説明

電気補助ヒータ

【課題】経済的に製造するとともに、信頼性の高い、自動車の空気を加熱する補助ヒータを提供する。
【解決手段】電気補助ヒータは、発熱要素と、熱が伝導するように発熱要素に結合されている少なくとも1つの放熱要素とを備えている層構造であって、前記発熱要素が、PTC加熱素子と、PTC加熱素子に電力供給するためPTC加熱素子にその両側において接触している印刷導体34とを有する層構造と、この層構造と、補助ヒータを電源に接続するための接触突起片とを収容しているハウジングとを具備している。補助ヒータを改良する目的で、接触突起片が、選択される印刷導体に電気的に結合されるスタンピング加工された薄板金属片によって形成されていることを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブル部分の特徴を備えた電気補助ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
このような特性の補助ヒータは、例えば、特許文献1あるいは特許文献2から公知である。一般的には、PTC加熱素子に電力供給するための印刷導体は、薄板金属帯によって形成されており、このうち選択される薄板金属帯はハウジングの側面から突き出している。ハウジングは、通常では平坦なフレームとして形成されており、本質的には層構造の厚さを有する。この場合、フレームの側面においてその周縁部より突き出しているこれらの薄板金属帯は、電気補助ヒータを電源に接続するための接触突起片を形成している。このような接続は、接触突起片とそれに差し込まれる開ループまたは閉ループ制御要素との間にも生じうる。
【0003】
このタイプ、特に自動車において車内を暖めるための電気補助ヒータでは、比較的大きな電流が使用され、なぜなら、電気補助ヒータは2000ワット〜3000ワットの加熱出力を出さなければならないが、自動車の電気系統は通常では12ボルトで動作するためである。従って、コネクタ要素を接触させるために使用される接触突起片の表面は、確実に電流を伝えなければならない。しかしながら、印刷導体は、経済上の理由から、長い帯状材料から切断した後、切断後の印刷導体が外側の接触突起片となるのか、あるいはその端部がハウジングの内側に配置されるのかには関係なく、好ましくはさらなる加工処理なしにハウジングに挿入すべきである。
【特許文献1】欧州特許第0350528号明細書
【特許文献2】欧州特許第1564503号明細書
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、上述した互いに矛盾する要件、すなわち、経済的に製造できる一方で、電気補助ヒータへのプラグ接続が良好で信頼性が高いという要件が満たされる、電気補助ヒータを提供することである。
【0005】
この目的は、本発明によると、請求項1の特徴を有する電気補助ヒータによって解決される。本発明による電気補助ヒータにおいては、この技術分野における従来の方式との違いとして、接触突起片は、スタンピング加工された薄板金属片によって形成されており、この薄板金属片が、選択される印刷導体に電気的に結合される。言い換えれば、薄板金属帯(この技術分野における従来の方式では、ハウジングの側面から直接的に突き出して接触突起片を形成している)は、好ましくはその端部がハウジング内に位置しており、ハウジングから突き出す接触突起片が、個別のコンポーネント、すなわちスタンピング加工された薄板金属片から形成されており、この薄板金属片が、一般的にはハウジング内で印刷導体に電気的に結合されている。この場合、接触突起片および対応するプラグのできる限り単純な接続を促進する目的で、印刷導体と、スタンピング加工された薄板金属片とで、異なる材料厚さを選択することができ、PTC加熱素子に電力供給するための印刷導体として、比較的厚みのある薄板金属帯あるいは同様の部品を使用する必要がない。
【0006】
スタンピング加工された薄板金属片と、選択される印刷導体は、原理的にはさまざまな手法に従って結合することができる。これら2つのコンポーネントは、溶接またははんだ付けによって結合することが可能である。接着式結合も考えられる。
【0007】
好ましくは、薄板金属片および印刷導体(薄板金属帯の形状に形成されていることが特に好ましい)は、互いに平行に配置されており、それぞれ長手方向の一部が重なり合っており、この長手方向重なり部分では、スタンピング加工された薄板金属片が、対応する印刷導体に平行に延在して印刷導体に接触している。この場合、これら隣接するコンポーネントの高い信頼性の接触が達成されるように、長手方向重なり部分(overlapping longitudinal part)を選択すべきである。本発明の別の好ましい実施形態によると、薄板金属片は、少なくとも1つの、好ましくは多数の突起を有し、この突起は、薄板金属片をスタンピング加工することによって形成されていることが特に好ましい。あるいは、印刷導体を形成している薄板金属帯に適切な突起を設けることもできる。さらには、薄板金属帯と薄板金属片の両方に適切な突起を設けることもできる。これらの突起は、重なり合う長手方向領域において2つのコンポーネントを特定の様式で電気的に接触させるために使用される。薄板金属帯と接触突起片との間の電気的な接触は、これらの突起によってのみ生じるようにすべきである。このようにして、接触突起片から印刷導体への電流の伝達が、所定の様式で起こる。
