説明

電気自動車のモータルーム構造

【課題】取付作業性が良好な電気自動車のモータルーム構造を提供する。
【解決手段】前側クロスメンバ11及び下側クロスメンバ12の車幅方向の両端部11a…間の寸法W1,W3が、モータルーム2内の車幅方向両側に延在する一対のサイドメンバ部材14,14の両内側面部14a,14a間寸法W2,W4よりも短くなるように設定されている。
各取付面23a…の下面側に、下方から前記前側クロスメンバ11及び下側クロスメンバ12の車幅方向の各端部11a…が、当接されている。
そして、これらの各取付面23a…の上面側から、複数の固定ボルト27…が各々挿入及び締結されることにより、これらの各端部11a…が、各々固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付作業性が良好な電気自動車のモータルーム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータ等の強電部品を有するコントロールユニットを支持する部品搭載フレーム部材を、モータルームの下方開口部から車両上方に向けて持ち上げて、モータルーム内に配置して固定する取付方法が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このようなものでは、前記部品搭載フレーム部材の車幅方向一対の両端部が、前記モータルームの内側部に位置するサイドメンバ部材に各々固定される際、上下一対のメンバブラケット部材によって、上下両側から挟持されると共に、上下両方向からボルト部材が用いられて、締結固定されている。
【0004】
これにより、前記各サイドメンバ部材が、この上下一対のメンバブラケット部材により、上下方向からサンドイッチ状態とされて、このサイドメンバ部材間に掛け渡された前記部品搭載フレーム部材が、モータルーム内に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−310252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のモータルーム内に、強電部品を取付ける方法では、前記部品搭載フレーム部材をサイドメンバ部材に取り付ける際、上下一対のメンバブラケット部材を、前記サイドメンバ部材及び部品搭載フレーム部材の上,下方向から合わせて、ボルト部材で各々締結固定しなければならない。
【0007】
このため、上下両方向から、締結作業を行わなければならないといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、取付作業性が良好な電気自動車のモータルーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の電気自動車のモータルーム構造では、車体の車幅方向両側に、車体前後方向に延在する一対のサイドメンバ部材が設けられた電気自動車で、前記サイドメンバ部材のそれぞれに取付面を有して車幅方向内側に突設した一対のメンバブラケット部材には、強電部品を支持する支持フレーム部材が固定される。
【0010】
前記支持フレーム部材は、前記サイドメンバ部材間の間隔より短く、前記メンバブラケット部材に当接して、固定部材によって、固定されるように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記支持フレーム部材が、モータルーム内の一対のサイドメンバ部材の両内側面部間に介挿されると、該支持フレーム部材が、該両内側面部間に位置して、車幅方向の位置調整が行われる。
【0012】
また、前記メンバブラケット部材のうち、一対のサイドメンバ部材の内側面から車幅方向内側に向けて突設された取付面に、前記支持フレーム部材が当接されて位置規制が行われる。
【0013】
そして、前記取付面側から、前記各端部を固定して、該支持フレーム部材をサイドメンバ部材に取り付ける取付作業方向を、該取付面側からの一方向とすることが出来、取付作業性を良好なものとすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の電気自動車のモータルーム構造で、要部の構成を説明する分解斜視図である。
【図2】実施の形態の電気自動車のモータルーム構造で、車体前部のモータルームに、部品搭載フレーム部材が取り付けられた様子を示す斜視図である。
【図3】実施の形態の電気自動車のモータルーム構造で、要部の構成を説明する拡大斜視図である。
