説明

電気的接続体及びその製造方法

【課題】 異方性導電膜に含まれる導電性粒子の粒子径が小さい場合であっても、これを均一に潰すことが可能であり、良好な導通特性を得ることが可能な電気的接続体を提供する。
【解決手段】 電気的接続体は、第1の電子部材である半導体素子1と第2の電子部材である配線基板3とが異方性導電膜5を介して電気的に接続されて構成される。いずれか一方の電子部材(ここでは半導体素子1)には、バンプ(突起電極)2が形成されており、バンプ2の頂部は、表面粗さRaが0.05μm以下の平坦面とされている。異方性導電膜5に含まれる導電性粒子6の平均粒径は、4μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子や電子基板等の電子部材同士が電気的に接続された電気的接続体に関し、特に、突起電極(バンプ)及び異方性導電膜を利用して電気的な接続を行った電気的接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば半導体素子等の電子部材を配線基板に実装する場合には、ワイヤボンディングによって半導体素子の端子電極と配線基板の電極とを電気的に接続することが広く行われている。ただし、この種のワイヤボンディングによる接続では、電極間を1つ1つボンディングワイヤで接続しなければならず接続工程が煩雑であること、高密度実装にともなう端子電極の微細化、狭いピッチ化等への対応が困難であること等の問題があり、その改善が望まれている。
【0003】
このような状況から、半導体素子をいわゆるフェースダウン状態で配線基板上に実装するフリップチップ実装法が提案されている。このフリップチップ実装法は、半導体素子の端子電極、あるいは配線基板の電極のいずれか一方に、バンプと称される突起電極を形成し、この突起電極が他方の電極と対向するように配置し、一括して電気的に接続する方法である。突起電極は、AuやCu、半田等をメッキすることによって形成され、その高さは数μm〜数十μm程度である。
【0004】
このようなフリップチップ実装法においては、接続信頼性を高めること等を目的に、異方性導電膜が用いられている。異方性導電膜は、接着剤として機能する絶縁性の樹脂中に導電性粒子を分散したものであり、突起電極と対向する電極間にこれを挟み込み、加熱、加圧すると導電性粒子が電極間で押し潰され、電気的な接続が図られる。突起電極のない部分では、導電性粒子は絶縁性の樹脂中に分散した状態が維持され、電気的に絶縁された状態が保たれるので、突起電極のある部分でのみ電気的導通が図られることになる。
【0005】
異方性導電膜を用いたフリップチップ実装法によれば、上述したように、多数の電極間を一括して電気的に接続することが可能であり、ワイヤボンディングのように電極間を1つ1つボンディングワイヤで接続する必要はなく、また高密度実装にともなう端子電極の微細化、狭いピッチ化等への対応も比較的容易である。
【0006】
このような異方性導電膜を用いたフリップチップ実装法では、電気的接続の信頼性の確保のため、突起電極上における導電性粒子の捕捉性を高めることが必要であり、各方面で検討が進められている。例えば、突起電極の高さが不均一であると接続に問題が生じるため、突起電極の高さを均一にする技術が提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献6等参照。)。
【0007】
具体的には、特許文献1には、電極部を有する半導体素子を、電極パターンを有する基板上に実装する方法が開示されている。特に、この実装方法においては、半導体素子の電極部に半導体素子表面よりも突出した導電性の突出部を設け、この突出部を剛体表面に一旦押しつけ、基板若しくは半導体素子の少なくとも一方に接着用樹脂を塗布し、突出部と電極パターンとが接触するように半導体素子と基板とを加圧して接合させた後、接着用樹脂を硬化させるようにしている。
【0008】
また、特許文献2には、基板表面に形成された多数の電路の上に半導体素子の電極との接合に用いるバンプを形成する方法であって、バンプが加圧によって高さの揃ったものとされていることを特徴とするバンプの製法が開示されている。
【0009】
さらに、特許文献3には、内部に導体が充填されたスルーホールを有するセラミック回路基板の少なくともバンプ形成面を研磨し、表面に露出したスルーホール導体上に金属小片をろう付けすることを特徴とするバンプ付き基板の製造方法が開示されている。
【0010】
