電池の製造方法、電池、車両および電子機器
【課題】電池反応の効率が良好な電池およびこれを高い生産性にて製造することができる製造方法ならびに該電池を備える機器を提供する。
【解決手段】負極集電体に負極活物質を含む塗布液を塗布して負極活物質層を形成し、その上に固体電解質材料を含む塗布液を塗布して固体電解質層を形成し、さらにその上に正極活物質を含む塗布液を塗布して正極活物質層を形成し、リチウムイオン二次電池を製造する。負極活物質層については、吐出ヘッド40の複数の吐出口44から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、吐出ヘッド40のX方向への相対移動およびY方向への相対移動を交互に繰り返して実行することにより、負極集電体の表面に正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層を形成している。活物質層と固体電解質層との接触面積を増大させて電池反応の効率を良好なものとすることができる。
【解決手段】負極集電体に負極活物質を含む塗布液を塗布して負極活物質層を形成し、その上に固体電解質材料を含む塗布液を塗布して固体電解質層を形成し、さらにその上に正極活物質を含む塗布液を塗布して正極活物質層を形成し、リチウムイオン二次電池を製造する。負極活物質層については、吐出ヘッド40の複数の吐出口44から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、吐出ヘッド40のX方向への相対移動およびY方向への相対移動を交互に繰り返して実行することにより、負極集電体の表面に正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層を形成している。活物質層と固体電解質層との接触面積を増大させて電池反応の効率を良好なものとすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活物質層間に電解質層を介在させてなるリチウムイオン二次電池などの電池の製造方法、該製造方法によって製造された電池、および、該電池を搭載する機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウムイオン電池などの化学電池を製造する方法としては、集電体としての金属箔に正極活物質および負極活物質をそれぞれ付着させたものを不織布などのセパレータを介して重ね合わせ、そのセパレータに電解液を含浸させる技術が知られている。しかしながら、電解液として揮発性の高い有機溶剤を含んだ電池は取り扱いに注意が必要であり、またさらなる小型化・高出力化が求められていることから、近年では電解液に代えて固体電解質を用いる技術が提案されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、正極活物質層、固体高分子電解質層および負極活物質層をインクジェット法によって積層し、その積層体を集電体間に挟持してなる電池において、正極活物質層と固体高分子電解質層との接触面または負極活物質層と固体高分子電解質層との接触面を凹凸とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−116248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、インクジェット方式を採用することによって、複雑な凹凸形状の正極活物質層、負極活物質層および固体高分子電解質層を形成している。そして、活物質層と固体電解質層との接触面を凹凸とすることによって、その接触面積を増大させて電池反応の効率を向上させ、電池の出力を向上させるようにしている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術には以下のような問題があった。まず第1に、インクジェット法では吐出されるインクが微量であるが故に複雑な構造を制御性よく形成することができる反面、所望の立体構造を得るためには多数回の重ね塗りを必要とするために工程数が増えて製造に長時間を要し、生産性が低いという問題がある。第2に、互いに異なる材料を含むインク(正極インク、負極インク、電解質インク)が接触することで混じり合ってしまい、活物質層と固体電解質層との境界が不鮮明となって電池としての性能を低下させてしまう可能性がある。