説明

電気湯沸かし器

【課題】 内容器の内壁と外壁を絞り込んだ口元を金属亀裂を生じさせることなく、しかも保温効果を向上させることができ、又、内容器の組立作業の手間を大きく減少させて、作業効率の良い電気湯沸かし器を提供する。
【解決手段】 内容器3の内壁と外壁とを、共に口元に向けてなめらかに絞り込んで口元で接合し、口元上端より外側に向けて延びたフランジ部の外径が外壁の外径よりも小さい径とする一方、肩部材5の環状受部上にシールパッキンを介して載置し、環状受部上の蓋体6の覆板23と下蓋22と上蓋と下蓋との間の断熱材25とが内容器3内へ大きく進入する構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製真空二重の内容器を有し、ヒータにて内容器内の液体を沸かし、保温する電気湯沸かし器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気湯沸かし器としては、外装体に囲まれた金属製真空二重の内容器を設け、この内容器の底部のみを一重壁として、底部外壁にヒータを張設し、内容器内壁の口元を内側に極端に折り曲げて狭くした絞り込み部を設け、内壁と接触する外壁と共に口元の上端を外側へ向けて延ばしたフランジ部を設け、このフランジ部を外装体上端の肩部材の中央開口の受部に載置する構造の電気貯湯容器が特開2002−330869号公報(特許文献1、図1及び図2参照)として存在する。
【0003】
【特許文献1】特開2002−330869号(図1及び図2)
【0004】
以下、特許文献1の図1及び図2により従来の電気湯沸かし器について説明する。
この特許文献1の電気貯湯容器は、外装ケース12に囲まれた真空二重容器3を設け、この真空二重容器3を有底筒状に形成して底部を一重壁とし、胴部を内筒1、外筒2からなる真空二重壁として、内筒1の開口7に絞り込み部を大きく設け、開口上端に外側に向けて外鍔3dを設けている。更に、外装ケース12の上端に肩部16を設け、この肩部16の中央に上下に貫通で立上り壁18にて囲まれた開口部を設け、開口部の立上り壁18の下部に中央内側に向けて延びた環状受部を設け、肩部16の開口部上端より真空二重容器3を落とし込み、肩部の環状受部上に真空二重容器の外鍔3dを載置した後、外装ケースの下端より真空二重容器を締め付け、肩部の開口部内に蓋8を着脱自在に装着した構成としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この種の電気湯沸かし器では、真空二重容器の内筒1の絞り込み部が狭い区域で極端な鋭角でもって形成されているために、内筒の成形が難しく、絞り込み部の鋭角な個所に熱による金属亀裂が生じて、保温力の低下をきたす恐れがあるという問題点があった。しかも、内筒自体の絞り込みにより肩部の開口部に着脱自在に装着する蓋の下面を絞り込み部より下方に大きく下げることができないために、蓋の上下幅を広くすることができなく、蓋による開口部での保温性を向上することができないという問題点もあった。
【0006】
又、真空二重容器は、外筒2の外径を外鍔3dよりも大きくして肩部の開口部上方より落とし込んで、開口部に長さのある胴体を通さなければならないために、組立時の手間が煩わしい作業となるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有底筒状で底部を一重壁、胴部を内壁3aと外壁3bとで真空二重壁とし、口元を内側中央に向けて狭め口元より延びたフランジ部3dを備える内容器3を設け、内容器3の底部外壁周りに固定するヒータ7を設け、内容器3の胴部を囲む外装ケース2を設け、外装ケース2の下端に内容器の底部を覆う底部材4を設け、外装ケース2の上端に内容器の上部を覆う肩部材5を設け、肩部材5の中央を上下に開口し、この中央開口を形成する周壁の下端に中央に向けて延びた環状受部10を設け、肩部材5の上端に内容器の口元を開閉する上蓋21と下蓋22と覆板23とを備える