【0008】
最も経済的な製造に関して、本発明のさらなる好ましい発展によると、印刷導体をばね要素によって接触突起片に結合することを提案する。このばね要素は、2つのコンポーネント(好ましくは、長手方向重なり部分を有する)の間の接触圧力によって、2つのコンポーネントの確実な接続を確立する。この場合、本発明のさらなる好ましい実施形態によると、ばね要素は、薄板金属片をハウジングに保持する目的にも使用することができる。この保持作用は、ばね要素とハウジングまたはハウジングパーツとの相互作用によって直接的に達成することができる。ばね要素は、例えば、薄板金属片を、(ハウジングの対応する壁の介在位置で)クランプし、従って薄板金属片をハウジングに対して固定することができる。あるいは、特にばね要素を収容する目的で形成されるばね要素をハウジング内に設けることもできる。このハウジングは、以下の説明ではばね受け部と称し、わずかな遊びが存在する状態でばね要素を保持するように形成されている。従って、このばね受け部には停止面が形成されており、ハウジング内に挿入されている接触突起片がハウジングに対して動こうとするとき、この動作が制限されるように、ばねがこの停止面に当たる。
【0009】
電気補助ヒータの組み立てを単純にするため、ハウジングは下側ハウジングを備えており、この下側ハウジングは、本質的に皿形状であり、層構造の周囲の少なくとも一部を保持しており、従って、層構造を下側ハウジング内に挿入することによって層構造を特定の編成に配置することができる。さらには、下側ハウジングは、ばね要素が取付け位置にあるときばね要素の輪郭と相互作用することによって、層構造の層が長手方向に動くことを本質的に阻止するように形成されている。従って、印刷導体の長手方向におけるばね要素の位置は、下側ハウジングとばね要素との相互作用によって本質的に決まる。特に、前述したばね受け部は、下側ハウジングに形成されている。
【0010】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、ばね要素は、ばねクランプの形状に形成されており、このばねクランプの、対向配置されているばね脚部は、ばね要素が取付け位置にあるとき印刷導体と薄板金属片とを間にクランプする。好ましくは、接触突起片のそれぞれに対して、対応するばねクランプが設けられており、印刷導体と薄板金属片は、ばねクランプのばね力のみによって接触している。
【0011】
印刷導体と薄板金属片とをクランプするばねクランプを固定するため、本発明のさらなる好ましい実施形態によると、薄板金属片もしくは印刷導体、またはその両方の両側に突起が形成されており、少なくとも一方のばね脚部が、薄板金属片または印刷導体に、2つの突起の間において接触していることを提案する。従って、これらの突起(好ましくは対向配置されている平行な列として設けることができる)は、隆起を形成しており、ばね脚部の接触基部は、薄板金属片または印刷導体上にこれらの隆起の間に位置しており、これらの突起は、ばねクランプが、印刷導体の長手方向に本質的に直角な方向にすべることを阻止している。この場合の想定として、好ましくは、ばねクランプには、対向配置されている凸状突出部が形成されており、これら凸状突出部は、薄板金属片または印刷導体と接触し、薄板金属片もしくは印刷導体、またはその両方に特定の距離に設けられている突起を超える。言い換えれば、凸状突出部を有するばね脚部は、薄板金属片または印刷導体における対向配置されている突起(好ましくはスタンピング加工によって形成されている)の間において、高い信頼性で接触するはずである。
【0012】
電気補助ヒータの個々の部品すべての単純な事前組み立てを促進する、本発明のさらなる好ましい実施形態によると、下側ハウジングにはばね受け部が形成されており、実際には、ばね受け部は、層構造の要素の挿入方向に開いているように形成されている。この好ましい実施形態においては、このばね受け部には、長手方向重なり部分も収容されている。この長手方向重なり部分は、本質的にばね受け部の長手方向長さに制限されていることが好ましい。
【0013】
電気補助ヒータのコンポーネントすべての組み立てを完了する前、具体的にはばねクランプを取り付ける前に、選択される印刷導体または薄板金属片を配置するため、層構造の層の長手方向に開いているスロットを有するばね受け部(薄板金属片もしくは印刷導体、またはその両方を収容するように好適に形成されている)を設けることが好ましい。この場合、スロットは、印刷導体、具体的には薄板部材が層構造の平面に平行に整列するような寸法を有することが好ましい。従って、印刷導体および薄板金属片の外側から挿入方向に押し込まれるばねクランプは、両方の部材をしっかりと把持し、これらを張力下に保持することができる。この目的のため、ばねクランプは、その前部領域に、2つのばね脚部によって形成されている、好ましくはわずかに漏斗形状の挿入開口を有する。
