説明

電池の健全状態を定めるためのシステムおよび方法

【課題】化学電池の健全状態を算定する開路電圧(OCV)方法を用いるシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】OCVシステムおよび方法には、最大帯電電位にまで電池を充電すること、充電の完了後の予め定めた時間待機した後に電池の開路電圧(OCV)を決定すること、および電池の決定されたOCVに基づいて電池のSOHを決定することが含まれる。別のシステムおよび方法は、化学電池の健全状態を算定する充電時間(TTC)方法を用いる。TTCシステムおよび方法には、メモリーにおいて電池の充電時間を監視し、および蓄えること、およびSOH表示を形成するために蓄えた充電時間を計ることが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景として、この開示は、電池の健全状態(SOH)の決定に関する。特に、本発明は、再充電可能な電池および、とりわけ、リチウム電池のSOHを決定するためのシステムおよび方法に関する。しかし、本発明は、リチウム電池に制限されず、時間と共に劣化し、従って電池のSOHの決定を必要とする任意の再充電可能な電池に関する。
【背景技術】
【0002】
時間と共に、充電式バッテリーは、エージング(老化)し、および劣化し、電荷が保持され、およびその定格電流が負荷に届けられる電池の能力において減少を引き起こす。結局、電池は、それがもはや電荷を効果的に保持しない点にまで劣化した後、交換する必要がある。電池のSOHは、その累積的なストレス寿命(stress-life)を通して、電池セルの返却可能な(使える)または正味の容量を表示する。電池のSOHは、また、電池がどれくらい密接にその設計仕様を満たすかという徴候でもある。
【0003】
充電式電池は、電池がその意図された機能を実行することができるように、充電に次いで電池が最小限の容量を有することが重要である多くの異なる分野において用いられる。容量は、電池が保持することが可能な最大の電荷である。新品電池の容量は、メーカーによる表示に近似する必要がある。電池の最小限の容量を決定することは、用途、たとえば、医療装置、軍用武器、および航空機予備電力適用のようなもので、きわめて重要であり、不十分な電荷による電池の不具合は悲惨な結果をもたらすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池の充電状態(SOC)の監視は、充電式電池セルにおいて望ましい。SOCは、その相対的な充電レベルに関し、セルの有用性の定量化〔割合(%)〕である。リチウムセルのための伝統的なSOCの表示は、概して、安定化された開路スタンドの間で、セルの端子電圧に関連する。セルが十分に充電され、十分に消耗され、またはそれらの2つの終点の間で若干の他の使用可能な状態にあるとき、開路電圧(OCV)は、伝えるためにフューエルゲージ(燃料計)と非常によく似た機能をする。しかし、上述したように、劣化機構がセルのインピーダンスを増加させる原因となるように、セルはエージングし、そして時間と共に劣化する。充電の間、セルがその最大限利用可能な電荷を受け取ったという正しい表示として、エージングしたセルは指定された充電終了の電圧(EOCV)に達し、そして正しく100%のSOCを報告する。しかし、電池がエージングするにつれ、たとえ、電池が充電の完了で100%のSOCを指示したとしても、若干の整定時間が経過後、エージングしたセルのためのその後のOCV応答は低下し、セルのインピーダンスにおける上昇のせいで100%未満のSOCを表示する。このように、その累積的なストレス寿命を通してセルの返却可能または正味の容量を直接的に捕捉するSOCの「電荷ステータス」のフューエルゲージから分離した手段が必要であることが見出された。
【0005】
電池のSOHを決定するために提案された多数のアプローチがある。たとえば、最初のアプローチは、電池の内部抵抗を測定することによってSOHを算定する。電池が高い内部抵抗を経験しているとき、このことは電池のSOHが低い(即ち、質が悪い)という徴候である。しかし、この測定値だけでは、電池のSOHの真の評価が提供されない。特には、この評価は、電池のSOHに影響を及ぼす種々の要因(即ち、時間にわたる内部抵抗の減少ならびに温度および保護回路の影響)を無視する。この評価が研究室使用またはまれな常備使用のために良好である一方、それは概して、ある用途に直接適用することができない。
【0006】
その上、上記の方法を用いる電池のSOHを決定しようと試みるとき、測定される電池のタイプは数多くの問題を引き起こす。異なる充電式電池は、異なるマナーにおいて振る舞い、異なる電池化学性質を有し、そして異なるメーカーから異なるタイプにおいて利用可能である。充電式電池の若干の普通の例には、リチウム、リチウムイオン、リチウムニッケル、ニッケル金属水素、ニッケルカドミウム、および鉛酸(鉛蓄電池)が含まれる。
【0007】