さらにまた、特許文献4には、下層に銀メッキ層を設けるとともに、その上層にニッケルメッキ層を設け、さらにその上層に金メッキ層を設けた構成を有するリード表面において、フェースダウンボンディングによって搭載される半導体装置の電極パッドと対向する部分に金メッキによって柱状の突起電極を形成し、且つ、この突起電極を半導体装置実装基板の上方向から平板によって押圧して、半導体装置の電極パッドとの接触面となる複数個の突起電極の表面を、同一平面内に一致させるように平坦化する技術が開示されている。
【0011】
また、特許文献5には、はんだ突起電極の高さを揃えることにより実装不良を低減し、電気接続抵抗を低減するとともに接続強度を向上させることを目的として、はんだ突起電極に対して接触することによって電気特性検査を行った後に、はんだ突起電極の少なくとも頂部を研磨処理する技術が開示されている。
【0012】
さらに、特許文献6には、バンプの高さを効率よく揃えることを目的として、撮像手段がバンプの頂部に焦点を合わせるとともに、そのときの切削手段の位置を原点とし、その原点を基準として切削手段を駆動してバンプの切削を行う技術が開示されている。
【0013】
また、これら特許文献1乃至特許文献6に記載された技術の他、突起電極と接続端子との間において、導電性粒子の捕捉性を高めるために、突起電極に凹凸を形成することも試みられている(例えば、特許文献7乃至特許文献10等参照。)。
【0014】
例えば、特許文献7には、液晶セルの電極とフレキシブル基板の電極とを接続してなる液晶表示装置において、フレキシブル基板の電極は、粗面化した表面を有することを特徴とする液晶表示装置が開示されている。
【0015】
また、特許文献8には、砥粒を有する研磨シートを備えた平面土台の上に、バンプが研磨シートに当接するように、半導体装置(IC基板)をフェースダウンで設置し、半導体装置を平面土台に押圧しながら、押圧する方向に垂直な平面内で平面土台を超音波振動させることによってバンプの先端面に凹凸面を形成することが開示されている。
【0016】
さらに、特許文献9には、半導体装置の電極上に金バンプを形成する工程と、回路基板上に異方性導電膜を貼り付ける工程と、金バンプよりも硬い材料からなり異方性導電膜の導電粒子の径よりも小さい凹凸が形成された押圧用基板を、半導体装置の金バンプの先端面に押圧することにより、金バンプの先端面に凹凸部を形成する工程と、金バンプと回路基板の電極とを位置合わせした後、半導体装置を異方性導電膜を貼り付けた回路基板に押圧して加熱する工程とを備える半導体装置の実装方法が開示されている。
【0017】
さらにまた、特許文献10には、バンプ電極の形成に際して、配線電極上に予めパッシベーション膜からなる錐状あるいは台形状の凸部を複数設け、この状態でバンプ下地金属層を堆積し、さらにその上にメッキ成長によって金電極を形成してバンプ電極とする技術が開示されている。これにより、バンプ電極の電極表面には、配線電極上に設けた凹凸部に対応して、凹凸部が形成されることになる。
【0018】
【特許文献1】特開平1−278034号公報
【特許文献2】特開平1−295433号公報
【特許文献3】特開平4−33395号公報
【特許文献4】特開平5−291262号公報
【特許文献5】特開2000−114313号公報
【特許文献6】特開2006−324397号公報
【特許文献7】実開昭63−174328号公報
【特許文献8】特開平6−283537号公報
【特許文献9】特開平11−16946号公報
【特許文献10】特開2004−14778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、上述したフリップチップ実装に用いられる異方性導電膜において、導電性粒子の粒径は、通常5μm〜10μmの範囲とされているが、近年のファインピッチの要請に対応するため、導電性粒子の割合を少なくするか、導電性粒子の粒子径を小さくすることが求められている。例えば、導電性粒子の割合が多く、また、導電性粒子の粒子径が大きいと、ファインピッチのフリップチップ実装において、突起電極間に導電性粒子が詰まり、電気的な短絡(ショート)が発生するという問題が生じる。
【0020】
この場合、導電性粒子の割合を少なくすることは、導電性粒子の捕捉性に直結するため、導電性粒子の粒子径を小さくすることが妥当である。導電性粒子の粒子径を小さくすれば、突起電極間の隙間の導電性粒子は、絶縁性の樹脂(接着剤)中に分散された状態となり、突起電極間で導電性粒子同士が接触することによるショートの問題は回避される。
