説明

電気炉

【課題】発熱体の有効加熱領域が大きく、高温での使用が可能であり、耐熱衝撃性に優れているため急速加熱が可能であり、長寿命のランタンクロマイト系発熱体からなるコンパクトな電気炉の提供。
【解決手段】発熱部と両端部からなる円筒型のランタンクロマイト系発熱体において、発熱部の材料の1000℃の比抵抗を0.1〜3.5Ωcmの範囲に、両端部の材料の1000℃の比抵抗を0.02〜0.5Ωcmの範囲とし、発熱部と両端部の電気抵抗の相違を、材料の比抵抗自体を変えることにより適正な比率とし、さらに両端部の肉厚を小さくすることにより発熱体の内径を相対的に大きくすることと、発熱体の形状を適切な範囲に設定することを特徴とする電気炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランタンクロマイトを主成分とする円筒型の抵抗発熱体の内部を加熱室として利用する電気炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト型結晶構造を有するランタンクロマイト(LaCrO)を主成分とした、必要に応じてLaの一部をSr、Caなどで、Crの一部をCo、Ni、Al、Mgなどで置換固溶した組成を有する発熱体(以下単にランタンクロマイト系という)は、1500℃以上の高温酸化雰囲気において優れた安定性と長寿命をもつセラミックス抵抗発熱体として広く利用されている。
【0003】
従来、一般に用いられている抵抗発熱体を使用した電気炉は、図1に示すように複数の棒状発熱体12を用いて加熱室を加熱する構造になっているが、このような構造の電気炉では、装置の構造が複雑かつ大型化するなどの欠点があり、また熱効率が低く加熱室の体積に対して消費電力が高くなるため発熱体の使用温度及び昇温速度などの性能面及び寿命面にも限界があった。なお図1において13は断熱材、14は炉心管を示す。
【0004】
そこで図2に示すように発熱体の構造を円筒型の一本の発熱体15を用いて、中空部を加熱室とする構造にすることにより、電気炉の熱効率を向上し、使用温度及び昇温速度などの性能面及び寿命面を改善することが可能であり、炭化ケイ素(SiC)のら管型、複ら管型発熱体などで一部実用化されているが、炭化ケイ素発熱体の場合、酸化及び熱伝導率などの特性上、発熱体の寸法を長尺化する必要があり、ひいては電気炉が大型化してしまう問題がある。またこの方法によっても炭化ケイ素発熱体では実用上1600℃までが限界であり、それ以上での温度での使用ができないという問題がある。なお図2において、16は発熱部、17は端子部、18は電極、19はリード線、20は断熱材、21は炉心管を示す。
【0005】
そこで発熱体の材料として高温での使用が可能で長寿命であるランタンクロマイトを使用し、図3に示すように発熱部3と両端部からなる円筒型の発熱体1に2ケ所のスリット5を設けることによって端子部2を一方に集中することにより発熱体の長尺化を防ぎ、図4に示すように発熱体内部を加熱室として用いることにより電気炉を一体型化し、これらにより電気炉をコンパクト化すること、及び発熱体の形状及び材料の特性を適切な範囲に設定することによって上記問題を解決した電気炉が特許文献1に開示されている。なお図3において、4は折り返し端部、6は電極、7は金属リード部品であり、図4において、1は発熱体、22は断熱材、23は炉心管を示す。
【0006】
しかしながら特許文献1の電気炉は、発熱体1の発熱部3と両端部が同一の材料であり比抵抗が同一であるために、両端部の抵抗値を小さくするため両端部の外径を発熱部の外径よりも大きくし、これにより両端部の断面積を発熱部の断面積よりも大きくすることで両端部の抵抗発熱を防ぐ必要があることから、所望の大きさの加熱室寸法を得るためには発熱体の内径に対して外径をより大きくする必要があるため、十分にコンパクトな電気炉とならない問題があった。また、両端部が肉厚になることから、両端部と発熱部との境界部分での熱衝撃に弱く、発熱体の形状を大きくした場合、急速加熱ができず短寿命になるなどの問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2003−139472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような従来の問題点を解決し、発熱体の有効加熱領域が大きく、高温での使用が可能であり、耐熱衝撃性に優れているため急速加熱が可能であり、長寿命のランタンクロマイト系発熱体からなるコンパクトな電気炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、発熱部と両端部の電気抵抗の相違を、形状、すなわち外径比ではなく、材料の比抵抗自体を変えることにより適正な比率とし、両端部の肉厚を小さくすることにより発熱体の内径を相対的に大きくし、これにより有効加熱領域を大きくし、及び発熱体の形状を適切な範囲に設定することにより、前記目的を達成することができた。
