説明

電気自動車

【課題】高出力密度バッテリと高エネルギ密度バッテリを有する電気自動車において、高エネルギ密度バッテリを走行に使用する機会が少ない状況にあっても高エネルギ密度バッテリの劣化を遅らせる。
【解決手段】電気自動車100は、外部電源から充電することのできる第1バッテリ12(高出力密度バッテリ)と第2バッテリ22(高エネルギ密度バッテリ)と、バッテリへの充電を制御するコントローラ8を備える。コントローラ8は、次の3ステップを実行する。即ち、外部電源を使った充電に先立って第2バッテリ22を使って第1バッテリ12を充電する電力移送ステップ。外部電源を使って第1バッテリ12を充電する第1バッテリ充電ステップ。外部電源を使って第2バッテリ22を充電する第2バッテリ充電ステップ。充電処理中に第2バッテリ22のSOCを下げることによって、第2バッテリ22の劣化を遅らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の電源を使って充電することのできるバッテリを備える電気自動車に関する。本明細書における「電気自動車」には、車輪駆動用の電動機(モータ)とエンジンを備えるとともに外部電源からバッテリを充電できるいわゆるプラグイン−ハイブリッド車も含まれる。
【背景技術】
【0002】
電気自動車にタイプの異なる2種類のバッテリを搭載することが提案されている(特許文献1−6)。一つは、内部抵抗が小さく、短時間ではあるが大きな電力(大きな電流)を供給することのできる高出力密度型のバッテリであり、他の一つは、内部抵抗が大きく、大きな電力(大きな電流)を供給することはできないがエネルギ密度が高い(電力容量が大きい)バッテリである。以下、前者を高出力密度バッテリと称し、後者を高エネルギ密度バッテリと称する。なお、特許文献5、6には、高出力密度バッテリとしてキャパシタ(コンデンサ)を利用することが開示されている。本明細書では、説明を簡単にするため、狭義の「バッテリ」と「キャパシタ」を含めて「バッテリ」と総称する。
【0003】
現在においては、高出力密度バッテリとしても高エネルギ密度バッテリとしても、リチウムイオンバッテリがよく採用される。同じリチウムイオンを使ったバッテリであっても、活物質の種類や活物質層の厚みなど、様々なパラメータを調整することにより高出力密度タイプにも高エネルギ密度タイプにも作ることができる。なお、バッテリの技術は急速に発展しつつあり、リチウムイオンバッテリに代わる高出力密度バッテリ/高エネルギ密度バッテリが登場する可能性もある。本明細書が開示する技術は、リチウムイオンバッテリに限定されないことに留意されたい。
【0004】
2種類のバッテリを搭載することで、トータルとして高出力高エネルギ密度の電源を確保することができる。典型的には、高出力密度バッテリを利用することで自動車の加速性能を向上させることができ、高エネルギ密度バッテリを利用することで航続距離を伸ばすことができる。しかしながら、高エネルギ密度バッテリは容量が小さい。そこで、特許文献1には、通常は高出力密度バッテリを使い、高出力密度バッテリのSOC(State Of Charge:充電状態)が低くなった場合には高エネルギ密度バッテリから一旦高出力密度バッテリへ電力を移送し、高出力密度バッテリからモータへ電力を供給する技法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−332023号公報
【特許文献2】特開2004−111242号公報
【特許文献3】特開2006−121874号公報
【特許文献4】特開2007−122882号公報
【特許文献5】特開2010−41847号公報
【特許文献6】特開2010−178432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、自動車の加速性能のためには高出力密度バッテリからモータへ電力を供給してやるのがよい。他方、日頃は、近所への買い物など、短距離しか自動車を使わないユーザも多い。そして、帰宅したら自動車が備える充電用電気プラグをコンセントに接続して充電を始めることが想定される。このように、日頃、短距離使用と充電を繰り返すと、高出力密度バッテリばかり使い、高エネルギ密度バッテリはSOCが高いまま維持されることが予想される。