説明

電気湯沸かし器

【課題】内容器の外周に断熱部材を備えた構成であっても、径方向への寸法を極力抑制する。
【解決手段】底部材1と、有底筒状で、底部材1の中央部に配設され、内部に液体が収容される内容器16と、底部材1の外縁部に配設され、内容器16との間に空間部を形成する外装体14と、筒状で、内面円筒パネル44と補強構造を備えた外面円筒パネル45との間に形成される空間を真空引きされ、内容器16と外装体14との間の空間部に配設される断熱部材17と、外装体14の上方開口部に配設され、内容器16を支持する肩部材15とを備えた構成とする。そして、底部材1又は肩部材15の少なくともいずれか一方に、断熱部材17に当接して熱対流を防止する当接部5又は30を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気湯沸かし器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気湯沸かし器として、内容器の外周部分に断熱部材を備え、保温性能を高めるようにしたものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−161565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、断熱部材として芯材を外袋で覆って内部を真空引きした真空断熱材が使用されている。このため、径方向への大型化が避けらない。
【0005】
そこで、本発明は、内容器の外周に断熱部材を備えた構成であっても、径方向への寸法を極力抑制することのできる電気湯沸かし器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記課題を解決するための手段として、電気湯沸かし器を、底部材と、有底筒状で、前記底部材の中央部に配設され、内部に液体が収容される内容器と、前記底部材の外縁部に配設され、前記内容器との間に空間部を形成する外装体と、筒状で、内面円筒パネルと補強構造を備えた外面円筒パネルとを上下開口部で接合一体化し、両部材の間に形成される空間を真空引きしてなり、前記内容器と外装体との間の空間部に配設される断熱部材と、前記外装体の上方開口部に配設され、前記内容器を支持する肩部材とを備えた構成とし、前記底部材又は前記肩部材の少なくともいずれか一方に、前記断熱部材の上下開口部の接合部分の近傍に位置し、あるいは、当接して熱対流を防止する当接部を形成したものである。
【0007】
この構成により、すなわち、補強構造を備えた外面円筒パネルにより、断熱部材を、芯材のない真空空間のみを備えた構成とし、径方向の占有スペースを抑制可能となる。そして、当接部は、断熱部材の上下開口部の接合部分の近傍に位置するか、あるいは、当接するだけでよい。したがって、当接部自体を薄く構成することができ、径方向への寸法の抑制効果が高まる。
【0008】
前記当接部は、前記底部材又は前記肩部材自身の剛性を高めるための補強リブで構成するのが好ましい。
【0009】
この構成により、当接部に熱対流の防止機能だけでなく、底部材又は肩部材自身の強度を高める機能をも持たせることができ、構成を簡略化しつつ、軽量化を図ることが可能となる。
【0010】
前記肩部材は、前記外装体の上方開口部内に配設され、前記内容器を支持する環状部を備え、該環状部の外周面に、前記断熱部材を前記当接部へと導く案内部を形成し、前記案内部は、環状部の下端に向かって徐々に突出寸法が小さくなる複数の補強リブで構成するのが好ましい。
【0011】
この構成により、内容器を支持する部分である環状部の剛性を損なうことなく軽量化することができるだけでなく、肩部材への断熱部材の組み付け作業をスムーズに行わせることができ、断熱部材の上端開口部(接合部分)を適切な位置に導くことが可能となる。
【0012】
前記肩部材は、略周方向に沿って並設され、略径方向に延びる複数の補助リブを備え、前記補助リブは、内端面で前記断熱部材の外周面をガイドし、外端面で肩部材に装着する外装体の上端開口部を支持するのが好ましい。
【0013】
この構成により、肩部材への断熱部材の上端開口部の位置決めを、簡単な構成であるにも拘わらず、より一層適切に行わせることが可能となる。また、肩部材自身の剛性を高めつつ、外装体を支持することも可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、断熱部材は芯材が不要であり、径方向の占有スペースを抑制することができる。また、熱対流を防止するための当接部は、断熱部材の上下開口部の接合部分に対応するものでよく、非常に薄く形成できる。したがって、電気湯沸かし器を非常にコンパクトに形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(構成)