【0010】
すなわち本発明は、発熱部と両端部からなる円筒型のランタンクロマイト系発熱体において、発熱部の材料の1000℃の比抵抗が0.1〜3.5Ωcmの範囲にあり、両端部の材料の1000℃の比抵抗が0.02〜0.5Ωcmの範囲にあり、発熱部の材料の1000℃の比抵抗と両端部の材料の1000℃の比抵抗の比率([発熱部の比抵抗]/[両端部の比抵抗])が1.5〜100の範囲にあり、該発熱体の発熱部の長さと内径との比率([発熱部の長さ]/[内径])が0.6〜10の範囲にあり、該発熱体の内径と肉厚との比率([内径]/[肉厚])が6〜50の範囲にあり、該発熱体の一方の端面を基端とし、該基端面を2等分割する位置から垂直方向に2ケ所のスリットを設けることによって端子部を一方に集中し、該スリットの長さと発熱体の全長との比率([スリットの長さ]/[全長])が0.5〜0.95の範囲にあり、該端子部に高温用金属電極膜を取り付けた発熱体と、該発熱体の外側に装着した断熱材と、該発熱体の中空部内に装着したセラミックス炉心管とを備え、該炉心管の中空部内を有効加熱室としたことを特徴とする電気炉に関する。
【0011】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の電気炉について説明する。
【0012】
図5および図6は、本発明の電気炉の発熱体を示す図である。即ち、図5は本発明電気炉の発熱体を正面から見た図、図6(A)は本発明電気炉の発熱体を側面から見た図、図6(B)は図6(A)のA−A′断面図である。
【0013】
図5および図6において、発熱体1は、端子部2と発熱部3と折り返し端部4からなる円筒型のランタンクロマイト系セラミックスからなり、発熱体の基端面(端子部側)を2等分割する位置から垂直方向に2ケ所のスリット5を設け、端子部電極を一方に集中して端子部2とし、該端子部2に高温用電極6及び金属リード部品7を取り付け、両端部間を発熱部3としたものである。かくして、電流は、一方の端子部→一方の発熱部→折り返し端部→他方の発熱部→他方の端子部へと流れることとなる。
【0014】
該発熱体1は発熱体の発熱部と両端部の電気抵抗比を形状、すなわち外径比ではなく、材料の比抵抗自体を変えることにより抵抗比が設けられている。このため、図3(A)に示される特開2003−139472号公報記載の発熱体のように両端の外径を大きくする必要がなく、これによって、発熱体の外形寸法に対して、内径を特開2003−139472号公報記載の発熱体と比べて相対的に大きくすることが可能であり、ひいては炉内有効加熱領域を大きくすることが可能となる。
【0015】
該発熱体1の材料として用いられるランタンクロマイト系セラミックスは、発熱部の材料の1000℃の比抵抗が0.1〜3.5Ωcmの範囲にあり、両端部の材料の1000℃の比抵抗が0.02〜0.5Ωcmの範囲にあることが必要である。発熱部の比抵抗が0.1Ωcm未満の場合、抵抗値が低すぎて発熱体として低電圧−大電流駆動となるため電極と金属端子との接触不良が起こりやすいばかりか、リード部分を大型化する必要があるため実用性がなく、3.5Ωcmを超える場合は発熱体の抵抗値が大きすぎて通電発熱させることができない。両端部の比抵抗は理論的には0でも問題ないが、一般的にランタンクロマイト系セラミックスでは比抵抗が0.015Ωcm未満では材料の耐熱性、強度、耐久性が劣るため実用性がなく、0.5Ωcmを超える場合、端子部電極が抵抗発熱を起こすため短寿命となる。