バッテリ、特に、高エネルギ密度バッテリは、SOCの高い状態が長期間続くと、劣化が進む。本明細書が開示する技術は、上記のごとく日頃に短距離使用が多く、高エネルギ密度バッテリを走行に使用する機会が少ない状況にあっても高エネルギ密度バッテリの劣化を遅らせる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する技術は、外部電源を繋いだ充電のときに着目する。通常の充電は、夜間3〜6時間かけて行われる。本明細書が開示する電気自動車は、充電の際、まず外部電源を使用した充電に先立って高エネルギ密度バッテリを使って高出力密度バッテリを充電し、満充電に足りない分はその後に外部電源を使って高出力密度バッテリを充電し、最後に、高エネルギ密度バッテリを充電する。充電のために外部電源を接続した際に上記のプロセスを経ることによって、高エネルギ密度バッテリのSOCを一旦下げるとともに、SOCが下がった状態をできるだけ確保し、劣化を遅らせる。仮に、一回の充電時間が3〜6時間であり、高エネルギ密度バッテリのSOCが下がった状態を2時間だけ確保できるだけであるとしても、数年間毎日充電を繰り返すと相当の時間SOCを下げることができるので、高エネルギ密度バッテリの劣化を相応に遅らせることができる。
【0008】
本明細書が開示する電気自動車の一態様は、外部電源を使って充電することのできる第1バッテリと第2バッテリと、第1バッテリと第2バッテリの充電を制御するコントローラを備える。第2バッテリは、第1バッテリよりも出力密度が低くエネルギ密度が高い。第1バッテリが前述の高出力密度バッテリに相当し第2バッテリが前述の高エネルギ密度バッテリに相当する。コントローラは、次の3ステップを実行する。即ち、外部電源を使った充電に先立って第2バッテリ(の電力)を使って第1バッテリを充電する電力移送ステップ。第1バッテリのSOCが第1バッテリ充電閾値を超えるまで外部電源を使って第1バッテリを充電する第1バッテリ充電ステップ。第2バッテリのSOCが第2バッテリ充電閾値を超えるまで外部電源を使って第2バッテリを充電する第2バッテリ充電ステップ。なお、電力移送ステップの後、第1バッテリのSOCが既に第1バッテリ充電閾値を上回っている場合には、第1バッテリ充電ステップをスキップしてもよい。
【0009】
発明者らの検討によると、SOCが高いほど劣化が進むが、ある程度SOCが低ければ、劣化の進行は遅くなる。そこで、コントローラは、前述の電力移送ステップにおいて、第2バッテリのSOCが予め定められた劣化予防閾値を下回るまで第1バッテリを充電するのがよい。劣化予防閾値は、バッテリの特性に基づいて予め定められる。また、劣化の進行は、バッテリの温度が高いほど早い。そこで、劣化予防閾値は、第2バッテリの温度が高いほど、低い値に設定されていることが好ましい。劣化予防閾値は、バッテリ温度変化に対して連続的に変化するものでなくともよく、ステップ状に変化するものであってよい。コントローラは少なくとも、第2バッテリの温度が第1温度より低い場合に既定の第1閾値を設定し、第2バッテリの温度が第1温度以上の場合には第1閾値よりも低い既定の第2閾値を設定する。
【0010】
第2バッテリのSOCが、第1バッテリを充電するのに十分でない場合には、電力移送ステップをスキップすることも好適である。即ち、コントローラは、第2バッテリのSOCが予め定められた残量下限値を下回っている場合、電力移送ステップをスキップしてもよい。残量下限値も、バッテリの特性に応じて予め定められる。当然ながら、残量下限値は、劣化予防閾値よりも小さい値である。
【0011】
また、第2バッテリは、昇圧コンバータを介して第1バッテリに接続されていることも好適である。なお、このことは、第2バッテリの出力電圧が第1バッテリの出力電圧よりも低いことを意味するが、他に利点がある。昇圧コンバータが介在するので、電流が逆流することがない。また、昇圧コンバータが、第2バッテリの、第1バッテリとの並列的な接続と切断を制御するスイッチの役割を兼ねることもできる。さらには、出力電圧の低い第2バッテリ(高エネルギ密度バッテリ)を採用することで、より長い時間出力し続けるバッテリを第2バッテリとして採用することができる。バッテリは、一般に、出力電圧が低いほど、容量を大きくすることができるからである。さらには、昇圧コンバータを介することで、第2バッテリを使って第1バッテリを充電する際、素早く、そして効率良く充電することができる。例えば、昇圧コンバータの出力電圧を第1バッテリの電圧よりもある程度高くすることによって、充電時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電気自動車の電力系のブロック図である。
