説明

電気融着継手の製造方法

【課題】熱可塑性樹脂管の内周部に形成された凹溝に電熱線を嵌入した構造の電気融着継手において、保管環境下での温度変化で電熱線が凹溝から浮き上がることなく、かつプラスチック管との融着界面にボイドが生じないような電気融着継手の製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチック管が挿入される熱可塑性の樹脂管の内周面を切削しU字状凹溝2を形成する工程と、凹溝2の壁面を押圧し凹溝開口部の両側に舌状部を形成する工程と、凹溝2に電熱線3を装入する工程と、前記舌状部を押圧して電熱線3を凹溝2の奥に押付ける工程を有する電気融着継手の製造方法であり、凹溝2を、螺旋ピッチが小さい部分と大きい部分からなる螺旋形に形成し、凹溝2の幅を、電熱線3の直径と同じかわずかに狭い寸法に形成し、凹溝2の深さを、電熱線3の直径より深い寸法にして、螺旋ピッチが小さい凹溝部分を、螺旋ピッチが大きい凹溝部分よりも浅い寸法に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック管の接続に用いられる電気融着継手の製造方法に関し、熱可塑性樹脂管の内周部に形成された凹溝に電熱線を嵌入した構造の電気融着継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気融着継手は、通常射出成形法を用いて製造され、ポリエチレンやポリブテン等の熱可塑性樹脂からなる継手本体の内周部に電熱線が埋設されている。一方、例えば特許文献1に示すように、大口径の電気融着継手を中心にして、熱可塑性樹脂からなる管材の内面に沿って螺旋状に凹溝を切削加工で設け、この凹溝内に電熱線を嵌入した構造のものも提供されている。この構造の電気融着継手は、製造方法としては簡潔であるが、電熱線を溝から浮き上がらないように装着するという点に難しさがある。この電熱線の装着という課題に対して、特許文献1には、管材(スリーブ)の内壁面に対して傾斜した切込み溝を形成し、この時にフラップと称する切り起こし部を切込み溝の側方に片持ち構造になるように形成し、切込み溝とフラップの間に作られた空洞の中に電熱線を入れ、スリーブにマンドレルを挿入することによりフラップを内壁体内に押込んで電熱線を空洞の中に封じ込める、という手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平3−50157号公報(2ページ4段39行〜3ページ5段14行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気融着継手は、製造後すぐに使用されるとは限らず、保管されている間に大きな周囲温度変化を受ける場合がある。凹溝が形成される熱可塑性樹脂管材と電熱線とは熱膨張係数が大きく異なる(例えば、ポリエチレンは銅より熱膨張係数が10〜20倍大きい)ため、温度が上昇すると樹脂は大きく膨張するが電熱線の膨張はわずかであり、その後、温度が下がると樹脂は大きく縮むが、その時電熱線の一部が溝から浮き上がるように押出されることがある。電熱線が浮き上がってしまうと、配管作業時にプラスチック管を挿入する時に引っ掛かってしまうという問題が生じる。また、電熱線まわりに空洞が残っていると、プラスチック管を融着接合した時、融着界面にボイドが発生する可能性が高くなり、接合強度が低下するという問題もある。
【0005】
特許文献1に示す電気融着継手は、電熱線を切込み溝とフラップで作られた空洞に封じ込めるとされており、電熱線は浮き上がりの恐れは少ないと思われるが、電熱線周りには空隙が残っているものと考えられる。これは、特許文献1の図2、3に示されているが、フラップは切込み溝の側方に片持ち構造になるように形成されるので、この長さのフラップを得るために切込み溝は深く加工され、このため電熱線を切込み溝の底部まで確実に挿入することが難しく底部には空隙が残りやすいこと、また単にフラップをマンドレルで一定位置まで押し込んだだけでは、円形の電熱線に沿って空隙を埋めることは難しいからである。また、特許文献1には、マンドレル挿入時、電熱線に通電してフラップを溶かして電熱線を埋め込むようにすることも説明されているが、空洞がフラップで密封されている場合には、その後フラップを溶かしても空洞部の気体は完全には逃げだせず、ボイドとして残ってしまう可能性が高い。
【0006】
