説明

電気計測プローブ用変位拡大機構および基板検査装置

【課題】荷重点である変位出力端側に応答特性に優れた拡大移動量を付与して電気計測プローブをZ軸方向に迅速に移動させることができる変位拡大機構および基板検査装置の提供。
【解決手段】基台部12と、力点として作用させる当接部25を備えて伸縮制御を自在に配設される伸縮体22と、該伸縮体22側からの押圧力を受けて変位出力端57側に対しZ軸方向への変位量を拡大して伝達すべく、基台部12を含む必要箇所に介在させた各支点部15を介して連結されるアーム体32とで変位拡大機構11を構成し、該変位拡大機構11を具備させることで基板検査装置を形成した。これにより、電気計測プローブPが取り付けられる変位出力端57側に対しては、アーム体32を介してZ軸方向での拡大された非線形の変位量を平行リンクを介して線形の変位量として出力することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気計測プローブをより安定した状態のもとで迅速に移動させることができる電気計測用プローブ用変位拡大機構および基板検査装置に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
図4は、基板検査装置の概略構成例を示す説明図であり、通常、基板検査装置101は、装置本体102側に位置固定された固定側アーム部103と、該固定側アーム部103の長さ方向に沿わせてX軸方向への移動を自在に配設される可動側アーム部104と、該可動側アーム部104の長さ方向に沿わせてY軸方への移動を自在に配設される移動体105とを少なくとも備えている。
【0003】
また、該移動体105には、介在片106を介して昇降機構107が配設されており、該昇降機構107側に電気計測プローブ108を取り付けてZ軸方向に移動させることで、装置本体102側に定置されている被検査基板109の所定の検査ポイントに電気計測プローブ108を接触させて必要な電気的な計測を行うことができるようになっている。
【0004】
図5および図6は、その際における電気計測プローブのためのZ軸方向への昇降機構の具体例を示す説明図であり、そのうちの図5に示す昇降機構111は、X−Y軸方向への移動を自在に配設されてその適宜位置に電気計測用プローブ(図示せず)が取り付けられるテーブル112と、モータ軸113に固定された一方のプーリー114と、従動回転が自在に軸支された他方のプーリー115と、これらのプーリー114,115相互間に掛け渡されたベルト116とで構成され、該ベルト116の一部を固定部117を介してテーブル112側に固定して該テーブル112を直動ガイド118に案内させながらベルト116の移動方向へと従動させることで、昇降させることができるようになっている。
【0005】
しかし、図5に示す昇降機構111は、その製造時における組み立て作業中にベルト116に好ましいテンションを付与してプーリー114,115相互間に掛け渡すのが難しいほか、次のような問題もあった。
(1)応答特性がよくない。
(2)立ち上がりが遅い。
(3)騒音が発生する。
(4)ベルト116とプーリー114,115との間で摩擦熱が生じる。
(5)1mmの移動に4ms程度の時間を要する。
【0006】
また、図6に示す昇降機構121は、X−Y軸方向への移動を自在に配設されたモータ122と、該モータ122のモータ軸123に連結されて従動回転するボールねじ124と、該ボールねじ124の回転により直動ガイド125に沿って進退移動するテーブル126とで構成され、該テーブル126側の適宜位置に電気計測プローブ(図示せず)を取り付けて使用されることになる。
【0007】
しかし、図6に示す昇降機構121には、次のような問題があった。
(1)装置が高価である。
(2)騒音が発生する。
(3)質量が大きいので、平面位置決めX−Y移動部も大きくなってしまう。(4)1mmの移動に4ms程度の時間を要する。
【0008】
一方、上記した問題点がなく図5や図6に示す昇降機構に代わり得るものとしては、たとえば下記特許文献1に開示されている変位拡大機構がある。
【特許文献1】特開2001−22445号公報
【0009】
図7は、上記特許文献1に開示されている変位拡大機構の一例を示す説明図である。図7(a)によれば、基端側がヒンジ3を介して固定台1に支持されたアーム5と、一端がアーム5先端側に接続され、かつ、他端が固定台1に接続されたバネ6と、該バネ6の弾力性に抗してアーム5の一部を押圧して、アーム5の先端側を所定の変位方向Yに沿って変位させることができる圧電体2とを備えている。この場合、アーム5は、圧電体2を伸縮動作させていない状態において、バネ6によって変位方向Yの手前側に向けて所定の角度θ1だけ傾けられた状態で維持されている。