特許文献1に記載の技術では所定のパターンを一回印刷する毎に乾燥を行っているが、このようにすると生産性はさらに低下し、また印刷工程ごとに形成される各層間での混じり合いは防止されるとしても、一回の印刷工程で隣接して形成される層間での混じり合いを防止することはできない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電池反応の効率が良好な電池およびこれを高い生産性にて製造することができる製造方法ならびに該電池を備える機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、電池の製造方法において、第1集電体の表面に少なくとも第1方向および前記第1方向とは異なる第2方向に沿って線状に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する第1活物質層を形成する第1活物質層形成工程と、第1活物質層が形成された第1集電体の表面に固体電解質材料を含む塗布液を塗布し、第1活物質層の凸パターンに追従した凹凸を有する電解質層を形成する電解質層形成工程と、前記電解質層の表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布し、前記電解質層の凹部を埋めるとともに前記電解質層の凸部を覆う第2活物質層を形成する第2活物質層形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る電池の製造方法において、第2活物質層の表面に第2集電体を積層する工程をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る電池の製造方法において、第1活物質層形成工程は、吐出ヘッドに列状に配設した複数の吐出口から第1の活物質を含む塗布液を吐出させながら当該吐出ヘッドを第1集電体に対して相対移動させることにより、第1集電体の表面に第1の活物質を含む塗布液を複数線状に塗布することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る電池の製造方法において、前記第1方向と前記第2方向とは直交し、前記複数の吐出口は前記第2方向に沿って前記吐出ヘッドに列設され、第1活物質層形成工程は、第1集電体に対する前記吐出ヘッドの前記第1方向への相対移動および前記第2方向への相対移動を交互に繰り返して実行させることにより、第1集電体の表面に格子状の凸パターンを有する第1活物質層を形成することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る電池の製造方法において、前記吐出ヘッドの前記第1方向への1回の相対移動量と前記第2方向への1回の相対移動量とを等しくすることにより、第1集電体の表面に正方格子状の凸パターンを有する第1活物質層を形成することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、電池の製造方法において、第1集電体の表面に少なくとも第1方向および前記第1方向とは異なる第2方向に沿って線状に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する第1活物質層を形成する第1活物質層形成工程と、第2集電体の表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布して第2活物質層を形成する第2活物質層形成工程と、第1活物質層と第2活物質層との間に電解質層を挟み込む電解質層形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、電池であって、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る電池の製造方法によって製造されている。
【0015】
また、請求項8の発明は、車両であって、請求項7の発明に係る電池を搭載することを特徴とする。
【0016】
また、請求項9の発明は、電子機器であって、請求項7の発明に係る電池と、前記電池を電源として動作する回路部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1から請求項5の発明によれば、第1集電体の表面に少なくとも第1方向および第2方向に沿って線状に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する第1活物質層を形成し、そこに固体電解質材料を含む塗布液を塗布して第1活物質層の凸パターンに追従した凹凸を有する電解質層を形成し、さらにその表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布して電解質層の凹部を埋めるとともに電解質層の凸部を覆う第2活物質層を形成するため、第1および第2活物質層と電解質層との接触面積を増大させて電池反応の効率を良好なものとすることができる。また、塗布液を順番に重ねているため工程数が少なく、高い生産性にて電池を製造することができる。
