説明

電気車用電源装置

【課題】 省保守で冷却器の冷却能力を維持する電気車電源装置を提供する。
【解決手段】 インバータ部8の温度を検出する第一のサーミスタ17と、外気温を検出する第二のサーミスタ19から演算した温度差の平均値を算出する。また、負荷電流を検出する電流検出器18の検出値から算出した負荷電流の平均値に基づいて、インバータ部8に設置されるフィルタ15が正常に機能している場合の温度を算出する。温度差の平均値とフィルタ15が正常に機能している場合の温度の差分が、ある所定値以上である場合、フィルタ15が目詰まりをし、インバータ部8からの熱を吸収する冷却器14の冷却能力が低下したことを検知し、外部にアラームを出力することでメンテナンス時期を警告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気車用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気車用電源装置においては、架線から電力を受け取り、電気車に照明や空調装置などの電源を供給する。この電気車用電源装置は、IGBTなどの半導体のスイッチングデバイスを高周波でスイッチングして、直流電圧を交流電圧に変換する。
【0003】
このためスイッチングデバイスがスイッチング時に熱が発生するため、デバイスの破壊温度になる前に、冷却する必要がある。冷却する場合に、冷却効果を高める為に、風冷を行う場合がある。風冷の場合、デバイスが取り付けられている冷却部がフィン状になっている。このフィン部分にゴミが溜まって、冷却能力が低下しないように、風の取り込み口側にゴミを濾し取るためのフィルタが取り付けられるが、フィルタは、ゴミが溜まり、目詰まりを起こすことになる。実際の運用では、定期的にフィルタを掃除して、ゴミに拠る目詰まりを取り除いているが、汚れが激しい場合には、定期清掃前に目詰まりし、結果的にデバイスの温度保護などで、電源装置が停止してしまう場合もある。
【0004】
そのため、図6に示すようにフィルタ目詰まりを視覚的に確認できるエアフィルタ2を設置することで、確実なメンテナンスを実施するようにした発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−72045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のような冷却方式では、定期的にエアフィルタの確認をし、目詰まりの状態を監視する必要があった。そのため、フィルタ等の冷却器が増加すればするほど保守労力を増加するといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、保守労力を削減し、かつ冷却器の汚損状態を監視することができる電気車電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記を解決するために、本発明による電気車電源装置は、一端が架線電力を授受するパンタグラフと接続され、他端が前記架線電力を駆動力として駆動する負荷が接続された電気車電源装置において、電力変換を行うためのスイッチングデバイスを内蔵するインバータ部と、前記インバータ部内のスイッチングデバイスが電力変換の際に発生する熱を吸収する冷却手段と、前記インバータ部の温度を検出する第一の温度検出手段と、外気の温度を検出する第二の温度検出手段と、前記負荷への入力電流を検出する電流検出手段と、前記第一の温度検出手段と前記第二の温度検出手段の検出値の差分から算出される実際の温度上昇値と、前記電流検出器の検出値より算出される推定の温度上昇値に基づき、前記冷却器の冷却能力の低下を判断する制御部とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルタ等の目詰まりを防止し、かつ省保守化を実現することのできる電気車用電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態の回路構成図。
【図2】本発明の第1の実施形態の第一の目詰まり検知手段図。
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例の回路構成図。
【図4】本発明の第2の実施形態の回路構成図。
