説明

電気駆動装置を持つ車両

電気駆動装置の電池が車両の後部でその床(4)の下に設けられている電池箱(20)に収容されている車両が、正面衝突及び後部衝突に対して保護され、荷物室をできるだけ僅かしか縮小しないようにする。この目的のため、床(4)が、平面図において電池箱(20)の輪郭より大きい切欠き(11)を持ち、切欠き(11)が補強された縁(12)を持ち、電池箱(20)用の下方へ向く前部支持部材(30)及び後部支持部材(13)が、補強された縁(12)に取付けられ、後部支持部材(13)が、後下方へ傾斜した停止面(19)を持つ1対のフランジ(17,17′)を介して車両に取付けられ、電池箱(20)が剛性的であるか又は補強されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気駆動装置を持つ車両であって、駆動装置の電池が、車両の後部でその床の下に設けられている電池箱に収容されているものに関する。それは、純電気的駆動装置を持つ車両であっても、ハイブリッド駆動装置(内燃機関及び発電機としても動作可能な電気機械)を持つ車両であってもよい。両者は、内燃機関のみから成る駆動装置を持つ自動車におけるより著しく大きくかつ重い蓄電池(単に電池という)を持っている。
【0002】
このような電池は多くの構造空間を必要とし、その質量は衝突の場合その運動エネルギーにより乗客を危険にさらし、その内容はしばしば化学的に侵食性なので、損傷に対する保護も必要である。更に使用される高出力電池は大抵の場合大規模な補助装置(換気機、冷媒ポンプ及び電子装置)を必要とし、この補助装置が騒音を生じ、保守のため接近可能でなければならない。更に車両の荷物室ができるだけ小さく限定され、平らな積載床を持っていなければならない。
【背景技術】
【0003】
最初にあげた種類の車両はドイツ連邦共和国特許第2522844号明細書から公知である。そこでは電池は、後車軸の前で閉じた床板の下にフランジにより吊るされている桶に収容されている。前部フランジは角形レール内に吊られ、この角形レールは縦敷居の斜め前下方へ延びる部分に溶接されて、目標破断個所を形成している。それにより正面衝突の場合桶の前縁が下方へ突出され、こうして車両の内部空間からそらされる。しかし後部衝突(車両が後から衝突される追突)に対して、電池は保護されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の課題は、電池が正面衝突に対しても後部衝突に対しても保護され、更に荷物室をできるだけ僅かしか縮小せずかつ接近可能であるように、最初にあげた種類の車両に電池を収容しかつ取付けることである。
【0005】
車両の内部に設けられる電池を、衝突の際変形区域及び運動変換器を介して後から支持することは、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102004023号明細書から公知である。運動変換器は楔であり、衝突の場合電池の後端を上方へ押す。しかしこれは、通常の大きさの電池においても乗客を危険にさらす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明によれば、床(もっと正確には床板)が、平面図において電池箱の輪郭より大きい切欠きを持ち、切欠きが補強された縁を持ち、電池箱用の下方へ向く前部支持部材及び後部支持部材が、補強された縁に取付けられ、後部支持部材が、後下方へ傾斜した停止面を持つ1対のフランジを介して車両に取付けられ、電池箱が剛性的であるか又は補強されている。
【0007】
後部衝突の場合、電池箱は前方へ押され、傾斜した停止面のためその後縁が同時に下方へ押されるので、電池箱及び前部支持部材は下方へ揺動する。こうして電池箱は車両の内部へ侵入できないが、それにもかかわらず車両に結合されたままである。この機構のため、電池は後車軸の後ろに確実に収容可能である。床板の補強は、切欠きによる床板の弱体化を補償し、支持部材を保持する。切欠きのため、保守のため電池に上から接近可能である。支持部材は、床板の下に若干の間隔を置いても電池箱の収容を可能にするので、荷物室の床は十分平らである。剛性的に形成される電池箱は、電池を損傷に対して十分に保護し、床板へのねじ止め後支持部材を介して床板の一層の補強を行う。
【0008】
傾斜した停止面を持つ後部支持部分のフランジは、種々のやり方で互いに結合されている(請求項2)。そのためになるべくせん断ピンが使用され、所定の衝撃力で初めてせん断して、フランジの相互滑りを可能にし、それにより蓄電池箱が下方へ揺動するように、これらのせん断ピンが寸法を設定されている。
【0009】
進行する衝突の場合支持部材が床板から外れることができるように、これらの支持部材が床に取付けられている(請求項3)と、支持部材が同じように作用する。その場合取付け手段は、正面衝突の場合のも作用するせん断ピンであるのがよい。