【図2】バッテリの2タイプを説明する図である。
【図3】充電制御のフローチャート図である。
【図4】第2バッテリの温度に依存する劣化予防閾値のマップを示す。
【図5】充電時のSOC変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して実施例の電気自動車100を説明する。図1に、電気自動車100の電力系のブロック図を示す。なお、図1は、本発明に関係するモジュールのみを示しており、電気自動車が有する全てのモジュールを示してはいないことに留意されたい。
【0014】
電気自動車100は、モータ6によって走行する1モータの自動車である。電気自動車100は、2個のリチウムイオンバッテリ、即ち、第1バッテリ12と第2バッテリ22を備える。第1バッテリ12は、第2バッテリ22と比較すると、内部抵抗が小さく、短時間に大きな電流を供給することができる。第2バッテリ22は、第1バッテリ12ほどには大電流を供給できないが、長時間に亘り一定の電流を供給することができる。第1バッテリ12の容量は第2バッテリ22の半分程度である。
【0015】
第1バッテリ12が前述した高出力密度バッテリに相当し、第2バッテリ22が前述した高エネルギ密度バッテリに相当する。ここで、高出力密度バッテリと高エネルギ密度バッテリの相違について説明する。図2は、縦軸にバッテリ単位質量当たりの出力(W/kg)をとり、横軸にバッテリ単位質量当たりのエネルギ(Wh/kg)をとった座標軸である。この座標軸の右上の領域が理想的(高出力密度かつ高エネルギ密度)ではあるが、一般にバッテリ、特にリチウムイオンバッテリは、内部抵抗を小さくして出力を大きくすると(高出力密度にすると)、エネルギ密度が小さくなってしまい、逆に、エネルギ密度を大きくすると出力が小さくなってしまうという傾向がある。即ち、図2の座標系において左上から右下にかけての領域が、実現できるバッテリ特性となる。概ね、図2の左上の領域(符号「AREA1」が示す領域)が、高出力密度バッテリと呼ばれる領域であり、図2の右下の領域(符号「AREA2」が示す領域)が高エネルギ密度バッテリと呼ばれる領域である。左上と右下の中間の領域も実現可能ではあるが、中程度の出力密度と中程度のエネルギ密度を有する中途半端な特性となってしまう。なお、同じリチウムイオンを使うバッテリであっても、電極に用いる活物質の材質や厚みなどを変えることによって、高出力密度タイプにもなり得るし高エネルギ密度タイプにもなり得る。実施例の電気自動車100が有する第1バッテリ12は図2のAREA1が示す領域に属し、第2バッテリ22は図2のAREA2が示す領域に属する。概していえば、第2バッテリ22は、第1バッテリよりも出力密度(W/kg)が低く、しかしエネルギ密度(Wh/kg)が大きい。また、第2バッテリ22の出力電圧は第1バッテリ12の出力電圧よりも低い。具体的には、第1バッテリ12の出力電圧は300[V]程度であり、第2バッテリ22の出力電圧は150[V]程度である。
【0016】
図1に戻って電気自動車100の説明を続ける。第1バッテリ12の出力端子は、スイッチ13を介してインバータ5の入力端子に接続している。インバータ5は、第1バッテリ12の出力電力(直流)、あるいは、電圧コンバータ24を介して昇圧された第2バッテリ22(後述)の出力電力(直流)をモータ6の駆動に適した交流電力に変換する。モータ6は、車輪を駆動するためのモータである。なお、インバータ5内には、第1バッテリ12の出力電圧をモータ駆動に適した電圧まで昇圧する電圧コンバータが内蔵されている場合もある。
【0017】
電気自動車100は、外部の電源のコンセントに接続するためのプラグ2を備える。外部電源は、典型的には100[V]あるいは200[V]の商用交流電源である。プラグ2は、スイッチ3を介してACDCコンバータ4に接続されている。ACDCコンバータ4の出力端は、インバータ5の入力端に接続している。換言すると、ACDCコンバータ4の出力は、第1バッテリ12の出力端に並列に接続している。ACDCコンバータ4は、商用交流電力を、第1バッテリ12の充電に適した直流電力(電圧は300[V])に変換する。
