説明

電池および電池モジュール

【課題】電流を確実に制限または遮断して電池の劣化や故障を防止できる電池を提供すること。
【解決手段】正極端子50が、一端が閉塞された筒状部511と、鍔部512とを備え、鍔部512がケース30の内側に配置されて固定された外側部材51と、正極と電気的に接続された基部521と、筒状部511に摺動可能に嵌挿される突部522と、を備え、基部521が鍔部512に当接して外側部材51と電気的に接続される内側部材52と、通常時において内側部材52と外側部材51の電気的接続状態を保持する係止爪53と、内側部材52を摺動させる駆動力を、熱により発生する熱膨張材59と、を備え、電池1が発熱したときに、熱膨張材59の膨張力によって、係止爪53による接続が解除されて基部521が鍔部512から離隔する方向に内側部材52が摺動することにより、内側部材52と外側部材51との電気的な接続が制限または遮断される電池1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池および電池モジュールに関する。詳しくは、電池の劣化や故障を防止する電流遮断機構を備えた電池および電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気自動車やハイブリッド車の動力源として、大型のリチウムイオン2次電池が用いられている。このリチウムイオン2次電池は、単電池(以下、セルという)を複数接続してなる組電池であり、動力源として必要な電圧を出力する。
【0003】
ところで、このリチウムイオン2次電池を並列に接続し、各セルの電流負荷を軽減させるために、複数のセルを並列に接続した場合において、複数のセルのうちの1つが短絡すると、短絡したセル内部のエネルギーによる発熱に加えて、他の並列セルからの電流が流れ込むことによる発熱が生じる。
【0004】
上記の発熱を防止するために、種々の提案がなされている。
例えば、内圧の上昇に伴って内圧方向に変形する防爆弁に、リード遮断用ストリッパーを取付けた防爆型密閉電池が提案されている(特許文献1参照)。この防爆型密閉電池では、所定の内圧に達したときに、リード板が防爆弁より剥離することにより、あるいはリード板が破断することにより、電流が遮断される。
【0005】
また、負極板および正極板の少なくとも一方の集電耳部と、電池端子とを、電気的に接続するリード板に、ヒューズを配設した角型リチウムイオン電池が提案されている(特許文献2参照)。この角型リチウムイオン電池では、内部短絡が発生すると、ヒューズが溶断し、内部短絡の発生した電極が電池から切り離される。
【0006】
また、負極リードと、負極端子とが、負極リードと負極端子間で発生するジュール熱により溶融するSn合金膜を介して電気的に接続された非水電解質二次電池が提案されている(特許文献3参照)。この非水電解質二次電池では、過大電流が流れると、負極リードと負極端子との間で発生するジュール熱により、Sn合金膜が溶融し、負極リードと負極端子とが電気的に遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2701375号公報
【特許文献2】特開平8−50920号公報
【特許文献3】特開2009−211936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の電池では、リードを遮断する条件として、セル内部の圧力を利用する関係で、円筒型のセルが用いられる。このため、変形し易い角型のセル、特にアルミ製のケースを用いた角型のセル等の場合には、リードを遮断する条件に個体差が生じてしまう。ケースの変形を防止するためには、ケース板厚を厚くしたり、拘束部品を別途設ける必要があり、この場合には、電池の重量が増加してしまう。
【0009】
また、特許文献1の電池では、セル内部での電解液の沸騰による内部圧力の上昇により、弁が作動する機構であるため、電池性能に応じて電解液組成が決定される。このため、電流の遮断に最適なより低沸点の電解液組成に設定することができず、電流の遮断が遅れるうえ、添加剤を電解液に加えると、電池の抵抗が上昇する等の問題があった。
【0010】
また、特許文献1の電池では、例えばセルの外側に釘等が刺さって内部短絡した場合には、内圧が開放されるため、弁を作動させることができない。その結果、他の並列セルから電流が流れ込み、発熱するおそれがあった。
【0011】
一方、特許文献2や3の電池のように、リードと集電部との間にヒューズを介在させた場合には、ヒューズが抵抗体となって電池の内部抵抗が増大してしまう問題があった。また、電池が大型化すると、ヒューズ自体も大型化するため、車載用としては不向きである。さらには、大電流が流れたときに電流が遮断される機構であるため、既に電池内部では短絡や発熱が生じた後であり、電池の劣化や故障は避けられない。
【0012】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、セルの内圧やヒューズを利用した電流遮断機構によらずに、電流を確実に制限または遮断して電池の劣化や故障を防止できる電池および電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため第1の発明では、正極(例えば、後述の正極集電タブ15)と、負極(例えば、後述の負極集電タブ17)と、を備える蓄電素子(例えば、後述の蓄電素子10)と、前記正極と電気的に接続された正極端子(例えば、後述の正極端子50,60,70,80)と、前記負極と電気的に接続された負極端子(例えば、後述の負極端子100)と、前記蓄電素子を収容して保持するケース(例えば、後述のケース30)と、を備える電池(例えば、後述のリチウムイオン2次電池1,2,3,4)を提供する。
第1の発明に係る電池では、前記正極端子と前記負極端子のうち少なくとも一方の電極の端子は、一端が閉塞され他端が開口された筒状部(例えば、後述の筒状部511)と、開口端から径方向外側に延設された鍔部(例えば、後述の鍔部512)と、を備え、閉塞端側が前記ケースの外側に配置されるとともに、開口端側が前記ケースの内側に配置されて前記ケースに固定された外側部材(例えば、後述の外側部材51)と、前記一方の電極と電気的に接続された基部(例えば、後述の基部521)と、当該基部から突出して前記筒状部に摺動可能に嵌挿される突部(例えば、後述の突部522,622)と、を備え、前記基部が前記鍔部に当接することにより、前記外側部材と電気的に接続される内側部材(例えば、後述の内側部材52,62)と、通常時において、前記基部が前記鍔部に当接した状態を保持することにより、前記内側部材と前記外側部材との電気的な接続を保持する接続保持手段(例えば、後述の係止爪53,溶接層73,正極集電リード板99)と、前記内側部材を前記筒状部の軸方向に摺動させる駆動力を、熱により発生する駆動手段(例えば、後述の熱膨張材59,弾性部材71)と、を備え、前記電池が発熱したときに、前記駆動手段で発生する駆動力によって、前記接続保持手段による接続が解除されて前記基部が前記鍔部から離隔する方向に前記内側部材が摺動することにより、前記内側部材と前記外側部材との電気的な接続が制限または遮断されることを特徴とする。
【0014】
第1の発明では、ケース内の圧力の影響を受け難い端子に、電流を制限または遮断する機構を設けた。具体的には、端子の温度の上昇に応じて電気抵抗を上昇させ、充電電流や放電電流を制限または遮断する機構を設けた。この電流遮断機構は、上記の構成からなる内側部材と外側部材の接触面積を温度に応じて変化させることにより、電気抵抗を変化させるPTC(自己温度制御)機能を備え、内側部材と外側部材の接触面積を減少させることにより、電気抵抗を上昇させて、電流を制限または遮断する。通常時において当接している内側部材と外側部材の接触面積の減少は、電池の発熱により駆動手段で発生する駆動力によって、内側部材の基部が外側部材の鍔部から離隔する方向に内側部材が摺動することにより達成される。
