説明

電気駆動車両の暖房装置

【課題】エンジンの燃費悪化を防止し、バッテリによるモータ駆動力確保と暖房用電気ヒータの暖房性能確保できる電気駆動車両の暖房装置を提供する。
【解決手段】エンジン1と、ジェネレータ2と、メインバッテリ3と、このメインバッテリ3と電気的に接続されたサブバッテリ12と、モータ4と、暖房用電気ヒータ6と、メインバッテリ3とサブバッテリ12との間に設けられたDC/DCコンバータ10と、制御手段7とを備え、メインバッテリ3の充電状態(SOC)が設定値A1よりも低いとき、メインバッテリ3からサブバッテリ12への電力供給を遮断し、メインバッテリ3の充電状態(SOC)が設定値A1よりも高いとき、メインバッテリ3からサブバッテリ12への電力供給を許容している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車等の電気駆動車両の暖房装置に関し、特に暖房用電気ヒータを備えた電気駆動車両の暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気自動車やハイブリッド自動車は、エンジンと、このエンジンにより駆動されるジェネレータと、バッテリと、このバッテリから給電されて走行駆動力を発生するモータとを備え、バッテリ充電状態(SOC:State of Charge)が低いとき、ジェネレータを駆動することによりSOCが所定の設定基準値を超えるまでバッテリを充電している。
【0003】
通常、電気駆動車両には、車室内を暖めるための暖房用電気ヒータが設けられ、この暖房用電気ヒータは駆動用モータと同様にバッテリから給電されている。車両の冷間始動時において電気ヒータがオン操作される際、特にSOCが低下しているときには、バッテリから電気ヒータへ給電すると同時にバッテリにも給電し充電が行われている。それ故、バッテリと電気ヒータとは共にバッテリから電力が供給されるため、電気ヒータの暖房性能が低下し、モータ駆動力が十分に確保できないという課題が存在している。
【0004】
特許文献1の電気駆動車両の暖房装置は、エンジンと、ジェネレータと、バッテリと、走行駆動用モータと、電気ヒータと、エンジン回転数を制御するエンジン制御手段と、走行駆動用モータの発電負荷を推定する発電負荷推定手段とを備え、エンジンが暖機中且つ乗員による暖房要求があるとき、エンジン制御手段が推定された発電負荷に応じてエンジンのスロットル開度を制御している。この暖房装置では、電気ヒータの消費電力とバッテリ充電要求電力と車両消費電力との総和を求め、この総和に応じた電力をモータの発電負荷として推定し、この発電負荷に応じた電力を発生するようにエンジンを駆動しているため、車両の暖房性能を十分に確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−168699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の電気駆動車両の暖房装置は、SOCが低下した場合でも、発電負荷に応じた電力を発生するようにエンジンを駆動するため、バッテリ充電要求電力と暖房性能とを満足するジェネレータの発電量を確保することができる。しかし、エンジンのスロットル開度が電気ヒータの消費電力とバッテリ充電要求電力との総和に基づく発電負荷に応じて制御されているため、エンジンが発電重視の高回転運転に制御され、その結果、電気駆動車両が元々狙いとしているエンジンの燃費が低下する虞がある。
【0007】
また、バッテリを充電するためにエンジンを駆動する際、エンジンの運転状態を燃費改善を優先したエンジンの駆動効率が高い運転状態に維持することも選択肢の1つであるが、エンジンに駆動されるジェネレータの発電電力が限られ、乗員による暖房要求がある場合には、バッテリと電気ヒータのうち、一方に対する給電の停止が必要になる。ジェネレータの発電電力をバッテリと電気ヒータとの双方に分配するとしても、限られた発電電力では夫々に対して給電される電力が不足するため、乗員の期待する十分な走行性能と暖房性能とを得ることができない。
【0008】
本発明の目的は、エンジンの燃費悪化を防止しつつ、バッテリによるモータ駆動力確保と暖房用電気ヒータの暖房性能確保との両立ができる電気駆動車両の暖房装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の電気駆動車両の暖房装置は、エンジンと、このエンジンにより駆動されるジェネレータと、このジェネレータにより発電された電力を充電可能なメインバッテリと、このメインバッテリと電気的に接続されたサブバッテリと、前記メインバッテリから給電されて走行駆動力を発生するモータと、前記サブバッテリから給電され且つ車室内の空気を加熱する暖房用電気ヒータと、前記メインバッテリとサブバッテリとの間に設けられたDC/DCコンバータと、前記暖房用電気ヒータとDC/DCコンバータとを制御する制御手段とを備えた電気駆動車両の暖房装置において、前記制御手段は、前記メインバッテリの充電状態が設定充電状態よりも低いとき、メインバッテリからサブバッテリへの電力供給を遮断し、前記メインバッテリの充電状態が設定充電状態よりも高いとき、メインバッテリからサブバッテリへの電力供給を許容することを特徴としている。