【0010】
また、アーム5は、直交座標X−YのX軸方向に平行な水平軸Hに沿って突出しており、その先端側には、変位拡大機構の出力変位端5aが位置することになる。
【0011】
しかも、圧電体2は、直交座標X−YのY軸方向(変位方向Y)に沿って配置されており、その基端が固定台1に固定され、その先端はアーム5に取り付けられたピン4と連結されている。
【0012】
このため、図7に示す変位拡大機構によれば、圧電体2を図7(b)に示すようにY軸方向に伸ばすと、その伸張量に応じた押圧力がピン4を介してアーム5側に作用し、その結果、ヒンジ3を支点にしてアーム5の先端側を所定の変位方向Yに沿って変位させることができることになる。なお、圧電体2をY軸方向に縮めると、アーム5は、バネ6の弾性力により元の位置へと自動的に戻ることになる。
【0013】
したがって、図7に示す変位拡大機構による場合には、小型で、かつ、安定した状態のもとで、アーム5の先端側(荷重点)を高速に動作させることができることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、図7に示す変位拡大機構は、圧電体2の伸張量がアーム5の先端側(荷重点)の移動量に依存していることから、圧電体2の伸張量を小さくするとアーム5の先端側(荷重点)に必要とする移動量を付与することができない不都合があった。
【0015】
本発明は、従来技術の上記課題に鑑み、荷重点である変位出力端側に応答特性に優れた必要な移動量を付与して電気計測プローブをZ軸方向に迅速に移動させることができる電気計測プローブ用変位拡大機構及び基板検査装置を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものであり、そのうちの第1の発明(電気計測プローブ用変位拡大機構)は、X−Y軸方向への移動を自在に配設される移動体に取り付けられる基台部と、相手材に当接して力点として作用させる当接部をその自由端である変位端に備えて前記基台部側に伸縮制御を自在に配設される伸縮体と、該伸縮体の前記当接部からの押圧力を受けて変位出力端側に対しZ軸方向への変位量を拡大して伝達すべく、前記基台部を含む必要箇所に介在させた各支点部を介して連結される前記相手材としてのアーム体とで少なくとも構成され、電気計測プローブが取り付けられる前記変位出力端側へは、前記アーム体を介してZ軸方向での拡大された変位量の付与を自在とした電気計測プローブ用変位拡大機構において、前記アーム体は、上方に位置して前記伸縮体からの押圧力を受ける水平片部と、該水平片部の開放端側から前傾させた斜行片部とからなる前記変位入力側のアーム部と、その下方に位置させて該アーム部と支点部を介して連結され、かつ、その全体で平行リンクを形成して前記変位出力端を備える変位出力側のアーム部とで構成され、前記変位入力側のアーム部は、前記水平片部の長さ方向での一端側に介在させた支点部を介して前記基台部側と連結され、前記一端寄りの位置が伸縮体の前記当接部と当接し、荷重点である前記斜行片部の開放端側に介在させた支点部を介して前記変位出力側のアーム部の一端寄りと連結され、前記変位出力側のアーム部は、一端側に介在させた支点部を介して前記基台部側と連結され、他端側に介在させた支点部を介して略直進するZ軸方向での拡大された変位量の付与を自在とした前記変位出力端側への前記電気計測プローブの連結を自在に形成したことを最も主要な特徴とする。
【0017】
この場合、前記変位出力側のアーム部は、前記平行リンクを形成する上側アーム片部と下側アーム片部と縦側アーム片部とで構成され、前記斜行片部の開放端側に介在させた支点部を介して連結される前記上側アーム片部は、一端側に介在させた支点部を介して前記基台部と、他端側に介在させた支点部を介して前記縦側アーム片部の上端部とそれぞれが連結され、前記下側アーム片部は、一端側に介在させた支点部を介して前記基台部と、他端側に介在させた支点部を介して縦側アーム片部の下端部とそれぞれが連結され、該縦側アーム片部の前記下端部をその荷重点である前記変位出力端として前記電気計測プローブ側と連結させるようにすることもできる。
【0018】
また、この例においては、前記水平片部の長さ方向での一端側に介在させた支点部と前記斜行片部の開放端側に介在させた支点部とを、略同一の水平方向に位置させるのが望ましい。また、変位出力側の前記アーム部は、変位入力側の前記アーム部とは逆向きに配置することもできる。
【0019】