従って本発明は、熱可塑性樹脂管の内周部に形成された凹溝に電熱線を嵌入した構造の電気融着継手の製造方法において、保管環境下での温度変化で電熱線が凹溝から浮き上がることなく、かつプラスチック管との融着界面にボイドが生じないような電気融着継手の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気融着継手の製造方法は、プラスチック管が挿入される熱可塑性の樹脂管の内周面を切削しU字状凹溝を形成する工程と、凹溝の壁面を押圧し凹溝開口部の両側に舌状部を形成する工程と、凹溝に電熱線を装入する工程と、前記舌状部を押圧して電熱線を凹溝の奥に押付ける工程を有し、凹溝を、螺旋ピッチが小さい部分と大きい部分からなる螺旋形に形成し、凹溝の幅を、電熱線の直径と同じかわずかに狭い寸法に形成し、凹溝の深さを、電熱線の直径より深い寸法にして、螺旋ピッチが小さい凹溝部分を、螺旋ピッチが大きい凹溝部分よりも浅い寸法に形成することを特徴としている。
【0008】
また、前記本発明の電気融着継手の製造方法では、凹溝の幅を、電熱線の直径の0.95〜1.00倍に形成し、凹溝の深さを、螺旋ピッチが小さい凹溝部分では電熱線の直径の1.05〜1.2倍、螺旋ピッチが大きい凹溝部分では電熱線の直径の1.4〜1.7倍に形成することが好ましい。
【0009】
また、前記本発明の電気融着継手の製造方法では、舌状部の長さを、凹溝の幅の1/2以下に形成することが好ましい。
【0010】
また、前記本発明の電気融着継手の製造方法では、前記工程を経て、電熱線の両端に通電用端子を取り付けて通電することにより、螺旋ピッチが小さい凹溝部分に装入した電熱線を、舌状部を含む樹脂を溶融して凹溝内に埋め込み、他方、螺旋ピッチが大きい凹溝部分に装入した電熱線は、押圧された舌状部で凹溝内に押し込まれた状態にすることが好ましい。
【0011】
また、前記本発明の電気融着継手の製造方法では、電熱線を凹溝内に埋め込む際、樹脂管の内部に外径がプラスチック管の外径と同一寸法の成形冶具を装入し、冷却後の樹脂管の内径が所定寸法になるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、保管時の温度変動があっても配管作業に不都合となるほど電熱線は浮き上がらず、かつ融着領域における電熱線周りには空洞が存しないような電気融着継手の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の製造方法により作製した電気融着継手の概要示す縦断面図である。
【図2】本発明の製造方法により作製した電気融着継手の電熱線装着状況を示す断面図である。
【図3】本発明の電気融着継手の製造方法における凹溝形成、電熱線装着方法を示す断面図である。
【図4】本発明の電気融着継手の製造方法における深溝への電熱線装着方法を示す断面図である。
【図5】電気融着継手の冷熱サイクル試験の温度パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の製造方法により作製した電気融着継手を、2本のプラスチック管を直列に接続するための継手であるソケットを例にして説明する。
図1は本発明の製造方法により作製したソケット10の縦断面略図である。ソケット10は、例えばポリエチレンからなる熱可塑性樹脂のスリーブ1と、スリーブ1の内周面に螺旋状に形成されたU字状の凹溝2に装着された電熱線3と、スリーブ1の左右端に装着され電熱線3の両端部と接続されているコネクターピン4(4a、4b)を有している。スリーブ1の内周面5は、左方から挿入されたプラスチック管(図示せず)の表面を溶融して融着する左融着部6aと、右方から挿入されたプラスチック管(図示せず)の表面を溶融して融着する右融着部6bと、左融着部6aと左コネクターピン4aとの間の左巻端部7aと、右融着部6bと右コネクターピン4bとの間の右巻端部7bと、左融着部6aと右融着部6bとの間の渡り部8とに区分けされ、凹溝2は左巻端部7aから右巻端部7bまで連続して形成されており、この中に1本の連続した電熱線3が装着されている。
【0015】
図2は本ソケット10の特徴を表した図で、スリーブ1の内周面5に形成された凹溝2に電熱線3が装着されている状態を示している。図2(a)に示すように、電熱線3は、凹溝2の開口部の両側に形成された薄肉の舌状部11、12で押圧されて内周面5より下になるように覆われ、凹溝2の底部と密接するとともに側壁ともほぼ密接されるように装着されている。このように、電熱線3は、開口部の両面から舌状部11、12で押さえ込まれているので凹溝2から浮き出にくいとともに、スリーブ1の内周部にほとんど空隙なく埋め込まれているので、プラスチック管を融着接合した時のボイドの発生が防止できる。この場合、電熱線3は、舌状部11、12で電熱線3の頂部全面が覆い隠されていなくてもスリーブ1の内周面5より突き出していないので、プラスチック管は挿入時に電熱線3に接することなくスムースに行える。