電池のSOHを決定する別のアプローチは、十分な/部分的な放電テストである。このアプローチでは、電池に一定の負荷を受けさせることによって、電池を十分または部分的にのいずれでも放電させる。放電時間の間、電池が一定電圧に落ちるのにかかる時間を健全な電池のものと比較するように、電池電圧をモニターする。この比較は、電池のSOHの算定を考慮に入れる。しかし、そこでは、数多くの欠点がこのアプローチと関係した。この方法は、高価で、時間がかかって、テストの間、電池がオフラインであることを求める。
【0008】
電池のSOHを決定するさらに別のアプローチは、システムをモニターする独立型電池の使用に関与する。電池のエージングの間、これらのシステムは、電池の一つまたはそれよりも多くの電気化学的パラメーター(群)の値を測定する。次いで、パラメーター(群)が時間にわたり変化する方法に基づいて、電池のSOHを決定する。しかし、これらのパラメーター(群)の低下を決定することができる前に、パラメーター(群)の測定値の経歴が蓄積されなければならないので、システムを監視する独立型電池は、時間にわたりこれらの測定値を最初に得ることなく電池のSOHを決定することができない。
【0009】
上述の不利を改善する電池のSOHを測定するために、システムを提供することが望ましい。電池が、上述したように、SOHの運転中の計算を実行することを必要とせずに、種々の適用において充電した後、電池の意図された機能を実行するのに必要な絶対的な最小限の容量を決定するための必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
概要を説明する。複雑な数式を必要とせずに、電池のSOHが決定される方法を提供することは有利である。特には、意図された適用とは無関係である使用中、電池セル、たとえば、リチウム電池セルのための、永久的な容量損失を、難なく定量化および報告することができる単純な方法を提供することは有利である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一見地によれば、方法は、個々のまたは平行群化(平行グループ化)セル(parallel-grouped cells)を含む化学電池の健全状態(SOH)を算定する。この方法には、電池の最大帯電電位に電池を充電することが含まれる。充電が完了した後予め定めた(所定の)時間の期間待機してから、電池の開回路(開路)電圧(OCV)を決定する。電池の決定されたOCVに基づいて、電池のSOHを定める。
【0012】
若干の具体化では、所定の期間(時間)は約30分である。
【0013】
若干の具体化では、方法は、充電および決定ステップの間に、少なくとも約20℃の温度で電池を維持することを含む。若干の具体化では、温度を約25℃に維持する。
【0014】
若干の具体化では、電池のSOHは、参照表(ルックアップテーブル)を調べる(consult)ために、決定したOCVを用いることによって決定される。
【0015】
若干の具体化では、電池のSOHは、第二次多項式を用いて、所定の期間の後、電池の充電状態(SOC)を算定することによって決定される。一つの特定の用途用のこのような方程式の一例は、以下の式:SOC=-0.026×OCV2+1.584×OCV-23.102である。決定したSOCは電池のSOHを表す。
【0016】
若干の具体化では、方法には、電池エネルギーレベル(BEL)を、次の式:BEL=SOH×SOC×セルスタック電圧×111.6(kJ)を用いて算定することが含まれる。
【0017】
若干の具体化では、方法には、電池を充電する間の充電時間を決定すること、充電を完了しクーロンカウントを決定するために、電池の第一のセルのために測定されたセル電流応答(セル電流感度)を、充電時間にかけること、および電池の充電の間に、充電状態(SOC)の算定にクーロンカウントを加えることによってBELを調整することが含まれる。一つの特定の用途のために、SOCの算定は、次の式:SOC=-0.026×OCV2+1.584×OCV-23.102に基づくことができる。
【0018】
若干の具体化では、方法には、規則的間隔で負荷電流を追加的にサンプリングすること、用いられる放電容量を提供するためにサンプリングを合計すること、および電池の放電の間に、SOC算定から用いられる放電容量を引くことによってBELを調整することが含まれる。
【0019】
若干の具体化では、方法には、各正常に終了したフル充電事象の完了後にBEL算定をリセット(再設定)することが含まれる。
【0020】
本発明の別の見地は、電池の健全状態(SOH)を評価する化学電池管理システムに関する。電池管理システムのコントローラは、(i)電池をフル(完全に)充電した後、所定期間待機し、(ii)所定期間後に、電池の開路電圧(OCV)を決定し、および(iii)決定したOCVから電池のSOHを決定するために構成される。
【0021】
一つの特定の用途では、コントローラは、所定期間の後、電池の充電状態(SOC)を、次の式:SOC=-0.026×OCV2+1.584×OCV-23.102を用いて算定することによって電池のSOHを決定するために構成され、決定したSOCは電池のSOHを表す。