一方、第2の発明(基板検査装置)は、移動を自在に装置本体に配設される前記移動体に対し、請求項1ないし4のいずれかに記載の電気計測プローブ用変位拡大機構を具備させことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のうち、第1の発明によれば、伸縮体の当接部からの押圧力を受けてアーム体の電気計測プローブが取り付けられる荷重点としての変位出力端側に対し、Z軸方向での拡大された変位量を付与することができるので、該変位出力端側に連結される電気計測プローブに対し、好ましい応答特性のもとでZ軸方向へと移動させることができる。また、第1の発明によれば、機構の全体をコンパクト化することができるので、コストの低減を図ることができるばかりでなく、その重量を軽量化して所定方向への移動を高速化することで測定速度をより速くすることができる。
【0021】
特に、アーム体を構成している変位出力側のアーム部は、平行リンクにより形成されているので、Z軸方向への直進性をより高めて電気計測プローブを移動させることができる。
【0022】
一方、第2の発明によれば、装置本体が備える前記移動体に対し、請求項1ないし4のいずれかに記載の電気計測プローブ用変位拡大機構を具備させてあるので、その質量が小さいこともあって所定方向での平面位置決めを正確で安定したものとすることができる。また、電磁ノイズをなくすることで測定作業の高速化と安定化とを実現することができるほか、Z軸方向を位置決めした後に電気計測プローブ用変位拡大機構の変位出力端側に予圧をかけておくことができるので、Z軸側の整定性を高めて応答特性を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一例を示す概念図。
【図2】図1に示す一例についての第1変形例を示す概念図。
【図3】図1に示す一例についての第2変形例を示す概念図。
【図4】基板検査装置の概略構成例を示す説明図。
【図5】従来からある電気計測用プローブのZ軸方向への移動機構の一例を示す説明図。
【図6】従来からある電気計測用プローブのZ軸方向への移動機構の他例を示す説明図。
【図7】特許文献1に開示されている変位拡大機構の一例を示す説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、被検査基板を電気的に検査するために用いられる電気計測プローブを備える変位出力端側に対し、力点側から付与された変位量を拡大してZ軸方向に向けて出力することができる電気計測プローブ用変位拡大機構(第1の発明)と、該電気計測プローブ用変位拡大機構を備える基板検査装置(第2の発明)とに適用して実施することができる。
【0025】
このうち、第1の発明の基本構成につき、図1および図4を参酌しながらその概要を説明すれば、電気計測プローブ用変位拡大機構(以下、「変位拡大機構」と略称する。)11は、例えば図4に示されている装置本体2にX−Y軸方向への移動を自在に配設される移動体105への取付けが自在な基台部12と、相手材に当接して力点として作用させる当接部25をその自由端である変位端24に備えて伸縮制御を自在に配設される例えば圧電素子などからなる伸縮体22と、該伸縮体22の当接部25からの押圧力を受けて変位出力端57側に対しZ軸方向への変位量を拡大して伝達すべく、基台部12を含む必要箇所に介在させた各支点部15(15a〜15f)を介して連結される相手材としてのアーム体32とで少なくとも構成されている。
【0026】
この場合、複数のアーム部33からなるアーム体32は、伸縮体22からの押圧力を受ける変位入力側のアーム部44と、最終的にその変位出力端57側にZ軸方向への変位量が拡大して伝達される変位出力側のアーム部47とにより構成されている。そして、このような構成を具備させることにより、電気計測プローブPが取り付けられる荷重点としての変位出力端57側へは、アーム体32を介してZ軸方向での拡大された変位量の付与を自在とすることができるようになっている。
【0027】
図1は、第1の発明の一例を示す概念図であり、アーム体32は、上方に位置する水平片部45と、該水平片部45の開放端45a側から前傾させた斜行片部46とからなる変位入力側のアーム部44と、該アーム部44の下方に位置させてその全体で平行リンクを形成する変位出力側のアーム部47とで構成されている。
【0028】
このうち、変位入力側のアーム部44は、支点部15のうち、水平片部45の基端45b側に介在させた支点部15aを介して基台部12側と連結され、基端45b寄りの位置が伸縮体22の当接部25と当接し、荷重点である斜行片部46の開放端46a側に介在させた支点部15bを介して変位出力側のアーム部47側と連結されている。このため、変位入力側のアーム部44は、支点部15aを介してその長さ方向でのシーソ状の揺動が可能となっている。