【0015】
第1の発明によれば、通常時においては、接続保持手段により、突部が筒状部に嵌挿されて基部が鍔部に当接した状態が保持され、内側部材と外側部材の電気的な接続が保持される。ここで、通常時とは、電池の発熱が生じた時を除く意味である。
これに対して、例えば過充電時や短絡等が発生した場合には、電池が発熱して端子の温度が上昇する。すると、駆動手段が駆動力を発生し、発生した駆動力によって、接続保持手段による接続が解除されて基部が鍔部から離隔する方向に内側部材が摺動することにより、内側部材と外側部材との接触面積が減少する。これにより、電気抵抗が上昇し、内側部材と外側部材との電気的な接続が制限または遮断される。従って、第1の発明によれば、さらなる発熱を確実に防止でき、電池の劣化や故障を回避できる。
【0016】
また、第1の発明の電流遮断機構は、内圧に基づいて電流を遮断する従来の機構とは異なり、温度に基づいて駆動するため、ケース内の圧力が上昇して圧力弁等により内圧が開放される条件下であっても、電流を制限または遮断できる。
また、ケースの剛性を高く設計する必要がないため、ケースを軽量化できる。加えて、端子部分を中空にする構造であるため、端子を軽量化でき、電池の軽量化が可能である。
また、端子部分に電流遮断機構を設けるため、蓄電素子の配置スペースが犠牲にされることがなく、ケースを小型化でき、電池の小型化が可能である。
また、例えば、電極端子と電極との接続にリード板を用いる場合には、従来のようにリード板を破断させる必要が無いため、リード板の板厚を大きく設定でき、電気抵抗を小さくできる。
【0017】
また、第2の発明では、通常時において、前記突部と前記筒状部との間には密閉空間(例えば、後述の密閉空間58,68)が形成され、前記接続保持手段は、前記内側部材を前記外側部材に係止する係止爪(例えば、後述の係止爪53)であり、前記駆動手段は、前記密閉空間に封入されて熱により体積が膨張する熱膨張材(例えば、後述の熱膨張材59)であり、前記電池が発熱したときに、前記熱膨張材の体積が膨張することによって、前記係止爪による係止が解除されて前記基部が前記鍔部から離隔する方向に前記内側部材が摺動することにより、前記内側部材と前記外側部材との電気的な接続が制限または遮断されることを特徴とする。
【0018】
第2の発明では、通常時において、突部と筒状部との間に密閉空間が形成されるように突部を構成するとともに、この密閉空間に、駆動手段としての熱膨張材を封入した。また、接続保持手段として、内側部材と外側部材とを係止する係止爪を設けた。
第2の発明によれば、電池が発熱したときに、内側部材を摺動させる駆動力として、密閉空間に封入した熱膨張材の膨張力が利用される。この熱膨張材の膨張力により、係止爪による係止が解除されて基部が鍔部から離隔する方向に内側部材が摺動することにより、内側部材と外側部材との電気的な接続が制限または遮断される。従って、第1の発明の効果が確実に奏される。
【0019】
また、第2の発明によれば、熱膨張材として、所望の膨張開始温度や所望の膨張力を有する熱膨張材を選択できるため、電流遮断機構の駆動温度を自由に設定できる。例えば、電池の性能に影響を及ぼしはじめる温度である60℃付近から、緩やかに電気抵抗を上昇させることができる。突部が筒状部から離脱する等、密閉空間に封入した熱膨張材がケース内に排出されない温度条件下であれば、繰り返し使用することができる。
また、ケース内の圧力に基づいて電流を遮断する従来の機構では、ケースが変形して内圧がばらつくことにより、確実性および迅速性に難があった。これに対して、第2の発明によれば、強度の高い端子内に形成した密閉空間に熱膨張材を封入するため、熱膨張材の膨張力を内側部材の駆動に直接利用して電流を制限または遮断できる。従って、従来のケース内の圧力を利用したものに比べて、より確実かつ迅速に電流を制限または遮断できる。
【0020】
第3の発明では、前記突部は、先端が開口された中空の突部(例えば、後述の突部522)であるか、またはその突出長さが前記筒状部の長さよりも短く形成された突部(例えば、後述の突部622)であることを特徴とする。
【0021】
第3の発明では、内側部材の突部を、先端が開口した中空状に形成した。または、その突出長さが筒状部の長さよりも短く設定して形成した。
先端が開口した中空状の突部の場合には、この突部の中空部と筒状部とにより、密閉空間が形成される。また、その突出長さを筒状部の長さよりも短く設定した突部の場合には、この突部の先端と筒状部とにより、密閉空間が形成される。従って、第3の発明によれば、駆動手段としての熱膨張材を封入する密閉空間を確実に確保することができ、第2の発明の効果が確実に奏される。
【0022】
第4の発明では、前記突部は、前記基部が前記鍔部から離隔する方向に前記内側部材が摺動したときに、前記密閉空間と前記ケースの内部とが連通するように形成され、前記熱膨張材は、消火剤を含み、前記電池が発熱したときに、前記熱膨張材の体積が膨張することによって、前記接続保持手段による接続が解除されて前記基部が前記鍔部から離隔する方向に前記内側部材が摺動することにより、前記内側部材と前記外側部材との電気的な接続が制限または遮断されるとともに、前記密閉空間と前記ケースの内部とが連通して前記消火剤が前記ケース内に導入されることを特徴とする。
【0023】
第4の発明では、電池が発熱して基部が鍔部から離隔する方向に内側部材が摺動したときに、密閉空間がケースの内部と連通するように突部を形成した。また、密閉空間に封入する熱膨張材に、消火剤を含有させた。
第4の発明によれば、電池が発熱し、熱膨張材の体積が膨張することによって基部が鍔部から離隔する方向に内側部材が摺動したときに、内側部材と外側部材との電気的な接続が制限または遮断されるとともに、密閉空間がケースの内部と連通する。これにより、第2および第3の発明の効果が奏される他、密閉空間に封入されていた消火剤がケース内に導入されるため、電池の劣化や故障を防止できる。
なお、基部が鍔部から離隔する方向に内側部材が摺動したときに密閉空間がケースの内部と連通する構成としては、例えば、突部の突出長さを、熱膨張材の膨張力により内側部材が摺動する距離よりも短く設定し、基部が鍔部から離隔する方向に内側部材が摺動したときに、突部が筒状部から離脱する構成等が挙げられる。
【0024】
第5の発明では、前記ケースは、当該ケース内の圧力を開放する圧力弁(例えば、後述の圧力弁35)を備えることを特徴とする。
【0025】
第5の発明では、ケース内の圧力が上昇したときに、ケース内の圧力を開放する圧力弁を設けた。
上記の第4の発明において、電池が発熱したときには、密閉空間に封入されていた熱膨張材および消火剤がケース内に導入されるが、これらの導入により、ケース内の圧力が上昇する。そこで、第5の発明によれば、圧力弁によってケース内の圧力を開放できるため、ケースの変形を防止できる。また、圧力弁が開放されるため、異常の有無を外部から容易に判別することができる。
【0026】
第6の発明では、前記突部は、その突出長さが前記筒状部の長さよりも短く形成され、前記接続保持手段は、前記内側部材と前記外側部材を溶接する溶接層(例えば、後述の溶接層73)であり、前記駆動手段は、前記突部と前記筒状部とで形成される密閉空間に配設されて熱により前記筒状部の軸方向に伸張する形状記憶合金からなる弾性部材(例えば、後述の弾性部材71)であり、前記電池が発熱したときに、前記形状記憶合金からなる弾性部材が前記筒状部の軸方向に伸張することによって、前記溶接層が破断して前記基部が前記鍔部から離隔する方向に前記内側部材が摺動することにより、前記内側部材と前記外側部材との電気的な接続が制限または遮断されることを特徴とする。
【0027】
第6の発明では、その突出長さが筒状部の長さよりも短い突部を形成するとともに、接続保持手段として、内側部材と外側部材を溶接する溶接層を設けた。また、駆動手段として、突部と筒状部とで形成される密閉空間に、熱により筒状部の軸方向に伸張する形状記憶合金からなる弾性部材を設けた。