【0014】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、薄板金属片がハウジング内に侵入する最大深さは、少なくとも1つのスロットの形成によって制限されている。この場合、好ましくは、ばね受け部と層構造との間に設けられているスロットには、薄板金属片のための停止面が形成されており、この停止面は、薄板金属片が層構造の方向にそれ以上の深さに入ることを防止し、従って、接触突起片に衝撃圧力がかかった場合でも、接触突起片がハウジング内に押し込まれる(それにより短絡が起こりうる)ことがない。
【0015】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、薄板金属片の端部には、ハウジングよりも突き出す差し込みセクションが形成されている。このセクションは、接触突起片に差し込まれるプラグ要素の表面と接触するように特に適合化されている機能表面を有することを特徴としている。この機能表面は、形状が異なっており、特に、薄板金属片の長手方向重なり部分の領域の寸法とは異なっている。
【0016】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、薄板金属片は、層構造の層の長手方向における確実な固定によって、ハウジングに保持されている。これに関して、好ましくは、薄板金属片に、実際には、薄板金属片の差し込みセクションと長手方向重なり部分との間に、片側に開いている溝(groove which opens out)が設けられており、ハウジングに形成されている突起(わずかな遊び、場合によっては遊びなしに薄板金属片を保持する)が、この溝と係合する。
【0017】
さらなる好ましい実施形態によると、印刷導体の長手方向重なり部分は、その終端が溝の前である、すなわち、印刷導体が溝より外側には突き出さないことが好ましい。さらなる好ましい実施形態によると、溝と係合する突起が、ハウジングの周囲を囲んでいる縁部の一部であるならば、すなわち、突起が本質的にハウジングの外面に設けられているならば、印刷導体がハウジングの中に完全に収容され、薄板金属片のみがハウジングよりも突き出す。
【0018】
上側ハウジングは、通常では一種のカバーとして下側ハウジングの上に位置しているため、さらなる好ましい実施形態によると、ばねクランプをばね受け部の中に固定することに関して、ばねクランプの2枚のばね脚部を結合している中央部が、下側ハウジングに形成されているばね受け部の自由端部とほぼ同じ高さに配置されることをさらに提案する。このようにして、ばねクランプがばね受け部から押し出されることが防止される。ばねクランプは、押し出されようとするとき上側ハウジングに直接当たり、その所定の位置に維持される。
【0019】
ばねクランプの組み立てを容易にするため、下側ハウジングと上側ハウジングの明確な配置に関して、本発明のさらなる好ましい実施形態によると、複数の接触突起片が下側ハウジングの縁部より突き出すように複数の接触突起片を配置できるように、ばね受け部が形成されていることを提案する。この縁部は、通常ではハウジングの上面または下面(空気が通過する)に平行に位置しており、カバーが閉じているとき蓋状の上側ハウジングに接触する縁部である。言い換えれば、下側ハウジングの縁部は、ハウジングの周囲に延在している、ハウジング全体の縁部によって外側に画成されている。周囲に延在しているハウジング縁部は、ばね受け部が突き出している縁部に本質的に直角に延在している。従って、この実施形態においては、ばね受け部は上側ハウジングの方向に突き出している。
【0020】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、層構造の上側がばね受け部の自由端部とほぼ同じ高さにあることを提案する。この場合、組み立てが単純化され、ハウジングを製造するための材料費が穏当な範囲内に維持される。
【0021】
本発明のさらなる詳細および利点については、実施形態の以下の説明の中で図面を参照しながら記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、下側ハウジング4と上側ハウジング6とから構成されているハウジング2を備えた電気加熱装置の実施形態の斜視図を示している。ハウジングパーツ4,6の両方が一体に結合されて確実に固定されており、加熱ブロック8を収容している。加熱ブロック8は、互いに平行に層状に配置されているいくつかの発熱要素10および放熱要素12から構成されている。放熱要素12は、蛇行タイプの屈曲薄板金属片から波形リブ要素(corrugated rib element)として形成されている。