図1乃至図4は、本実施形態に係る電気湯沸かし器を示す。この電気湯沸かし器は、大略、底部1、胴部2、及び、蓋部3で構成されている。以下の説明では、注水側を前方、その反対側を後方と記載する。
【0017】
(1 底部)
底部1は合成樹脂材料を成形加工したもので、図5に示すように、略円形状の板材の前方側を内側(後方側)に窪ませた形状で、外縁部には上方に突出する周壁1aが形成され、その内側上面には補強リブが形成されている。補強リブは、略周方向に形成される内周リブ4及び外周リブ5と、略径方向に複数箇所に形成される補助リブ6とで構成されている。内周リブ4は、その内側で後述する内容器16の底面側外周部分をガイドする。外周リブ5は、後述する断熱部材17の下端部に当接又は近傍に位置し、断熱部材17の内外周間での熱対流を防止する。これにより、保温性能が高められる。また外周リブ5の途中3箇所には、断熱部材17の下端部を支持するための台座部7が形成されている。
【0018】
底部1の周壁には、後方部に電気接続部8と電池ケース9とが連続して形成されている。両者で形成される突出部分の外縁部には、後述する外装体14の第2切欠部20を構成する内縁が挿入される挿入溝1bが形成されている。またその近傍には、後述する外装体14の取付に利用されるネジ止め部1cが形成されている。
【0019】
電気接続部8は、図示しない交流電源を接続するためのものである。電池ケース9は、図6に示すように、電池(図示せず)が着脱可能で、後方面は電池カバー10によって閉鎖されている。電池カバー10は、上端の係止部10aを電池ケース9の係止凹部9aに係止し、下端のベンディング部10bを電池ケース9の下端内面に圧接することにより電池ケース9に装着される。ベンディング部10bが下方側に形成されることにより、電池ケース9の上方側を上方に向かって圧接することができる。このため、電池ケース9の上方側に隙間が形成されにくくなり、後述する外装体14を伝って流下してくる水滴が電池ケース9内に侵入しにくくなっている。
【0020】
電池ケース9の前方2箇所には、図5に示すように、爪部11が形成されている。各爪部11は、前記外周リブ5と同一円周上に形成され、底部1から突出して同一周方向に延びており、その先端部分は下方に向かって突出している。各爪部11には、電池ケース9から延びるリード線12が引っ掛けられ、上方に配置される断熱部材17と直接接触することが防止されている。これにより、従来のようにマイカシートを設置させる必要がなく安価である。リード線12には、断線しにくいガラス編組線が使用されている。爪部11の内周側の周方向に偏心した位置には、門型のガイド枠13が形成されている。各爪部11に引っ掛けられたリード線12は、このガイド枠13に通されて後述する制御基板に電気接続され、電力供給を行う。ガイド枠13は、爪部11の周方向の突出方向とは反対側に形成されているため、引っ張ることにより、爪部11に対するリード線12の引っ掛かり状態を確実なものとすることができるようになっている。
【0021】
(2 胴部)
胴部2は、図1乃至図4、図7乃至図9に示すように、外装体14、肩部材15、内容器16、及び、断熱部材17を備える。
【0022】
(2−1 外装体)
外装体14は、図7に示すように、金属製板材を円筒状としたもので、上下端の周縁部には内側に丸められたカーリング部18が形成されている。外装体14の後方側上下端部には、図2に示すように、第1切欠部19及び第2切欠部20がそれぞれ形成されている。但し、各切欠部19、20には、加工が困難であるためカーリング部18は形成されていない。第1切欠部19は、後述するヒンジケース35を配置するために形成されている。第1切欠部19を構成する内縁は、ヒンジケース35の挿入溝35aに挿入される。第1切欠部19の近傍には、外装体14を肩部材15に固定するためのネジ孔14aが形成されている。第2切欠部20は電池ケース9及び電気接続部8を配置するために形成されている。第2切欠部20を構成する内縁は、底部1の電池ケース9及び電気接続部8に形成された挿入溝1bに配置される。
【0023】
また、外装体14の前方側には内側(後方側)に窪んだ湾曲面が形成されている。湾曲面には、その中心からずれた位置に窓部21が形成されている。窓部21は、プラスチック、ガラス等の透光性部材で覆われ、そこには水量を示す目盛りが形成されている。
