説明

電気融着継手の製造方法

【課題】製造歩掛りを高め、接合作業の管理をインジケータによって確実に行える信頼性の高い電気融着継手を製造することが可能を可能にする電気融着継手の製造方法を提供する。
【解決手段】電熱線3を取り付けた内型と、凹所8及びインジケータ13を形成するための棒状のインジケータピンを備える外型とを型締めして形成した射出空間に溶融樹脂を射出し、凹所8及びインジケータ13を有する継手本体2を成形する。そして、このとき、インジケータピンの先端から外型に接続する後端側に向けて凹設され、溶融樹脂を充填してインジケータ13を形成するためのインジケータ形成用孔を、先端側が後端側よりも大径になるように形成しておき、段部14を境にして一端13a側に他端13b側よりも大径の大径部15を備えたインジケータ13を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気融着継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道管、ガス管等には、耐久性、耐食性、可撓性に優れる上、軽量で作業性(施工性)に優れることからポリエチレン管等の合成樹脂管が多用されている。また、この種の管材を接合するためのソケット、エルボ、チーズ、サドルなどの継手として、高価な工具を用いることなく簡便に接合作業を行うことができ、接合品質にばらつきがなく信頼性が高いなどの多くの利点を有することから、EF継手(電気融着継手)が多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
EF継手1は、例えば図1に示すように、ポリエチレン等の合成樹脂を用いて形成され、継手本体2の内周面2a側にニクロム線等の電熱線3をらせん状に埋設して形成されている。また、EF継手1は、継手本体2に外周面2bから径方向外側に突出する一対のターミナルピン4が設けられ、これらターミナルピン4に電熱線3の両端部をそれぞれ接続して形成されている。
【0004】
そして、EF継手1を用いて管材5、6同士を接合する際には、各管材5、6の端部を継手本体2に嵌合した状態で、一対のターミナルピン4にコントローラ(通電装置)のケーブルコネクタを取り付け、電熱線3に通電し発熱させる。この電熱線3の発熱により、継手本体2の内周面2a側と管材5、6の外周面側とがそれぞれ融着し、EF継手1を介して管材5、6同士を接合することができる。
【0005】
また、図1及び図5に示すように、EF継手1には、継手本体2の内周面2a側と管材5、6の外周面側が適正に融着したことを知らせるためのインジケータ7が設けられている。このインジケータ7は、棒状に形成され、一端7aを継手本体2の外周面2bから径方向に凹む凹所8の底面8aに接続し、凹所8内に収容した形で設けられている。
【0006】
インジケータには、電熱線の発熱により継手本体の内周面側と管材の外周面側が溶融するとともに、溶融した樹脂の膨張圧力が作用する。そして、インジケータは、継手本体の内周面側と管材の外周面側が適正に融着するために必要な膨張圧力が作用すると、凹所内から継手本体の径方向外側に隆起して押し出され、凹所から表出する。これにより、作業者がインジケータの表出を目視で確認しながら接合作業を行うことで、EF継手を用いて管材同士を確実且つ容易に接合することが可能になる。
【0007】
また、このようなEF継手を製造する際には、ポリエチレンやポリブテン等で絶縁被覆した電熱線を内型(コア金型)にらせん状に巻き付け、電熱線の端部にターミナルピンを接続する。次に、電熱線、ターミナルピンを取り付けた内型を所定のセット位置に搬送し、外型(キャビティ金型)を型締めする。このとき、外型には、インジケータ及び凹所を形成するためのインジケータピンが一体形成して、あるいは分離可能に取付けて設けられている。このインジケータピンは、棒状に形成され、先端から外型に接続する後端側に向けて軸線中心に凹むインジケータ形成用孔が形成されている。
【0008】
そして、内型と外型を型締めして形成した射出空間に溶融樹脂を射出し、溶融樹脂が冷却固化するとともに内型と外型を離型することにより、EF継手が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−141168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、図5(及び図1)に示すように、インジケータ7は、電熱線3から凹所8の底面8aまでの継手本体2の径方向の距離L1が近くなるほど、継手本体2の内周面2a側と管材5、6の外周面側が溶融した際に凹所8内から外側に隆起して押し出されやすくなる。このため、従来、電熱線3から凹所8の底面8aまでの距離L1を調整してEF継手1を製造することによって、継手本体2の内周面2a側と管材5、6の外周面側が適正に融着するとともにインジケータ7が凹所8から外側に隆起して表出するようにしている。
【0011】
