説明

電気炊飯器

【課題】調理物の温度を精度良く測定することが可能であると共に、安全に赤外線センサーが設けられた電気炊飯器を提供すること。
【解決手段】電気炊飯器Sにおいて、本体1と、該本体に着脱自在に収納される内鍋2と、該内鍋を加熱する加熱手段3と、該加熱手段を制御する制御手段13と、内鍋の上部開口を開閉自在に覆う上蓋5と、該上蓋に設けられ内鍋内部の調理物の温度を検知する赤外線センサー部20を有し、赤外線センサー部は、サーモパイルと、該サーモパイルの温度を検知するサーミスタと、サーモパイルとサーミスタを内部に配置するプローブ部を有し、プローブ部は、非導電性の材料からなる第1のプローブと、サーモパイルの温度を検知する視野を形成する第2のプローブから構成され、第2のプローブは、第1のプローブより熱伝導率の大きい材料で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサーを用いた電気炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、炊飯器の本体に赤外線センサーを設け、炊飯調理時に本体内部に設けられた内鍋から放射される赤外線を検知して、内鍋の温度を検知する電気炊飯器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−106702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電気炊飯器は、赤外線センサーが本体の底部に設けられていることから、内鍋内部に保持される調理物と赤外線センサーの間は内鍋で隔てられる構成となる。
従って、赤外線センサーが検知する温度の検知対象位置が内鍋となることから、非接触で温度を検出できる赤外線センサーを使用しているにも関わらず、内鍋内の調理物である水や飯の温度を、内鍋を介して間接的に検出するものである。
つまり、調理物を直接検知した温度ではなく、内鍋を介して検知した間接的な温度を用いて炊飯器の制御を行うことから、調理物の正確な温度に則した、細かな炊飯制御を行うことが難しいという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記の課題を解決するものであり、調理物の温度を精度良く測定することが可能であると共に、安全に赤外線センサーが設けられた電気炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する為には、電気炊飯器において、本体と、該本体に着脱自在に収納される内鍋と、該内鍋を加熱する加熱手段と、該加熱手段を制御する制御手段と、内鍋の上部開口を開閉自在に覆う上蓋と、該上蓋に設けられ内鍋内部の調理物の温度を検知する赤外線センサー部を有し、赤外線センサー部は、サーモパイルと、該サーモパイルの温度を検知するサーミスタと、サーモパイルとサーミスタを内部に配置するプローブ部を有し、プローブ部は、非導電性の材料からなる第1のプローブと、サーモパイルの温度を検知する視野を形成する第2のプローブから構成され、第2のプローブは、第1のプローブより熱伝導率の大きい材料で構成することで、課題を解決することが可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、赤外線センサーの検知精度を向上させることができ、この赤外線センサーを電気炊飯器に用いることにより、調理物の温度を直接より正確に検知することが可能となる。従って、正確な温度に基づく決め細やかな炊飯制御を行うことができ、よりおいしいご飯を炊飯することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1に係る炊飯器の断面図
【図2】図1の要部断面図
【図3】図2の各部を分解した分解図
【図4】サーモパイルの検知視野及び検知対象視野角を示す赤外線センサーの断面図
【図5】実施の形態1の変形例を示す赤外線センサーの断面図
【図6】実施の形態2に係る赤外線センサーの断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下、図1〜図4を参照して、実施の形態1について説明する。
図1に示すように、本実施の形態における電気炊飯器Sは、略有底筒状の炊飯器本体1と、炊飯器本体1の内部の鍋収納部1aに収納される磁性を有する金属材から形成された内鍋2と、炊飯器本体1の開口部を開閉可能に炊飯器本体1にヒンジ軸3aを介して回動自在に取り付けられる上蓋5と、上蓋5の内側(内鍋2の開口2aを覆う側)に着脱自在に取り付けられて、内鍋2の開口部を密閉可能な盤状の内蓋8と、内鍋2を電磁誘導加熱する加熱手段であるコイル3や胴ヒーター4を有している。