【図4】実施の形態の電気自動車のモータルーム構造で、要部の構成を説明する図2中A部の平面図である。
【図5】実施の形態の電気自動車のモータルーム構造で、要部の構成を説明する図4中A−A線に沿った位置での断面図である。
【図6】実施の形態の電気自動車のモータルーム構造で、要部の構成を説明する図2中B部の拡大斜視図である。
【図7】実施の形態の電気自動車のモータルーム構造で、要部の構成を説明する図6中B−B線に沿った位置での断面図である。
【図8】実施の形態の電気自動車のモータルーム構造で、要部の構成を説明する図6中C−C線に沿った位置での断面図である。
【図9】実施の形態の電気自動車のモータルーム構造で、パワートレインを車体に取り付ける様子を説明する分解斜視図である。
【図10】実施の形態の電気自動車のモータルーム構造で、パワートレインを車体に取り付けた様子を説明する斜視図である。
【図11】実施の形態の電気自動車のモータルーム構造で、パワートレインを車体に取り付けた様子を説明する車体前部のモータルームを下方から見た図10中矢視H方向の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の電気自動車のモータルーム構造を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1乃至図10は、この発明の実施の形態の電気自動車のモータルーム構造を示すものである。
【0017】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態の電気自動車の車体1の前部に形成されたモータルーム2内には、図2に示すように、下方から、モータユニットMUを構成するモータ3及びギヤユニット4が、配置されていて、サスペンションメンバ30の上側に、モータマウントインシュレータ部材31,31…を介して支持されている。
【0018】
このモータ3及びギヤユニット4の上方位置には、支持フレーム部材としての部品搭載フレーム部材5が、設けられていて、この部品搭載フレーム部材5の上側取付面部5a及び後側取付面部5bには、強電部品のインバータ6及びDC/DCコンバータ7が、各々取り付けられている。
【0019】
そして、これらのインバータ6及びDC/DCコンバータ7と、前記モータ3との間には、図10に示すような可撓性の三相交流ハーネス8が接続されていて、このモータ3の回転駆動に必要とされる電力及び回生起電力が、給配電されるように構成されている。
【0020】
また、前記部品搭載フレーム部材5は、車幅方向に沿って延設されて、前記インバータ6前側部を下方から支持するクロスメンバとしての前側クロスメンバ11と、この前側クロスメンバ11から、車両後方に所定距離離間配置されて略平行配置されて、前記DC/DCコンバータ7が取り付けられる下側クロスメンバ12とを有して、主に構成されている。
【0021】
更に、この部品搭載フレーム部材5には、この下側クロスメンバ12から、車両上方に所定距離離間されて、前記インバータ6の後側部を下方から支持すると共に、前記DC/DCコンバータ7の上側部前面が取り付けられる門型を呈してなる後側取付フレーム部13が一体に設けられている。
【0022】
そして、前記前側クロスメンバ11の車幅方向の両端部11a,11a間の寸法W1及び下側クロスメンバ12の車幅方向の両端部12a,12a間の寸法W3が、前記モータルーム2内の車幅方向両側に延在する一対のサイドメンバ部材14,14の両内側面部14a,14a間寸法W2,W4よりも、各々短くなるように設定されている。
【0023】
また、この実施の形態の前記一対のサイドメンバ部材14,14には、前記前側クロスメンバ11及び下側クロスメンバ12に対応して、対となるメンバブラケット部材20,20が、各々設けられている。
【0024】
このメンバブラケット部材20は、図2又は図11に示すように、車幅方向一対の略対称位置となるように対向配置されている。
【0025】
そして、図1,図3乃至図8に示すように、前記一対のサイドメンバ部材14の各内側面部14a及び上面部14bの二面に跨って、略直交する形状で一体に形成されて、断面略L字状を呈する内側固着面部21及び上側固着面部22が、添設されるように構成されている。
【0026】
この実施の形態の各メンバブラケット部材20は、図1及び図9に示すように、これらの内側固着面部21及び上側固着面部22が、各々内側方及び上方の二方向から、複数箇所でスポット溶接18…されて、前記一対のサイドメンバ部材14,14の各内側面部14a及び上面部14bに、各々溶着されて一体となるように固定されている。