蓋体6を設けた電気湯沸かし器1に於いて、上記内容器3の内壁3aと外壁3bとは、共に口元に向けてなめらかに絞り込んで口元で接合し、口元上端より外側に向けて延びたフランジ部3dの外径が外壁3bの外径よりも小さい径とする一方、肩部材5の環状受部10上にシールパッキン20を介して載置し、環状受部10上の蓋体6の覆板23と下蓋22と上蓋と下蓋との間の断熱材25とが内容器3内へ大きく進入する構成としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、従来の問題点を解決したものであって、内容器の内壁と外壁とを口元に向けてなめらかに絞り込んで金属亀裂を生じさせることなく、しかも断熱材を充填した蓋体下面を斜め下方に降下させて、保温効果を向上させることができ、又、内容器の組立作業の手間を大きく減少させて、非常に作業効率の良いものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
電気湯沸かし器1は、外装ケース2に囲まれた内容器3と、外装ケース2の下端に結合し、内容器3の底部を覆う底部材4と、外装ケース2の上端に結合し、内容器3の口元を支える肩部材5と、肩部材5の上端中央に着脱自在に装着し、内容器3の口元を開閉する蓋体6と、内容器3内の液体を加温するヒータ7と、内容器3内の液体温度を感知してヒータ7をON、OFFする温度調節器8と、内容器内の液体を外部へ吐出する吐出機構9とから構成している。
【0010】
外装ケース2は、金属製又は合成樹脂製で前面を内側に窪ませた筒状に形成されており、内容器3の胴体が自由に挿通できる大きさの内径を有している。
【0011】
内容器3は、図3に示すように、ステンレス等の金属製材料にて有底筒状の内壁3aと内壁3aよりもわずかに大きな筒状の外壁3bとを設け、内壁3aの底部中央より離れた底部外壁に外壁3bの底部を溶着し、内壁3aの口元に外壁3bの口元を溶着して内、外壁間を真空引きして、底部一重で胴部真空二重としている。
【0012】
内容器3の内壁3aは、口元に向かって胴体の径よりも小さい径でなめらかに絞り込んで徐々に狭めている。この内壁3aの口元の内径R1は、後述のヒ−タ押板11のスポット溶接個所周りの外径R2である内容器3の底部の一重壁部分よりも大きい径に形成している。
【0013】
内容器3の外壁3bは、内壁3aと同様に、口元に向かって胴体の径よりも小さい径でなめらかに絞り込んで徐々に狭めており、口元を内壁3aの口元外壁と接触溶着させた後外壁3b口元の上端に外側に向けて延びたフランジ部3dを設けて、底部を後述の外周底壁3hより内壁3aを包むように真空二重としている。
【0014】
内壁3aと外壁3bとからなる内容器3の底部は、中央より後述の温度調節器8と接触する温度調節器当接壁3eと、温度調節器当接壁3e周りでヒータ7と接触するヒータ当接壁3fと、ヒータ押板11と接触するヒータ押板当接壁3gと、二重壁となる外周底壁3hとを順次段状に窪ませて形成している。
3jは、内容器3内と連通して外部に通じるパイプ状の下筒であって、内壁3aのヒータ押板当接壁3gの前方に垂下している。
【0015】
内容器3内の液体を加熱するヒータ7は、ヒータ7を覆うヒータカバーと、ヒータカバーと共にヒータ7を内容器3のヒータ当接壁3fに固定するヒータ押板11と、ヒータ押板11にビス止めされ、ヒータの熱を内容器の底部外側に逃がさない遮蔽板12とを備えている。
【0016】
ヒータ7は、中央を空洞としており、内容器3内の液体を沸騰状態まで加熱する湯沸かし用のメインヒータと、保温状態を維持する保温用のサブヒータとの二相を配設して、内容器3のヒータ当接壁3fに当接している。
【0017】
ヒータ押板11は、中央を切り欠いており、ヒータ押板当接壁3gに当接する外周壁の下面にビス用アングルを溶接している。このビス用アングルは、ヒータ押板11のスポット溶接前の前加工としてヒータ押板に溶接されている。
