説明

電気炊飯器

【課題】温度センサの強制的冷却手段を不要にして、設定時間に連続炊飯を終了させる炊飯器を提供すること。
【解決手段】電気炊飯器は、鍋、炊飯器本体、蓋体、加熱手段、鍋底の温度を検知する底センサおよび蒸気センサ、炊飯工程の制御装置とを備え、吸水工程I´は前吸水工程Ia´と後吸水工程とに分かれて、制御装置は普通炊飯モードと連続炊飯モードとを判定する炊飯モード判定手段、および炊飯量の量判定手段を備え、連続炊飯モードが判定されたときに、吸水工程I´では蓋と側面ヒータをOFFで鍋底ヒータをON/OFF制御して、前吸水工程Ia´に第1延長吸水時間Δt1を加えて吸水させ炊飯量の判定い、後吸水工程で吸水時間t2に第2延長吸水時間Δt2を加えて吸水させた後に、立上加熱工程II´では前吸水工程Ia´での炊飯量の判定結果に基づき加熱量を制御するとともに、再度の炊飯量判定の結果に基づいて次工程の加熱制御を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気炊飯器に係り、さらに詳しくは前回の炊飯をした後に同じ炊飯器で次回の炊飯を連続してできる炊飯モード、いわゆる連続炊飯モードを備えた電気炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電気炊飯器(以下、炊飯器という)は、マイクロコンピュータが搭載されて、このマイクロコンピュータよって、白米・無洗米・玄米などの米種に応じた炊飯ができる米種炊飯メニュー或いは硬め・柔らかめなどを調節してお好みの炊飯ができるお好み炊飯メニューなどの種々の炊飯メニューを選択して炊飯ができるようになっている。これらの炊飯メニューは、炊飯量の大小に左右されることなく所望の炊き上がりにする炊飯プログラムによって行われている。この炊飯プログラムを実行する炊飯制御は、炊飯毎に鍋内の炊飯量を自動的に判定して、この判定結果に基づいて加熱ヒータの加熱量をコントロールするものとなっている。炊飯量の判定は、鍋底に底センサおよび蓋体に蒸気センサをそれぞれ配設して、これらのセンサからの検出値に基づいて行われている。一方、この炊飯器は、一般家庭などでは、通常、朝夕のいずれか一回或いは朝夕の2回に分けて使用されているが、家族の多い家庭や業務用の炊飯器などは、前回の炊飯が終了した後に続いて炊飯する連続炊飯が行われている。
【0003】
ところが、このような連続炊飯をこれまで使用している炊飯器で行うと、炊飯量の誤判定がなされて、所望の炊飯ができないことがある。その原因は、底センサおよび蒸気センサのうち、蒸気センサが誤検出してしまうことにある。すなわち、底センサは、新たな炊飯物が収容された鍋が炊飯器本体にセットされると鍋底に設置されている底センサの周辺温度が鍋のセットにより低下して、前回炊飯時の余熱に影響されずに実際の値、すなわち実勢値の温度を検知するが、蒸気センサは蓋体に設置されているために、この蓋体に余熱が残存しており、その余熱温度が鍋セットによっても直ちには低下せずに、この温度を検知してしまうからである。そのために、前回の炊飯を終了した後に直ちに次回の炊飯を開始すると、炊飯量の判定に誤差が生じて、所望の炊飯ができなくなる不都合が発生する。この不都合を解消するために工夫された炊飯器が提案されている。(例えば、下記特許文献1〜3参照。)。
【0004】
例えば、下記特許文献1に記載された炊飯器は、米と水を入れる鍋と、この鍋を加熱する加熱手段と、鍋の温度を検知する第1の温度検知手段と、蓋部の温度を検知する第2の温度検知手段と、第1の温度検知手段が第1の所定温度を検知してから第2の温度検知手段が第2の温度検知を検知するまでの時間により炊飯量を判定して、この判定した炊飯量に応じて加熱手段を制御して所定のシーケンスで炊飯する制御装置を備えている。そして、この制御装置は、炊飯動作開始時または炊飯作動開始からの一定時間内に、第2の温度検知手段が第3の所定温度以上を検知したときに連続炊飯であると判断して、第2の温度検知手段が第4の所定温度未満を検知するまで炊飯のための加熱を行わないように制御している。この炊飯器によれば、蒸気センサを冷却するのに十分な冷却時間が確保されるので炊飯量の判定が適確に行われ、その炊飯量に応じて加熱手段を制御して所定のシーケンスで炊飯することができる。
【0005】
また、下記特許文献2に記載された炊飯器は、鍋と、この鍋を加熱する加熱手段と、入力電流を制御する制御装置と、本体内部を冷却する冷却手段(冷却ファン)と、炊飯を開始する炊飯開始スイッチを有する操作手段と、マイクロコンピュータとを備え、炊飯動作以外のときにも冷却手段により蓋部分および本体内部を冷却する制御を行うようにしたものである。この炊飯器によれば、最初の炊飯終了から次の炊飯開始までの時間を短縮することができ、設定された時間に連続炊飯を終了させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−150075号公報(段落〔0016〕〜〔0017〕、図3)
【特許文献2】特開2004−89250号公報(段落〔0028〕〜〔0031〕、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の炊飯器は、前回の炊飯と次回の炊飯との間に蒸気センサが誤検出しないように自然冷却させるための待機時間が必要となる。ところが、このような待機時間を設けると、この待機時間は室温によって左右されて所望の時間内に連続炊飯を終了させることができなくなる。すなわち、この待機時間は、室温が高いとその時間が長く、一方、低いと短くなり、この時間変動により炊飯開始のスイッチを入れたものの何時に炊飯が開始されて何時に終了するかが分からなくなる。したがって、この炊飯器による連続炊飯は、普通炊飯に比べて、この予測できない待機時間を含めてその炊飯時間が長くなる課題が内在している。この点、上記特許文献2の炊飯器は、冷却ファンを設けて、この冷却ファンによって蒸気センサを強制冷却するので、上記特許文献1の待機時間が不要になる。しかしながら、このような冷却ファンを設けると、冷却ファンおよび該ファンを回転させるモータなどの周辺機器が必要となり、しかも、これらを蓋体に設けると、そのためのスペースが必須となって大型になる、さらに、運転中の冷却ファンは騒音が発生し、この騒音は無視し得ないものとなる。
【0008】
また、近年、10カップを超え33カップ程度の大量の炊飯物を一度に炊飯できる主に業務用に使用される炊飯器が開発されている。このような炊飯器を用いて大量の炊飯物を炊飯する場合、これまでの炊飯器で採用されている炊飯制御、特に、吸水工程および量判定法などをそのまま採用すると、吸水工程で糊化現象が発生し、或いは量判定が適確に判定されず、その結果、美味しく炊き上がらないことがある。その原因は、炊飯量が多くなると、鍋が大型になるのは勿論のことこの鍋に入れられた炊飯物は、鍋の内壁面に接触している炊飯物と鍋中心部分の炊飯物との間で熱伝導の時間差が発生、すなわち、鍋は鍋底に設けた鍋底ヒータで加熱されるので、まず、鍋底内壁面付近の炊飯物が最初に加熱されて、その後、中心部分の炊飯物への加熱となり、これらの間に熱伝導の時間差および温度差が発生し、これらの時間差および温度差は、炊飯量が多くなれば多くなる程その差が大きくなる。一方、これらの差を少なくするために、鍋底ヒータのパワーをアップして加熱すると、鍋底内壁面付近の炊飯物が過剰に加熱されて米の糊化現象が過度に進み、そのためにデンプンが大量に溶出して美味しく炊き上がらなくなる。また、炊飯量の判定も上記の時間差および温度差などの影響を受けることにある。
【0009】