【0027】
この内側固着面部21の車両前後方向略中央位置からは、前記内側面部14aよりも、車幅方向内側に向けて突設される取付面部23が一体に設けられている。
【0028】
また、車幅方向左前方に位置するメンバブラケット部材20の内側固着面部21の車両前後方向略中央位置からは、前記内側面部14aよりも、車幅方向内側に向けて突設される取付面部24が、一体に設けられている。
【0029】
更に、この取付面部23,24は、図1及び図3に示すように、前記上側固着面部22に、ビード部26を介して、この上側固着面部22よりも、車両上下方向で一段低い位置に連設される平板状の取付面23aと、一体となるように設けられている。
【0030】
これらの取付面部23,24は、各々取付面23aの車両前後方向両側に位置して、この取付面23aと共に、車両前後方向断面形状を下方が開放された断面略コ字状を呈するように一体に形成されるガイド面25,25を有している。
【0031】
この実施の形態では、前記ガイド面25,25の付根部25a,25aが、各々前記内側固着面部21と、略直交する角度で、一体となるように連設されて、前記サイドメンバ部材14に固着されている。
【0032】
そして、これらの取付面部23,24には、固定部材としての固定ボルト27…が固定される取付孔23b…が、車両上下方向に沿って、各々一つずつ貫通形成されている。
【0033】
更に、この実施の形態では、図2及び図3に示すように、車体1の左前に位置するメンバブラケット部材20の取付面部24には、この取付孔23bから、車幅方向で、車両中央方向に一定距離W5を置いて、ロケートピン33を、挿通係止するロケートピン固定孔32が、車両上下方向に沿って、貫通形成されている。
【0034】
そして、この実施の形態では、図8中二点鎖線で示すように、この取付面部23のうち、下方の開放された部分から、前記前側クロスメンバ11及び下側クロスメンバ12の各端部11a,12a…が、前記部品搭載フレーム部材5が持ち上げられて介挿されると、前記ガイド面25,25にガイドされながら、これらの各端部11a,12a…の車両前後方向の位置調整が、上昇する過程で各々行われる。
【0035】
また、前記前側クロスメンバ11の車幅方向の両端部11a,11a間の寸法W1及び下側クロスメンバ12の車幅方向の両端部12a,12a間の寸法W3が、前記一対のサイドメンバ部材14,14の両内側面部14a,14a間寸法W2及び寸法W4よりも短くなるように設定されている。
【0036】
このため、図7に示すように、前記部品搭載フレーム部材5が、持ち上げられる際に、前記一対のサイドメンバ部材14,14の両内側面部14a,14a間に介挿された前記前側クロスメンバ11及び下側クロスメンバ12は、図中二点鎖線で示すように、各端部11a…が、前記内側面部14a,14aによってガイドされて、車幅方向左右の位置調整が上昇過程で各々行われる。
【0037】
この実施の形態では、図5中二点鎖線で示すように、前記ロケートピン33の下端部33aに対して、前記前側クロスメンバ11の車幅方向左前の一方の端部11aに開口形成されたロケートピン挿通孔35の上下方向位置が、到達するまでに、ロケートピン33の挿通に必要とされる車両前後及び車幅方向のロケートピン挿通孔35の位置合わせが行われる。
【0038】
このため、ロケートピン33が、ロケートピン挿通孔35に干渉する虞が無く、ロケートピン33の下端部33aが、このロケートピン挿通孔35の上面側から挿通されるように、このロケートピン33の長さ方向寸法が設定されている。
【0039】
また、このロケートピン33は、前記前側クロスメンバ11及び下側クロスメンバ12の車幅方向の各端部11a,12a…を、前記各取付面部23a…に当接させた状態で、車両前後方向及び車幅方向左右の適正取付位置に、ガイドするように、前記ロケートピン挿通孔35との嵌め合わせ寸法が設定されている。
【0040】
そして、前記各取付面23a…の下面側に、下方から前記前側クロスメンバ11及び下側クロスメンバ12の車幅方向の各端部11a,11a及び12a,12a(以下各端部11a…と記す)が、当接されて、これらの各取付面23a…の上面側から、複数の固定ボルト27…が各々挿入及び締結されることにより、これらの各端部11a…が、各々固定されるように構成されている。
【0041】
すなわち、この各取付面23a…には、前記各固定ボルト27…を挿通する取付孔23b…が、車両上下方向に貫通する開口形成方向を有して、各々形成されている。
【0042】