しかしながら、電熱線3から凹所8の底面8aまでの距離L1を調整しても、例えば外気温や水の付着等の外的要因によって、インジケータ7が隆起し過ぎ、凹所8から溶融した樹脂が噴出する場合があった。また、溶融樹脂の噴出を防止するために電熱線3から凹所8の底面8aまでの距離L1を長くとると、継手本体2の内周面2a側と管材5、6の外周面側が適正に融着するために必要な膨張圧力が作用しているにもかかわらず、インジケータ7が十分に隆起しなくなる場合があり、バランスをとることが非常に難しい。
【0012】
一方、インジケータ7と凹所8の側面(壁面)8bの間の距離L2を大小調整することによっても、インジケータ7の隆起のしやすさを変化させることができる。
【0013】
しかしながら、図5及び図6(a)に示すように、インジケータ7と凹所8の側面8bの間の距離L2を大きくすると、インジケータ7が隆起して押し出されやすくなるが、凹所8の表面積が大きくなるため、凹所8の底面8a側の角部8c付近が膨張圧力の作用によって破れ、溶融樹脂の噴出が生じやすくなってしまう。また、インジケータ7と凹所8の側面8bの間の距離L2を大きくすることにより、外気温や水の付着等による外的要因の影響を受けやすくなってしまう。
【0014】
また、図5及び図6(b)に示すように、樹脂の噴出を防止するためにインジケータ7と凹所8の側面8bの間の距離L2を小さくすると、射出成形時にインジケータピン(インジケータ形成用の金型)が直ぐに熱くなり、この影響で、凹所8の側面8bの冷却が他の部分よりも遅くなる。これにより、所定の製造サイクルタイムが経過して(サイクルアUPして)内型、外型及びインジケータピンを離型した後に、凹所8の側面8bが膨らんでインジケータ7に溶着し、適正にインジケータ7を隆起させることができなくなるという不都合が生じる。このため、単にインジケータ7と凹所8の側面8bの間の距離L2を大小調整するだけでは、やはり、継手本体2の内周面2a側と管材5、6の外周面側が適正に融着するために必要な膨張圧力が作用するとともに、適正にインジケータ7が隆起して凹所8から表出するようにバランスをとることが難しい。
【0015】
さらに、この不都合を解消するために、凹所の側面が膨出しない状態に冷却されるまで待ってから内型、外型及びインジケータピンを離型することも考えられるが、この場合には、製造歩掛りの大幅な低下を招くことになる。
【0016】
また、外型と分離可能なインジケータピンを用い、インジケータピンを残して内型と外型を離型し、インジケータピンが付いた状態のEF継手を別所に搬送し、別所で凹所の側面が膨出しない状態に冷却された段階でインジケータピンを取り除くようにすることも考えられる。しかし、この場合には、成形した個々のEF継手の凹所が冷却するまでインジケータピンを転用できないため、インジケータピンを多数用意する必要が生じる。また、凹所の冷却後に小さな金型であるインジケータピンを別途取り除くことが必要になり、製造歩掛りの低下を招くとともに、ロボットによる製造自動化の支障になるという不都合が新たに生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0018】
請求項1記載の電気融着継手の製造方法は、筒状の継手本体と、前記継手本体に埋設された電熱線と、前記継手本体の外周面から内周面側に凹む凹所の底面に一端を接続して前記凹所内で突設された棒状のインジケータとを備える電気融着継手の製造方法であって、前記電熱線を取り付けた内型と、前記凹所及び前記インジケータを形成するための棒状のインジケータピンを備える外型とを型締めして形成した射出空間に溶融樹脂を射出し、前記凹所及び前記インジケータを有する前記継手本体を成形するとともに、前記インジケータピンの先端から前記外型に接続する後端側に向けて凹設され、前記溶融樹脂を充填して前記インジケータを形成するためのインジケータ形成用孔を、前記先端側が前記後端側よりも大径になるように形成しておき、段部を境にして前記一端側に他端側よりも大径の大径部を備えた前記インジケータを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の電気融着継手の製造方法においては、インジケータ形成用孔の先端側を大径にしてインジケータピンを形成しておくことで、凹所の底面に接続する一端側に大径部を備え、段部から他端側を大径部よりも小径にしてインジケータを形成することができる。このため、インジケータの一端側と凹所の側面の間の距離を大径部によって小さくすることができ、インジケータの段部より他端側と凹所の側面の間の距離を大きくすることができる。
【0020】
そして、インジケータの一端側と凹所の側面の間の距離が小さいことにより、この部分でインジケータが隆起し過ぎることを防止でき、インジケータが隆起するとともに樹脂が噴出することを防止できる。また、外気温や水の付着等による外的要因の影響を受けにくくすることができ、外的要因の影響を受けた場合であってもインジケータを安定して隆起させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気融着継手を示す断面図である。
