説明

電気湯沸かし器

【課題】断熱部材の支持構造を、簡単で安価に製作でき、断熱部材による断熱性能を十分に発揮させることを可能とする。
【解決手段】底部材と外装体2とによって形成された空間内に内容器4を収容し、蓋体5によって内容器4の上方開口部を閉鎖し、内容器4の底面に設けた加熱手段により、前記内容器4に収容された液体を加熱する。内容器4と外装体2との間に筒状の断熱部材を配設する。底部材1は、電子部品が搭載される基板を保持し、加熱手段を支持するための難燃性材料からなる基板ボックス7を取り付ける。断熱部材の下端部は、加熱手段よりも下方側で、基板ボックス7に形成した支持部19により支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気湯沸かし器、特に、断熱部材を備えており、その支持構造に特徴を有する電気湯沸かし器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気湯沸かし器として、内容器の周囲を真空断熱材で覆い、この真空断熱材を、底部材や内容器の底面に設けた遮熱板によって支持した構成のものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−161565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の電気湯沸かし器では、真空断熱材を底部材で支持する場合、底部材を加熱手段の近傍まで延在させなければならず、構造が複雑化し、加工が困難となる。また、加熱手段からの熱影響を考慮し、底部材に難燃性の材料を使用する必要がある。このため、底部材の外観が悪化する上、コストアップを招来する。また、真空断熱材を遮熱板によって支持する場合、構造上、遮熱板が真空断熱材から完全に露出することになり、遮熱板からの放熱を十分に阻止できない。
【0005】
そこで、本発明は、断熱部材の支持構造を、簡単で安価に製作でき、断熱部材による断熱性能を十分に発揮させることのできる電気湯沸かし器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
底部材と外装体とによって形成された空間内に内容器を収容し、蓋体によって内容器の上方開口部を閉鎖し、前記内容器の底面に設けた加熱手段により、前記内容器に収容された液体を加熱するようにした電気湯沸かし器であって、
前記内容器と外装体との間に筒状の断熱部材を配設し、
前記底部材は、電子部品が搭載される基板を保持し、前記加熱手段を支持するための難燃性材料からなる基板ボックスを取り付けられ、
前記断熱部材の下端部は、前記加熱手段よりも下方側で、前記基板ボックスに形成した支持部により支持されるようにしたものである。
【0007】
この構成により、断熱部材は、難燃性材料からなる基板ボックスの一部で支持されるので、加熱部材の近傍で支持しても、熱影響を受けて不具合を発生させることがない。また、断熱部材は加熱手段よりも下方側で支持されるので、内容器のみならず加熱手段からの外部への放熱をも断熱部材によって抑制することが可能となる。
【0008】
前記支持部は、基板ボックスに取り付ける金属製の支持部材で構成してもよい。
【0009】
この構成により、基板ボックスの構成を複雑化させることなく、簡単に支持部を形成することが可能となる。
【0010】
また、本発明は、前記課題を解決するための手段として、
底部材と外装体とによって形成された空間内に内容器を収容し、蓋体によって内容器の上方開口部を閉鎖し、前記底部材の上面側に設けた加熱手段によって内容器に収容された液体を加熱するようにした電気湯沸かし器であって、
前記内容器と外装体との間に筒状の断熱部材を配設し、
前記外装体は、内周面の一部であって、前記加熱手段よりも下方側に、前記断熱部材の下端部を支持するための支持部を備えたものである。
【0011】
この構成により、底部材の構成を複雑化させることなく、外装体の一部に支持部を形成するだけの容易に形成可能な構造により断熱部材を支持することができ、加熱部材からの熱影響も受けにくい。また、前記同様、内容器のみならず加熱手段からの外部への放熱をも断熱部材によって抑制することが可能となる。
【0012】
前記外装体の上方開口部には、前記内容器の上方開口部を支持し、前記蓋体が回動可能に取り付けられる肩部材が設けられ、
前記肩部材は、前記外装体の内周側下面に、前記断熱部材の上端開口部が配置される環状溝を形成され、