【0018】
特に、請求項3の発明によれば、吐出ヘッドに列状に配設した複数の吐出口から第1の活物質を含む塗布液を吐出させながら当該吐出ヘッドを第1集電体に対して相対移動させることにより、第1集電体の表面に第1の活物質を含む塗布液を複数線状に塗布するため、第1活物質層の形成に要する時間を顕著に短くすることができる。
【0019】
特に、請求項4の発明によれば、第1集電体の表面に格子状の凸パターンを有する第1活物質層を形成するため、第1および第2活物質層と電解質層との接触面積を効果的に増大させて電池反応の効率をより良好なものとすることができる。
【0020】
特に、請求項5の発明によれば、第1集電体の表面に正方格子状の凸パターンを有する第1活物質層を形成するため、第1および第2活物質層と電解質層との接触面における凹凸の分布を均一なものとして、出力密度を均一にすることができる。
【0021】
また、請求項6の発明によれば、第1集電体の表面に少なくとも第1方向および第2方向に沿って線状に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する第1活物質層を形成し、第2集電体の表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布して第2活物質層を形成し、第1活物質層と第2活物質層との間に電解質層を挟み込むため、第1および第2活物質層と電解質層との接触面積を増大させて電池反応の効率を良好なものとすることができる。また、製造に要する工程数が少なく、高い生産性にて電池を製造することができる。
【0022】
また、請求項7の発明によれば、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る電池の製造方法によって製造しているため、電池反応の効率を良好なものとすることができる。
【0023】
また、請求項8の発明によれば、車両の駆動用電源として請求項7の発明に係る電池を好適に使用することができる。
【0024】
また、請求項9の発明によれば、電子機器の回路部の電源として請求項7の発明に係る電池を好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る電池の製造方法によって製造されるリチウムイオン二次電池の外観斜視図である。
【図2】図1のリチウムイオン二次電池の断面図である。
【図3】負極集電体の上面に負極活物質層を形成した時点での構造を示す斜視図である。
【図4】リチウムイオン二次電池の製造手順を示すフローチャートである。
【図5】ノズルスキャン法に用いる塗布ユニットの構成を示す図である。
【図6】吐出ヘッドの内部構造を示す断面図である。
【図7】塗布ユニットによる塗布動作の手順を示すフローチャートである。
【図8】負極集電体に対して相対移動する複数の吐出口の軌跡を示す図である。
【図9】負極集電体の表面に形成された負極活物質層のパターンを示す図である。
【図10】スピンコート法に用いる回転式塗布ユニットの概略構成を示す図である。
【図11】固体電解質層を形成した時点での積層体の上面図である。
【図12】図11の積層体の縦断面図である。
【図13】ナイフコート法によって正極活物質の塗布液が塗布される様子を模式的に示す図である。
【図14】本発明に係るリチウムイオン二次電池を搭載した電気自動車を模式的に示す図である。
【図15】本発明に係るリチウムイオン二次電池を搭載したICカードを模式的に示す図である。
【図16】負極集電体に対して相対移動する複数の吐出口の軌跡の他の例を示す図である。
【図17】負極集電体に対して相対移動する複数の吐出口の軌跡の他の例を示す図である。
【図18】負極集電体への塗布パターンの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
<1.リチウムイオン電池の構造>
図1は、本発明に係る電池の製造方法によって製造されるリチウムイオン二次電池1の外観斜視図である。また、図2は図1のリチウムイオン二次電池1の断面図である。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンが電気伝導を担う二次電池(蓄電池)であり、エネルギー密度が高く、またメモリー効果が小さく、さらには繰り返しの充放電に対しても劣化が少ないという特徴を有する。リチウムイオン二次電池1は、負極集電体11の上に負極活物質層12、固体電解質層13、正極活物質層14および正極集電体15を順に積層した構造を有している。
【0028】