【0010】
この電気駆動車両の暖房装置では、暖房用電気ヒータがサブバッテリから給電されるため、メインバッテリの電力を消費することなく、暖房用電気ヒータに給電することができる。また、メインバッテリと電気的に接続されたサブバッテリと、メインバッテリとサブバッテリとの間に設けられたDC/DCコンバータとを備えているため、メインバッテリからサブバッテリへの電力供給の形態をメインバッテリの充電状態に応じて遮断状態と許容状態とに切替えることができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記制御手段は、前記メインバッテリの充電状態が設定充電状態よりも高いとき、前記サブバッテリから前記暖房用電気ヒータへの給電を遮断し、前記メインバッテリから前記暖房用電気ヒータに給電可能であることを特徴としている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、車室内の空気を前記エンジンの熱を用いて加熱する暖房用ヒータを有し、前記制御手段は、運転中のエンジン温度が設定温度以上のとき、前記暖房用電気ヒータの作動を停止し、前記暖房用ヒータを作動させることをことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、メインバッテリの充電状態が設定充電状態よりも低いとき、メインバッテリの電力を消費せずに暖房用電気ヒータを作動できるため、メインバッテリの充電促進と暖房用電気ヒータによる暖房性能確保とを図ることができる。しかも、メインバッテリの電力を消費せずに暖房性能を確保できるため、エンジンの運転状態を燃費改善を優先した駆動効率の高い運転状態に維持することができ、乗員による暖房要求がある場合でも、早期にメインバッテリを充電してモータ駆動力を確保でき、その結果、十分な走行性能を得ることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、ジェネレータにより発電された電力をメインバッテリから暖房用電気ヒータに給電可能であるため、DC/DCコンバータによる変換前の高い電力を暖房用電気ヒータに給電でき、車室内の暖房能率を向上することができる。
請求項3の発明によれば、エンジンの熱を利用した暖房用ヒータにより車室内を暖房するため、暖房性能を確保しつつ両バッテリの消費電力を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る暖房装置の全体構成図である。
【図2】暖房制御のフローチャートである。
【図3】エンジンと暖房用電気ヒータと暖房用ヒータと空調用通路とを示す図である。
【図4】実施例2に係る暖房装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の実施例1について図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、この電気自動車EVは、エンジン1と、ジェネレータ2と、高電圧のメインバッテリ3と、このメインバッテリ3と電気的に接続され且つメインバッテリ3よりも低電圧のサブバッテリ12と、メインバッテリ3とサブバッテリ12との間に設けられたDC/DCコンバータ10と、走行駆動源としてのトラクションモータ4と、電力を用いて車室内の空気を加熱可能な暖房用電気ヒータ6と、エンジン1の熱を用いて車室内の空気を加熱可能な暖房用ヒータ11と、制御手段7等を備えている。
【0018】
エンジン1は、電気自動車EVに搭載された内燃機関(例えば、ロータリエンジン)により形成され、メインバッテリ3の充電状態(SOC)が設定値A0(例えば、30%)以下の充電走行モードのとき、運転が開始され、SOCが設定値A0超の放電走行モードのとき、運転が停止される。このエンジン1の出力軸はジェネレータ2の回転軸に連結されている。図1,2に示すように、エンジン1は、空調用通路15に設けられた暖房用ヒータ11へエンジン1の冷却水を供給する供給通路14aと、エンジン1の冷却水を暖房用ヒータ11からエンジン1へ還流する還流通路14bとを備えている。供給通路14aには、、エンジン1から暖房用ヒータ11への冷却水の流れを許容する弁体(図示略)が設けられている。この弁体は、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te(例えば、85℃)以上のとき、開作動し、設定温度Te未満のとき、閉作動するよう形成されている。