【0022】
若干の具体化では、コントローラは、電池の温度制御システムを調節し充電および決定中に電池を最小約20℃の温度で維持するために構成される。
【0023】
若干の具体化では、コントローラは、電池のエネルギーレベル(BEL)を、次の式:BEL=SOH×SOC×セルスタック電圧×111.6(kJ)を用いて算定するために構成される。
【0024】
若干の具体化では、コントローラは、(v)電池を充電する間の充電時間を決定し、(vi)充電を完了しクーロンカウントを決定するために、電池の第一のセルのために測定されたセル電流応答(セル電流感度)を、充電時間にかけ、および(vii)電池の充電の間に、充電状態(SOC)算定にクーロンカウントを加えることによってBELを調整するために構成される。
【0025】
若干の具体化では、コントローラは、(viii)各正常に終了したフル充電事象の完了後にBELの算定をリセットするために構成される。
【0026】
若干の具体化では、コントローラは、(v)規則的間隔で負荷電流を追加的にサンプリングし、(vi)用いられる放電容量を提供するためにサンプリングを合計し、および(vii)電池の放電の間に、SOC算定から用いられる放電容量を引くことによってBELを調整するために構成される。
【0027】
若干の具体化では、コントローラは、(viii)各正常に終了したフル充電事象の完了後にBEL算定をリセットするために構成される。
【0028】
本発明の別の見地は、化学電池の健全状態(SOH)を算定する方法に関し、それには、メモリにおいて電池の充電時間を監視し、および蓄えることが含まれる。放電時間は、固定電源入力を使用して所定の放電深度からフル充電になるまで電池のために要求される時間である。方法はさらに、SOHの表示を形成するために蓄えられる充電時間をスケーリングする(計る)ことが含まれる。充電時間は、電池の寿命にわたり低下する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の見地が適用される電池SOHの決定方法およびシステムの種々の模範的な具体化を、以下の図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
【図1】健全状態の決定方法を例示する本発明の模範的な具体例のフローチャートである。
【図2】種々のリチウム化学的性質のために典型的OCV曲線を例示する本発明の模範的な具体例のグラフである。
【図3】OCV低下(Sag)対ドウェル時間(Dwell Time、休止時間)を例示する本発明の模範的な具体例のグラフである。
【図4】放電深度対開路電圧を例示する本発明の模範的な具体例のグラフである。
【図5】平均開路電圧対充電状態を例示する本発明の模範的な具体例のグラフである。
【図6】電池管理システムの遠近図である。
【図7】健全状態の決定方法を例示する本発明の別の模範的な具体例のフローチャートである。
【図8】3000の蓄積したサイクルカウント後の充電/放電サイクル変化を例示する本発明の模範的な具体例のグラフである。
【実施例】
【0031】
具体化の詳細な記載として、本発明の見地が適用される電池のSOHを決定するための方法およびシステムの模範的な具体化は、医療装置、軍用武器、または航空機予備電力適用のような用途において、電池、およびとりわけ、リチウム電池との関連で、図面を参照して以下に説明する。しかしながら、本発明は、任意の電池または電池のSOHが求められ/測定を必要とし/恩恵を受けるであろうとされる用途に適用可能である。
【0032】
以下の定義では、この適用の主要部を通じて提示される用語を説明する。返却可能(使用可能)な容量は、正常に終了したフル充電事象後にセルに蓄えられる放電容量である。返却不可能容量(永久容量損失)は、セル上に課せられたエージング機構、またはストレス寿命(応力寿命)に起因するセルの容量損失である。返却不可能容量は、典型的に、寿命の初期(BOL)(またはネームプレート)の容量および実際のセルの容量の間でセルの使用可能な寿命中(充電シーケンスおよび限界が、BOLの容量を測定するために使用されたものと同じであると仮定されるもの)の任意の時点での差として定義される。応力寿命は、サイクリング〔それぞれについての使用サイクルおよび放電深度(DOD)の数〕、高温曝露および持続期間、およびセル内で発生する(正常な)カレンダー寿命の損失から得られるその終端インピーダンスでの実証された増加を通したセルの使用可能な容量の通常の劣化である。充電状態(SOC)は、その相対的な充電レベルの点ではセルの使いやすさを定量化(%において)するために用いる表現である。健全状態(SOH)は返却可能/(返却可能+返却不可能)の容量(%において)の比率である。SOHは電池セルが提供できる最大容量を表す。放電深度(DOD)は、放電の間の相対的な容量の指標(%における)を、セルのための初期BOL(またはネームプレート)の容量に比べたものである。DODは、SOCの逆数、即ち、1-DOD=SOC(%において)である。電池エネルギーレベル(BEL)は電池の有効なエネルギーレベルを表す(たとえば、KJにおいて)。BELは、目下(または未決定)の放電サイクルにおいて意図された機能を支持するための、電池アセンブリー(電池組立体)の目下の有用性である。