【0023】
5枚の接触突起片14(横方向に並んで配置されている)は、ハウジング2の側面から突き出している。これらの接触突起片は、カットされているスロット15においてハウジング2を貫いている。カットされているスロット15は、それぞれが1枚の接触突起片を収容しており、主として下側ハウジング4に形成されているが、一部分は上側ハウジング6の側面に形成されている。
【0024】
ハウジング2は、対向配置されている2つのフレーム開口を有し、図1には、上側ハウジング6に形成されているフレーム開口16のみが見えている。下側ハウジング4に形成されているフレーム開口は、図4に参照数字18として示してある。フレーム開口16,18のそれぞれには、何本かの支柱20が配置されている。これらの支柱20は、加熱ブロック8の層に直角に延びており、下側ハウジング4および上側ハウジング6における対向配置されている縦桁を互いに結合している。
【0025】
図2は、加熱ブロック8の詳細と、特に下側ハウジング4における収容とを示しており、上側ハウジングを取り外した状態で下側ハウジング4を平面図として示している。放熱要素12は、下側ハウジング4の側端部それぞれにおいて一部のみを示してある。従って、図2における図解は、下側ハウジング4に形成されているフレーム開口18を上から見ている。
【0026】
図から理解できるように、図示した実施形態は、4つの発熱要素10を備えており、発熱要素10のそれぞれは、側面において絶縁されており、下側ハウジング4の中で層構造(加熱ブロック8)の層を横切る方向にある程度動く状態で収容されている。下側ハウジング4は、そのための取付け要素受け部22(受け部24の方に開いている)を備えている。この受け部24は、本質的には下側ハウジング4に形成されており、加熱ブロック8を収容している。図示した実施形態においては、下側ハウジング4の側面のそれぞれに、2種類の取付け要素受け部22a,22bが設けられている(図3も参照)。取付け要素受け部22の幾何形状に対応して、発熱要素10は、その側端部に取付け要素26a,26bを備えており、取付け要素26a,26bのそれぞれは、取付け要素受け部22aまたは22bのうち正しく対応する受け部にのみ収まる。この場合、取付け要素受け部22と、対応して設けられている取付け要素26との間の遊びは、発熱要素10がハウジング2内で加熱ブロック8の層の長手方向を横切る方向にゼロコンマ数ミリメートルだけ動くことができる程度である。外側の取付け要素26aは、ハンマーヘッド状に形成されており、適切に形成されている取付け要素受け部22aと係合する。この取付け要素受け部22aは、中央に設けられている第2の取付け要素受け部22bよりも、発熱要素10の長手方向に実質的に短い。これら縦長の取付け要素受け部22bに割り当てられている取付け要素26bは棒状であり、ハンマーヘッド形状の取付け要素26aよりも幅が狭い。この特殊な設計によって、中央の発熱要素10は、加熱ブロックの発熱要素10に対する外側の位置には収まらない。同じように、外側の発熱要素を中央の加熱ブロックに配置する(すなわちハウジング2に挿入する)ことはできない。
【0027】
発熱要素10は、任意のランダムな場所においてハウジング2に挿入できないが、放熱波形リブ要素12はそれぞれ同じものとして作製されており、最初に、蛇行タイプの屈曲薄板金属片の縦長材として作製した後、その長い材料から所定の長さに切断する。個々の放熱要素12のそれぞれは、加熱ブロック8内の放熱要素のための任意の位置に挿入することができる。
【0028】
取付け要素26は、配置フレーム28に一体に形成されており、図6および図7に示してあり、以下ではこれらの図を参照しながらさらに詳しく説明する。配置フレーム28は、絶縁材料から構成されており、PTC加熱素子30を配置するために使用される。この場合、配置フレーム28には、個々のPTC加熱素子30のそれぞれに対する受け部32がカットされており、受け部32は、PTC加熱素子の周囲を保持する。一平面上に互いに隣接して配置されているPTC加熱素子30それぞれの両側には、薄板金属帯34,36が接触している。薄板金属帯34,36は、PTC加熱素子30に電力供給するための印刷導電体を形成しており、PTC加熱素子によって生成される熱は、この薄板金属帯34,36を介して熱伝導によって放熱要素12に伝わる。これらの放熱要素12は、薄板金属帯34,36の上に直接配置されている。
【0029】