【0010】
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、炊飯器本体1の上部開口の内周部に嵌合され、耐熱性のプラスチック材から一体成型された略環状の上枠1bと、内鍋2の外形状に対応して有底円筒形状に形成され、上部開口側端部で上枠1bに一体的に接続された下枠1cとで構成されている。尚、この下枠1cも、耐熱性のプラスチック材から一体成型されている。
【0011】
下枠1cの外周面には、コイル3が取り付けられている。また、下枠1cの底部の中央部分には、開口1dが形成されており、当該開口1dには、内鍋2の温度を測定するための内鍋2の温度検知手段である底温度センサー15が配置されている。
この底温度センサー15は、内鍋2を鍋収納部1aに収納した際に、内鍋の底部に当接可能に構成されている。
尚、「当接可能」とは、温度センサー15が開口1dから常に上方へ一定寸法だけ突出するように下方からバネ(図示せず)で押し上げられていることによって、内鍋2が前記鍋収納部1aに正しくセットされた場合は、その内鍋2の外側底面に接するということである。
【0012】
次に、本体1の外殻を形成する本体ケース1kの前壁面上部(図1の左側上部)には、上蓋5の前側に設けられた上蓋フック5aに係合可能な本体側フック1eが設けられている。そして、この上蓋フック5aと前壁上部に設けられた本体側フック1eが係合することで、本体1に上蓋5が閉じられた状態に保持される。
また、本体ケース1kの前壁に望む位置に設けられた解除ボタン1Lを押下することにより、前述したフック同士の係合が解除され、上蓋5を開放することが可能となる。
【0013】
次に、本体1内には、各部を駆動制御して一連の炊飯動作や調理物の保温を行う制御手段13が設置されている。
この制御手段13は、例えば、上蓋5に設けられた操作基板10に配置された押しボタンなどの操作手段(図示せず)を、使用者が操作することで発せられる信号に基づき、各部および各装置の駆動制御を行う。
【0014】
尚、実際の炊飯制御は、制御手段13であるマイコンにより制御するものであり、具体的には、制御基板13を介して加熱コイル3や胴ヒーター4に通電を行いながら、後述する赤外線センサー部20からの信号や内鍋1の下部に設けられた底温度センサー15からの信号を読み込んで通電制御を行い、内鍋2内の水温が所望温度になるように制御する。
また、蒸らし工程や、保温工程などでは、蓋温度センサー(図示せず)からの信号を読み込み、後述する蓋ヒーター6の通電制御をしている。このように、複数のセンサーにより複数の加熱源を通電制御することで、おいしいご飯が炊飯できる。
【0015】
次に、上蓋5について詳述する。
上蓋5の内部には、炊飯時に水面や調理物の温度を直接検知する温度検知手段である赤外線センサー部20や、表示部や入力手段を備えた操作基板10が設けられている。これら各部は、炊飯中や保温工程で発生する蒸気が、内部に浸入しないよう周辺部をパッキン等でシールされている。
【0016】
次に、上蓋5の下部5bを構成する部材には、後述する赤外線センサー20を取り付ける下部開口5cが形成されている。また、下部5bには、アルミ等で形成された放熱板7が取付けられている。
この放熱板7の上蓋5の下部開口5cと上下に重なる位置には、後述する上蓋5に取り付けられた赤外線センサー20が望む放熱板開口7bが開口している。
【0017】
また、放熱板7には、蓋ヒーター6が設けられており、内蓋8が上蓋5の下部に取付けられた際に、放熱板7に内蓋8に接触することで、蓋ヒーター6の熱を内蓋8に伝わるように構成されている。
これにより、内蓋8が暖められ、下面に水滴が留まりにくく構成されている。尚、蓋ヒーター6は、電磁誘導加熱を用いたものでも良い(図4参照)。
【0018】
このような内蓋8は、アルミや銅などの熱伝導率の良い材料、又は、ステンレスのように電磁誘導加熱に適した材料から形成されている。
また、内蓋8が上蓋5に取り付けられた際に、放熱板7の放熱板開口7bと上下に重なる位置には、後述する上蓋に取り付けられた赤外線センサーが内鍋2の内部の温度を直接検知することができるように、開口8aが形成されている。
尚、内蓋8は、上蓋5を垂直状態まで開いた状態でも、内鍋2に重なるようにその上面開口を閉鎖した状態でも、上蓋5から脱落しないように、フックなどで係合支持されており、このフックの係合を外せば、内蓋8は上蓋5から取り外しが可能である。
【0019】
次に、上蓋5の天面には、炊飯中や保温時に発生する蒸気を本体外に放出する蒸気口11が形成されている。この蒸気口11は、炊飯中に生じるおねばを一時的に蓄え、最終的に内釜内部に戻す役割をするカートリッジ12を介して内鍋2と通じている。