第6の発明によれば、電池が発熱したときに内側部材を摺動させる駆動力として、密閉空間に配設した形状記憶合金からなる弾性部材の軸方向の伸張力が利用される。この伸張力によって、溶接層が破断し、基部が鍔部から離隔する方向に内側部材が摺動することにより、内側部材と外側部材との電気的な接続が制限または遮断される。この第6の発明における電流遮断機構は、上記の第2の発明における電流遮断機構と比べて、内側部材の動作設計が簡便であり、より確実である。従って、第6の発明によれば、第1の発明の効果がより確実に奏される。
【0028】
第7の発明では、前記突部は、その突出長さが前記筒状部の長さよりも短く形成され、前記接続保持手段は、前記基部と前記一方の電極とを電気的に接続するとともに、前記基部が前記鍔部に当接する方向に前記内側部材を付勢するリード板(例えば、後述の正極集電リード板99)であり、前記駆動手段は、前記突部と前記筒状部とで形成される密閉空間に配設されて熱により前記筒状部の軸方向に伸張する形状記憶合金からなる弾性部材(例えば、後述の弾性部材71)であり、前記電池が発熱したときに、前記形状記憶合金からなる弾性部材が前記筒状部の軸方向に伸張することによって、前記リード板による付勢力に対抗して前記基部が前記鍔部から離隔する方向に前記内側部材が摺動することにより、前記内側部材と前記外側部材との電気的な接続が制限または遮断されることを特徴とする。
【0029】
第7の発明では、その突出長さが筒状部の長さよりも短い突部を形成するとともに、接続保持手段として、基部と一方の電極とを電気的に接続するとともに、基部が鍔部に当接する方向に内側部材を付勢するリード板を設けた。また、駆動手段として、突部と筒状部とで形成される密閉空間に、熱により筒状部の軸方向に伸張する形状記憶合金からなる弾性部材を設けた。
第7の発明によれば、電池が発熱したときに内側部材を摺動させる駆動力として、密閉空間に配設した形状記憶合金からなる弾性部材の軸方向の伸張力が利用される。この伸張力によって、リード板による付勢力に対抗して基部が鍔部から離隔する方向に内側部材が摺動することにより、内側部材と外側部材との電気的な接続が制限または遮断される。この第7の発明における電流遮断機構は、上記の第2の発明における電流遮断機構と比べて、内側部材の動作設計が簡便であり、より確実である。従って、第7の発明によれば、第1の発明の効果がより確実に奏される。
また、第7の発明では、接続保持手段として、リード板の付勢力が利用されるため、電池の発熱により形状記憶合金からなる弾性部材が、一旦、伸張した後、温度が低下して縮小したときに、再びリード板の付勢力によって、内側部材と外側部材の電気的な接続を復活させることができる。従って、第7の発明に係る電池は、繰り返しの使用が可能である。
【0030】
第8の発明では、第1から第7の発明に係る電池が並列に接続されて形成された電池モジュールを提供する。
【0031】
第8の発明では、第1から第7の発明に係る電池を複数、並列に接続することにより、電池モジュールを形成した。
第8の発明に係る電池モジュールによれば、例えば、異物の混入といった何らかの理由により短絡が発生すると、短絡した電池の電位が低下し、他の並列電池から短絡した電池に電流が流れ込む。すると、短絡した電池が発熱し、この熱により、端子に設けられた駆動手段が駆動力を発生する。そして、この駆動力によって、接続保持手段が解除されて基部が鍔部から離隔する方向に内側部材が摺動することにより、内側部材と外側部材との電気的な接続が制限または遮断される。従って、第8の発明に係る電池モジュールによれば、さらなる発熱を確実に防止でき、発熱による電池の劣化や故障を回避できる。
また、上述したように、第1から第7の発明に係る電池は、小型化、軽量化が可能であるため、これらの電池を用いた第8の発明に係る電池モジュールによれば、その効果がより高められる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、セルの内圧やヒューズを利用した電流遮断機構によらずに、電流を確実に制限または遮断して電池の劣化や故障を防止できる電池および電池モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態に係るリチウムイオン2次電池の正面図である。
【図2】第1実施形態に係るリチウムイオン2次電池の右側面図である。
【図3】第1実施形態に係るリチウムイオン2次電池の通常時における正極端子の部分断面図である。
【図4】第1実施形態に係るリチウムイオン2次電池の正極端子の製造方法を説明するための図であり、(A)は、外側部材を形成する工程を示す図であり、(B)は、筒状部にDMCを注液する工程を示す図であり、(C)は、内側部材の突部を外側部材の筒状部に嵌挿する工程を示す図であり、(D)は、係止爪により内側部材を外側部材に係止する工程を示す図である。
【図5】第1実施形態に係るリチウムイオン2次電池の発熱時における正極端子の部分断面図である。
【図6】第2実施形態に係るリチウムイオン2次電池の通常時における正極端子の部分断面図である。
【図7】第2実施形態に係るリチウムイオン2次電池の発熱時における正極端子の部分断面図である。
【図8】第3実施形態に係るリチウムイオン2次電池の通常時における正極端子の部分断面図である。
【図9】第4実施形態に係るリチウムイオン2次電池の通常時における正極端子の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。なお、第2実施形態以降の説明において、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るリチウムイオン2次電池1の正面図であり、図2は、リチウムイオン2次電池1の右側面図である。
図1および図2に示すように、リチウムイオン2次電池1は、薄板状で角型の外形を呈する2次電池である。このリチウムイオン2次電池1は、例えば並列に複数接続されることによって、高電圧バッテリを構成する。また、このようにして構成された高圧バッテリは、電気自動車やハイブリッド車の蓄電池として使用される。
【0036】
図1および図2に示すように、リチウムイオン2次電池1は、蓄電素子10と、図示しない電解液と、ケース30と、正極端子50と、負極端子100と、正極集電リード板95と、負極集電リード板97と、を備える。
【0037】
[蓄電素子]
蓄電素子10は、蓄電素子本体11と、正極集電タブ15と、負極集電タブ17と、を含んで構成される。
蓄電素子10は、例えば、長さ(図1の左右方向の寸法)が147mm、幅が80mm(図1の上下方向の寸法)、厚さ(図2の左右方向の寸法)が38mmで形成される。
【0038】
蓄電素子本体11は、正極シートと負極シートが、絶縁性のセパレータを介して交互に積層された積層体により構成される。また、正極集電タブ15は、正極シートの積層体により構成され、負極集電タブ17は、負極シートの積層体により構成される。
なお、正極集電タブ15は、リチウムイオン2次電池1の正極を構成し、負極集電タブ17は、リチウムイオン2次電池1の負極を構成する。
【0039】
正極シートは、導電性を有する正極集電箔と、正極集電箔の両面にそれぞれ形成された正極活物質層と、を含んで構成される。正極集電箔は、例えば、矩形状のアルミニウム箔(例えば、厚さ12μm)が用いられる。
正極活物質層は、正極活物質と導電性フィラーとバインダ(接着剤)との混合物を、正極集電箔に、その長さ方向の一端側を除いて塗工した後、プレス加工することで形成される。未塗工部は、巻回されて正極集電タブ15を構成する。
例えば、塗工部の長さが131mm、未塗工部の長さが7mm、プレス後の正極シートの厚さが100μm、正極シートの電極密度が3.8g/cmとなるように形成される。
【0040】