【0033】
図6を参照し、リチウム電池のような電池3には、電源としてはたらくセル(群)(個々または平行にグループ化されたセルのいずれか)および電池管理システム(BMS)1で、それにセル監視のようなものが組み込まれているものが含まれる。特には、BMSには、マイコン2およびSOC、SOH、などのために必要な測定を行う適用特有のソフトウェアが含まれる。コントローラ2は、使用中にセルを特に特徴付けるために必要と思われるセルおよび電池パラメーター(即ち、電圧、電流、温度、時間、など)を監視し、および記録することができる。
【0034】
図1は、BMS1のコントローラ2によって行われる健全状態(SOH)決定方法を示す模範的な具体化のフローチャートである。この具体化は、充電後の開路電圧(OCV)方法(即ち、OCVの法)と称される。OCV方法を用いることで、電池のSOHおよびその後の電池のSOCを決定することができる。次の項目に基づいて、BMSのソフトウェアは、電池のSOC、SOH、およびBELに関し、現状レポートを提供することができる。
【0035】
OCV方法では、BMSはまず、電池が十分に充電された後、電池のSOCを計算する。SOCは、電池のために充電のレベルの指標を提供し、および従ってフューエルゲージにそっくりに機能する。SOCは、次の3つのシナリオ(摘要)に基づいて計算することができる。SOC1(SOCシナリオ1)は、正常に終了したフル充電事象の完了後(即ち、SOCが100%と報告され)目標の充電終了電圧(EOCV)が達成されるように電池セルを充電することによって計算される。しかし、充電事象の完了後直ちのもの以外の任意の他の時間では、セルは、それらの内部インピーダンスに基づいて減少したOCVを実証し、それは作動温度および蓄積された応力寿命曝露の関数である。このように、エージングしたセルは典型的に、それらのEOCV未満であるOCVを有し、それは電池を十分に充電した後、電池が、充電サイクルが完了した後、少なくとも所定期間にアイドル状態に保たれ、そして負荷に接続されていない場合である〔即ち、電池は、電池スタックを接続し、または電池の出力端子から分離するかのどちらかのために、電池アセンブリー内に含まれる固体状態またはメカニカルコンタクターのいずれかの使用を介して、アプリケーションにおいて(その上で)残っている間のものである〕。セルスタックが一定温度またはその付近で維持されるとき、より一層正確なSOCの計算が得られる。後述するように、任意の応力寿命の影響は、SOHの計算に反映される。
【0036】
電池が不活性であり、および負荷に接続していないとき(たとえば、アイドルまたは停止している航空機などのような乗り物上に搭載される場合)、SOC2(SOCシナリオ2)が計算される。したがって、SOC2は、次の式:
SOC=A×OCV2+B×OCV-C
に基づく%に関しての、電池のOCVからの公称応答である。
AおよびBは応答の傾き(または特徴的屈曲)を表し、およびCは0%SOC(またはx軸切片)での期待されたOCVを表す。応答は典型的に、容量〔Amp-hour(アンペア時)〕が、その後に応答特性を生成させるために電池(セル)のネームプレート容量に対して10%増分で除去されるフル充電後に、放電応答から生成される。2次多項式曲線フィットを次に、生成されたSOC対OCVの応答に適用する。2次多項式曲線フィットは次に、より一層低いSOCのレベルで誤差を最小にする(非常用電源、または予備エネルギー計算を考慮し)および控えめにより一層高いSOC値をレポートする(即ち、過小推定値)ために調整され、それらはSOC1(上記)に従ってフル充電されるときリセットされる。
【0037】
上記式は、リチウムおよびフラット放電(またはOCV対SOC)の応答特性を有しない他の化学物質にも適用可能である。図2は、種々の「リチウム」化学物質のためのOCV曲線の例を示す。たとえば、NCM(ニッケル、コバルト、マンガン系リチウムイオン)化学物質の7S1P(7シリーズ、1パラレル)の電池アレイのために、SOC2は、以下の式:
SOC=-0.026×OCV2+1.584×OCV-23.102、0.0≦SOC≦1.0
に基づき%に関して電池のOCVからの公称応答である。
付加的に、たとえば、SOCが0%(即ち、0.0)のとき、セルスタックは≦24.15Vである。SOCが100%であるとき(即ち、1.0)、セルスタックは29.40Vである。
【0038】
SOC3(SOCシナリオ3)は、電池が負荷(たとえば、乗り物バス)に接続されるとき、または活発に充電/放電されるときに計算される。BMSは次いで、アンペア時間(秒数)を捕捉し、放電の間に引くか、またはEOCV(SOC1)またはOCV(SOC2)のいずれかから得られるベースラインのSOC測定への充電の間に加え、規定通りに、正常な電池作動の間に活性なSOCの変化を報告するかのどちらかのために、「クーロンカウント」を決定する。
