脂基板90を載置挿脱可能となされる。その結果、図2(D)に示すような枠状樹脂基板90が形成される。
【0036】
次に図5及び図6(A)、(B)を用いて本発明のI及び2に示すバネ接触部保護金型A及びBの挿入方法を説明する。図5は本発明のバネ接触部保護金型B(2)の装着方法を示した要部の斜視図、図6(A)及び図6(B)は本発明のバネ接触部保護金型A(1)の装着方法を示した要部の斜視図である。
【0037】
図5に於いて3は図1に示すと同様の可動金型3の一部を示す拡大斜視図であり、図3で説明したコネクタ91部分を示し、この部分には雄型2aの後面に型挿入溝50が形成され、2で示すバネ接触部保護金型Bが挿入される。このバネ接触部保護金型Bは電気接続機能配線部材102Aの帯状体23を保持する係止部51が形成され、板バネ形状となった湾曲部24に合成樹脂が入り込まないように、この湾曲部24を覆う様にカバー部52を有する構造とされている。
【0038】
上述のバネ接触部保護金型Bを可動金型3の型挿入溝50に装着した状態で型締め後に射出成型することで電気接続機能配線部材102Aの湾曲部24は合成樹脂の挿入が阻止されて湾曲部23はバネの弾性を保持可能となる。
【0039】
図6(A)、(B)に示す本発明のバネ接触部保護金型Aも上述したバネ接触部保護金型Bと同様の構成と成されている。バネ接触部保護金型Aの場合は図1に示す様に固定金型27の下方から挿入される。図6(A)は固定金型27の下方の切り溝60を介してバネ接触部保護金型Aを矢印F方向に挿入する状態を示している。図6(B)に1で示す様にバネ接触部保護金型Aはイジェクトピン61に沿って矢印F方向に上動し、バネ接触部保護金型A(1)の係止部51で停止した状態で射出成型される様に成される。
【0040】
本発明の電気接続機能配線部材102は上述の様に先端部をプレス機で曲げたあと帯状体23全体を射出成機の金型の内壁に保持させるが、板バネ形状となった湾曲部24の端子の(一般的には両端)部分に樹脂が入り込まないように、追加の金型が存在することで電気接触部の信頼性が大幅に向上する
【0041】
本発明の電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材及びこれを用いた電子機器並びに立体合成樹脂部材の製造方法によれば、射出成型金型の内壁に電気接続機能配線部材、が機械的に保持されており、射出成型時の樹脂の流れ込みに対して、電気接続機能配線部材の保持を確保し、尚且つ射出成型後においては、樹脂に保持されることにより射出成型金型からの保持の解除を可能とせしめるものが容易に得られる。
【0042】
又。本発明の電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材及びこれを用いた電子機器並びに立体合成樹脂部材の製造方法によれば、電気接続機能配線部材を打ち抜かず、単純な引き抜き帯状体の配線を任意の長さに切断し、先端部をプレス機で板バネ形状湾曲状に形成し、所望の電気配線及び電気接続部を形成するこが出来るので。MIDフレームを採用せずFPCやFFCの廃止を実現することによって、安価に電気配線機能付き樹脂筺体や枠状樹脂部材等の立体合成樹脂部材を製造することが可能となる。
【0043】
更に本発明の電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材及びこれを用いた電子機器並びに立体合成樹脂部材の製造方法によれば、接合工程がなく、アッセンブリの組み立てのみで部品の電気的接続が完結する等の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、本例では電子機器としてタッチパネル付LCDについて説明したが、一般の記録再生装置、携帯用電話機、TV受像機、デジタルカメラ等の筐体、樹脂基板、電子デバイ部品に等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材の製造方法の一形態例を示す要部の斜視図である。
【図2】本発明の電気接続機能配線部材の製造方法の工程を説明する斜視図である。
【図3】本発明の立体合成樹脂部材配線の要部の電気接続機能配線部材の配設方法を説明するための要部の斜視図である。
【図4】本発明の電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材の製造方法を説明するための要部の側断面図である。
【図5】本発明の電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材の製造方法を説明するための要部の斜視図(I)である。
【図6】本発明の電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材の製造方法を説明するための要部の斜視図(II)である。
【図7】本発明の電気接続機能配線部材を有する立体合成樹脂部材を用いた電子機器の分解斜視図である。
【図8】従来の立体モールドフレームの配線パターンを示要部の斜視図である。
【図9】従来の電子デバイス及びにその製造方法を示す枠状樹脂基板とコネクタ部の斜視図である。