【図5】本発明の第2の実施形態の変形例の回路構成図。
【図6】従来の発明の電力変換装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
本実施形態の回路構成について説明する。図1は第1の実施形態の回路構成図である。図1は、架線1、パンタグラフ2、接触器3、直流フィルタリアクトル4、フィルタコンデンサ充電抵抗器5、フィルタコンデンサ充電抵抗器短絡スイッチ(CHS)6、直流フィルタコンデンサ7、インバータ部(主回路)8、交流リアクトル9、交流フィルタ10、変圧器11、電気車用電源装置(SIV)12、冷却器14、フィルタ15、風冷用ファン16、第一のサーミスタ17、電流検出器18、第二のサーミスタ19、制御部20で構成されている。
【0013】
また制御部20は、図2に示すように、第一の演算部41、第二の演算部42、第三の演算部43、第四の演算部44、比較論理部45、第一の平均演算部46、第二の平均演算部47で構成されている。
【0014】
(接続)
図1と図2に示すように、架線1とパンタグラフ2が接続され、パンタグラフ2は、接触器3、直流フィルタリアクトル4を介してフィルタコンデンサ充電抵抗器短絡スイッチ(CHS)6と接続される。フィルタコンデンサ充電抵抗器短絡スイッチ(CHS)6とフィルタコンデンサ充電抵抗器5は並列に接続され、フィルタコンデンサ充電抵抗器短絡スイッチ(CHS)6とインバータ部(主回路)8は直流フィルタコンデンサ7を介して接続される。インバータ部(主回路)8の交流出力側では、交流リアクトル9、交流フィルタ10、変圧器11、電流検出器18を介して負荷に接続される。インバータ部(主回路)8の内部には、第一のサーミスタ17が設置され、外部には冷却器14、フィルタ15、風冷用ファン16が設置される。制御部20は、第一のサーミスタ17、外部に設置される第二のサーミスタ19、電流検出器18、外部の表示装置に接続されている。
【0015】
制御部20の第一の演算部41は、第一のサーミスタ17と外部に設置される第二のサーミスタ19と接続される。第一の演算部41は、第一の平均演算部46と接続される。電流検出器18と第二の平均演算部47を介して接続される第二の演算部42と、第一の平均演算部46は、第三の演算部43と接続される。第三の演算部43と第四の演算部44は比較論理部45と接続される。比較論理部45は外部と接続される。
【0016】
(基本動作)
このように各装置が接続された電気車用電源装置(SIV)12は、架線1からパンタグラフ2、接触器3、直流フィルタリアクトル4、フィルタコンデンサ充電抵抗器5、フィルタコンデンサ充電抵抗器短絡スイッチ(CHS)6、直流フィルタコンデンサ7を介してインバータ部(主回路)8へ架線電力を供給される。インバータ部8に供給された架線電力は、インバータ部8に内臓されたスイッチングデバイスのスイッチング動作によって3相の交流電力に変換される。交流電力は、電圧交流リアクトル9、交流フィルタ10を通過することによって整流され、さらに変圧器11によって降下され、負荷へと供給される。この一連の負荷への電力供給の際に、インバータ部8ではスイッチングロスによって熱が生じる。その熱は、インバータ部8に隣接して設置されている冷却器14へと伝導される。インバータ部8からの熱を吸収する冷却器14は、フィルタ15を通して伝わる風冷用ファン16からの送風を受け、冷却される。
【0017】
(発明作用)
上記のような冷却の際に、フィルタ15が塵、ホコリ等で目詰まりを起こすと、冷却器14の冷却能力が低下するため、制御部20では、インバータ部8に設置される第一のサーミスタ17、変圧器11と負荷の間に設置される電流検出器18及び、電気車用電源装置12の外部に設置される第二のサーミスタ19からの検出値に基づいてフィルタ目詰まりを検知する第一の目詰まり検知手段を有している。
【0018】
第一の目詰まり検知手段ついて、図2の第1の実施形態の第一の目詰まり検知手段図を用いて説明する。図2に示すように、第一の演算部41は、第一のサーミスタ17が検出するインバータ部8の温度と、第二のサーミスタ19が検出する外気温度を入力とし、2つの温度の差分から実際の温度上昇値(T)を算出する。第一の平均演算部46は、第一の演算部41で算出された実際の温度上昇値(T)を入力とし、所定の時間ごとに温度上昇値(T)検出し、その検出した温度上昇値(T)の平均値である実際の温度上昇平均値(T´)を算出する。