配置フレーム28の側端部には、取付け要素の突起38が、薄板金属帯34,36の位置を超えて延在している。取付け要素の突起38の外側端部には、配置フレーム28の各取付け要素26が存在している。図6に示した線VII−VIIに沿った断面図(図7参照)に図解したように、各薄板金属帯34,36は、配置フレーム28の幅方向のほとんどを占めている。この断面図において、配置フレームは、薄板金属帯34,36の隣に保持突起40を有し、この保持突起40は、薄板金属帯34,36の側縁部に隣接して設けられており、上側においては対応する薄板金属帯34,36より突き出しており、外側においては薄板金属帯34,36と重なっており、好ましくは印刷導体34,36に接触している。図示した実施形態においては、保持突起40は、射出成形の過程において、最初、配置フレーム28の主方向に直角に延びている突出部として、単一部品として形成する。両側の突出部の間隔は、薄板金属帯34または36がこれら突出部の間にちょうど収まるように選択する。
【0030】
次いで、このように射出成形によって作製した一体型コンポーネントに、発熱要素10の主コンポーネントを取り付け、すなわち、PTC加熱素子30を対応する受け部32に挿入し、両面を薄板金属帯34,36によって囲む。その後、塑性変形により内側方向にくぼみを形成し、印刷導体34,36を完全に形成する。
【0031】
発熱要素10は、あらかじめ組み立てられるコンポーネントとして形成されており、従って、組立て時、配置フレーム28に挿入されている印刷導体34,36、さらにはPTC加熱素子30が失われる危険性なしに取り扱うことができる。しかしながら、指摘しておくべき点として、保持突起は、通常では、配置フレーム内に薄板金属帯34,36を固定するのみであり、動作時にPTC加熱素子30に高い信頼性で電力供給するのに十分な接触圧力がかかるように、薄板金属帯34,36とPTC加熱素子30とを接触させるようには機能しない。本発明の範囲の中で説明した実施形態においては、この接触は、いずれの場合にも、ハウジング2に挿入されているばね要素が、発熱要素10と放熱要素12とから構成されている層構造全体に張力を印加することによる。
【0032】
特に図3および図6から明らかであるように、薄板金属帯(すなわち、図6に示した薄板金属帯34)は、発熱要素10の平面の外側に曲げられている。結果として、薄板金属帯34とPTC加熱素子30とが接触している平面と、自由端部44(この薄板金属帯34の主セクションの反対方向にもう一度曲げられているため、このセクションに平行に延びている)との間にオフセット42が形成されている。図3に示したように、この自由端部44は、割り当てられている接触突起片14に圧着要素46によって機械的かつ電気的に結合されている。
【0033】
図3に参照数字10.3および10.4によって表してある上側の放熱要素は、上側薄板金属帯34から突き出しているオフセット42.3および42.4を有する。下側の発熱要素10.1は、下方に突き出しているオフセット42.1を有する。参照数字10.2によって表してある発熱要素10の薄板金属帯34,36は、両側に曲がっておりオフセット42.20,42.21を形成しており、それぞれに接触突起片14が設けられている。これらの違いにより、ハウジング2の中で発熱要素10.3および10.2の位置が入れ替わることを防止することができる。この場合、この実施形態では、接触突起片受け部48の設計のおかげで、中央の2つの発熱要素10.2および10.3を入れ替えて取り付けることができる。外側の発熱要素10.1および10.4の両方についても、入れ替えて取り付けることができる。
【0034】
図1を参照しながら前述したスロット15は、ハウジング2の外側から延びており、スロット15に対向するそれぞれの幅の広いばね受け部48に達している。このばね受け部48の後ろにはくびれスロット(constricted slot)50が形成されており、このスロット50は、パンチングによって成形されて接触突起片14を形成している薄板金属片120と、割り当てられている薄板金属帯34の自由端部44とを収容する。
【0035】
図8は、放熱要素10と薄板金属片120との結合を示している。これに関して、ばねクランプ46が設けられており、ばねクランプ46の、対向配置されているばね脚部47が、薄板金属片120と、薄板金属帯34の自由端部44とを間にクランプしている。これに関して、薄板金属帯34の自由端部と薄板金属片120のそれぞれは、長手方向重なり部分122(2つの要素120および44が互いに平行かつ隣接して配置されている)を備えている。図示した実施形態においては、薄板金属片120の長手方向重なり部分122には突起124が形成されており、自由端部44と薄板金属片120は、これら突起のみを通じて互いに電気的に接触している。従って、薄板金属片120の長手方向重なり部分122の平坦な領域は、薄板金属帯34の自由端部44から隔たって平行に延在している。
【0036】
特に図11および図12から明らかであるように、薄板金属片120は、互いに平行に延びている2列の突起124を備えている。これらの突起124は、2つの要素34,120の間の必要な所定の電気的接触が失われることなく、薄板金属片が任意の方向における薄板金属帯34の自由端部44と接触できるように、スタンピング加工によって薄板金属片120の両側に形成されている。対向配置されている溝126は、長手方向重なり部分122と、差し込みセクション140(薄板金属片120の前端部に形成されており、ハウジング2よりも突き出すセクション)との間にくぼみとして形成されている。