【0029】
この場合、変位出力側のアーム部47は、平行リンクを形成する上側アーム片部48と下側アーム片部49と縦側アーム片部50とで構成されており、変位入力側のアーム部44における荷重点である斜行片部46の開放端46aと上側アーム片部48の基端48a寄りの位置との間に支点部15bが形成されることになる。
【0030】
すなわち、基端48a寄りに介在させた支点部15bを介して変位入力側のアーム部44側からの力点として連結される上側アーム片部48は、基端48aに介在させた支点部15cを介して基台部12側と、先端48bに介在させた支点部15dを介して縦側アーム片部50の上端部50a側とそれぞれが連結されている。
【0031】
また、上側アーム片部48と略平行に配置される下側アーム片部49は、基端49aに介在させた支点部15eを介して基台部12側と、先端49bに介在させた支点部15fを介して縦側アーム片部50の下端部50b側とそれぞれが連結されている。
【0032】
この例においては、変位出力端57である縦側アーム片部50の下端部50bに、縦側アーム片部50のZ軸方向への動きに従動させるべく電気計測プローブPが直付けされている。このため、該電気計測プローブPには、変位出力側のアーム部47が形成している平行リンクを介してZ軸方向への直進性が付与されることになる。
【0033】
図2は、図1に示す例の第1変形例を示す概念図であり、水平片部45の長さ方向での基端45b側に介在させた支点部15aと斜行片部46の開放端46a側に介在させた支点部15bとの位置を、図1に示す例とは異なり略同一の水平方向に位置させてあり、他の構成は図2に示す例と同様であり、その説明は省略する。
【0034】
図3は、図1に示す例の第2変形例を示す概念図であり、この例におけるアーム体32は、変位出力側のアーム部47が変位入力側のアーム部44とは逆向きとなるように配置することで形成されている点で相違するのみで、他の基本構成は図2に示す例と同様であり、その説明は省略する。
【0035】
次に、第2の発明に係る基板検査装置につき、上記構成からなる第1の発明の作用・効果とともに以下に説明すれば、図示しない基板検査装置は、例えば図4に示されているようにX−Y軸方向への移動を自在に装置本体102に配設される移動体105に対し、既述の変位拡大機構11を具備させることで、その全体が形成されている。
【0036】
すなわち、変位拡大機構11は、図4に示す装置本体102が備える移動体105に対し基台部12を介して取り付けた上で、移動体105を被検査基板109の検査ポイントの位置へとX−Y軸方向に移動させることで、所定の検査ポイントの位置に向けて位置決めさせることができる。
【0037】
この場合、変位拡大機構11は、その全体を軽量・コンパクト化することでその質量も小さなものとなっていることもあって、X−Y軸方向での平面位置決めを行う際に、移動体105自体を正確で安定した状態のもとで高速に移動させることができる。また、変位拡大機構11を搭載した基板検査装置は、モータを使用することなくZ軸方向へ駆動させることができる。このため、モータを使用する場合に発生する電磁ノイズからの影響をなくする処理(アナログ回路でのフィルタ処理やソフトでのフィルタ処理)を不要とすることで、測定作業の高速化と安定化とを実現することができるほか、Z軸方向を位置決めした後に電気計測プローブ用変位拡大機構11の変位出力端側に予圧をかけておくことができるので、Z軸側の整定性を高めて応答特性を向上させることもできる。
【0038】
ここで、変位拡大機構11の作用・効果をより詳しく説明すれば、変位拡大機構11は、その全体をコンパクト化してコストの低減を図ることができるばかりでなく、その重量を軽量化してX−Y軸方向への移動を高速化することで測定速度をより速くすることができる。
【0039】
また、アーム体32は、例えば圧電素子からなる伸縮体22に電圧を印加することで、その先端側に位置している変位端24を伸張させ、該変位端24が備える当接部25からの押圧力を受けて電気計測プローブPが取り付けられる荷重点としての変位出力端57側に対し、Z軸方向での拡大された変位量を付与することができる。
【0040】