前記基板ボックスは、少なくとも前記加熱部材側を断熱構造で構成されるのが好ましい。
【0013】
この構成により、内容器及び加熱手段の周囲の殆どを断熱構造で囲むことができ、保温性をより一層高めることが可能となる。
【0014】
前記基板ボックスは、外部と通信するための通信手段を保持可能であるのが好ましい。
【0015】
この構成により、基板ボックスを同一構成として、通信手段を設けるか否かを選択することができ、内容器の保温性を高めつつ、通信手段を収容して電気湯沸かし器の使用状態を外部に送信し、いわゆる生活モニターとして機能させることも可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、断熱部材を難燃性材料からなる基板ボックスの一部に形成した支持部によって支持するようにしたので、加熱部材の熱影響を受けて不具合を発生させることがない。また、支持位置が加熱手段よりも下方側であるので、外部への放熱量を抑えて保温性に優れた状態で断熱部材を支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る電気湯沸かし器の正面図、図2は、その断面図を示す。この電気湯沸かし器は、大略、底部材1と、外装体2と、肩部材3と、内容器4と、蓋体5と、加熱部6(加熱手段)と、基板ボックス7と、真空ジャケット8(断熱部材)を備える。
【0019】
底部材1は、底胴9と底板10とで構成されている。底胴9の内周側に底板10が固定されている。
【0020】
外装体2は、金属製板材を円筒状としたもので、下端開口端がカーリング加工されることにより断面円筒の環状筒部2aが形成されている。
【0021】
肩部材3は、合成樹脂材料を成形加工することにより形成されるもので、外周部11と内周部12とで環状溝13を形成され、外装体2の上方開口部に取り付けられている。そして、環状溝13で、後述する真空ジャケット8の上端開口部を内外から支持できるようになっている。
【0022】
内容器4は、熱伝達性に優れた薄板金属材料を有底筒状としたもので、内部には液体(主に、水)が収容される。内容器4の底面には揚水管14の一端部が接続されている。この揚水管14は、内容器4の側面に沿って上方へと延びている。内容器4の上方開口部には開口端が外径側に広がった鍔部4aが形成されている。鍔部4aから所定寸法下方側には内側に膨出したくびれ部4bが形成されている。
【0023】
蓋体5は、前記肩部材3に回動可能に取り付けられ、内容器4の上方開口部を開閉する。蓋体5は断熱構造を有し、蓋体5の下面外周縁部には前記内容器4の鍔部4aに圧接するパッキン15が取り付けられている。また、蓋体5の下面中央部は、二重構造の蓋部16となっており、前記内容器4の上方開口部の内側に侵入し、くびれ部4bの内側に配置される。
【0024】
加熱部6は、内容器4の底面との間に遮熱板17によって形成された空間に配置されるヒータ等で構成されている。加熱部6には、後述する基板ボックス7に設けた第1基板7aの電源回路を介して電力が供給される。
【0025】
基板ボックス7は、上半部7Aと下半部7Bとで形成される内部空間に、第1基板7a、第2基板20、携帯電話21等を収容したものである。この基板ボックス7(特に、上半部7A)は、合成樹脂材料、特に、難燃性、好ましくは、耐熱性に優れた材料を成形加工することにより形成される。これにより、遮熱板17の存在にも拘わらず加熱部6から伝わる熱による変形等の悪影響が防止される。上半部7Aは、図3及び図4に示すように、底面中央部に第1基板7aが配置される凹部を設けることにより、上方に突出する台座部18が形成されている。台座部18の周囲4カ所には、支持部19がそれぞれ形成されている。支持部19は、後述する真空ジャケット8の下端開口縁部に当接する断面略コ字形の第1支持片19aと、外径側のガイド部を備えた第2支持片19bとで構成されている。下半部7Bには、第2基板20、携帯電話21等が配置されている。電気湯沸かし器の使用状態は、前記第2基板20から携帯電話21を介して外部に連絡され、お年寄り等が定期的に使用しているか否か等を検出することにより安否を確認可能な、いわゆる生活モニターシステムに利用することが可能となっている。
【0026】
真空ジャケット8は、例えば、伝熱性の低い材料からなるスティック状の芯材を所定間隔で並設し、それらの外周をラミネートフィルムで真空ラミネートし、円筒状に形成したものである(例えば、特開2002−65461号公報に開示された真空断熱材等が使用できる。)。