正極活物質としては、例えば、平均粒径D50=12μmの粉末状のリチウム酸化物(LiNi0.33Mn0.33Co0.33)が用いられる。
導電性フィラーとしては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、VCGF(気相成長炭素繊維)が用いられる。
バインダとしては、例えば、PVDF(ポリビニリデンジフルオライド)が用いられる。
【0041】
負極シートは、導電性を有する負極集電箔と、負極集電箔の両面にそれぞれ形成された負極活物質層と、を含んで構成される。負極集電箔は、例えば、矩形状の銅箔(例えば、厚さ10μm)が用いられる。
負極活物質層は、負極活物質とバインダ(接着剤)との混合物を、負極集電箔に、その長さ方向の一端側を除いて塗工した後、プレス加工することで形成される。未塗工部は、巻回されて負極集電タブ17を構成する。
負極シートは、例えば、塗工部の長さが133mm、未塗工部の長さが7mm、プレス後の負極シートの厚さが100μm、負極シートの電極密度が1.5g/cmとなるように形成される。
【0042】
負極活物質としては、例えば、リチウムイオン(Li)を吸蔵/放出する炭素材料や、リチウム(Li)と金属化合物を形成する合金が用いられる。
炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人工黒鉛(例えば、粒径22μm)、活性炭、低温炭素体(有機前駆体)を、不活性ガス雰囲気中で熱処理したもの等が用いられる。また、低温炭素体(有機前駆体)としては、例えば、ピッチ、メソフェーズピッチ等の易黒鉛性炭素前駆体や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、セルロース等の難黒鉛化性炭素前駆体が用いられる。
バインダとしては、例えば、PVDFが用いられる。
【0043】
セパレータは、正極シートと負極シートとを電気的に絶縁する。セパレータは、多孔質体で形成され、ケース30内に充填された後述の電解液に含浸される。セパレータとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系多孔質セパレータや、ポリエステル繊維やアラミド繊維から成る不織布が用いられる。セパレータは、例えば、厚みが25μmで形成される。
【0044】
次に、蓄電素子10の製造方法について説明する。
蓄電素子10は、正極シートと、負極シートとを、セパレータを介して交互に積層してなる積層体を、板状の巻芯に巻回した後、巻芯を引き抜くことにより得られる。より詳しくは、蓄電素子10は、正極シートと負極シートとを、それぞれの塗工部同士のみが重なるように、それぞれの未塗工部の分だけ面方向にずらし、長さ方向の一端側に正極シートの未塗工部のみが配置され、他端側に負極シートの未塗工部のみが配置されるようにして積層するとともに、負極シートが正極シートよりも外側になるようにして巻回する。巻回体を得た後、輪切り断面が扁平となるように厚み方向に押し潰すことにより、長さ方向の中央部に、正極シートと負極シートの塗工部同士が積層された蓄電素子本体11が形成される。
また、長さ方向の両端にある正極シートと負極シートそれぞれの未塗工部を、厚み方向に溶接等によって密着させることにより、正極集電タブ15および負極集電タブ17が形成される。
以上により、蓄電素子本体11と、正極集電タブ15と、負極集電タブ17と、を備える蓄電素子10が形成される。
【0045】
なお、以上の構成を備える蓄電素子10は、図示しない絶縁フィルムによりその外表面が覆われており、ケース30と電気的に絶縁されている。絶縁フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムが用いられる。
【0046】
[電解液]
図示しない電解液は、ケース30内に充填されており、蓄電素子10は、電解液中に浸漬される。電解液は、電池反応により生成するリチウムイオン等のイオンを、両電極間で輸送する。電解液は、溶媒に電解質を溶解させることにより、調製される。
【0047】
溶媒としては、非水溶媒が用いられる。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン等が用いられる。なお、これらの非水溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して併用してもよい。
【0048】
電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ素リチウム(LiBF)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CFSO]等のリチウム塩が用いられる。なお、電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.2mol/L〜2mol/Lであることが好ましい。
【0049】
また、電解液中には、LiTFSI(リチウム塩)等を添加して混合してもよい。
さらには、電解液がゲル状で保持されるように、ゲル電解質を用いてもよい。ゲル電解質としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ビニリデンフロライド、ヘキサフルオロプロピレンの誘導体や、これらの共重合体が用いられる。
【0050】
[ケース]
図1および図2に示すように、ケース30は、薄板状で角型の外形を呈している。ケース30は、蓄電素子10を収容して保持する。ケース30は、ケース本体31と、蓋33とを備える。
【0051】
ケース本体31は、上面が開口した薄板状の箱体である。ケース本体31は、アルミニウム合金、SUS(ステンレス)または樹脂等から形成される。特に、アルミニウム合金製であって、インパクト成型やトランスファープレス加工によって形成されたものが好ましく用いられる。ケース本体31は、例えば、板厚が1.0mm、長さ(図1の左右方向の寸法)が155mm、幅(図2の左右方向の寸法)が40mmおよび高さ(図1の上下方向の寸法)が100mmの外形寸法で形成される。
【0052】
蓋33は、所定の厚さ(例えば、2mm)を有し、ケース本体31の開口を塞ぐ。蓋33は、例えばレーザー溶接によって、ケース本体31と接合される。
なお、蓋33には、電解液を注入するための図示しない注入口が設けられている。
【0053】
[端子]
正極端子50と負極端子100は、蓋33の長手方向両端にそれぞれ取り付けられている。これら正極端子50と負極端子100は、銅、ニッケル、アルミニウムおよびSUS(ステンレス)等の金属や、これらの金属からなる合金で形成される。
【0054】
正極端子50は、正極集電リード板95を介して、蓄電素子10の正極集電タブ15と電気的に接続されている。正極集電リード板95は、例えば、幅が40mm、厚さが0.5mmのアルミニウム合金板で形成される。正極集電タブ15および正極端子50は、それぞれ、例えば超音波溶接によって、正極集電リード板95と電気的に接続される。
【0055】
負極端子100は、負極集電リード板97を介して、蓄電素子10の負極集電タブ17と電気的に接続されている。負極集電リード板97は、例えば、幅が45mm、厚さが0.3mmの銅合金板で形成される。負極集電タブ17および負極端子100は、それぞれ、例えば超音波溶接によって、負極集電リード板97と電気的に接続される。
【0056】
正極集電リード板95および負極集電リード板97は、導電性を有する逆L字形のリード板である。これらのリード板は、長手部が各集電タブに接続され、短手部が各端子に接続される。
なお、正極集電リード板95と正極集電タブ15との接触面積、および負極集電リード板97と負極集電タブ17との接触面積を十分に確保することにより、電気抵抗を小さくすることが好ましい。
【0057】
ここで、正極端子50は、リチウムイオン2次電池1の発熱時に、電流を制限または遮断する機構(以下、電流遮断機構という)を構成する。以下、正極端子50を含んで構成される電流遮断機構について、図3を参照して説明する。