【図10】図9Aに示す枠状樹脂基板の表面図と10AのA部及びB部の拡大断面図及並びに拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1…バネ接触部保護金型A、2…バネ接触部保護金型B、3…可動金型、4…ステージ、5…イジェクトピン、6…ベース、20…括れ部、21…上テーパ部、22…下テーパ部、23…帯状体、24…湾曲部、26…段部、26a…配線、29…係止部、40…射出孔、41…合成樹脂、50…型挿入溝、51…係止部、60…切り溝、61…イジェクトピン、70…タッチパネル付表示装置、71…ベセル、72…タッチプレート、49a…LCDモジュール、80…フレーム本体、85…端子パット、83…下型、90…枠状樹脂基板、91…コネクタ、102A…電気接続機能配線部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状は中央部に括れ部を有し、該括れ部から上下方向にテーパ部を形成した帯状の電気接続機能配線部材の上下方向のいずれか一方の該テーパ部を立体合成樹脂部材内に埋め込み、他方の該テーパ部を配線部と成し、該電気接続機能配線部材の一端は弾性を保持するように折り曲げてバネ状接触部と成して該バネ状接触部と該配線部とを一体に形成したことをと特徴とする立体合成樹脂部材。
【請求項2】
前記電気接続機能配線部材の前記配線部は前記立体合成樹脂部材に形成される配線路に沿って折り曲げ形成したことを特徴とする請求項1記載の立体合成樹脂部材。
【請求項3】
前記立体合成樹脂部材内に埋め込む前記テーパ部を前記帯状の前記電気接続機能配線部材の長手方向の所定位置にのみ形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の立体合成樹脂部材。
【請求項4】
断面形状は中央部に括れ部を有し、該括れ部から上下方向にテーパ部を形成した帯状の電気接続機能配線部材の上下方向のいずれか一方の該テーパ部を立体合成樹脂部材内に埋め込み、他方の該テーパ部を配線部と成し、該電気接続機能配線部材の一端は弾性を保持するように折り曲げてバネ状接触部と成して該バネ状接触部と該配線部とを一体に形成した立体合成樹脂部材を用い、該バネ状接触部に設けたコネクタを介し該配線部の所定位置に配した電子デバイスを駆動する様に成したことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
前記電気接続機能配線部材の前記配線部は前記立体合成樹脂部材に形成される配線路に沿って折り曲げ形成したことを特徴とする請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
前記立体合成樹脂部材の上方に前記電子デバイス及びタッチプレートを配設し、該立体合成樹脂部材の下方に液晶表示モジュールを配設して成ることを特徴とする請求項4記載の電子機器。
【請求項7】
バネ状接触部と配線部とを一体に所定の形状に形成した断面形状が中央部に括れ部を有し、該括れ部から上下方向にテーパ部を形成した帯状の電気接続機能配線部材の上下方向のいずれか一方のテーパ部を射出成型機の第1の射出成型金型の内壁に保持する工程と、
第2の射出成型金型の型締め後に合成樹脂を第1及び第2の射出成型金型内に射出後に前記立体合成樹脂部材を成型する工程と、
前記第2の射出成型金型の型開き後に前記電気接続機能配線部材の前記一方のテーパ部は前記第1の射出成型金型より離脱し、前記電気接続機能配線部材の他方のテーパ部は立体合成樹脂部材に保持され、該立体合成樹脂部材を該第2の射出成型金型から取り出す工程とより成ることを特徴とする立体合成樹脂部材の製造方法。
【請求項8】
前記帯状の電気接続機能配線部材の前記配線部を所定の長さに切断する工程と、
前記電気接続機能配線部材の先端部をバネ形状にプレスする工程と、
前記配線部とバネ形状が形成された前記バネ接触部が一体に成された帯状の電気接続機能配線部材を意図する配線形状に曲げる工程と、
より成ることを特徴とする請求項7記載の立体合成樹脂部材の製造方法。
【請求項9】
バネ状接触部と配線部とを一体に所定の形状に形成した断面形状が中央部に括れ部を有し、該括れ部から上下方向にテーパ部を形成した帯状の電気接続機能配線部材の上下方向のいずれか一方のテーパ部を射出成型機の第1の射出成型金型又は/及び第2の射出成型金型の内壁に保持する工程と、
前記帯状の電気接続機能配線部材の前記バネ状接触部を保護するためのバネ状接触部保護金型を前記第1の射出成型金型内に装着する工程と、
第2の射出成型金型の型締め後に合成樹脂を第1及び第2の射出成型金型内に射出後に前記立体合成樹脂部材を成型する工程と、
前記バネ状接触部保護金型を型開きする工程と、
前記第2の射出成型金型の型開き後に前記電気接続機能配線部材の前記一方のテーパ部は前記第1の射出成型金型より離脱し、前記電気接続機能配線部材の他方のテーパ部は立体合成樹脂部材に保持され、該立体合成樹脂部材を該第2の射出成型金型から取り出す工程とより成ることを特徴とする立体合成樹脂部材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−173350(P2006−173350A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363573(P2004−363573)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】