【0019】
ジェネレータ2は、発電機(例えば、三相交流オルタネータ)により形成され、エンジン1の回転駆動力により発電可能に形成されている。ジェネレータ2は、U相とV相とW相に応じた各相コイルを備え、これら相コイルの端部が第1インバータ8に電気的に接続されている。ジェネレータ2により発電された三相交流電力は、第1インバータ8で所定の直流電力(例えば、200〜250V)に変換されて出力される。
第1インバータ8は、電気的に並列状に配置されたU相とV相とW相とを備えた公知の電力変換装置である。第1インバータ8の出力端子は、メインバッテリ3と、第2インバータ9と、DC/DCコンバータ10と、切替手段13とに夫々電気的に接続されている。
【0020】
第2インバータ9は、第1インバータ8と略同様に構成されている。この第2インバータ9は、メインバッテリ3又は第1インバータ8からの直流電力を三相交流電力(例えば、200〜650V)に変換してトラクションモータ4に出力している。モータ4の回転軸は、差動ギヤ部材33を介して駆動輪31と一体回転可能な駆動軸32に接続され、トラクションモータ4から駆動輪31へ走行駆動力が伝達される。駆動軸32には、円盤状のブレーキディスク34aと、このブレーキディスク34aを押圧して電気自動車EVの制動力を発生するブレーキ装置34bが設けられている。また、車両減速時には、駆動軸32の運動エネルギがモータ4側へ伝達され、モータ4がジェネレータとして作動して伝達された運動エネルギを三相交流電力に変換する。この三相交流電力は第2インバータ9によって所定の直流電力に変換された後、メインバッテリ3に充電されている。
【0021】
メインバッテリ3は、リチウム電池により形成され、第1インバータ8から出力された高い直流電力を充放電可能に構成されている。
サブバッテリ12は、通常の車載電気負荷給電用電池により形成され、DC/DCコンバータ10により変換された低い直流電力(例えば、12V)を充放電可能に構成されている。
尚、メインバッテリ3は、リチウム電池に限られず、ニッケル水素電池や大容量コンデンサ(キャパシタ)であっても良い。
【0022】
DC/DCコンバータ10は、安定化降圧回路を備え、メインバッテリ3又は第1インバータ8等、所謂高電圧系統から供給される高い直流電力を低い直流電力へ変換可能に形成されている。このDC/DCコンバータ10は、サブバッテリ12と電気的に接続され、SOCが設定値A0よりも高い設定値A1(例えば、35%)超のとき、高電圧系統とサブバッテリ12とを電気的に接続する第1形態と、SOCが設定値A1以下のとき、高電圧系統とサブバッテリ12との接続を遮断する第2形態とに切替え可能に構成されている。
【0023】
暖房用電気ヒータ6は、給電により放熱可能に形成され、対応電源レベルを内部で切替え可能な電熱ヒータである。この暖房用電気ヒータ6は、低電圧(例えば、12V)の電源電圧で放熱することができ、高電圧(例えば、200〜250V)の電源電圧では低電圧の電源電圧よりも高い放熱効果を発揮することができる。
暖房用電気ヒータ6と暖房用ヒータ11とは、空調用通路15の内部に設けられ、暖房用電気ヒータ6は暖房用ヒータ11の上流側位置に前後に隣り合って設置されている。暖房用電気ヒータ6と暖房用ヒータ11とは、車室内に設けられた暖房用釦5のオンオフ操作で作動可能に形成されている。
【0024】
暖房用電気ヒータ6は、切替手段13を介して高電圧系統に接続される接続状態とサブバッテリ12側の低電圧系統に接続される接続状態とに切替え可能に形成されている。
切替手段13は、暖房用釦5がオン操作された(乗員による暖房要求がある)とき、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te以上の場合、暖房用電気ヒータ6と高低両方の電圧系統との接続を遮断している。このとき、暖房用ヒータ11による第1暖房モードが実行される。
【0025】
更に、切替手段13は、暖房用釦5がオン操作されたとき、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te未満且つSOCが設定値A1以下の場合、暖房用電気ヒータ6とサブバッテリ12とを接続して第2暖房モードに切替え、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te未満且つSOCが設定値A1超の場合、暖房用電気ヒータ6と高電圧系統とを接続して第3暖房モードに切替え可能に形成されている。