【0037】
薄板金属片120の前部の差し込みセクション140は、メスのプラグ要素(図示していない)を接触突起片14に容易に差し込むことができるように、端部が円錐状である。図11に示したように、長手方向重なり部分122は、差し込みセクション140よりも幅が広い。溝126より後ろの部分も途中まで幅が広く、従って、薄板金属片120には、プラグ要素のための停止面142が画成されている。
【0038】
図10に詳しく示してある、ばねクランプ46の形式のばね要素は、上述した2枚のばね脚部47(中央部134を介して結合されている)を備えている。ばね脚部47は、湾曲状の突出部130(対向配置されている凸状接触基部132を形成している)を有する。ばねクランプ46は、取付け位置にあるとき、これらの接触基部132を介して薄板金属帯34の自由端部44および薄板金属片120と相互作用する。取付け位置の状態にするには、ばねクランプ46を図8に示した位置に持っていき、図9に示した下側ハウジングの中に、層構造の挿入方向に押し込む。この挿入方向は、層構造の位置によって与えられる平面に平行である。この場合、大きな開口断面を有する挿入開口144は、最初、2つの部品134,120を収容する。挿入動作の進行に伴って、片側の凸状接触基部142が薄板金属片120に当たってすべり、反対側の凸状接触基部が薄板金属帯34の自由端部44に当たってすべり、ばねクランプ46が開いていく。凸状接触基部は、最終的に、第1の列の突起124を超えて、2列の突起124の間でこれらの部材を挟む。この挿入動作は、中央部134の内面が薄板金属片122または薄板金属帯34の側面に当たった時点で終了する。
【0039】
上述した組み立ては、発熱要素10と放熱要素12とから構成されている層構造を下側ハウジング4の中に挿入した時点で行う(図9を参照)。挿入した後、選択される薄板金属帯34(ハウジング2の中の加熱ブロックと接触している)の自由端部は、ばね受け部48の中で可動状態にある。この場合、自由端部44はスロット50を貫いているが、スロット15の手前に位置している。この時点で、薄板金属片120を層構造の挿入方向に各スロット15の中に配置し、実際には、下側ハウジングの周縁部に形成されている突起128が溝126と係合するように配置する。図9はこの状態を示している。下側ハウジング4に挿入された薄板金属片120は、図3に示したように、層構造の層の長手方向に、すなわち層構造の層の延在方向に、前方のスロット15を貫いて後方のスロット50の中に達している。次いで、ばねクランプ46を上からばね受け部48の中に押し込む。図(特に図3)から明らかであるように、下側ハウジング4は、ばねクランプ46がばね受け部48の中にわずかな遊びがある状態に固定されるように、形成されている。
【0040】
図5から明らかであるように、上側ハウジング6は、スロット15の高さにおけるくぼみ36を有し、このくぼみ36は、ばね受け部48の自由端部を収容することができる。上側ハウジング6の実施形態がこのような構造であるのは、ばね受け部48が、層構造を囲む縁部(例えば縦桁の内面63を含んでいる)よりも突き出しているためである。上側ハウジング6のくぼみ36は、層構造の層の延在方向に、くびれくぼみ(constricted recess)138につながっているが、上側ハウジングのフレーム開口16には達していない。直立した状態の薄板金属片120は、くびれくぼみの中に、側面が接した状態で収まっている。くびれくぼみ138の閉じた端部は、薄板金属片120のための停止面を形成している。
【0041】
前述した実施形態においては、薄板金属片120と薄板金属帯34との間の電気的接触は、ばねクランプ46のクランプ力のみによって生じる。このクランプ力はばね鋼によって発生し、この力によって薄板金属片120と薄板金属帯34との間の1000〜1500N/mmの範囲の圧縮圧力が生じる。ばねクランプ46に応力がかかっていないとき、凸状接触基部132の最小距離は、最大で、薄板金属片120と薄板金属帯34の合計厚さの40%である。
【0042】
薄板金属片120は、良好な電気導体である材料(例えば、銅/すず合金)から形成されている。薄板金属片120と薄板金属帯34との間、および、接触突起片14とそれに差し込むプラグ要素との間に、できる限り良好な接触を達成する目的で、少なくとも差し込みセクション140(好ましくは薄板金属片120全体)のそれぞれは、両面に銀のコーティングが施されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】電気加熱装置の実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示した実施形態における、加熱ブロックが取り付けられた状態の下側ハウジングの側面図である。
【図3】図2による図解を拡大した詳細である。