【0058】
図3は、リチウムイオン2次電池1の通常時、具体的には、複数を並列接続させて高電圧バッテリを構成した場合の放電時における正極端子50の部分断面図である。図3に示すように、正極端子50は、外側部材51と、内側部材52と、係止爪53,53と、を備える。
【0059】
外側部材51は、一端が閉塞され他端が開口された筒状部511と、この筒状部511の開口端から径方向外側に延設された鍔部512と、を備える。
外側部材51は、筒状部511の閉塞端側がケース30の外側に配置され、筒状部511の開口端側がケース30の内側に配置された状態で、ケース30の蓋33に固定されている。具体的には、ケース30の蓋33に設けられた孔に、筒状部511を嵌挿し、鍔部512の閉塞端側の上面を蓋33の下面に当接させた状態で固定されている。外側部材51の外周面には、図示しないボルト溝が切られており、外側部材51の固定には、ナット54および座金55が用いられている。
【0060】
筒状部511は、円筒状であり、その軸方向が、ケース30の蓋33の上面および下面に対して垂直となっている。また、その中空部には、後述する内側部材52の突部522が、摺動可能に嵌挿されている。
【0061】
鍔部512は、筒状部511の開口の全周に亘って設けられており、鍔部512の延設方向が、蓋33の下面と平行となっている。鍔部512の閉塞端側の面である上面は、蓋33の下面に当接しており、鍔部512の下面は、通常時においては、後述する内側部材52の基部521に当接している。
【0062】
なお、外側部材51と蓋33との間には、絶縁性およびシール性を確保するために、上端および下端にフランジを有する円環状の樹脂製シール部材57が配設されている。
また、外側部材51には、外部ケーブル56が電気的に接続されており、この外部ケーブル56は、ナット54および座金55により、外側部材51に固定されている。
【0063】
内側部材52は、正極集電リード板95と電気的に接続された基部521と、この基部521から突出し、筒状部511に摺動可能に嵌挿される突部522と、を備える。
内側部材52は、通常時においては、基部521の上面が鍔部512の下面に当接した状態で、後述する係止爪53,53により、外側部材51に係止されている。
【0064】
基部521は、円板状であり、その径方向が、外側部材51の鍔部512の下面と平行となっている。基部521の上面は、通常時においては、外側部材51の鍔部512の下面に当接している。基部521の径は、鍔部512との接触面積を十分に確保して電気抵抗を小さくする観点から、鍔部512の径と略同等に設定されている。また、基部521の下面は、十分な接触面積で、正極集電リード板95と電気的に接続されている。
なお、基部521の外周には、後述する係止爪53,53が挿入される図示しない係止溝が設けられている。
【0065】
突部522は、その先端が開口され基端が閉塞された中空の円筒状に形成されている。突部522の先端は、外側部材51の閉塞端面にまで達して当接しており、突部522の中空部と筒状部511の閉塞端面とにより、密閉空間58が形成されている。この密閉空間58には、熱により体積が膨張する熱膨張材59が封入されている。熱膨張材59については、後段で詳述する。
【0066】
係止爪53,53は、通常時においては、内側部材52の基部521の上面を、外側部材51の鍔部512の下面に当接させた状態で、内側部材52を外側部材51に係止する。係止爪53,53は、外側部材51の鍔部512の外周に等間隔で取り付けられており、内側部材52の基部521の外周に均等に設けられた図示しない係止溝にそれぞれ挿入され、基部521の下面に爪を噛み合わせることにより、内側部材52を係止する。
【0067】
この係止爪53,53による係止により、内側部材52と外側部材51との電気的な接続が保持される。この係止爪53,53は、リチウムイオン2次電池1が発熱したときには、熱膨張材59による膨張力によって、基部521が鍔部512から離隔する方向(図1の下方)に摺動することにより変形し、係止を解除する。
なお、絶縁性を確保するために、係止爪53,53は、樹脂等の絶縁性部材から形成される。
【0068】
次に、熱膨張材59について説明する。
熱膨張材59としては、高温になるに従い体積が膨張し、内側部材52を摺動させることができるものであればよく、気体、液体および固体のいずれも用いることができる。これらの熱膨張材59は、単独で使用してもよく、混合して併用してもよい。なお、熱膨張材59には、固体や液体が気化して気体を発生したり、反応により気体を発生することにより体積が膨張するものも含まれる。
【0069】
気体の熱膨張材としては、不燃性の気体や難燃性の気体が好ましく用いられる。具体的には、窒素、アルゴン、二酸化炭素が挙げられ、これらの中でも特に二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0070】
液体の熱膨張材としては、低沸点であるとともに、発火点が低い化合物や熱安定性が高い化合物が好ましく用いられる。より好ましくは、低沸点かつ難燃性の化合物が用いられる。
液体の熱膨張材は、後述する固体の熱膨張材と同様に、気体の熱膨張材に比べて、密閉空間58への封入が容易である。このため、液体の熱膨張材を用いた場合には、生産性が高く、製造コストを削減できる。
【0071】
低沸点かつ低発火点の化合物としては、炭酸塩、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の化合物の他、これらのカルボン酸エステル誘導体、これらのフッ素化合物や塩素化合物が挙げられる。
低沸点かつ熱安定性が高い化合物としては、カルボン酸エステルが挙げられる。
【0072】
低沸点かつ難燃性の化合物としては、フッ素化合物、塩素化合物、臭素化合物およびリン酸エステル類が挙げられる。
従来、フッ素化合物は、電解液の難燃剤として使用されていたが、電解液に一定量以上添加した場合には、Li塩の解離度が低下し、特に低温において内部抵抗が上昇する等の問題があった。この点、本実施形態では、上記の低沸点かつ難燃性の化合物が、発熱時にはじめてケース30内に導入される構成であるため、従来のような問題は生じない。
【0073】
固体の熱膨張材としては、無機化合物および有機化合物いずれも用いることができる。特に、固体の熱膨張材は、上記の液体の熱膨張材以上に、密閉空間58への封入が容易であるため、好ましく用いられる。
無機化合物としては、LiCO、NaCO、KCOおよびNaHCO等のアルカリ炭酸金属塩が挙げられる。これらのアルカリ炭酸金属塩は、熱分解により二酸化炭素を発生することにより、体積が膨張して内側部材を摺動させる。
有機化合物としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミドおよびp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等の発泡性の化合物や、有機液体スルホランおよびその誘導体等の凝固点の高い化合物が挙げられる。
【0074】
上述した気体、液体および固体の熱膨張材には、熱伝導性を向上させる目的で、熱伝導性の高いCuやAl等の金属の他、アルミナ等の固体粉末を混合してもよい。これにより、熱膨張材59の熱伝導性が向上し、体積の膨張が促進される。
【0075】
なお、内側部材52の駆動温度が100℃以上の場合でも、ケース30内の電解液は気化せず、ケース30内の圧力は上昇しない。このとき、正極端子50内の密閉空間58に封入された熱膨張材59の体積が膨張し、例えば0.1〜0.6MPaの圧力で、内側部材52が摺動する。
【0076】
次に、正極端子50の製造方法について、図4を参照して説明する。