【0020】
次に、図2〜図4を参照して赤外線センサー部20及び周辺各部について説明する。
図2は、図1のA部が示す上蓋5の要部断面図である。
赤外線センサー部20は、温度を検知する対象物から放射される赤外線を受光して対象物の温度に応じた電圧を発生させる温度検知手段であるサーモパイル21と、サーモパイル21が実装されるプリント基板22と、サーモパイル21の温度(赤外線)を検知する視野を規制し温度検知の対象を絞るプローブ部23と、サーモパイル21を水蒸気やおねばから守るフィルター26及び内パッキン27から構成されている。
【0021】
サーモパイル21は、外部より赤外線を取り込む開口部21bが形成されたケース21cと、このケース21cの内部に設けられた赤外線受光部21dと、サーミスタ21aを有する。
このサーミスタ21aは、サーモパイル21が検知した温度が絶対温度ではないことから、サーモパイル21が検知した温度を補償(補正)する基準となるサーモパイル21の雰囲気温度、つまり、サーモパイル21の温度を計測する温度検知手段である。
つまり、サーモパイル21の雰囲気温度を検出し、サーモパイル21が検知した温度から雰囲気温度による影響を補正することで排除し、より正確な温度を求める為のものである。
【0022】
次に、プローブ部23は、外郭を形成する第1のプローブである外プローブ24と、この外プローブ24の内部に設けられる第2のプローブである内プローブ25から構成されている。
外プローブ24は、異なる直径の円筒を上下に重ねた形状であり、外段部24cと内段部24dが形成されている。また、直径が小さな円筒側の端には、略中央部に透孔24bが空けられた底部24aが形成されており、直径の大きな円筒側の開口端には、先端に係合爪24eが形成された脚部24fが設けられている。
【0023】
この係合爪24eは、脚部24fから立ち上がる立ち上がり部24gと、立ち上がり部24gの先端から脚部24fの先端にかけて傾斜する斜面部24hが形成されている。
この様に各部が構成された外プローブ24は、非導電性の耐スチーム性に優れた耐熱PPなどの樹脂により形成されている。
また、外プローブ24の形状は、後述するサーモパイル21の温度を検知する視野にかからない様に構成されている。
【0024】
次に、内プローブ25は、異なる直径の円筒を上下に重ねた形状であり、外段部25cと内段部25dが形成されている。
また、直径が小さな円筒側の端には、略中央部に透孔25bが空けられた底部25aが形成されている。この透孔25bは、外側の開口より内側の開口を大きくすることで、外側から内側に広がる円錐形状となっている。
【0025】
この様な透孔25bの形状は、サーモパイル21の温度の検知対象となる視野を所望する、つまり、サーモパイルの温度を検知する視野を形成するため、所定の開口に調整されたものである。
この透孔5aの開口は、内プローブ25が各部と組み立てられた際に、サーモパイル21の温度検知の視野が、内パッキン27や外プローブ24にかからないように構成されている。
【0026】
この様に、各部が構成された内プローブ25は、外プローブ24より熱伝導率の大きい樹脂材料、すなわち熱伝導の良い材料で形成されている。(例えば、外プローブ24がPP樹脂で構成されている場合、内プローブ25はPPS樹脂で構成されている。特に、PPPS樹脂については、出光興産株式会社製の絶縁タイプのグレードである「G142Z1」「G131L3」「G141Z1」「G131Z1」が適しており、この他、これらのPPS樹脂の特性と同じか類似したものをであれば良い。)
【0027】
次に、フィルター26は、シリコンの単結晶体やゲルマニウムの単結晶体など、赤外線を透過する部材で板状に構成されている。
特に、シリコンの単結晶体は、赤外線の透過率が高いことに加え、撥水性があることから、炊飯中に付着したおねばなどが、炊飯工程中に生じる蒸気で洗い流されるので、汚れが堆積しにくく、フィルター26の部材として適している。
また、内パッキン27は、シリコンなどの弾性を有する材料で構成され、サーモパイル21の視野にかからない様に、中心部に穴が開いたリング形状となっている。
【0028】
以上の各部は、次のように組み立てられることで、赤外線センサー部20を構成し、上蓋5の下部5bに取り付けられる。
まず、外プローブ24の底部24aに内パッキン27が設けられ、この内パッキン27に重なるように、フィルター26が配置される。そして、内プローブ25がフィルター26に接するように、透孔25bが空けられた底部25a側から外プローブ24の内部に挿入される。