【0010】
有利な展開では、前部支持部材が、引裂きピンにより、補強された縁の下側に取付けられ、かつ移動可能で支持板に係合する水平な支持棒を持っている(請求項4)。引裂きピンは、後部衝突の場合、前部支持部材の傾倒及び前方への電池箱の移動を可能にし、その際支持棒により、引裂きピンの引裂き又はせん断後にも、前部支持部材が車両に結合されたままであるようにする。支持棒はいわば支持板に掛かったままである。支持板が車両の床に取付けられ、走行方向において支持棒の前にある変形区域を介して車両に支持されているのがよい(請求項5)。変形区域は、車両走行に対して直角に設けられるひだから成り、通常作動の際には補強作用する。
【0011】
本発明の有利な展開では、電池箱の蓋が、床板の補強された縁に取外し可能に取付けられ、その縁が電池箱に密接して載っている(請求項6)。こうして衝突の場合蓋が電池箱の移動運動を自由にする。蓋は補強された縁に取付けられているので、車両の内部空間に対する密封も引受ける。電池箱の蓋がプラスチックから成り、衝突の場合電池箱から外れるように、この電池箱に結合されているのがよい(請求項7)。
【0012】
電池箱の蓋は、電池に付属しかつ車両の内部から接近可能な電子装置を収容していると、特別な空間節約が行われる。更に電池箱内の電池が弾性素子を介して支持されていると(請求項9)、電池の保護及び固体伝導音減衰のために有利である。
【0013】
図について本発明が以下に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に通常の形状を持つ自動車が示されている。その駆動装置は純機械的又はハイブリッドである。後輪2を介して見えるその後部シャシ3及びこの後部シャシにある床4のみが重要である。5で示す非常に大きい電池は、床4の下で後輪2の後に設けられている。しかし電池は(破線で示すように)後輪2の前に設けることもできる。最後にバンパ支持体6も示されている。電池5の周りの車両部分は概略的に示されており、以下詳細に説明される。
【0015】
図2において、床4は、平面図においてほぼ長方形の切欠き11を持つ床板10であり、この切欠きの縁は周囲にわたって延びる補強枠12を持っている。この補強枠12に剛性電池枠20用の後部支持部材13及び前部支持部材30が取付けられている。これらの支持部材は、個々の腕であるか、又は切欠き11の幅にわたって延びる単一の支持部材である。後部支持部材13は、引裂きピン15により補強枠12に結合されているか又はバンパ支持体6に結合可能で車両に固定した部分14と、電池に近い部分16とから成っている。両方の部分14,16はフランジ17,17′を持ち、これらのフランジは斜めに後下方へ延びる停止面19に沿って互いに接触し、せん断ピン18等によりまとめられている。電池箱20は、ねじ結合部21により、電池に近い部分16に結合されている。
【0016】
前部支持部材30は、再び複数の支持腕31であるか、又は全幅にわたって延びる支持腕であってもよい。支持腕31は、車両に近い端部で、引裂きピン32により補強枠12に結合され、電池に近い端部で電池箱20にねじ止めされている。水平な案内のため支持棒34が設けられて、一方では支持板35にある案内穴37に係合し、他方では保持板38にある案内穴39に係合している。支持棒34は両方の穴37,39のうち1つの穴内で移動可能であり、他の穴内に例えば溶接により固定されている。支持板35は、ひだをつけられた変形区域36を持ち、保持板38は支持腕31の一部である。
【0017】
電池箱20上に蓋45が載っている。この蓋はなるべくプラスチックから成り、軽く、電池箱20の周囲にわたって延びる密封フランジ46上に密接して載っている。更に蓋45は、同様に周囲に沿って延びるカラーを持ち、このカラーの縁48が、床板10又はその補強枠12に取外し可能に結合されている。縁48は補強枠12を持つ床板10の上又は下にある。前者の場合、蓋45は車両の内部から外すことができるか、そうでない場合蓋45に小さい保守蓋(図示せず)を設けることができる。蓋45の内部には、冷却換気機、制御装置、電気開閉器等のような電気装置49がある。
【0018】
後部衝突例えば追突事故の場合、まず後部支持部材13の車両に固定した部分14が前方へ押される。その際(電池箱の著しい剛性に応じて)特定のせん断力に達すると、せん断ピン18がせん断され、フランジ17,17′が停止面19に沿って互いに滑り離れることができる。その際支持部材13の電池に近い部分16は下方へ押されるので、電池箱20は前部支持腕31と補強枠12との結合個所の周りに下方へ揺動する。傾倒の際、補強枠12が充分撓まない限り引裂きピン32が引裂かれるが、支持棒34のため、電池箱20の前部は車道へ落下することはない。こうして電池箱20は車両に結合されたままであり、車道を損傷しないやり方で、車道上を引きずられる。