【0016】
さらには、図2(b)に示すように、舌状部11、12を含む樹脂が溶融され、電熱線3周りに充填、被覆された状態になっていることが望ましい。これは、前記図2(a)の状態とした後、舌状部11、12及び凹溝壁面などが溶融される程度に電熱線3に通電することで実現できる。このように、電熱線3周りのスリーブ1内周部の樹脂を溶融して電熱線3を被覆し、スリーブ1内に埋め込んだ形態とした構造とすると、さらに確実に電熱線3の浮き上がりを防止できる。この時、前記図2(a)に示すように、電熱線3はスリーブ1の内周部にほとんど空隙が存することなく装着されているので、樹脂被覆後の電熱線3周りにも空隙は存しない。また、電熱線3への通電するときに、スリーブ1の内周部に、スリーブ1に接続されるプラスチック管の外径とほぼ同一の直径、すなわち内周部の直径よりわずかに小さな外径を有する円筒状又は円柱状の成形冶具を装着することで、電熱線3を覆う溶融膜の厚さを規定でき、内周面5が平滑な樹脂膜で内径寸法が所定値に収まったスリーブ1とすることができる。さらに、電熱線3は被覆されて露出しないので、異物が付着して通電時にショートを起こすこともない。
【0017】
なお、融着部6(6a、6b)は、スリーブ1とプラスチック管が融着する部分であり、ここに形成される凹溝26は多数の電熱線が巻かれるように小さなピッチの螺旋形とされるが、渡り部8及び巻端部7(7a、7b)は融着に直接係わる部分ではないため、ここに形成される凹溝27、28は1〜2回程度の巻数の大きなピッチの螺旋形とされる。このため、前述したように電熱線3に通電すると、融着部6の凹溝26では、電熱線周りの樹脂はよく溶融されるため図2(b)の装着状態を実現できるが、渡り部8及び巻端部7の凹溝27、28では、電熱線周りの樹脂は受ける熱量が少なく溶融されない可能性が高い。その場合、渡り部8及び巻端部7では、電熱線に通電しても図2(b)の形態の装着状態を得ることができない。このため、凹溝27、28は、舌状部11、12による機械的押さえ込みだけで確実に電熱線3が浮き出ないようにしなければならず、このためには凹溝26とは溝寸法を違えるようにするとよい。
【0018】
前述したように、本発明の製造方法により作製したスリーブ1は、凹溝2の開口部両側に舌状部11、12が形成されている。舌状部11、12は、図3をもとに後述するように、凹溝2の側壁を塑性加工して形成されるが、電熱線3を両側から押さえ込むだけの突出長さ、すなわち凹溝の幅の約1/2か少し短い程度でよく、舌状部が形成されるのに必要な側壁部の長さ、すなわち凹溝の深さは前記した特許文献1における溝より浅くてよい。この点で、融着部6に形成される凹溝26は、舌状部11、12で押圧された電熱線3が溝底まで確実に押し込まれるような寸法、具体的には電熱線3の直径dに対し、幅aは(0.95〜1.00)dの範囲の所定値、深さbは(1.05〜1.2)dの範囲の所定値で、底面が円弧状になるように加工されるとよい。
【0019】
これに対し、巻端部7に形成される凹溝27は、前述したように、舌状部11、12による機械的押さえ込みで電熱線が浮き出ないようにすることが求められるので、深さbは、凹溝26より深くなるように加工される方がよい。これは、深さbが深い凹溝では、舌状部はを長く形成することができ、電熱線3をしっかりと溝の深い位置まで押し込むことができるので、樹脂融着を行わなくても浮き出にくくすることができるからである。具体的には、電熱線3の直径dに対し、深さbを(1.4〜1.7)d程度にするとよい。なお、幅aを狭くすると、一旦押し込められた電熱線は出にくはなるが、押し込みにくもなってしまうので必ずしも幅aを狭くすることが有効とは限らず、凹溝26を加工した切削工具を換えることなく使用できるという点でも、同じ幅とするとよい。なお、保管時の温度変化で、たとえ電熱線3が凹溝2内で少し内周面5側に移動して底部に空洞が生じたとしても、巻端部7はプラスチック管の融着接合に係わる領域ではないため、内周面5より下に保持されている限り問題にはならない。
【0020】
渡り部8に形成される凹溝28についても、巻端部凹溝27と同様、溶融樹脂による被覆処理を適用することが難しいので、凹溝27と同様な寸法関係で加工することが望ましいが、融着部6の凹溝26と同様な寸法とすることもできる。これは、巻端部7がプラスチック管を挿入する時の通過領域であって、電熱線3が引っ掛かることが許されないのに対し、プラスチック管は必ずしも渡り部8まで挿入されるとは限らず、挿入されない場合は渡り部8で電熱線3が少し浮き上がっていても問題にならないからである。