【0019】
第二の演算部42は、電流検出器18が検出する負荷電流値(I)を用いて第二の平均演算部47が、所定の時間ごとに負荷電流値(I)を検出し、その検出した負荷電流値(I)の平均値である負荷電流平均値(I´)を入力とする。第二の演算部42は、フィルタ15に汚損がなく冷却器14が正常に機能している状態であると設定したときに、算出された負荷電流平均地(I´)に対応する推定の温度上昇平均値(t´)をデータとしてあらかじめ所有している。
【0020】
第三の演算部43は、実際の温度上昇平均値(T´)と設定の推定の温度上昇平均値(t´)の差分である、乖離温度上昇値(Tt=T´―t´)算出する。比較論理部45は、第乖離温度上昇値(Tt)と第四の演算部44が所有する基準値(α)を入力とし、2つの値を比較する。第四の演算部44で算出される基準値(α)は、例えば、乖離温度上昇値(Tt)が基準値(α)以上になった場合は、フィルタ15の状態が悪化し、冷却器14の冷却能力が低下したため、実際の温度上昇値(T)が外気温と比較して非常に高くなっている状態を検知できるような値である。つまり、乖離温度上昇値(Tt)>基準値(α)となった場合は、外部の表示装置等へアラームを出力し、フィルタ15の目詰まり等による汚損を警告する。また、乖離温度上昇値(Tt)≦基準値(α)となった場合は、フィルタ15は正常な状態で冷却器14は正常に機能しているとしてアラームを出力しない。
【0021】
(効果)
このような構成の電気車用電源装置12は、周囲温度に対する冷却器14の温度上昇値を算出し、その算出結果をもとに冷却器14の状態をアラームとして外部へ警告することが可能である。アラーム警告の出力判断として温度上昇値を使用することで、負荷電流値の変化による素子温度の変化に影響されることなく、フィルタの汚損状態を把握することができる。そのため、フィルタ15に必要なメンテナンスの時期を的確に検知し、過剰な保守労力を投入することなく、フィルタ15の汚損を防止し、冷却器14の冷却能力を維持することが可能となる。
【0022】
また、図3は第1の実施形態のフィルタ15及び、風冷用ファン16が削除されている構成を示している。図2のような構成の電気車用電源装置12は、図2と図3と同様の第一の冷却システムの作用により。冷却器14内の冷媒や、冷却器14の破損により冷却器14の冷却能力が低下し、冷却器14の温度が上昇したことを検知し、その状態をアラームとして外部へ警告する。
【0023】
(第2の実施形態)
本発明に基づく第2の実施形態について図を参照し、詳細に説明する。図4は、本発明の第2の実施形態の回路構成図である。尚、図1乃至3と同一の構成をとるものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0024】
本実施形態は、第1の実施形態のフィルタ15がロールフィルタ21に変更されている点が異なっている。以下、その点について詳細に説明する。
【0025】
(構成)
図4に示すように、インバータ部(主回路)8の外部には冷却器14、ロールフィルタ21、風冷用ファン16が設置される。ロールフィルタ21とは、巻物状に巻いた形状を有しているフィルタのことを示す。
【0026】
(作用)
本実施形態の作用は、第一の目詰まり検知手段おいてアラームとして出されていた出力が、ロールフィルタ21へ出力される。電気車電源装置12の外気温度に対し、内部温度が上昇した場合にはロールフィルタ21が巻き取られ、新たなフィルタを設定することで、冷却器の状態を正常に戻すことが可能である。
【0027】
(効果)
このような構成の電気車電源装置12は、第1の実施形態の効果を有する。また、長距離を無停止で走行しなければならず、定期的なメンテナンスが困難な車両に搭載することで、メンテナンス時期をずらし、冷却器14の冷却能力を正常に保つことが可能である。
【0028】
