説明

電気機械における磁気素子の振動モニタリング

【課題】磁気素子を使用する改良された電気機械を提供する。
【解決手段】移動可能な2つの可動部を有し、第1の可動部が電気機械のステータであり、他方の可動部が電気機械のロータである電気機械が記載される。可動部の1つには、動作中電気機械における磁束と相互作用する磁気素子が取り付けられる。さらに、センサが電気機械の振動量を測定するために備えられ、制御ユニットが測定された振動量に基づいて磁気素子の変位を検出するように構成されている。電気機械は、ジェネレータまたはモータであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェネレータやモータなどの電気機械の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械の中には、巻回部がコアスロット内に収容され、コアスロットの開口部がいわゆるウェッジで封止されているものがある。このウェッジ自体は、磁性体でも非磁性体であってもよい。磁性体ウェッジの場合は、所期の機能を提供するように設計された所定の磁気特性を有している。例えば、コア欠損、振動、ジグザグトルク、そして磁化電流を低減するためにそれぞれに対応して形成された磁性体ウェッジが使用される。磁性体ウェッジは、特に誘導機に使用される。
【0003】
しかし、磁性体ウェッジは、高い磁力と高い熱サイクルにさらされる。そのため、磁性体ウェッジは緩みだし、その結果変位したり、スロットから出てしまうことさえある。すると、巻回部の絶縁はもはや保護されず、時間が経つにつれて摩耗し最終的には短絡を引き起こすこともある。このような短絡によって、機械部品の損傷につながる可能性の高い脈動的なトルクが生成されかねない。上記の問題を克服するために、非磁性体ウェッジを使用することが知られている。
【0004】
上記の状況を鑑みて、実質的に上記の問題を一つ以上回避する、または少なくとも抑制する電気機械を提供可能な改良された技術が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、上記の従来技術における問題に鑑み、これを解決すべく改善を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明の次のような電気機械により解決される。すなわち、電気機械は、相対的に移動可能な2つの可動部を備え、該可動部の一方が電気機械のステータを形成し、該可動部の他方が電気機械のロータを形成している。さらに、電気機械は、可動部の1つに取り付けられて電気機械における磁束と相互作用する磁気素子と、電気機械の振動量を測定するセンサと、測定された振動量に基づいて磁気素子の変位を検出する制御ユニットと、を備える。
【0007】
ここで開示された対象の有利な実施形態は、従属請求項によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本明細書に開示された本発明の実施形態に基づく電気機械の概略的な断面図。
【図2】磁気素子の変位がある場合とない場合の、本明細書に開示された主題による電気機械の速度スペクトルを示す図。
【図3】(a)全てのウェッジが電気機械の定位置にある場合の、主励起線が抑圧された、異なる空間次数および周波数に対するエアーギャップ半径方向力のフーリエ変換を示す図、(b)磁性体のウェッジが電気機械から取り除かれた場合の(a)のスペクトルと同様なスペクトルを示す図。
【図4】本明細書に開示された主題の実施形態に基づく方法のデータフローのチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1態様によれば、相対的に移動可能な2つの可動部を含み、該可動部の一方が電気機械のステータを形成し、他方が電気機械のロータを形成している電気機械が提供される。磁気素子は、可動部の1つに取り付けられる。磁気素子は、電気機械の動作中に電気機械における磁束と相互作用する。さらに、第1態様による電気機械は、電気機械の振動量を測定するためのセンサを備える。さらに、電気機械は、測定された振動量に基づいて磁気素子の変位を検出するための制御ユニットを備える。
【0010】
この本発明の態様は、次のような考察に基づいている。すなわち、変位の生じた磁気素子は電気機械における磁気抵抗分布に変化をもたらし、さらに電気機械内部の磁力によって引き起こされる振動にも変化を生じさせるという事実である。従って、電気機械における振動量を測定すれば磁気素子の変位を検出することが可能となる。