図1,2の各層を構成する材料としては、リチウムイオン二次電池の構成材料として公知のものを採用することが可能である。負極集電体11および正極集電体15は金属箔であり、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの導電性材料の箔を用いることができる。本実施形態では、負極集電体11として銅箔を用い、正極集電体15としてアルミニウム箔を採用している。また、負極活物質層12を構成する負極活物質としては、例えばチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)とグラファイトとを混合したものを用いることができ、正極活物質層14を構成する正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)およびそれらの混合物を用いることができる。さらに、固体電解質層13としては、例えばホウ酸エステルポリマー電解質を用いることができる。なお、各機能層を構成する材料はこれらに限定されるものではないことは勿論である。
【0029】
図3は、負極集電体11の上面に負極活物質層12を形成した時点での構造を示す斜視図である。同図に示すように、負極集電体11の表面には格子状の凸パターンを有する負極活物質層12が形成される。特に、本実施形態においては、負極活物質層12が正方格子状の凸パターンを有する。すなわち、負極活物質層12の縦軸方向の格子間隔と横軸方向の格子間隔とは等しく、縦軸方向と横軸方向との軸間角度は90°である。負極活物質層12の凸パターンについてはさらに後述する。
【0030】
図2に示すように、固体電解質層13は固体電解質によって形成された略一定の厚さを有する連続した薄膜である。図3に示す如き負極集電体11の表面に負極活物質層12が形成されてなる積層体表面の凹凸に追従するように、固体電解質層13は該積層体上面のほぼ全体を一様に覆っている。また、正極活物質層14は、固体電解質層13の凹部を埋めるとともに凸部を覆うような凹凸構造を下面側に有する。正極活物質層14の上面は略平坦となっている。そして、略平坦に形成された正極活物質層14の上面に正極集電体15が積層されてリチウムイオン二次電池1が構成される。このようなリチウムイオン二次電池1に適宜接続端子(タブ)を取り付けたものをケーシング内に収容して最終製品としての二次電池が形成される。
【0031】
<2.リチウムイオン電池の製造方法>
次に、上記の構成を有するリチウムイオン二次電池1の製造方法について説明する。図4は、リチウムイオン二次電池の製造手順を示すフローチャートである。まず、負極集電体11となる金属箔(本実施形態では銅箔)を準備する(ステップS1)。薄い銅箔は搬送や取り扱いが難しいので、例えば片面をガラス板等のキャリアに貼り付ける等により搬送性を高めておくようにしても良い。
【0032】
続いて、負極集電体11となる銅箔の表面に、負極活物質を含む塗布液を塗布して格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成する(ステップS2)。負極活物質を含む塗布液としては、例えば負極活物質材料としてのチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)に、導電助剤としてのアセチレンブラックまたはケッチェンブラック、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などを混合したものを用いることができる。本実施形態においては、このような負極活物質を含む塗布液をノズルディスペンス法、中でも塗布液を吐出する吐出ヘッドを塗布対象面に対して相対移動させるノズルスキャン法によって塗布するのであるが、その詳細については後述する。
【0033】
次に、負極集電体11に格子状の負極活物質層12が積層されてなる積層体の表面に対し、スピンコート法によって固体電解質材料を含む塗布液を塗布して固体電解質層13を形成する(ステップS3)。固体電解質材料を含む塗布液としては、例えば高分子電解質材料としてのポリエチレンオキシドおよび/またはポリスチレンなどの樹脂に、支持塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF4)および溶剤としてのジエチレンカーボネートなどを混合したものを用いることができる。スピンコート法によれば、負極集電体11の表面に負極活物質層12が積層されて形成される格子状の凹凸パターンであっても、その凹凸に沿って厚さ均一な固体電解質層13を形成することができる。
【0034】