また、このようなメンテナンス時期をずらすことが可能な構成として図5に示すような電気車電源装置12が挙げられる。図1に示した負荷側に、電動機等の重要負荷と証明、クーラー等の普通負荷の2系統を設ける。重要負荷と変圧器11の間に重要負荷用接触器22を設置し、普通負荷と変圧器11の間に普通負用荷接触器23を設置した構成となっている。図5のような構成の電気車電源装置12は、フィルタ15の目詰まりが進行し、冷却器14の冷却能力が低下した場合には、図2で示したアラームの代わりに普通負荷用接触器23を開放するように出力が外部へと送られる。重要負荷のみを稼動させ、冷却器14の温度上昇を抑えることで、冷却器14の冷却能力が低下した状態でも電気車電源装置12の運転を継続させることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 架線
2 パンタグラフ
3 接触器
4 直流フィルタリアクトル
5 フィルタコンデンサ充電抵抗器
6 フィルタコンデンサ充電抵抗器短絡スイッチ(CHS)
7 直流フィルタコンデンサ
8 インバータ部(主回路)
9 交流リアクトル
10 交流フィルタ
11 変圧器
12 電気車用電源装置(SIV)
13 交流フィルタコンデンサ
14 冷却器
15 フィルタ
16 風冷用ファン
17 第一のサーミスタ
18 電流検出器
19 第二のサーミスタ
20 制御部
21 ロールフィルタ
22 重要負荷用接触器
23 普通負荷用接触器
41 第一の演算部
42 第二の演算部
43 第三の演算部
44 第四の演算部
45 比較論理部
46 第一の平均演算部
47 第二の平均演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が架線電力を授受するパンタグラフと接続され、他端が前記架線電力を駆動力として駆動する負荷が接続された電気車電源装置において、
電力変換を行うためのスイッチングデバイスを内蔵するインバータ部と、
前記インバータ部内のスイッチングデバイスが電力変換の際に発生する熱を吸収する冷却手段と、
前記インバータ部の温度を検出する第一の温度検出手段と、
外気の温度を検出する第二の温度検出手段と、
前記負荷への入力電流を検出する電流検出手段と、
前記第一の温度検出手段と前記第二の温度検出手段の検出値の差分から算出される実際の温度上昇値と、前記電流検出器の検出値より算出される推定の温度上昇値に基づき、前記冷却器の冷却能力の低下を判断する制御部と、
を有することを特徴とする電気車電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、インバータ部の温度と外気温度の差分から算出される実際の温度上昇値を算出する第一の演算部と、
所定時間ごとに前記第1の演算部による演算された温度上昇値を保持し、前記所定時間後に演算した温度上昇値の平均値を算出する第一の平均演算部と、
電流検出手段により検出された電流値を所定時間ごとに保持し、前記所定時間後に演算した負荷電流の平均値を算出する第二の平均演算部と、
前記負荷電流平均値に対応し、冷却器の冷却能力が正常に機能していた場合の前記インバータ部の推定の温度上昇値を算出する第二の演算部と、
前記実際の温度上昇値と前記推定の温度上昇値との差分から得られる乖離温度上昇値を算出する第三の演算部と、
前記乖離温度上昇値が所定の値よりも低い場合は、前記冷却器の状態が異常であるとし、前記制御部の外部へとアラームを出力し、前記乖離温度上昇値が所定の値よりも高い場合は、前記冷却器の状態が正常であるとし、前記冷却器の冷却能力が前記制御部の外部へアラームを出力しないことを特徴とする請求項1記載の電気車電源装置。
【請求項3】
前記制御部において、前記インバータ部に接続した負荷を普通負荷と重要負荷の2系統とし、前記普通負荷と前記インバータ部の間に普通負荷用接触器が設置され、前記重要負荷と前記インバータ部の間に重要負荷用接触器が設置され、前記制御部よりアラームが出力された際は、前記普通負荷用接触器が開放され、前記重要負荷が稼動を維持することを特徴した請求項1及び2記載の電気車電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−216718(P2011−216718A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84343(P2010−84343)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】