【0011】
第1態様においては、1つの磁気素子が参照されているが、当然ながら2つ以上、通常は複数の磁気素子が電気機械に備えられていることは理解されるべきである。
【0012】
本実施形態では、「磁気」との用語には、単に一例を挙げると「磁気的活性材料から生じる」ものも「高透磁率材料から生じる」ものも含まれる。
【0013】
基本的に、ここでは「電気機械における磁束と相互作用する磁気素子」とは、磁気素子が電気機械における磁束に所定の影響を与えるように構成される、および/または、電気機械内に配置されるという実施形態を含む。実施例のいくつかにおいては、「磁束と相互作用する磁気素子」とは、電気機械における磁束を調整、増加、最適化することなどを含む。
【0014】
さらなる実施形態によれば、センサは、電気機械の加速度を測定する加速度計である。例えば、本実施形態によれば、ロータは回転軸の周りを回転し、回転軸と角度を成す方向の加速度を測定するようにセンサが備えられ、角度は0度とは異なっている。例えば、本実施形態によれば、センサは電気機械の半径方向の振動を測定するように備えられている。
【0015】
さらなる実施形態によれば、電気機械は可動部の間にエアーギャップを備え、磁気素子はこのエアーギャップに対向するように配置されている。そのような実施例は、電気機械の磁性体ウェッジの形で提供される磁気素子である。他の実施形態によれば、ここで参照される磁気素子は、電気機械の他の任意の磁気素子であってもよい。
【0016】
さらなる実施形態によれば、磁気素子が取り付けられる可動部の1つは巻回部を有し、磁気素子は巻回部とエアーギャップの間に配置され、従って一実施形態においてはウェッジを形成する。そのような構成により、効率の改善につながり、例えば電気機械のコア欠損が低減する。
【0017】
さらなる実施形態によれば、センサは、振動量スペクトルを提供すべく、複数の周波数に対して振動量を測定するように構成される。そのような実施形態に基づいて、さらなる実施形態によれば、制御ユニットはスペクトルの少なくとも一部分をモニタリングし、振動量が所定の間隔から外れた場合に磁気素子の変位を判定するように構成されている。
【0018】
例えば、本実施形態によれば、所定の間隔は上方境界および下方境界を有し、制御ユニットは、振動量が所定の間隔の下方境界を下回る、および/または、振動量が所定の間隔の上方境界を上回るといったいずれかの場合に、磁気素子が変位していると判定するように構成されている。さらなる実施形態によれば、所定の間隔は半開区間であり、単一の境界のみを有する。例えば、本実施形態によれば、所定の間隔は上方境界を有し、制御ユニットは、測定された振動量が所定の間隔の上方境界を上回った場合に、磁気素子が変位していると判定するように構成されている。さらに、さらなる実施形態によれば、制御ユニットは、振動量が所定の半開区間の下方境界を下回った場合に、磁気素子が変位していると判定するように構成されている。所定の間隔については、振動量の特性に依存して選択してもよいことが理解されるべきである。さらに、所定の間隔は、電気機械の動作の前に、例えば電気機械の製造中に設定されていてもよい。他の実施形態によれば、所定の間隔は、例えば、電気機械の動作パラメータに基づいておよび/または電気機械の測定された振動量に基づいて、電気機械の動作中に決定される。
【0019】
本実施形態によれば、振動量は電気機械の機械振動の平均振幅である。他の実施形態によれば、振動量は電気機械の機械振動のピーク振幅である。さらなる実施形態によれば、振動量は電気機械の機械振動の周波数である。また、電気機械の他の振動量も想定される。例えば、電気機械の機械振動を判定する代わりに、電気振動もしくは機械振動、または、電気振動もしくは機械振動のパラメータを、本発明で意味するところの振動量として使用することもできる。
【0020】
本明細書に開示された主題の第2態様によれば、電気機械の磁気素子の変位を検出する方法が提供される。電気機械は相対的に移動可能な2つの可動部を備え、可動部の一方が電気機械のステータを形成し、可動部の他方が電気機械のロータを形成する。変位を検出される磁気素子は、可動部の1つに取り付けられる。第2態様による方法では、電気機械の振動量を測定し、測定された振動量に基づいて磁気素子の変位を検出する。
【0021】
本明細書に開示された主題の第3態様によれば、電気機械の制御ユニットを操作する方法が提供される。該方法は、電気機械の振動量を示す入力信号を受信するステップと、入力信号に応答して電気機械の磁気素子の変位を検出するステップと、磁気素子の変位の検出に応じて出力信号を提供するステップと、を備える。