このため、電気計測プローブPは、非線形要素が少なく、かつ、機械的な駆動源ではなく例えば電磁歪などの非機械的な動きをその駆動源としてZ軸方向に移動させることができることになる。つまり、電気計測プローブPの移動は、高い応答性のもとで例えば1mmの移動を1ms程度の時間で行うことができるので、図5および図6に示す従来機構に比較してその移動時間を1/4程度にまで短縮することができる。なお、電気計測プローブPの上昇は、伸縮体22の当接部25に付与される押圧力を逆に弱めてやる(その変位端24の位置を初期位置方向へと復帰させる)ことにより行うことができる。
【0041】
これを図2に示す第1の発明の一例に基づいてその作用・効果をさらに詳しく説明すれば、変位入力側のアーム部44は、水平片部45の基端45b側に介在させた支点部15aを介して基台部12側と連結され、水平片部45の基端45b寄りの位置が圧電素子などからなる伸縮体22の当接部25と当接する力点となり、荷重点である斜行片部46の開放端46a側に介在させた支点部15bを介して変位出力側のアーム部47側に連結されている。
【0042】
このため、伸縮体22に電圧を印加するなどして変位端24を伸張方向に変位させ、その当接部25を介して変位入力側のアーム部44の側を押し下げることにより、斜行片部46の開放端46a側は、拡大された変位量のもとで押し下げる方向での荷重点とすることで、変位出力側のアーム部47の力点として作用させることができる。
【0043】
すなわち、変位出力側のアーム部47は、平行リンクを形成する上側アーム片部48と下側アーム片部49と縦側アーム片部50とで構成されており、変位入力側のアーム部44の斜行片部46の開放端46aとは上側アーム片部48の基端48a寄りに介在させた支点部15bを介して連結されて、その力点となっている。
【0044】
したがって、変位出力側のアーム部44側が伸縮体22により押し下げられることにより、上側アーム片部48の先端348bと下側アーム片部49の先端49bとに連結されている縦側アーム片部50は、その平行リンク構造により降下する方向での線形の変位量が拡大された荷重点として機能することになる。
【0045】
このため、縦側アーム片部50の下端部50bに直付けされる電気計測プローブPに対しては、Z軸方向での拡大された線形の変位量を付与することができることになる。なお、図1に示す例においては、平行リンクを形成している変位出力側のアーム部47が直動システムを構成しているので、縦側アーム片部50の下端部50bに電気計測プローブPを直付けでき、実質的な等価質量を小さくして応答性の低下をより確実に防ぐすることができることになる。
【0046】
しかも、図1に示す例においては、変位入力側のアーム部44の斜行片部46の開放端46a側を介して変位出力側のアーム部44側を押圧し続けることで、電気計測プローブP側に反力を生じさせることができる。電気計測プローブPは、この状態のもとで伸縮体22の当接部25をさらに伸張させて変位入力側のアーム部44の側が押し込まれることで、その接触圧が高められて剛性を強化させることにより、そのプロービング動作を安定させることができることになる。
【0047】
次に、図1の第1変形例である図2に基づいて、その作用・効果を説明すれば、水平片部45の長さ方向での基端45b側に介在させた支点部15aと斜行片部46の開放端46a側に介在させた支点部15bとは、図1に示す例とは異なり略同一の水平方向に位置(高さが略一致)するように配置されている。
【0048】
このため、伸縮体22に電圧を印加するなどして変位端24を伸張方向に変位させ、その当接部25を介して変位入力側のアーム部44における水平片部45側を押し下げた際には、その荷重点である斜行片部46の開放端46a側の移動量(図1では左右方向)を少なくして、上下方向への移動量をそれだけ増大させることにより、変位出力端57に付与する変位量をそれだけ拡大させることができる。また、図1に示す例と同様に、電気計測プローブPのプロービング動作を安定させることもできる。
【0049】
次に、図1の第2変形例である図3に基づいて、その作用・効果を説明すれば、この例におけるアーム体32は、変位出力側のアーム部47が図1に示す一例とは異なり変位入力側のアーム部44とは逆向きとなるように配置されている。このため、変位入力側のアーム部44における水平片部45側を押し下げた際には、その荷重点である斜行片部46の開放端46a側の移動量と、変位出力側のアーム部44側が変位する際の移動量とを相殺して、変位出力端57に付与する変位量をより多く拡大させることができる。また、図1に示す例と同様に、電気計測プローブPのプロービング動作を安定させることもできる。