【0039】
少なくとも若干の上記SOC計算に基づいて、BMSコントローラーは次に、電池のSOHを決定することができる。前に論じるように、SOHは一旦フル充電された電池の返却可能な容量を示す。SOHは、サイクルカウントおよびそれらのDODのためにセルの永久容量損失、温度曝露、およびカレンダーライフストレスの徴候を提供する。電池が長期の持続時間の間にその指定された作動条件を越えて応力を加えられない限り、SOHはBOLで100%から劣化するが、それほど速くはない。OCVは、終端の電圧の縮小による一定量の永久容量損失を、正常に終了したフル充電事象の完了後に、OCVが、長期の所定期間の後(即ち、「滞留(休止)時間」または「減衰時間」)、減衰するか、またはそのEOCVから減少するように提供することができる。このようにして、所定期間の後、SOC計算は電池のSOH応答を提供する。
【0040】
したがって、正常に終了したフル充電事象の完了後、および適用がその操作上のサイクルを完了させるときのような、その後のドウェル期間後に、電池が負荷に接続していないとき、SOHはアイドル状態のSOC2と等価である(前述)。上述したように、この条件は、電気的または機械的な系統である「スイッチ」によって促進され、そして電池アセンブリー内に含まれる。電池は適用の範囲内にとどまるが、適用が休止状態(即ち、未使用)であるとき、事実上「オフライン」である。正常に終了したフル充電事象後の休止時間は、たとえば、30分の開路ドウェル期間であることができる。しかし、休止時間はこの期間に制限されない。そのかわり、上記の算定を受ける特定の電池および電池化学に基づき、BMSは、その特定の電池タイプおよび化学的性質に関する蓄えられたデータに基づき、SOC計算前に適切な休止時間を用いる。具体的には、適切な休止時間はBMSソフトウェアの範囲内で定められる変数で、それはセル化学および/または特定のセル適用に依存し、そして予め実験によって定められる。休止時間は任意の期間でよい。具体的には、休止時間がより一層長いほど、OCV応答はより一層多くの時間安定しなければならず、しかし、その適用は、より一層短い休止時間(即ち、30分未満)、相関関係および対応する「訂正」要因が確立されるべきことを求められなければならない。たとえば、図3は種々のドウェル(アイドル)期間の後、OCVのために、上述の例の電池のために、特徴的応答を例示する。初めに、意図されたセル/電池のために安定したOCV応答を達成することを要求される時間が見出されなければならない。次いで、必要な休止時間は、この特徴から特定の適用の制限および必要条件に依存して選ばれる。選ばれた休止時間でのOCV応答対「安定な」時間でのそれとの間の違いは、要求されるOCVを達成して、このように実際のSOCを計算するために適用することができる相関関係因子である。
【0041】
捕捉されたOCVは、上述したように、SOC2を計算するのに用いられ、それは、セル容量の永久損失を表し、および正常なフル充電後、電池のSOH形状として報告される。たとえば、SOC2が0.9であると決定される場合、SOHは元の容量の90%である。
【0042】
あるいはまた、捕捉されたOCVは、セル容量の永久損失を表すために計ることができ、計られた結果がSOHとして報告される。スケーリング因子を確立するために、別々の実験室の特徴付けテストが、未解決の特定のセル設計のために前もって実行される。テストは、適用された応力の関数として、OCVでの減少を捕捉する。研究室テストの間、特定の電池(例は、リチウム電池)のOCVおよび返却可能な容量の間の相関関係(スケーリング)を確立するために、定期的な放電容量テストを行う。
【0043】
図4は、電池のOCV対その増分容量(またはSOCで、新しいとき)を伝えるために、作動温度の関数として、リチウム電池セルの特徴付けを例示する。電池セルは、課された応力寿命劣化に関係なく、その寿命を通じてこのSOC/DOD応答に従い続けるが、正常に終了したフル充電事象の完了後、およそ100%のマークから退行する。
【0044】
図4から提供されるデータは、最も一貫性のあるセル応答が約20℃およびそれより高い温度であることを示す。このように、BMSには、電池の充電およびSOHの決定中に公称25℃の温度で電池を維持するために、セルヒーターまたはセルクーラーを動作する電池温度制御システムが含まれる。持続的な温度は、変動した周囲条件にわたって電池のライフサイクルを通じて、より一層一貫した挙動を確かにする。たとえば、航空機の使用のためには、セルヒーターが必要であるだけで、それはその高度での環境が電池のために十分な冷却「負荷」を提供するからである。また、たとえば、宇宙空間の適用では、外部環境のコントロールおよびセルの加熱が利用され、その一方で、一定の防衛用途では、唯一セル冷却が利用される。