【0024】
窓部21の内側には水位管22が配置されている。水位管22は、図8及び図9に示すように、内容器16の下端部に接続される引出部22a、上下方向に延び、前記窓部21から視認可能な揚水部22b、及び、アンダーカバー42内に配設される注水部22cで構成されている。引出部22aの外周面には、後述する目隠し部材23の挿通孔23aを構成する内縁を両側からガイドするガイド突部22gが複数突設されている。揚水部22bには、ガラス管や、透光性を有する樹脂材料からなるチューブ等が使用可能であり、引出部22a及び注水部22cとはそれぞれゴム等の可撓性材料で形成された接続部22dを介して接続されている。
【0025】
水位管22の周囲には、図8及び図9に示すように、内部機構を隠すための目隠し部材23が配置されている。目隠し部材23はシート状の樹脂材料を折り曲げたものである。ここでは、PET(poly ethylene terephthalate)樹脂が使用されている。目隠し部材23の上端縁は、肩部材15の補強リブによって位置決めされる。目隠し部材23の下端部には水位管22の引出部22aが挿通する挿通孔23aが形成されている。また挿通孔23aの近傍には、折り曲げ部分の下端部をさらに内側に折り曲げることにより圧接片24が形成されている。圧接片24の折り曲げ部分にはミシン目24aが形成されている。ミシン目24aの形態(切れ目の長さ、幅、間隔等)を変更することにより、折り曲げ後に圧接片24が元の位置に形状復帰しようとする反発力を調整できるようになっている。圧接片24は水位管22に当接し、目隠し部材23自身を位置決めする。水位管22に圧接片24を圧接させることにより、従来では位置決めの困難であった目隠し部材23の下端側を位置決めすることが可能となる。また、従来では、窓部21に透光性部材を取り付けるための取付爪(図示せず)が外部から見えていたが、前記目隠し部材23により隠すことが可能となる。
【0026】
(2−2 肩部材)
肩部材15は合成樹脂材料を成形加工したもので、図10に示すように、外装体14の上方開口部内に配設される環状部25と、外装体14の上方開口部内に嵌合され、前方で注水部の上面側を構成する外枠26とで構成されている。
【0027】
(2−2−1 環状部)
環状部25の内周面は、図4及び図10(b)に示すように、その下半部が内径寸法の小さくなった段付き形状に形成されている。段付き形状とすることにより形成された環状面27には、図11に示すように、内外周2重の環状突部27aが形成され、後述する内容器16の鍔部16aがパッキン16bを介して載置されるようになっている。また環状部25の外周面下半部には、上下方向に延びる複数の補強リブ25aが周方向に並設されている。補強リブ25aは下方に向かうに従って徐々に突出寸法が小さくなるように傾斜しており、後述する断熱部材17を組み付ける際の案内として機能する。
【0028】
(2−2−2 外枠)
外枠26は、図10に示すように、外縁部が下方に向かって延設され、その内側の環状部25との間には補強リブが形成され、複数箇所に落下防止片28がネジ止めされている。
【0029】
補強リブは、図10(b)に示すように、略周方向に形成される外側リブ29と、その内側に沿って前方及び後方にそれぞれ配置される円弧リブ30と、前記外側リブ29に交差して略径方向に形成される複数の補助リブ31とを備える。円弧リブ30は、断熱部材17の上端部に当接又は近傍に位置し、断熱部材17の内外での熱対流を防止する熱対流防止部として機能する。この位置は、図11に示すように、内容器16の上方開口部よりも上方である。しかも、断熱部材17の上端開口部の内周面と肩部材15の環状部25の外周面との間に形成される隙間は僅かである。したがって、内容器16と断熱部材17の間の空気が暖められても、円弧リブ30側には対流しにくくなっている。また補助リブ31は、その内径側端面で円弧リブ30に当接した断熱部材17の外周面を支持する。
【0030】
補助リブ31のうちの2箇所(左右対称位置)は、さらに略径方向に突出し、外装体14のカーリング部18が係止される係止受部16c(アンダーカット部)を構成している(後述するヒンジケース35へのネジ止め位置とで略3等分の位置であるのが好ましい。)。
【0031】