【図4】図1〜図3に示した実施形態の斜視図である。
【図5】図1による電気加熱装置の上側ハウジングの斜視図である。
【図6】図1による電気加熱装置の発熱要素の分解斜視図である。
【図7】組み立てた発熱要素の、図6の図解における線VII−VIIに沿っての断面図である。
【図8】接触突起片が結合されている状態の発熱要素の正面斜視図である。
【図9】上側ハウジングを取り付けていない状態における、図3にほぼ対応するハウジングの正面斜視図である。
【図10】図8に示したばね要素である。
【図11】接触突起片を形成している薄板金属片の実施形態の平面斜視図である。
【図12】図11に示した薄板金属片の実施形態の正面図である。
【符号の説明】
【0044】
2 ハウジング
4 下側ハウジング
6 上側ハウジング
8 加熱ブロック
10 発熱要素
12 放熱要素
14 接触突起片
15 スロット
16 フレーム開口(上側ハウジング)
18 フレーム開口(下側ハウジング)
20 支柱/第1の支柱
22 取付け要素受け部
24 加熱ブロックのための受け部
26 取付け要素
28 配置フレーム
30 PTC加熱素子
32 PTC加熱素子のための受け部
34 薄板金属帯
36 薄板金属帯
38 取付け要素の突起
40 保持突起
40.1〜40.5 保持突起の各セクション
41 通路
42 オフセット
43 第2の支柱
44 薄板金属帯34の自由端部
46 圧着要素
47 ばね脚部
48 接触突起片受け部
50 スロット
56 底部
62 スペーサ
63 縦桁の内面
64 縦桁
66 縦桁
68 ピンガイド
70 ピンガイド
72 ピンガイド
74 窓
76 ガイドピン
78 ガイドピン
80 ガイドピン
82 掛止突起
84 頭部
86 掛止面
88 カバー
90 くぼみ
92 さらなるガイドピン
94 さらなるピンガイド
L 縦セクション
120 薄板金属片
122 長手方向重なり部分
124 突起
126 溝
128 突起
130 凸状突出部
132 凸状接触基部
134 中央部
136 くぼみ
138 くびれくぼみ
140 差し込みセクション
142 停止面
144 挿入開口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を加熱する電気補助ヒータ、特に、自動車の補助ヒータであって、
発熱要素(10)と、熱が伝導するように発熱要素(10)に結合されている少なくとも1つの放熱要素(12)と、を備えている層構造(10,12)であって、前記発熱要素(10)が、少なくとも1つのPTC加熱素子(30)と、前記PTC加熱素子(30)に電力供給するため前記PTC加熱素子(30)にその両側において接触している印刷導体(34,36)と、を有する、前記層構造(10,12)と、
前記層構造(10,12)と、前記補助ヒータを電源に接続するための接触突起片(14)とを収容しているハウジング(2)と、
を具備し、
前記接触突起片(14)が、選択される印刷導体(34)に電気的に結合されるスタンピング加工された薄板金属片(120)、によって形成されている、
ことを特徴とする、電気補助ヒータ。
【請求項2】
前記選択される印刷導体(34)が、薄板金属帯(34)によって形成されており、
前記スタンピング加工された薄板金属片(120)と前記薄板金属帯(34)が、前記スタンピング加工された薄板金属片(120)が前記割り当てられている薄板金属帯(34)に接触する長手方向重なり部分(122)、を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気補助ヒータ。
【請求項3】
前記薄板金属片(120)もしくは前記印刷導体(34)、またはその両方に、前記長手方向重なり部分(122)に少なくとも1つの突起が設けられており、前記突起を介して、一般的に前記印刷導体(34)と前記接触突起片(14)との間の電気的な接触が生じる、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の電気補助ヒータ。
【請求項4】
前記印刷導体(34)が前記接触突起片(14)にばね要素(46)によって結合されている、
ことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の電気補助ヒータ。
【請求項5】
前記ばね要素(46)が前記薄板金属片(120)を前記ハウジング(2)に保持している、
ことを特徴とする、請求項4に記載の電気補助ヒータ。
【請求項6】
前記ハウジング(2)が、前記ばね要素(46)がわずかな遊びのみが存在する状態で保持されるばね受け部(48)、を形成している、
ことを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の電気補助ヒータ。
【請求項7】
前記ハウジング(2)が、前記層構造(10,12)の周囲の少なくとも一部を囲んでいる下側ハウジング(4)と、前記下側ハウジング(4)に結合することのできる上側ハウジング(6)と、を備えており、
