説明

電気機器の制御基板

【課題】プリント基板にチョークコイルを容易、かつ確実に固定した電気機器の制御基板を提供することを目的とする。
【解決手段】プリント基板5にチョークコイル1を装着した電気機器の制御基板において、このチョークコイル1にはコイル2を巻回したコア3の略中央部分に貫通孔部4を、プリント基板5の前記貫通孔部4と対向する部分には同貫通孔部より径小な孔6をそれぞれ設け、貫通孔部4および孔6に挿通させた締結部材8でプリント基板5にチョークコイル1を固定するようにし、かつ前記締結部材8は、一端に貫通孔部4の上部孔縁に当接するフランジ9を、他端にプリント基板5の孔6の下側孔縁に係合する変形自在な係合部10を一体的に有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板にチョークコイルを固定した電気機器の制御基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプリント基板にチョークコイルを固定させるためには、チョークコイルの端子をプリント基板の端子孔に挿通したの半田付けしていた(例えば特許文献1参照)。この際チョークコイルとプリント基板の間にシリコンパテ等の耐熱接着剤を塗り、このシリコンパテが固まることにより、チョークコイルとプリント基板を固定するものが見られる。
【0003】
図9はこのような耐熱接着剤を用いた例を示し、同図に示すように、絶縁手段を有したコア21にコイル22を巻回させたチョークコイル23をプリント基板24上に配置した後、コイル22を引き出し、プリント基板24に挿通して半田付けし、次いで、チョークコイル23とプリント基板24の間にシリコンパテ25を塗り、これを固化させることにより両者を固定させていた。
【特許文献1】実開平06−50327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、プリント基板に貫通させている箇所が2箇所であるため、半田付けを行うまでは不安定であり、この状態でシリコンパテを使用すると、それが固まる時間までに位置がずれてしまう可能性がある。
【0005】
高圧部品を使用している同一プリント基板上にチョークコイルを設置する場合、上記のようにチョークコイルの位置的ずれは高圧部品との絶縁距離が保てなくなることにつながり、短絡などの重大なトラブルを生起する課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、容易にプリント基板にチョークコイルを固定させる電気機器の制御基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するため、本発明の電気機器の制御基板は、プリント基板と、前記プリント基板に装着したチョークコイルとを備え、前記チョークコイルにはコイルを巻回したコアの略中央部分に貫通孔部を、前記プリント基板の前記貫通孔部と対向する部分には同貫通孔部より径小な孔をそれぞれ設け、前記貫通孔部および孔に挿通させた締結部材で前記プリント基板にチョークコイルを固定するようにし、かつ前記締結部材は、一端に貫通孔部の上部孔縁に当接するフランジを、他端にプリント基板の孔の下側孔縁に係合する変形自在な係合部を一体的に有するものとしたので、チョークコイルとプリント基板を容易に、しかも確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、チョークコイルとプリント基板を容易に、しかも確実に固定することができ、制御基板としての性能を良好に発揮させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、プリント基板と、前記プリント基板に装着したチョークコイルとを備え
、前記チョークコイルにはコイルを巻回したコアの略中央部分に貫通孔部を、前記プリント基板の前記貫通孔部と対向する部分には同貫通孔部より径小な孔をそれぞれ設け、前記貫通孔部および孔に挿通させた締結部材で前記プリント基板にチョークコイルを固定するようにし、かつ前記締結部材は、一端に貫通孔部の上部孔縁に当接するフランジを、他端にプリント基板の孔の下側孔縁に係合する変形自在な係合部を一体的に有するものとした。
【0010】
第2の発明は、前記第1の発明において、締結部材の係合部は、割溝と複数の爪とから構成したものである。
【0011】
第3の発明は、前記第1の発明において、締結部材をプラスチックスで構成するとともに、係合部は涙滴状としてその長手方向途中径をプリント基板の孔より径大としたものである。
【0012】
したがって、爪の変形させたり、径を圧縮減径するなどして締結部材の係合部を貫通孔部より径小に形成したプリント基板の孔に通すことのみで容易に、かつ確実に、チョークコイルを固定することができるものである。
【0013】
第4の発明は、前記第1の発明において、チョークコイルの貫通孔部はコイルを巻回したコアの中央孔で構成したものであり、第5の発明は、前記第1の発明において、チョークコイルはコアとコアを覆うコアカバーとコアカバーに巻回したコイルとを備え、このコアカバーの中央に筒状部を設けて、これを貫通孔部に設定した。
【0014】