なお、前記円弧リブ30は、断熱部材17の上端部に当接又は近傍に位置するように形成したが、断熱部材17の上端開口部の内周面又は外周面の少なくともいずれか一方に当接又は近傍に位置するように下方側に延設した構成とすることも可能である。円弧リブ30は弾性を有する構成として断熱部材17に圧接させるようにしてもよいし、別部材を設けるようにしてもよい。例えば、可撓性を有するチューブやウレタンを長手方向に沿って切り裂き、断熱部材17の上端開口部に被せるようにしてもよい。これによれば、断熱部材17の上端開口部の形状やサイズに拘わらず、簡単かつ自由にチューブを取り付けることができる。しかも、このチューブは可撓性を有するので、肩部材15との当接状態も、形状いかんに拘わらず良好なものとすることができる。
【0032】
落下防止片28は、図12(a)に示すように、短冊状の金属製板材をクランク状に折り曲げたもので、折り曲げ部分の平坦面が支持面28aとなっている。長期に亘る使用により、肩部材15が劣化し、場合によっては破断する可能性がないとも言えない。このため、万一破断した場合でも、落下防止片28により、その支持面28aで肩部材15(肩部材15で支持する内容器16を含む)を支持することができるようにしたものである。なお、落下防止片28は、図12(b)に示すように、先端部分に屈曲部28bを形成すれば、断熱部材17の上端開口縁部をさらに上方へと配置することができ、さらに断熱性能を高めることが可能となる点で好ましい。また、前記落下防止片28に代えて、図示しないが、前記図12に示す断面形状で、筒状とした構造の落下防止リングを採用することも可能である。この場合、落下防止リングは合成樹脂材料を成形加工することにより得るようにすればよい。
【0033】
外枠26の上部後方側には、図10に示すように、蓋部3を回動可能に支持するためのヒンジ受部32が形成されている。ヒンジ受部32は、内側に開口する略U字形の支持部33と、その前方に形成される抜止突部34とで構成されている。ヒンジ受部32の下方側には、抜止突部34を出没させてヒンジ受部32から蓋部3を取り外すことを可能とするヒンジケース35が着脱可能に取り付けられている。
【0034】
ヒンジケース35は、図13に示すように、外装体14と共に外表面を形成する湾曲部36と、その内側に形成される収容部37とを備える。湾曲部36には指を挿入して摘むことができるように2箇所に矩形孔36aが形成されている。湾曲部36の下縁部中央から下方に向かってネジ止め用のネジ止め部36bが延設されている。ネジ止め部36bには、肩部材15の補助リブ16の一部に形成した係止受部16cにカーリング部18を係止した状態で、外装体14がネジ止め固定される。カーリング部18を複数箇所で係止できるので、ネジ止めは1箇所のみで行うことができ、組立作業性に優れている。また湾曲部36の下縁部及び両側部には挿入溝35aが形成され、そこには、補助リブ35bの先端部分が位置している。挿入溝35aには、前記外装体14の第1切欠部19の内縁が挿入され、補助リブ35bの先端によって複数箇所をガイドされる。収容部37には、図示しないが、前記ヒンジ受部32の抜止突部34を出没させるための機構が収容され、前記矩形孔36aを介して挿入した指で操作可能となっている。
【0035】
外枠26の前方部には、図1に示すように、操作表示パネル38が設けられている。操作表示パネル38は、内容器16内の液体の検出温度を表示する液晶パネル(LCD)38aのほか、給湯スイッチ、ロック解除スイッチ等の各種スイッチ、動作状態を示すLED39aを検出するための光センサ39bを備える。これら各電子部品は、外枠26の前方部に形成した貫通孔を介して外部から操作、視認あるいは受光可能となっている。光センサ39bが配置される貫通孔は、その内縁が内側に突出する円筒リブ40を備える。この円筒リブ40は、LCD、LED等からの光が光センサ39bに受光されることを防止すると共に、光センサ39bの支持状態を安定化させるために設けられている。前記各電子部品は、操作表示パネル38の背面に形成した基板ホルダ38bに保持された操作表示基板38cに実装されている。基板ホルダ38bの下面には、先端面が閉鎖された筒状の補強用ボス部41が形成されている。
【0036】
外枠26の前方下面には、図14に示すアンダーカバー42が装着される。アンダーカバー42の上面には、補強用ボス部41が当接し、その当接位置の周囲には位置決め用の環状リブ43が形成されている。環状リブ43は、湾曲した当接面に当接する補強用リブの位置ずれを防止する。したがって、肩部材15とアンダーカバー42とを支持して持ち上げたとしても、変形したり、損傷したりすることが防止される。なお、アンダーカバー42の前方部には注水口42aが形成され、水位管22の注水部が配置されている。