【0045】
電池はセルスタック(即ち、個々または平行グループ化セルによって配置された一連のセル)で構成され、および電池の出力はセルの連続「ストリング」の和であるため、図4から得られるデータは電池の作動挙動に対処するために用いられる。とりわけ、図5は、図4のデータを平均し、および変換(反転)することによって得られた平均OCV対SOC(即ち、一般的なSOC対OCVの応答)を示す。この応答から、そのSOCの関数として電池のOCVの多項式特徴付けは、BMSソフトウェアにおいて表すことができる。多項式の特徴の一例はSOC2の算出に関して上記に提供する。
【0046】
充電/放電事象の終了に続き、電池のOCVは、電池の作業(ワーキング)端子電圧の上(放電事象について)または下(充電事象について)のレベルに安定化し、そして回復されるために、事象の間、BMSによって報告されるように、所定の時間が必要である。上述のように、特徴付けは、使用可能なOCVが得られる前に、適切な所定の期間(即ち、「休止時間」、「減衰時間」、または「待ち時間」)を決定するために、異なる電池セルについて必要である。このように、相関は確立され、それらは、SOHの計算を伴う精度の懸念に対処するために早期OCV読みからSOCに「オフセット」調整を提供する。これらの相関は、決定したOCVを、SOHを決定するために用いることができるようにする情報のルックアップテーブルとしてBMSソフトウェアに蓄えられる。
【0047】
SOHの計算が完了したら、BMSは、後の時間で望ましいときにユーザーが情報にアクセスできるように、不揮発性メモリ(例は、EEPROM)においてSOCおよびSOHの計算結果を蓄える。具体的に、BMSには、SOH要求メカニズムで、たとえば、ボタンであり、BMSのコントローラーが、メモリに事前に蓄えられているSOCおよびSOH計算を含むプッシュツーテスト(PTT)のステータスレポートを提供するようにさせるために、ユーザーが押すものが含まれる。PTTのステータスレポートはBMSのプリンターによって用紙に印刷またはBMSのディスプレイ上に表示させることができる。この特長により、ユーザーは、計算が、正常に終了したフル充電事象後に新しい計算が含まれるように更新することができるような時間までに、一定の間隔でレポートにアクセスすることができる。あるいはまた、PPTステータスレポートは、RS232、RS485、ARINC429、CANまたは他の通信プロトコルを介して、SOC、SOH、およびBELを含む、種々の電池およびセル作動パラメーターを送信するためにシリアルデータインターフェースを用いる。
【0048】
電池の応力寿命は累積的であるが、電池の返却可能な容量への影響は、事象から事象に、または最も商業的に適用されるリチウム化学のために不活性な相当期間にわたってでも有意であることが期待されない。したがって、SOHの実行計算は必要ない。正常に終了したフル充電事象後の設定された所定期間後のSOHの定期的な更新は十分である。
【0049】
図1は、上記の計算を決定するための段階的なプロセスを示す。OCV方法を用いて、電池のSOHを算定する方法は、電池S1の最大帯電電位にまで電池を最初に充電することによって開始する。所定の期間S2(即ち、「休止時間」または「減衰時間」)を待った後、BMSコントローラーは、電池S3のOCVを決定する。S3で決定されたOCVを用いて、BMSコントローラーは、ルックアップテーブルを調べることによって、または適切な多項式の式、たとえば、次式に基づいて電池S4のSOCを算定する。
SOC=-0.026×OCV2+1.584×OCV-23.102、式中0.0≦SOC≦1.0。
たとえば、SOCが0%のとき(即ち、0.0)、セルスタックは≦24.15Vである。SOCが100%(即ち、1.0)であるとき、セルスタックは29.40Vである。SOHはその後、S4で算定したSOCであるようにBMSのコントローラーによって決定される。
【0050】
SOHを考えると、BMSのコントローラーはまた、以下の式に基づいて電池の電池エネルギーレベル(BEL)S5を算定することができる。
BEL=[SOH(%)×SOC×ネームプレート容量]×作業電池電圧×(3600/1000)
または
BEL=SOH×SOC×セルスタック電圧×111.6。
ネームプレート容量は、たとえば、25℃(即ち、31Ah)の温度での電池の記載された値であり、その一方、「3600/1000」の因子は、時間を秒に変換し、ジュールをキロジュールにする。
【0051】