【0026】
図2に示すように、空調用通路15は、空調空気が図において右方から左方へ流れて車室内へ供給されるように形成されている。空調用通路15内には、暖房用電気ヒータ6と、暖房用ヒータ11と、ダンパ16と、冷房用エバポレータ17等が設けられている。空調空気は、全量がエバポレータ17を通過し、その後、ダンパ16により暖房用電気ヒータ6及び暖房用ヒータ11を通過する空調空気と、バイパス通路18を通過する空調空気とに分流されている。
【0027】
暖房用ヒータ11は、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te以上のとき、エンジン1の熱量を蓄積した冷却水が供給され、この冷却水と空調空気とが熱交換することにより空調空気を加熱している。第1暖房モードでは、供給通路14aに設けられた弁体が開作動され、エンジン1の冷却水が暖房用ヒータ11へ供給された後、空調空気と熱交換を終えた冷却水が還流通路14bを流れてエンジン1に還流する。
【0028】
ダンパ16は、暖房用電気ヒータ6及び暖房用ヒータ11を通過する空調空気と、バイパス通路18を通過する空調空気との流量割合を任意に調整可能に形成されている。このダンパ16は、電磁式アクチュエータ(図示略)により駆動されている。エバポレータ17は、冷媒による空調空気の冷却装置として形成されている。
【0029】
次に、図1に基づいて制御手段7について説明する。
制御手段7は、エンジン1と、ジェネレータ2と、暖房用電気ヒータ6と、DC/DCコンバータ10と、暖房用ヒータ11等を制御している。この制御手段7は、車両制御手段(VCM)21と、運転条件制御手段(RLCM)22と、ECU(Engine Control Unit)23と、ジェネレータ制御手段(GCM)24と、第1バッテリ制御手段(1BCM)25と、第2バッテリ制御手段(2BCM)26と、トラクションモータ制御手段(TMCM)27と、ABS(Antilock Brake System)28とから構成されている。
【0030】
VCM21は、メインバッテリ3のSOCに応じて走行状態を放電走行モードと充電走行モードのうち何れかの走行制御モードに切替えると共に、乗員が暖房用釦5をオン操作したとき、エンジン1の運転状態とエンジン温度(冷却水温)とメインバッテリ3のSOCとに基づき暖房状態を第1〜3暖房モードのうち何れかの暖房モードに切替えるように電気自動車EVを統合制御している。このVCM21は、RLCM22と、1BCM25と、2BCM26と、TMCM27と、ABS28とに対して相互通信可能に接続され、各制御手段からの情報に応じて夫々の制御手段を協調制御している。
【0031】
VCM21は、電気自動車EVが走行開始後においてSOCが設定値A0超のとき、放電走行モードと判定する。放電走行モードのとき、電気自動車EVは、エンジン1の運転を停止すると共にメインバッテリ3からの給電によりモータ4を駆動している。
所定距離走行後、VCM21は、SOCが設定値A0以下まで減少したとき、充電走行モードと判定する。充電走行モードのとき、電気自動車EVは、エンジン1の運転を開始すると共にジェネレータ2がメインバッテリ3とモータ4とに電力を供給する。
メインバッテリ3が充電を開始した後、SOCが設定値A1よりも高い設定値A2(例えば、95%)まで増加したとき、VCM21は、走行制御モードを充電走行モードから放電走行モードへ切替える。
【0032】
RLCM22は、ECU23とGCM24とを統括し、エンジン1の運転条件とジェネレータ2の発電条件等を判定された走行制御モードに応じて設定している。
RLCM22には、エンジン1のスロットル弁(図示略)が全開且つエンジン回転数一定を条件として、エンジン回転数とエンジン負荷(トルク)との関係を実験等により求められた高燃費且つ駆動効率の高い運転マップが予め記憶されている。
【0033】
ECU23は、RLCM22により設定された運転マップに基づきエンジン1を制御している。ECU23には、エンジン回転数、吸入空気量、冷却水温度等の各種検出信号が入力され、運転マップに基づいて燃料噴射量、燃料噴射時期、排気開弁タイミング、点火時期等の条件が設定され、設定条件に基づきエンジン1を運転制御している。
放電走行モードのとき、ECU23はエンジン1の運転を停止している。
【0034】