このヒータ押板11は、ヒータカバーと共にヒータ7を内容器3のヒータ当接壁3fに押しつけた状態で、その周りを内容器のヒータ押板当接壁3gに適宜の間隔を隔ててスポット溶接している。
【0018】
遮蔽板12は、ヒータ押板11のビス用アングルにビスにて固定されていて、図1に示すように、ヒータ7の熱が遮蔽板よりも下方へ逃げないようにしている。
【0019】
外装ケース2の上端に結合した肩部材5は、中央を上下に開口した開口部を設け、開口部の前面に前方に延びた嘴部を設け、開口部の後面にヒンジ部を設けており、開口部を形成する周壁の下部に内側中央に向けて延びた環状受部10を設けている
【0020】
この開口部の環状受部10は、図4乃至図6に示すように、先端に一段低い段部13を設けており、この段部13の内径が内容器の外壁3bのフランジ部3d外径よりも大きく形成して、内容器のフランジ部3dがスムーズに挿通できるようにしている。
この開口部の環状受部10の内側には、環状受部10の段状に沿って嵌め込まれる段状型のシールパッキン20を張設しており、このシールパッキン20上に内容器3のフランジ部3dを当接している。このシールパッキン20は、ゴム等の弾力性、耐熱性を有する材料にて形成している。この開口部には、肩部材5のヒンジ部に枢支された蓋体6を開閉自在に装着している。
【0021】
肩部材5の嘴部は、下側から上向きに空洞としており、この空洞内に湯沸かし、保温用のスイッチ、ランプや後述の吐出機構9の吐出パイプ等を収納しており、この嘴部の前方上面に各スイッチや吐出スイッチ等を表示した制御板を設けている。
【0022】
内容器3の取り付けに際しては、図4乃至図5に示すように、先ず肩部材5の開口部下方より内容器3を押し上げ、開口部の環状受部10上方に内容器3の口元のフランジ部3dを一旦載置する。次に、図5に示すように、段状型のシールパッキン20を内容器3の口元のフランジ部3d上方より無理嵌めしてフランジ部3d下方へ導く。更に、図6に示すように、肩部材5の環状受部10の段部13に向けてシールパッキン20を嵌め込んだ後に、一旦押し上げた内容器3のフランジ部3dを押し下げて、シールパッキン20上に載置する。その後、後述の底部材4の閉鎖板15の締め付けによって、内容器3が取り付けられる
【0023】
肩部材5のヒンジ部に枢支された蓋体6は、上蓋21と、下蓋22と、下蓋22の下面を覆い肩部材5の開口部を閉鎖する金属製の覆板23と、上蓋21と下蓋22との間に充填する断熱材25と、内容器3の蒸気を外部へ放出する蒸気通路24とにて構成している。
【0024】
この肩部材5の覆板23は、内容器3の口元より内容器内部へ大きく進入しており、覆板23に伴って下蓋22も同様に内容器内部へ大きく進入して、蒸気通路24を除いて充填された断熱材25も同様に内容器内部へ大きく進入して、蓋体6による保温性を上げている。
【0025】
内容器3の底部を覆う底部材4は、リング状で合成樹脂製の底板14と、底板14の中央開口を閉鎖する金属製の閉鎖板15とからなっている。
底板14は、外装ケース2の横断面形状と同一形状の胴部と中央を開口した底部とからなっており、この底部に金属製平板状の閉鎖板15を被せている。
【0026】
温度調節器8は、サーミスタ等にて形成されており、内容器3の温度調節器当接壁3eに当接して遮蔽板12に固定保持されている。この温度調節器8は、内容器3内の液温を感知してコンピュータ制御によりヒータ7をON、OFFしている。コンピュータ制御する基盤は、内容器3と底部材4間に配置されており、肩部材5の嘴部の前方上面に表示された制御板の操作によって、コンピュータが制御され、ヒータ7や後述の吐出機構9を作動している。
【0027】
吐出機構9は、図1及び図2に示すように、内容器3内の液体を吸い上げて吐出パイプ16先端より外部へ排出する連動ポンプ17と、吐出パイプ16と連動ポンプ17との間にあって内容器3内の液量を表示する液量表示パイプ(図示せず)と、液量表示パイプと吐出パイプ16との間にあって転倒時液量表示パイプ内の液体を止めて吐出パイプ16からの流出を阻止する転倒流水弁部18と、内容器3の下筒3jと連動ポンプ17とを連結するジョイントパイプ(図示せず)とからなっている。