電池が活性であるとき(即ち、使用中で、充電または放電の間)、BELはクーロンカウントを介して調整することができる。クーロンカウントは、累積事象時間(即ち、充電または放電にかかる時間)にわたって充電または放電の間に経験される電流レベルを捕捉する。充電事象の間、BELを調整するためには、BMSコントローラーはまず充電時間が電池を完全に充電するのに必要な時間の長さであるように充電時間S6を決定する。クーロンカウントS7を決定するために、BMSコントローラーは、その後フル充電を完了するために、電池の第一セルのために測定されたセル電流応答を充電時間にかける。BELは、その後充電S8の間に調節されたBELを評価するためにクーロンカウントによって調整される。一方、充電電流が、熱管理の考慮事項(thermal management considerations)のため、充電事象の間に調整される場合の適用においては(即ち、電荷プロファイルは事象の持続期間を通じて一貫していない)、「増分」の充電電流対時間アプローチ(取組み)(放電クーロンカウント用のようなもの)を利用することができる。このアプローチを用いると、充電電流レベルは、電池温度の関数として、(1)熱的に電池内の電子を保護するため、または(2)手段として、リチウムセルへの応力をそれらが高い周囲温度であるときに軽減するためにのいずれかで、減少する。この方法は、充電事象の間に策定された充電レベルの変化に適合させるために、より一層小さい時間間隔にわたりアンペア数を「蓄積する」。この方法のクーロンカウントのための時間ベースの分解能〔即ち、分、秒、秒の小数部(fractional seconds)〕は、充電電流制御のための適用の特定のニーズおよび必要性に依存する。この方法は、後述するように、それが充電事象に適用される場合を除き、放電の間のクーロンカウントに類似する。
【0052】
あるいはまた、放電事象の間にBELを調整するために、BMSコントローラーはインクリメンタル(追加的)に負荷電流を定期的間隔S10でサンプリングする。用いる放電容量は、サンプリングS11を合計することによって算定する。BELはその後電池S12の放電の間に決定されたSOCの算定から用いる放電容量を減算することによって調整される。最後に、正常に終了したフル充電事象の後、BELの算定は、そのような算定がSOH決定S9およびS13に基づいているので、再設定(リセット)される。
【0053】
図7は、健全状態決定方法の別の具体例を示す模範的な具体化のフローチャートである。この具体化は、十分な充電法(即ち、TTC法)に対する時間として言及される。セルがエージングし、またはが利用されるので、固定電源入力を伴う特定されたDODからセルを十分に充電するのに要する時間は減少し続ける。したがって、典型的には一貫した充放電サイクルを経験する用途向けに、充電のために得られた時間は、セルの永久的容量損失に直接に相関する。たとえば、この方法は、一貫性のある充電/放電プロファイル、例は、LEO、GEO、または関連する軌道を有する外部空間用途において最適である。
【0054】
このように、図7に例示するように、TTC方法には、BMS S14によって電池の充電時間をモニターすること、および不揮発性メモリ(例は、EEPROM)に蓄えることが含まれる。充電時間は、電池が固定電力入力を用いて予め定められたDODから十分に充電されることを要求する時間である。蓄えられた充電時間は、次にSOH指標S16を形成するために計られたS15である。スケーリングは、ケースバイケースの原則に基づき決定される。つまり、与えられた適用のために近位の容量サイクルに関連した充電または放電時間における変化を捕捉するために、意図した使用プロファイルを有するライフサイクルテストを行う。充電時間は電池の寿命にわたって減少する。
【0055】
図8に例示するように、充電電圧応答は増加したサイクルカウントの関数として電荷電位の方へより一層迅速に上昇する。充電時間は、このようにしてモニターされ、そしてBMSによって不揮発性メモリに蓄えられる。捕捉された充電時間は、次にSOH指標を形成するために計られる。上述したように、OCV方法に関して、意図されたセル設計のための独立した研究室テストレジーム(検査体制)を、充電応答時間およびセルの容量損失の間の相関関係(スケーリング)を定期的な容量テストから決定するために実行する。
【0056】
上記のように、健全状態の決定方法およびシステムの例示した模範的な具体例は、実例となるものであり、そして制限的でないことを意図する。種々の変化を、本発明の精神および範囲から離れることなく行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々のまたは平行群化セルを含む化学電池の健全状態(SOH)を算定する方法であって、
電池の最大帯電電位に電池を充電すること、
充電の完了後予め定めた時間待機した後、電池の開路電圧(OCV)を決定すること、および
電池の決定されたOCVに基づき、電池のSOHを決定すること
を含む、方法。
【請求項2】
予め定めた時間はほぼ30分である、請求項1に従う方法。
【請求項3】
さらに、
充電および決定ステップ中に電池を少なくとも約20℃の温度に維持すること
を含む、請求項1に従う方法。
【請求項4】
温度は約25℃で維持する、請求項3に従う方法。
【請求項5】
さらに、
電池エネルギーレベル(BEL)を、次の式:
BEL=SOH×SOC×セルスタック電圧×111.6(kJ)を用いて算定すること
を含む、請求項3に従う方法。
【請求項6】
さらに、