つまり、フィルター26と内パッキン27は、外プローブ24と内プローブ25に挟み込まれた状態となる。また、外プローブ24の透孔24bと内プローブ25の透孔25bとサーモパイル21の開口21bは、それぞれ上下に連通した位置関係となる。
【0029】
尚、内パッキン27の厚さとフィルター26の厚さと内プローブ25の高さの合計は、外プローブ24の深さ(底24aから直径の大きな円筒側の開口端24iまでの深さ)より大きくなるように構成されている。
即ち、内パッキン27とフィルター26と内プローブ25が、外プローブ24に単に配置された状態においては、上記の大きさの関係から、外プローブ24の開口端24iから内プローブ25が突出した状態となる。
【0030】
次に、サーモパイル21が実装されたプリント基板22に、上記のように内部に各部が配置された外プローブ24を開口端24i側から取り付ける。
プリント基板22には、外プローブ24の係合爪24fと係合する取り付け開口22aが形成されている。この開口22aに、係合爪24fが形成された脚部24eを挿入することにより、プリント基板22に外プローブ24が係合されて、取り付けられる。
【0031】
この係合爪24fとプリント基板22の係合は、係合爪24fが斜面部24hから開口22aに挿入され、傾斜部24hが開口22aを通過することにより係合爪24fが、立ち上がり部24gの立ち上がり方向に広がり、係合爪24fの立ち上がり部24gとプリント基板面が対面することにより、係合状態となる。
【0032】
この状態において、外プローブ24から突出していた内プローブ25は、プリント基板22の面に押圧される。これに伴い、外プローブ24の内部に位置する内パッキン27もフィルター26を介して押圧されて潰されることで弾性変形し、フィルター26と外プローブ24の間の隙間を埋る。
これにより、透孔24bから内プローブ25やサーモパイル21やプリント基板22が位置している側への蒸気やおねばの侵入の防止効果を高めることができる。従って、上記のように蒸気やおねばの侵入の防止効果が高いので、内プローブ25は、必ずしも耐スチーム性に優れた材料で構成する必要がなくなる。
【0033】
また、上記の各部が組み立てられた状態において、サーモパイル21は、内プローブ25と少なくとも一部が接して(できれば密着が良い)、内プローブ23の内部に配置されている。
本実施の形態の場合、サーモパイル21のケース21cが、内プローブ25の底部25aに突き当たると共に、外周が内プローブ25の内壁に密着して配置されている。
【0034】
このように配置することにより、内プローブ25が熱伝導率の良い材料で構成されているので、サーモパイル21と内プローブ23の間で熱エネルギーが伝導しやすくなり、サーモパイル21の温度と内プローブ25の温度を近づけることが可能となる。
即ち、サーモパイル21の温度検知の視野にかかる内プローブ25の部分の温度が、サーモパイル21に内蔵されたサーミスタ21aの温度に近づくことができるように構成されている。
【0035】
次に、上記のように構成された赤外線センサー部20は、次のように上蓋5の下部5bに設けられる。
まず、赤外線センサー20は、上蓋5の下部5bに形成された下部開口5cに、外プローブ24の透孔24b側から挿入され、上蓋5に取付けられる。尚、下部開口5cには、内部に開口内方に突出する段部5d形成されているので、外プローブ24の外段部24cを上方より受けて保持する。
【0036】
このような赤外線センサー20が上蓋5の下部5bに取り付けられた状態において、外プローブ24の透孔24bが、放熱板7の放熱板開口7bより下側に位置するように、放熱板開口7bの内部に配置される。
この状態で、放熱板開口7b周縁と赤外線センサー20の間には、外パッキン7aが介在している。これにより、放熱板開口7bから赤外線センサー20側へ、蒸気などが侵入しないようにシールされている。
【0037】
次に、赤外線センサー部20の上方、つまり、プリント基板22のサーモパイル21の実装面の裏側の面の上方は、カップ状の基板室カバー5eにより覆われている。この基板室カバー5eは、カバーパッキン5fを介して上蓋5の内部に取付けられている。
これにより、上蓋5と基板室カバー5eとに囲まれた内部に、蒸気などが侵入しにくい基板室が形成されている。
【0038】
次に、内蓋8は、放熱板7の下側に取付けられている。この時、赤外線センサー部20の透孔24bと内蓋8の開口8aは、上下に連通した位置関係となる。また、開口8aの周縁を囲むように、外パッキン7aが密着しており、蒸気が開口8aから外部に漏れないようにシールされている。
尚、図4に示すように、開口部8aは外パッキン7bの外径よりも小さく、かつサーモパイル21の視野よりも大きく、赤外線センサー部20が内鍋内の水温や飯温を検知可能に構成されている。