【0037】
外枠26の両側面には、図10に示すように、下縁から切欠きが形成され、外装体14を装着された状態で、ハンドル26aを回動自在に支持する軸受孔26bを構成する。ハンドル26aを後方側に回動させた状態では、前記外装体14のネジ止め部分が隠れるように構成されている。
【0038】
(2−3 内容器)
内容器16は、図3に示すように、板状の導電性金属材料を有底円筒状に形成したもので、上方開口縁部が外径側に延設された鍔部16aとなっている。また鍔部16aよりも所定寸法下方側には、内側に向かって膨出するくびれ部16dが形成されている。内容器16の底面には基板ボックス16eが取り付けられ、そこには、内容器16に収容した液体を、前記水位管22を介して外部に吐出するための揚水ポンプ22eや加熱及び保温するためのヒータ22fのほか、揚水ポンプ22eやヒータ22fへの通電制御等を行うための制御機器が設けられている。
【0039】
(2−4 断熱部材)
断熱部材17は、図4及び図11に示すように、内面円筒パネル44と外面円筒パネル45を所定間隔で配設し、上下周縁部で接合一体化した真空ジャケットで構成されている。内面円筒パネル44は、上端開口部が外径方向に膨出する拡開部となっており、この拡開部が外面円筒パネル45の内周面に接合一体化される。内面円筒パネル44の外面には図示しない銅箔が配設され、熱輻射性が高められている。また外面円筒パネル45は、外方にのみ突出するような断面波形形状に形成されている。これにより、強度が高められると共に、内部空間が確保される。内部空間は真空引きされており、断熱性能が高められている。
【0040】
(3 蓋部)
蓋部3は、図15に示すように、蓋本体46と蓋カバー47とで構成されている。
【0041】
(3−1 栓体)
蓋本体46は、転倒時の液漏れ防止用の栓体(図示せず)を備え、ヒンジ部48を中心として回動自在に肩部材15のヒンジ受部32に支持され、内容器16の上方開口部に侵入して閉鎖する。蓋本体46内の空き領域には、ウレタン等の断熱材を収容することもできる。
【0042】
(3−2 蓋カバー)
蓋カバー47は、図16に示すように、合成樹脂材料を板状に成形加工したもので、上面が膨出するような湾曲面(三次元形状)となっている。そして、この湾曲面には装飾用のフィルム49が一体化されている。蓋カバー47の後方側には蒸気孔50が形成されている。蒸気孔50の内縁には下面側に突出する筒部51が形成されている。また蓋カバー47の前方側には、開閉レバー47aが配置される凹所52が形成されている。さらに蓋カバー47の外縁部は下方に向かって突出し、後方部には前記ヒンジ部48を覆うヒンジ覆部53が形成されている。
【0043】
蓋カバー47の上面のフィルム49はインサート成形により一体化する。インサート成形では、図17に示すように、可動側金型55に蓋カバー47の上面側が配設される凹部56が形成された構造の金型を使用する。凹部56には、前記蒸気孔50及び凹所52を形成するための突出部56aが形成されている。また凹部56には複数の吸引孔56bが形成され、図示しない吸引装置を駆動させることにより、前記吸引孔56bを介して凹部56の底面に配設したフィルム49を吸引して位置決めできるようになっている。凹部56は、蓋カバー47の湾曲面を形成する底面のみならず、蓋カバー47の側面を形成できるように所定深さを有することにより内側面が形成されている。
【0044】
前記構造の金型によるインサート成形は次のようにして行う。固定側金型54に対して可動側金型55を移動させることにより型開きし、可動側金型55の凹部56にフィルム49を配置する。フィルム49には予め蒸気孔50及び凹所52に対応する位置に貫通孔49a、49b(49aのみでもよい)がそれぞれ形成されている。そこで、これら貫通孔49a、49b(49aのみでもよい)を可動側金型55の凹部56内に形成した突出部56aに挿通し、凹部56の底面に対してフィルム49を位置決めする。フィルム49自体に加工誤差があったり、突出部56aで位置決めしても多少位置ずれしたりすることがある。この場合、フィルム49の底面からのはみ出し部分は、内側面に位置する。したがって、この状態で型締めし、インサート成形すれば、フィルム49のはみ出し部分を含めて成形加工することができる。そして、型開きすれば、可動側金型55に凹部56や突出部56aが形成されているので、成形品が固定側金型54側に残存せず、可動側金型55と共に取り出すことができる。このようにして得られた成形品は、フィルム49を貼着する場合のように、フィルム49の縁がはみ出すことがなく、仕上がり状態は良好なものとなる。またこの状態であれば、フィルム49は非常に剥がれにくく、長期に亘って優れた外観を提供することができる。