次に、固体電解質層13の表面に対し、ナイフコート法によって正極活物質を含む塗布液を塗布して正極活物質層14を形成する(ステップS4)。正極活物質を含む塗布液としては、例えば正極活物質材料としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)に、導電助剤としてのアセチレンブラック、結着剤としてのスチレンブタジエンラバー(SBR)、分散剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)および溶剤としての純水などを混合したものを用いることができる。ナイフコート法によれば、固体電解質層13の表面の凹凸パターンを埋めつつも正極活物質層14の上面を平坦にすることができる。
【0035】
その後、平坦な正極活物質層14の上面に正極集電体15となる金属箔(本実施形態ではアルミニウム箔)を積層する(ステップS5)。概略、以上のような手順によって図1,2に示したリチウムイオン二次電池1が製造される。以下、各製造工程、特にステップS2の負極活物質を含む塗布液の塗布について詳細に説明する。
【0036】
<2−1.負極活物質の塗布>
図5は、ステップS2のノズルスキャン法に用いる塗布ユニット2の構成を示す図である。図5および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0037】
この塗布ユニット2では、基台21上にステージ移動機構20が設けられ、負極集電体11(若しくは負極集電体11を貼り付けたガラス板などのキャリア)を保持するステージ30がステージ移動機構20によって水平面内(XY平面内)で移動可能とされている。ステージ30の上方には吐出ヘッド40が固定設置されている。すなわち、本実施形態においては、固定設置された吐出ヘッド40に対して負極集電体11を保持するステージ30が水平面内で移動することにより、吐出ヘッド40が負極集電体11に対して相対移動することとなる。
【0038】
ステージ移動機構20は、下段からステージ30をX方向に移動させるX方向移動機構21、X方向と直行するY方向に移動させるY方向移動機構22、および、鉛直方向(Z方向)に沿った軸を中心に回転させるθ回転機構23を備える。X方向移動機構21は、モータ211にボールネジ212が接続され、さらにY方向移動機構22に固定されたナット213がボールネジ212に螺合される構造を有している。ボールネジ212の上方にはガイドレール214が固定され、モータ211が回転すると、ナット213とともにY方向移動機構22がガイドレール214に沿ってX方向に滑らかに移動する。
【0039】
Y方向移動機構22は、モータ221、ボールネジ機構およびガイドレール224を有し、モータ221が回転するとボールネジ機構によってθ回転機構23がガイドレール224に沿ってY方向に移動する。θ回転機構23は、モータ231によりステージ30をZ方向に沿った軸を中心に回転させる。以上の構成により、吐出ヘッド40はステージ移動機構20によって負極集電体11に対してX方向およびY方向に自在に相対移動されるとともに、負極集電体11に対する姿勢も変更可能とされる。
【0040】
固定設置された吐出ヘッド40には供給管422の一端が接続されている。供給管422には逆止弁421が介挿されている。供給管422の他端は二叉に分岐されており、その一方はポンプ423に接続され、他方は制御弁424を介して負極活物質を含む塗布液を貯留するタンク425に接続される。
【0041】
図6は、吐出ヘッド40の内部構造を示す断面図である。図6(a)は吐出ヘッド40をYZ平面にて切断した断面を示し、図6(b)はXZ平面にて切断した断面を示す。図6に示すように、吐出ヘッド40の内部にはバッファ空間BFとして機能する空洞が形成されており、このバッファ空間BFに供給管422を経由して送給される負極活物質の塗布液が送り込まれる。吐出ヘッド40には、バッファ空間BFから下方へと向かう複数の流路41が形設されている。複数の流路41は、Y方向に沿って等間隔で列状に設けられている。そして、各流路41の下端開口部が吐出口44を形成する。よって、吐出ヘッド40の下端面には、複数の吐出口44がY方向に沿って列設されることとなる。なお、吐出ヘッド40に設ける吐出口44の個数については特に限定されるものではなく、ステージ30の幅に応じた適宜の個数とすることができる。
【0042】
ステージ移動機構20の各モータ、ポンプ423および制御弁424は制御部38に電気的に接続されている。制御部38のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部38は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクなどを備えて構成される。制御部38のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって、塗布ユニット2の上記各構成が制御部38に制御され、負極活物質を含む塗布液の塗布処理が進行する。