【0027】
(組立方法)
続いて、前記構成からなる電気湯沸かし器の組立方法について説明する。
【0028】
肩部材3に、上方から内容器4を装着し、蓋体5を取り付ける。内容器4の底面には、予め加熱部6を配設し、遮熱板17を取り付けておく。そして、肩部材3及び内容器4を上下逆にし、内容器4の外周に真空ジャケット8を配置する。真空ジャケット8は、上方開口部の接合部分を肩部材3の環状溝13に配設した状態とする。
【0029】
次いで、肩部材3に、ハンドル3aや揚水管14を取り付け、外装体2を取り付けた後、内容器4及び外装体2の下端部に基板ボックス7及び底部材1を取り付ける。基板ボックス7には、予め、第1基板7a、第2基板20、携帯電話21等を収容しておく。そして、第1基板7aと加熱部6との電気接続等を図った後、内容器4の底面に対して基板ボックス7を位置決めする。このとき、基板ボックス7の支持部19によって真空ジャケット8の下端開口縁部を支持する。また、底部材1の取付けでは、外装体2の下端部に形成した環状筒部2aを、底部材1の周壁の段部に配置することにより仮止めする。そして、底部材1を、図示しないビスにより支持部材22を介して遮熱板17に取り付ける。これにより、肩部材3の上方開口部に鍔部4aを支持された内容器4が、遮熱板17及び基板ボックス7を介して底部材1から引っ張られ、肩部材3と底部材1の間に外装体2がサンドイッチされた状態で一体化される。そして、真空ジャケット8は、上端開口部を肩部材3によって、下端開口部を基板ボックス7の支持部19によってそれぞれ支持されることになる。
【0030】
次に、前記構成からなる電気湯沸かし器で、加熱部6により内容器4を加熱した場合の作用について説明する。
【0031】
内容器4内に液体を収容し、電源を投入すると、第1基板7aの電源回路を介して加熱部6に加熱部6に電力が供給され、液体が加熱される。このとき、加熱部6からの熱は、内容器4のみならず、周囲にも伝達される。加熱部6の下方側は遮熱板17で覆われ、さらにその下方側に位置するのは難燃性材料で形成された基板ボックス7である。したがって、加熱部6から下方側に伝達される熱影響を基板ボックス7が受けたとしても、変形等の不具合を発生させることがない。このため、基板ボックス7に形成した支持部19による真空ジャケット8の支持状態を安定させることができる。また、真空ジャケット8の下端開口縁部は、加熱部6よりも下方側に位置している。したがって、径方向に伝達される熱は、真空ジャケット8によってほぼ遮断され、周囲を加熱することもない。
【0032】
(他の実施形態)
なお、本発明に係る電気湯沸かし器は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0033】
例えば、前記実施形態では、真空ジャケット8を基板ボックス7の一部に形成した支持部19によって支持するようにしたが、次のように構成することも可能である。
【0034】
すなわち、前記支持部19は、図5(a)に示すように、基板ボックス7の上半部7Aに固定した支持部材22で構成するようにしてもよい。支持部材22は、図5(b)に示すように、金属片を略コ字形に折り曲げることにより、下端部22aが基板ボックス7に固定され、上端部に遮熱板17に固定する固定部22bと、真空ジャケット8を支持する支持部22cとを形成されている。この構成によれば、基板ボックス7の構造を複雑化させることがなく、安価に製作することが可能となる。
【0035】
また、前記支持部19は、図6に示すように、基板ボックス7ではなく、外装体2の一部に形成するようにしてもよい。例えば、外装体2を樹脂製とし、下端側内周面から内側に突出する鈎状の支持片23で構成すればよい。支持片23は、周方向の複数箇所(例えば、3カ所)に設けられ、各支持片23は周方向の所望の範囲で形成すればよい。また、外装体2を金属製とした場合、内周側への切り起こしや溶接等によって支持片を形成すればよい。これらの構成によれば、支持部19を所望の箇所に形成でき、真空ジャケット8を支持する位置を自由に設定することが可能となる。
【0036】
また、前記実施形態では、断熱部材の一例として真空ジャケット8の説明を行ったが、ウレタン等の他の断熱構造を備えた部材であっても採用することができ、内面に反射板を備えた構成等であっても構わない。要は、内容器4の少なくとも外周側を断熱可能な構成であればよい。
【0037】