【0021】
しかしながら、導電性粒子の粒子径を小さくした場合には、突起電極の高さのバラツキや実装精度等により、導電性粒子が均一に潰れず、導通抵抗が不安定になる現象が発生しやすいという問題が新たに発生する。各突起電極の表面の高さには±2μm程度のバラツキがあり(従来の突起電極の表面粗さRaは0.3μm程度であり)、例えば導電性粒子の平均粒子径が4μm以下になると、均一に押し潰すことは困難である。
【0022】
このような導電性粒子の小径化を考えた場合、上述した特許文献1乃至特許文献6に記載された技術のような、突起電極の高さを均一にする技術では対応することができない。これら特許文献1乃至特許文献6に記載された技術においては、突起電極間の高さのバラツキを小さくすることはできるものの、突起電極頂部(先端平面部)の表面粗さに起因する高さのバラツキは解消することができず、突起電極頂部には表面粗さによるバラツキが存在することになる。したがって、導電性粒子の粒子径が小さくなると、突起電極上の導電性粒子が均一に潰れないという問題は解決されないままである。
【0023】
一方、上述した特許文献7乃至特許文献10に記載された技術のように、導電性粒子の捕捉性を高めるために突起電極に凹凸を形成する技術では、突起電極の表面粗さを大きくする方向であり、この場合、捕捉した導電性粒子が凹凸内に入り込むため均一に潰すことができず、導電性粒子の小径化に対応することは困難である。
【0024】
また、半導体素子等を実装する際には、突起電極の硬度が均一となるように調整する目的でアニール処理を行うことが通常である。しかしながら、突起電極は、その頂部を切削等の処理を行うことによって表面粗さを低減できたとしても、アニール処理を行うことによって表面粗さが大幅に増大してしまうという問題もあった。
【0025】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、異方性導電膜に含まれる導電性粒子の粒子径が小さい場合であっても、これを均一に潰すことが可能であり、アニール処理を行うか否かにかかわらず、良好な導通特性を得ることが可能な電気的接続体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願発明者は、上述した目的を達成するために、長期に亘り鋭意検討を重ねてきた。その結果、突起電極の表面に凹凸を形成した場合、導電性粒子の捕捉性については向上するケースもあるが、むしろ凹凸によって突起電極の周囲に位置する部分の導電性粒子に十分な圧力が伝わらず、突起電極上の導電性粒子が均一に潰れないこと、逆に突起電極の表面を格別平滑にすることで、導電性粒子の粒径が小さい場合に、潰れによって有効に作用する導電性粒子の割合が増え、捕捉性についてもほとんど問題がないことを見出すに至った。
【0027】
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。すなわち、上述した目的を達成する本発明にかかる電気的接続体は、第1の電子部材と第2の電子部材とが異方性導電膜を介して電気的に接続されてなる電気的接続体であって、いずれか一方の電子部材には突起電極が形成されており、前記突起電極の頂部は、アニール処理後の表面粗さRaが0.05μm以下の平坦面とされていることを特徴としている。
【0028】
また、上述した目的を達成する本発明にかかる電気的接続体の製造方法は、第1の電子部材と第2の電子部材とのいずれか一方に、メッキによって頂部の表面粗さRaが0.05μm以下の平坦面とされた突起電極を形成する工程と、前記第1の電子部材と前記第2の電子部材との間に異方性導電膜を介在させる工程と、押圧によって前記突起電極と対向する異方性導電膜の導電性粒子を押し潰し、前記第1の電子部材と前記第2の電子部材とを電気的に接続する工程とを備えることを特徴としている。
【0029】
粒径の小さな導電性粒子が分散された異方性導電膜を用いた場合、突起電極の表面粗さRaが大きく、表面に凹凸が形成されていると、第1の電子部材と第2の電子部材との間に異方性導電膜を挟み込んで、前記突起電極と対向する電極の間で前記異方性導電膜を押圧した際に、突起電極の表面の例えば凹部に入り込んだ導電性粒子に圧力が十分に伝わらず、十分に潰れない。導電性粒子が十分に潰れないと、電気的な接触面積等が不足して、導通信頼性を確保することは難しい。
【0030】