【0043】
次に、上記のような構成を有する塗布ユニット2による、負極活物質を含む塗布液の塗布動作について説明する。図7は、塗布ユニット2による塗布動作の手順を示すフローチャートである。まず、図4のステップS1にて準備した負極集電体11をステージ30の上面に載置する(ステップS21)。負極集電体11は図示を省略するクランプ機構によってステージ30の上面に固定される。
【0044】
次に、制御部38がステージ移動機構20の各モータを駆動制御してステージ30に保持された負極集電体11を塗布開始位置に移動させる(ステップS22)。塗布開始位置は、吐出ヘッド40が負極集電体11の端部直上(本実施形態では(+X)側端部の直上)となる位置であっても良いし、負極集電体11の端部よりも若干外側の上方であっても良い。そして、負極集電体11が塗布開始位置に到達した後に、吐出ヘッド40から負極活物質を含む塗布液の吐出を開始する(ステップS23)。
【0045】
吐出ヘッド40からの塗布液の吐出は、図5に示す逆止弁421、ポンプ423および制御弁424によって行われる。まず、制御部38の制御により制御弁424が開放された状態でポンプ423が吸引動作を行う。このとき、逆止弁421により吐出ヘッド40からの塗布液の逆流が防止されるため、タンク425からポンプ423へと負極活物質を含む塗布液が吸引される。次に、制御部38の制御により制御弁424が閉止され、ポンプ423が押出動作を行う。これにより、ポンプ423から吐出ヘッド40に負極活物質を含む塗布液が送給される。送給された塗布液は一旦吐出ヘッド40内のバッファ空間BFに送り込まれた後、複数の吐出口44から下方に向けて吐出される。このように吐出ヘッド40では、バッファ空間BFを介して塗布液を吐出しているため、Y方向に沿って列設された複数の吐出口44から均一な流量にて負極活物質を含む塗布液を吐出することができる。
【0046】
塗布液の吐出を開始すると同時に、制御部38がステージ移動機構20を制御してステージ30の移動を開始させる。本実施形態においては、吐出ヘッド40の複数の吐出口44から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、ステージ30がX方向およびY方向への所定距離の移動を繰り返す。すなわち、まず、制御部38はステージ移動機構20のX方向移動機構21を駆動制御してステージ30を(+X)方向に所定のX方向走査距離Dxだけ移動させ(ステップS24)、次いでY方向移動機構22を駆動制御してステージ30を(+Y)方向に所定のY方向走査距離Dyだけ移動させる(ステップS25)。続いて、制御部38は再びX方向移動機構21を駆動制御してステージ30を(+X)方向にX方向走査距離Dxだけ移動させ(ステップS26)、さらにY方向移動機構22を駆動制御してステージ30を(−Y)方向にY方向走査距離Dyだけ移動させる(ステップS27)。
【0047】
ステップS27の移動が終了した時点で負極集電体11が塗布の終了位置に到達していない場合には再度ステップS24に戻る(ステップS28)。すなわち、負極集電体11が塗布終了位置に到達するまで、ステップS24からステップS27の移動動作が繰り返される。その結果、負極集電体11の表面には負極活物質を含む塗布液が格子状に塗布されることとなる。
【0048】
図8は、負極集電体11に対して相対移動する複数の吐出口44の軌跡を示す図である。上述した移動動作の主体はステージ30であり、ステージ30に保持された負極集電体11に対する吐出ヘッド40の相対移動の向きは、必然的にステップS24からステップS27に示したステージ30の移動の向きとは逆となる。すなわち、ステップS24では負極集電体11に対して吐出ヘッド40が(−X)方向にX方向走査距離Dxだけ移動し、ステップS25では(−Y)方向にY方向走査距離Dyだけ移動する。同様に、ステップS26では負極集電体11に対して吐出ヘッド40が(−X)方向にX方向走査距離Dxだけ移動し、ステップS27では(+Y)方向にY方向走査距離Dyだけ移動する。ステップS24からステップS27を繰り返すことによって、負極集電体11に対する吐出ヘッド40のX方向への相対移動およびY方向への相対移動が交互に繰り返して実行されることとなる。その結果、図8に示すように、吐出ヘッド40の複数の吐出口44のそれぞれは負極集電体11上につづら折り状の軌跡を描くこととなる。
【0049】