また、この実施の形態の前記前側クロスメンバ11及び下側クロスメンバ12には、前記取付面23a…への当接部位である端部11a…が、適正取付位置に存在する場合、すなわち、前記ロケートピン33が、ロケートピン挿通孔35に挿通された状態で、固定ボルト挿通用の開孔部11b,11b及び12b,12bが、これらの取付孔23b…形成位置と略一致するように、開口形成されている。
【0043】
更に、この実施の形態では、図1及び図3乃至図5,図7,図8に示すように、これらの端部11a…のうち、前記開孔部11b,12b…が形成されている部分の裏面側には、前記固定に用いられる固定ボルト27の締結力を分散させる長尺板状のウエルドプレート28…が、これらの各固定ボルト27…に各々螺合される各ウエルドナット29…と各々組み合わせられて、予め添着されている。
【0044】
また、この実施の形態では、図3又は、図6に示すように、前記一対のサイドメンバ部材14,14のうち、前記メンバブラケット部材20の上側固着面部22が、スポット溶接18,18によって、固着されている部分の周縁では、ボルト頭部やナット部材の突起物が一切無い。
【0045】
このため、前記サイドメンバ部材14の上面部14bの上面側では、上側固着面部22の板厚のみの高さで隆起物が存在するに留まる略面一の平坦状を呈する様に構成されている。
【0046】
次に、この実施の形態の電気自動車のモータルーム構造の作用効果について説明する。
【0047】
このように構成された実施の形態の電気自動車のモータルーム構造では、モータルーム2内に取り付けられるモータユニットMUとしてのモータ3及びギヤユニット4が、前記部品搭載フレーム部材5及びサスペンションメンバ30と共に、予めサブアッセンブリされた状態で、車体1の下方から、前記モータルーム2内へ持ち上げられて取付られる。
【0048】
前記部品搭載フレーム部材5には、前側クロスメンバ11と、下側クロスメンバ12とによって下方から支持されて、インバータ6が取り付けられると共に、この部品搭載フレーム部材5の車両後方側背面には、前記後側取付フレーム部13と、前記下側クロスメンバ12とに支持されて、前記DC/DCコンバータ7が取り付けられている。
【0049】
そして、図7及び図8に示すように、前記部品搭載フレーム部材5が、モータルーム2内の一対のサイドメンバ部材14,14の両内側面部14a,14a間に介挿されると、前記前側クロスメンバ11及び、下側クロスメンバ12との各両端部11a…が、該両内側面部14a,14a間に位置する。
【0050】
このため、車体方向の左,右何れかに、前記部品搭載フレーム部材5が、位置ヅレしようとすると、何れかの端部11a,12aが、何れか一方の内側面部14aに干渉する。
【0051】
従って、上昇行程では、このモータルーム2内の車幅方向中央に向けて、二点鎖線で示すようにガイドされて、センタリングされながら、車幅方向の位置調整が行われる。
【0052】
しかも、この実施の形態では、前記端部11a,12a…が、前記部品搭載フレーム部材5の略四隅に位置するので、車両上方へ持ち上げる方向を中心軸とする転び回転方向の角度ヅレも解消されて、所望の位置に調整される。
【0053】
また、前記メンバブラケット部材20の取付面部23には、前記取付面23aの車両前後方向両側に位置して、この取付面23aと共に、車両前後方向断面形状を下方が開放された断面略コ字状を呈するように一体に形成されるガイド面25,25が設けられている。
【0054】
このため、前記各両端部11a…は、前記部品搭載フレーム部材5の上昇に伴って、下方が開放された前記ガイド面25,25間に介挿されると、図中二点鎖線で示すように、これらのガイド面25,25の内側面に沿ってガイドされて、上昇行程中に、車両前後方向の位置が調整されながら、上方に向けて移動する。
【0055】
次に、この実施の形態では、図5中二点鎖線で示す様に、前記ロケートピン33の下端部33aに対して、前記前側クロスメンバ11の車幅方向左前の一方の端部11aに開口形成されたロケートピン挿通孔35の上下方向位置が、到達すると、干渉する虞が無く、円滑に挿入されて、更に上昇を続ける。
【0056】
そして、前記各取付面23a…の下面側に、前記各端部11a…の上面部が、下方から当接されて停止する。
【0057】
この当接により、前記取付面23aの下面側の車両上下方向で設定された形成位置によって、各端部11a…の車両上下方向位置が、規制される。
【0058】
そして、全ての各両端部11a…が、各取付面23a…の下面側に当接されると、前記部品搭載フレーム部材5全体の車両上下方向の位置規制が行われる。