【0022】
本明細書に開示された主題の第4態様によれば、入力信号を処理するコンピュータプログラムが提供され、ここで入力信号は電気機械の振動量を示す。コンピュータプログラムは、データプロセッサで実行される場合には、第3態様による方法もしくはその実施形態に基づく方法を制御するように構成されている。
【0023】
本明細書で使用されているように、コンピュータプログラムとの記載は、プログラム素子、および/または、第3態様もしくはその実施形態に基づく方法の動作を統合するためのコンピュータシステムを制御する指示を含む、コンピュータ可読媒体と等価であることを意図している。
【0024】
コンピュータプログラムは、例えば、JAVA、C++のような任意の適切なプログラミング言語を使用したコンピュータ可読命令コードとして実装されていてもよく、コンピュータ可読媒体(リムーバブルディスク、揮発性もしくは不揮発性メモリ、内蔵メモリ/プロセッサなど)に記憶されていてもよい。命令コードは、所期の機能を実行するためのコンピュータもしくは他のプログラマブル機器をプログラムするよう機能する。コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブなど、プログラムをダウンロード可能なネットワークから入手できるものであってもよい。
【0025】
本発明は、それぞれ、ソフトウェアであるコンピュータプログラムの手段によって実現されてもよい。しかし、本発明はそれぞれ、ハードウェアである1つ以上の特定の電子回路手段によって実現されてもよい。さらに、本発明は、ハイブリッド型、すなわちソフトウェアモジュールとハードウェアモジュールとの組み合わせにより実現されてもよい。
【0026】
以下では、電気機械、電気機械の磁気素子の変位を検出する方法、および、制御ユニットの動作方法を参照しつつ、本明細書に開示の主題の実施例が記載される。当然ながら、本明細書で開示されている、主題の異なる態様に関連する特徴の組み合わせも任意に可能であることを指摘しておく。特に、実施形態のいくつかは装置の請求項を参照して記載されるが、一方、他の実施形態は方法の請求項を参照して記載される。しかし、当業者には、上記説明および下記の記載から、特に示されている場合を除き、1つの態様に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる態様または異なる実施形態に関する特徴間での任意の組み合わせもまた推測されるであろう。例えば、装置の請求項の特徴と方法の請求項の特徴との間の組み合わせでさえも、本明細書に開示されていると見なされる。
【実施例】
【0027】
本発明の上述した態様かつ実施形態およびさらなる態様かつ実施形態は、以下に記載される実施例から明らかであり、図面を参照して説明されるが、本発明はそれらによって限定されるものではない。
【0028】
図面は概略を示している。異なる図面において、同様のもしくは同一の構成要素には、同じ参照符号、または、対応する参照符号のうち最初の桁もしくは付記された文字のみが異なっている参照符号が付されている。
【0029】
図1は、本明細書に開示された主題の実施形態に基づく電気機械100の断面図の一部分を示している。電気機械100は、2つの可動部を備え、それらはステータの形式である第1の可動部102およびロータの形式である第2の可動部104である。ロータ104は、矢印106で示されているように、ステータ102に対して移動可能である。ロータは平坦面108を有するように図示されているが、これは図を簡略にするためだけのものであることに注意されたい。通常、全体を見ると、ロータ104は、湾曲状もしくは一般的には球状の面108を有する。同様に、ステータ102も、図1では平面として描かれている湾曲状の内表面110を有する。
【0030】
ステータ102とロータ104の間には、図1に符号112で示されるエアーギャップがある。従って、ロータ104の表面108とステータ102の表面110は、互いに対向しており、エアーギャップ112にも面している。本実施形態によれば、ステータは、ステータに取り付けられている磁気素子114を備える。本実施形態によれば、図1に示すように、ステータはさらにスロット116を有し、その中に電気機械の巻回部118が配置されている。さらに巻回部118と磁気素子114との間に配置されているのは、中間部120である。
【0031】