本実施形態においては、Y方向における負極集電体11に対する吐出ヘッド40の1回の相対移動量であるY方向走査距離Dyと、複数の吐出口44の配列ピッチP(隣り合う吐出口44の間隔)とを等しくしている。このため、ある吐出口44の軌跡はその変曲点(X方向移動とY方向移動とが切り換わる点)において隣の吐出口44の軌跡と点接触して格子点を形成することとなる。
【0050】
また、X方向における負極集電体11に対する吐出ヘッド40の1回の相対移動量であるX方向走査距離Dxと、Y方向における1回の相対移動量であるY方向走査距離Dyとを等しくしている。このため、複数の吐出口44が負極集電体11上に描く軌跡は、図8に示す如き正方格子状のパターンとなる。
【0051】
吐出ヘッド40の複数の吐出口44から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、負極集電体11に対する吐出ヘッド40のX方向への相対移動およびY方向への相対移動を交互に繰り返して実行させることによってそれら複数の吐出口44が負極集電体11上に正方格子状の軌跡を描くように相対移動すると、負極活物質を含む塗布液は負極集電体11の表面に正方格子状に塗布されることとなる。その結果、図9に示すように、負極集電体11の表面には正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12が形成されることとなる。
【0052】
ところで、厳密に吐出ヘッド40のX方向への相対移動とY方向への相対移動とを択一的に切り換えて繰り返すと、正方格子状パターンの格子点においては隣り合う吐出口44の軌跡が重なり、塗布液が重ね塗りされることとなる。そうすると、正方格子状パターンの格子点では他の部分よりも負極活物質層12が厚く盛り上がることとなる。このような負極活物質層12の不均一な盛り上がりは、リチウムイオン二次電池1での短絡の原因となるおそれがあるため好ましくない。
【0053】
このため、本実施形態においては、吐出ヘッド40のX方向への相対移動期間とY方向への相対移動期間とを若干重ね合わせることによって、不要な塗布液の重ね塗りを防止している。具体的には、ステップS24で吐出ヘッド40が(−X)方向への相対移動を終える直前にステップS25の(−Y)方向の相対移動を開始する。同様に、吐出ヘッド40がステップS25の(−Y)方向への相対移動を終える直前にステップS26の(−X)方向の相対移動を開始する。以降、同様の手順を繰り返すことによって、図9に示すように、隣り合う吐出口44から吐出された塗布液が接触はするものの、重ね塗りされることは防止される。その結果、負極集電体11の表面に積層された負極活物質層12の厚さは均一となり、リチウムイオン二次電池1での短絡が防止される。なお、吐出ヘッド40のY方向走査距離Dyを複数の吐出口44の配列ピッチPよりも若干短くすることによって塗布液の重ね塗りを防止するようにしても良い。
【0054】
一方、ステップS28にて負極集電体11が塗布の終了位置に到達している場合には、制御部38の制御により吐出ヘッド40からの塗布液の吐出を停止するとともに、ステージ30の移動も停止する(ステップS29)。そして、負極活物質層12が積層された負極集電体11をステージ30から取り外すことによって、負極活物質の塗布処理(図4のステップS2)が完了する。
【0055】
以上のようにして、吐出ヘッド40を負極集電体11に対して相対移動させるノズルスキャン法によって負極活物質を含む塗布液の塗布処理が実行され、負極集電体11の表面には、図9に示す如き正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12が形成される。より具体的には、負極集電体11に対する吐出ヘッド40のX方向への相対移動およびY方向への相対移動を交互に繰り返して実行することにより、負極集電体11の表面に正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成している。なお、図9にも示しているように、本実施形態のノズルスキャン法による塗布処理では、凸パターンの端部は必ずしも連続した直線となっていない。しかしながら、このことは本発明においては特段のデメリットとはならない。その理由は、本発明にて、負極集電体11の表面に正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成するのは、活物質層と固体電解質層との接触面積を増大させて電池反応の効率を向上させるためであり、凸パターンの端部を厳密に連続した直線状とする必要が無いためである。
【0056】
<2−2.電解質の塗布>
塗布ユニット2によって負極集電体11の表面に格子状に負極活物質層12が形成された積層体に対して固体電解質の材料を含む塗布液がスピンコート法により塗布される。図10は、ステップS3のスピンコート法に用いる回転式塗布ユニット3の概略構成を示す図である。