【0045】
(組立方法)
続いて、前記構成からなる電気湯沸かし器の組立方法について説明する。
【0046】
肩部材15を上下逆にし、各種電子部品を実装した操作表示基板38cを装着し、水位管22の注水部22cを固定した後、アンダーカバー42を取り付ける。そして、肩部材15を元の位置に戻し、上方から内容器16を装着し、蓋部3を取り付ける。内容器16の底面には、予めヒータや制御機器が収容された基板ボックス16eが装着されている。
【0047】
続いて、肩部材15及び内容器16を上下逆にし、内容器16の外周に断熱部材17を配置する。断熱部材17は、上方開口部の接合部分が肩部材15の環状部25の外周に位置し、上端が円弧リブ30に当接するようにして取り付ける。上方開口部は、内面円筒パネル44と外面円筒パネル45とを接合しただけの薄肉に形成されている。したがって、外枠26の狭いスペースであっても配置することが可能である。また断熱部材17と肩部材15の円弧リブ30との当接位置は、内容器16の上端開口部よりも上方に位置する。しかも、この部分では、肩部材15の環状部25の外周面と断熱部材17の内周面との間形成される隙間は僅かである。
【0048】
次いで、肩部材15に、ハンドル26aとヒンジケース35を取り付け、さらに注水部22cに揚水部22bを接続した後、外装体14を取り付ける。外装体14は、上方開口部のカーリング部18を、肩部材15の補助リブ16の一部に形成した係止受部16cに係止されて仮止めされる。このとき、外装体14の第1切欠部19がヒンジケース35に位置し、第1切欠部19を構成する内縁がヒンジケース35の挿入溝35aに位置決めされる。これにより、第1切欠部19の内縁が露出することがなく、安全であると共に外部からの水滴等の侵入が確実に防止される。そこで、外装体14のネジ孔14aにネジを挿通し、ヒンジケース35のネジ止め部36bに螺合することにより、肩部材15に外装体14を固定する。ネジ止めは、この1箇所のみでよいので、組立作業が容易であり、迅速に行うことができる。
【0049】
その後、外装体14の窓部21の内側に、予め挿入方向に沿って折り曲げた目隠し部材23を挿入する。そして、目隠し部材23の上端縁部を肩部材15に当接させて位置決めし、挿通孔23aには内容器16の底面に取り付けた基板ボックス16eから突出する引出部22aを挿通する。引出部22aは揚水部22bに接続し、内容器16と連通させることにより水位管22を完成する。このとき、目隠し部材23の圧接片24を揚水部22bに圧接させる。圧接片24は、形成されたミシン目24aによって圧接する際の弾性力が調整されている。したがって、上端縁部を肩部材15によって位置規制された目隠し部材23は、下端側を圧接片24が揚水部22bに圧接することにより、上下方向の全体に亘って揚水部22bとの間に適切な隙間を確保することができる。つまり、目隠し部材23は、組立工程上、上端部のように支持する部材がない状態であっても、下端部をも水位管22に対して適切に位置規制することができる。また圧接片24の当接位置は、通常の目視状態で窓部21からは視認できない位置である。したがって、窓部21から目視可能な領域は優れた外観を呈する。
【0050】
最後に、外装体14の下端部に底部1を取り付ける。このとき、電池ケース9から延びるリード線12を爪部11に引っ掛け、ガイド枠13を介して基板ボックス16eの電子機器へと電気接続する。リード線12を、ガイド枠13に挿通して引っ張ると、前述のように、リード線12が爪部11により確実に引っ掛かる位置関係となる。したがって、底部1の取付後、断熱部材17の下端部がリード線12に直接接触することがなく、損傷が防止される。
【0051】
底部1の取付では、外装体14の下端部に形成したカーリング部18を、底部1の周壁の段部に配置することにより仮止めする。そして、ネジ止め部36bを介して外装体14にネジを螺合することにより取り付ける。前記肩部材15への外装体14の取付と同様に、1箇所をネジ止めするだけで外装体14に底部1を取り付けることができるので、作業性に優れている。またこの取付状態では、第2切欠部20を構成する内縁が底部1の突出部分に形成された挿入溝35aに位置する。さらに底部1の台座部7に断熱部材17の下端部が支持されるだけでなく、外周リブ5が当接又は近傍に位置する。また、底部1を内容器16の底面に一体化した基板ボックス16eにネジ止めし、両者を一体化する。以上により、組立作業が完了する。