これに対して、本発明においては、突起電極の表面粗さRaが0.05μm以下とされ、極めて平滑な状態とされている。特に、本発明においては、アニール処理後においても表面粗さRaが0.05μm以下とされ、アニール処理を行うか否かにかかわらず、突起電極の頂部が極めて平滑な状態を維持することができる。したがって、導電性粒子の粒径が小さくても各導電性粒子に均一に圧力が加わり、均一な粒子変形が実現される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、異方性導電膜に含まれる導電性粒子の粒子径が小さい場合にも、これを均一に潰すことが可能で、良好な導通特性を得ることが可能である。したがって、本発明によれば、導通信頼性に優れた電気的接続体を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、バンプと突起電極とは同義として取り扱うものとする。
【0033】
図1は、電気的接続体の一例を示すものである。電気的接続体は、例えば半導体素子等の電子部材を、配線基板等の電子部材と電気的及び機械的に接続固定したものである。ここでは、第1の電子部材が半導体素子(ICチップ)であり、第2の電子部材が配線基板である場合を例にして説明する。
【0034】
図1において、第1の電子部材である半導体素子1には、接続端子としてバンプ(突起電極)2が形成されている。一方、第2の電子部材である配線基板3には、バンプ2と対向する位置に電極4が形成されている。半導体素子1と配線基板3との間には、異方性導電膜5が介在され、バンプ2と電極4とが対向する部分では、この異方性導電膜5に含まれる導電性粒子6が押し潰され、電気的な導通が図られている。
【0035】
バンプ2は、例えばAuやCu、半田等の導電性金属によって形成され、その高さは、5μmから50μm程度である。バンプ2は、メッキ等によって形成することができ、例えば表面のみを金メッキとすることも可能である。バンプ2は、後述するように、表面平滑性が要求され、このような観点からも金メッキとすることが好ましい。
【0036】
このような構造の電気的接続体においては、半導体素子1に形成されたバンプ2の表面粗さが重要である。バンプ2の表面粗さが大きいと、例えば図2に模式的に示すように、一部の導電性粒子6がバンプ2の接続面の凹部2a内に入り込み、加圧しても圧力が加わらず、潰れない状態となって導通抵抗が不安定になる現象が発生しやすい。これに対して、バンプ2の接続面が平坦であれば、バンプ2と電極4との間に捕捉された全ての導電性粒子6が均一に押し潰され、導通信頼性が安定に確保される。
【0037】
このような観点から、本発明においては、バンプ2の表面粗さを、中心線平均粗さRaで0.05μm以下とする。電気的接続体においては、この表面粗さRaを0.05μm以下とすることにより、例えば導電性粒子6の平均粒径が4μm以下であるような場合であっても、均一な粒子変形を実現することが可能となる。なお、バンプ2の表面粗さRaは、導電性粒子6の平均粒子径を考慮して設定することが好ましく、特に0.02μm以下であるのが好ましい。
【0038】
バンプ2の表面粗さRaは、例えばTencor社製サーフェースプロファイラー等の接触式測定器を用いることによって測定することができる。
【0039】
ここで、電気的接続体においては、後の工程でアニール処理を行う場合には、仮にアニール処理前の表面粗さRaを0.05μm以下に形成できたとした場合であっても、アニール処理後に、表面粗さRaが大幅に増大してしまうのが通常である。これに対して、本発明にかかる電気的接続体においては、バンプ2の形成時に、メッキの結晶状態を制御することにより、アニール処理前後にわたって、その表面粗さRaを0.05μm以下、より好ましくは0.02μm以下に保つことを可能としている。
【0040】
また、バンプ2は、表面粗さRaの他、その硬度についても適正に設定することが好ましい。バンプ2の硬度は、バンプ2に使用する導電性材料の種類や、例えばメッキ形成する際の形成条件等に応じて設計することが可能であるが、導電性粒子6の均一な粒子変形を実現するためには、ビッカース硬度Hvで40〜150とすることが好ましい。電気的接続体においては、バンプ2のビッカース硬度Hvを、この値の範囲内に設定することにより、導電性粒子6を押し潰す際に、加圧力が適正に導電性粒子6に伝わり、均一に押し潰すことが可能となる。
【0041】
