電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置
【課題】
血球膜において凝集発症に起因する電位を逆転させる赤血球を解析する電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置を提供する。
【解決手段】
電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬し、該泳動セル中央のゼロ地点位置S(基点)に赤血球測定用検体を導入して泳動槽の経時撮影を行い、各画像データをRGB分解して各B成分の輝度が示す基点からの移動座標をピクセル毎に計測して画像解析し、該経時解析データの陰陽極側への各移動座標の集積結果が示す泳動方向の変化を測定する方法。3槽101a・10a・101a内部で電気泳動液2aが流通可能且つ通電可能に収容された泳動槽1aと、その中間槽10aに浸漬される泳動セルと3aを有する電気泳動装置Aと、泳動セル3aを経時撮影する撮影装置6aと、各画像データを画像解析する解析装置7aで測定装置を構成する。
血球膜において凝集発症に起因する電位を逆転させる赤血球を解析する電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置を提供する。
【解決手段】
電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬し、該泳動セル中央のゼロ地点位置S(基点)に赤血球測定用検体を導入して泳動槽の経時撮影を行い、各画像データをRGB分解して各B成分の輝度が示す基点からの移動座標をピクセル毎に計測して画像解析し、該経時解析データの陰陽極側への各移動座標の集積結果が示す泳動方向の変化を測定する方法。3槽101a・10a・101a内部で電気泳動液2aが流通可能且つ通電可能に収容された泳動槽1aと、その中間槽10aに浸漬される泳動セルと3aを有する電気泳動装置Aと、泳動セル3aを経時撮影する撮影装置6aと、各画像データを画像解析する解析装置7aで測定装置を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体血液中の血球膜における電位が逆転する赤血球に起因する凝集発症を予知することのできる電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血管障害に起因する病気として、脳卒中や心筋梗塞、また腎不全や眼底出血、壊疽など実に様々なものがあげられ、特にこの血管障害は糖尿病患者の死因の主たるものとなっており、この障害予知がそれらの合併症における予防において非常に重要な位置を占めている。
【0003】
このような血管合併症は、赤血球同士の凝集および血管壁への凝集による血管の閉塞により発症するものであり、この血管障害の発生を予知するものとして、赤血球膜の状態を解析する方法及びその装置が存在しており、例えば図19に示すような赤血球膜糖化度分布を測定する方法およびその装置が開示されている。
【0004】
すなわち、この赤血球膜糖化度分布を測定する方法およびその装置は、透明直方体容器1の上面に適宜間隔をおいて陰極挿入孔Hc、陽極挿入孔Haを設けると共に、これら陰陽極挿入孔Hc、Haの中間部に試料注入孔Hsを設け、さらに前記透明直方体容器1の上面の適宜位置にエアバブル排出孔Hbを設けた泳動セルにおいて、前記透明直方体容器1内に生理食塩水を注入し、直流電源に接続した陰陽極線Lc、Laを前記陰陽極挿入孔Hc、Haからそれぞれ挿入して、これら陰陽極線Lc、Laを前記生理食塩水に浸し、前記透明直方体容器1の外側底面には磁気シートSを敷いておき、前記試料注入孔Hsからホウ酸基導入磁気ビーズに結合させた赤血球検体を注入するようにしたものとして示されている。
【0005】
その原理としては、赤血球膜表面に糖化が生じると糖分子中のジオールの数が増えるが、該糖のジオールとホウ酸磁気ビーズのホウ酸基は、アルカリ性pH下でカップリング反応を生じ、その結果赤血球膜表面にホウ素を介して磁気ビーズが結合する。
【0006】
このように、磁気ビーズが結合した赤血球は、該磁気ビーズの数に比例して外部磁場の影響を強く受けてその電気泳動が抑制されることになり、この度合いが赤血球膜糖化度を示すものとしている。
【0007】
尚、前記赤血球検体としては、グリコヘモグロビンAlc(HbAlc)測定用(高速液体クロマトグラフィー法、正常域は4.3〜5.8%)に提出されたものを用いており、また、前記ホウ酸基導入磁気ビーズは、アミノ基導入磁気ビーズにホウ酸をグルタルアルデヒド結合で導入して合成したものを用いたものとしている。
【0008】
さらに、赤血球へのホウ酸磁気ビーズの結合は、血液検体にその10倍容量の生理食塩水を加えて遠心し、上清を捨てて洗浄赤血球を作成し、洗浄赤血球にトリシン緩衝液を添加し、次にホウ酸磁気ビーズを添加して反応させることによるものとしている。
【0009】
そして、このようにして生成された赤血球検体を前記試料注入孔Hsより前記泳動セル(泳動液は生理食塩水、pH7.4)に入れ、通電(4〜5V、20mA)させ、泳動像撮影用のデジタルカメラでその泳動像をセルの上面から撮影し、その撮影した画像データに基づきコンピュータで赤血球膜糖化度を解析する。
【特許文献1】特開2005−49156号公報(第6頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、赤血球表面と内部における電位について、その表面側の赤血球表面電位が陰、内部が陽の状態が保持される赤血球は正常と見なされ、互いに反発し合って凝集し難くなっているのであるが、寿命又は血漿成分などによる相互作用によってその赤血球表面電位の低下を招いたり、或いはその赤血球表面電位及び内部の電位が逆転して陽となったりすると、表面に陰の電位を有する正常な赤血球と結合して凝集し易くなり、これが血栓などの血管障害を誘発する大きな要因となっている。
【0011】
このように表面電位が変化した病因となる赤血球は、従来の電気泳動による泳動方向の分布によって確認することが既に可能ではあるが、中には寿命又は血管成分の相互作用の程度によっては電気泳動中に表面電位が逆転して泳動方向が変化する性質のものも存在すると考えられる。
【0012】
このような電気泳動中に泳動方向が変化する赤血球は、血管障害を誘発しかねない赤血球凝集の前駆、又は隠れた病因と成り得ると推測されるが、従来においては、これが原因となる赤血球凝集発症の予知を可能とする手段は存在しなかった。
【0013】
加えて、血栓などを予防する他の手段として、全血における粘度を計ることが考えられるが、従来の電気泳動解析における分野においては、未だ未開発のものとなっている。
【0014】
また、上述したような従来の血管障害を予知する電気泳動解析装置は、泳動セルとして底面が平面形状の直方体容器を採用しているが、その容器底面における陰陽極線方向(左右方向)に検体が分布する際、その方向とは別に解析とは無関係な垂直方向(前後方向)における広がりも呈し、陰陽極線方向における分布解析において無駄を生じさせるものとなっていた。
【0015】
さらに、各陰陽極線は、検体が導入される同泳動漕に浸設されているため、通電中に電解泡が発生し、泳動セルの上面からなされる泳動像の撮影における画像の鮮明度や均一度などを図る上において悪影響をもたらしていた。
【0016】
また、電気泳動液としては、細胞培養、組織培養など生化学分野で広く使用されているグッド緩衝剤(Good‘s buffer:グットバッファー)が広く用いられているが、電気泳動解析により赤血球表面電位を測定する上で、明確な測定結果が得られる適切な電気泳動液が見つかっていないのが現状である。
【0017】
そこで、本発明は、上記問題点を解消する為に成されたものであり、電気泳動中に泳動方向を逆転させる性質を有する赤血球の含有率によって赤血球凝集発症の予知を可能とし、加えて、検体の陰陽極線方向の分布のみによる無駄な分布を不要とした解析によるものとし、且つ、泳動像の撮影における画像の鮮明度や均一度を図ることが可能な電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置を提供する事を目的とするものである。
【0018】
尚、本発明は、電気泳動液としてMES(2−(N−モルホリノ)エタン硫酸(2−(N−Morpholino)ethanesulfuric acid)を使用した場合に、このMESに赤血球測定用検体を浸漬させると、赤血球表膜にシアル酸を介して付着するアミノ基にMESに含有するスルホン酸基がイオン結合し、このイオン結合体によって赤血球測定用検体の全体的な表面電位が陰傾向や陽傾向へ変化することを発見した。
【0019】
また、本発明は、この発見から電気泳動液としてMESを使用した場合に、A1c値が正常な患者の赤血球測定用検体は陽傾向を呈して陰極側へ引き寄せられ、A1c値が異常な患者の赤血球測定用検体は陰傾向を呈して陽極側へ引き寄せられるという結果を得ることができ、電気泳動解析による赤血球表面電位測定に適した電気泳動液を提供することを目的とするものでもある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
すなわち、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標の集積結果が示す泳動方向の変化により、赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしたものとしている。
【0021】
また、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの各頂点座標の集積結果が示す頂点の変化により、赤血球測定用検体の粘度を測定できるようにしたものとしている。
【0022】
さらに、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標又は/及び各頂点座標の集積結果が示す泳動方向の変化又は/及び頂点の変化により、赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知又は/及び赤血球測定用検体の粘度を測定して赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしたものとしている。
【0023】
さらにまた、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、前記画像解析を、泳動槽の経時撮影を通電前(0分)と所定通電時間経過毎に30秒、1分、2分、3分の少なくとも合計5回の撮影を行って得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測し、該計測データを計算ソフトで解析するようにしたものとしている。
【0024】
そして、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、中間部の泳動セル浸漬用槽とその両側に電極挿入用槽とを有し、これら各槽間に泳動液流通孔を下部に穿設した仕切り壁を介設して各槽間で電気泳動液が流通するようにした3槽からなる泳動槽と、該泳動槽に注入された電気泳動液と、前記各電極挿入用槽に挿入された直流電源に接続されて通電可能な一対の陰陽極線と、前記泳動セル浸漬用槽の中央部に浸漬されて赤血球測定用検体を中央に導入する泳動セルとで電気泳動装置を形成し、該電気泳動装置の泳動セルを通電前及び所定通電時間経過毎に経時撮影する撮影装置と、該撮影装置の各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析する解析装置とからなるものとしている。
【0025】
また、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、前述した前記電気泳動装置に注入される電気泳動液を、2−(N−モルホリノ)エタン硫酸(2−(N−Morpholino)ethanesulfuric acid (MES; 0.05 mol/L, pH 7.0))にしたものとしており、赤血球表膜のアミノ基にMESに含有するスルホン酸基がイオン結合し、このイオン結合体によって赤血球測定用検体の全体的な表面電位の陰陽傾向へ変化が明確に表れる電気泳動液としている。