先ず、図4(A)に示すように、係止爪53,53が取り付けられた円板状の部材と、外周に図示しないボルト溝が切られた円柱状の部材とが、軸方向を同軸として連結されてなる外側部材51の前駆体51aを準備する。次いで、この前駆体51aの中心部に、円板状の部材側からドリルで穴あけした後に面出しをすることにより、筒状部511および鍔部512を備える外側部材51を形成する。例えば、筒状部511の中空部が、径が5mmで軸方向の長さが8mmの中空部として形成される。
【0077】
次いで、図4(B)に示すように、筒状部511の中空部に、熱膨張材59として、例えばジメチルカーボネート(DMC)を所定量、注液する。このとき、熱膨張材59の量は、電流遮断機構の駆動設定温度を考慮して、熱膨張材59の種類に応じて適宜設定される。
【0078】
次いで、図4(C)に示すように、熱膨張材59のDMCが注液された筒状部511に、内側部材52の突部522を嵌挿する。このとき、係止爪53,53を、基部521の外周に均等に設けられた係止溝523に挿入する。
なお、内側部材52の突部522は、先端が開口された中空の円筒状であり、この内側部材52は、上述の外側部材51と同様にして形成される。例えば、突部522の中空部が、径が4mmで軸方向の長さが7mmの中空部として形成される。
【0079】
次いで、図4(D)に示すように、基部521が鍔部512に当接するまで筒状部511に突部522を嵌挿させ、係止爪53,53の爪を基部521に噛み合わせることにより、内側部材52を外側部材51に係止する。これにより、突部522の中空部と筒状部511の閉塞端面で囲まれた密閉空間58が形成されるとともに、形成された密閉空間58に、熱膨張材59が封入される。
以上により、正極端子50が得られる。
【0080】
上記の製造方法に従って製造した正極端子50を備えるリチウムイオン2次電池1については、動作確認の試験を実施済みであり、その動作が確認されている。
具体的には、恒温槽内で、4.2VでCCCV(定電流定電圧)充電を行い、25℃から5℃/分の昇温速度で温度を上昇させたところ、75℃のときに内部抵抗が上昇し、85℃のときに端子電圧が0Vとなったことが確認されている。また、内部を解体してみたところ、係止爪53,53による係止が解除されて、内側部材52の基部521と外側部材51の鍔部512とが離隔していたことも確認されている。
以上により、上記の製造方法に従って製造した正極端子50は、リチウムイオン2次電池1の発熱時に、電流を制限または遮断する電流遮断機構として機能する。
【0081】
次に、本実施形態に係るリチウムイオン2次電池1の発熱時に奏される作用効果について、図4および図5を参照して説明する。図5は、リチウムイオン2次電池1の発熱時における正極端子50の部分断面図である。
本実施形態では、ケース30内の圧力の影響を受け難い正極端子50に、電流を制限または遮断する機構を設けた。具体的には、正極端子50の温度の上昇に応じて電気抵抗を上昇させ、充電電流や放電電流を制限または遮断する機構を設けた。この電流遮断機構は、内側部材52と外側部材51の接触面積を温度に応じて変化させることにより、電気抵抗を変化させるPTC(自己温度制御)機能を備え、内側部材52と外側部材51の接触面積を減少させることにより、電気抵抗を上昇させて、電流を制限または遮断する。通常時において当接している内側部材52と外側部材51の接触面積の減少は、電池の発熱により発生する熱膨張材59の膨張力によって、内側部材52の基部521が外側部材51の鍔部512から離隔する方向に内側部材52が摺動することにより達成される。
【0082】
本実施形態では、図4に示すように、通常時においては、係止爪53,53により、突部522が筒状部511に嵌挿されて基部521が鍔部512に当接した状態が保持される。これにより、図4の矢印で示すように、内側部材52と外側部材51の電気的な接続が保持され、電流が蓄電素子10に流れ込む。
これに対して、図5に示すように、例えば、放電時に何らかの理由により短絡が発生すると、他の並列電池から電流が流れ込み、リチウムイオン2次電池1が発熱して正極端子50の温度が上昇する。すると、密閉空間58に封入した熱膨張材59の体積が膨張し、この膨張力によって、図5の白矢印で示すように、係止爪53,53による接続が解除されて基部521が鍔部512から離隔する方向に内側部材52が摺動することにより、内側部材52と外側部材51との接触面積が減少する。これにより、電気抵抗が上昇し、図5の黒矢印で示すように、内側部材52と外側部材51との電気的な接続が制限または遮断される。従って、本実施形態によれば、さらなる発熱を確実に防止でき、リチウムイオン2次電池1の劣化や故障を回避できる。
【0083】
また、本実施形態の電流遮断機構は、内圧に基づいて電流を遮断する従来の機構とは異なり、温度に基づいて駆動するため、ケース30内の圧力が上昇して圧力弁等により内圧が開放される条件下であっても、電流を制限または遮断できる。
また、ケース30の剛性を高く設計する必要がないため、ケース30を軽量化できる。加えて、正極端子50を中空にする構造であるため、正極端子50を軽量化でき、リチウムイオン2次電池1の軽量化が可能である。
また、正極端子50に電流遮断機構を設けるため、蓄電素子10の配置スペースが犠牲にされることがなく、ケース30を小型化でき、リチウムイオン2次電池1の小型化が可能である。
また、従来のようにリード板を破断させる必要が無いため、正極端子50と正極集電タブ15との接続に用いた正極集電リード板95の板厚を大きく設定でき、電気抵抗を小さくできる。
【0084】
また、本実施形態では、熱膨張材59として、所望の膨張開始温度や所望の膨張力を有する熱膨張材を選択できるため、電流遮断機構の駆動温度を自由に設定できる。例えば、リチウムイオン2次電池1の性能に影響を及ぼしはじめる温度である60℃付近から、緩やかに電気抵抗を上昇させることができる。突部522が筒状部511から離脱する等、密閉空間58に封入した熱膨張材59がケース30内に排出されない温度条件下であれば、繰り返し使用できる。
また、ケース30内の圧力に基づいて電流を遮断する従来の機構では、ケース30が変形して内圧がばらつくことにより、確実性および迅速性に難があった。これに対して、本実施形態によれば、強度の高い正極端子50内に形成した密閉空間58に熱膨張材59を封入するため、熱膨張材59の膨張力を内側部材52の駆動に直接利用して電流を制限または遮断できる。従って、従来のケース内の圧力を利用したものに比べて、より確実かつ迅速に電流を制限または遮断できる。
【0085】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るリチウムイオン2次電池2は、その正極端子60を構成する内側部材62と、ケース30を構成する蓋36の構成が第1実施形態と相違する以外は、第1実施形態と同一の構成である。
【0086】
図6は、第2実施形態に係るリチウムイオン2次電池2の通常時、具体的には、複数を並列接続させて高電圧バッテリを構成した場合の放電時における正極端子60の部分断面図である。図6に示すように、内側部材62は、正極集電リード板95と電気的に接続された基部621と、この基部621から突出し、筒状部511に摺動可能に嵌挿される突部622と、を備える。内側部材62は、通常時においては、基部621の上面が鍔部512の下面に当接した状態で、係止爪53,53により、外側部材51に係止されている。
【0087】
基部621は、円板状であり、その径方向が、外側部材51の鍔部512の下面と平行となっている。基部621の上面は、通常時においては、外側部材51の鍔部512の下面に当接している。基部621の径は、鍔部512との接触面積を十分に確保して電気抵抗を小さくする観点から、鍔部512の径と略同等に設定されている。また、基部621の下面は、十分な接触面積で、正極集電リード板95と電気的に接続されている。
なお、基部621の外周には、後述する係止爪53,53が挿入される図示しない係止溝が設けられている。
