説明

電気鉄道保守用車両位置測定装置

【課題】車両の走行位置と通過時刻との関係を高精度に特定することを可能とした電気鉄道保守用車両位置測定装置を提供する。
【解決手段】電気鉄道保守用車両位置測定装置において、ラインセンサ1と、ラインセンサ1で撮影した画像をテンプレート画像と入力画像として作成する画像作成部10と、画像作成部10において作成したテンプレート画像と入力画像を保存するメモリ11と、保存したテンプレート画像からSIFT特徴量を抽出してテンプレートデータを作成しメモリ12に保存するテンプレート作成処理部13と、入力画像からSIFT特徴量を抽出しメモリ12に保存するSIFT特徴量抽出処理部14と、保存したテンプレートデータのSIFT特徴量と入力画像のSIFT特徴量との対応点を探索し入力画像中のハンガ位置を検出してメモリ12に保存するハンガ位置検出処理部15とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線及び軌道などの保守に用いられる電気鉄道保守用車両の走行位置を測定する電気鉄道保守用車両位置測定装置に関し、特に、画像処理により電気鉄道保守用車両の走行位置と通過時刻との関係を取得する電気鉄道保守用車両位置測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道の設備としては、主に架線と軌道とが挙げられる。これらはそれぞれ鉄道を運行するにあたり重要な保守設備となっている。架線は、電気鉄道車両を運用していく中で電気鉄道車両が通過するたびに集電装置と接触する。このため、架線は徐々に摩耗していき、交換をしない場合は最終的に破断して事故を招く虞がある。また、軌道は、電車の運行によって曲がり、ゆがみ、傷、摩耗等が発生し、これらの進行を放置してしまうと電気鉄道車両の脱線など事故を招く虞がある。
【0003】
このようなことから、架線や軌道の摩耗等による要注意箇所を迅速に把握し、これに対応するために、架線や軌道の要注意箇所の位置(例えば、ある地点から何キロ走行した位置に要注意箇所が存在する等)の情報を特定することは保守管理の面から重要な事項となっている。
【0004】
現在、架線や軌道等の設備の保守を行う場合、保守専用車両や軌陸車などが用いられており、検測した結果、要注意箇所が検出された場合はそのデータを取得したときの車両の位置から要注意箇所の位置を推定している(例えば、下記特許文献1参照)。
【0005】
ここで、車両の位置を特定する方法としては、従来、例えば、自動列車制御装置(ATC)やロータリーエンコーダを用いる方法があり、それぞれ以下の特徴を有している。
【0006】
自動列車制御装置は、列車の位置や速度を制御するものであり、もともとは車両の運転のためのシステムであるが、この自動列車制御装置には列車の位置や速度の情報を外部に通信する仕組みが設けられている。そこで、自動列車制御装置を用いて車両の位置を特定する場合は、この自動列車制御装置の外部と通信を行う仕組みを利用して保守専用車両の位置を特定している(例えば、下記特許文献2参照)。
【0007】
また、ロータリーエンコーダを用いて車両の位置を特定する場合は、ロータリーエンコーダにより得られる車輪の回転数に基づき、この車輪の回転数と、車輪の円周の長さとから、ある地点を基準位置として車両の走行距離を求めている(例えば、下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−89523号公報
【特許文献2】特開2006−248412号公報
【特許文献3】特開2004−17700号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】藤吉弘亘、「Gradientベースの特徴抽出−SIFTとHOG−」、情報処理学会 研究報告 CVIM 160、2007年、p.211−224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の自動列車制御装置を利用する場合、車両側に送受信機器を設置することに加え、軌道側にも一定間隔で送受信装置を設置する必要があるため、長距離の線区に設置する場合、個数がかさみ、コストがかかるという問題があった。
【0011】
また、ロータリーエンコーダは、車輪の回転角をカウントすることにより走行距離を測定する構成になっているため、ブレーキや坂道走行などにより、列車は進行していないのに車輪が回転している、又は、車輪のすべりにより車輪は回転していないのに列車が進行している等の局所的に生じた誤差が加算的に増加して要注意箇所の位置の特定が困難になる虞があるという問題があった。
【0012】
このため、従来の自動列車制御装置において、車両の屋根上にラインセンサカメラを設置し、このラインセンサ(以下、ラインセンサという)によって撮影した架線近傍の画像を画像処理(テンプレートマッチングやエッジ検出等)してハンガを検出し、このハンガを撮影した時刻に基づいて車両の走行位置と通過時刻との関係を特定することにより上述した誤差を解消することが考えられる。
【0013】
しかしながら、ハンガ自体が斜めに張られている、あるいはハンガが画面上で斜めに映っていると、テンプレートマッチングによりハンガ検出を行う場合にはテンプレートとの照合の際にハンガ検出の精度が低下する虞があり、また、エッジ検出によりハンガの検出を行う場合には縦方向エッジが弱まっていることからハンガ検出の精度が低下する虞があった。
【0014】
以上のことから、本発明は、車両の走行位置と通過時刻との関係を高精度に特定することができる電気鉄道保守用車両位置測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置は、
架線や架線を支持するハンガを吊る吊架線の画像を撮影するラインセンサと、
前記ラインセンサで撮影した画像をテンプレート画像と入力画像として作成する画像作成部と、