【0059】
しかも、この実施の形態では、更に、前記各両端部11a…が、前記一対のサイドメンバ部材14,14の近傍位置で、前記内側面部14a,14aから車幅方向内側に向けて突設された取付面23a…の下面側に、全て当接されることにより、前記部品搭載フレーム部材5の最外側縁に近い部分で車両上下方向の位置規制が、個別に行われることになり、前記部品搭載フレーム部材5の全体の傾き、すなわち、転び方向の角度ズレを、略無くすことが出来る。
【0060】
このように、各端部11a…の位置決め及び、正確な取付角度が与えられて、前記部品搭載フレーム部材5のモータルーム2内における取付に必要となる位置決めを、前記部品搭載フレーム部材5を上昇させる工程中に略完了させることが出来る。
【0061】
よって、上昇行程の終了によって、前記前側クロスメンバ11及び下側クロスメンバ12の車幅方向の両端部11a…の正確な位置合わせが、行われ、前記各取付面23a…に開口形成された前記各固定ボルト27…が挿通される取付孔23b…に、前記各端部11a…の開孔部11b…が、確実に合わされて一致されている。
【0062】
このため、直ちに、前記固定ボルト27を、これらの重ね合わされた取付孔23b…及び開孔部11b…に上方から各々挿通させて、前記ウエルドプレート28を介して、ウエルドナット29に螺合させることが可能で、取付孔23b…の位置合わせ工程を一部又は全部省略して、次の締結工程への移行が容易に行える。
【0063】
また、前記固定ボルト27…は、全て、前記部品搭載フレーム部材5が持ち上げられる方向とは、前記取付面部23…を挟んで、反対側である取付面23a…の上方から、これらの取付孔23b…及び開孔部11b…に各々挿通される。
【0064】
このため、前記メンバブラケット部材20…が、取付作業性の良好なモータルーム2内の上部開口部近傍に位置する前記一対のサイドメンバ部材14,14の上面部側14b,14bに設けられて、前記部品搭載フレーム部材5の搭載部品が吊り下げられる構成となっても、これらの構成部品や、更に下方に位置する前記モータ3,ギヤユニット4及びサスペンションメンバ30、予めサブアッセンブリされたものと、干渉することなく、取付作業性が良好である。
【0065】
従って、前記固定ボルト27…の挿通及び螺合作業が容易であると共に、締結力管理及び取付後の位置精度も良好なものとすることができる。
【0066】
また、前記部品搭載フレーム部材5のうち、前側クロスメンバ11と、下側クロスメンバ12とによって下方から支持されて、前記インバータ6が取り付けられると共に、この部品搭載フレーム部材5の車両後方側背面には、前記後側取付フレーム部13と、前記下側クロスメンバ12とに支持されて、前記DC/DCコンバータ7が、予め正確な位置となるように取り付けられている。
【0067】
従って、前記各取付面23a…の上方から、前記固定ボルト27…を、各々取付孔23b…を介して挿入して、前記ウエルドプレート28…及び、ウエルドナット29…に、螺合させて、固定するだけで、前記部品搭載フレーム部材5に取り付けられた各インバータ6及び、前記DC/DCコンバータ7の強電部品を適正な位置に、容易に取り付けることが出来る。
【0068】
しかも、これらのウエルドプレート28…及び、ウエルドナット29…は、予め、前記部品搭載フレーム部材5が、持ち上げられる前に、車幅方向両端部11a…の裏面側に添着されているので、車両下側から行う取付作業が一切発生しない。
【0069】
このように、前記前側クロスメンバ11及び下側クロスメンバ12の車幅方向各端部11a…を、前記各取付面23a…に固定する際の作業方向が、これらの各取付面23a…の上方からの一方向となるので、取付作業性を良好なものとすることができる。
【0070】
しかも、この実施の形態では、このモータ3及びギヤユニット4の上方位置に設けられた部品搭載フレーム部材5に固定されて、給電を行うインバータ6及びDC/DCコンバータ7が、このモータ3に可撓可能な三相交流ハーネス8を介して、接続されている。
【0071】
このため、前記インバータ6及びDC/DCコンバータ7と、モータ3との相対位置が変動しても、電気的接続が保たれる。
【0072】
従って、この部品搭載フレーム部材5が、前記モータ3及びギヤユニット4よりも先に位置決め固定されても、或いは、後で固定されても良く、車両上下方向から、支持しながら固定する等の、同時作業からも開放されることにより、組立作業者の負荷及び人数を減少させることも可能であり、作業工程の順序の自由度を増大させることが出来る。