第6の発明は、プリント基板と、前記プリント基板に装着したチョークコイルとを備え、前記チョークコイルにはコイルを巻回したコアの略中央部分に貫通孔部を、前記プリント基板の前記貫通孔部と対向する部分には同貫通孔部より径小な孔をそれぞれ設け、前記貫通孔部および孔に挿通させた締結部材で前記プリント基板にチョークコイルを固定するようにし、かつ前記締結部材は、一端に貫通孔部の上部孔縁当接するフランジを、他端にプリント基板の孔の下側孔縁に熱溶着される熱溶着部を一体的に有するものとした。
【0015】
第7の発明は、プリント基板と、前記プリント基板に装着したチョークコイルとを備え、前記チョークコイルにはコイルを巻回したコアの略中央部分に貫通孔部を、前記プリント基板の前記貫通孔部と対向する部分には同貫通孔部より径小な孔をそれぞれ設け、前記貫通孔部および孔に挿通させた締結部材で前記プリント基板にチョークコイルを固定するようにし、かつ前記締結部材は、貫通孔部と略同一外径の径大部を一方に、孔と略同一外径の径小部を他方にそれぞれ有し、前記貫通孔部および孔に径大部と径小部を圧入して摩擦係合力で前記プリント基板にチョークコイルを固定するようにした。
【0016】
第8の発明は、前記第1、6,7の発明において、チョークコイルは、コアと、このコアを覆うコアカバーと、コアカバーに巻回したコイルとを備え、前記コアとコアカバーにスリットを形成した。
【0017】
第9の発明は、前記第1、6,7の発明において、チョークコイルはコアに巻回したコイルの端部をプリント基板に貫通させて半田付けしたものである。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1,2において、チョークコイル1のコイル2を巻回したコア3の略中央部分に貫通
孔部4が形成してあり、また、このチョークコイル1が取着されるプリント基板5には、前記貫通孔部4と対応し、かつそれよりも径小な孔6が設けてある。
【0020】
前記コイル2の両端はプリント基板5を貫通してその裏側の所定箇所に半田7を介して接続されている。
【0021】
前記チョークコイル1の貫通孔部4およびプリント基板5の孔6を貫通して両者を固定する締結部材8は、プラスチックスより形成されていて、一端に貫通孔部4よりも径大なフランジ9が、他端にその自由状態時に孔6よりも径大となる係合部10がそれぞれ一体的に成形してある。
【0022】
前記係合部10は割溝11を間において複数の爪12を配列した構成を採っており、爪12を弾性に抗して内側へ変形することにより、それら爪12の外側を結ぶ外径を孔6よりも小さくできるようにしている。
【0023】
したがって、チョークコイル1の貫通孔部4およびプリント基板5の孔6に締結部材8を挿入すると、一旦係合部10は減径状態でそれら貫通孔部4と孔6を通過し、最終的に孔6を通過した時点で元の外径に復帰してプリント基板5の裏側で孔6の孔縁に係合することとなる。
【0024】
一方、そのフランジ9がチョークコイル1の上面で、かつ貫通孔部4の孔部縁に当接する。
【0025】
その結果、チョークコイル1はプリント基板5に対して押圧された状態で固定されるものである。
【0026】
このようにチョークコイル1とプリント基板5を締結部材8のみで容易に、しかも確実に固定することができるものである。そして、プリント基板5に対し水平にチョークコイル1がずれることなく設置できるため、同チョークコイル1をプリント基板5に置く位置を決めやすい。
【0027】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2を示し、締結部材8のを涙滴形状とし、その途中の径をプリント基板5の孔6よりも大きくしたものである。
【0028】
なお、図1と同作用をする構成については同一符号を付し、説明は実施の形態1のものを援用する。
【0029】
したがって、本実施の形態では係合部10aを一時的に圧縮して減径し、孔6を通過させるだけで、チョークコイル1をプリント基板5に固定できるものである。
【0030】
(実施の形態3)
図4,5は実施の形態3を示し、コア3を覆うコアカバー13にコイル2を巻回しているチョークコイル1において、コアカバー13の筒状部を中央貫通孔部4として、締結部材8を挿通させるたものである。
【0031】
なお、図1,2と同一作用を行う構成については同一符号を付し、説明は実施の形態1のものを援用した。
【0032】
この実施の形態3でも前記した実施の形態1と同様にチョークコイル1をプリント基板
5に容易、かつ確実に固定することができる。
【0033】
(実施の形態4)
図6に示す実施の形態4は、締結部材8の先端を熱溶融して係合部10bを形成するようにしたものである。
【0034】
なお、図1と同一作用を行う構成については同一符号を付し、説明は実施の形態1のものを援用した。
【0035】
すなわち、本実施の形態では締結部材8を長めに形成して先端がプリント基板5の孔6より突出するようにし、この突出部分を熱溶融して径大となし、係合部10bとしたものである。
【0036】
この実施の形態6でも前記した実施の形態5と同様にチョークコイル1をプリント基板5に容易、かつ確実に固定することができる。
【0037】
(実施の形態5)
図7に示す実施の形態5は、締結部材8の先端にプリント基板5の孔6と略同径の係合部10cを形成するとともに、締結部材8そのものの外径をチョークコイル1の貫通孔部4と略同径としたものである。