ECU23は、乗員が暖房用釦5をオン操作した際、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te以上の場合、供給通路14aに設けられた弁体を開作動させ、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te未満のとき、供給通路14aに設けられた弁体を閉作動させてエンジン1の冷却水の流れを制御している。これにより、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te以上のとき、第1暖房モードを実行している。
【0035】
GCM24は、RLCM22により設定された所定の電力が出力されるようにジェネレータ2の発電を制御している。このGCM24は、充電走行モードのとき、第1インバータ8によりジェネレータ2で発電された三相交流電力を200〜250Vの直流電力に変換し、メインバッテリ3、第2インバータ9及び暖房用電気ヒータ6等へ出力している。
【0036】
以上により、充電走行モードのとき、第1インバータ8から出力された直流電力は、メインバッテリ3に充電される電力と、第2インバータ9を介してモータ4へ給電される電力と、切替手段13を介して暖房用電気ヒータ6へ給電される電力と、DC/DCコンバータ10を介してサブバッテリ12に充電される電力とに分配されている。
また、放電走行モードのとき、メインバッテリ3から出力された直流電力は、第2インバータ9を介してモータ4へ給電される電力と、DC/DCコンバータ10を介してサブバッテリ12に充電される電力とに分配されている。
【0037】
1BCM25は、VCM21により判定された走行制御モードに応じて、メインバッテリ3を制御している。1BCM25は、メインバッテリ3の電流、電圧及び温度を検出し、電流と電圧とからメインバッテリ3のSOCを演算可能に形成され、メインバッテリ温度やSOC等をVCM21へ出力している。この1BCM25は、充電走行モードのとき、第1インバータ8から出力された直流電力をメインバッテリ3に充電し、放電走行モードのとき、メインバッテリ3から直流電力を放電している。
【0038】
2BCM26は、DC/DCコンバータ10と、切替手段13とを制御している。
この2BCM26は、SOCが設定値A1超のとき、高電圧系統とサブバッテリ12とを接続(第1形態)し、SOCが設定値A1以下のとき、高電圧系統とサブバッテリ12とを遮断(第2形態)するようにDC/DCコンバータ10を切替え制御している。これにより、DC/DCコンバータ10が第1形態のとき、サブバッテリ12の充電が行われる。
【0039】
2BCM26は、暖房用釦5がオン操作されて乗員による暖房要求があるとき、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te以上の場合、暖房用電気ヒータ6と高低両電圧系統との電気的接続を遮断し、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te未満且つSOCが設定値A1以下の場合、暖房用電気ヒータ6とサブバッテリ12とを接続し、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te未満且つSOCが設定値A1超の場合、暖房用電気ヒータ6と高電圧系統とを接続するように切替手段13を切替え制御している。これにより、第2暖房モード及び第3暖房モードを実行している。
【0040】
TMCM27は、乗員によるアクセルペダル踏込み量等の各種検出信号が入力され、RLCM22により設定された所定の駆動力が出力されるようにモータ4の出力トルクを制御している。このTMCM27は、第2インバータ9により直流電力を三相交流電力に変換し、モータ4へ出力している。
ABS28は、乗員によるブレーキペダル踏込み量等の各種検出信号が入力され、ブレーキ装置34bによるブレーキディスク34aの押圧力や押圧タイミング等を制御している。
【0041】
次に、本電気自動車EVの暖房制御について、図3のフローチャートに基づき説明する。尚、Si(i=1,2…)は各ステップを示す。
本実施例では、通常走行時、SOCに応じて充電走行モードと放電走行モードとにより電気自動車EVが走行制御されている。本暖房制御は、暖房用釦5がオン操作されたとき、前記走行制御と独立した処理として実行されている。
【0042】
まず、乗員による暖房要求があるか否か判定する(S1)。
S1の判定の結果、暖房用釦5がオン操作されている場合、乗員による暖房要求があるため、S2へ移行しエンジン1が運転中か否か判定する。S1の判定の結果、暖房用釦5がオフ操作されている場合、本暖房制御を終了する。
【0043】