一方、電気的接続体において、バンプ2と電極4との間の電気的接続及び機械的固定を図るために用いられる異方性導電膜5は、絶縁性樹脂中に導電性粒子6を分散したものである。絶縁性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂やポリエステル樹脂、クロロプレン等の熱可塑性のホットメルト樹脂や、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等を使用することができる。また、例えばエポキシ樹脂としては、BPA型エポキシ樹脂、BPF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂や、ゴムやウレタン等の各種変成エポキシ樹脂等が例示され、これらを単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
また、異方性導電膜5中に潜在性硬化剤を添加し、加熱を行って硬化剤を活性化するようにしてもよい。異方性導電膜5に潜在性硬化剤を添加することにより、起爆反応性を付与することが可能であり、接続の際の加熱操作により確実且つ速やかに硬化させることが可能となる。この場合、潜在性硬化剤としては、イミダゾール系の潜在性硬化剤等が使用可能であり、例えば表面処理されてマイクロカプセル化された商品名ノバキュアHX3741(旭化成社製)、商品名ノバキュアHX3921HP(旭化成社製)、商品名アミキュアPN−23(味の素社製)、商品名ACRハードナーH−3615(ACR社製)等を挙げることができる。
【0043】
異方性導電膜5に含まれる絶縁性樹脂の粘度が高いと、導通させるべき電極間から絶縁性樹脂を十分に排除できなくなり、導通信頼性が低下するおそれがある。また、異方性導電膜5に含まれる絶縁性樹脂の粘度が高くなった場合、接続すべき電極間の絶縁性樹脂を十分に排除するために熱硬化時のプレス圧力を高めることが必要となり、導電性粒子6のバンプ2や電極4へのあたりが強くなって、クラック等が発生するおそれもある。したがって、絶縁性樹脂は、異方性導電膜5の熱圧着温度における溶融粘度が10mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であることがより好ましい。
【0044】
一方、絶縁性樹脂の熱圧着時の溶融粘度が低くなりすぎると、導電性粒子6が導通させるべき電極間が逃げやすくなり、捕捉性の点で問題が生じるおそれがある。したがって、絶縁性樹脂は、異方性導電膜5の熱圧着温度における溶融粘度が10mPa・s以上であることが好ましい。
【0045】
異方性導電膜5を構成する導電性粒子6としては、この種の異方性導電膜において使用されている公知の導電性粒子をいずれも使用することができる。例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金など各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラスやセラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、あるいはこれらの粒子の表面にさらに絶縁薄膜をコートしたもの等を使用することができる。
【0046】
ただし、本発明にかかる電気的接続体においては、導電性粒子6が電極間で押し潰されることが必要であるため、樹脂粒子の表面に金属をコートしたものが好適である。この場合、樹脂粒子としては、20%圧縮変形時の圧縮硬さが、100〜1000kgf/mm(1kgf/mm=9.80665MPa)のものを用いることが好ましい。樹脂粒子の20%圧縮変形時のK値が1000kgf/mmよりも大きいと、樹脂粒子が適度に潰れないため電極表面の高さのバラツキを吸収することができず、また、加圧の際に高い圧力が必要になるとともに、導電性粒子6の反発力が大きくなり界面剥離を起こす等の不都合が生じるおそれもある。
【0047】
このような要求を満たす樹脂粒子としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を挙げることができる。
【0048】
導電性粒子6の平均粒径は任意であるが、平均粒径が4μm以下の導電性粒子6を用いた場合に本発明の効果が大きい。したがって、導電性粒子6の平均粒径は、1μm〜4μmとするのが好適である。また、突起電極の頂部の平坦化にともない、導電性粒子の粒子径のバラツキが、導電性粒子の硬度によっては影響を受ける場合がある。本発明の場合、導電性粒子の平均粒子径の±1μmの範囲に全粒子の90%以上が含まれているのが好適である。