このため、発熱部の材料の1000℃の比抵抗が0.1〜3.5Ωcmの範囲にあり、両端部の材料の1000℃の比抵抗が0.02〜0.5Ωcmの範囲にあることが必要であり、発熱部の材料の1000℃の比抵抗が0.15〜1.0Ωcmの範囲にあり、両端部の材料の1000℃の比抵抗が0.025〜0.2Ωcmの範囲にあることがより望ましく、さらに発熱部の1000℃における比抵抗が0.2〜0.5Ωcmの範囲にあり、両端部の材料の1000℃の比抵抗が0.03〜0.15の範囲にあることがより好ましい。また、該発熱体1では、発熱部の材料の1000℃の比抵抗と両端部の材料の1000℃の比抵抗の比率([発熱部の比抵抗]/[両端部の比抵抗])が1.5〜100の範囲にあることが必要である。比抵抗の比率が1.5未満の場合、発熱部と両端部の抵抗の比率が小さく、発熱部のみならず両端部や端子部が抵抗発熱を起こし、その結果、両端部や端子部、端子部電極において破損が発生しやすく短寿命となる。比抵抗の比率が大きい場合は特に問題ないが、100を超える場合には材料の機械的特性などが大きく異なるため、成形、焼成が難しく、また発熱体が得られても昇温時に容易に破損するため発熱体として使用できない。このため、発熱部と両端部との1000℃における比抵抗の比率が1.5〜100の範囲にあることが必要であり、発熱部と両端部との比抵抗の比率が1.75〜50の範囲にあることがより望ましく、2〜25の範囲にあることがより好ましい。
【0016】
該発熱体1は発熱部と両端部の比抵抗が異なる材料から構成される。比抵抗の制御は、ランタンクロマイトの構成元素であるLaの一部をSr、Caなどで、Crの一部をCo、Ni、Al、Mgなどで置換固溶させることにより行うことができる。これらの置換比率については適宜、発熱体として十分に使用可能な機械的特性、耐熱性、耐久性を有しており、かつ前記比抵抗及び比抵抗の比率を有するものであればよく、発熱体の材料として使用する上で置換する元素の種類、置換比率については特に限定されないが、一般的にはLaをSrまたはCaで0.1〜20mol%程度、CrをAlで0〜40mol%程度置換したものを用いることが多い(詳細は特開2005−317210号公報参照)。また、該発熱体1は発熱部と両端部を特性の異なる材料として一体成形することにより得られるが、その方法については公知のセラミックスの成形方法で可能であり、特性の異なる原料粉体を適宜充填し成形することで行うことができる。
【0017】
該発熱体1では、発熱部3の長さと内径との比率([発熱部の長さ]/[内径])を0.6〜10の範囲とする必要がある。発熱部の長さと内径との比率が0.6未満の場合、発熱部の長さが内径に対して短すぎて十分な炉内温度分布が得られず実用上電気炉として使用することができない。また発熱部の長さが10を超える場合、有効加熱領域のアスペクト比が大き過ぎて実用性がない上、発熱体が長尺化するためコンパクトな電気炉とならないばかりか、長時間の使用による変形によってスリット間での接触が生じ、回路的短絡が発生する可能性がある。このため、発熱部3の長さと内径との比率([発熱部の長さ]/[内径])を0.6〜10の範囲とする必要があり、0.8〜5の範囲とすることがより望ましく、1.0〜3の範囲にあることがより好ましい。
【0018】
該発熱体1では、発熱体の内径と肉厚との比率([内径]/[肉厚])を6〜50の範囲とする必要がある。発熱体の内径と肉厚との比率が50を超える場合、内径に対して肉厚が小さ過ぎて発熱体の強度が十分に得られず短寿命となる。発熱体の肉厚と内径との比率が6未満の場合、内径に対して肉厚が大き過ぎて発熱体の熱容量が大きくなり、急速加熱を行った場合発熱体内部での温度勾配が大きくなり熱応力による破損が発生する可能性がある。このため、発熱体の内径と肉厚との比率([内径]/[肉厚])を6〜50の範囲とする必要があり、10〜35の範囲とすることがより望ましい。
【0019】
また該発熱体1では、発熱体に設けられたスリット5の長さと発熱体1の全長との比率([スリットの長さ]/[全長])が0.5〜0.95の範囲にある必要がある。スリットの長さと発熱体の全長との比率が0.5未満の場合には、発熱体全長に占める発熱部の長さが短すぎて、コンパクトな電気炉とならないばかりか、折り返し端部が不要に長くなるため単位発熱部面積に対する消費電力が高くなり短寿命となる。該スリットの長さと発熱体の全長との比率が0.95を超える場合、折り返し端部が短すぎて繰り返しの昇降温による破損が発生しやすく短寿命となる。このため、スリット5の長さと発熱体1の全長との比率([スリットの長さ]/[全長])が0.5〜0.95の範囲にある必要があり、スリットの長さと発熱体の全長との比率([スリットの長さ]/[全長])が0.6〜0.9の範囲とすることがより望ましい。