【0026】
さらに、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、前記電気泳動装置の中間部に浸漬させる泳動セルを、ガラス製で半円筒状に形成されているものとしている。
【0027】
さらにまた、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、前記電気泳動装置の中間部に浸漬させる泳動セルを、ODS導入(オクタデシルシランでコーティング)後の凹部内面にアルブミン(例えば牛アルブミン)を物理的吸着法で結合(BSA coating)して形成されたものとしている。
【0028】
加えて、赤血球測定用検体は、グリコヘモブロビンHbA1c測定用血液検体(窒化ソーダ入り)を使用しており、その全血0.5 uLを泳動セル中央部に導入して行っており、その解析は、フリーフロー電気泳動(free flow electrophoresis)で解析し、そのフリーフロー電気泳動像の画像解析で赤血球表面電位の病態を検討するものとしている。
【0029】
本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置では、特に、泳動セルに導入した赤血球測定用検体を、通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行って得られた各画像データを画像解析し、経時解析データの陰陽極線に向けた陰極側及び陽極側への各移動座標又は/及び頂点座標を数値化してこれをグラフ化し、その集積結果が示す変動分布から赤血球測定用検体の障害程度が予知できることにある。
【発明の効果】
【0030】
したがって、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標の集積結果が示す泳動方向の変化により、赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしているので、これにより血球膜表面において陰性を保持する正常な赤血球と血管内で凝集する可能性を有する泳動方向が逆転した赤血球の含有度を判別でき、これに応じてこの種の血管障害における予防処置を適宜施すことが可能となる。
【0031】
また、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの各頂点座標の集積結果が示す頂点の変化により、赤血球測定用検体の粘度を測定できるようにしているので、これによりこの測定結果に応じて血栓などの発症予防に活用できる。
【0032】
さらに、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標又は/及び各頂点座標の集積結果が示す泳動方向の変化又は/及び頂点の変化により、赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知又は/及び赤血球測定用検体の粘度を測定して赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしているため、一度の測定においてこれら複数種の測定結果が同時に得られ、血管障害における測定の迅速化が図れる。
【0033】
さらにまた、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、前記画像解析を、泳動槽の経時撮影を通電前(0分)と所定通電時間経過毎に30秒、1分、2分、3分の少なくとも合計5回の撮影を行って得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測し、該計測データを計算ソフトで解析するようにしているため、同条件下における各検体の均一な比較判別が行え、検体の状態を正確に把握できる。
【0034】
さらに、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法では、今後の血管障害由来の合併症の予知が可能となる大きな要因となり得るものであり、また、血球凝集防止薬の開発にも役立つものとなり得るばかりか、更には同薬の最善な使用方法を制定するものとなり得るものである。
【0035】
また、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法では、血球の粘度状態を測定できるため、今後の抗凝固剤の開発にも役立つものとなり、更には同剤の最善な使用方法を制定するものとなり得る。
【0036】
そして、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、中間部の泳動セル浸漬用槽とその両側に電極挿入用槽とを有し、これら各槽間に泳動液流通孔を下部に穿設した仕切り壁を介設して各槽間で電気泳動液が流通するようにした3槽からなる泳動槽と、該泳動槽に注入された電気泳動液と、前記各電極挿入用槽に挿入された直流電源に接続されて通電可能な一対の陰陽極線と、前記泳動セル浸漬用槽の中央部に浸漬されて赤血球測定用検体を中央に導入する泳動セルとで電気泳動装置を形成し、該電気泳動装置の泳動セルを通電前及び所定通電時間経過毎に経時撮影する撮影装置と、該撮影装置の各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析する解析装置とで構成されたものとしているため、陰陽極線から生じる電解泡が泳動セル浸漬用槽に移動しないように抑制でき、泳動像の撮影における画像の鮮明度や均一度を図ることができる。
【0037】
また、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、前述した前記電気泳動装置に注入される電気泳動液を、2−(N−モルホリノ)エタン硫酸(2−(N−Morpholino)ethanesulfuric acid (MES; 0.05 mol/L, pH 7.0))にしているため、赤血球測定用検体における電気泳動に最適のものとなる。
【0038】
さらに、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、前記電気泳動装置の中間部に浸漬させる泳動セルを、ガラス製で半円筒状に形成されているものとしているため、陰陽極線方向の泳動分布解析における無駄な検体の分布を防止できる。
【0039】
さらにまた、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、前記電気泳動装置の中間部に浸漬させる泳動セルを、その凹部内面にアルブミンをコーティングして形成されているものとしているため、該内面と赤血球測定用検体との付着を防止して、常時適正な泳動を実現できる。
【0040】
加えて、赤血球測定用検体は、グリコヘモブロビンHbA1c測定用血液検体(窒化ソーダ入り)を使用しており、その全血0.5 uLを泳動セル中央部に導入して行っており、その解析は、フリーフロー電気泳動(free flow electrophoresis)で解析し、そのフリーフロー電気泳動像の画像解析で赤血球表面電位の病態を検討するものとしているため、容易に電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置を構築できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置を、図面に示す一実施形態に基づきこれを詳細に説明する。図1は本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置の一実施形態を示す斜視説明図であり、図2は本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置に備えた泳動セルの一実施形態を示す断面図であり、図3は本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置の一実施形態を示す断面説明図であり、図4は本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置の一実施形態を示す模式図であり、図5は、本発明の電気泳動液としてMESを使用した場合のA1c値と赤血球測定用検体の陰陽極への移動状況を示した解析グラフであり、図6(a)乃至図11(a)は、泳動槽の撮影における各泳動時間に対応した陽極移動距離(Y)と陰極移動距離(X)及びこれらのX+Y値を記した測定結果の一覧表であり、図6(b)乃至図11(b)は、図6(a)乃至図11(a)の一覧表に基づいて表わした解析グラフである。また、図12(a)乃至図17(a)は本発明の泳動槽の撮影における各泳動時間に対応した高さ方向における検体移動距離(Z)及び陰陽極線上の移動距離(X−Y)を記した測定結果の一覧表であり、図12(b)乃至図17(b)は図12(a)乃至図17(a)の一覧表に基づいて表わした解析グラフである。さらに、図18は本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法における測定結果の検体移動座標及び検体頂点座標を経時的に表示した一実施形態を示す解析グラフであり、図19は従来技術を示す参考図である。
【0042】
すなわち、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標の集積結果が示す泳動方向の変化により、赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしたものとしている。
【0043】
前記画像解析ソフトで解析される前記経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標について、図6(a)(b)乃至図11(a)(b)に示すように、赤血球測定用検体を導入する前記ゼロ地点位置から陽極への検体移動距離をX値とすると共に、同ゼロ地点位置から陰極への検体移動距離をY値とし、これら座標における前記集積結果を図6(a)乃至図11(a)のように数値化して、これを図6(b)乃至図11(b)に示すようにグラフ化して表示し、赤血球測定用検体における泳動方向の変化を求めるようにした。
【0044】
また、前記画像解析において、泳動槽の経時撮影を通電前(0分)と所定通電時間経過毎に30秒、1分、2分、3分の少なくとも合計5回の撮影を経時的に行って得られた各画像データを、RGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測し、該計測データを計算ソフトで解析するようにしている。
【0045】
尚、本発明では、電気泳動液としてMES(2−(N−モルホリノ)エタン硫酸(2−(N−Morpholino)ethanesulfuric acid)を使用しているが、これは、このMESに赤血球測定用検体を浸漬させると、赤血球表膜のアミノ基にMESに含有するスルホン酸基がイオン結合し、このイオン結合体によって赤血球測定用検体の全体的な表面電位が陰陽傾向へ変化するという発見によるものであり、この発見から、A1c値が正常な赤血球測定用検体をもつ患者ほど陰極側へ引き寄せられる傾向があり、A1c値が異常な赤血球測定用検体をもつ患者ほど陽極側へ引き寄せられる傾向があることが解かった。
【0046】
すなわち、図5は、電気泳動液としてMESを使用した場合のA1c値と赤血球測定用検体の陰陽極への移動状況を示した解析グラフであり、A1c値が正常な患者の赤血球測定用検体は陽傾向を呈して陰極側へ引き寄せられる傾向が顕著に示されており、A1c値が異常な患者の赤血球測定用検体は陰傾向を呈して陽極側へ引き寄せられているという傾向が顕著に示されている。
【0047】
例えば、図6に示す場合は、HbA1c値が5.3(正常値)の患者の全血0.5uLを使用したものである。同図6(a)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではY値は1.71mm、前記X値は3.17mmとなり(Y値+X値=4.89)、30秒後ではY値は1.80mm、前記X値は2.80mmとなり(Y値+X値=4.60)、1分後ではY値は1.88mm、前記X値は3.92mmとなり(Y値+X値=5.80)、2分後ではY値は1.88mm、前記X値は4.48mmとなり(Y値+X値=6.36)、3分後ではY値は1.92mm、前記X値は5.89mmとなった(Y値+X値=7.81)。