そこで、本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、温度センサを強制的に冷却するための冷却手段を不要にして、設定した時間に連続炊飯を終了させることができる炊飯器を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、炊飯開始スイッチをONにした時点で一度連続炊飯モードが判定されても、所定の時間連続炊飯の開始を遅らせて、この所定時間に普通炊飯モードの条件を満たしている場合に該普通炊飯モードへの判定変更を可能にして、連続炊飯に掛かる時間を短縮できる炊飯器を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、上記目的に加え、炊飯量が多くなっても適確な量判定ができて美味しいご飯を炊き上げることができる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的は以下の構成によって達成できる。すなわち、本願の請求項1に係る発明は、米と水とを含む炊飯物を入れる鍋と、前記鍋が収容される炊飯器本体と、前記鍋および炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、前記鍋底の温度を検知する底センサおよび蒸気温度を検知する蒸気センサと、前記加熱手段を制御して所定の炊飯工程を実行する制御装置とを備え、前記加熱手段は、前記鍋を底部から加熱する鍋底ヒータおよび側部から加熱する側面ヒータ並びに前記蓋体に設けて蓋部から加熱する蓋ヒータとを有し、前記炊飯工程は、前記鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程と、前記吸水工程後に沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程と、前記立上加熱工程後に沸騰状態に維持する沸騰維持工程とを含む電気炊飯器において、前記吸水工程は、常温より高く糊化現象が起こらない吸水温度K1で所定の吸水時間t1掛けて吸水する前吸水工程と、前記前吸水工程後に前記吸水温度より高くかつ糊化現象が起こらない吸水温度K2で所定の吸水時間t2掛けて吸水する後吸水工程とに分かれており、前記制御装置は、前記底センサおよび蒸気センサの検出値から普通炊飯モードと連続炊飯モードとを判定する炊飯モード判定手段、および前記鍋内の炊飯量を判定する量判定手段を備え、連続炊飯モードが判定されたときに前記吸水工程では、前記蓋および側面ヒータを全てOFF状態にして前記鍋底ヒータのみをON/OFF制御して、前記前吸水工程で前記吸水時間t1に所定の第1の延長吸水時間Δt1を加えて吸水させ、且つ前記底センサの検出値に基づいて炊飯量の判定を行うとともに前記後吸水工程で前記吸水時間t2に第2の延長吸水時間Δt2を加えて吸水させた後に、前記立上加熱工程で前記前吸水工程での炊飯量の判定結果に基づいて立上加熱電力を制御するとともに、再度前記鍋内の炊飯量の判定を行って、該炊飯量判定の結果に基づいて次工程以降の加熱制御を実施することを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電気炊飯器において、前記炊飯工程には、連続炊飯モードが判定されたときに該連続炊飯の開始を所定の遅延時間遅らせる遅延工程を設けて、前記制御装置は、前記遅延工程後に再度炊飯モードの判定を行い、この炊飯モード判定で普通炊飯モードが判定されたときに、前記連続炊飯モードの判定を変更して該普通炊飯モードへ移行して炊飯制御することを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の電気炊飯器において、前記吸水温度K2>K1との間に、最大で10℃の温度差が設定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の電気炊飯器において、前記制御装置は、前記前吸水工程で前記底センサの検出値に基づいて前記鍋内の炊飯量を少なくとも大炊飯量および小炊飯量の2区分で判定するとともに、これら大小2区分の炊飯量に対応した大炊飯量および小炊飯量立上電力を設定して、前記立上加熱工程で前記2区分の炊飯量に応じて前記大炊飯量又は小炊飯量立上電力で立上加熱制御を実行するとともに、これら大炊飯量又は小炊飯量立上電力による蒸気温度を前記蒸気センサで検出して、該検出値に基づいて前記鍋内の炊飯物の炊飯量を前記区分数より多い区分数に細分した判定を行い、これらの区分された判定結果に基づいて次工程以降の加熱制御を実施することを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の電気炊飯器において、前記立上加熱工程における炊飯量の判定区分数は、小炊飯量のときに区分数を少なく、大炊飯量のときに区分数を多くして、これらの区分数に対応した大炊飯量又は小炊飯量の立上電力が設定されることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の電気炊飯器において、前記炊飯モード判定手段は、前記底センサの検出値が第1の基準設定値θa以上または前記蒸気センサの検出値が第2の基準設定値θb以上のときに連続炊飯モードと判定し、前記底センサの検出値が第1の基準設定値θa未満および前記蒸気センサの検出値が第2の基準設定値θb未満のときに普通炊飯モードと判定し、前記基準設定値θa、θbは、以下の関係、すなわち、θa<K1、θb<K2にあることを特徴とする。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の電気炊飯器であって、前記立上加熱工程における前記蒸気センサによる検出値が所定の値を超えると、前記制御装置が、炊飯工程を前記沸騰維持工程に移行するように制御する電気炊飯器において、前記所定の値は、沸騰維持工程への移行温度として、炊飯モード毎に予め設定されており、前記連続炊飯モードでの前記移行温度が、前記普通炊飯モードでの前記移行温度よりも高く設定されていることを特徴とする。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の電気炊飯器において、前記移行温度を変更するための移行温度変更手段を具えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、連続炊飯モードが判定されたときに、蒸気センサおよび該蒸気センサの周辺箇所を冷却するために特別な冷却手段(例えば冷却ファンなど)を設けることなく、前回から次回の炊飯までの待機時間を無くて連続炊飯を開始し所定の設定時間内で連続炊飯を終了させることができる。また、連続炊飯モードの吸水工程は、蓋および側面ヒータを全てOFF状態にして、鍋底ヒータのみのON/OFF制御で吸水温度を制御するので、蒸気センサへの影響を殆ど無くすることができる。しかも、吸水時間は普通炊飯モードの吸水時間(t1、t2)に第1、第2の延長吸水時間Δt1、Δt2が追加されるので、蒸気センサおよびその周辺はさらに自然冷却により温度が降下して、立上加熱工程における温度検出が正確にできるようになる。さらに、吸水工程の前吸水工程は、吸水温度が低くなっているので、量判定に時間が掛かっても、米からのデンプンの溶出を防止できる。
【0021】
請求項2の発明によれば、一度連続炊飯モードと判定されても、遅延工程後に再度の炊飯モードの判定を行い、ここで普通炊飯モードの条件が満たされれば、該普通炊飯モードへ変更されるので、連続炊飯モードの炊飯時間の短縮を図ることができる。すなわち、連続炊飯モードの炊飯時間は、普通炊飯モードのその時間に比べて長くなるが、この遅延工程において普通炊飯モードの条件が満たされれば、該普通炊飯モードへ変更されるので、連続炊飯時間の短縮を図ることができる。なお、この炊飯時間は、従来技術のように、室温などに左右されるものではなく、予め定められた所定時間だけ通常炊飯よりも長くなるものであり、すなわちこの所定時間内に連続炊飯が終了する時間となっている。
【0022】
請求項3の発明によれば、前吸水工程での温度が低くなっているので、量判定に時間が掛かっても、米からのデンプンの溶出が少なくなり、美味しいご飯を炊き上げることができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、吸水工程での量判定は、少なくとも大小2区分の粗(ラフ)な判定としたので、吸水温度を低く、しかも炊飯量を多くしても、複雑なプログラムなどを用いることなく簡単に判定ができる。また、これら大小2区分の炊飯量に対応した大炊飯量および小炊飯量立上電力を設定して、立上加熱工程の立上加熱電力を制御するので、ご飯の硬め、柔らかめの他、粘り、甘みなどお好みの炊飯ができ、所望の立上加熱温度曲線に近接させた制御ができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、炊飯量の判定区分数は、小炊飯量のときに区分数を少なく、大炊飯量のときに区分数を多くして、これらの区分数に対応した大炊飯量又は小炊飯量立上電力が設定されるので、次工程以降の沸騰維持工程などでの炊飯制御がきめ細かく実行される。この判定結果に基づいて、以後の沸騰維持工程などでの加熱量の制御が適確に行うことが可能になる。