【0018】
第2バッテリ22の出力端はスイッチ23を介して電圧コンバータ24に接続している。電圧コンバータ24の他端は、スイッチ13を介して第1バッテリ12と並列に接続している。換言すれば、電圧コンバータ24の他端は、ACDCコンバータ4の出力端にも並列に接続している。第2バッテリ22には、その温度Tpを計測する温度センサ25が取り付けられている。
【0019】
電圧コンバータ24は、直流電圧を変換する昇降圧コンバータであり、低圧側に第2バッテリ22が接続しており、高圧側に第1バッテリ12(インバータ5)が接続している。電圧コンバータ24は、第2バッテリ側からみると昇圧コンバータである。
【0020】
電気自動車100は、スイッチ3、13、23、ACDCコンバータ4、及び、電圧コンバータ24を制御するコントローラ8を備える。コントローラ8には、外部電力を供給するコンセントにプラグ2が接続されているか否かを示す信号PG、第1バッテリ12のSOC(SOC1)、第2バッテリ22のSOC(SOC2)、及び、第2バッテリ22の温度Tpが送られる。コントローラ8はそれらの情報に基づき、スイッチ3、13、23、ACDCコンバータ4、及び、電圧コンバータ24を制御する。図1に示す符号SW1、SW1、及び、SW3は夫々、スイッチ3、13、23を開閉する信号である。また、図1に示すCMDは、ACDCコンバータ4を制御する信号である。
【0021】
例えば、コントローラ8は、スイッチ3とスイッチ23を開放するとともにスイッチ13だけを閉じ、第1バッテリ12の電力をインバータ5に供給する。なお、その状態では、モータ6が発生する回生電力を第1バッテリ12に供給することもできる。即ち、回生電力によって第1バッテリ12を充電することができる。
【0022】
また、コントローラ8は、スイッチ3と13を開放し、スイッチ23を閉じ、電圧コンバータ24に昇圧動作を行わせると、第2バッテリ22の電力を昇圧してインバータ5に供給することができる。このとき、インバータ5を停止しスイッチ13を閉じると、第2バッテリ22に蓄積された電力を使って第1バッテリ12を充電することができる。
【0023】
コントローラ8は、さらに、プラグ2がコンセントに差し込まれた際、インバータ5を停止し、スイッチ23を開放するとともにスイッチ3、13を閉じ、ACDCコンバータ4を動作させると、外部電源を使って第1バッテリ12を充電することができる。スイッチ13を開放しスイッチ23を閉じ、電圧コンバータ24に降圧動作を行わせると、外部電源を使って第2バッテリ22を充電することができる。
【0024】
第1バッテリ12と第2バッテリ22の充電プロセスを説明する。コントローラ8が実行する充電処理のフローチャートを図3に示す。図3の処理は、プラグ2がコンセントに差し込まれ、ユーザがプラグ2に付属する充電開始スイッチを押したときにスタートする。図1における符号PGが示す信号が、充電開始を示す信号である。充電開始を示す信号PGは、プラグ2からコントローラ8へ送られる。なお、充電開始を示す信号PGが入力された時点ではスイッチ3は開放されており、外部電源は第1バッテリ12、第2バッテリ22のいずれとも接続されていない。
【0025】
コントローラ8は、まず、第2バッテリ22のSOC(SOC2)が残量下限値以上であるか否かをチェックする(S2)。残量下限値とは、SOC2がそれより低い場合には第1バッテリ12を充電するには電力が不足していることを表す限度である。第2バッテリ22のSOC(SOC2)が残量下限値を下回っている場合(S2:NO)、ステップS8の処理へ移行し、外部電源を使って第1バッテリ12を充電し(S8)、次いで外部電源を使って第2バッテリ22を充電する(S9)。このとき、コントローラ8は、ステップS6(電力移送ステップ)をスキップする。残量下限値には例えば40[%]が設定される。
【0026】