【0028】
このようにして内容器3の口元に近い内径R1に対して、一重部分のもっとも外側となるヒータ押板当接壁3gの外径R2を小さくしてヒータ押板11のスポット溶接を確実にすると共に、このヒータ押板当接壁3gの内径R2が小さいにもかかわらず、ヒータ7をメインヒータと、サブヒータとの二相に配置しているので、内容器3内の保温効果と不要な消費電力の供給がコントロールされて、より効率の良い電気湯沸かし器とすることができる。
【0029】
以上本発明の代表的と思われる実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれら実施例構造のみに限定されるものではなく、本発明にいう前記の構成要件を備え、かつ、本発明にいう目的を達成し、本発明にいう効果を有する範囲内において適宜改変して実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明実施例の縦断面図。
【図2】本発明実施例の閉鎖板を除いた底面図。
【図3】本発明実施例の内容器の縦断面図。
【図4】本発明実施例の内容器の組立前を示す一部説明図。
【図5】本発明実施例の内容器の載置前を示す一部説明図。
【図6】本発明実施例の内容器の載置状態を示す一部説明図。
【符号の説明】
【0031】
1…電気湯沸かし器
2…外装ケース
3…内容器
3a…内壁
3b…外壁
3d…フランジ部
3e…温度調節器当接壁
3f…ヒータ当接壁
3g…ヒータ押板当接壁
3h…外周底壁
3j…下筒
4…底部材
5…肩部材
6…蓋体
7…ヒータ
8…温度調節器
9…吐出機構
10…環状受部
11…ヒータ押板
12…遮蔽板
13…段部
14…底板
15…閉鎖板
16…吐出パイプ
17…連動ポンプ
20…シールパッキン
21…上蓋
22…下蓋
23…覆板
24…蒸気通路
25…断熱材
R1…口元の内径
R2…底部の一重部分の外径


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状で底部を一重壁、胴部を内壁(3a)と外壁(3b)とで真空二重壁とし、口元を内側中央に向けて狭め口元より延びたフランジ部(3d)を備える内容器(3)を設け、内容器(3)の底部外壁周りに固定するヒータ(7)を設け、内容器(3)の胴部を囲む外装ケース(2)を設け、外装ケース(2)の下端に内容器の底部を覆う底部材(4)を設け、外装ケース(2)の上端に内容器の上部を覆う肩部材(5)を設け、肩部材(5)の中央を上下に開口し、この中央開口を形成する周壁の下端に中央に向けて延びた環状受部(10)を設け、肩部材(5)の上端に内容器の口元を開閉する上蓋(21)と下蓋(22)と覆板(23)とを備える蓋体(6)を設けた電気湯沸かし器(1)に於いて、上記内容器(3)の内壁(3a)と外壁(3b)とは、共に口元に向けてなめらかに絞り込んで口元で接合し、口元上端より外側に向けて延びたフランジ部(3d)の外径が外壁(3b)の外径よりも小さい径とする一方、肩部材(5)の環状受部(10)上にシールパッキン(20)を介して載置し、環状受部(10)上の蓋体(6)の覆板(23)と下蓋(22)と上蓋(21)と下蓋(22)との間の断熱材(25)とが内容器(3)内へ大きく進入することを特徴とした電気湯沸かし器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−102338(P2006−102338A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295760(P2004−295760)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000104032)オルゴ株式会社 (22)
【Fターム(参考)】