【図2】図1のS部を示す図であるとともに、本発明の一実施形態に係る電気融着継手のインジケータ部(インジケータ、凹所)を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電気融着継手の製造方法において、内型、外型、インジケータピンを型締めした状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る電気融着継手と従来の電気融着継手の環境温度に対するインジケータの押出量を例示する図である。
【図5】図1のS部を示す図であるとともに、従来のインジケータ部(インジケータ、凹所)を示す断面図である。
【図6】従来のインジケータ部(インジケータ、凹所)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係るEF継手(電気融着継手)の製造方法について説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態のEF継手Aは、ソケットであり、ポリエチレン等の合成樹脂を用いて形成されている。また、このEF継手Aは、ニクロム線等の電熱線3を内周面2a側に埋設して形成された円筒状の継手本体2と、この継手本体2の軸線O1方向両端部側の外周面2bにそれぞれ設けられ、コントローラのケーブルコネクタを取り付けて電熱線3に電流を流すためのターミナル部10と、継手本体2の軸線O1方向両端部側の外周面2bにそれぞれ設けられ、EF継手Aを用いて管材5、6同士を接合する接合作業時に、継手本体2の内周面2a側と管部材5、6の外周面側が適正に融着したことを知らせるためのインジケータ部11とを備えている。
【0024】
ターミナル部10は、継手本体2の外周面2bから軸線O1直交方向の径方向外側に突設されたターミナルピン4と、ターミナルピン4を中心として、ターミナルピン4を囲繞するように継手本体2の外周面2bから軸線O1直交方向外側に突出するコネクタ取付部12とを備えて構成されている。また、コネクタ取付部12は、円筒状に形成され、ターミナルピン4と互いの中心軸線が同軸上に配されるように、継手本体2の外周面2bに一体形成されている。そして、各ターミナルピン4に電熱線3の端部が接続されている。
【0025】
図1及び図2に示すように、インジケータ部11は、継手本体2の外周面2bから軸線O1直交方向の径方向内側に凹設された凹所8と、凹所8の底面8aに一端13aを接続し、凹所8の側面8bに沿う軸線O1直交方向に、凹所8内に収容した形で突設された略円柱棒状のインジケータ13とを備えて構成されている。
【0026】
インジケータ13は、凹所8と互いの中心軸を同軸上に配して凹所8の中央に設けられている。さらに、本実施形態のインジケータ13は、一端13a(突出方向の基端)側に段部14が設けられ、段部14を境にして一端13a側が大径部15、他端13b(突出方向の先端)側が小径部16とされている。
【0027】
そして、インジケータ13は、一端13a側の大径部15が他端13b側の小径部16よりも大径で形成され、段部14によって大径部15と小径部16が接続されている。また、大径部15は、一端13aから段部14まで径を略一定にして形成されている。小径部16は、他端13bを凸曲面状にし、段部14から他端13b付近まで径を略一定にして形成されている。そして、本実施形態では、インジケータ13の大径部15と凹所8の側面(壁面)8bの間の距離(隙間)L3が例えば0.5mm以下となるように大径部15が形成されている。また、小径部16と凹所8の側面8bの間の距離(隙間)L4が例えば1.0mm以上となるように小径部16が形成されている。なお、大径部15は、一端13aから段部14に向かうに従い漸次その径が小となるように形成されていてもよい。
【0028】
上記構成からなるEF継手Aを製造する際には、図3(及び図1、図2)に示すように、略円柱棒状のコア金型である内型20の外周面20aにポリエチレンやポリブテン等で絶縁被覆した電熱線3をらせん状に巻き付け、電熱線3の両端部にそれぞれターミナルピン4を接続する。そして、電熱線3、ターミナルピン4を取り付けた内型20を内包するようにキャビティ金型である外型21を設置して型締めする。このように内型20と外型21の金型を型締めするとともに、EF継手Aの形状と同形同大の射出空間Hが形成される。
【0029】
このとき、外型21には、インジケータ部11の凹所8及びインジケータ13を形成するための金型である棒状のインジケータピン22が分離可能に取り付けて具備されている。なお、外型21には、コネクタ取付部12(ターミナル部10)を形成するための金型(不図示)も分離可能に設けられている。また、インジケータピン22やコネクタ取付部を形成するための金型は、外型21に一体形成されていてもよい。
【0030】