【0048】
この数値をグラフ表示したものが図6(b)で示しているが、これらの数値表示及びグラフ表示において、この赤血球測定用検体中の赤血球は、矢印で示したように経時的に一方向陰極側へ分布し、また表面電位が逆転する赤血球の動向は見られないと観察される。したがって、HbA1c値が正常であるこの患者は、赤血球凝集の発症率においては低いものと診断できる。
【0049】
図7に示す場合は、HbA1c値が5.0(正常値)の患者の全血0.5uLを使用したものである。同図7(a)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではY値は2.07mm、前記X値は1.99mmとなり(Y値+X値=4.06)、30秒後ではY値は2.50mm、前記X値は3.34mmとなり(Y値+X値=5.84)、1分後ではY値は3.26mm、前記X値は3.87mmとなり(Y値+X値=7.13)、2分後ではY値は5.07mm、前記X値は3.53mmとなり(Y値+X値=8.61)、3分後ではY値は7.16mm、前記X値は2.21mmとなった(Y値+X値=9.37)。
【0050】
よって、この数値をグラフ表示した図7(b)が示すように、この赤血球測定用検体中の赤血球は、表面電位が逆転する赤血球の動向は見られないものの、矢印で示したように経時的に一方向陽極側へ比較的大きく分布している。したがって、この患者は、HbA1c値が正常値であっても、赤血球凝集の発症率においては高いものと診断できる。
【0051】
図8に示す場合は、HbA1c値が5.6(略正常値)の患者の全血0.5uLを使用したものである。同図8(a)に記すように、この赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではY値は1.78mm、前記X値は1.70mmとなり(Y値+X値=3.48)、30秒後ではY値は1.93mm、前記X値は2.31mmとなり(Y値+X値=4.24)、1分後ではY値は2.36mm、前記X値は3.28mmとなり(Y値+X値=5.64)、2分後ではY値は3.82mm、前記X値は4.33mmとなり(Y値+X値=8.15)、3分後ではY値は2.66mm、前記X値は3.41mmとなった(Y値+X値=6.08)。
【0052】
よって、この数値をグラフ表示した図8(b)が示すように、この赤血球測定用検体は通電から2分後まではどちらかというと若干陰極側一方向へ傾倒していたが、その後泳動方向が逆転する様相を呈していることが判る。すなわち、この赤血球測定用検体中に血球凝集発症の因子が含まれているものと推測され、これを血球凝集発症の予知とすることができる。
【0053】
このように本発明は、HbA1c値が正常又はこれに近い状態の患者であっても、これまで電気泳動における測定が不可能であった赤血球凝集発症の予知が行えるのである。
【0054】
図9に示す場合は、HbA1c値が異常値である8.0の患者の全血0.5uLを使用したものである。同図9(a)に記すように、この赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではY値は2.24mm、前記X値は2.22mmとなり(Y値+X値=4.46)、30秒後ではY値は2.66mm、前記X値は2.77mmとなり(Y値+X値=5.43)、1分後ではY値は2.95mm、前記X値は3.62mmとなり(Y値+X値=6.57)、2分後ではY値は3.24mm、前記X値は3.95mmとなり(Y値+X値=7.20)、3分後ではY値は4.55mm、前記X値は3.87mmとなった(Y値+X値=8.42)。
【0055】
よって、この数値をグラフ表示した図9(b)が示すように、この赤血球測定用検体中の赤血球は、矢印で示したようにどちらかというと経時的に一方向陽極側へ傾倒しているが、同方向へ比較的穏やかに分布しており、また表面電位が逆転する赤血球の動向は見られないと観察される。したがって、HbA1c値が異常の患者の中でも、この患者は赤血球凝集の発症率においては比較的低いものと診断できる。
【0056】
また、図10に示す場合は、HbA1c値が8.1(異常値)の患者の全血0.5uLを使用したものである。同図10(a)に記すように、この赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではY値は2.00mm、前記X値は2.14mmとなり(Y値+X値=4.14)、30秒後ではY値は2.36mm、前記X値は2.82mmとなり(Y値+X値=5.18)、1分後ではY値は2.56mm、前記X値は3.00mmとなり(Y値+X値=5.57)、2分後ではY値は3.53mm、前記X値は3.21mmとなり(Y値+X値=6.74)、3分後ではY値は5.18mm、前記X値は2.33mmとなった(Y値+X値=7.50)。
【0057】
よって、この数値をグラフ表示した図10(b)が示すように、矢印で示したように経時的に一方向陽極側へ比較的大きく分布している。したがって、HbA1c値が異常であるこの患者は、赤血球凝集の発症においても注意を要すると診断できる。
【0058】
図11に示す場合は、HbA1c値が8.9(異常値)の患者の全血0.5uLを使用したものである。同図11(a)に記すように、この赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではY値は2.27mm、前記X値は2.27mmとなり(Y値+X値=4.55)、30秒後ではY値は2.92mm、前記X値は3.89mmとなり(Y値+X値=6.81)、1分後ではY値は2.92mm、前記X値は3.89mmとなり(Y値+X値=6.81)、2分後ではY値は3.33mm、前記X値は3.99mmとなり(Y値+X値=7.32)、3分後ではY値は4.65mm、前記X値は3.06mmとなった(Y値+X値=7.71)。
【0059】
よって、この数値をグラフ表示した図11(b)が示すように、この赤血球測定用検体中の赤血球は、矢印で示したように経時的に一方向陽極側へ分布している。したがって、HbA1c値が異常であるこの患者は、赤血球凝集の発症においても注意を要すると診断できる。
【0060】
このように本発明の方法では、HbA1c値にかかわらず赤血球凝集の発症を予知できるというものである。
【0061】
また、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、前述のように電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共に、これら各B(Blue)成分の輝度が示す頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの各頂点座標の集積結果が示す頂点の変化により、赤血球測定用検体の粘度を測定できるようにしたものとしている。
【0062】
すなわち、図12(a)(b)乃至図17(a)(b)に示すように、前記頂点座標における前記陰陽極線方向の変化を、赤血球測定用検体を導入する前記ゼロ地点位置を基点として陽極への検体移動距離をX値(マイナス値)と共に、同ゼロ地点位置から陰極への検体移動距離をY値(プラス値)とからなるX−Y値で表し、且つ該ゼロ地点位置から高さ方向における検体移動距離をZ値(プラス値)とし、この頂点座標における前記集積結果を図12(a)乃至図17(a)のように数値化して、これを図12(b)乃至図17(b)の示すようにグラフ表示して、赤血球測定用検体における粘度の測定を可能とした。
【0063】
この赤血球測定用検体の粘度測定について、例えば前記所定時間における前記Z値の変化指数などから導き出せる。
【0064】
例えば図12の場合、HbA1c値が4.8(正常値)の患者の全血0.5uLを使用したものであるが、同図12(a)(b)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではZ値は54.33及びX−Y値は−0.11mmとなり、30秒後ではZ値は50.18及びX−Y値は0.25mmとなり、1分後ではZ値は41.00及びX−Y値は0.22mmとなり、2分後ではZ値は36.69及びX−Y値は−0.13mmとなり、3分後ではZ値は30.53及びX−Y値は−0.30mmとなった。(Z値は指数)
【0065】
よって、この赤血球測定用検体のZ値における最大変化指数幅は23.8(=54.33−30.53)となる。
【0066】
また、図13の場合、HbA1c値が5.0(正常値)の患者の全血0.5uLを使用したものであるが、同図13(a)(b)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではZ値は61.04及びX−Y値は−0.70mmとなり、30秒後ではZ値は64.33及びX−Y値は−0.48mmとなり、1分後ではZ値は63.76及びX−Y値は0.42mmとなり、2分後ではZ値は61.47及びX−Y値は0.25mmとなり、3分後ではZ値は50.27及びX−Y値は−0.25mmとなった。
【0067】
よって、この赤血球測定用検体のZ値における最大変化指数幅は14.06(=64.33−50.27)となる。
【0068】
さらに図14の場合、HbA1c値が5.6(略正常値)の患者の全血0.5uLを使用したものであるが、同図14(a)(b)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではZ値は57.65及びX−Y値は0.02mmとなり、30秒後ではZ値は53.06及びX−Y値は0.00mmとなり、1分後ではZ値は55.65及びX−Y値は−0.02mmとなり、2分後ではZ値は58.24及びX−Y値は0.02mmとなり、3分後ではZ値は47.88及びX−Y値は0.03mmとなった。
【0069】
よって、この赤血球測定用検体のZ値における最大変化指数幅は10.36(=58.24−47.88)となる。
【0070】
図15の場合、HbA1c値が8.0(異常値)の患者の全血0.5uLを使用したものであるが、同図15(a)(b)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではZ値は57.27及びX−Y値は−0.03mmとなり、30秒後ではZ値は56.49及びX−Y値は−0.03mmとなり、1分後ではZ値は56.41及びX−Y値は−0.05mmとなり、2分後ではZ値は47.65及びX−Y値は−0.05mmとなり、3分後ではZ値は46.22及びX−Y値は−0.05mmとなった。
【0071】
よって、この赤血球測定用検体のZ値における最大変化指数幅は11.05(=57.27−46.22)となる。
【0072】
図16の場合、HbA1c値が8.1(異常値)の患者の全血0.5uLを使用したものであるが、同図16(a)(b)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではZ値は14.76及びX−Y値は−0.32mmとなり、30秒後ではZ値は13.69及びX−Y値は0.38mmとなり、1分後ではZ値は14.47及びX−Y値は0.62mmとなり、2分後ではZ値は13.24及びX−Y値は0.59mmとなり、3分後ではZ値は11.18及びX−Y値は0.59mmとなった。
【0073】
よって、この赤血球測定用検体のZ値における最大変化指数幅は3.58(=14.76−11.18)となる。
【0074】
図17の場合、HbA1c値が8.9(異常値)の患者の全血0.5uLを使用したものであるが、同図17(a)(b)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではZ値は12.35及びX−Y値は0.03mmとなり、30秒後ではZ値は14.75及びX−Y値は0.13mmとなり、1分後ではZ値は14.27及びX−Y値は0.50mmとなり、2分後ではZ値は11.82及びX−Y値は0.63mmとなり、3分後ではZ値は7.63及びX−Y値は0.48mmとなった。
【0075】
よって、この赤血球測定用検体のZ値における最大変化指数幅は7.12(=14.75−7.63)となる。