【0052】
(動作)
次に、前記構成からなる電気湯沸かし器の動作について説明する。但し、以下の説明では、本実施形態に係る電気湯沸かし器に特有の構成に関するものの一部についてのみ言及するに留め、他は省略する。
【0053】
前記電気湯沸かし器では、内容器16内に液体(ここでは、水)を収容すると、その液面位置に応じて水位管22の揚水部22bでの水位が変化する。揚水部22bの中間部分は窓部21から視認可能となっている。揚水部22bの周囲には目隠し部材23が配置されている。この目隠し部材23は、上端部が肩部材15の補強リブによってガイドされ、下端部が圧接片24を揚水部22bに当接させることにより、揚水部22bとの間に上下に亘って所定の隙間を確保している。このため、揚水部22bの水面位置の特定が容易である。また、内部機構(例えば、窓部21に透光性部材を取り付けるための爪)が見えることもなく、美しい外観を呈する。
【0054】
また、前記電気湯沸かし器では、一旦沸騰し、保温状態となれば、交流電源を遮断してコードレス状態としても内容器16内の液体温度を長時間に亘って保温することができるようになっている。これは、内容器16の外周部に、真空ジャケットである断熱部材17を配置し、この断熱部材17の上下開口端を、肩部材15に形成した円弧リブ30及び底部1に形成した外周リブ5にそれぞれ当接(あるいは、接近、圧接)させ、空気の熱対流を遮断することにより保温性をさらに向上させているためである。さらに暖められた内容器16と断熱部材17の間の空気は上方に移動しようとするが、断熱部材17の上方側の接合部分が内容器16の上方開口部よりも上方に位置し、しかもその位置での隙間が狭いため、それよりも上方側への熱対流は起こりにくい。したがって、単に真空ジャケットからなる断熱部材17を配設しただけでなく、断熱部材17の上方開口部側の形状及び配置構造によってより一層の断熱性能の向上が図られる。
【0055】
また、前記電気湯沸かし器では、光センサ39bで検出される照度に基づいて、液晶パネル38a、LED39a等の表示部の輝度を制御する。夜間に室内照明が消灯された場合等、周囲の照度が低下した場合、「暗い」と判断し、表示部の輝度は通常よりも低い値に修正される。LED39aや液晶パネルから照射される光は外部に向かって照射されるほか、肩部材15とアンダーカバー42とで囲まれた内部空間内で漏洩し、光センサ39bが誤検出する恐れがある。本実施形態では、光センサ39bの周囲を円筒リブ40で囲っているため、内部空間での漏洩光が光センサ39bに届くことを防止でき、漏洩光による誤検出は発生しない。
【0056】
また、前記電気湯沸かし器では、万一、肩部材15及びアンダーカバー42で構成される注水側と他の部分を保持されて持ち上げられたとしても、その内部には補強構造が形成されているため、変形、損傷等の不具合は発生しない。すなわち、肩部材15の前方下面には補強用ボス部41が形成されている。そして、この補強用ボス部41はアンダーカバー42の環状リブ43内に位置している。したがって、補強用ボス部41が当接するアンダーカバー42が湾曲形状であるにも拘わらず、補強用ボス部41の当接位置がずれることがなく、安定した状態で補強することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態に係る電気湯沸かし器の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の電気湯沸かし器を後方側から見た状態を示す斜視図である。
【図3】図1の電気湯沸かし器の正面断面図である。
【図4】図1の電気湯沸かし器の側面断面図である。
【図5】図1の底部を示す斜視図である。
【図6】図4の電池ケース近傍部分を示す拡大断面図である。
【図7】図1の電気湯沸かし器の底部を取り付ける前の状態を、底面側から見た部分破断斜視図である。
【図8】図7の外装体を取り付ける前の状態を示す断面斜視図である。
【図9】図7の外装体及びアンダーカバーを取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【図10】(a)は図1の肩部材を示す斜視図、(b)はその底面図である。
【図11】図1の断熱部材の上端開口部近傍を示す拡大断面図である。
【図12】(a)は肩部材の損傷による脱落を防止するための脱落防止片の例を示す部分断面図、(b)は他の例を示す部分断面図である。