また、前記実施形態では、基板ボックス7を難燃性材料で構成するだけとしたが、上半部7Aの台座部18を二重構造とする等、断熱構造を備えた構成としてもよい。これによれば、加熱部6からの熱影響により、基板ボックス7が変形することを防止できるだけでなく、基板ボックス7内に収容した電子部品の損傷や誤動作等をも防止することが可能となる。また、より一層、保温性に優れた構成とすることが可能となる。
【0038】
また、前記実施形態では、基板ボックス7に第2基板20及び携帯電話21等の外部との通信手段を備えた構成としたが、通信手段のない構成とすることも可能である。つまり、通信手段を設置する場合と、そうでない場合とで他の構成部品を共用化できるように構成するのが好ましい。この場合、基板ボックス7は上半部7Aのみの構成とし、この上半部7Aの底面側を底部材1の底板10で覆うようにしてもよい。これによれば、容量が同じであっても、全高を低く抑えてコンパクトな構成とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態に係る電気湯沸かし器の正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図2の基板ボックスの上半部を示す平面図である。
【図4】図3の斜視図である。
【図5】(a)は他の実施形態に係る支持部の構成を示す部分断面図、(b)は(a)の支持部材を示す斜視図である。
【図6】他の実施形態に係る支持部の構成を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1…底部材
2…外装体
2a…環状筒部
3…肩部材
3a…ハンドル
4…内容器
4a…鍔部
4b…くびれ部
5…蓋体
6…加熱部
7…基板ボックス
7a…第1基板
7A…上半部
7B…下半部
8…真空ジャケット
9…底胴
10…底板
11…外周部
12…内周部
13…環状溝
14…揚水管
15…パッキン
16…蓋部
17…遮熱板
18…台座部
19…支持部
19a…第1支持片
19b…第2支持片
20…第2基板
21…携帯電話
22…支持部材
22a…下端部
22b…固定部
22c…支持部
23…支持片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部材と外装体とによって形成された空間内に内容器を収容し、蓋体によって内容器の上方開口部を閉鎖し、前記内容器の底面に設けた加熱手段により、前記内容器に収容された液体を加熱するようにした電気湯沸かし器であって、
前記内容器と外装体との間に筒状の断熱部材を配設し、
前記底部材は、電子部品が搭載される基板を保持し、前記加熱手段を支持するための難燃性材料からなる基板ボックスを取り付けられ、
前記断熱部材の下端部は、前記加熱手段よりも下方側で、前記基板ボックスに形成した支持部により支持されるようにしたことを特徴とする電気湯沸かし器。
【請求項2】
前記支持部は、基板ボックスに取り付ける金属製の支持部材で構成したことを特徴とする請求項1に記載の電気湯沸かし器。
【請求項3】
底部材と外装体とによって形成された空間内に内容器を収容し、蓋体によって内容器の上方開口部を閉鎖し、前記底部材の上面側に設けた加熱手段によって内容器に収容された液体を加熱するようにした電気湯沸かし器であって、
前記内容器と外装体との間に筒状の断熱部材を配設し、
前記外装体は、内周面の一部であって、前記加熱手段よりも下方側に、前記断熱部材の下端部を支持するための支持部を備えたことを特徴とする電気湯沸かし器。
【請求項4】
前記外装体の上方開口部には、前記内容器の上方開口部を支持し、前記蓋体が回動可能に取り付けられる肩部材が設けられ、
前記肩部材は、前記外装体の内周側下面に、前記断熱部材の上端開口部が配置される環状溝を形成され、
前記基板ボックスは、少なくとも前記加熱部材側を断熱構造で構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電気湯沸かし器。
【請求項5】
前記基板ボックスは、外部と通信するための通信手段を保持可能であることを特徴とする請求項4に記載の電気湯沸かし器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−160255(P2009−160255A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1175(P2008−1175)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】