前記画像作成部において作成した前記テンプレート画像と前記入力画像を保存する記憶部と、
前記記憶部に保存した前記テンプレート画像からSIFT特徴量を抽出してテンプレートデータを作成し前記記憶部に保存するテンプレート作成処理部と、
前記記憶部に保存した前記入力画像からSIFT特徴量を抽出し前記記憶部に保存するSIFT特徴量抽出処理部と、
前記記憶部に保存した前記テンプレートデータのSIFT特徴量と前記入力画像のSIFT特徴量との対応点を探索し前記入力画像中のハンガ位置を検出して前記記憶部に保存するハンガ位置検出処理部と
を備える
ことを特徴とする。
【0016】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置は、第1の発明に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置において、
前記ラインセンサのサンプリング周波数と前記記憶部に保存した前記入力画像上のハンガ位置に基づき前記ハンガが検出された時刻を算出して時刻データを前記記憶部に保存する時刻記録処理部を備える
ことを特徴とする。
【0017】
上記の課題を解決するための第3の発明に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置は、第1の発明又は第2の発明に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置において、
前記ハンガ位置検出処理部において、前回のハンガ位置が存在する場合に前回のハンガ位置と吊架線及び架線の傾きデータを受け渡し、前回のハンガ位置を基準として処理領域を限定する次処理領域の計算を行う
ことを特徴とする。
【0018】
上記の課題を解決するための第4の発明に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置は、第3の発明に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置において、
前記ハンガ位置検出処理部において、前記次処理領域を拡張する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車両の走行位置と通過時刻との関係を高精度に特定することができる電気鉄道保守用車両位置測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の構成を示した模式図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における処理の手順を示したフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置におけるテンプレート画像の例を示した図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置におけるテンプレートデータのSIFT特徴量の例を示した図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における入力画像の例を示した図である。
【図7】本発明の第1の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置におけるSIFT特徴量の対応点探索処理領域の例を示した図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の構成を示したブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における処理の手順を示したフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における次処理領域の例を示した図。
【図11】本発明の第3の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における次処理領域を拡張した例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の第1の実施例について説明する。
本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置は、車両の屋根上に設置したラインセンサを用いて、ラインセンサを枕木方向に向け、かつ斜め上方に向け吊架線と架線を撮影し、大きさや回転の変化に影響を受けにくい画像特徴量としてSIFT(Scale‐Invariant Feature Transform)特徴量(上記非特許文献1参照)を求め、予め求めておいたテンプレート用の画像から抽出したSIFT特徴量との対応点を求めることにより、ハンガを検出することを特徴とする。
【0023】
はじめに、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の概要について説明する。
図1は、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の概要を示した模式図である。
図1に示すように、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置は、架線101や架線101を支持するハンガ102を吊る吊架線103の画像を撮影するため、車両100の屋根上に枕木方向に向け、かつ斜め上方に向けて設置され図1中に矢印Lで示す撮影ラインにおいて画像を撮影するラインセンサ1と、夜間やトンネル内においてもラインセンサ1による画像の撮影を可能とするためラインセンサ1の周辺に設置される照明2と、ラインセンサ1で撮影した画像を保存し画像処理を行う車両100内に設置される処理用パソコン3とを備えている。そして、ラインセンサ1と処理用パソコン3は、画像データが送信可能なように接続されている。なお、図1中の矢印Aで示す方向は車両100の進行方向を示している。