【0073】
このように、前記モータルーム2の下方から、前記部品搭載フレーム部材5及びモータ3等の強電部品やその他の搭載部品を纏めて、持ち上げると共に、上方から、前記部品搭載フレーム部材5を、固定できる。
【0074】
従って、パワートレインの特性に応じて、モータマウントインシュレータ部材31…を用いて、揺動可能として理想的な支持形態を、前記部品搭載フレーム部材5に固定されるインバータ6から、独立させて支持させることができる。
【0075】
しかも、上,下から、前記モータルーム2内に介挿するもののように、モータルーム2内で、三相交流ハーネス8の接続を行う必要が無く、予め結線作業を行うことが出来、この点においても、作業性が良好である。
【0076】
更に、前記ウエルドプレート28…及び、ウエルドナット29…は、螺合される各固定ボルト27…の緩みを防止すると共に、このウエルドナット29を介して伝達される前記部品搭載フレーム部材5の重量を、前記平板形状を呈するウエルドプレート28の面積で分散支持させることができる。
【0077】
従って、前記取付面部23の下方に、これらの複数の固定ボルト27…によって、前記部品搭載フレーム部材5を、吊り下げた状態で固定する構成としても、各端部11a…に加わる荷重を略均等に分散させることが出来、所望の取付剛性を容易に得られる。
【0078】
しかも、この各ウエルドプレート28…は、長尺板状を呈しているので、車幅方向に接触面積を増大させて、接着性を向上させることが容易である。
【0079】
更に、前記前側クロスメンバ11及び下側クロスメンバ12の車幅方向各端部11a…の裏面側の長手形状方向に沿わせて、長手方向を配置して固着されると共に、端部11aの端縁とこのウエルドプレート28の端縁を合わせることにより、更に、回転力が加わった際に脱落してしまう虞を減少させることが出来る。
【0080】
この実施の形態では、前記メンバブラケット部材20,20は、車幅方向左,右略対称位置となるように対向配置されていて、前記一対のサイドメンバ部材14の各内側面部14a及び上面部14bの二面に跨って、断面略L字状を呈して略直交する内側固着面部21及び上側固着面部22が、一体に形成されていることにより、これらの内側固着面部21及び上側固着面部22が、各々内側方及び上方の二方向からスポット溶接されて、前記一対のサイドメンバ部材14,14に、各前記メンバブラケット部材20,20が、固設されている。
【0081】
このため、溶接が可能な部分の面積が増大して、溶接点を多く設定出来、充分な結合強度を、スポット溶接で得られる。
【0082】
従って、別途締結手段が不要となり、前記サイドメンバ部材14のうち、前記メンバブラケット部材20の上側固着面部22が、スポット溶接によって、固設されている部分の周縁では、ボルト頭部やナット部材等の突起物が一切無く、前記サイドメンバ部材14の上面部14bの上面側から、上側固着面部22の板厚のみとして、略面一の平坦状とすることができる。
【0083】
よって、前記サイドメンバ部材14の上面部14bに沿わせて、ハーネス等を干渉させることなく、容易に配索出来る。
【0084】
更に、図3中二点鎖線に、また、図4中実線で示すように、前記サイドメンバ部材14の上面部14b及びメンバブラケット部材20の上側固着面部22を、連続して略面一の平坦状にすることが出来、電装品用バッテリ等の別の搭載部品の取付ブラケット脚部を、一部重複させる等して、固定することも容易に出来、レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0085】
また、この実施の形態の電気自動車のモータルーム構造では、取付面部23が、前記上側固着面部22に、ビード部26を介して、一体に設けられて、この上側固着面部22よりも、車両上下方向で一段低い位置に設けられる平板状の取付面23aと、この取付面23aの車両前後方向両側に位置して、この取付面23aと共に、車両前後方向断面形状を下方が開放された断面略コ字状を呈するように一体に形成されるガイド面25,25とを有している。
【0086】
これらのガイド面25,25の付根部25a,25aは、ビード部26を介することにより、一段低い背面側に、剛性を有する一対のサイドメンバ部材14,14が設けられている位置で、前記内側固着面部21に対して、内方から突き当てられる取付面23aと共に、下方を開放する縦断面略コ字形状を呈するままの突き当て形状で、各々前記内側固着面部21と一体となるように形成されている。