図1に示すように、本実施形態によれば、磁気素子114は、巻回部118とエアーギャップ112との間に位置している。従って、磁気素子114は、エアーギャップに面しており、さらなる実施形態によればスロット116を封止し、それによって巻回部118を保護する。さらに、いくつかの実施形態においては、磁性体ウェッジとも呼ばれる、適切な磁気特性を有する磁気素子114を備えることによって、電気機械のコア欠損を低減できる。本明細書に開示された主題の実施形態によれば、電気機械100はさらに、電気機械の振動量を測定するためのセンサ122を備える。図1に示すように、本実施形態によれば、センサは電気機械100の加速度を測定する加速度計である。
【0032】
センサ122によって測定された加速度は、例えば、電気機械の振動によるものであることもある。このような(付加的な)電気機械の加速/振動は、磁気素子114が欠損すると生じてくる。磁気素子114の緩みによりエアーギャップに沿った磁気抵抗分布が変化し、従って、磁束密度の高調波成分および軸方向の磁気振動の高調波成分が変化する。このようにして、外部の加速度計122は、振動の高調波成分における変化を検出するために使用されるものであってもよい。
【0033】
本明細書に開示された主題のさらなる実施形態によれば、電気機械100はさらに、制御ユニット124を備える。制御ユニット124は、センサ122により測定された測定振動量に基づいて磁気素子114の変位もしくは除去を検出し、その検出結果に応じて出力信号125を出力する。例えば、本実施形態によれば、制御ユニット124は、電気機械100の振動スペクトルを用いて欠損した磁気素子114(磁性体ウェッジ)を検出する。制御ユニットは、例えばソフトウェアベース、すなわち1つ以上のプロセッサ上で走るコンピュータプログラムの形で提供され得る。他の実施形態によれば、制御ユニット124は、ハードウェアベースであり、離散型電子回路の形態で提供される。
【0034】
実施形態によれば、(有線もしくは無線)通信コネクション126が、センサ122と制御ユニット124との間に、これらの各構成要素間の通信を行うために設けられる。
【0035】
図2は、全ての磁性体ウェッジが配置されている通常の電気機械と、同じ電気機械ではあるが磁性体ウェッジが取り除かれたものと、両方のシミュレーション振動スペクトルを示す。通常の電気機械の振動スペクトルは図2において符号130で示され、一方、磁性体ウェッジが1つ欠損している電気機械の振動スペクトルは、図2において符号132で示されている。図2からわかるように、図2の円領域134内におけるピークで示される、ロータスロット通過周波数に高調波振動の大きさを積算した周波数は、明らかにウェッジ欠損の影響を受けている。シミュレーション例では、ウェッジの欠損により速度が約15dB増加する。欠損した磁性体ウェッジにより速度の増加が引き起こされた場合の周波数は、電気機械100の電気的パラメータの関数により明確に定義される。図2において、速度レベルVはdB表示で、周波数fは任意単位で与えられている。
【0036】
図2に示される速度スペクトルの代わりにまたは付加的に、本実施形態によれば、エアーギャップの半径方向力またはそのフーリエ変換が、ウェッジの緩みを検出する振動量として使用されてもよい。
【0037】
図3(a)は、マクスウェル力Fの半径方向成分を周波数fと振動量mの空間次数の関数として示している。特に、図3(a)は、電気機械において全てのウェッジが存在している場合のマクスウェル力Fのスペクトルを示し、一方、図3(b)は、同じ電気機械ではあるがウェッジが1つ欠損している電気機械のマクスウェル力Fのスペクトルを示している。さらに、本明細書に開示された対象に基づく結果を明瞭に示すために、図3(a)と図3(b)において空間次数の主励起線と周波数は抑制されている。
【0038】
図3(a)に示されるように、ウェッジ欠損によってマクスウェル力の大きさは明らかにより大きくなり、その結果振動量も大きくなり、図3(b)において符号136で示される範囲にあるマクスウェル力Fの各ピークを生じさせる。
【0039】
図2、図3(a)および図3(b)からわかるように、ウェッジを1つ欠損させることで、検出可能な電気機械の振動変化が既に生じ、スロット高調波にも目に見える変化が生じる。ここで、通常はどのウェッジが欠損しているかを検出する必要はなく、むしろ欠損しているウェッジがあるかどうかを検出することが必要である点に留意すべきである。なぜなら、ウェッジ欠損の検出を確実に行うことにより、コイルの絶縁摩耗およびコイル(巻回部)における短絡が生じる前に、電気機械のオペレータが、再度電気機械にウェッジを装着することができるからである。