第2バッテリ22のSOC(SOC2)が残量下限値を上回っている場合(S2:YES)、コントローラ8は、第2バッテリ22の温度Tpに基づいて劣化予防閾値を特定する(S4)。劣化予防閾値とは、第2バッテリ22のSOC(SOC2)がその値を下回っていれば劣化の進行が遅くなる閾値である。劣化予防閾値は、温度に依存する。例えばコントローラ8は、図4に示すマップを記憶している。コントローラ8は、図4のマップに従い、第2バッテリ22の温度Tpが60[℃]以上の場合は劣化予防閾値に60[%]を設定し、温度Tpが60[℃]を下回っている場合には劣化予防閾値に70[%]を設定する。即ち、コントローラ8は、第2バッテリ22の温度が第1温度(実施例の場合60[℃])より低い場合に既定の第1閾値(実施例の場合は70[%])を設定し、第2バッテリ22の温度が第1温度以上の場合には第1閾値よりも低い既定の第2閾値(実施例の場合は60[%])を設定する。概していえば、コントローラ8は、第2バッテリ22の温度が高いほど、低い劣化予防閾値を設定する。温度に依存する劣化予防閾値の具体的な値は、バッテリの特性に依存して定められる。
【0027】
次にコントローラ8は、第2バッテリ22のSOC(SOC2)を劣化予防閾値と比較する(S5)。SOC2が劣化予防閾値を下回っている場合(S5:NO)、それ以上に第2バッテリ22のSOCを下げる必要はないので、ステップS6(電力移送ステップ)とS7をスキップし、ステップS8へ移行する。
【0028】
第2バッテリのSOC(SOC2)が劣化予防閾値を上回っている場合(S5:YES)、コントローラ8は、SOC2が劣化予防閾値を下回るまで第2バッテリ22の電力を使って第1バッテリ12を充電する(S6、S7)。このときコントローラ8は、前述したように、スイッチ13、23を閉じるとともに、電圧コンバータ24に昇圧動作を行わせる(図1参照)。なお、このとき、スイッチ3は開放したままであり、外部電源は遮断されている。
【0029】
第2バッテリ22のSOC(SOC2)が劣化予防閾値を下回ったら、コントローラ8は、スイッチ23を開放し(第2バッテリ22を切り離し)、スイッチ3を閉じるとともにACDCコンバータ4を動作させる。即ちコントローラ8は、第2バッテリ22を切り離すとともに、外部電源を使って第1バッテリ12を充電する(S8)。
【0030】
第1バッテリ12のSOC(SOC1)が充電閾値(例えば90[%])を超えたら、コントローラ8は、スイッチ13を開放し、スイッチ23を閉じるとともに、電圧コンバータ24に降圧動作を行わせる。即ちコントローラ8は、第1バッテリ12の充電を終了し、外部電源を使って第2バッテリ22を充電する(S9)。第2バッテリのSOC(SOC2)が充電閾値(例えば90[%])を超えたら、コントローラ8は、第2バッテリの充電も終了し、全ての充電処理を終了する。
【0031】
上記した充電処理によるSOCの変化の一例を図5に示す。充電処理開始時(時刻=0のとき)、第2バッテリ22のSOC(SOC2)は、劣化予防閾値Sthを上回っている。そこで、コントローラ8は、第2バッテリ22の電力を使って第1バッテリ12を充電する(図3のステップS5:YES、S6)。第2バッテリ22のSOC(SOC2)は低下していき、逆に第1バッテリ12のSOC(SOC1)は上昇する。第2バッテリ22のSOC(SOC2)が劣化予防閾値Sthを下回ったら、第2バッテリ22による第1バッテリ12の充電を終了する(図3のステップS7:YES、図5の時刻T1)。次いで、コントローラ8は、外部電源を使って第1バッテリ12を充電する。(図3のステップS8)。図5に示すように、第1バッテリ12のSOC(SOC1)は上昇する。第1バッテリ12の充電はSOC1が充電閾値Sfに達するまで続く(時刻T2)。外部電源によって第1バッテリ12が充電されている間(時刻T1からT2までの間)、第2バッテリ22のSOC(SOC2)は劣化予防閾値Sthを下回ったままである。第1バッテリ12の充電が終了すると、コントローラ8は、外部電源を使って第2バッテリ22を充電する(図3のステップS9、図5の時刻T2以降)。第2バッテリ22のSOC(SOC2)が充電閾値Sfに達したら充電処理を終了する(図5の時刻T3)。
【0032】
上記した充電処理の利点を説明する。図5に示すように、充電処理の間、第2バッテリ22のSOC(SOC2)は、期間TLの間、劣化予防閾値Sthを下回る。図5の例では、期間TLは、全充電時間(時刻0−時刻T3)の約半分である。全充電時間が4時間であるとすると、第2バッテリ22のSOC(SOC2)が劣化予防閾値Sthを下回っている期間TLは約2時間である。上記の充電処理によると、第2バッテリ22のSOCは、仮に昼間の走行中には劣化予防閾値を下回らないとしても、充電する毎に約2時間は劣化予防閾値を下回る。充電する毎に(繰り返し)2時間程度は劣化予防閾値を下回るので、第2バッテリ22の劣化を遅らせる効果がある。