【0025】
請求項6の発明によれば、基準設定値θa、θbをθa<K1、θb<K2にすることにより、普通炊飯および連続炊飯モードの判定を適確に行うことができる。
【0026】
請求項7の発明によれば、連続炊飯モードにおける沸騰維持工程への移行温度をθ5より高いθ5´にしておくことで、充分な炊飯量判定実行時間を確保して炊飯量判定の精度の低下を防止することができる。
【0027】
請求項8の発明によれば、連続炊飯モードにおける沸騰維持工程への移行温度θ5´をより適切な値に調整して、炊飯量判定をより適確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図である。
【図2】図2は図1の炊飯器を縦方向で切断した断面図である。
【図3】図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した断面図である。
【図4】図4は図1の炊飯器に収容される制御装置のブロック図である。
【図5】図5は図4の制御装置のプログラムにより炊飯モードを判定するフローチャート図である。
【図6】図6は図5の炊飯モード判定で判定された普通炊飯モードにおける炊飯工程の鍋内の温度変化を示した温度曲線図である。
【図7】図7は図4の普通炊飯モードを実行するフローチャート図である。
【図8】図8は図5の炊飯モード判定で判定された連続炊飯モードにおける炊飯工程の鍋内の温度変化を示した温度曲線図である。
【図9】図9は図5の連続炊飯モードを実行するフローチャート図である。
【図10】図10は普通および連続炊飯の吸水時間を示し、図10Aは普通炊飯の吸水時間、図10Bは連続炊飯の吸水時間の説明図である。
【図11】図11Aは普通炊飯の吸水時間、図11Bは連続炊飯の吸水時間の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための炊飯器を例示するものであって、本発明をこの炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。この炊飯器は炊飯時に鍋内の圧力を大気圧以上に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器となっているが、本発明はこの圧力式炊飯器に限定されるものではない。
【0030】
図1、図2を参照して、本発明の実施形態に係る炊飯器の概要を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図、図2は図1の炊飯器を縦方向で切断した断面図である。
【0031】
炊飯器1は、一度に大量の米、例えば33カップ程度を入れて炊飯できる大型の鍋を用い、炊飯時に鍋内の圧力を大気圧以上、例えば1.2気圧程度に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器となっている。この炊飯器1は、図2に示すように、米と水とを含む炊飯物が入れられる大型の鍋10と、上方にこの鍋10が収容される開口および内部にこの鍋10を加熱し炊飯物を加熱する鍋底ヒータH1および側面ヒータH2を有する大型の炊飯器本体(以下、単に「本体」という)2と、この本体2の一側に枢支されて本体2および鍋10の開口を覆い閉塞状態にロックするロック機構16および蓋ヒータH3を有する大判の蓋体11とを備えている。以下、この炊飯器の個々の構成を説明する。
【0032】
まず、主に図2を参照して、本体を説明する。
【0033】
本体2は、外装ケース3と、この外装ケース3に収容されてその中に鍋10が収容される大きさの内ケース4とからなり、外装ケース3と内ケース4との間に所定の隙間が形成されて、この隙間に制御装置30(図4参照)を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。また、この隙間には、図示を省略したが本体内部を強制冷却する冷却ファンおよびこの冷却ファンを駆動するモータなどが収容されている。
【0034】
鍋10は、図2に示すように、上方に開口10aおよびこの開口周縁に鍔状のフランジ部10bを有し、所定量の米、例えば33カップ程度を入れて炊飯できる大型容器で形成されている。この鍋10は、熱伝導性の高い材料、例えば銅或いはアルミニウム等からなる内層と、磁性材料、例えばステンレス鋼からなる外層とを有し、内層の表面がフッ素樹脂等で被覆された構成となっている。
【0035】
本体2には、炊飯のスタート、タイマー予約および保温などの操作を行う表示操作部5(図1参照)と、この表示操作部5からの炊飯の開始信号に従って鍋底ヒータH1、側面ヒータH2および蓋ヒータH3からなる加熱手段および圧力弁開放機構19を制御する制御回路基板等(図示省略)とが設けられている。
【0036】
外装ケース3は、内ケース4より大きな外形を有する化粧ボックスで形成されている。この外装ケース3は、その上方に開口31が設けられている。この外装ケース3は、内部に内ケース4を収容し、両ケース3、4間に制御回路基板等を配設する隙間が設けられているので、外装ケースの開口31は、内ケース4の開口41より大きく、その形状は略楕円形状になっている。なお、内ケースの開口41は、鍋10の開口と同じように略円形状になっている。また、この外装ケース3の正面には、図1に示すように、表示操作部5が設けられている。この表示操作部5は、各種の操作キー類を配設した操作パネル5aと、この操作スイッチ類によって設定される設定状態を表示する表示パネル5bとで構成されている。この操作パネル5aには、スタートキー、メニューキー、予約キー、保温キーなどが設けられている。表示パネル5bには、炊飯する米種、例えば白米、無洗米或いは白米/無洗米以外の米種(例えば玄米)が表示されてメニューキーによって、選定できるようになっている。これらで米種選定手段が構成されている。
【0037】
内ケース4は、所定の直径を有する略椀状の底部4aと、この椀状の底部4aの周囲から所定長さ立設された筒状の側壁部4bとを有し、筒状側壁部の上方が開口して、この開口41から鍋10が収容される大きさの容器からなり、耐熱性を有する樹脂成型体で形成されている。椀状の底部4aには、ドーナツ状に巻装された電磁誘導コイルからなる鍋底ヒータH1が支持具(図示省略)で固定されている。鍋底ヒータH1は、例えば4800ワットとなっている。この電磁誘導コイルにより、鍋10にうず電流が発生して鍋自体が自己発熱する。また、この底部4aには、鍋底温度を検出するサーミスタ等からなる底センサSen1が設けられている。この底センサSen1により鍋10の底部の温度を検知することで鍋10内の炊飯量等が検出される。また、筒状の側壁部4bは、その内周壁面、すなわち鍋10が収容される側の内周壁面に、側面ヒータ体H2が装着される取付け部42が形成されている。この取付け部42は、上方の開口41と底部4aとの間にあって、鍋10が収容される側の内周壁面から外周壁面に向かって所定の深さに窪んだ凹み穴となっている。この凹み穴に側面ヒータH2が装着されている。
【0038】