インジケータピン22は、図3に示すように、略円柱棒状に形成され、先端22aから外型21に接続する後端22b側に向けて軸線中心に凹むインジケータ形成用孔23を備えて形成されている。また、インジケータピン22は、インジケータ形成用孔23がインジケータ13と同形同大に形成され、先端22a側が後端22b側よりも大径になるように形成されている。また、インジケータ形成用孔23が形成された部分の外形が凹所8と同形同大で形成されている。さらに、インジケータピン22の後端22b側には、後端22bに開口し、インジケータ形成用孔23に連通する脱気用孔24が形成されている。
【0031】
そして、内型20と、インジケータピン22やコネクタ取付部を形成するための金型を設けた外型21を型締めして形成した射出空間Hに溶融樹脂を射出する。このとき、インジケータピン22のインジケータ形成用孔23に溶融樹脂が充填される。なお、射出成形時に、インジケータピン22の脱気用孔24に栓部材25を嵌合し、脱気用孔24の内面と栓部材25の外面の間を通じてインジケータ形成用孔23から空気が排気されることにより、インジケータ形成用孔23に溶融樹脂が充填される。
【0032】
次に、射出した溶融樹脂を所定のサイクルタイムで冷却した段階で(サイクルUPした段階で)、外型21と内型20を型開して成形品のEF継手Aを取り出す。このとき、インジケータピン22も外型21とともに離型する。
【0033】
ここで、インジケータピン22のインジケータ形成用孔23の内面と外面の間の肉厚、すなわち、インジケータ13と凹所8の側面8bの間の距離L4が小さくなり過ぎると、射出成形時にインジケータピン22が直ぐに熱くなり、凹所8の側面8bの冷却が他の部分よりも遅くなる。そして、この影響で、サイクルUPしても凹所8の側面8bが十分に冷却されず、離型後に、凹所8の側面8bが膨らんでインジケータ13に溶着するおそれがある(図6(b)参照)。
【0034】
これに対し、本実施形態では、図1から図3に示すように、インジケータピン22のインジケータ形成用孔23を、先端22a側が後端22b側よりも大径になるように形成しておくことで、インジケータ13が、一端13a側に大径部15を備え、大径部15と凹所8の側面8bの間の一端13a側の距離L3を小さく、段部14から他端13bまでの小径部16と凹所8の側面8bの間の距離L4を大きく確保して形成される。このため、射出成形時にインジケータピン22が直ぐに熱くなることが抑えられ、サイクルUPした状態で凹所8の側面8bが十分に冷却される。これにより、離型後に、凹所8の側面8bが膨出することはない。
【0035】
このため、凹所8の側面8nが膨出しない状態に冷却されるまで待ってから内型20、外型21(及びインジケータピン22)を離型する必要がない。また、インジケータピン22を残して内型20と外型21を離型し、インジケータピン22が付いた状態のEF継手Aを別所に搬送して冷却し、後からインジケータピン22を取り除くようにする必要もない。
【0036】
そして、上記のように製造したEF継手Aを用いて管材5、6同士を接合する際には、図1及び図2に示すように、各管材5、6の端部をEF継手Aの継手本体2の両端部側にそれぞれ嵌合する。次に、一対のターミナルピン4にコントローラのケーブルコネクタを取り付け、電熱線3に通電して発熱させる。この電熱線3の発熱により、継手本体2の内周面2a側と管材5、6の外周面側とがそれぞれ溶融し、溶融した樹脂の膨張圧力がインジケータ13に作用する。そして、適正に融着するために必要な膨張圧力が作用するとともに、インジケータ13が凹所8内から継手本体8の径方向外側に隆起し、凹所8から押し出されて表出する。
【0037】
このとき、インジケータ13の一端13a側と凹所8の側面8bの間の距離L3が大径部15によって小さくなっていることにより、インジケータ13が隆起し過ぎることが防止され、溶融した樹脂の噴出が生じることが防止される。また、図4に示されるように、従来と比較し、外気温や水の付着等(環境温度)による外的要因の影響が小さくなり、外的要因の影響を受けた場合であってもインジケータ13が安定して隆起することになる。
【0038】
また、インジケータ13の一端13a側と凹所8の側面8bの間の距離L3を大径部15によって小さくして樹脂の噴出を防止するようにした場合であっても、インジケータ13の段部14から他端13b側の小径部16と凹所8の側面8bの間の距離L4が大きく確保されている。これにより、適正に融着するために必要な膨張圧力が作用するとともに、確実にインジケータ13が凹所8内から継手本体2の径方向外側に隆起して凹所8から表出することになる。
【0039】
したがって、図2に示すように、本実施形態のEF継手Aの製造方法においては、インジケータ形成用孔23の先端22a側を大径にしてインジケータピン22を形成しておくことで、凹所8の底面8aに接続する一端13a側に大径部15を備え、段部14から他端13b側を大径部15よりも小径にしてインジケータ13を形成することができる。このため、インジケータ13の一端13a側と凹所8の側面8bの間の距離L3を大径部15によって小さくすることができ、インジケータ13の段部14より他端13b側と凹所8の側面8bの間の距離L4を大きくすることができる。