【図13】(a)は図2に示すヒンジカバーの斜視図、(b)はその底面図である。
【図14】図1のアンダーカバーを示す斜視図である。
【図15】(a)は図1の蓋部を示す断面斜視図、(b)は断面図である。
【図16】(a)は図1の蓋カバーを示す斜視図、(b)はその底面側から見た斜視図である。
【図17】図16の蓋カバーを成形する金型の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…底部(底部材)
1a…周壁
1b…挿入溝
1c…ネジ止め部
2…胴部
3…蓋部
4…内周リブ
5…外周リブ(当接部)
6…補助リブ
7…台座部
8…電気接続部
9…電池ケース
9a…係止凹部
10…電池カバー
10a…係止部
10b…ベンディング部
11…爪部
12…リード線
13…ガイド枠
14…外装体
14a…ネジ孔
15…肩部材
16…内容器
16a…鍔部
16b…パッキン
16c…係止受部
16d…くびれ部
16e…基板ボックス
17…断熱部材
18…カーリング部
19…第1切欠部
20…第2切欠部
21…窓部
22…水位管
22a…引出部
22b…揚水部
22c…注水部
22d…接続部
22e…揚水ポンプ
22f…ヒータ
22g…ガイド突部
23…目隠し部材
23a…挿通孔
24…圧接片
24a…ミシン目
25…環状部
25a…補強リブ
26…外枠
26a…ハンドル
26b…軸受孔
27…環状面
27a…環状突部
28…落下防止片
28a…支持面
28b…屈曲部
29…外側リブ
30…円弧リブ(当接部)
31…補助リブ
32…ヒンジ受部
33…支持部
34…抜止突部
35…ヒンジケース
35a…挿入溝
35b…補助リブ
36…湾曲部
36a…矩形孔
36b…ネジ止め部
37…収容部
38…操作表示パネル
38a…液晶パネル
38b…基板ホルダ
38c…操作表示基板
39a…LED
39b…光センサ
40…円筒リブ
41…補強用ボス部
42…アンダーカバー
42a…注水口
43…環状リブ
44…内面円筒パネル
45…外面円筒パネル
46…蓋本体
47…蓋カバー
47a…開閉レバー
48…ヒンジ部
49…フィルム
50…蒸気孔
51…筒部
52…凹所
53…ヒンジ覆部
54…固定側金型
55…可動側金型
56…凹部
56a…突出部
56b…吸引孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部材と、
有底筒状で、前記底部材の中央部に配設され、内部に液体が収容される内容器と、
前記底部材の外縁部に配設され、前記内容器との間に空間部を形成する外装体と、
筒状で、内面円筒パネルと補強構造を備えた外面円筒パネルとを上下開口部で接合一体化し、両部材の間に形成される空間を真空引きしてなり、前記内容器と外装体との間の空間部に配設される断熱部材と、
前記外装体の上方開口部に配設され、前記内容器を支持する肩部材と、
を備え、
前記底部材又は前記肩部材の少なくともいずれか一方に、前記断熱部材の上下開口部の接合部分の近傍に位置し、あるいは、当接して熱対流を防止する当接部を形成したことを特徴とする電気湯沸かし器。
【請求項2】
前記当接部は、前記底部材又は前記肩部材自身の剛性を高めるための補強リブからなることを特徴とする請求項1に記載の電気湯沸かし器。
【請求項3】
前記肩部材は、前記外装体の上方開口部内に配設され、前記内容器を支持する環状部を備え、該環状部の外周面に、前記断熱部材を前記当接部へと導く案内部を形成し、
前記案内部は、環状部の下端に向かって徐々に突出寸法が小さくなる複数の補強リブで構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気湯沸かし器。
【請求項4】
前記肩部材は、略周方向に沿って並設され、略径方向に延びる複数の補助リブを備え、
前記補助リブは、内端面で前記断熱部材の外周面をガイドし、外端面で肩部材に装着する外装体の上端開口部を支持したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気湯沸かし器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2007−313204(P2007−313204A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148394(P2006−148394)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】