【0020】
図7は、本発明の電気炉の一例を示す断面図であり、発熱体1の中空部内には、セラミックス炉心管8を装着し、この中空部内を有効加熱室とする。セラミックス炉心管8は、この内部に被加熱物を置くことにより、発熱体1からの蒸発物によって被加熱物が汚染されることを防止できる。該セラミックス炉心管8の厚さ、長さ、及び外寸法は、電気炉の仕様に応じて適宜決めることができ、さらに、該セラミックス炉心管8は電気炉の仕様に応じて長さ方向に対して位置によって厚みや外寸法などを変化させてもよい。また、該セラミックス炉心管8は発熱体1と密着させても良いが、発熱部3では非接触とすることで、より一層被加熱物への汚染防止効果が向上する。
【0021】
セラミックス炉心管8は、電気炉を使用する温度域に応じて、従来電気炉の炉心管として用いられている各種の公知のセラミックスを使用することができるが、特に、純度95%以上、相対密度93%以上のアルミナ、ムライト、スピネル、安定化ジルコニア(安定化剤も含めた純度が95%以上)、マグネシア又はイットリアを使用することが望ましく、これらの材料を用いることにより、セラミックス炉心管8の耐熱性がさらに向上すると共に、発熱体1との反応も抑制され、被加熱物への汚染防止効果も向上する。
【0022】
上記発熱体1の外側には、断熱材9を装着する。発熱体1の外側に断熱材9を装着することによって、電気炉の熱効率を上げることができる。断熱材の材質としては、耐火煉瓦、耐火断熱煉瓦、キャスタブル耐火物、セラミックファイバー成形体等の各種の公知の耐火物を使用できる。又、セラミックファイバー成形体を使用する場合には、断熱性に優れ、蓄熱量が小さいために、消費電力を低減することができ、発熱体1を更に長寿命化することが可能となる。また、断熱材の材質としてセラミックスファイバー成形体を使用する場合、発熱体1と断熱材9との間に厚さ1〜5mm程度のセラミックス層10を形成することにより、発熱体1と断熱材9との反応をより一層少なくすることができ、発熱体1をより一層長寿命化することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電気炉においては、円筒型のランタンクロマイト系発熱体に2ケ所のスリットを設けることによって端子部を一方に集中しているため発熱体を従来よりも短尺化することができ、発熱部と端子部の電気抵抗比を形状、すなわち外径比ではなく、材料の比抵抗自体を変えることにより適正な比率とし、発熱体の肉厚を小さくすることにより発熱体の内径を相対的に大きくし、これにより有効加熱領域を大きくし、発熱体内部を有効加熱室として用いることにより電気炉を一体型化し、これらにより電気炉をコンパクト化することができる。また高温での使用が可能であり、耐熱衝撃性に優れるため急速加熱が可能であり、長寿命となるほか、各種雰囲気制御を行うことが可能である。また本電気炉は、縦型での使用はもちろんのこと、横型での使用も全く問題なく可能であり、試料の出し入れが容易であるというメリットも持ちあわせている。
【実施例】
【0024】
以下に本発明の実施例、比較例について下記に説明するが、本発明はこれらの実施例だけに限定するものではない。各発熱体の寸法などの条件は下記表1〜2に示す。
【0025】
実施例1
図7の電気炉において、発熱体1における発熱部及び両端部〔例えば、図5および図6(A)、(B)に示す〕のそれぞれを形成している材料が表1〜3に示す特性を有するランタンクロマイト系セラミックスを用いて、内径39mm、外径45mm、肉厚3mm、端子部2の長さ60mm、発熱部3の長さ65mm、折り返し端部4の長さ30mm、全長155mmの円筒体とし、その端子部の端面を2等分割する位置から折り返し端部に向かって垂直方向に2ケ所の幅3mm、長さ130mmの溝を設けスリット5とし、端子部2の下端から25mmの位置までの部位(外周面及び端面)に白金ペーストを塗布し、1300℃で焼き付けて、高温用電極6を形成したのち、ステンレス鋼SUS304からなる金属リード部品7を取り付けた。この発熱体1の中空部内に純度99.5%、相対密度97%のアルミナセラミックス炉心管8(以下炉心管と呼ぶ)(外径37mm×内径30mm×長さ400mm)を挿入し、発熱体1の外側に、純度99.5%、相対密度97%の円筒型のアルミナセラミックス10(外径10aの大きさが56mm、外径10bの大きさが52mm、内径10が48mm、全長120mm)を装着した。さらにその外側には断熱材9として、純度95%のα−アルミナ材質からなる、かさ密度0.7g/cmの成形体(セラミックファイバー成形体)を、中央部にアルミナセラミックス10の外径10bと同様の大きさの貫通孔を有する形状に加工して配置し、その外部を、耐火材を内張りにした金属缶体で取り囲み固定することによって、電気炉を得た。