【0019】
後から作用する衝撃力が更に増大すると、衝撃力は後部支持部材13から剛性電池箱20を経て前部支持腕31へ伝達されて、引裂きピン32をせん断し、それにより前部支持部材30の前方移動が可能になる。その際支持棒34が案内装置として作用し、支持板35の変形区域36がそれ以上の衝撃エネルギを吸収する。
【0020】
正面衝突の場合、衝撃力が図2において左側から来ると、引裂きピン32がせん断され、支持板35の変形区域36が作用し、まだ著しい残留衝撃力が、前部支持腕31から剛性電池箱20を経て後部支持部材13へ導かれ、そこで再び両方のフランジ17,17′の滑り離れにより、電池箱20全体の下方揺動が起こる。
【0021】
図3においてなおわかるように、電池箱20はその底に補強溝53を持ち、電池58は弾性中間層54を介して電池箱20内に支持されている。その際電池58は、1つ又は複数の引張り帯55及びねじ56により、電池箱20と固定的に結合されるブラケット57上に押付けられている。
【0022】
図4は、補強枠12が床板10の下側にどのように設けられているかを詳細に示している。補強枠12の下に支持腕31の基部60が見られ、この基部60が引裂きピン32により補強枠12及び床板10にねじ止めされている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 本発明による自動車を概略的に示す。
【図2】 図1の細部IIを示す。
【図3】 図2の細部IIIを示す。
【図4】 図2の細部IVを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動装置を持つ車両であって、駆動装置の電池が、車両の後部でその床の下に設けられている電池箱に収容されているものにおいて、
a)床(4)が、平面図において電池箱(20)の輪郭より大きい切欠き(11)を持ち、
b)切欠き(11)が補強された縁(12)を持ち、電池箱(20)用の下方へ向く前部支持部材(30)及び後部支持部材(13)が、補強された縁(12)に取付けられ、
c)後部支持部材(13)が、後下方へ傾斜した停止面(19)を持つ1対のフランジ(17,17′)を介して車両に取付けられ、
d)電池箱(20)が剛性的であるか又は補強されている
ことを特徴とする、車両。
【請求項2】
傾斜した停止面(19)を持つ後部支持部分(13)のフランジ(17,17′)がせん断ピン(18)により互いに結合されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
衝突の場合支持部材(13,30)が床板(10)から外れることができるように、これらの支持部材(13,30)が床(4,10)に取付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前部支持部材(30)が、引裂きピン(32)により、補強された縁(12)の下側に取付けられ、かつ移動可能で支持板(35)に係合する水平な支持棒(34)を持っていることを特徴とする、請求項1に記載の車両。
【請求項5】
支持板(35)が車両の床(4)に取付けられ、走行方向において支持棒(34)の前にある変形区域(36)を介して車両に支持されていることを特徴とする、請求項4に記載の車両。
【請求項6】
電池箱(20)の蓋(45)が、補強された縁(12)に取外し可能に取付けられ、その縁(46)が電池箱(20)に密接して載っていることを特徴とする、請求項1に記載の車両。
【請求項7】
電池箱(20)の蓋(45)がプラスチックから成り、衝突の場合電池箱(20)から外れるように、この電池箱に結合されていることを特徴とする、請求項6に記載の車両。
【請求項8】
電池箱(20)の蓋(45)が、電池に付属する電気装置及び/又は電子装置(49)を収容していることを特徴とする、請求項6に記載の車両。
【請求項9】
電池箱(20)内の電池(58)が弾性素子(54)を介して支持されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−528222(P2009−528222A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500659(P2009−500659)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【国際出願番号】PCT/AT2007/000099
【国際公開番号】WO2007/095663
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(503211264)マグナ・シユタイル・フアールツオイクテヒニク・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト (18)
【Fターム(参考)】