【0076】
これら図12(a)(b)乃至図17(a)(b)に示す前記Z値における各最大変化指数幅を比較検討すると、明らかに赤血球測定用検体の粘度の差異が見られた。すなわち、図12や図13の場合のように同指数幅が高い程、赤血球測定用検体の粘度が低く、逆に図16や図17の場合のように同指数幅が低い程、赤血球測定用検体の粘度が高いと推測されるのである。
【0077】
尚、前記頂点座標における前記集積結果から赤血球測定用検体の粘度を測定する場合、前述したような赤血球測定用検体における陰極側及び陽極側への各移動座標(X、Y)の集積結果に基づく泳動方向の変化により、検体中の赤血球における凝集発症の可能性予知をも同時に実施するようにしてもよい。
【0078】
その場合、図18に示すように、前記移動座標(X、Y)及び前記頂点座標(Z)を同時に表示可能なグラフ画像によって、その経時的変化を観察するようにしてもよい。
【0079】
次に、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置について説明すると、図1及び図4に示したものは、該測定装置を電気泳動装置Aと撮影装置6aと解析装置7aとで構成したものを例示している。
【0080】
すなわち、前記電気泳動装置Aは、図1及び図3に示したように、中間部の泳動セル浸漬用槽10a(2.7cm×2.5cm×3cm)とその両側に電極挿入用槽101a・101aをそれぞれ有しており、これら各槽101a・10a・101a間に、泳動液流通孔111aを下部に穿設した仕切り壁11aを介設して各槽101a・10a・101a間で電気泳動液2aが流通するようにした3槽からなる泳動槽1aを備えており、該泳動槽1aには、電気泳動液2aが注入されており、前記各電極挿入用槽101a・101aには、直流電源Pに接続されて通電可能な一対の陰陽極線4a・4bが挿入されている。また、前記泳動セル浸漬用槽10aの中央部には、中央に赤血球測定用検体5aを導入する泳動セル3aが浸漬されており、赤血球表面電位測定時に該泳動セル3aの中央のゼロ地点位置(基点)にピペット等で赤血球測定用検体5aを導入して泳動方向の変化を観察できるようにしたものとしている。
【0081】
また、本発明の赤血球表面電位測定装置は、前述したように、前記電気泳動装置Aの前記泳動セル3aを通電前及び所定通電時間経過毎に経時撮影する撮影装置6aと、該撮影装置6aの各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置Sを基点として画像解析ソフトで計測して画像解析する解析装置7a(パーソナルコンピュータなど)とで、図4に示すように構成されたものとしている。
【0082】
尚、前記電気泳動液2aとしては、前述したような、2−(N−モルホリノ)エタン硫酸(2−(N−Morpholino)ethanesulfuric acid (MES; 0.05 mol/L, pH 7.0))を採用している。
【0083】
前記泳動槽1aは、直方体泳動槽(8cm×2.5cm×3cm ポリプロピレン製)として形成されたものを使用している。尚、この材質は問わず、例えば他の透明樹脂又はガラス板にて製作されたものであってもよい。
【0084】
前記泳動セル3aは、図1及び図2に示すように前記電気泳動装置Aの中間部に前記電気泳動液2aに浸漬させており、ガラス製で半円筒状に形成したものを使用している(内径14 mm、深さ7mm、長さ25mm)。
【0085】
また、この泳動セル3aの凹部内面には、図2に示すように該内面に対する前記赤血球測定用検体5aの付着を防止するため、アルブミンをコーティングしている(BSA coating)。
【0086】
本実施例では、前記撮影装置6aとして、市販のデジタルカメラ(COOLPIX995, NIKON)を採用している。
【0087】
加えて、本実施例では、前記赤血球測定用検体5aとして、グリコヘモブロビンHbA1c測定用血液検体(窒化ソーダ入り)を使用している。
【0088】
而して、本発明の赤血球表面電位測定装置は、前記赤血球測定用検体5aの全血0.5 uLを前記電気泳動装置Aの泳動セル3aの中央部に導入し、フリーフロー電気泳動(free flow electrophoresis)でその解析を行い、そのフリーフロー電気泳動像の画像解析で赤血球表面電位の病態を検討するものとしている。
【0089】
前記陰陽極線4a・4bの通電は、室温において定電圧(100V;20−30mA)で3分間行い、前記撮影装置6aによる泳動像の撮影後、その撮影画像(500万画素)を前記解析装置7aにてRGB分解し、そのうちB成分の輝度をピクセル毎に画像解析ソフト(WinRoof 、三谷商事)で計測し、そのデータをEXCEL(Microsoft)で解析するという手順を踏む。
【0090】
上述したように、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置の主な特徴は、前記泳動セル3aに導入した赤血球測定用検体5aを、通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽1aの経時撮影を行って得られた各画像データを画像解析し、経時解析データの前記陰陽極線4a、4bに向けた陰極側及び陽極側への各移動座標又は/及び頂点座標を数値化してこれをグラフ化し、その集積結果が示す変動分布から赤血球測定用検体の障害程度が予知できることにある。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置の一実施形態を示す斜視説明図である。
【図2】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置に備えた泳動セルの一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置の一実施形態を示す断面説明図である。
【図4】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置の一実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の電気泳動液としてMESを使用した場合のA1c値と赤血球測定用検体の陰陽極への移動状況を示した解析グラフである。
【図6】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図7】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図8】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図9】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図10】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図11】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図12】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体頂点座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図13】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体頂点座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図14】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体頂点座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図15】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体頂点座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図16】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体頂点座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図17】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体頂点座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図18】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標及び検体頂点座標を経時的に表示した解析グラフである。
【図19】従来技術を示す参考図である。
【符号の説明】
【0092】
A 電気泳動装置
1a 泳動槽
10a 泳動セル浸漬用槽
101a 電極挿入用槽
11a 仕切り壁
111a 泳動液流通孔
2a 電気泳動液
3a 泳動セル
31a アルブミン
4a、4b 陰陽極線
P 直流電源
5a 赤血球測定用検体
6a 撮影装置
7a 解析装置
S ゼロ地点位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体血液中の血球膜における電位が逆転する赤血球に起因する凝集発症を予知することのできる電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血管障害に起因する病気として、脳卒中や心筋梗塞、また腎不全や眼底出血、壊疽など実に様々なものがあげられ、特にこの血管障害は糖尿病患者の死因の主たるものとなっており、この障害予知がそれらの合併症における予防において非常に重要な位置を占めている。
【0003】
このような血管合併症は、赤血球同士の凝集および血管壁への凝集による血管の閉塞により発症するものであり、この血管障害の発生を予知するものとして、赤血球膜の状態を解析する方法及びその装置が存在しており、例えば図19に示すような赤血球膜糖化度分布を測定する方法およびその装置が開示されている。
【0004】
すなわち、この赤血球膜糖化度分布を測定する方法およびその装置は、透明直方体容器1の上面に適宜間隔をおいて陰極挿入孔Hc、陽極挿入孔Haを設けると共に、これら陰陽極挿入孔Hc、Haの中間部に試料注入孔Hsを設け、さらに前記透明直方体容器1の上面の適宜位置にエアバブル排出孔Hbを設けた泳動セルにおいて、前記透明直方体容器1内に生理食塩水を注入し、直流電源に接続した陰陽極線Lc、Laを前記陰陽極挿入孔Hc、Haからそれぞれ挿入して、これら陰陽極線Lc、Laを前記生理食塩水に浸し、前記透明直方体容器1の外側底面には磁気シートSを敷いておき、前記試料注入孔Hsからホウ酸基導入磁気ビーズに結合させた赤血球検体を注入するようにしたものとして示されている。
【0005】
その原理としては、赤血球膜表面に糖化が生じると糖分子中のジオールの数が増えるが、該糖のジオールとホウ酸磁気ビーズのホウ酸基は、アルカリ性pH下でカップリング反応を生じ、その結果赤血球膜表面にホウ素を介して磁気ビーズが結合する。
【0006】
このように、磁気ビーズが結合した赤血球は、該磁気ビーズの数に比例して外部磁場の影響を強く受けてその電気泳動が抑制されることになり、この度合いが赤血球膜糖化度を示すものとしている。
【0007】
尚、前記赤血球検体としては、グリコヘモグロビンAlc(HbAlc)測定用(高速液体クロマトグラフィー法、正常域は4.3〜5.8%)に提出されたものを用いており、また、前記ホウ酸基導入磁気ビーズは、アミノ基導入磁気ビーズにホウ酸をグルタルアルデヒド結合で導入して合成したものを用いたものとしている。
【0008】
さらに、赤血球へのホウ酸磁気ビーズの結合は、血液検体にその10倍容量の生理食塩水を加えて遠心し、上清を捨てて洗浄赤血球を作成し、洗浄赤血球にトリシン緩衝液を添加し、次にホウ酸磁気ビーズを添加して反応させることによるものとしている。
【0009】