S2の判定の結果、エンジン1が運転している場合、S3へ移行しエンジン1の冷却水温Tが設定温度Te以上か否か判定する。S3の判定の結果、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te以上の場合、エンジン1の冷却水が空調空気を加熱可能であるため、S4へ移行し第1暖房モードを実行する。S4では、供給通路14aに設けられた弁体を開操作している。これにより、エンジン1の冷却損を利用することができ、SOCに拘わらず車室内を昇温することができる。
【0044】
S3の判定の結果、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te未満の場合、冷却水温Tが低いため、S5へ移行しメインバッテリ3のSOCが設定値A1以下か否か判定する。
S5の判定の結果、メインバッテリ3のSOCが設定値A1以下の場合、メインバッテリ3の充電状態が低いため、S6へ移行し第2暖房モードを実行する。S6では、切替手段13が暖房用電気ヒータ6とサブバッテリ12とを接続するように切替えられる。これにより、メインバッテリ3の電力を消費することなく車室内を昇温することができる。
【0045】
S5の判定の結果、メインバッテリ3のSOCが設定値A1超の場合、メインバッテリ3の充電状態が高いため、S7へ移行し第3暖房モードを実行する。S7では、切替手段13が暖房用電気ヒータ6と高電圧系統とを接続するように切替えられる。これにより、暖房能率を高くでき、車室内を早期に昇温することができる。
S2の判定の結果、エンジン1が運転していない場合、S5へ移行する。
【0046】
次に、実施例1に係る暖房装置の作用・効果について説明する。
この暖房装置は、メインバッテリ3のSOCが設定値A1以下のとき、メインバッテリ3の電力を消費せずに暖房用電気ヒータ6を作動できるため、メインバッテリ3の充電促進と暖房用電気ヒータ6による暖房性能確保とを図ることができる。しかも、メインバッテリ3の電力を消費せずに暖房性能を確保できるため、エンジン1の運転状態を燃費改善を優先した駆動効率の高い運転状態に維持することができ、乗員による暖房要求がある場合でも、早期にメインバッテリ3を充電してモータ4の駆動力を確保でき、その結果、十分な走行性能を得ることができる
【0047】
制御手段7は、メインバッテリ3のSOCが設定値A1超のとき、サブバッテリ12から暖房用電気ヒータ6への給電を遮断し、メインバッテリ3から暖房用電気ヒータ6に給電可能に形成されているため、ジェネレータ2により発電された電力をメインバッテリ3から暖房用電気ヒータ6に給電できると共にDC/DCコンバータ10による変換前の高い電力を暖房用電気ヒータ6に給電でき、車室内の暖房能率を向上することができる。
【0048】
車室内の空気をエンジン1の熱を用いて加熱する暖房用ヒータ11を有し、制御手段7は、運転中のエンジン1の冷却水温Tが設定温度Te以上のとき、暖房用電気ヒータ6の作動を停止し、暖房用ヒータ11を作動させるため、エンジン1の熱を利用した暖房用ヒータ11により車室内を暖房することができ、暖房性能を確保しつつ両バッテリ3,12の消費電力を抑制することができる。
【実施例2】
【0049】
次に、実施例2に係る電気自動車EVAの暖房装置について図4に基づいて説明する。 尚、前記実施例1の電気自動車EVと異なる構成についてのみ説明し、実施例1と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
DC/DCコンバータ10は、サブバッテリ12と暖房用電気ヒータ6Aとに電気的に並列接続され、SOCが設定値A0よりも高い設定値A1超のとき、高電圧系統とサブバッテリ12とを電気的に接続する第1形態と、SOCが設定値A1以下のとき、高電圧系統とサブバッテリ12との接続を遮断する第2形態とに切替え可能に構成されている。
【0051】
暖房用電気ヒータ6Aは、低電圧(例えば、12V)の供給で放熱可能に形成されている。この暖房用電気ヒータ6Aは、暖房用釦5のオンオフ操作に連動可能なリレースイッチ19を備えている。これにより、暖房用釦5がオン操作されたとき、暖房用電気ヒータ6Aはサブバッテリ12と電気的に接続され、暖房用釦5がオフ操作されたとき、暖房用電気ヒータ6Aとサブバッテリ12とは電気的に遮断される。
【0052】
制御手段7Aは、VCM21と、RLCM22と、ECU23と、GCM24と、1BCM25と、2BCM26Aと、TMCM27と、ABS28とから構成されている。
2BCM26Aは、DC/DCコンバータ10とリレースイッチ19とを制御している。