【0026】
実施例2
図7の電気炉において、発熱体1における発熱部及び両端部の各々の材料が表1〜3に示す組成を有し、1000℃における比抵抗をそれぞれ0.22Ωcm、0.11Ωcmとしたランタンクロマイト系セラミックスを用いて、発熱体の内径64mm、外径68mm、肉厚2mmとして発熱体1を作製し、発熱体1の中空部内に純度99.5%、相対密度97%のアルミナセラミックス炉心管8(外径58mm×内径50mm×長さ400mm)を挿入し、発熱体1の外側に、純度99.5%、相対密度97%の円筒型のアルミナセラミックス10(外径10aの大きさが88mm、外径10bの大きさが82mm、内径10が76mm、全長120mm)を装着したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0027】
実施例3
図7の電気炉において、発熱体1における発熱部及び両端部の各々の材料が表1〜3に示す組成を有し、1000℃における比抵抗をそれぞれ0.48Ωcm、0.18Ωcmとしたランタンクロマイト系セラミックスを用いて、発熱体1を作製したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0028】
実施例4
図7の電気炉において、表1〜3に示す組成と比抵抗を有するランタンクロマイト系セラミックスを用いて、発熱体1の内径80mm、外径88mm、肉厚4mm、端子部2の長さ100mm、発熱部3の長さ150mm、折り返し端部4の長さ50mm、全長300mm、スリット5の幅6mm、長さ265mmとして発熱体1を作製し、発熱体1の中空部内に純度99.5%、相対密度97%のアルミナセラミックス炉心管8(外径72mm×内径66mm×長さ600mm)を挿入し、発熱体1の外側に、純度99.5%、相対密度97%の円筒型のアルミナセラミックス10(外径10aの大きさが108mm、外径10bの大きさが100mm、内径10が94mm、全長250mm)を装着したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0029】
実施例5
図7の電気炉において、発熱体1における発熱部及び両端部の各々の材料が表1〜3に示す組成を有し、1000℃における比抵抗をそれぞれ0.4Ωcm、0.024Ωcmとしたランタンクロマイト系セラミックスを用いて、発熱部3の長さ60mm、折り返し端部4の長さ70mm、全長190mm、スリット5の長さ125mmとして発熱体1を作製し、発熱体1の外側に、純度99.5%、相対密度97%の円筒型のアルミナセラミックス10(外径10aの大きさが56mm、外径10bの大きさが52mm、内径10が48mm、全長150mm)を装着したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0030】
実施例6
図7の電気炉において、表1〜3に示す組成と比抵抗を有するランタンクロマイト系セラミックスを用いて、発熱体の内径50mm、外径55mm、肉厚2.5mm、端子部2の長さ110mm、発熱部3の長さ150mm、折り返し端部4の長さ40mm、スリット5の幅5mm、長さ265mmとして発熱体1を作製し、発熱体1の中空部内に純度99.5%、相対密度97%のアルミナセラミックス炉心管8(外径46mm×内径40mm×長さ600mm)を挿入し、発熱体1の外側に、純度99.5%、相対密度97%の円筒型のアルミナセラミックス10(外径10aの大きさが43mm、外径10bの大きさが64mm、内径10が59mm、全長240mm)を装着したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0031】