【0024】
次に、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の構成について説明する。
図2は、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の構成を示したブロック図である。
図2に示すように、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置は、ラインセンサ1で撮影した画像をテンプレート画像と入力画像として作成する画像作成部10と、画像作成部10において作成したテンプレート画像と入力画像を保存するメモリ11と、メモリ11に保存したテンプレート画像からSIFT特徴量を抽出してテンプレートデータを作成しメモリ12に保存するテンプレート作成処理部13と、メモリ11に保存した入力画像からSIFT特徴量を抽出しメモリ12に保存するSIFT特徴量抽出処理部14と、メモリ12に保存したテンプレートデータのSIFT特徴量と入力画像のSIFT特徴量との対応点を探索し画像中のハンガ位置を検出してメモリ12に保存するハンガ位置検出処理部15と、ラインセンサ1のサンプリング周波数とメモリ12に保存した画像上のハンガ位置に基づきハンガ102が検出された時刻を算出して時刻データをメモリ12に保存する時刻記録処理部16とを備えている。
【0025】
なお、本実施例においては、処理用パソコン3が画像作成部10、メモリ11,12、テンプレート作成処理部13、SIFT特徴量抽出処理部14、ハンガ位置検出処理部15、ハンガ位置検出処理部15及び時刻記録処理部16の役割を果たしている。また、メモリ11とメモリ12は共通のメモリとすることも可能である。
【0026】
次に、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における処理の手順について説明する。
図3は、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における処理の手順を示したフローチャートである。
図3に示すように、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における処理の手順として、はじめに、ステップP10において、ラインセンサ1からテンプレート用の画像を取得する。なお、図4に示すように、テンプレート画像は、1個のハンガ102が撮影されている部分を切り出した画像とする。
【0027】
次に、ステップP11において、テンプレート画像からSIFT特徴量を抽出し、テンプレートデータを作成する。なお、図5中に黒丸で示すように、SIFT特徴量はテンプレート画像上に複数存在しており、その全てのテンプレートデータを作成する。なお、SIFT特徴量の求め方については、上記非特許文献1に記載されている方法を用いることとし、ここでの説明は省略する。
【0028】
次に、ステップP12において、ラインセンサ1から入力画像を作成する。なお、図6に示すように、入力画像は、縦軸が高さで、横軸が時間となる。
次に、ステップP13において、入力画像からSIFT特徴量を抽出する。
【0029】
次に、ステップP14において、テンプレートデータのSIFT特徴量と入力画像のSIFT特徴量との対応点探索を行い、入力画像内の全ハンガ位置を検出する。なお、ハンガ位置の検出方法は、テンプレートデータのSIFT特徴量と入力画像の全SIFT特徴量とのユークリッド距離を計算し、最小の値になったものを対応点とする。また、同様に、テンプレートデータの全SIFT特徴量に対してユークリッド距離を求め、それぞれ対応した点を基にハンガ位置を検出する。
【0030】
ここで、ユークリッド距離とは、テンプレートデータのSIFT特徴量と入力画像のSIFT特徴量との差を2乗し、それらの総和の平方根を計算したものである。具体的には、SIFT特徴量は128次元の特徴量となる。このため、ユークリッド距離を計算すると下記式(1)のようになる。
【0031】
【数1】

上記式(1)において、Vは入力画像のSIFT特徴量、VtはテンプレートデータのSIFT特徴量、dはユークリッド距離を意味している。
【0032】
なお、通常、ユークリッド距離が最小になる箇所は、1枚の入力画像内で1点しか現れない。また、車両100の走行速度によっては、1枚の入力画像内で複数のハンガ102が撮影される可能性があり、このままでは全てのハンガ102を検出することができない。
【0033】
ところで、ラインセンサ1により撮影された横軸が時間の入力画像においては、同一時間上に複数のハンガ102が存在することはない。このため、本実施例においては、図7中に破線で示すように、1枚の入力画像を時間ごとに短冊状に区切り、対応点探索を行うことで、複数のハンガ102を検出できるようにしている。なお、区切り幅は任意であるが、基本的にテンプレートデータの幅と同程度とする。
【0034】
次に、ステップP15において、検出したハンガ位置から時刻を計算し、時刻を記録する。図6に示すように、入力画像は、横軸が時間となっている。そして、ラインセンサ1のサンプリング周波数と入力画像上のハンガ位置を基に時刻を算出することが可能となる。
【0035】
例えば、ラインセンサ1のサンプリング周波数が1kHzであって、ハンガ102が時間軸方向の100ライン目で検出された場合、1ライン当たりの撮影時間は、1[sec]÷1000[Hz]=0.001[sec]であり、ハンガ102が100ライン目で検出されたので、0.001[sec]×100[ライン]=0.1[sec]となる。
【0036】
最後に、ステップP16において、全ての入力画像に対して処理が終了するまでステップP12〜16を繰り返し、全ての入力画像に対して処理が終了した時点で本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における一連の処理を終了する。