【0087】
このため、前記固定ボルト27から加わる車両上下方向の剪断力だけでなく、前記一対のサイドメンバ部材14を中心とする回転モーメント方向の荷重及び、前記部品搭載フレーム部材5の転び方向の荷重に対しても、充分な取付強度を得られる。
【0088】
更に、図3又は図8に示すように、ビード部26を介して、この上側固着面部22よりも、車両上下方向で一段低い位置に一体に設けられる平板状の取付面23aから、前記固定ボルト27の頭部が突設されているので、この頭部の上端面と、前記上側固着面部22との凹凸量を減少させることが出来る。
【0089】
従って、前記上側固着面部22に固定ボルト27を、設けるものや、或いは、上側固着面部22と略同一高さ方向位置に、前記取付面23aを有するものに比して、更に、容易に前記サイドメンバ部材14の上面部14bに沿わせて、又は、サイドメンバ部材14の屈曲する角部の延設される方向で、車両前後方向に沿わせて、ハーネス等を配索出来る。
【0090】
以上、図面を用いて、本発明の実施の形態の電気自動車のモータルーム構造を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0091】
即ち、前記実施の形態では、モータ3及びギヤユニット4が、前記部品搭載フレーム部材5及びサスペンションメンバ30と共に、予めサブアッセンブリされた状態で、車体1の下方から、前記モータルーム2内へ持ち上げられて、取付られる際、前記取付面23aの下面側に下方から、前記各端部11a…の上面部が、当接されて、反対側である上方から固定ボルト27を挿通するように構成されているが、特にこれに限らず、例えば、前記取付面23aの上面側に上方から、前記各端部11a…の下面部が、当接されて、反対側である下方から固定ボルトを挿通する等、取付面23a…側から、前記各端部11a…を固定するものであれば、側方又は斜め下方等、どのような方向から、前記端部11aを、取付面23aに当接させてもよい。
【0092】
更に、実施の形態では、部品搭載フレーム部材5の上側取付面部5a及び後側取付面部5bには、搭載部品として給電及び充電を行う強電部品としてのインバータ6及びDC/DCコンバータ7が、各々取り付けられているが、特にこれに限らず、例えば、制御回路ユニットやその他の電装部品であっても モータルーム2内に配置される搭載部品であれば、形状、数量、用途、材質及び取付位置が、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0093】
1 車体
2 モータルーム
5 部品搭載フレーム部材(支持フレーム部材)
6 インバータ(強電部品の一つ)
3 DC/DCコンバータ(強電部品の一つ)
14,14 一対のサイドメンバ部材(サイドメンバ部材)
14a,14a 内側面部
14b,14b 上側面部(平坦部分)
20 メンバブラケット部材
21 内側固着面部
22 上側固着面部
23,24 取付面部
23a 取付面
27 固定ボルト(固定部材)
28 ウエルドプレート
29 ウエルドナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の車幅方向両側に、車体前後方向に延在する一対のサイドメンバ部材と、
前記サイドメンバ部材のそれぞれに取付面を有して車幅方向内側に突設した一対のメンバブラケット部材と、
強電部品を支持する支持フレーム部材と、
前記サイドメンバ部材間の間隔より短い前記支持フレーム部材を前記メンバブラケット部材に当接して固定する固定部材と、
を備えることを特徴とする電気自動車のモータルーム構造。
【請求項2】
前記支持フレーム部材には、前記取付面への当接部位の裏面側に、前記固定に用いられる固定ボルトの締結力を分散させる板状のウエルドプレートを、該固定ボルトに螺合するウエルドナットと共に予め添着していることを特徴とする請求項1記載の電気自動車のモータルーム構造。
【請求項3】
前記サイドメンバ部材のうち、前記メンバブラケット部材が設けられる部分の上面側を、略平坦とすることを特徴とする請求項1又は2記載の電気自動車のモータルーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−20627(P2011−20627A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168969(P2009−168969)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】