【0039】
以上のように各部を構成することにより、以下のような効果を得ることができる。
外プローブ24や内パッキン27や外パッキン7aなどは、サーモパイルの温度検知の視野を妨げない形状とすることにより、サーモパイル21の温度検知の視野の外にこれら部材が位置するので、サーモパイルはこれら部材の温度を検知することはない。
しかし、サーモパイル21は内プローブ25内に配置されている為、どうしてもサーモパイル21の温度検知の対象視野内に、内プローブ25の内壁(例えば、透孔25bのない壁面など)が入ってしまい、検知したい対象の温度の他に、内プローブ25の内壁の温度も検知してしまう。
【0040】
しかしながら、本実施の形態のように、内プローブ25を熱伝導性の良い部材により構成し、内プローブ25とサーモパイル21を接触させて配置することで、内プローブ25とサーモパイル21の温度を近づけることができる。
従って、内プローブ25のサーモパイル21の視野にかかる部分の温度を、サーモパイル21に内蔵されたサーミスタ21aが検知する温度に近づけることができる。
これにより、サーモパイル21の視野にかかっている内プローブ25の温度を検出したことによる誤差は、サーミスタ21aの検出した温度で補正することにより、影響を排除することができ、検知対象物の温度測定の検出精度を向上させることができる。
【0041】
つまり、サーモパイル21は、測定対象物の温度と、サーモパイル21自身の温度(補償サーミスタによる検知温度)の差を電圧として出力する為、視野にかかる内プローブ25の温度がサーモパイル21に内蔵した温度補償用サーミスタの温度と等しくなれば、この部分による影響は補正することが可能となり、測定対象物のみの温度を正確に検出することができる。
【0042】
また、プローブ部23を内プローブ25と外プローブ25の2つの部材で構成し、それぞれのプローブの間に赤外線を透過するフィルター26と内パッキン27などのシール部材を設けて、プローブ23の内側から蒸気がプリント基板22側に浸入しないように構成すると共に、外プローブ25の外周を外パッキン7bでシールしたので、赤外線センサー20のプリント基板室の気密性を確保することができる。
【0043】
また、上記のように外プローブ25を非導電性の樹脂で構成し、各部の気密性が確保されているので、蒸気がサーモパイル21やプリント基板22側に浸入することがなく、かつ、使用者が赤外線センサーの外郭部である充電部に触れる恐がないので、絶縁性を確保できる。
【0044】
尚、絶縁性に関しては、他の部品で蒸気シールを構成すれば、必ずしも赤外線センサー20にて蒸気の各シール部を構成する必要はなく、使用者がサーモパイル20、(及び金属で内プローブ25を構成した場合は内プローブ25)に触れないように、外プローブ24を構成することによっても絶縁性を確保できる。
よって、上記の赤外線センサー20を電気炊飯器に用いることにより、調理物の温度を直接正確に検知することが可能なので、正確な温度に基づく決め細やかな炊飯制御を行うことができ、よりおいしいご飯を炊飯することが可能である。
【0045】
この他、本実施の形態において、サーモパイル21の温度を検知する為の温度検知手段として、サーミスタ21aを用いているが、このサーミスタ21aで検知した温度を蓋ヒーター6の温度制御に用いても良い。
これにより、蓋ヒーター6の温度制御の為に、別途温度検知手段を設ける必要がなく、部品点数を削減することが可能となる。
【0046】
ここで図5を参照すると、本発明の実施の形態1では、プローブ23を、外郭を構成する外プローブ24と、外プローブの内部に配置する内プローブ25で構成したが、これを上下に分割した構成としてもよい。
即ち、蒸気に触れる部分を構成する耐スチーム性である樹脂で構成された第1のプローブ34(下プローブ)と、サーモパイル21に接し、視野にかかる部分を構成する熱伝導性の良い樹脂部材で構成した第2のプローブ35(上プローブ)とのふたつでプローブ33を構成し、その間にフィルター36とシール部材37を設けても良い。
また、シール部材37は、シリコンパッキンに限らず、OリングやシリコンRTVによる接着などでも良い。
【0047】
(実施の形態2)
次に、図6を参照して実施の形態2を説明する。
本発明の実施の形態2は、実施の形態1における赤外線センサー20の内プローブ25を金属で構成したものである。内プローブ25を樹脂などの材料に比べて熱伝導率の大きい金属で構成することで、更に、サーモパイル21と内プローブ45の温度差を低減することが可能となり、より高精度の赤外線センサー20を得ることができる。
【0048】