【0049】
以上のような構成を備える電気的接続体においては、異方性導電膜5に含まれる導電性粒子6の粒子径が例えば4μm以下と小さい場合であっても、均一に押し潰すことが可能であり、良好な導通特性を得ることが可能である。したがって、導通信頼性に優れた電気的接続体を実現することができる。
【0050】
つぎに、上述した電気的接続体の製造方法について説明する。上述した構成の電気的接続体を作製するには、まず、半導体素子1の電極上にバンプ2を形成する必要がある。このバンプ2は、メッキ等の手法によって形成するが、アニール処理前後における表面粗さRaを0.05μmとするためには、金メッキとすることが好ましく、また、メッキ条件を選定することにより、形成されるバンプ2の表面が平滑になるようにする必要がある。
【0051】
ここで、金メッキにおいては、結晶状態を制御し、形成されるバンプ2の表面を平滑にするために、以下のような金メッキ液が使用される。
【0052】
金メッキ液は、
a)金化合物
b)伝導塩・緩衝剤
c)結晶成長剤
d)有機光沢剤
等を基本的な組成として構成される。金化合物としては、例えば、亜硫酸金塩やシアン化金塩等がある。また、伝導塩・緩衝剤としては、亜硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、塩酸塩、アミン塩、キレート剤等がある。さらに、結晶成長剤としては、Tl、Pb、As、Bi、Co、Ni、Fe、Sb等がある。さらにまた、有機光沢剤としては、NH基を有する高分子、すなわち、エトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)、ポリアルキルイミン(PAI)、ポリエチレンイミン(PEI)等がある。これらの液組成から得られた金メッキは、析出物が緻密で光沢性があり、本発明にて形成されるバンプ2の表面を平滑にする用途に極めて適している。
【0053】
バンプ2の形成の後、半導体素子1のバンプ2と配線基板3の電極4との間の接続を行うが、この場合には、例えば、配線基板3の表面に異方性導電膜5を貼付し、位置合わせ及び仮接続を行った後に、所定の温度及び圧力で熱圧着を行うことによって導電性粒子6を押し潰し、半導体素子1のバンプ2と配線基板3の電極4とを電気的に接続させた状態で異方性導電膜5を構成する絶縁性樹脂を硬化させる。熱圧着の際の温度及び圧力は、使用する異方性導電膜5の種類等によっても異なるが、例えば温度180℃〜220℃、圧力30MPa〜120MPaとすることが好ましい。
【0054】
以上の工程を経ることにより、異方性導電膜5に含まれる導電性粒子6の粒子径が小さい場合であっても、これを均一に潰すことが可能であり、作製される電気的接続体において、良好な導通特性を得ることが可能である。
【0055】
[実施例]
つぎに、本発明を適用した電気的接続体の具体的な実施について、実験結果に基づいて説明する。
【0056】
(実施例1)
バンプの表面粗さRaの相違による導電性粒子の捕捉性及び潰れ状態を評価するために、異方性導電膜を介してバンプ付きICをガラスに実装した。異方性導電膜は、バインダー成分に導電性粒子を約300万個/mmとなるように配合し、これをフィルム化して形成した。各成分の内訳は以下のとおりである。
エポキシ樹脂 : ジャパンエポキシレジン社製、商品名EP828 30重量部
フェノキシ樹脂: InChem社製、商品名PKHH 40重量部
エポキシ硬化剤: 旭化成社製、商品名HX3941HP 30重量部
導電性粒子 : Ni/Auメッキ樹脂粒子
なお、導電性粒子として平均粒径4μmの導電性粒子と平均粒径2μmの導電性粒子を用い、2種類の異方性導電膜(異方性導電膜A及び異方性導電膜B)を作製した。
【0057】
バンプ付きICのバンプは、金メッキによって形成した。この金メッキは、日本エレクトロプレイテイング・エンジニヤース社製、商品名ミクロファブAu310を金メッキ液として用い、メッキ温度50℃、電流密度0.4A/dmの条件で行った。この結果得られたバンプの接続面の表面粗さRaは、0.0105μmであった。実装の際の圧着条件は、到達温度200℃、圧力40MPa、時間5秒とした。
【0058】
(実施例2)