この2BCM26Aは、SOCが設定値A1超のとき、高電圧系統とサブバッテリ12とを接続(第1形態)し、SOCが設定値A1以下のとき、高電圧系統とサブバッテリ12とを遮断(第2形態)するようDC/DCコンバータ10を切替え制御している。
2BCM26Aは、暖房用釦5がオン操作されたとき、サブバッテリ12から暖房用電気ヒータ6Aへの電力供給を許容し、暖房用釦5がオフ操作されたとき、サブバッテリ12から暖房用電気ヒータ6Aへの電力供給を禁止している。
【0053】
これにより、暖房用釦5がオン操作されたとき、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te以上の場合、エンジン1の冷却損を利用してSOCに拘わらず車室内を昇温することができ、エンジン1の冷却水温Tが設定温度Te未満の場合、メインバッテリ3の電力を消費することなく車室内を昇温することができる。
【0054】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、走行用モータ単独で駆動輪を回転駆動し、エンジンは充電のみ行う電気自動車の例を説明したが、運転状態に応じて走行用モータとエンジンとが駆動輪を回転駆動するハイブリッド自動車に適用することも可能である。
【0055】
2〕前記実施例においては、暖房用ヒータの媒体をエンジンの冷却水にした例を説明したが、媒体として排気ガスを用い、エンジンの排気損に応じた熱量を空調空気の加熱に利用することも可能である。また、暖房用電気ヒータと暖房用ヒータとを別々に作動させる例を説明したが、冷却水温が高く且つSOCが高い場合、乗員が早期昇温を要求するとき、両ヒータを作動させることも可能である。
【0056】
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、暖房用電気ヒータを備えた電気駆動車両の暖房装置において、メインバッテリの充電状態が低いとき、メインバッテリからサブバッテリへの電力供給を遮断し、メインバッテリの充電状態が高いとき、メインバッテリからサブバッテリへの電力供給を許容することで、エンジンの燃費悪化を防止し、バッテリによるモータ駆動力確保と暖房用電気ヒータの暖房性能確保とを両立することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 エンジン
2 ジェネレータ
3 メインバッテリ
4 モータ
6,6A 暖房用電気ヒータ
7,7A 制御手段
10 DC/DCコンバータ
11 暖房用ヒータ
12 サブバッテリ
EV,EVA 電気自動車



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンにより駆動されるジェネレータと、このジェネレータにより発電された電力を充電可能なメインバッテリと、このメインバッテリと電気的に接続されたサブバッテリと、前記メインバッテリから給電されて走行駆動力を発生するモータと、前記サブバッテリから給電され且つ車室内の空気を加熱する暖房用電気ヒータと、前記メインバッテリとサブバッテリとの間に設けられたDC/DCコンバータと、前記暖房用電気ヒータとDC/DCコンバータとを制御する制御手段とを備えた電気駆動車両の暖房装置において、
前記制御手段は、前記メインバッテリの充電状態が設定充電状態よりも低いとき、メインバッテリからサブバッテリへの電力供給を遮断し、前記メインバッテリの充電状態が設定充電状態よりも高いとき、メインバッテリからサブバッテリへの電力供給を許容することを特徴とする電気駆動車両の暖房装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記メインバッテリの充電状態が設定充電状態よりも高いとき、前記サブバッテリから前記暖房用電気ヒータへの給電を遮断し、前記メインバッテリから前記暖房用電気ヒータに給電可能であることを特徴とする請求項1に記載の電気駆動車両の暖房装置。
【請求項3】
車室内の空気を前記エンジンの熱を用いて加熱する暖房用ヒータを有し、
前記制御手段は、運転中のエンジン温度が設定温度以上のとき、前記暖房用電気ヒータの作動を停止し、前記暖房用ヒータを作動させることをことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気駆動車両の暖房装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−18420(P2013−18420A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154709(P2011−154709)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】