外装ケース3および内ケース4の開口31、41は、図2に示すように、フレームカバー補強部材7を介在してフレームカバー6で覆われる。このフレームカバー6は、内部に鍋10の開口10aより若干大きい開口と、この開口から外方へ延びて内ケース4および外装ケース3の開口41および31を覆う大きさの鍔状の周縁部とを有し、所定の肉厚の略楕円形状の板状体からなり、樹脂成形体で形成されている。このフレームカバー6の表面の開口周辺は、鍋10のフランジ部分10bが載置される載置部となっている。この載置部は、一端に蓋体11のロック機構16が係止される係止部材8が設けられている。この係止部材8は、ロック機構16の係止爪17aが係止される金属板からなる係止片8bと、この係止片8bの上方に位置してこの係止片8bを固定する台座8aとからなり、これらの台座8a、係止片8bおよびフレームカバー6並びに後述するフレームカバー補強部材7には、ネジ孔が形成されて、これらが積層されてネジ止めされる。台座8aの上には、鍋10のフランジ部10bが載置される。なお、台座8aは、耐熱性の樹脂材で形成されている。また、載置部は、他端に台座8aと同じ水平度で鍋のフランジ部10bが載置される台座8a´および蓋体11を枢支するヒンジ部材9が設けられている。このヒンジ部材9は、フレームカバー6に固定する短片の第1の取付け部9aと、蓋体11の一端が枢支される比較的長片の第2の取付け部9bとを有し、側面視で略L字型をなし堅固な部材で形成されている。この部材は、肉厚を厚くした金属材、例えば2〜5mm程度の肉厚を有するステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金の何れかからなるダイキャスト成型体などで形成され、大判で重量が重い蓋体および鍋内の圧力上昇に耐えるように補強されている。これらの台座8a´、フレームカバー6およびヒンジ部材9並びに第1の取付け部9aにネジ孔が形成されて、これらが積層されてネジ止めされる。台座8a´の上には、鍋10のフランジ部10bが載置される。
【0039】
次に、図2、図3を参照して、蓋体の構成を説明する。なお、図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した断面図である。
【0040】
蓋体11は、図2に示すように、鍋10の開口10aを閉蓋する内蓋12と、この内蓋12の上方に位置して本体2の開口部を閉蓋する外蓋15とを有し、外蓋15にはおねば貯留タンク24を装着する窪み部24´が形成されて周囲が化粧カバー18で覆われている。また、外蓋15は、堅固な蓋体フレームで構成されている。
【0041】
内蓋12は、図2、図3に示すように、大型の鍋開口10aを塞ぐ大きさを有する円盤状の大判の蓋体からなり、その上部に圧力弁13、鍋10内の圧力が異常上昇したときに鍋10内の蒸気を外部に逃がすための安全弁V1などが設けられている。この内蓋12の外周囲には、鍋10の開口10aに当接されるシール部材が装着されている。また、この内蓋12の外周囲には外方へ突出して外蓋15の固定手段に着脱自在に係止される係止部材(図示省略)が設けられている。圧力弁13は、図3に示すように、所定径の弁孔131が形成された弁座13aと、この弁孔131を塞ぐように弁座13a上に載置される金属製ボール14と、この金属製ボール14の移動を規制し弁座13a上に保持するカバー13bとで構成されている。この金属製ボール14は、所定の重さを有し、その自重により、弁孔131を閉塞するようになっている。圧力弁13は、外蓋15に設けた圧力弁開放機構19によって作動される。外蓋15は、一端に蓋体11のロック機構16と、このロック機構16に隣接した箇所に圧力弁開放機構19および他端にこの外蓋15がヒンジ部材9に支軸されてしかも開成作動を支援すると共に開成状態に保持するバネ枢支機構(図示省略)が設けられている。また、この外蓋15には、蓋ヒータH3が設けられている。さらに、圧力弁開放機構19とバネ枢支機構との間には、おねば貯留タンク24が装着される窪み部24´が設けられている。ロック機構16は、図2に示すように、外蓋15のフレームに揺動自在に固定された揺動棹17を有し、この揺動棹17の一端に本体2の係止部材8に係止される係止爪17aと、他端に係止爪17aの係止を解除する解除釦17bとが設けられている。 圧力弁開放機構19は、図3に示すように、電磁コイルが巻回されたシリンダ20と、電磁コイルの励磁により金属製ボール14を移動させるプランジャ21と、このプランジャ21の先端に装着されたバネ体および作動棹22とで構成されている。バネ体は伸張コイルバネとなっている。作動棹22は、弾力性を有するシール部材23で支持されている。
圧力弁開放機構19によって圧力弁13が作動される。圧力弁は、通常、図2に示すように、バネ体の伸張により、プランジャ21が突出して金属製ボール14を押動して弁孔131が開放させている。制御装置30(図4参照)からの指令に基づいて電磁コイルが励磁されると、プランジャ21がバネ体の伸張力に抗してシリンダ20内へ引き込まれて、これまで作動棹22で金属製ボール14を押動していた押動力がなくなり、金属製ボール14が弁座13aの傾斜によって横へ移動して、ボール自身の自重により弁孔131が閉塞される。また、この閉塞状態において、電磁コイルへの励磁がストップされると、再びばね体の伸張力によって、プランジャ21が突出して金属製ボール14を押動して弁孔131が開放される。また、圧力弁13の上部には、蒸気温度を検知する蒸気センサSen2が取付けられている。
【0042】
おねば貯留タンク24は、図2に示すように、圧力弁13を介して放出される蒸気などを吐出させる吐出筒24aと、うまみ成分のおねばを一時貯留する空室24bと、蒸気を外部へ放出する蒸気放出口24cとを有し、空室24bの底部には、貯留されたおねばを鍋10内に戻すおねば戻し弁V2が設けられている。なお、このうまみ成分であるおねばは、圧力弁13から蒸気が噴出する際に、この蒸気と一緒に鍋10内から圧力弁13を通して導出されて、このおねば貯留タンク24の空室24bに一時貯留される。この空室24bに貯留されたおねばは、所定量になるとおねば戻し弁V2が開いて鍋10内へ戻される。このおねば貯留タンク24は、このおねば貯留タンク24の吐出筒24aが外蓋15の窪み部24´に設けた装着孔15aへ圧入固定される。
【0043】
次に、図4を参照して、制御装置およびこの制御装置による炊飯工程を説明する。なお、図4は制御装置のブロック図である。
【0044】
制御装置30は、図4に示すように、種々の演算処理を行うCPU、各種データを記憶するROMおよびRAMからなる記憶手段、選択された炊飯メニューを検出する炊飯メニュー検出回路、圧力弁13の開閉時間が設定する弁開閉タイマー、圧力弁13の開閉回数をカウントするカウンタと、鍋10内の加熱温度および加熱時間を制御する加熱制御回路、表示パネル5bに表示される表示画面を制御するための表示パネル制御回路、圧力弁開放機構19を駆動させて圧力弁13の開閉タイミングを制御する圧力弁開放機構19の駆動回路などを備えている。記憶手段には、各種の炊飯メニューに対応した炊飯プログラムが記憶されている。この炊飯プログラムは、吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程、蒸らし工程、追い炊き工程およびこれらの炊飯工程終了後の保温工程となっている。
加熱制御回路は、鍋底ヒータH1、側面ヒータH2および蓋ヒータH3にそれぞれ接続されている。以下、この制御装置30による制御方法を説明する。
【0045】
まず、図1〜図3および図5を参照して、炊飯モードの判定を説明する。なお、図5は炊飯工程における炊飯モードを判定するフローチャート図である。
【0046】
炊飯器1をスタートする前に、鍋10内に所定量の米と水とからなる炊飯物を入れる。鍋10内の米は、白米または無洗米(以下、白米/無洗米という)或いは白米または無洗米以外の米(以下、白米/無洗米以外という)となっている。次いで、炊飯物を入れた鍋10を本体2にセットして蓋体11を閉塞する(ステップS1)。表示操作部5を操作して、米種選定手段で鍋内の米種、すなわち、白米/無洗米または白米/無洗米以外の米種を選択する(ステップS2、ステップS3)。米種が選定・判定されると炊飯モードが判定される。この炊飯モードの判定は、米種別の普通炊飯モードまたは連続炊飯モードのいずれかとなる。すなわち、白米/無洗米における普通炊飯モードおよび連続炊飯モードと、白米/無洗米以外の米における普通炊飯モードおよび連続炊飯モードとのいずれかとなる。
【0047】