【0037】
以上説明したように、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置によれば、テンプレートデータのSIFT特徴量と入力画像のSIFT特徴量とを用いた対応点探索処理を行うことにより、図6に示すように、ハンガ102が周囲の構造物104と同一箇所に存在していた場合であってもハンガ102を検出することが可能となるため、ハンガ102の未検出を防ぐことができる。
【0038】
また、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置によれば、スケールや回転や明度変化に対して頑健なSIFT特徴量を用いるため、スケールや回転や明度変化に応じ全ての場合のテンプレートデータを準備する必要がなく、スケールや回転や明度変化があった場合であっても1つのテンプレートデータがあれば検出可能であるため、ハンガ102の検出効率を高めることができる。
【実施例2】
【0039】
以下、本発明に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の第2の実施例について説明する。
本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置は、第1の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置とほぼ同様の構成であるが、前回のハンガ位置が存在する場合に、前回のハンガ位置を基準とし、処理領域を限定することにより、処理の高速化を図っている点が異なっている。
【0040】
次に、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の構成について説明する。
図8は、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の構成を示したブロック図である。
図8に示すように、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の構成は、第1の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の構成とほぼ同様であるが、ハンガ位置検出処理部15において、前回のハンガ検出位置が存在する場合に、前回のハンガ位置と吊架線103及び架線101の傾きデータを受け渡し、前回のハンガ位置を基準に処理領域を限定した次処理領域の計算を行う点が異なっている。
【0041】
次に、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における処理の手順について説明する。
本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における処理の手順は、第1の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の処理の手順とほぼ同様であるが、前回のハンガ位置が存在する場合に、前回のハンガ位置を基準に処理領域を限定する次処理領域の計算処理を追加した点が異なる。
【0042】
SIFT特徴量は、算出する処理に時間が掛かり過ぎるため、処理の高速化を図る必要がある。SIFT特徴量の算出に要する時間は、処理領域の大きさに比例するため、処理領域を限定することができれば効率的に処理を行うことができる。ここで、ハンガ102は必ず吊架線103と架線101の間に存在し、かつ、吊架線103と架線101の傾き方向に存在する可能性が高いため、1個目のハンガ102を検出することができれば、処理領域を限定することが可能である。このように、吊架線103及び架線101の傾きから次処理領域を限定することができるため、処理の高速化を図ることができる。
【0043】
図9は、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における処理の手順を示したフローチャートである。
図9に示すように、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における処理の手順として、はじめに、ステップP10において、ラインセンサ1からテンプレート用の画像を取得する。なお、図4に示すように、テンプレート画像は、1個のハンガ102が撮影されている部分を切り出した画像とする。
【0044】
次に、ステップP11において、テンプレート画像からSIFT特徴量を抽出し、テンプレートデータを作成する。なお、図5中に黒丸で示すように、SIFT特徴量はテンプレート画像上に複数存在しており、その全てのテンプレートデータを作成する。なお、SIFT特徴量の求め方については、上記非特許文献1に記載されているため、ここでの説明は省略する。
【0045】
次に、ステップP12において、ラインセンサ1から入力画像を作成する。なお、図6に示すように、入力画像は、縦軸が高さで、横軸が時間となる。
次に、ステップP20において、前回のハンガ位置が存在する場合、ステップP21において次処理領域の計算処理を実行する。また、前回のハンガ位置がない場合、ステップP13において入力画像全体からハンガ位置検出処理を行う。
【0046】
次に、ステップP21において、1枚目の画像中からハンガ102を検出し、1枚目のハンガ検出位置4と吊架線103と架線101の傾きに基づき次処理領域5を決定する。具体的には、図10に示すように、吊架線103と架線101の傾きが右下方向である場合、ハンガ102は吊架線103と架線101との間に存在するため、吊架線103と架線101の傾き方向に存在する可能性が高い。このため、1枚目のハンガ位置4を基準に、吊架線103と架線101の傾き方向に次処理領域5を決定することができる。
【0047】