比較例1
実施例1における図7の電気炉において、発熱体1における発熱部及び両端部の各々が表1〜3に示す組成と物性を有する(とくに発熱部と両端部の1000℃における比抵抗をそれぞれ0.09Ωcm、0.042Ωcmとした)ランタンクロマイト系セラミックスを用いて発熱体1を作製したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0032】
比較例2
図7の電気炉において、発熱体1における発熱部及び両端部が表1〜3に示す組成と物性を有する(とくに発熱部と両端部の各々の1000℃における比抵抗をそれぞれ4.0Ωcm、0.3Ωcmとした)ランタンクロマイト系セラミックスを用いて発熱体1を作製したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0033】
比較例3
図7の電気炉において、発熱体1における発熱部及び両端部が表1〜3に示す組成と物性を有する(とくに発熱部と両端部の各々の1000℃における比抵抗を0.24Ωcm、0.017Ωcmとした)ランタンクロマイト系セラミックスを用いて発熱体1を作製したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0034】
比較例4
図7の電気炉において、発熱体1における発熱部及び両端部が表1〜3に示す組成と物性を有する(とくに発熱部と両端部の各々の1000℃における比抵抗を1.2Ωcm、0.55Ωcmとした)ランタンクロマイト系セラミックスを用いて発熱体1を作製したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0035】
比較例5
図7の電気炉において、発熱体1における両端部が表1〜3に示す組成と物性を有する(とくに発熱部と両端部のそれぞれの1000℃における比抵抗を0.3Ωcm、0.23Ωcmとした)ランタンクロマイト系セラミックスを用いて発熱体1を作製したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0036】
比較例6
図7の電気炉において、発熱体1における発熱部及び両端部が表1〜3に示す組成と物性を有する(とくに発熱部と両端部の各々の1000℃における比抵抗を2.5Ωcm、0.024Ωcmとした)ランタンクロマイト系セラミックスを用いて発熱体1を作製したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0037】
比較例7
図7の電気炉において、発熱体1の内径54mm、外径60mm、発熱部3の長さ30mm、全長120mm、スリット5の長さ95mmとして発熱体1を作製し、発熱体1の中空部内に純度99.5%、相対密度97%のアルミナセラミックス炉心管8(外径48mm×内径40mm×長さ350mm)を挿入し、発熱体1の外側に、純度99.5%、相対密度97%の円筒型のアルミナセラミックス10(外径10aの大きさが78mm、外径10bの大きさが72mm、内径10が66mm、全長90mm)を装着したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0038】
比較例8
図7の電気炉において、発熱体1の内径24mm、外径30mm、発熱部3の長さ250mm、折り返し端部4の長さ50mm、全長360mm、スリット5の幅2mm、長さ310mmとして発熱体1を作製し、発熱体1の中空部内に純度99.5%、相対密度97%のアルミナセラミックス炉心管8(外径20mm×内径15mm×長さ800mm)を挿入し、発熱体1の外側に、純度99.5%、相対密度97%の円筒型のアルミナセラミックス10(外径10aの大きさが43mm、外径10bの大きさが39mm、内径10が35mm、全長330mm)を装着したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0039】
比較例9
図7の電気炉において、発熱体1の内径55mm、外径57mm、肉厚1mmとして発熱体1を作製し、発熱体1の中空部内に純度99.5%、相対密度97%のアルミナセラミックス炉心管8(外径50mm×内径46mm×長さ400mm)を挿入し、発熱体1の外側に、純度99.5%、相対密度97%の円筒型のアルミナセラミックス10(外径10aの大きさが75mm、外径10bの大きさが69mm、内径10が63mm、全長120mm)を装着したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0040】