【0033】
実施例に関する留意点を述べる。図3のステップS6の処理が電力移送ステップに相当し、ステップS8の処理が第1バッテリ充電ステップに相当し、ステップS9の処理が第2バッテリ充電ステップに相当する。また、図4のマップは一例である。劣化予防閾値は、第2バッテリの温度に応じて3段階や4段階に変更してもよい。
【0034】
「充電閾値」の値は、例えば、いわゆる満充電に相当するSOCの値でもよいし、満充電に相当するSOCよりも低い既定の値であってもよい。例えば「充電閾値」は、満充電に相当するSOCの90%の大きさに設定されてもよい。また、充電プロセスは、満充電のSOCよりも低い所定のSOCまで一端充電した後に、所定時間だけ待ち、その後に満充電のSOCまで充電する複数段階に分けた充電プロセスを採用してもよい。
【0035】
実施例の電気自動車100は1個のモータを有する単純な電気自動車であった。本明細書が開示する技術は、車輪駆動用のモータとエンジンを有するとともに、外部電源を使ってバッテリを充電することのできるいわゆるプラグインハイブリッド車に適用することもできる。
【0036】
実施例のバッテリ、特に、高出力密度型の第1バッテリとして、リチウムイオンバッテリなどのいわゆる狭義のバッテリに代えてキャパシタ(大容量コンデンサ)を用いてもよい。キャパシタも、一時的に電力を溜めるという点では狭義の「バッテリ」と同じ働きをするからである。
【0037】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
2:プラグ
3、13、23:スイッチ
4:ACDCコンバータ
5:インバータ
6:モータ
8:コントローラ
12:第1バッテリ(高出力密度バッテリ)
22:第2バッテリ(高エネルギ密度バッテリ)
24:電圧コンバータ
25:温度センサ
100:電気自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から充電することのできる第1バッテリと、
外部電源から充電することができ、第1バッテリよりも出力密度が低くエネルギ密度が高い第2バッテリと、
第1バッテリと第2バッテリへの充電を制御するコントローラと、
を備えており、コントローラは、
外部電源を使った充電に先立って第2バッテリを使って第1バッテリを充電する電力移送ステップと、
第1バッテリのSOCが第1バッテリ充電閾値を超えるまで外部電源を使って第1バッテリを充電する第1バッテリ充電ステップと;
第2バッテリのSOCが第2バッテリ充電閾値を超えるまで外部電源を使って第2バッテリを充電する第2バッテリ充電ステップと、
を実行することを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
コントローラは、前記電力移送ステップにおいて、第2バッテリのSOCが予め定められた劣化予防閾値を下回るまで第1バッテリを充電することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記劣化予防閾値は、第2バッテリの温度が高いほど、低い値に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
コントローラは、第2バッテリのSOCが予め定められた下限値を下回っている場合、前記電力移送ステップをスキップすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電気自動車。
【請求項5】
第2バッテリは、昇圧コンバータを介して第1バッテリと接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−59161(P2013−59161A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194932(P2011−194932)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】