実施例1の金メッキ液及びメッキ条件を変更してバンプ付きICを作製した。金メッキは、日本エレクトロプレイテイング・エンジニヤース社製、商品名ニュートロネクス240を金メッキ液として用い、メッキ温度65℃、電流密度0.5A/dmの条件で行った。この結果得られたバンプの接続面の表面粗さRaは、0.004μmであった。他は実施例1と同様の条件で、異方性導電膜を介してバンプ付きICをガラスに実装した。
【0059】
(比較例1)
実施例1及び実施例2の金メッキ液及びメッキ条件を変更してバンプ付きICを作製した。金メッキは、日本エレクトロプレイテイング・エンジニヤース社製、商品名ミクロファブAu100を金メッキ液として用い、メッキ温度60℃、電流密度0.5A/dmの条件で行った。この結果得られたバンプの接続面の表面粗さRaは、0.298μmであった。他は実施例1と同様の条件で、異方性導電膜を介してバンプ付きICをガラスに実装した。
【0060】
(比較例2)
実施例1及び実施例2並びに比較例1の金メッキ液及びメッキ条件を変更してバンプ付きICを作製した。金メッキは、日本エレクトロプレイテイング・エンジニヤース社製、商品名ミクロファブAu660を金メッキ液として用い、メッキ温度60℃、電流密度0.8A/dmの条件で行った。この結果得られたバンプの接続面の表面粗さRaは、0.130μmであった。他は実施例1と同様の条件で、異方性導電膜を介してバンプ付きICをガラスに実装した。
【0061】
評価
各実施例及び各比較例として作製した異方性導電膜A,Bについて、バンプ上に捕捉された導電性粒子をガラスの裏面から光学顕微鏡を用いて観察し、粒子捕捉数をカウントして総粒子捕捉数を求め、さらに粒子の潰れ状態が合格のものをカウントして有効粒子捕捉数を求めた(範囲2000μm)。この結果を次表1及び次表2に示す。なお、次表1は、異方性導電膜Aについての結果を示し、次表2は、異方性導電膜Bについての結果を示している。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
これら上表1及び上表2から明らかなように、バンプの表面粗さRaを0.05μm以下とすることにより、電気的接続に寄与する有効導電粒子数が大きく増加していることがわかる。また、総粒子捕捉数についても、比較例と同等以上の数値となっている。
【0065】
また、図3に、実施例1(異方性導電膜A)におけるバンプ近傍の光学顕微鏡像を示し、図4に、比較例1(異方性導電膜B)におけるバンプ近傍の光学顕微鏡像を示す。これら図面を比較すると、実施例1では、バンプの頂部が極めて平滑な状態とされていることが明白であるのに対して、比較例1では、バンプの頂部が粗い様子がわかる。
【0066】
さらに、図5に、実施例1(異方性導電膜A)におけるバンプ近傍の他の光学顕微鏡像を示し、図6に、比較例1(異方性導電膜B)におけるバンプ近傍の他の光学顕微鏡像を示す。いずれの図面(写真)も、バンプ周辺部の光学顕微鏡像である。これら図面を比較すると、実施例1では、バンプの周辺部を含めてバンプ全体で導電性粒子が均一に押し潰されていることがわかる。これに対して、比較例1では、特にバンプ周辺部において導電性粒子の潰れ方が不足している。
【0067】
アニール処理の影響の評価
つぎに、バンプの表面粗さRaに対するアニール処理の影響を評価するために、実施例1として作製したバンプ付きICに対してアニール処理を施し、アニール処理前後における表面粗さRaを測定した。この結果を次表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
上表3から明らかなように、実施例1として作製したバンプ付きICに対してアニール処理を施した場合には、アニール処理後におけるバンプの表面粗さRaが0.0179μmとなり、例えば頂部を切削することによって平滑にしたバンプに対してアニール処理を施す等の従来の手法とは異なり、0.05μm以下の値に保たれている。
【0070】
これは以下の理由による。すなわち、実施例1として作製したバンプは、金メッキ液の粒塊(結晶粒)が積み上がって形成されたものであるが、頂部を平滑にするために、結晶粒が小さくなるように結晶状態を制御した金メッキ液を使用している。具体的には、実施例1として作製したバンプにおいては、アニール処理前におけるバンプ断面の結晶粒の様子を測定すると、図7中左側の分布図に示すように、きめ細かい結晶粒が集合しており、図7中右側に示すように、その平均粒径が0.08μmであった。すなわち、実施例1として作製したバンプは、アニール処理前における平均粒径が0.1μm以下と小さい結晶粒がきめ細かく積み上がって形成されたものであり、これにより、アニール処理を施してもメッキ液の結晶粒が大きくならず、アニール処理前後にわたって、結晶粒の大きさの変化を抑制することができ、バンプの表面粗さRaが0.05μm以下に保たれるのである。