【0038】
したがって、締結部材8をチョークコイル1の貫通孔部4に圧入すると同時に係合部10cを孔6に圧入することで、摩擦作用力でプリント基板5にチョークコイル1が固定される。
【0039】
(実施の形態6)
図8は実施の形態6を示し、チョークコイル1の種類を変更したものである。つまり、コア3とコアカバー13にスリット14を設けた場合である。
【0040】
(実施の形態7)
図9は実施の形態7を示し、コア3にコイル2を巻回したチョークコイル1の形状においても実施形態1と同様にチョークコイル1とプリント基板5の固定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明にかかる電気機器の制御基板は、チョークコイルの貫通孔部に挿通した締結部材をプリント基板の孔に係合させることにより、チョークコイルとプリント基板を容易に位置がずれることなく固定することが可能であるため、各種電気機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1における電気機器の制御基板の縦断面図
【図2】同横断面図
【図3】本発明の実施の形態2における電気機器の制御基板の縦断面図
【図4】本発明の実施の形態3における電気機器の制御基板の縦断面図
【図5】同横断面図
【図6】(a)本発明の実施の形態4における電気機器の制御基板の製造時の断面図、(b)完成時の断面図
【図7】本発明の実施の形態5における電気機器の制御基板の縦断面図
【図8】本発明の実施の形態6における電気機器の制御基板の横断面図
【図9】本発明の実施の形態7における電気機器の制御基板の斜視図
【図10】従来の電気器の制御基板を示す断面図
【符号の説明】
【0043】
1 チョークコイル
2 コイル
3 コア
4 貫通孔部
5 プリント基板
6 孔
8 締結部材
9 フランジ
10,10a,10b,10 係合部
11 割溝
12 爪
13 コアカバー
14 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板と、前記プリント基板に装着したチョークコイルとを備え、前記チョークコイルにはコイルを巻回したコアの略中央部分に貫通孔部を、前記プリント基板の前記貫通孔部と対向する部分には同貫通孔部より径小な孔をそれぞれ設け、前記貫通孔部および孔に挿通させた締結部材で前記プリント基板にチョークコイルを固定するようにし、かつ前記締結部材は、一端に貫通孔部の上部孔縁に当接するフランジを、他端にプリント基板の孔の下側孔縁に係合する変形自在な係合部を一体的に有する電気機器の制御基板。
【請求項2】
締結部材の係合部は、割溝と複数の爪とから構成した請求項1記載の電気機器の制御基板。
【請求項3】
締結部材をプラスチックスで構成するとともに、係合部は涙滴状としてその長手方向途中径をプリント基板の孔より径大とした請求項1記載の電気機器の制御基板。
【請求項4】
チョークコイルの貫通孔部はコイルを巻回したコアの中央孔で構成した請求項1記載の電気機器の制御基板。
【請求項5】
チョークコイルはコアとコアを覆うコアカバーとコアカバーに巻回したコイルとを備え、このコアカバーの中央に筒状部を設けて、これを貫通孔部に設定した請求項1記載の電気機器の制御基板。
【請求項6】
プリント基板と、前記プリント基板に装着したチョークコイルとを備え、前記チョークコイルにはコイルを巻回したコアの略中央部分に貫通孔部を、前記プリント基板の前記貫通孔部と対向する部分には同貫通孔部より径小な孔をそれぞれ設け、前記貫通孔部および孔に挿通させた締結部材で前記プリント基板にチョークコイルを固定するようにし、かつ前記締結部材は、一端に貫通孔部の上部孔縁当接するフランジを、他端にプリント基板の孔の下側孔縁に熱溶着される熱溶着部を一体的に有する電気機器の制御基板。
【請求項7】
プリント基板と、前記プリント基板に装着したチョークコイルとを備え、前記チョークコイルにはコイルを巻回したコアの略中央部分に貫通孔部を、前記プリント基板の前記貫通孔部と対向する部分には同貫通孔部より径小な孔をそれぞれ設け、前記貫通孔部および孔に挿通させた締結部材で前記プリント基板にチョークコイルを固定するようにし、かつ前記締結部材は、貫通孔部と略同一外径の径大部を一方に、孔と略同一外径の径小部を他方にそれぞれ有し、前記貫通孔部および孔に径大部と径小部を圧入して摩擦係合力で前記プリント基板にチョークコイルを固定するようにした電気機器の制御基板。
【請求項8】
チョークコイルは、コアと、このコアを覆うコアカバーと、コアカバーに巻回したコイルとを備え、前記コアとコアカバーにスリットを形成した請求項1、6、7いずれか1項記載の電気機器の制御基板。
【請求項9】
チョークコイルはコアに巻回したコイルの端部をプリント基板に貫通させて半田付けした請求項1、6、7いずれか1項記載の電気機器の制御基板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−324434(P2007−324434A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154273(P2006−154273)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】