電池を充電する間の充電時間を決定すること、
充電を完了しクーロンカウントを決定するために、第1セルのために測定されたセル電流応答を、充電時間にかけること、および
電池の充電の間に、充電状態(SOC)算定にクーロンカウントを加えることによってBELを調整すること
を含み、
SOC算定は次の式:SOC=−0.026×OCV+1.584×OCV−23.102に基づく、請求項5に従う方法。
【請求項7】
さらに、
規則的間隔で負荷電流を追加的にサンプリングすること、
用いられる放電容量を提供するためにサンプリングを合計すること、および
電池の放電の間に、SOC算定から用いられる放電容量を引くことによってBELを調整すること
を含む、請求項5に従う方法。
【請求項8】
さらに、各正常に終了したフル充電事象の完了の後にBEL算定を再設定すること
を含む、請求項6に従う方法。
【請求項9】
さらに、各正常に終了したフル充電事象の完了の後にBEL算定を再設定すること
を含む、請求項7に従う方法。
【請求項10】
電池のSOHは、参照テーブルを調べるために、決定されたOCVを用いることによって決定される、請求項1に従う方法。
【請求項11】
電池のSOHは、電池の充電状態(SOC)を、予め定めた時間の後、次の式:
SOC=A×OCV+B×OCV−Cで、式中、SOCは電池のSOHを表し、AおよびBは応答の傾きを表し、およびCは0%SOCで予期されたOCVを表すものを用いて算定することによって決定される、請求項1に従う方法。
【請求項12】
電池の健全状態(SOH)を評価する化学電池管理システムであって、
(i)電池をフル充電した後に予め定めた時間待機し、(ii)予め定めた時間後、電池の開路電圧(OCV)を決定し、および(iii)決定したOCVから電池のSOHを決定するために構成されたコントローラー
を備える、システム。
【請求項13】
予め定めた時間はほぼ30分である、請求項12に従う化学電池管理システム。
【請求項14】
コントローラーは、電池温度制御システムを調節し充電および決定の間に電池を少なくとも約20℃の温度に維持するために構成される、請求項12に従う化学電池管理システム。
【請求項15】
温度は約25℃で維持される、請求項14に従う化学電池管理システム。
【請求項16】
コントローラーは、電池エネルギーレベル(BEL)を次の式:
BEL=SOH×SOC×セルスタック電圧×111.6(kJ)を用いて算定するために構成される、請求項12に従う化学電池管理システム。
【請求項17】
コントローラーは、(v)電池を充電する間の充電時間を決定し、(vi)充電を完了しクーロンカウントを決定するために、第1セルのために測定されたセル電流応答を、充電時間にかけ、および(vii)電池の充電の間に、充電状態(SOC)算定にクーロンカウントを加えることによってBELを調整するために構成される、請求項16に従う化学電池管理システム。
【請求項18】
コントローラーは、(viii)各正常に終了したフル充電事象の完了の後にBEL算定を再設定するために構成される、請求項16に従う化学電池管理システム。
【請求項19】
コントローラーは、(v)規則的間隔で負荷電流を追加的にサンプリングし、(vi)用いられる放電容量を提供するためにサンプリングを合計し、および(vii)電池の放電の間に、SOC算定から用いられる放電容量を引くことによってBELを調整するために構成される、請求項16に従う化学電池管理システム。
【請求項20】
コントローラーは、(viii)各正常に終了したフル充電事象の完了の後にBEL算定を再設定するために構成される、請求項19に従う化学電池管理システム。
【請求項21】
コントローラーは、電池のSOHを、電池の充電状態(SOC)を、予め定めた時間の後、次の式:
SOC=A×OCV+B×OCV−Cで、式中、SOCは電池のSOHを表し、AおよびBは応答の傾きを表し、およびCは0%SOCで予期されたOCVを表すものを用いて算定することによって決定するために構成される、請求項12に従う化学電池管理システム。
【請求項22】
化学電池の健全状態(SOH)を算定する方法であって、
メモリーにおいて電池の充電時間を監視し、および蓄えることであり、放電時間は、固定電源入力を用いて予め定めた放電深度からフル充電になるまで電池のために要求される時間であり、および
SOH指標を形成するために、蓄えた充電時間を計ることであり、充電時間は電池の寿命にわたって減少すること
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−61337(P2013−61337A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−199725(P2012−199725)
【出願日】平成24年9月11日(2012.9.11)
【出願人】(510238959)イーグルピッチャー テクノロジーズ,エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】