前記下側ハウジング(4)および前記ばね要素(46)が、
前記印刷導体(34,36)の長手方向における、前記ばね要素(46)の取付け位置が、本質的に前記下側ハウジング(4)と前記ばね要素(46)との相互作用によって与えられる、
ように形成されている、
ことを特徴とする、請求項4から請求項6のいずれかに記載の電気補助ヒータ。
【請求項8】
前記ばね要素がばねクランプ(46)の形状に形成されており、前記ばね要素の、対向配置されているばね脚部(47)が、取付け位置において、前記印刷導体(34)と前記薄板金属片(120)とを自身の間にクランプする、
ことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに記載の電気補助ヒータ。
【請求項9】
前記薄板金属片(120)もしくは前記印刷導体(34)、またはその両方の両側に突起(124)が形成されており、
前記ばね脚部(47)の少なくとも一方が、前記薄板金属片(120)または前記印刷導体(34)に、少なくとも2つの突起の間において接触している、
ことを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれかに記載の電気補助ヒータ。
【請求項10】
前記下側ハウジング(4)が前記ばね受け部を形成しており、前記ばね受け部が前記層構造の前記層(10,12)の挿入方向に開いており、前記ばね受け部の中に前記長手方向重なり部分(122)が位置している、
ことを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれかに記載の電気補助ヒータ。
【請求項11】
前記ばね受け部(48)が、前記層構造の前記層(10,12)の長手方向に開口スロット(15,50)を有し、前記開口スロット(15,50)が、前記薄板金属片(120)もしくは前記印刷導体(34)、またはその両方を収容するうえで好適に形成されている、
ことを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれかに記載の電気補助ヒータ。
【請求項12】
前記薄板金属片(120)が前記ハウジング(2)内に侵入する最大深さが、前記スロット(15,50)の少なくとも一方の設計によって制限されている、
ことを特徴とする、請求項10に記載の電気補助ヒータ。
【請求項13】
前記薄板金属片(120)が、前記ハウジング(2)よりも突き出す差し込みセクション(140)を、その端部に形成しており、前記差し込みセクション(140)が、プラグ要素の接続面に対する特に適合化されている機能表面(142)を有する、
ことを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかに記載の電気補助ヒータ。
【請求項14】
前記薄板金属片(120)が、前記プラグ要素に差し込むための差し込みセクション(140)と、前記長手方向重なり部分(122)との間に、側面において開いている少なくとも1つの溝(126)を有し、前記溝(126)において、前記ハウジング(2)によって形成されている突起(124,128)が係合する、
ことを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれかに記載の電気補助ヒータ。
【請求項15】
前記印刷導体(34)の前記長手方向重なり部分(122)の端部が、前記溝(126)の前に位置している、
ことを特徴とする、請求項14に記載の電気補助ヒータ。
【請求項16】
前記突起(128)が、前記ハウジング(2)の周囲に延在している縁部の一部として形成されている、
ことを特徴とする、請求項14または請求項15に記載の電気補助ヒータ。
【請求項17】
複数の接触突起片(14)のための前記ばね受け部(48)が前記下側ハウジング(4)の縁部より突き出しており、前記縁部が、前記ハウジング(2)の周囲に延在している、前記ハウジング(2)の前記縁部を画成している、
ことを特徴とする、請求項1から請求項16のいずれかに記載の電気補助ヒータ。
【請求項18】
前記層構造(10,12)の上側が、前記ばね受け部(48)の自由端部とほぼ同じ高さに位置している、
ことを特徴とする、請求項1から請求項17のいずれかに記載の電気補助ヒータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−35247(P2009−35247A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−181636(P2008−181636)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(501324823)カテム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディットゲゼルシャフト (23)
【Fターム(参考)】