そして、このようにして生成された赤血球検体を前記試料注入孔Hsより前記泳動セル(泳動液は生理食塩水、pH7.4)に入れ、通電(4〜5V、20mA)させ、泳動像撮影用のデジタルカメラでその泳動像をセルの上面から撮影し、その撮影した画像データに基づきコンピュータで赤血球膜糖化度を解析する。
【特許文献1】特開2005−49156号公報(第6頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、赤血球表面と内部における電位について、その表面側の赤血球表面電位が陰、内部が陽の状態が保持される赤血球は正常と見なされ、互いに反発し合って凝集し難くなっているのであるが、寿命又は血漿成分などによる相互作用によってその赤血球表面電位の低下を招いたり、或いはその赤血球表面電位及び内部の電位が逆転して陽となったりすると、表面に陰の電位を有する正常な赤血球と結合して凝集し易くなり、これが血栓などの血管障害を誘発する大きな要因となっている。
【0011】
このように表面電位が変化した病因となる赤血球は、従来の電気泳動による泳動方向の分布によって確認することが既に可能ではあるが、中には寿命又は血管成分の相互作用の程度によっては電気泳動中に表面電位が逆転して泳動方向が変化する性質のものも存在すると考えられる。
【0012】
このような電気泳動中に泳動方向が変化する赤血球は、血管障害を誘発しかねない赤血球凝集の前駆、又は隠れた病因と成り得ると推測されるが、従来においては、これが原因となる赤血球凝集発症の予知を可能とする手段は存在しなかった。
【0013】
加えて、血栓などを予防する他の手段として、全血における粘度を計ることが考えられるが、従来の電気泳動解析における分野においては、未だ未開発のものとなっている。
【0014】
また、上述したような従来の血管障害を予知する電気泳動解析装置は、泳動セルとして底面が平面形状の直方体容器を採用しているが、その容器底面における陰陽極線方向(左右方向)に検体が分布する際、その方向とは別に解析とは無関係な垂直方向(前後方向)における広がりも呈し、陰陽極線方向における分布解析において無駄を生じさせるものとなっていた。
【0015】
さらに、各陰陽極線は、検体が導入される同泳動漕に浸設されているため、通電中に電解泡が発生し、泳動セルの上面からなされる泳動像の撮影における画像の鮮明度や均一度などを図る上において悪影響をもたらしていた。
【0016】
また、電気泳動液としては、細胞培養、組織培養など生化学分野で広く使用されているグッド緩衝剤(Good‘s buffer:グットバッファー)が広く用いられているが、電気泳動解析により赤血球表面電位を測定する上で、明確な測定結果が得られる適切な電気泳動液が見つかっていないのが現状である。
【0017】
そこで、本発明は、上記問題点を解消する為に成されたものであり、電気泳動中に泳動方向を逆転させる性質を有する赤血球の含有率によって赤血球凝集発症の予知を可能とし、加えて、検体の陰陽極線方向の分布のみによる無駄な分布を不要とした解析によるものとし、且つ、泳動像の撮影における画像の鮮明度や均一度を図ることが可能な電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置を提供する事を目的とするものである。
【0018】
尚、本発明は、電気泳動液としてMES(2−(N−モルホリノ)エタン硫酸(2−(N−Morpholino)ethanesulfuric acid)を使用した場合に、このMESに赤血球測定用検体を浸漬させると、赤血球表膜にシアル酸を介して付着するアミノ基にMESに含有するスルホン酸基がイオン結合し、このイオン結合体によって赤血球測定用検体の全体的な表面電位が陰傾向や陽傾向へ変化することを発見した。
【0019】
また、本発明は、この発見から電気泳動液としてMESを使用した場合に、A1c値が正常な患者の赤血球測定用検体は陽傾向を呈して陰極側へ引き寄せられ、A1c値が異常な患者の赤血球測定用検体は陰傾向を呈して陽極側へ引き寄せられるという結果を得ることができ、電気泳動解析による赤血球表面電位測定に適した電気泳動液を提供することを目的とするものでもある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
すなわち、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標の集積結果が示す泳動方向の変化により、赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしたものとしている。
【0021】
また、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの各頂点座標の集積結果が示す頂点の変化により、赤血球測定用検体の粘度を測定できるようにしたものとしている。
【0022】
さらに、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標又は/及び各頂点座標の集積結果が示す泳動方向の変化又は/及び頂点の変化により、赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知又は/及び赤血球測定用検体の粘度を測定して赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしたものとしている。
【0023】
さらにまた、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、前記画像解析を、泳動槽の経時撮影を通電前(0分)と所定通電時間経過毎に30秒、1分、2分、3分の少なくとも合計5回の撮影を行って得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測し、該計測データを計算ソフトで解析するようにしたものとしている。
【0024】
そして、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、中間部の泳動セル浸漬用槽とその両側に電極挿入用槽とを有し、これら各槽間に泳動液流通孔を下部に穿設した仕切り壁を介設して各槽間で電気泳動液が流通するようにした3槽からなる泳動槽と、該泳動槽に注入された電気泳動液と、前記各電極挿入用槽に挿入された直流電源に接続されて通電可能な一対の陰陽極線と、前記泳動セル浸漬用槽の中央部に浸漬されて赤血球測定用検体を中央に導入する泳動セルとで電気泳動装置を形成し、該電気泳動装置の泳動セルを通電前及び所定通電時間経過毎に経時撮影する撮影装置と、該撮影装置の各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析する解析装置とからなるものとしている。
【0025】
また、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、前述した前記電気泳動装置に注入される電気泳動液を、2−(N−モルホリノ)エタン硫酸(2−(N−Morpholino)ethanesulfuric acid (MES; 0.05 mol/L, pH 7.0))にしたものとしており、赤血球表膜のアミノ基にMESに含有するスルホン酸基がイオン結合し、このイオン結合体によって赤血球測定用検体の全体的な表面電位の陰陽傾向へ変化が明確に表れる電気泳動液としている。
【0026】
さらに、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、前記電気泳動装置の中間部に浸漬させる泳動セルを、ガラス製で半円筒状に形成されているものとしている。
【0027】
さらにまた、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、前記電気泳動装置の中間部に浸漬させる泳動セルを、ODS導入(オクタデシルシランでコーティング)後の凹部内面にアルブミン(例えば牛アルブミン)を物理的吸着法で結合(BSA coating)して形成されたものとしている。
【0028】
加えて、赤血球測定用検体は、グリコヘモブロビンHbA1c測定用血液検体(窒化ソーダ入り)を使用しており、その全血0.5 uLを泳動セル中央部に導入して行っており、その解析は、フリーフロー電気泳動(free flow electrophoresis)で解析し、そのフリーフロー電気泳動像の画像解析で赤血球表面電位の病態を検討するものとしている。
【0029】
本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置では、特に、泳動セルに導入した赤血球測定用検体を、通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行って得られた各画像データを画像解析し、経時解析データの陰陽極線に向けた陰極側及び陽極側への各移動座標又は/及び頂点座標を数値化してこれをグラフ化し、その集積結果が示す変動分布から赤血球測定用検体の障害程度が予知できることにある。
【発明の効果】
【0030】
したがって、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標の集積結果が示す泳動方向の変化により、赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしているので、これにより血球膜表面において陰性を保持する正常な赤血球と血管内で凝集する可能性を有する泳動方向が逆転した赤血球の含有度を判別でき、これに応じてこの種の血管障害における予防処置を適宜施すことが可能となる。
【0031】
また、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの各頂点座標の集積結果が示す頂点の変化により、赤血球測定用検体の粘度を測定できるようにしているので、これによりこの測定結果に応じて血栓などの発症予防に活用できる。
【0032】
さらに、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標又は/及び各頂点座標の集積結果が示す泳動方向の変化又は/及び頂点の変化により、赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知又は/及び赤血球測定用検体の粘度を測定して赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしているため、一度の測定においてこれら複数種の測定結果が同時に得られ、血管障害における測定の迅速化が図れる。
【0033】
さらにまた、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、前記画像解析を、泳動槽の経時撮影を通電前(0分)と所定通電時間経過毎に30秒、1分、2分、3分の少なくとも合計5回の撮影を行って得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測し、該計測データを計算ソフトで解析するようにしているため、同条件下における各検体の均一な比較判別が行え、検体の状態を正確に把握できる。
【0034】
さらに、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法では、今後の血管障害由来の合併症の予知が可能となる大きな要因となり得るものであり、また、血球凝集防止薬の開発にも役立つものとなり得るばかりか、更には同薬の最善な使用方法を制定するものとなり得るものである。
【0035】
また、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法では、血球の粘度状態を測定できるため、今後の抗凝固剤の開発にも役立つものとなり、更には同剤の最善な使用方法を制定するものとなり得る。
【0036】
そして、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、中間部の泳動セル浸漬用槽とその両側に電極挿入用槽とを有し、これら各槽間に泳動液流通孔を下部に穿設した仕切り壁を介設して各槽間で電気泳動液が流通するようにした3槽からなる泳動槽と、該泳動槽に注入された電気泳動液と、前記各電極挿入用槽に挿入された直流電源に接続されて通電可能な一対の陰陽極線と、前記泳動セル浸漬用槽の中央部に浸漬されて赤血球測定用検体を中央に導入する泳動セルとで電気泳動装置を形成し、該電気泳動装置の泳動セルを通電前及び所定通電時間経過毎に経時撮影する撮影装置と、該撮影装置の各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析する解析装置とで構成されたものとしているため、陰陽極線から生じる電解泡が泳動セル浸漬用槽に移動しないように抑制でき、泳動像の撮影における画像の鮮明度や均一度を図ることができる。