【0088】
突部622は、その突出長さが、筒状部511の長さよりも短い円柱状に形成されている。なお、突部622の突出長さは、熱膨張材59の膨張力により内側部材62が摺動する距離よりも短く設定され、基部621が鍔部512から離隔する方向に内側部材62が摺動したときに、突部622が筒状部511から離脱するように形成されている。
また、突部622の先端面は、筒状部511の閉塞端面にまで達していないため、突部622と筒状部511により、密閉空間68が形成されている。
この密閉空間68には、熱により体積が膨張する熱膨張材59が封入されている。また、本実施形態では、この密閉空間68に、消火剤も封入されている。
消火剤としては、例えば、二酸化炭素が用いられる。
【0089】
ケース30の蓋36は、第1実施形態の蓋33の上面に、圧力弁35を設けたものである。この圧力弁35は、ケース30内の圧力を開放するラプチャー弁(ガス抜き弁)であり、開放圧力は、例えば0.5〜1.0MPaに設定される。
【0090】
次に、本実施形態に係るリチウムイオン2次電池2の発熱時に奏される作用効果について、図6および図7を参照して説明する。図7は、リチウムイオン2次電池2の発熱時における正極端子60の部分断面図である。
本実施形態によれば、図6に示すように、通常時においては、係止爪53,53により、突部622が筒状部511に嵌挿されて基部621が鍔部512に当接した状態が保持される。これにより、図6の矢印で示すように、内側部材62と外側部材51の電気的な接続が保持され、電流が蓄電素子10に流れ込む。
これに対して、図7に示すように、例えば、放電時に何らかの理由により短絡が発生すると、他の並列電池から電流が流れ込み、リチウムイオン2次電池2が発熱して正極端子60の温度が上昇する。すると、密閉空間68に封入した熱膨張材59の体積が膨張し、この膨張力によって、図7の白矢印で示すように、係止爪53,53による接続が解除されて基部621が鍔部512から離隔する方向に内側部材62が摺動する。このとき、本実施形態では、突部622の突出長さが、内側部材62が摺動する距離よりも短く設定されているため、図7に示すように、突部622が筒状部511から離脱する。これにより、図7の黒細矢印で示すように、内側部材62と外側部材51との電気的な接続が制限または遮断される。従って、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0091】
また、本実施形態では、突部622が筒状部511から離脱することにより、密閉空間68が開放されてケース30の内部と連通する。これにより、図7の黒太矢印で示すように、密閉空間68に封入されていた消火剤がケース30内に導入されるため、リチウムイオン2次電池2の劣化や故障を防止できる。
なお、密閉空間68に封入されていた熱膨張材59および消火剤がケース30内に導入されるため、ケース30内の圧力が上昇するところ、本実施形態によれば、圧力弁35によってケース30内の圧力を開放できる。このため、ケース30の変形を防止でき、また、圧力弁35が開放されるため、異常の有無を外部から容易に判別できる。
【0092】
<第3実施形態>
第3実施形態に係るリチウムイオン2次電池3は、その正極端子70を構成する駆動手段として、形状記憶合金からなる弾性部材71が配設されている点と、係止爪53,53の代わりに溶接層73が設けられている点と、正極集電リード板98の寸法形状が変更されている点が第2実施形態と相違する以外は、第2実施形態と同一の構成である。
【0093】
図8は、第3実施形態に係るリチウムイオン2次電池3の通常時、具体的には、複数を並列接続させて高電圧バッテリを構成した場合の放電時における正極端子70の部分断面図である。図8に示すように、形状記憶合金からなる弾性部材71は、内側部材62の突部622と外側部材51の筒状部511とで形成される密閉空間68に配設されている。
弾性部材71は、形状記憶合金からなるばねであり、熱により筒状部511の軸方向に伸張する。
形状記憶合金としては、例えば、Ni、Ti、CuおよびFeのうちいずれかを含む合金が用いられる。これらの形状記憶合金からなる弾性部材71は、低温下では柔らかく(弱く)、高温下では硬い(強い)特性を有する。このため、低温時における荷重(発生力)と、高温時における荷重とでは大きな差があるため、この温度差による荷重差を利用することによって、後述の溶接層73を破断させて内側部材62を摺動させることができる。即ち、形状記憶合金ばねは、温度センサとアクチュエータの機能を兼ねる。
なお、形状記憶合金の形状変形温度AF点は、50℃〜150℃の範囲であるため、本実施形態は、電流遮断機構の駆動温度をこの温度範囲内に設定したい場合に適している。
また、溶接層73や形状記憶合金からなる弾性部材71を設けた関係で、正極集電リード板98の短手部98bの長さがより長く形成されている。
【0094】
溶接層73は、内側部材62を構成する基部621の上面と、外側部材51を構成する鍔部512の下面とを、プロジェクション溶接することにより、形成される。具体的には、基部621の上面と鍔部512の下面とを加熱した後に加圧することにより、溶接層73が形成される。この溶接層73により、通常時において、内側部材62は外側部材51と溶接層73を介して当接し、電気的に接続されている。
【0095】
次に、本実施形態に係るリチウムイオン2次電池3の発熱時に奏される作用効果について説明する。
本実施形態によれば、通常時においては、溶接層73により、突部622が筒状部511に嵌挿されて基部621が鍔部512に溶接層73を介して当接した状態が保持される。これにより、内側部材62と外側部材51の電気的な接続が保持され、電流が蓄電素子10に流れ込む。
これに対して、例えば、放電時に何らかの理由により短絡が発生すると、他の並列電池から電流が流れ込み、リチウムイオン2次電池3が発熱して正極端子70の温度が上昇する。すると、密閉空間68に配設された形状記憶合金からなる弾性部材71が、筒状部511の軸方向に伸張し、この伸張力によって、溶接層73が破断されて基部621が鍔部512から離隔する方向に内側部材62が摺動する。これにより、内側部材62と外側部材51との電気的な接続が制限または遮断される。従って、本実施形態によれば、さらなる発熱を確実に防止でき、リチウムイオン2次電池3の劣化や故障を回避できる。
また、本実施形態における電流遮断機構は、第1実施形態や第2実施形態における電流遮断機構と比べて、内側部材62の動作設計が簡便であり、より確実である。
【0096】
<第4実施形態>
第4実施形態に係るリチウムイオン2次電池4は、第3実施形態と比べて、溶接層73が設けられていない点と、正極集電リード板99を、その形状を変更して接続保持手段を兼ねるように形成した点が相違する以外は、第3実施形態と同一の構成である。
【0097】
図9は、第4実施形態に係るリチウムイオン2次電池4の通常時、具体的には、複数を並列接続させて高電圧バッテリを構成した場合の放電時における正極端子80の部分断面図である。図9に示すように、正極集電リード板99は、長手部99aと、短手部99bと、を備え、内側部材62を、基部621が鍔部512に当接する方向(図9の上方)に付勢している。
長手部99aは、その上端が、基部621の下面より上方まで延出されている。また、短手部99bは、基部621の下面に当接する水平部と、長手部99aの上端から基部621に接近するに従い下方に傾斜し、水平部と連結する傾斜部と、から構成された弾性片として形成されている。内側部材62は、この弾性片の弾性力により、基部621が鍔部512に当接する方向(図9の上方)に付勢されている。
【0098】
次に、本実施形態に係るリチウムイオン2次電池4の発熱時に奏される作用効果について説明する。