【0071】
このように、本発明は、アニール処理前後にわたってバンプの表面粗さRaを0.05μmとすることができ、異方性導電膜に含まれる導電性粒子の粒子径が小さい場合であっても、これを均一に潰すことが可能であり、作製される電気的接続体において、良好な導通特性を得ることが可能であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】電気的接続体の一構成例を示す概略断面図である。
【図2】バンプの表面に凹凸がある場合の導電性粒子の潰れ方を模式的に示す概略断面図である。
【図3】実施例1におけるバンプ近傍の光学顕微鏡像である。
【図4】比較例1におけるバンプ近傍の光学顕微鏡像である。
【図5】実施例1におけるバンプ近傍の他の光学顕微鏡像である。
【図6】比較例1におけるバンプ近傍の他の光学顕微鏡像である。
【図7】実施例1におけるバンプ断面の結晶粒の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 半導体素子(第1の電子部材)
2 バンプ
3 配線基板(第2の電子部材)
4 電極
5 異方性導電膜
6 導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電子部材と第2の電子部材とが異方性導電膜を介して電気的に接続されてなる電気的接続体であって、
いずれか一方の電子部材には突起電極が形成されており、
前記突起電極の頂部は、アニール処理後の表面粗さRaが0.05μm以下の平坦面とされていること
を特徴とする電気的接続体。
【請求項2】
前記突起電極の頂部は、アニール処理後の表面粗さRaが0.02μm以下の平坦面とされていること
を特徴とする請求項1記載の電気的接続体。
【請求項3】
前記突起電極の頂部は、金メッキによって形成されていること
を特徴とする請求項1記載の電気的接続体。
【請求項4】
前記異方性導電膜に含まれる導電性粒子の平均粒径が4μm以下であること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項記載の電気的接続体。
【請求項5】
前記導電性粒子は、樹脂粒子を芯材とし、その表面に導電層が形成されていること
を特徴とする請求項4記載の電気的接続体。
【請求項6】
前記樹脂粒子は、20%圧縮変形時の圧縮硬さが100〜1000kgf/mmであること
を特徴とする請求項4記載の電気的接続体。
【請求項7】
第1の電子部材と第2の電子部材とのいずれか一方に、メッキによって頂部の表面粗さRaが0.05μm以下の平坦面とされた突起電極を形成する工程と、
前記第1の電子部材と前記第2の電子部材との間に異方性導電膜を介在させる工程と、
押圧によって前記突起電極と対向する異方性導電膜の導電性粒子を押し潰し、前記第1の電子部材と前記第2の電子部材とを電気的に接続する工程とを備えること
を特徴とする電気的接続体の製造方法。
【請求項8】
前記突起電極の頂部は、前記表面粗さRaが0.02μm以下の平坦面とされること
を特徴とする請求項7記載の電気的接続体の製造方法。
【請求項9】
前記突起電極の頂部は、金メッキによって形成すること
を特徴とする請求項7記載の電気的接続体の製造方法。
【請求項10】
前記突起電極の頂部は、アニール処理後の前記表面粗さRaが0.02μm以下の平坦面とされること
を特徴とする請求項7乃至請求項9のうちいずれか1項記載の電気的接続体の製造方法。
【請求項11】
前記突起電極を形成する際に使用されるメッキ液の結晶粒は、アニール処理前における平均粒径が0.1μm以下であること
を特徴とする請求項7乃至請求項10のうちいずれか1項記載の電気的接続体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−111043(P2009−111043A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279941(P2007−279941)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【出願人】(000228165)日本エレクトロプレイテイング・エンジニヤース株式会社 (29)
【Fターム(参考)】