【0040】
電気機械の磁気素子の変位を検出するために、電気量、磁気量、もしくは電気機械の機械的な量など任意の振動量が当然に使用可能であると、当業者には認識されるであろう。単なる例示目的として、測定された振動量からウェッジの欠損を検出することについて、本明細書に開示された主題の実施例を以下にいくつか述べる。
【0041】
本実施形態によれば、例えば、対象としている振動量スペクトルを提供するために、図1におけるセンサ122のようなセンサは、複数の周波数の振動量を測定するように構成されていてもよい。図2に関して既に述べたように、そのような振動量は、外部の加速度計で測定可能な電気機械の速度であってもよい。さらに、各実施形態によれば、制御ユニットは、少なくともスペクトルの一部分をモニタリングするように構成されている。例えば、制御ユニットは、例えば磁性体ウェッジ114のような磁気素子が取り除かれるとすれば、検出可能な振動量の変化が期待される周波数範囲をモニタリングするように構成されていてもよい。例えば、図2に示す本実施形態において、そのような周波数範囲は符号134で示されているピーク領域であり得る。
【0042】
スペクトル部分の選択は、予め決められていてもよく、または、電気機械の動作中に実行されてもよい。さらに、所定の間隔は、電気機械の磁気素子が変位していることを判定するために提供されるものであってもよい。例えば、図2において符号134で示されるピークのピーク高さは、電気機械の動作中の時間にわたってモニタリングされていてもよい。さらに、一実施形態によれば、所定の固定された間隔が設けられており、ピーク高さが所定の間隔内にある限り、電気機械の全てのウェッジは正しい位置にあると見なされる。しかし、制御ユニットは、対象の振動量に対して、ピーク高さが所定の間隔から外れた場合、ウェッジの緩みを示す出力信号を提供するように構成されてもよい。
【0043】
磁気素子の変位を検出するために、所定の固定された間隔を用いる代わりに、他の適切なアルゴリズムを用いてもよい。例えば、他の実施形態によれば、振動量スペクトルにおける特定のピークのピークレベルは、動作中の時間にわたってモニタリングされていてもよく、ピークレベルが突然変化すると、磁気素子の変位を示す出力信号が制御ユニットから提供される要因にもなり得る。
【0044】
他の制御方式もまた意図されており、本明細書に開示された内容の範囲に含まれる。
【0045】
図4は、例えば図1の電気機械100のような電気機械における、ウェッジの欠損を検出するフローチャートを示す。
【0046】
図4に示すように、本実施形態によれば、符号222で示される半径方向加速度計が備えられている。加速度計は、電気機械の振動量を示す入力信号223を与える。例えば制御ユニット、例えば図1の制御ユニット124において実行されるデータ取得および処理の工程によって、半径方向加速度計222により与えられる入力信号223から、振動スペクトルが得られる。振動スペクトルは、図4において符号229で図示されている。
【0047】
図4に符号238で図示されているライントラッキングおよびデータ解析により、半径方向加速度計222によって測定された、振動量を示す所定量が得られる。所定量240を示すこの振動量の時間経過が、図4にグラフ242で示されている。さらに、下方境界246および上方境界248を有する所定の間隔244が示されている。測定された所定量240が、上方境界248を上回るもしくは下方境界246を下回る場合には、制御ユニットは少なくとも電気機械の1つのウェッジ、またはより一般的には、少なくとも電気機械の1つの磁気素子が変位していると判定する。導出された所定量240および所定の間隔244に基づいたこの検出工程は、図4において符号250で示されている。
【0048】
上記記載では、本明細書に開示された内容に基づく磁気素子の例として磁性体ウェッジを説明してきたが、当業者であれば、電気機械のその他の磁気素子の変位も同様に判定および検出できることを容易に認識するであろう。さらに、他の実施形態によれば、複数の磁気素子がロータに備えられ、および/または複数の磁気素子がステータに備えられる。
【0049】