【0037】
また、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、前述した前記電気泳動装置に注入される電気泳動液を、2−(N−モルホリノ)エタン硫酸(2−(N−Morpholino)ethanesulfuric acid (MES; 0.05 mol/L, pH 7.0))にしているため、赤血球測定用検体における電気泳動に最適のものとなる。
【0038】
さらに、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、前記電気泳動装置の中間部に浸漬させる泳動セルを、ガラス製で半円筒状に形成されているものとしているため、陰陽極線方向の泳動分布解析における無駄な検体の分布を防止できる。
【0039】
さらにまた、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置は、前記電気泳動装置の中間部に浸漬させる泳動セルを、その凹部内面にアルブミンをコーティングして形成されているものとしているため、該内面と赤血球測定用検体との付着を防止して、常時適正な泳動を実現できる。
【0040】
加えて、赤血球測定用検体は、グリコヘモブロビンHbA1c測定用血液検体(窒化ソーダ入り)を使用しており、その全血0.5 uLを泳動セル中央部に導入して行っており、その解析は、フリーフロー電気泳動(free flow electrophoresis)で解析し、そのフリーフロー電気泳動像の画像解析で赤血球表面電位の病態を検討するものとしているため、容易に電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置を構築できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置を、図面に示す一実施形態に基づきこれを詳細に説明する。図1は本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置の一実施形態を示す斜視説明図であり、図2は本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置に備えた泳動セルの一実施形態を示す断面図であり、図3は本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置の一実施形態を示す断面説明図であり、図4は本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置の一実施形態を示す模式図であり、図5は、本発明の電気泳動液としてMESを使用した場合のA1c値と赤血球測定用検体の陰陽極への移動状況を示した解析グラフであり、図6(a)乃至図11(a)は、泳動槽の撮影における各泳動時間に対応した陽極移動距離(Y)と陰極移動距離(X)及びこれらのX+Y値を記した測定結果の一覧表であり、図6(b)乃至図11(b)は、図6(a)乃至図11(a)の一覧表に基づいて表わした解析グラフである。また、図12(a)乃至図17(a)は本発明の泳動槽の撮影における各泳動時間に対応した高さ方向における検体移動距離(Z)及び陰陽極線上の移動距離(X−Y)を記した測定結果の一覧表であり、図12(b)乃至図17(b)は図12(a)乃至図17(a)の一覧表に基づいて表わした解析グラフである。さらに、図18は本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法における測定結果の検体移動座標及び検体頂点座標を経時的に表示した一実施形態を示す解析グラフであり、図19は従来技術を示す参考図である。
【0042】
すなわち、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標の集積結果が示す泳動方向の変化により、赤血球測定用検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしたものとしている。
【0043】
前記画像解析ソフトで解析される前記経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標について、図6(a)(b)乃至図11(a)(b)に示すように、赤血球測定用検体を導入する前記ゼロ地点位置から陽極への検体移動距離をX値とすると共に、同ゼロ地点位置から陰極への検体移動距離をY値とし、これら座標における前記集積結果を図6(a)乃至図11(a)のように数値化して、これを図6(b)乃至図11(b)に示すようにグラフ化して表示し、赤血球測定用検体における泳動方向の変化を求めるようにした。
【0044】
また、前記画像解析において、泳動槽の経時撮影を通電前(0分)と所定通電時間経過毎に30秒、1分、2分、3分の少なくとも合計5回の撮影を経時的に行って得られた各画像データを、RGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測し、該計測データを計算ソフトで解析するようにしている。
【0045】
尚、本発明では、電気泳動液としてMES(2−(N−モルホリノ)エタン硫酸(2−(N−Morpholino)ethanesulfuric acid)を使用しているが、これは、このMESに赤血球測定用検体を浸漬させると、赤血球表膜のアミノ基にMESに含有するスルホン酸基がイオン結合し、このイオン結合体によって赤血球測定用検体の全体的な表面電位が陰陽傾向へ変化するという発見によるものであり、この発見から、A1c値が正常な赤血球測定用検体をもつ患者ほど陰極側へ引き寄せられる傾向があり、A1c値が異常な赤血球測定用検体をもつ患者ほど陽極側へ引き寄せられる傾向があることが解かった。
【0046】
すなわち、図5は、電気泳動液としてMESを使用した場合のA1c値と赤血球測定用検体の陰陽極への移動状況を示した解析グラフであり、A1c値が正常な患者の赤血球測定用検体は陽傾向を呈して陰極側へ引き寄せられる傾向が顕著に示されており、A1c値が異常な患者の赤血球測定用検体は陰傾向を呈して陽極側へ引き寄せられているという傾向が顕著に示されている。
【0047】
例えば、図6に示す場合は、HbA1c値が5.3(正常値)の患者の全血0.5uLを使用したものである。同図6(a)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではY値は1.71mm、前記X値は3.17mmとなり(Y値+X値=4.89)、30秒後ではY値は1.80mm、前記X値は2.80mmとなり(Y値+X値=4.60)、1分後ではY値は1.88mm、前記X値は3.92mmとなり(Y値+X値=5.80)、2分後ではY値は1.88mm、前記X値は4.48mmとなり(Y値+X値=6.36)、3分後ではY値は1.92mm、前記X値は5.89mmとなった(Y値+X値=7.81)。
【0048】
この数値をグラフ表示したものが図6(b)で示しているが、これらの数値表示及びグラフ表示において、この赤血球測定用検体中の赤血球は、矢印で示したように経時的に一方向陰極側へ分布し、また表面電位が逆転する赤血球の動向は見られないと観察される。したがって、HbA1c値が正常であるこの患者は、赤血球凝集の発症率においては低いものと診断できる。
【0049】
図7に示す場合は、HbA1c値が5.0(正常値)の患者の全血0.5uLを使用したものである。同図7(a)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではY値は2.07mm、前記X値は1.99mmとなり(Y値+X値=4.06)、30秒後ではY値は2.50mm、前記X値は3.34mmとなり(Y値+X値=5.84)、1分後ではY値は3.26mm、前記X値は3.87mmとなり(Y値+X値=7.13)、2分後ではY値は5.07mm、前記X値は3.53mmとなり(Y値+X値=8.61)、3分後ではY値は7.16mm、前記X値は2.21mmとなった(Y値+X値=9.37)。
【0050】
よって、この数値をグラフ表示した図7(b)が示すように、この赤血球測定用検体中の赤血球は、表面電位が逆転する赤血球の動向は見られないものの、矢印で示したように経時的に一方向陽極側へ比較的大きく分布している。したがって、この患者は、HbA1c値が正常値であっても、赤血球凝集の発症率においては高いものと診断できる。
【0051】
図8に示す場合は、HbA1c値が5.6(略正常値)の患者の全血0.5uLを使用したものである。同図8(a)に記すように、この赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではY値は1.78mm、前記X値は1.70mmとなり(Y値+X値=3.48)、30秒後ではY値は1.93mm、前記X値は2.31mmとなり(Y値+X値=4.24)、1分後ではY値は2.36mm、前記X値は3.28mmとなり(Y値+X値=5.64)、2分後ではY値は3.82mm、前記X値は4.33mmとなり(Y値+X値=8.15)、3分後ではY値は2.66mm、前記X値は3.41mmとなった(Y値+X値=6.08)。
【0052】
よって、この数値をグラフ表示した図8(b)が示すように、この赤血球測定用検体は通電から2分後まではどちらかというと若干陰極側一方向へ傾倒していたが、その後泳動方向が逆転する様相を呈していることが判る。すなわち、この赤血球測定用検体中に血球凝集発症の因子が含まれているものと推測され、これを血球凝集発症の予知とすることができる。
【0053】
このように本発明は、HbA1c値が正常又はこれに近い状態の患者であっても、これまで電気泳動における測定が不可能であった赤血球凝集発症の予知が行えるのである。
【0054】
図9に示す場合は、HbA1c値が異常値である8.0の患者の全血0.5uLを使用したものである。同図9(a)に記すように、この赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではY値は2.24mm、前記X値は2.22mmとなり(Y値+X値=4.46)、30秒後ではY値は2.66mm、前記X値は2.77mmとなり(Y値+X値=5.43)、1分後ではY値は2.95mm、前記X値は3.62mmとなり(Y値+X値=6.57)、2分後ではY値は3.24mm、前記X値は3.95mmとなり(Y値+X値=7.20)、3分後ではY値は4.55mm、前記X値は3.87mmとなった(Y値+X値=8.42)。
【0055】
よって、この数値をグラフ表示した図9(b)が示すように、この赤血球測定用検体中の赤血球は、矢印で示したようにどちらかというと経時的に一方向陽極側へ傾倒しているが、同方向へ比較的穏やかに分布しており、また表面電位が逆転する赤血球の動向は見られないと観察される。したがって、HbA1c値が異常の患者の中でも、この患者は赤血球凝集の発症率においては比較的低いものと診断できる。
【0056】
また、図10に示す場合は、HbA1c値が8.1(異常値)の患者の全血0.5uLを使用したものである。同図10(a)に記すように、この赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではY値は2.00mm、前記X値は2.14mmとなり(Y値+X値=4.14)、30秒後ではY値は2.36mm、前記X値は2.82mmとなり(Y値+X値=5.18)、1分後ではY値は2.56mm、前記X値は3.00mmとなり(Y値+X値=5.57)、2分後ではY値は3.53mm、前記X値は3.21mmとなり(Y値+X値=6.74)、3分後ではY値は5.18mm、前記X値は2.33mmとなった(Y値+X値=7.50)。
【0057】