比較例10
図7の電気炉において、実施例1と同様の組成と比抵抗を有するランタンクロマイト系セラミックスを用いて、内径23mm、外径32mm、肉厚4.5mm、発熱部3の長さ45mm、全長135mm、スリット5の幅1.5mm、長さ110mmとして発熱体1を作製し、発熱体1の中空部内に純度99.5%、相対密度97%のアルミナセラミックス炉心管8(外径20mm×内径15mm×長さ360mm)を挿入し、発熱体1の外側に、純度99.5%、相対密度97%の円筒型のアルミナセラミックス10(外径10aの大きさが42mm、外径10bの大きさが38mm、内径10が35mm、全長100mm)を装着したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0041】
比較例11
図7の電気炉において、端子部2の長さ55mm、発熱部3の長さ30mm、折り返し端部4の長さ105mm、全長190mm、スリット5の長さ90mmとして発熱体1を作製し、発熱体1の外側に、純度99.5%、相対密度97%の円筒型のアルミナセラミックス10(外径10aの大きさが56mm、外径10bの大きさが52mm、内径10が48mm、全長150mm)を装着したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0042】
比較例12
図7の電気炉において、発熱体1の内径24mm、外径30mm、端子部2の長さ240mm、折り返し端部4の長さ15mm、全長320mm、スリット5の幅2mm、長さ310mmとして発熱体1を作製し、発熱体1の中空部内に純度99.5%、相対密度97%のアルミナセラミックス炉心管8(外径20mm×内径15mm×長さ750mm)を挿入し、発熱体1の外側に、純度99.5%、相対密度97%の円筒型のアルミナセラミックス10(外径10aの大きさが43mm、外径10bの大きさが39mm、内径10が35mm、全長270mm)を装着したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0043】
比較例13
実施例1における図7の電気炉と同等の構造を有する電気炉において、発熱体1として図3(A)及び図3(B)に示される形状をもち、該発熱体1における発熱部及び両端部の材料が表1に示す組成を有し、1000℃における比抵抗がいずれも0.3Ωcmであるランタンクロマイト系セラミックスを用いて、該発熱体1の内径32mm、発熱部3の外径36mm、端子部2の外径45mm、端子部2の肉厚6.5mm、発熱部3の肉厚2mmとして発熱体1を作製し、発熱体1の中空部内に純度99.5%、相対密度97%のアルミナセラミックス炉心管8(外径30mm×内径24mm×長さ400mm)を挿入したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0044】
比較例14
実施例1における図7の電気炉と同等の構造を有する電気炉において、発熱体1として図3(A)及び図3(B)に示される形状をもち、該発熱体1における発熱部及び両端部の材料が表1に示す組成を有し、1000℃の比抵抗をいずれも0.3Ωcmとしたランタンクロマイト系セラミックスを用いて、該発熱体1の内径45mm、発熱部3の外径50mm、端子部2の外径55mm、端子部2の肉厚5mm、発熱部3の肉厚2.5mm、端子部2の長さ100mm、発熱部3の長さ160mm、折り返し端部4の長さ40mm、全長300mm、スリット5の幅5mm、長さ260mmとして発熱体1を作製し、発熱体1の中空部内に純度99.5%、相対密度97%のアルミナセラミックス炉心管8(外径40mm×内径34mm×長さ600mm)を挿入し、発熱体1の外側に、純度99.5%、相対密度97%の円筒型のアルミナセラミックス10(外径10aの大きさが66mm、外径10bの大きさが60mm、内径10が55mm、全長240mm)を装着したこと以外は、実施例1と同様にして電気炉を得た。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