白米/無洗米での炊飯モードの判定は、まず、ステップS4において底センサSen1および蒸気センサSen2の検出値に基づいて、普通炊飯モードまたは連続炊飯モードが判定される。すなわち、底センサ検出値≧θa(例えば40℃)または蒸気センサ検出値≧θb(例えば50℃)が検出されると、炊飯モード判定手段は連続炊飯モードと判定する。なお、底センサ検出値<θa、および蒸気センサ検出値<θbであるときは、普通炊飯モードと判定される。普通炊飯モードと判定されれば、そのままこの普通炊飯モードの炊飯が開始される。すなわち、図7のフローAへ移って以後の炊飯工程が実行される。
これらのθa、θbとK1、K2との関係は、θa<K1、θb<K2に設定されている。これにより、普通炊飯および連続炊飯モードの判定を適確に行うことができる。
【0048】
連続炊飯モードの炊飯時間は、普通炊飯モードの炊飯時間に比べて所定時間長くなる。なお、この連続炊飯モードの炊飯時間は、従来技術のように室温などに左右されるものではなく、予め定められた所定時間(例えば15分)だけ通常炊飯よりも長くなるものである。このように連続炊飯モードの炊飯時間が普通炊飯モードの炊飯時間と比べて長くなるので、一度、連続炊飯モードと判定されても、判定の直後或いは短時間内に普通炊飯モードの条件が満たされることがある。
【0049】
そこで、この実施形態では、一度、ステップS4で連続炊飯モードと判定されても直ちにこの連続炊飯モードの炊飯を実行するのでなく、所定時間t0(例えば5分)を設定して置き(ステップS5)、この所定時間経過後にステップS6で再度炊飯量の判定を行い、この炊飯量判定で普通炊飯モードの条件が満たされていれば、連続炊飯モードを実行することなく普通炊飯モードへ移行して、この普通炊飯モードで連続炊飯を行うようにする。この所定時間t0は、連続炊飯モードの炊飯の実行を遅らせる遅延時間となっている。この遅延時間t0は、5分としたがこれに限定されずに、炊飯器の大きさおよび使用環境などによって変更される。
【0050】
したがって、連続炊飯モードと判定されても、所定の遅延時間後に普通炊飯モードの条件が満たされれば、連続炊飯モードの炊飯を実行することなく普通炊飯モードへ移行して、この普通炊飯モードで連続炊飯を行うので、連続炊飯に掛かる時間を短縮させて連続炊飯ができる(例えば、通常炊飯よりプラス15分掛かるところが、プラス5分に短縮される)。なお、所定の遅延時間後にも普通炊飯モードの条件が満たされていなければ、図9のフローBへ移って以後の炊飯工程が実行される。
【0051】
以上、白米/無洗米における炊飯モードの判定を説明したが、白米/無洗米以外の炊飯モードの判定も同様の方法で行われる。この炊飯モード判定のステップS4´〜S6´は、上記ステップS4〜S6に対応しているので、これらの説明を省略する。以下、米種別の炊飯モードを説明する。
【0052】
まず、白米/無洗米の普通炊飯モードおよび連続炊飯モードの炊飯工程を説明する。
【0053】
図6、図7を参照して、白米/無洗米の普通炊飯モードの炊飯工程を説明する。なお、
図6は普通炊飯モードにおける一連の炊飯工程における鍋の温度変化の特性図、図7は普通炊飯モードを実行するフローチャート図である。
【0054】
a 白米/無洗米の普通炊飯モードの炊飯工程
a―1 吸水工程
この吸水工程Iは、吸水温度を異ならせて前後の吸収工程Ia、Ibに分けて行われる。
【0055】
a―11 前吸水工程
前吸水工程Iaでは、図6、図7に示すように、圧力弁13をOPENにし、蓋ヒータH3、側面ヒータH2および鍋底ヒータH1をON/OFF制御して、所定の温度範囲K1(θ1〜θ2)および吸水時間t1を掛けて吸水させると同時に、この温度範囲における温度上昇勾配で鍋内の炊飯量が判定される。この温度制御は、底センサSen1の検出値に基づき、θ1<検出値≦θ2になるようにして行われる。吸水温度θ1、θ2は、常温より若干高くしかも米の糊化現象が起こらない温度、例えば44.0℃、45℃であり、吸水時間t1は例えば4分である。この吸水温度K1は、後述する後吸水工程の吸水温度K2との間で10℃を限度とする温度差をあけた温度にするのが好ましい。この前吸水工程では、常温より若干高い温水で所定の時間を掛けて吸水させるので、炊飯量を多くしても糊化現象を発生させずに、所定の吸水率に吸水させることができるとともに、比較的長い吸水時間t1を掛けて炊飯量の判定ができる。
【0056】
この炊飯量の判定は、大まかな大小判定で行う。すなわちこの大小判定は、例えば10カップ以下を小量、この10カップを超えるカップ数(33カップ程度まで)を大量として判定する。この大小量判定は、この温度範囲の上下温度における単位時間Δt当たりの温度上昇値Δθ(温度上昇勾配)を検出することにより行われる。すなわち、ΔtとΔθとの関係で、Δtを一定にしてΔθがΔθ+1<Δθ+2(なお、数値1、2は増加分)を検出したときに、前者が大炊飯量、後者を小炊飯量と判定する。この炊飯量の判定は、大まかな大小2区分の判定としたので、吸水温度を低く、しかも炊飯量を多くしても、複雑なプログラムなどを用いることなく簡単に判定ができる。この判定区分を大小としたが、さらに細分化し、大、中、小にしてもよいが、後述の立上加熱工程における判定区分数より少なくなっている。
【0057】
a−12 後吸水工程
前吸水工程Iaでは、低い吸水温度で吸水されるのでそのままでは吸水不足となる。そこで、この後吸水工程Ibでは、図6、図7に示すように、前吸水工程Iaより吸水温度を上げ、且つ所定時間t2掛けてこの不足分の吸水を行う。この温度制御は、圧力弁13をOPENにし、蓋ヒータH3、側面ヒータH2および鍋底ヒータH1をON/OFF制御して、所定の吸水温度K2(θ3〜θ4)および時間t2を掛けて吸水させる。この温度制御は、底センサSen1の検出値に基づき、θ3<検出値≦θ4にして行われる。吸水温度θ3、θ4は例えば59.0℃、60.0℃であり、時間t2は例えば11分である。この吸水温度および吸水時間は、炊飯器の大きさおよび使用環境によって変更される。この後吸水工程が終了すると、次の立上加熱工程IIへ移行されるが、この立上加熱工程IIへ移行する前に、所定の一時停止時間t3(例えば40秒)が設けられている。この一時停止時間は、全ての加熱手段、すなわち蓋ヒータH3、側面ヒータH2および鍋底ヒータH1を全てOFF状態にし、圧力弁13をOPENにした状態で行われる。
【0058】
a―2 立上加熱工程
一時停止時間t3経過後に、立上加熱工程IIへ移行し、この立上加熱工程IIでは、圧力弁を閉塞(CLOSE)し、吸水工程Iで判定された炊飯量の大小の区分に対応した所定のパワー(電力)、すなわち小炊飯量立上電力および大炊飯量立上電力で加熱されて、立上加熱工程IIは蒸気センサSen2が所定温度θ5(例えば74.9℃)を検出するまで実行される。この立上加熱工程IIでは、圧力弁13が閉塞されるので、鍋10内の圧力は所定の圧力値、例えば1.2気圧に上昇するまで昇圧される。したがって、この立上加熱工程IIにおける鍋温度は、図6に示すように、急峻な立ち上がりを有するものとなる。また、蒸気温度は、鍋温度より若干遅れて上昇する。
【0059】
a―21 小炊飯量立上電力制御
この小炊飯量立上電力制御は、小炊飯量、例えば10カップ以下なので、大炊飯量立上電力PHに比べて小さい小炊飯量立上電力PL、例えば3500ワットで加熱するとともに、鍋内の炊飯量の判定が実施される。この小炊飯量立上電力制御により、小炊飯量であっても、小炊飯量立上電力PLで加熱するので、その加熱量が最適にコントロールされて、所望の立上加熱温度曲線に近接させる制御ができる。この立上加熱温度曲線に近接させる制御により、ご飯の硬め、柔らかめの他、粘り、甘みなどお好みの炊飯が可能になる。この小炊飯量立上電力制御は、底センサSen1の検出値に基づき、118.1℃<底センサ検出値≦120.8℃にして行われる。
【0060】
一方、鍋10内の炊飯物の量判定は、蒸気センサSen2の検出値に基づいて判定される。この量判定は、急峻な蒸気温度曲線の温度勾配から判定できるので、吸水工程における量判定と比べて、きめ細かくしかも正確にできる。この量判定は、この蒸気温度曲線における単位時間当たりの温度上昇値(温度上昇勾配)を検出することにより行われる。
この量判定は、例えば、小、中、大などを更に細分して5区分に細分した判定を行い、これら5区分の判定に基づき、次の沸騰維持工程の電力量、すなわち、小炊飯量立上電力PLにおける電力量、PL+5>PL+4>・・・>PL+1(数値1〜5は増加分)が設定される。炊飯量および電力量の区分は、5段階に限定するものでないが、吸水工程の量判定区分数より多くする。区分数を多くすることにより、次工程以降の加熱量の制御をきめ細かく行うことが可能になる。