よって、この数値をグラフ表示した図10(b)が示すように、矢印で示したように経時的に一方向陽極側へ比較的大きく分布している。したがって、HbA1c値が異常であるこの患者は、赤血球凝集の発症においても注意を要すると診断できる。
【0058】
図11に示す場合は、HbA1c値が8.9(異常値)の患者の全血0.5uLを使用したものである。同図11(a)に記すように、この赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではY値は2.27mm、前記X値は2.27mmとなり(Y値+X値=4.55)、30秒後ではY値は2.92mm、前記X値は3.89mmとなり(Y値+X値=6.81)、1分後ではY値は2.92mm、前記X値は3.89mmとなり(Y値+X値=6.81)、2分後ではY値は3.33mm、前記X値は3.99mmとなり(Y値+X値=7.32)、3分後ではY値は4.65mm、前記X値は3.06mmとなった(Y値+X値=7.71)。
【0059】
よって、この数値をグラフ表示した図11(b)が示すように、この赤血球測定用検体中の赤血球は、矢印で示したように経時的に一方向陽極側へ分布している。したがって、HbA1c値が異常であるこの患者は、赤血球凝集の発症においても注意を要すると診断できる。
【0060】
このように本発明の方法では、HbA1c値にかかわらず赤血球凝集の発症を予知できるというものである。
【0061】
また、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法は、前述のように電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共に、これら各B(Blue)成分の輝度が示す頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの各頂点座標の集積結果が示す頂点の変化により、赤血球測定用検体の粘度を測定できるようにしたものとしている。
【0062】
すなわち、図12(a)(b)乃至図17(a)(b)に示すように、前記頂点座標における前記陰陽極線方向の変化を、赤血球測定用検体を導入する前記ゼロ地点位置を基点として陽極への検体移動距離をX値(マイナス値)と共に、同ゼロ地点位置から陰極への検体移動距離をY値(プラス値)とからなるX−Y値で表し、且つ該ゼロ地点位置から高さ方向における検体移動距離をZ値(プラス値)とし、この頂点座標における前記集積結果を図12(a)乃至図17(a)のように数値化して、これを図12(b)乃至図17(b)の示すようにグラフ表示して、赤血球測定用検体における粘度の測定を可能とした。
【0063】
この赤血球測定用検体の粘度測定について、例えば前記所定時間における前記Z値の変化指数などから導き出せる。
【0064】
例えば図12の場合、HbA1c値が4.8(正常値)の患者の全血0.5uLを使用したものであるが、同図12(a)(b)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではZ値は54.33及びX−Y値は−0.11mmとなり、30秒後ではZ値は50.18及びX−Y値は0.25mmとなり、1分後ではZ値は41.00及びX−Y値は0.22mmとなり、2分後ではZ値は36.69及びX−Y値は−0.13mmとなり、3分後ではZ値は30.53及びX−Y値は−0.30mmとなった。(Z値は指数)
【0065】
よって、この赤血球測定用検体のZ値における最大変化指数幅は23.8(=54.33−30.53)となる。
【0066】
また、図13の場合、HbA1c値が5.0(正常値)の患者の全血0.5uLを使用したものであるが、同図13(a)(b)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではZ値は61.04及びX−Y値は−0.70mmとなり、30秒後ではZ値は64.33及びX−Y値は−0.48mmとなり、1分後ではZ値は63.76及びX−Y値は0.42mmとなり、2分後ではZ値は61.47及びX−Y値は0.25mmとなり、3分後ではZ値は50.27及びX−Y値は−0.25mmとなった。
【0067】
よって、この赤血球測定用検体のZ値における最大変化指数幅は14.06(=64.33−50.27)となる。
【0068】
さらに図14の場合、HbA1c値が5.6(略正常値)の患者の全血0.5uLを使用したものであるが、同図14(a)(b)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではZ値は57.65及びX−Y値は0.02mmとなり、30秒後ではZ値は53.06及びX−Y値は0.00mmとなり、1分後ではZ値は55.65及びX−Y値は−0.02mmとなり、2分後ではZ値は58.24及びX−Y値は0.02mmとなり、3分後ではZ値は47.88及びX−Y値は0.03mmとなった。
【0069】
よって、この赤血球測定用検体のZ値における最大変化指数幅は10.36(=58.24−47.88)となる。
【0070】
図15の場合、HbA1c値が8.0(異常値)の患者の全血0.5uLを使用したものであるが、同図15(a)(b)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではZ値は57.27及びX−Y値は−0.03mmとなり、30秒後ではZ値は56.49及びX−Y値は−0.03mmとなり、1分後ではZ値は56.41及びX−Y値は−0.05mmとなり、2分後ではZ値は47.65及びX−Y値は−0.05mmとなり、3分後ではZ値は46.22及びX−Y値は−0.05mmとなった。
【0071】
よって、この赤血球測定用検体のZ値における最大変化指数幅は11.05(=57.27−46.22)となる。
【0072】
図16の場合、HbA1c値が8.1(異常値)の患者の全血0.5uLを使用したものであるが、同図16(a)(b)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではZ値は14.76及びX−Y値は−0.32mmとなり、30秒後ではZ値は13.69及びX−Y値は0.38mmとなり、1分後ではZ値は14.47及びX−Y値は0.62mmとなり、2分後ではZ値は13.24及びX−Y値は0.59mmとなり、3分後ではZ値は11.18及びX−Y値は0.59mmとなった。
【0073】
よって、この赤血球測定用検体のZ値における最大変化指数幅は3.58(=14.76−11.18)となる。
【0074】
図17の場合、HbA1c値が8.9(異常値)の患者の全血0.5uLを使用したものであるが、同図17(a)(b)に記すようにこの赤血球測定用検体を前記ゼロ地点位置に導入した通電前の0分ではZ値は12.35及びX−Y値は0.03mmとなり、30秒後ではZ値は14.75及びX−Y値は0.13mmとなり、1分後ではZ値は14.27及びX−Y値は0.50mmとなり、2分後ではZ値は11.82及びX−Y値は0.63mmとなり、3分後ではZ値は7.63及びX−Y値は0.48mmとなった。
【0075】
よって、この赤血球測定用検体のZ値における最大変化指数幅は7.12(=14.75−7.63)となる。
【0076】
これら図12(a)(b)乃至図17(a)(b)に示す前記Z値における各最大変化指数幅を比較検討すると、明らかに赤血球測定用検体の粘度の差異が見られた。すなわち、図12や図13の場合のように同指数幅が高い程、赤血球測定用検体の粘度が低く、逆に図16や図17の場合のように同指数幅が低い程、赤血球測定用検体の粘度が高いと推測されるのである。
【0077】
尚、前記頂点座標における前記集積結果から赤血球測定用検体の粘度を測定する場合、前述したような赤血球測定用検体における陰極側及び陽極側への各移動座標(X、Y)の集積結果に基づく泳動方向の変化により、検体中の赤血球における凝集発症の可能性予知をも同時に実施するようにしてもよい。
【0078】
その場合、図18に示すように、前記移動座標(X、Y)及び前記頂点座標(Z)を同時に表示可能なグラフ画像によって、その経時的変化を観察するようにしてもよい。
【0079】
次に、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置について説明すると、図1及び図4に示したものは、該測定装置を電気泳動装置Aと撮影装置6aと解析装置7aとで構成したものを例示している。
【0080】
すなわち、前記電気泳動装置Aは、図1及び図3に示したように、中間部の泳動セル浸漬用槽10a(2.7cm×2.5cm×3cm)とその両側に電極挿入用槽101a・101aをそれぞれ有しており、これら各槽101a・10a・101a間に、泳動液流通孔111aを下部に穿設した仕切り壁11aを介設して各槽101a・10a・101a間で電気泳動液2aが流通するようにした3槽からなる泳動槽1aを備えており、該泳動槽1aには、電気泳動液2aが注入されており、前記各電極挿入用槽101a・101aには、直流電源Pに接続されて通電可能な一対の陰陽極線4a・4bが挿入されている。また、前記泳動セル浸漬用槽10aの中央部には、中央に赤血球測定用検体5aを導入する泳動セル3aが浸漬されており、赤血球表面電位測定時に該泳動セル3aの中央のゼロ地点位置(基点)にピペット等で赤血球測定用検体5aを導入して泳動方向の変化を観察できるようにしたものとしている。
【0081】
また、本発明の赤血球表面電位測定装置は、前述したように、前記電気泳動装置Aの前記泳動セル3aを通電前及び所定通電時間経過毎に経時撮影する撮影装置6aと、該撮影装置6aの各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置Sを基点として画像解析ソフトで計測して画像解析する解析装置7a(パーソナルコンピュータなど)とで、図4に示すように構成されたものとしている。
【0082】
尚、前記電気泳動液2aとしては、前述したような、2−(N−モルホリノ)エタン硫酸(2−(N−Morpholino)ethanesulfuric acid (MES; 0.05 mol/L, pH 7.0))を採用している。
【0083】
前記泳動槽1aは、直方体泳動槽(8cm×2.5cm×3cm ポリプロピレン製)として形成されたものを使用している。尚、この材質は問わず、例えば他の透明樹脂又はガラス板にて製作されたものであってもよい。
【0084】
前記泳動セル3aは、図1及び図2に示すように前記電気泳動装置Aの中間部に前記電気泳動液2aに浸漬させており、ガラス製で半円筒状に形成したものを使用している(内径14 mm、深さ7mm、長さ25mm)。
【0085】
また、この泳動セル3aの凹部内面には、図2に示すように該内面に対する前記赤血球測定用検体5aの付着を防止するため、アルブミンをコーティングしている(BSA coating)。
【0086】
本実施例では、前記撮影装置6aとして、市販のデジタルカメラ(COOLPIX995, NIKON)を採用している。
【0087】
加えて、本実施例では、前記赤血球測定用検体5aとして、グリコヘモブロビンHbA1c測定用血液検体(窒化ソーダ入り)を使用している。
【0088】
而して、本発明の赤血球表面電位測定装置は、前記赤血球測定用検体5aの全血0.5 uLを前記電気泳動装置Aの泳動セル3aの中央部に導入し、フリーフロー電気泳動(free flow electrophoresis)でその解析を行い、そのフリーフロー電気泳動像の画像解析で赤血球表面電位の病態を検討するものとしている。
【0089】
前記陰陽極線4a・4bの通電は、室温において定電圧(100V;20−30mA)で3分間行い、前記撮影装置6aによる泳動像の撮影後、その撮影画像(500万画素)を前記解析装置7aにてRGB分解し、そのうちB成分の輝度をピクセル毎に画像解析ソフト(WinRoof 、三谷商事)で計測し、そのデータをEXCEL(Microsoft)で解析するという手順を踏む。
【0090】