【0021】
次に、本発明の電気融着継手の製造方法について、前記ソケット10の製造を例に説明するが、特に本発明の特徴であるスリーブ1の凹溝2の形成方法、電熱線3の装着方法について図3、4をもとに詳しく説明する。
まず、長さ及び内外径が所定の寸法に加工された熱可塑性樹脂のスリーブ1を準備し、その内周面5にU字状の凹溝2を螺旋状に切削加工で形成する。凹溝2は、基本的には、図3(a)に示すように、幅aを電熱線3の直径dと同じかわずかに小さい寸法に、深さbを電熱線の直径dより大きい寸法に、溝底部を電熱線の半径とほぼ同じ半径寸法の円弧形状になるように加工されるが、ピッチ及び溝深さなどは前述したように融着部6、巻端部7、渡り部8の各領域に合わせて適宜調整される。
【0022】
次に、図3(b)に示すように、押当て工具13を前記凹溝2の開口部から一方の側壁に押付けながら凹溝2に沿って移動させ、一方の側壁を変形させて内周面5から飛出したバリ状の舌状部11を形成する。次に、押当て工具13を、凹溝2の開口部から他方の側壁に押付けながら凹溝2に沿って移動させ他方の側壁を変形させて内周面5から飛出したバリ状の舌状部12を形成する。舌状部11、12は凹溝の幅aの約1/2の長さで、凹溝2の開口部側に少し傾くように形成されることが好ましく、押当て工具13の形状、側壁への押付け位置、押付け力などは適宜決められる。
【0023】
次に、凹溝2の全長にわたって電熱線3を装入する(図3(c))。電熱線3は、舌状部11、12を押し広げるようにして装入するとよいが、この時必ずしも凹溝の底部に達していなくてもよい。次に、図3(d)に示すように、スリーブ1の内周面を凹溝の幅より広い範囲を押圧できる押圧具、例えば凹溝ピッチ寸法程度の幅を持った広幅ローラ14を、舌状部11、12が開口部を塞ぐように押付けながら、凹溝2に沿って相対的に移動させる。これにより、電熱線3は舌状部11、12を介して溝底方向に押圧され、融着部6に形成された前述した溝深さの凹溝26においては、凹溝26に装入されている電熱線3は、側壁に密着した状態で凹溝26の底部に押付けられ、かつ上部は舌状部11、12で押し包まれるため、図2(a)で示すようにほとんど空隙は生じない。
【0024】
一方、巻端部7に形成される凹溝27においては、溝深さが凹溝26より深いため、電熱線3は凹溝27の底部まで達しない場合がある。このため、凹溝27に対しては、図4(a)に示すように、さらに先端幅が凹溝27の幅より狭い狭幅ローラ15を、舌状部11、12を溝に押込むように押付けながら、凹溝27に沿って相対的に移動させる。これにより、電熱線3は舌状部11、12を介して凹溝27の底部に達するまで押込められる。この時の電熱線3は、図4(b)に示すように、凹溝27の側壁に密着した状態で深目の溝底に押し込まれ、かつ上部は凹溝の中まで押込まれた舌状部11、12で強く押し包まれるので、保管時に周囲温度が変化しても、内周面にまで浮き上がることはない。渡り部8に形成される凹溝28に対しては、形成した凹溝28が前記凹溝27と同様な深さであれば、同様に狭幅ローラ15を作用させる。なお、上述した広幅ローラ14の押付け、及び狭幅ローラ15の押付け動作は、電熱線3を凹溝2に装入し終えてから行ってもよいし、装入しながら直ちに行うようにしてもよい。また、狭幅ローラ15は、凹溝26のような深さが浅めの溝に対しても作用させてもよく、広幅ローラ14と狭幅ローラ15を連ねた構造の押圧具を用いれば、電熱線3の押込み操作が一度で行えて能率的である。
【0025】
次いで、電熱線3の両端部が、スリーブ1の両端部に装着されたコネクターピン4(4a、4b)に接続された後、接続されるべきプラスチック管の外径とほぼ同一外径寸法のの成形冶具(図示せず)をスリーブ1に挿通し、コネクターピン4を通じて電熱線3に所定時間、所定電流を通電する。これにより、少なくとも電熱線3が密に装着された融着部6における凹溝26では、電熱線3周りの舌状部11、12および溝側壁面、底面などの樹脂が溶融され、マスク除去後は、図2(b)で示すように、電熱線3の周りは樹脂で満たされてスリーブ1と一体的になり、かつスリーブ1の内周面5はマスク外径で規定された所定寸法の樹脂面となる。このため、電熱線3保管時に浮き上がるようなことはない。また、通電前には、電熱線3と凹溝間、特に溝底部との間に空隙はほとんど存しないため、樹脂溶融時にボイドとして封じ込められるものはない。また、円周面5は円滑な樹脂面となるため、接続作業時に容易にプラスチック管を挿入することができる。