本実施形態によれば、通常時においては、正極集電リード板99により、突部622が筒状部511に嵌挿されて基部621が鍔部512に当接した状態が保持される。これにより、内側部材62と外側部材51の電気的な接続が保持され、電流が蓄電素子10に流れ込む。
これに対して、例えば、放電時に何らかの理由により短絡が発生すると、リチウムイオン2次電池4が発熱して正極端子80の温度が上昇する。すると、密閉空間68に配設された形状記憶合金からなる弾性部材71が、筒状部511の軸方向に伸張し、この伸張力によって、正極集電リード板99の付勢力に対抗して基部621が鍔部512から離隔する方向に内側部材62が摺動する。これにより、内側部材62と外側部材51との電気的な接続が制限または遮断される。従って、本実施形態によれば、さらなる発熱を確実に防止でき、リチウムイオン2次電池4の劣化や故障を回避できる。
【0099】
また、本実施形態では、接続保持手段として、正極集電リード板99の付勢力が利用されるため、リチウムイオン2次電池4の発熱により形状記憶合金からなる弾性部材71が、一旦、伸張した後、温度が低下して縮小したときに、再び正極集電リード板99の付勢力によって、内側部材62と外側部材51の電気的な接続を復活させることができる。従って、本実施形態のリチウムイオン2次電池4は、繰り返し使用することができる。
【0100】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
例えば、上記いずれの実施形態においても、正極端子にのみ電流遮断機構を設けたが、これに限定されない。例えば、負極端子にのみ設けてもよく、正極端子および負極端子の両方に設けてもよい。
また、第1実施形態および第2実施形態において、正極集電リード板を介して正極端子と正極集電タブとを接続したが、これに限定されない。例えば、正極端子と正極集電タブとを直接接続してもよい。
また、第2実施形態において、内側部材が摺動したときに密閉空間をケース内部と連通させるために、突部の突出長さを短く設定したが、これに限定されない。例えば、突部の先端側の外周に密閉空間と連通する溝を設け、内側部材が摺動したときに、この溝がケース内部と連通するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1,2,3,4…リチウムイオン2次電池(電池)
10…蓄電素子
15…正極集電タブ(正極)
17…負極集電タブ(負極)
30…ケース
35…圧力弁
50,60,70,80…正極端子
51…外側部材
511…筒状部
512…鍔部
52,62…内側部材
521,621…基部
522,622…突部
53…係止爪(接続保持手段)
58,68…密閉空間
59…熱膨張材(駆動手段)
71…弾性部材(駆動手段)
73…溶接層(接続保持手段)
95,98,99…正極集電リード板(リード板、接続保持手段)
100…負極端子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、を備える蓄電素子と、
前記正極と電気的に接続された正極端子と、
前記負極と電気的に接続された負極端子と、
前記蓄電素子を収容して保持するケースと、を備える電池であって、
前記正極端子と前記負極端子のうち少なくとも一方の電極の端子は、
一端が閉塞され他端が開口された筒状部と、開口端から径方向外側に延設された鍔部と、を備え、閉塞端側が前記ケースの外側に配置されるとともに、開口端側が前記ケースの内側に配置されて前記ケースに固定された外側部材と、
前記一方の電極と電気的に接続された基部と、当該基部から突出して前記筒状部に摺動可能に嵌挿される突部と、を備え、前記基部が前記鍔部に当接することにより、前記外側部材と電気的に接続される内側部材と、
通常時において、前記基部が前記鍔部に当接した状態を保持することにより、前記内側部材と前記外側部材との電気的な接続を保持する接続保持手段と、
前記内側部材を前記筒状部の軸方向に摺動させる駆動力を、熱により発生する駆動手段と、を備え、
前記電池が発熱したときに、前記駆動手段で発生する駆動力によって、前記接続保持手段による接続が解除されて前記基部が前記鍔部から離隔する方向に前記内側部材が摺動することにより、前記内側部材と前記外側部材との電気的な接続が制限または遮断されることを特徴とする電池。
【請求項2】
通常時において、前記突部と前記筒状部との間には密閉空間が形成され、
前記接続保持手段は、前記内側部材を前記外側部材に係止する係止爪であり、
前記駆動手段は、前記密閉空間に封入されて熱により体積が膨張する熱膨張材であり、
前記電池が発熱したときに、前記熱膨張材の体積が膨張することによって、前記係止爪による係止が解除されて前記基部が前記鍔部から離隔する方向に前記内側部材が摺動することにより、前記内側部材と前記外側部材との電気的な接続が制限または遮断されることを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記突部は、先端が開口された中空の突部であるか、またはその突出長さが前記筒状部の長さよりも短く形成された突部であることを特徴とする請求項2記載の電池。
【請求項4】
前記突部は、前記基部が前記鍔部から離隔する方向に前記内側部材が摺動したときに、前記密閉空間と前記ケースの内部とが連通するように形成され、
前記熱膨張材は、消火剤を含み、
前記電池が発熱したときに、前記熱膨張材の体積が膨張することによって、前記接続保持手段による接続が解除されて前記基部が前記鍔部から離隔する方向に前記内側部材が摺動することにより、前記内側部材と前記外側部材との電気的な接続が制限または遮断されるとともに、前記密閉空間と前記ケースの内部とが連通して前記消火剤が前記ケース内に導入されることを特徴とする請求項2または3記載の電池。
【請求項5】
前記ケースは、当該ケース内の圧力を開放する圧力弁を備えることを特徴とする請求項4記載の電池。
【請求項6】
前記突部は、その突出長さが前記筒状部の長さよりも短く形成され、
前記接続保持手段は、前記内側部材と前記外側部材を溶接する溶接層であり、
前記駆動手段は、前記突部と前記筒状部とで形成される密閉空間に配設されて熱により前記筒状部の軸方向に伸張する形状記憶合金からなる弾性部材であり、
前記電池が発熱したときに、前記形状記憶合金からなる弾性部材が前記筒状部の軸方向に伸張することによって、前記溶接層が破断して前記基部が前記鍔部から離隔する方向に前記内側部材が摺動することにより、前記内側部材と前記外側部材との電気的な接続が制限または遮断されることを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項7】
前記突部は、その突出長さが前記筒状部の長さよりも短く形成され、
前記接続保持手段は、前記基部と前記一方の電極とを電気的に接続するとともに、前記基部が前記鍔部に当接する方向に前記内側部材を付勢するリード板であり、
前記駆動手段は、前記突部と前記筒状部とで形成される密閉空間に配設されて熱により前記筒状部の軸方向に伸張する形状記憶合金からなる弾性部材であり、
前記電池が発熱したときに、前記形状記憶合金からなる弾性部材が前記筒状部の軸方向に伸張することによって、前記リード板による付勢力に対抗して前記基部が前記鍔部から離隔する方向に前記内側部材が摺動することにより、前記内側部材と前記外側部材との電気的な接続が制限または遮断されることを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項8】
請求項1から7いずれか記載の電池が並列に接続されて形成されたことを特徴とする電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−181409(P2011−181409A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45720(P2010−45720)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】