【0061】
a―22 大炊飯量立上電力制御
この大炊飯量立上電力制御は、大炊飯量、例えば10カップを超えるので、小炊飯量立上電力PLに比べて大きい大炊飯量立上電力PH、例えば4800ワットで加熱するとともに、鍋内の炊飯量の判定が実施される。この大炊飯量立上電力制御により、大炊飯量であっても、大炊飯量立上電力PHで加熱するので、その加熱量が最適にコントロールされて、所望の立上加熱温度曲線に近接させる制御ができる。この立上加熱温度曲線に近接させる制御により、ご飯の硬め、柔らかめの他、粘り、甘みなどお好みの炊飯が可能になる。この加熱制御は、底センサSen1の検出値に基づき、118.1℃<底センサ検出値≦120.8℃で鍋内の温度制御が行われる。
【0062】
鍋10内の炊飯物の量判定は、蒸気センサSen2の検出値に基づいて判定される。この量判定は、急峻な蒸気温度曲線の温度勾配から判定できるので、吸水工程における量判定と比べて、きめ細かくしかも正確にできる。この量判定は、この蒸気温度曲線における単位時間当たりの温度上昇値(温度上昇勾配)を検出することにより行われる。この量判定は、例えば、小、中、大などを更に細分して7区分に細分した判定を行い、これら7区分の判定に基づき、次の沸騰維持工程の電力量、すなわち、大炊飯量立上電力PHにおける電力量、PH+7>PH+6>PH+5>PH+4>・・・>PH+1(数値1〜7は増加分)が設定される。炊飯量および電力量の区分は、7段階に限定されるものでないが、大炊飯量となっているので、小炊飯量の区分数より多くするのが好ましい。区分数をさらに多くすることにより、次工程以降の加熱量の制御をきめ細かく行うことが可能になる。
なお、上記において立上電力PL及びPHの例として、3500及び4800ワットの電力としたが、上述の様にヒータH1は電磁誘導コイル(出力4800ワット)であるので、電力の変更は通電率の制御で行う。すなわち、大炊飯量立上電力(=4800ワット)の場合は通電率を100%(4800×100%=4800)とし、小炊飯量立上電力(=3500ワット)の場合は通電率を73%(4800×73%≒3500)とすることで立上電力を制御する。
【0063】
a―3 沸騰維持工程および蒸らし工程
蒸気センサSen2の検出値が所定温度θ5を超えると、沸騰維持工程IIIへ移行する。沸騰維持工程IIIでは、前の立上加熱工程IIで設定された加熱制御およびこの加熱制御に対応させた圧力弁13の開放制御で行われる。沸騰維持工程IIIの加熱制御は、小炊飯量のときは、それぞれの炊飯量に応じて、設定された小炊飯量立上電力PL、すなわちPL+5>PL+4>・・・>PL+1のいずれかの電力によって加熱制御される。また、大炊飯量のときは、それぞれの炊飯量に応じて、設定された大炊飯量立上電力PH、すなわちPH+7>PH+6>PH+5>PH+4>・・・>PH+1のいずれかによって加熱制御される。また、蒸らし工程でも、同様の加熱制御が行われる。その結果、この加熱制御は、炊飯量に対応したものとなるので、炊飯プログラム通りの炊飯になる。
【0064】
この沸騰維持工程IIIでは、制御装置30からの指令に基づいて、圧力弁開放機構19により圧力弁13の開放制御が行われる。この圧力弁開放制御は、圧力弁13を所定時間単位で数回開放させて、鍋10内の圧力を1.2気圧から大気圧近傍低下させる作動を行って、鍋10内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象を起こさせて炊飯物を攪拌させる。詳述すると、沸騰維持工程IIIへ移行すると、鍋10内の圧力は大気圧以上の約1.2気圧となり、炊飯物はこの圧力に対応する飽和温度で沸騰する。この状態で、制御装置30により圧力弁開放機構19を作動させて金属製ボール14を移動させることで弁孔131を開放させる。この弁孔131の強制的開放により、鍋10内の圧力が大気圧近傍まで一気に低下する。このように鍋10内の圧力を所定沸騰圧力(約1.2気圧)から一気に大気圧近傍まで低下させると、鍋10内は激しい突沸状態となる。この突沸状態になると、鍋10内に泡が発生し、この泡によって米が攪拌される。その結果、米が均一に加熱されて炊きムラなく炊き上げられる。弁孔131を強制的に開放する所定時間は、1回目の弁孔131の強制開動作により鍋10内の圧力が略大気圧に戻る程度の時間(すなわち4秒程度)に定められている。弁孔131を強制的に大気圧に開放する時間をこのように設定することにより、大きな攪拌エネルギーを得ることができる。また、弁孔131の強制的な開放を上記所定時間(4秒間)行った後、圧力弁開放機構19を作動させて再び弁孔131を閉状態とし、所定時間、例えば28秒間再び加熱する。なお、この加熱時間(28秒間)は、鍋10内の圧力が前述の所定圧力(約1.2気圧)まで回復するのに必要な時間である。また、この時間は予め実験的に求められる。そして、この28秒間の加熱の後、再びプランジャ21を作動させて上述した突沸を起こさせるようにしてもよい。この圧力弁開放機構19による圧力弁13の強制的開放は複数回、例えば6回繰り返される。弁孔131を複数回開放する操作を終えると、圧力弁開放機構19の制御が停止され、弁孔131を閉状態とされる。圧力弁13の開放に伴って、おねばが吹出されるが、このおねばは貯留タンク24に一時貯留されて、再び、鍋内へ戻る。
【0065】
その後、底センサSen1の検出値が所定温度θ6(例えば130℃)を超えると、鍋10内の余剰水分がなくなり強制ドライアップが終了したと判断されるので、加熱手段による加熱作用が停止される。続いて、蒸らし工程IVが開始され、蒸らし時間の計時が開始
される。所定の蒸らし時間が所定時間、例えば4分経過すると、圧力弁開放機構19により圧力弁13の弁座131が強制的に開放され、追い炊き工程に移行される。この追炊き工程に入ると、加熱手段により再加熱して米の表面に付着した水を蒸発させると共に、追い炊き(再加熱)時間の計測を行う。そして、所定の追い炊き時間、例えば3分が経過すると、加熱手段による加熱動作が停止され、蒸らし工程に移行され、蒸らし時間が計時される。そして、蒸らし時間が所定時間、例えば5分経つと、炊飯が終了され、保温工程に移行され、標準炊飯工程が終了する。
【0066】
次に、図8、図9を参照して、白米/無洗米における連続炊飯モードの炊飯工程を説明する。なお、図8は連続炊飯における一連の炊飯工程における温度変化の特性図、図9は連続炊飯を実行するフローチャート図、図10は普通および連続炊炊飯モードの吸水工程における吸水時間を示し、図10Aは普通炊飯モードにおける前吸水工程の吸水時間、図10Bは連続炊飯モードにおける前吸水工程の吸水時間、図11Aは普通炊飯モードにおける前吸水工程の吸水時間、図11Bは連続炊飯モードにおける前吸水工程の吸水時間を示した特性図である。なお、図10、図11は、吸水工程の説明を容易にするためのもので、図6、図8の吸水工程を抽出し図示したものである。
【0067】
b 白米/無洗米の連続炊飯モードの炊飯工程
b―1 吸水工程
この吸水工程I´は、普通炊飯モードの吸水工程Iと同様に前後の吸収工程Ia´、Ib´とに分けて行われる。
【0068】
b―11 前吸水工程
この前吸水工程Ia´では、図8、図9に示すように、蓋ヒータH3および側面ヒータH2をOFF並びに圧力弁13をOPENにした状態で、鍋底ヒータH1のみをON/OFF制御して、所定の吸水温度K1(θ1〜θ2)および吸水時間t1´を掛けて吸水させると同時に、この温度範囲における温度上昇勾配で鍋内の炊飯量を判定する。この温度制御は、底センサの検出値に基づき、θ1<検出値≦θ2にして行われる。温度θ1、θ2は、常温より高くしかも米の糊化現象が発生しない温度、例えば44.0℃、45℃である。また、吸水時間t1´は、通常炊飯における前吸水工程Iaの吸水時間t1相当時間(4分)に所定の延長吸水時間Δt1(例えば6分)(なお、この延長吸水時間Δt1を第1の延長吸水時間ということがある)を追加した時間、すなわち、t1´=t1+Δt1としてある。この時間t1´は例えば10分である。この延長吸水時間Δt1は、炊飯器の大きさおよび使用環境によって変更される。