本明細書に開示された本願発明のさらなる実施形態によれば、制御ユニットの任意の構成要素、例えば、制御ユニット124全体が、本明細書に開示されている制御ユニットの機能をプロセッサで提供できるようにするコンピュータプログラム製品の形態でそれぞれ提供される。他の実施形態によれば、制御ユニットの任意の構成要素は、ハードウェアとして提供されていてもよい。他の実施形態の組み合わせによれば、構成要素のいくつかはソフトウェアとして、一方他の構成要素はハードウェアとして提供されてもよい。さらに、別個の構成要素(例えば、モジュール)が、本明細書に開示された各機能を提供するものであってもよいことに注意すべきである。他の実施形態によれば、少なくとも1つの構成要素(例えば、モジュール)が、本明細書に開示された2つ以上の機能を提供するように構成されている。
【0050】
「備える」などの文言は他の構成要素や工程を除外するものではなく、また、単数の形で記載されていても複数の場合を除外するものではないことに注意すべきである。また、異なる実施形態に関して記載された構成要素は、組み合わせられてもよい。さらに、請求項における符号は、請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことに注意されたい。
【0051】
本明細書に開示された本願発明の上記実施形態をまとめると、以下のとおりである。
【0052】
移動可能な2つの可動部を有し、第1の可動部が電気機械のステータであり、他方の可動部が電気機械のロータである電気機械が記載される。可動部の1つには、動作中に電気機械における磁束と相互作用する磁気素子が取り付けられる。さらに、センサが電気機械の振動量を測定するために備えられ、制御ユニットが測定された振動量に基づいて磁気素子の変位を検出するために構成されていてもよい。この電気機械は、ジェネレータもしくはモータであってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が電気機械(100)のステータ(102)を形成し、他方が前記電気機械のロータ(104)を形成している、相対的に移動可能な2つの可動部(102,104)と、
前記可動部の1つに取り付けられ、前記電気機械(100)における磁束と相互作用する磁気素子(114)と、
前記電気機械(100)の振動量を測定するセンサ(122)と、
測定された前記振動量に基づいて、前記磁気素子(114)の変位を検出する制御ユニット(124)と、
を備えることを特徴とする電気機械(100)。
【請求項2】
前記可動部(102,104)の間にエアーギャップ(112)をさらに備え、
前記磁気素子(114)は、前記エアーギャップ(112)に面するように形成される、
ことを特徴とする請求項1記載の電気機械。
【請求項3】
前記可動部の1つ(102)は巻回部(118)を有し、
前記磁気素子(114)は、前記巻回部(118)と前記エアーギャップ(112)との間に位置している、
ことを特徴とする請求項2記載の電気機械。
【請求項4】
前記センサ(122)は、前記振動量スペクトル(130,132)を提供するように、複数の周波数に対して前記振動量を測定するように構成され、
前記制御ユニット(124)は、
前記スペクトル(130,132)の少なくとも一部分をモニタリングし、
前記振動量が所定の間隔(244)から外れた場合に前記磁気素子(114)の前記変位を判定する
ように構成されている、ことを特徴とする請求項1〜3記載の電気機械。
【請求項5】
前記センサ(114)は、前記電気機械(100)の加速度を測定する加速度計である、
ことを特徴とする請求項1〜4記載の電気機械。
【請求項6】
電気機械(100)の制御ユニット(124)の動作方法において、
前記電気機械(100)の振動量を示す入力信号(223)を受信するステップと、
前記受信した入力信号に応じて、前記電気機械(100)の磁気素子(114)の変位を検出するステップ(250)と、
前記磁気素子(114)の変位の検出結果に応じて、出力信号(125)を提供するステップと、
を備えることを特徴とする動作方法。
【請求項7】
センサ(122)の入力信号(223)を処理するコンピュータプログラムであって、
前記入力信号(223)は、電気機械(100)の振動量を示し、データプロセッサによる当該コンピュータプログラムの実行の際に、請求項6記載の方法を制御するように構成されているコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−182639(P2011−182639A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44880(P2011−44880)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】