【0040】
そして、インジケータ13の一端13a側と凹所8の側面8bの間の距離L3が小さいことにより、この部分でインジケータ13が隆起し過ぎることを防止でき、インジケータ13が隆起するとともに樹脂が噴出することを防止できる。また、外気温や水の付着等による外的要因の影響を受けにくくすることができ、外的要因の影響を受けた場合であってもインジケータ13を安定して隆起させることが可能になる。
【0041】
また、インジケータ13の一端13a側と凹所8の側面8bの間の距離L3を大径部15によって小さくし、インジケータ13が隆起し過ぎて樹脂の噴出が生じることを防止するようにした場合であっても、インジケータ13の段部14から他端13b側と凹所8の側面8bの間の距離L4が大きく確保されていることにより、確実にインジケータ13を隆起させて凹所8から外側に表出させることが可能になる。
【0042】
さらに、図2及び図3に示すように、インジケータ13の段部14から他端13b側と凹所8の側面8bの間の距離L4が大きいことにより、射出成型時にインジケータピン22が直ぐに熱くなることを防止でき、凹所8の側面8bを効率的に冷却することができる。このため、所定の製造サイクルタイムで内型20、外型21(及びインジケータピン22)を離型しても凹所8の側面8bが膨出することを防止でき、製造歩掛りを向上させることが可能になるとともに、インジケータ13に凹所8の側面8bが溶着することがなく、好適にインジケータ13を形成することが可能になる。
【0043】
よって、本実施形態のEF継手Aの製造方法によれば、インジケータ13の大径部15の径寸法を調整して、インジケータ13の一端13b側と凹所8の側面8bの間の距離L3を調整したり、大径部15の中心軸方向の長さ(高さ)寸法を調整して、インジケータ13と凹所8の側面8bの間の距離L3が小さくなる領域を調整することで、比較的確実に且つ容易に、適正にインジケータ13が隆起して凹所8から表出するようにバランスをとることが可能になる。
【0044】
そして、外気温や水の付着等の外的要因の影響を小さく抑え、インジケータ13が隆起し過ぎて凹所8から溶融樹脂が噴出することを防止でき、凹所8の側面8bが膨出することを防止できるため、凹所8の側面8bが膨出しない状態に冷却されるまで待ってから内型20、外型21及びインジケータピン22を離型したり、インジケータピン22が付いた状態のEF継手Aを別所に搬送して冷却する必要がなく、製造歩掛りを高めて信頼性の高いEF継手Aを製造することが可能になる。また、ロボットによる製造自動化に対応することも可能になる。
【0045】
以上、本発明に係る電気融着継手の製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 従来のEF継手(電気融着継手)
2 継手本体
2a 内周面
2b 外周面
3 電熱線
4 ターミナルピン
5 管材
6 管材
7 従来のインジケータ
8 凹所
8a 底面
8b 側面(壁面)
8c 角部
10 ターミナル部
11 インジケータ部
12 コネクタ取付部
13 インジケータ
13a 一端
13b 他端
14 段部
15 大径部
16 小径部
20 内型
20a 外周面
21 外型
22 インジケータピン
23 インジケータ形成用孔
24 脱気用孔
25 栓部材
A EF継手(電気融着継手)
H 射出空間
O1 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の継手本体と、前記継手本体に埋設された電熱線と、前記継手本体の外周面から内周面側に凹む凹所の底面に一端を接続して前記凹所内で突設された棒状のインジケータとを備える電気融着継手の製造方法であって、
前記電熱線を取り付けた内型と、前記凹所及び前記インジケータを形成するための棒状のインジケータピンを備える外型とを型締めして形成した射出空間に溶融樹脂を射出し、前記凹所及び前記インジケータを有する前記継手本体を成形するとともに、
前記インジケータピンの先端から前記外型に接続する後端側に向けて凹設され、前記溶融樹脂を充填して前記インジケータを形成するためのインジケータ形成用孔を、前記先端側が前記後端側よりも大径になるように形成しておき、
段部を境にして前記一端側に他端側よりも大径の大径部を備えた前記インジケータを形成することを特徴とする電気融着継手の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−202492(P2012−202492A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67979(P2011−67979)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】