【0026】
[実施例]
前述した製造方法をもとに、内径が約110mmのポリエチレン製スリーブに直径0.65mmの電熱線を装着した呼称100Aのソケットを2種類製作し、融着部と巻端部における電熱線の浮き上がりと空隙残存状態を評価した。2種類のソケットは、サンプル1が通電処理をしたもの、サンプル2が通電処理をしないものという点で電熱線の装着方法が異なっている以外は、融着部及び巻端部における凹溝寸法、舌状部形成方法、舌状部押付け方法などは同じ仕様で、巻端部の舌状部押付けは広幅ローラと狭幅ローラを用いたという点でも同じである。評価は、図5に示す−10℃〜60℃の温度サイクルによる冷熱試験を5サイクル行い、各サイクル終了毎に電熱線の浮き上がり状態を目視観察し、5サイクル終了後にソケットを軸方向に切断し、切断面を写真撮影し電熱線周りの空隙の有無を目視観察した。表1に実験結果を示す。
【0027】
【表1】

【0028】
通電処理を行ったサンプル1において、融着部は電熱線が溶融樹脂で被覆されていたが、巻端部は樹脂の溶融は見られなかった。樹脂被覆がなされなかった舌状部による押圧だけの電熱線装着において、凹溝深さbが0.75mmでも条件によっては使用可能であるが、1.05mmと深くすることで信頼性が高まることがわかる。樹脂を溶融して被覆すれば、凹溝深さbが0.75mmでも全く問題はないことがわかる。空隙はいずれのものにも認められなかった。
【符号の説明】
【0029】
1…スリーブ、 2(26,27,28)…凹溝、 3…電熱線、
4…コネクターピン、 5…スリーブ内面、 6(6a,6b)…融着部、
7(7a,7b)…巻端部、 8…渡り部、 11、12…舌状部、
13…押当て工具、 14…広幅ローラ、 15…狭幅ローラ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック管が挿入される熱可塑性の樹脂管の内周面を切削しU字状凹溝を形成する工程と、凹溝の壁面を押圧し凹溝開口部の両側に舌状部を形成する工程と、凹溝に電熱線を装入する工程と、前記舌状部を押圧して電熱線を凹溝の奥に押付ける工程を有する電気融着継手の製造方法であって、
凹溝を、螺旋ピッチが小さい部分と大きい部分からなる螺旋形に形成し、凹溝の幅を、電熱線の直径と同じかわずかに狭い寸法に形成し、凹溝の深さを、電熱線の直径より深い寸法にして、螺旋ピッチが小さい凹溝部分を、螺旋ピッチが大きい凹溝部分よりも浅い寸法に形成することを特徴とする電気融着継手の製造方法。
【請求項2】
凹溝の幅を、電熱線の直径の0.95〜1.00倍に形成し、凹溝の深さを、螺旋ピッチが小さい凹溝部分では電熱線の直径の1.05〜1.2倍、螺旋ピッチが大きい凹溝部分では電熱線の直径の1.4〜1.7倍に形成することを特徴とする請求項1記載の電気融着継手の製造方法。
【請求項3】
舌状部の長さを、凹溝の幅の1/2以下に形成することを特徴とする請求項1または2記載の電気融着継手の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに示した工程を経て、電熱線の両端に通電用端子を取り付けて通電することにより、螺旋ピッチが小さい凹溝部分に装入した電熱線を、舌状部を含む樹脂を溶融して凹溝内に埋め込み、他方、螺旋ピッチが大きい凹溝部分に装入した電熱線は、押圧された舌状部で凹溝内に押し込まれた状態にすることを特徴とする電気融着継手の製造方法。
【請求項5】
電熱線を凹溝内に埋め込む際、樹脂管の内部に外径がプラスチック管の外径と同一寸法の成形冶具を装入し、冷却後の樹脂管の内径が所定寸法になるようにすることを特徴とする請求項4記載の電気融着継手の製造方法









【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−189216(P2012−189216A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−96545(P2012−96545)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【分割の表示】特願2007−150624(P2007−150624)の分割
【原出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】