上述したように、本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法及びその装置の主な特徴は、前記泳動セル3aに導入した赤血球測定用検体5aを、通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽1aの経時撮影を行って得られた各画像データを画像解析し、経時解析データの前記陰陽極線4a、4bに向けた陰極側及び陽極側への各移動座標又は/及び頂点座標を数値化してこれをグラフ化し、その集積結果が示す変動分布から赤血球測定用検体の障害程度が予知できることにある。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置の一実施形態を示す斜視説明図である。
【図2】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置に備えた泳動セルの一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置の一実施形態を示す断面説明図である。
【図4】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置の一実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の電気泳動液としてMESを使用した場合のA1c値と赤血球測定用検体の陰陽極への移動状況を示した解析グラフである。
【図6】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図7】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図8】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図9】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図10】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図11】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図12】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体頂点座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図13】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体頂点座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図14】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体頂点座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図15】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体頂点座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図16】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体頂点座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図17】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体頂点座標を示した数値の一覧表(a)及び解析グラフ(b)である。
【図18】本発明の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法により実施された測定結果の検体移動座標及び検体頂点座標を経時的に表示した解析グラフである。
【図19】従来技術を示す参考図である。
【符号の説明】
【0092】
A 電気泳動装置
1a 泳動槽
10a 泳動セル浸漬用槽
101a 電極挿入用槽
11a 仕切り壁
111a 泳動液流通孔
2a 電気泳動液
3a 泳動セル
31a アルブミン
4a、4b 陰陽極線
P 直流電源
5a 赤血球測定用検体
6a 撮影装置
7a 解析装置
S ゼロ地点位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標の集積結果が示す泳動方向の変化により、赤血球測定用血液検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしたことを特徴とする電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法。
【請求項2】
電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標又は/及び各頂点座標の集積結果が示す泳動方向の変化又は/及び頂点の変化により、赤血球測定用血液検体の血管内での凝集発症の可能性予知又は/及び赤血球測定用血液検体の粘度を測定して赤血球測定用血液検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしたことを特徴とする電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法。
【請求項3】
前記画像解析は、泳動槽の経時撮影を通電前(0分)と所定通電時間経過毎に30秒、1分、2分、3分の少なくとも合計5回の撮影を行って得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測し、該計測データを計算ソフトで解析するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法。
【請求項4】
中間部の泳動セル浸漬用槽とその両側に電極挿入用槽とを有し、これら各槽間に泳動液流通孔を下部に穿設した仕切り壁を介設して各槽間で電気泳動液が流通するようにした3槽からなる泳動槽と、該泳動槽に注入された電気泳動液と、前記各電極挿入用槽に挿入された直流電源に接続されて通電可能な一対の陰陽極線と、前記泳動セル浸漬用槽の中央部に浸漬されて赤血球測定用検体を中央に導入する泳動セルとで電気泳動装置を形成し、該電気泳動装置の泳動セルを通電前及び所定通電時間経過毎に経時撮影する撮影装置と、該撮影装置の各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析する解析装置とで構成されたことを特徴とする電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置。
【請求項5】
前記電気泳動装置の電気泳動液を、2−(N−モルホリノ)エタン流酸(2−(N−Morpholino)ethanesulfuric acid(MES; 0.05 mol/L, pH 7.0))にしていることを特徴とする請求項4記載の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置。
【請求項6】
前記電気泳動装置の泳動セルは、ガラス製で半円筒状に形成されているものであることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置。
【請求項7】
前記電気泳動装置の泳動セルは、その凹部内面にアルブミンをコーティングして形成されているものであることを特徴とする請求項4、請求項5又は請求項6記載の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置。
【請求項1】
電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標の集積結果が示す泳動方向の変化により、赤血球測定用血液検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしたことを特徴とする電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法。
【請求項2】
電気泳動液が収容されて通電可能な泳動槽内の中間部に泳動セルを浸漬させ、該泳動セル中央のゼロ地点位置に赤血球測定用検体を導入して通電前及び所定通電時間経過毎の泳動槽の経時撮影を行い、該経時撮影によって得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析し、この経時解析データの陰極側及び陽極側への各移動座標又は/及び各頂点座標の集積結果が示す泳動方向の変化又は/及び頂点の変化により、赤血球測定用血液検体の血管内での凝集発症の可能性予知又は/及び赤血球測定用血液検体の粘度を測定して赤血球測定用血液検体の血管内での凝集発症の可能性予知ができるようにしたことを特徴とする電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法。
【請求項3】
前記画像解析は、泳動槽の経時撮影を通電前(0分)と所定通電時間経過毎に30秒、1分、2分、3分の少なくとも合計5回の撮影を行って得られた各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測し、該計測データを計算ソフトで解析するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電気泳動解析による赤血球表面電位測定方法。
【請求項4】
中間部の泳動セル浸漬用槽とその両側に電極挿入用槽とを有し、これら各槽間に泳動液流通孔を下部に穿設した仕切り壁を介設して各槽間で電気泳動液が流通するようにした3槽からなる泳動槽と、該泳動槽に注入された電気泳動液と、前記各電極挿入用槽に挿入された直流電源に接続されて通電可能な一対の陰陽極線と、前記泳動セル浸漬用槽の中央部に浸漬されて赤血球測定用検体を中央に導入する泳動セルとで電気泳動装置を形成し、該電気泳動装置の泳動セルを通電前及び所定通電時間経過毎に経時撮影する撮影装置と、該撮影装置の各画像データをRGB(Red−Green−Blue)分解すると共にこれら各B(Blue)成分の輝度が示す移動座標又は/及び頂点座標をピクセル毎に前記ゼロ地点位置を基点として画像解析ソフトで計測して画像解析する解析装置とで構成されたことを特徴とする電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置。
【請求項5】
前記電気泳動装置の電気泳動液を、2−(N−モルホリノ)エタン流酸(2−(N−Morpholino)ethanesulfuric acid(MES; 0.05 mol/L, pH 7.0))にしていることを特徴とする請求項4記載の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置。
【請求項6】
前記電気泳動装置の泳動セルは、ガラス製で半円筒状に形成されているものであることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置。
【請求項7】
前記電気泳動装置の泳動セルは、その凹部内面にアルブミンをコーティングして形成されているものであることを特徴とする請求項4、請求項5又は請求項6記載の電気泳動解析による赤血球表面電位測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−47518(P2009−47518A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213177(P2007−213177)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(501169914)サンプラスチックス株式会社 (1)
【出願人】(502313196)
【出願人】(502313200)
【出願人】(503276285)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(501169914)サンプラスチックス株式会社 (1)
【出願人】(502313196)
【出願人】(502313200)
【出願人】(503276285)
【Fターム(参考)】
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