【0050】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その具体的な内容はこれに限定されるものではない。例えば、本発明に用いられる伸縮体22としては、圧電素子を好適に用いることができるものの、例えば磁歪素子や電動機を利用して伸縮制御できる構造を備えているものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
11 電気計測プローブ用変位拡大機構
12 基台部
15(15a〜15f)支点部
22 伸縮体
24 変位端
25 当接部
32アーム体
33 アーム部
44 変位入力側のアーム部
45 水平片部
45a 開放端
45b 基端
46 斜行片部
46a 開放端
47 変位出力側のアーム部
48 上側アーム片部
48a 基端
48b 先端
49 下側アーム片部
49a 基端
49b 先端
50 縦側アーム片部
50a 上端部
50b 下端部
57 変位出力端
P 電気計測プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X−Y軸方向への移動を自在に配設される移動体に取り付けられる基台部と、相手材に当接して力点として作用させる当接部をその自由端である変位端に備えて前記基台部側に伸縮制御を自在に配設される伸縮体と、該伸縮体の前記当接部からの押圧力を受けて変位出力端側に対しZ軸方向への変位量を拡大して伝達すべく、前記基台部を含む必要箇所に介在させた各支点部を介して連結される前記相手材としてのアーム体とで少なくとも構成され、電気計測プローブが取り付けられる前記変位出力端側へは、前記アーム体を介してZ軸方向での拡大された変位量の付与を自在とした電気計測プローブ用変位拡大機構において、
前記アーム体は、上方に位置して前記伸縮体からの押圧力を受ける水平片部と、該水平片部の開放端側から前傾させた斜行片部とからなる前記変位入力側のアーム部と、その下方に位置させて該アーム部と支点部を介して連結され、かつ、その全体で平行リンクを形成して前記変位出力端を備える変位出力側のアーム部とで構成され、
前記変位入力側のアーム部は、前記水平片部の長さ方向での一端側に介在させた支点部を介して前記基台部側と連結され、前記一端寄りの位置が伸縮体の前記当接部と当接し、荷重点である前記斜行片部の開放端側に介在させた支点部を介して前記変位出力側のアーム部の一端寄りと連結され、
前記変位出力側のアーム部は、一端側に介在させた支点部を介して前記基台部側と連結され、他端側に介在させた支点部を介して略直進するZ軸方向での拡大された変位量の付与を自在とした前記変位出力端側への前記電気計測プローブの連結を自在に形成したことを特徴とする電気計測プローブ用変位拡大機構。
【請求項2】
前記変位出力側のアーム部は、前記平行リンクを形成する上側アーム片部と下側アーム片部と縦側アーム片部とで構成され、
前記斜行片部の開放端側に介在させた支点部を介して連結される前記上側アーム片部は、一端側に介在させた支点部を介して前記基台部と、他端側に介在させた支点部を介して前記縦側アーム片部の上端部とそれぞれが連結され、前記下側アーム片部は、一端側に介在させた支点部を介して前記基台部と、他端側に介在させた支点部を介して縦側アーム片部の下端部とそれぞれが連結され、
該縦側アーム片部の前記下端部をその荷重点である前記変位出力端として前記電気計測プローブ側と連結させる請求項1に記載の電気計測プローブ用変位拡大機構。
【請求項3】
前記水平片部の長さ方向での一端側に介在させた支点部と前記斜行片部の開放端側に介在させた支点部とを、略同一の水平方向に位置させた請求項1または2に記載の電気計測用プローブのための変位拡大機構。
【請求項4】
前記変位出力側のアーム部は、前記変位入力側のアーム部とは逆向きに配置した請求項1ないし3のいずれかに記載の電気計測プローブ用変位拡大機構。
【請求項5】
装置本体に配設される前記移動体に対し、請求項1ないし4のいずれかに記載の電気計測プローブ用変位拡大機構を具備させたことを特徴とする基板検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−211927(P2012−211927A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173899(P2012−173899)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【分割の表示】特願2011−82680(P2011−82680)の分割
【原出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】