また、内プローブ45の材質をアルミなどの非磁性材料で構成することにより、蓋ヒーター6を、電磁誘導を用いたIHヒーターに置き換えた場合でも、IHヒーターからの磁力を受けて内プローブ45が発熱することがない。
また、内プローブ45が金属なので、ノイズに対してもシールド部材としての役割を果たし、高精度の赤外線センサーを得ることが出来る。
【0049】
以上のように、実施の形態2に係る炊飯器では、赤外線センサー部20の内プローブ45を金属で構成したので、サーモパイル21と内プローブ45の温度差を低減でき、より高精度の赤外線センサー部20を得ることができる。
また、内プローブ45をアルミなどの非磁性材料で構成することで、ノイズに対してのシールド部材としての効果も同時に得ることができる。
【0050】
また、内プローブ45に、太さが一定のパイプを用いることにより、単に所定の長さにパイプを切断するだけで内プローブ45を作成することが可能である。
従って、内プローブ45を形成する工数を低減でき、構成を簡略化できると共に、コストダウンを実現できる。
尚、赤外線センサー20の外郭部である充電部との絶縁性を確保する為であれば、内プローブ45を樹脂で形成し、外プローブ44を金属で形成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
S 電気炊飯器、1 炊飯器本体、2 内鍋、3 コイル、4 胴ヒーター、5 上蓋
6 蓋ヒーター、8 内蓋、10 操作基板、13 制御手段、15 底温度センサー
20 赤外線センサー部、21 サーモパイル、21aサーミスタ、
23,33,43 プローブ部、24,44 外プローブ、25,45 内プローブ
34 下プローブ、35 上プローブ、26 フィルター、27 内パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体に着脱自在に収納される内鍋と、該内鍋を加熱する加熱手段と、該加熱手段を制御する制御手段と、前記内鍋の上部開口を開閉自在に覆う上蓋と、該上蓋に設けられ前記内鍋内部の調理物の温度を検知する赤外線センサー部を有し、
前記赤外線センサー部は、サーモパイルと、該サーモパイルの温度を検知するサーミスタと、前記サーモパイル及び前記サーミスタを内部に配置するプローブ部を有し、
前記プローブ部は、非導電性の材料からなる第1のプローブと、前記サーモパイルの温度を検知する視野を形成する第2のプローブから構成され、
前記第2のプローブは、前記第1のプローブより熱伝導率の大きい材料で構成されたことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
前記第2のプローブは、前記サーモパイルに接触させたことを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項3】
前記第1のプローブは前記プローブ部の外郭を形成し、前記第2のプローブは前記第1のプローブの内部に配置され、前記サーモパイル及び前記サーミスタは前記第2のプローブの内部に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電気炊飯器。
【請求項4】
前記第2のプローブは、金属で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の電気炊飯器。
【請求項5】
前記第2のプローブは、非磁性の金属であることを特徴とする請求項1乃至4に記載の電気炊飯器。
【請求項6】
前記第1のプローブはPP樹脂で構成され、前記第2のプローブはPPS樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の電気炊飯器。
【請求項7】
前記第1のプローブと前記第2のプローブとの間には、赤外線を透過可能なフィルターと、シール部材が介在することを特徴とする請求項1乃至6に記載の電気炊飯器。
【請求項8】
前記フィルターは、撥水性を有する部材であることを特徴とする請求項7に記載の電気炊飯器。
【請求項9】
前記上蓋には、該上蓋に取付けられる内蓋を温める蓋ヒーターが設けられ、該蓋ヒーターへの通電制御は、前記サーミスタが検知した温度に基づいて行うことを特徴とする請求項1乃至8に記載の電気炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−172798(P2011−172798A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40156(P2010−40156)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】