なお、図10中にA,Bで示す一点鎖線を画像の切れ目とし、一点鎖線Aより左側を1枚目の画像、一点鎖線Aと一点鎖線Bとの間を2枚目の画像、一点鎖線Bより右側を3枚目の画像とする。
【0048】
次に、ステップP14において、次処理領域5内又は画像全体でハンガ位置検出処理を行う。
次に、ステップP15において、検出したハンガ位置から時刻を計算し、時刻を記録する。
【0049】
最後に、ステップP16において前回のハンガ位置が存在する場合はステップP12〜15を入力画像がなくなるまで繰り返し、全ての入力画像に対して処理が終了した時点で本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における一連の処理を終了する。
【0050】
以上説明したように、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置によれば、第1の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の奏する効果に加え、処理領域を次処理領域5に限定することにより、処理の高速化を図ることができる。
【実施例3】
【0051】
以下、本発明に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の第3の実施例について説明する。
本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置は、第2の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置とほぼ同様の構成であるが、処理領域を次処理領域5に限定する処理時に、次処理領域5を拡張することにより、ハンガ位置検出精度を向上させる点が異なっている。
【0052】
次に、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置における処理の手順について説明する。
図11中にAで示す一点鎖線を画像の切れ目とし、一点鎖線Aの左側を1枚目の画像、一点鎖線Aの右側を2枚目の画像とする。図11に示すように、画像の切れ目にハンガ102が撮影されてしまった場合、SIFT特徴量が異なるものとなってしまうため、ハンガ102が検出できない可能性がある。そこで、図11に示すように、次処理領域5の範囲を前画像、すなわち1枚目の画像の一部を含めるように拡張することにより、画像の切れ目に撮影されてしまったハンガ102を検出することが可能となる。
【0053】
以上説明したように、本実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置によれば、第2の実施例に係る電気鉄道保守用車両位置測定装置の奏する効果に加え、次処理領域5を拡張することにより、図11に示すように、画像の切れ目にハンガ102が撮影されている場合であっても、ハンガ102を精度良く検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、架線及び軌道などの保守に用いられる電気鉄道車両の位置を測定する電気鉄道保守用車両位置測定装置に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0055】
1 ラインセンサ
2 照明
3 処理用パソコン
4 ハンガ位置
5 次処理領域
10 画像作成部
11,12 メモリ
13 テンプレート作成処理部
14 SIFT特徴量抽出処理部
15 ハンガ位置検出処理部
16 時刻記録処理部
100 車両
101 架線
102 ハンガ
103 吊架線
104 構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線や架線を支持するハンガを吊る吊架線の画像を撮影するラインセンサと、
前記ラインセンサで撮影した画像をテンプレート画像と入力画像として作成する画像作成部と、
前記画像作成部において作成した前記テンプレート画像と前記入力画像を保存する記憶部と、
前記記憶部に保存した前記テンプレート画像からSIFT特徴量を抽出してテンプレートデータを作成し前記記憶部に保存するテンプレート作成処理部と、
前記記憶部に保存した前記入力画像からSIFT特徴量を抽出し前記記憶部に保存するSIFT特徴量抽出処理部と、
前記記憶部に保存した前記テンプレートデータのSIFT特徴量と前記入力画像のSIFT特徴量との対応点を探索し前記入力画像中のハンガ位置を検出して前記記憶部に保存するハンガ位置検出処理部と
を備える
ことを特徴とする電気鉄道保守用車両位置測定装置。
【請求項2】
前記ラインセンサのサンプリング周波数と前記記憶部に保存した前記入力画像上のハンガ位置に基づき前記ハンガが検出された時刻を算出して時刻データを前記記憶部に保存する時刻記録処理部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電気鉄道保守用車両位置測定装置。
【請求項3】
前記ハンガ位置検出処理部において、前回のハンガ位置が存在する場合に前回のハンガ位置と吊架線及び架線の傾きデータを受け渡し、前回のハンガ位置を基準として処理領域を限定する次処理領域の計算を行う
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気鉄道保守用車両位置測定装置。
【請求項4】
前記ハンガ位置検出処理部において、前記次処理領域を拡張する
ことを特徴とする請求項3に記載の電気鉄道保守用車両位置測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−230722(P2011−230722A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104866(P2010−104866)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】