試験例1
実施例1〜6及び比較例1〜13のそれぞれの電気炉を、有効炉内中央での保持温度1800℃、保持時間30min、昇降温速度300℃/hで繰り返しサイクル通電試験を実施したときの、消費電力が最大となる温度到達時の電圧、電流、消費電力、表面負荷密度及び発熱体が破損するまでのサイクル回数を求めた。その結果を表4に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
試験例2
実施例1、6及び比較例14のそれぞれの電気炉を、有効炉内中央での保持温度1800℃、保持時間30min、昇降温速度800℃/hで通電試験を実施したときの、消費電力が最大となる温度到達時の電圧、電流、消費電力、表面負荷密度を求めた。その結果を表5に示す。
【0051】
【表5】

【0052】
試験例1の表4から明らかなように、実施例1〜6の電気炉は高い耐久性を示した。また比較例1〜13の結果から明らかなように、本発明の要件を満足しないランタンクロマイト系発熱体を用いた電気炉は充分な有効加熱領域が得られず、また耐久性に優れた電気炉とならない。また、試験例2の結果、本発明の電気炉は昇温速度800℃/hでの急速加熱が可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1(A)は従来の複数の発熱体を使用した管状型電気炉の縦断面図、図1(B)は従来の管状型電気炉の横断面図である。
【図2】図2(A)は従来の一本の発熱体を使用した一体型の管状型電気炉の縦断面図、図2(B)は従来の一本の発熱体を使用した一体型の管状型電気炉の横断面図である。
【図3】図3(A)は特許文献1の電気炉の発熱体を正面から見た図、図3(B)は発熱体を側面から見た図である。
【図4】図4は特許文献1の電気炉の一例を示す図である。
【図5】図5は本発明電気炉の発熱体を正面から見た図である。
【図6】図6(A)は本発明電気炉の発熱体を側面から見た図、図6(B)は図6(A)のA−A′断面図である。
【図7】図7は本発明電気炉の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 発熱体
2 端子部
3 発熱部
4 折り返し端部
5 スリット
6 電極
7 金属リード部品
8 セラミックス炉心管
9 断熱材
10 セラミックス層
10a セラミックス層
10b セラミックス層
11 金属缶体
12 棒状発熱体
13 断熱材
14 炉心管
15 発熱体
16 発熱部
17 端子部
18 電極
19 リード線
20 断熱材
21 炉心管
22 断熱材
23 炉心管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部と両端部からなる円筒型のランタンクロマイト系発熱体において、発熱部の材料の1000℃の比抵抗が0.1〜3.5Ωcmの範囲にあり、両端部の材料の1000℃の比抵抗が0.02〜0.5Ωcmの範囲にあり、発熱部の材料の1000℃の比抵抗と両端部の材料の1000℃の比抵抗の比率([発熱部の比抵抗]/[両端部の比抵抗])が1.5〜100の範囲にあり、該発熱体の発熱部の長さと内径との比率([発熱部の長さ]/[内径])が0.6〜10の範囲にあり、該発熱体の内径と肉厚との比率([内径]/[肉厚])が6〜50の範囲にあり、該発熱体の一方の端面を基端とし、該基端面を2等分割する位置から垂直方向に2ケ所のスリットを設けることによって端子部を一方に集中し、該スリットの長さと発熱体の全長との比率([スリットの長さ]/[全長])が0.5〜0.95の範囲にあり、該端子部に高温用金属電極膜を取り付けた発熱体と、該発熱体の外側に装着した断熱材と、該発熱体の中空部内に装着したセラミックス炉心管とを備え、該炉心管の中空部内を有効加熱室としたことを特徴とする電気炉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−285644(P2007−285644A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115397(P2006−115397)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000230629)株式会社ニッカトー (30)
【Fターム(参考)】