【0069】
この連続炊飯では、普通炊飯モード(図10A参照)に比べて、前吸工程Ia´の吸水時間がt1´=t1+Δt1(図10B参照)となり、この前吸工程の段階でΔt1(6分)およびこの連続炊飯モードが開始される前の遅延時間t0(5分)(図5参照)だけ、すなわち、11分の時間が掛かり長くなっている。
【0070】
この前吸水工程Ia´では、蓋ヒータH3および側面ヒータH2をOFF並びに圧力弁をOPENにした状態で行われる。したがって、蓋ヒータH3および側面ヒータH2をOFF状態にして、前吸水工程Ia´が実行されるので、蒸気センサSen2が無用に加熱されることがなく、この蒸気センサは、次の量判定に備えて自然冷却が継続される。この前吸工程Ia´における炊飯量の判定は、普通炊飯モードの前吸水工程Iaにおける量判定と同じ方法で、大小判定が行われる。
【0071】
b−12 後吸水工程
この後吸水工程Ib´は、図8、図9に示すように、蓋ヒータH3および側面ヒータH2をOFF並びに圧力弁をOPENにした状態で、鍋底ヒータH1のみをON/OFF制御し、所定の吸水温度K2(θ3〜θ4)および時間t2´を掛けて吸水させる。
この吸水時間t2´は通常炊飯モードにおける前吸水工程Ibの吸水時間t2相当時間(4分)に延長吸水時間Δt2(なお、この延長吸水時間Δt2を第2の延長吸水時間ということがある)を追加した時間、すなわち、t2´=t2+Δt2となっている。この時間t2´は例えば10分である。この延長吸水時間Δt2は、炊飯器の大きさおよび使用環境によって変更される。
【0072】
この連続炊飯モードでは、普通炊飯モード(図10A参照)に比べて、前吸工程Ia´の吸水時間がt1´=t1+Δt1(図10B参照)となり、この段階においてΔt1(6分)およびこの連続炊飯が開始される前の遅延時間t0(5分)(図5参照)だけ、すなわち、11分の時間が掛かり長くなっている。したがって、この連続炊飯モードでは、普通炊飯モードに比べて、前吸工程Ia´の段階においてΔt1(6分)、この連続炊飯モードが開始される前の休止時間t0(5分)および追加時間Δt2´(4分)だけ、すなわち、15分の時間が掛かり長くなっている。
【0073】
この後吸水工程が終了すると、次の立上加熱工程II´へ移行されるが、この立上加熱工程へ移行する前に、所定の一時停止時間t3(例えば40秒)が設けられている。この一時停止時間は、全ての加熱手段、すなわち蓋ヒータH3、側面ヒータH2および鍋底ヒータH1を全てOFF状態にし、圧力弁13をOPENにした状態で行われる。
【0074】
b―2 立上加熱工程
一時停止時間t3経過後に、立上加熱工程II´へ移行し、この立上加熱工程では、圧力弁を閉塞(CLOSE)し、吸水工程I´で判定された炊飯量の大小の区分に対応した所定の設定パワー(電力)、すなわち小炊飯量立上電力または大炊飯量立上電力で加熱される。立上加熱工程II´は蒸気センサSen2がθ5より高い所定温度θ5´(例えば86.0℃)を検出するまで実行される。これらの小炊飯量立上電力または大炊飯量立上電力による制御は、普通炊飯モードの小炊飯量立上電力制御および大炊飯量立上電力制御と同じ制御で行われる。すなわち、
b―21 小炊飯量立上電力制御
この小炊飯量立上電力制御は、上記a―21の普通炊飯モードの小炊飯量立上電力制御と同じ制御になっている。
【0075】
b―22 大炊飯量立上電力制御制御
この大炊飯量立上電力制御は、上記a―22の普通炊飯モードの大炊飯量立上電力制御と同じ制御になっている。
【0076】
上記の通り、連続炊飯モードの立上加熱工程II´では普通炊飯モードと同様に加熱制御及び炊飯量判定がなされるが、沸騰維持工程への移行タイミングを決定する蒸気センサSen2の検出値の設定温度(以下、「沸騰維持工程への移行温度」ともいう)が普通炊飯モードより高く(θ5´に)設定されている。これは炊飯量判定の精度をより高めるためのものであり、すなわち、連続炊飯モードにおいては、蒸気温度が普通炊飯モードのときより高い状態で立上加熱工程が開始されるため、沸騰維持工程への移行温度をθ5より高いθ5´にしておくことで、充分な炊飯量判定実行時間を確保して炊飯量判定の精度の低下を防止されることになる。また、この移行温度θ5´は、固定値でなく変更できるようにして置くのが好ましい。移行温度θ5´を変更できるようにすると、炊飯器が使用される環境の違いなどによって、連続炊飯時の炊きあがりに支障が生じる場合(例えば、想定よりも早く蒸気温度が上昇してしまうことで、沸騰維持工程への移行が早まり、炊飯量判定時間が不充分となってしまう場合など)に、より適切な値に修正する(上記例で言えば、θ5´の値をより高い値に修正する)ことが可能となる。なお、このθ5´の変更は、製品の出荷時或いは、出荷後のメンテナンスなどで行われる。
【0077】
b―3 沸騰維持工程および蒸らし工程
蒸気センサSen2の検出値が所定温度θ5´を超えると、沸騰維持工程IIIへ移行するが、これらの沸騰維持工程III´および蒸らし工程IV´は、上記a―3の普通炊飯
モードの沸騰維持工程および蒸らし工程と同じ制御となっている。
【0078】
以上、白米/無洗米の連続炊飯モードの炊飯工程を説明したが、この連続炊飯モードでは、沸騰維持工程でも炊飯量によって、普通炊飯モードでの炊飯との間で若干の時間差が発生することがあるが、普通炊飯モードの炊飯時間と対比して、概ね、吸水工程での延長時間(Δt1+Δt2=10分)と、この連続炊飯モードが開始される前の遅延時間t0(5分)とを合計した時間(15分)多く掛かることになる。遅延時間t0(5分)後の再判定で普通炊飯モードへ変更されれば、この連側炊飯時間は、延長時間(Δt1+Δt2=10分)分短縮される。
【0079】
続いて、白米/無洗米以外の普通炊飯モードおよび連続炊飯モーの炊飯工程を説明する。
図5のステップS4´において、白米/無洗米以外の普通炊飯モードおよび連続炊飯モードが判定される。
【0080】
図5、図6、図7を参照して、白米/無洗米以外の普通炊飯モードの炊飯工程を説明する。
【0081】
c 白米・無洗米以外での普通炊飯モード
c―1 吸水工程
白米/無洗米以外の普通炊飯モードでは、図5、図7に示すように、前後吸収工程Ia、Ibのうち、前吸工程Iaを飛越して、後吸水工程Ibのみが実行され、米に所定量の水を吸水させる。前吸水工程Iaを飛越すので、白米/無洗米の炊飯モードで行っていた炊飯量の判定はしない。
【0082】
c―11 後吸水工程
この後吸水工程は、普通炊飯モードの後吸水工程Ibと同じ方法で実施される。この後吸水工程が終了すると、所定の一時停止時間t3(例えば40秒)を経て、立上加熱工程へ移行される。この一時停止時間は、全ての加熱手段、すなわち蓋ヒータH3、側面ヒータH2および鍋底ヒータH1を全てOFF状態にし、圧力弁13をOPENにした状態で行われる。
【0083】
c―2 立上加熱工程
この立上加熱工程IIでは、全ての加熱手段、すなわち蓋ヒータH3、側面ヒータH2および鍋底ヒータH1を全てON状態および圧力弁13をLOSEして加熱されて、立上加熱工程IIは蒸気センサSen2が所定温度θ5を検出するまで実行されると共に、炊飯量の判定を行う。
【0084】
この炊飯量の判定は、白米/無洗米における普通炊飯モードでの判定と同じ方法で行われる。
【0085】
c―3 沸騰維持工程および蒸らし工程
蒸気センサSen2の検出値が所定温度θ5を超えると、沸騰維持工程IIIへ移行する。沸騰維持工程は、前の立上加熱工程で設定された加熱制御およびこの加熱制御に同期させた圧力弁13の開放制御で行われる。加熱制御は、小炊飯量のときは、それぞれの炊飯量に応じて、設定された小炊飯量立上電力;PL+5>PL+4>・・・>PL+1によって加熱制御される。また、大炊飯量のときは、それぞれの炊飯量に応じて、設定された大炊飯量立上電力PH、すなわちPH+7>PH+6>PH+5>PH+4>・・・>PH+1によって加熱制御される。
【0086】
これらの沸騰維持工程および蒸らし工程は、上記a―3の普通炊飯の沸騰維持工程および蒸らし工程と同じ制御となっている。
【0087】
図5、図8、図9を参照して、白米・無洗米以外での連続炊飯モードの炊飯工程を説明する。
【0088】
d 白米・無洗米以外の連続炊飯モード
d―1 吸水工程
白米・無洗米以外の連続炊飯モードでは、図5、図9に示すように、前後吸収工程Ia´、Ib´のうち、前吸水工程Ia´を飛越して、後吸水工程Ib´のみが実行されて米に所定量の水を吸水させる。
【0089】
d―11 後吸水工程
この後吸水工程は、白米/無洗米の連続炊飯モードの後吸水工程b−12と同様に実施される。この後吸水工程が終了すると、所定の一時停止時間t3(例えば40秒)を経て、立上加熱工程へ移行される。この一時停止時間は、全ての加熱手段、すなわち蓋ヒータH3、側面ヒータH2および鍋底ヒータH1を全てOFF状態にし、圧力弁13をOPENにした状態で行われる。
【0090】
d―2 立上加熱工程
この立上加熱工程II´では、白米・無洗米以外の普通炊飯モードの立上加熱工程c―2と同様の加熱制御及び炊飯量判定が行われるが、白米/無洗米の連続炊飯モードの立上加熱工程b−2と同様に沸騰維持工程への移行温度がθ5より高いθ5´に設定されており、この立上加熱工程II´は蒸気センサSen2が所定温度θ5´を検出するまで実行される。
【0091】
従って、白米・無洗米以外の連続炊飯モードにおいても、白米/無洗米の連続炊飯モードでの立上加熱工程b−2と同様に沸騰維持工程への移行温度が普通炊飯モードより高く設定されているため、炊飯量判定実行時間を充分に確保することができ、炊飯量判定の精度が高まることになる。
【0092】
d―3 沸騰維持工程および蒸らし工程
これらの沸騰維持工程および蒸らし工程は、上記a―3の普通炊飯の沸騰維持工程および蒸らし工程と同じ制御となっている。
【符号の説明】
【0093】
1 電気炊飯器
1 炊飯器本体
3 外装ケース
4 内ケース
5 表示操作部
10 鍋
11 蓋体
12 内蓋
13 圧力弁
15 外蓋
19 圧力弁開放機構
30 制御装置
I、I´ 吸水工程
Ia、Ia´ 前吸水工程
Ib、Ib´ 後吸水工程
II、II´ 立上加熱工程
III、III´ 沸騰維持工程
H1 鍋底ヒータ
H2 側面ヒータ
H3 蓋ヒータ
Sen1 底センサ
Sen2 蒸気センサ
S5、S5´ 遅延工程
t1 吸水時間
Δt1 第1の延長吸水時間
t2 吸水時間
Δt2 第2の延長吸水時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と水とを含む炊飯物を入れる鍋と、前記鍋が収容される炊飯器本体と、前記鍋および炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、前記鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段と、前記鍋底の温度を検知する底センサおよび蒸気温度を検知する蒸気センサと、前記加熱手段を制御して所定の炊飯工程を実行する制御装置とを備え、
前記加熱手段は、前記鍋を底部から加熱する鍋底ヒータおよび側部から加熱する側面ヒータ並びに前記蓋体に設けて蓋部から加熱する蓋ヒータとを有し、
前記炊飯工程は、前記鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程と、前記吸水工程後に沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程と、前記立上加熱工程後に沸騰状態に維持する沸騰維持工程とを含む電気炊飯器において、
前記吸水工程は、常温より高く糊化現象が起こらない吸水温度K1で所定の吸水時間t1掛けて吸水する前吸水工程と、前記前吸水工程後に前記吸水温度K1より高くかつ糊化現象が起こらない吸水温度K2で所定の吸水時間t2掛けて吸水する後吸水工程とに分かれており、
前記制御装置は、前記底センサおよび蒸気センサの検出値から普通炊飯モードと連続炊飯モードとを判定する炊飯モード判定手段、および前記鍋内の炊飯量を判定する量判定手段を備え、連続炊飯モードが判定されたときに前記吸水工程では、前記蓋および側面ヒータを全てOFF状態にして前記鍋底ヒータのみをON/OFF制御して、前記前吸水工程で前記吸水時間t1に所定の第1の延長吸水時間Δt1を加えて吸水させ、且つ前記底センサの検出値に基づいて炊飯量の判定を行うとともに前記後吸水工程で前記吸水時間t2に第2の延長吸水時間Δt2を加えて吸水させた後に、前記立上加熱工程で前記前吸水工程での炊飯量の判定結果に基づいて立上加熱電力を制御するとともに、再度前記鍋内の炊飯量の判定を行って、該炊飯量判定の結果に基づいて次工程以降の加熱制御を実施することを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
前記炊飯工程には、連続炊飯モードが判定されたときに該連続炊飯の開始を所定の遅延時間遅らせる遅延工程を設けて、
前記制御装置は、遅延工程後に再度炊飯モードの判定を行い、この炊飯モード判定で普通炊飯モードが判定されたときに、前記連続炊飯モードの判定を変更して該普通炊飯モードへ移行して炊飯制御することを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項3】
前記吸水温度K2>K1との間に、最大で10℃の温度差が設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気炊飯器。
【請求項4】
前記制御装置は、前記前吸水工程で前記底センサの検出値に基づいて前記鍋内の炊飯量を少なくとも大炊飯量および小炊飯量の2区分で判定するとともに、これら大小2区分の炊飯量に対応した大炊飯量および小炊飯量立上電力を設定して、前記立上加熱工程で前記2区分の炊飯量に応じて前記大炊飯量又は小炊飯量立上電力で立上加熱制御を実行するとともに、これら大炊飯量又は小炊飯量立上電力による蒸気温度を前記蒸気センサで検出して、該検出値に基づいて前記鍋内の炊飯物の炊飯量を前記区分数より多い区分数に細分した判定を行い、これらの区分された判定結果に基づいて次工程以降の加熱制御を実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気炊飯器。
【請求項5】
前記立上加熱工程における炊飯量の判定区分数は、小炊飯量のときに区分数を少なく、大炊飯量のときに区分数を多くして、これらの区分数に対応した大炊飯量又は小炊飯量の立上電力が設定されることを特徴とする請求項4に記載の電気炊飯器。
【請求項6】
前記炊飯モード判定手段は、前記底センサの検出値が第1の基準設定値θa以上または前記蒸気センサの検出値が第2の基準設定値θb以上のときに連続炊飯モードと判定し、前記底センサの検出値が第1の基準設定値θa未満および前記蒸気センサの検出値が第2の基準設定値θb未満のときに普通炊飯モードと判定し、
前記基準設定値θa、θbは、以下の関係、すなわち、θa<K1、θb<K2にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気炊飯器。
【請求項7】
前記立上加熱工程における前記蒸気センサによる検出値が所定の値を超えると、前記制御装置が、炊飯工程を前記沸騰維持工程に移行するように制御する電気炊飯器であって、
前記所定の値は、沸騰維持工程への移行温度として、炊飯モード毎に予め設定されており、
前記連続炊飯モードでの前記移行温度が、前記普通炊飯モードでの前記移行温度よりも高く設定されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の電気炊飯器。
【請求項8】
前記移行温度を変更するための移行温度変更手段を具えていることを特徴とする、請求項7に記載の電気炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−62412(P2011−62412A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217078(P2009−217078)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】