【0057】
負極集電体11に負極活物質層12が形成された積層体を保持するスピンベース51は、モータ52によって鉛直方向に沿った軸を中心に回転される。スピンベース51が当該積層体を保持する機構としては、負極集電体11の裏面を吸着するものであっても良いし、負極集電体11の端縁部を機械的に保持するものであっても良い。カップ53は、スピンベース51の周囲を取り囲むように設置されており、回転するスピンベース51および積層体から飛散した塗布液を受け止めて回収する。
【0058】
また、スピンベース51の上方には吐出ノズル54が設置されている。吐出ノズル54には、図示省略のポンプやタンクを備えた電解質塗布液供給機構55から固体電解質の材料を含む塗布液が供給される。電解質塗布液供給機構55から供給された固体電解質材料を含む塗布液は、吐出ノズル54からスピンベース51に保持された積層体の回転中心に吐出される。
【0059】
負極集電体11の表面に格子状に負極活物質層12が形成された積層体はスピンベース51に保持され、モータ52によって鉛直方向に沿った軸を中心に所定方向に一定速度で回転される。そして、所定の速度で回転される積層体の回転中心に吐出ノズル54から固体電解質材料を含む塗布液が吐出される。負極活物質層12が形成された負極集電体11の表面に滴下された塗布液は遠心力によって周囲に拡がり、余分な塗布液は負極集電体11の端部から振り切られる。このようにして、正方格子状に負極活物質層12が形成された負極集電体11の表面に、固体電解質材料を含む塗布液がほぼ均一な厚さにて塗布される。そして、これを硬化させることにより、負極活物質層12が形成された負極集電体11の表面に固体電解質層13が形成される。
【0060】
図11は、固体電解質層13を形成した時点での積層体の上面図である。また、図12は、図11の積層体の縦断面図である。回転式塗布ユニット3を用いたスピンコート法では、正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12が形成された負極集電体11に対しても、その凸パターンによって生じる凹凸に沿って均一な厚さの塗布処理を行うことができる。その結果、図11,12に示すように、負極活物質層12の正方格子状の凸パターンに追従した凹凸を有する固体電解質層13を形成することができる。
【0061】
形成する固体電解質層13の厚さについては任意であるが、負極活物質層12と正極活物質層14とが確実に分離され、また内部抵抗が許容値以下となるような厚さであることが必要である。固体電解質層13の厚さは、塗布液の粘度とスピンベース51の回転速度によって調整することができる。なお、表面積を増大させるために設けた負極活物質層12の凹凸の意義を滅却しないという観点からは、固体電解質層13の厚さt13が負極活物質層12の凹凸の高低差t12よりも小さいことが望ましい。
【0062】
<2−3.正極活物質の塗布>
負極活物質層12の格子状の凸パターンに追従する固体電解質層13が形成された積層体に対して正極活物質を含む塗布液がナイフコート法により塗布される。図13は、ナイフコート法によって正極活物質の塗布液が塗布される様子を模式的に示す図である。
【0063】
負極集電体11の表面に格子状の負極活物質層12およびその凸パターンに追従した固体電解質層13が形成された積層体は図示省略のステージ上に水平姿勢で静止状態に保持されている。そして、正極活物質を含む塗布液を連続して吐出するノズル61が当該積層体の上方を水平方向の矢印AR13の向きに走査移動される。これにより、固体電解質層13の凹部が塗布液によって埋められつつ固体電解質層13の凸部も塗布液によって覆われる。なお、ノズル61としては、負極集電体11の幅方向(図13の紙面と垂直な方向)に沿って延びるスリット状の吐出口を有するスリットノズルであっても良いし、当該幅方向に沿って複数の吐出口が列設されたものであっても良い。
【0064】
また、ノズル61にはブレード62が装着されている。ブレード62は、ノズル61の進行方向(矢印AR13の向き)において吐出口よりも後方側に取り付けられている。ブレード62の下端は、固体電解質層13の上端よりも上方の位置にて、ノズル61から吐出された正極活物質を含む塗布液に接触する。ブレード62がその下端を塗布液に接触させながら積層体上方を水平方向に沿って移動することにより、塗布液の上面は平坦に均される。
【0065】
このようにして、走査移動されるノズル61から正極活物質を含む塗布液を吐出しつつブレード62によって塗布液の上面を平坦に均すことにより、固体電解質層13の凹部を埋めるとともに凸部を覆う一方、上面が平坦な正極活物質層14が形成される。
【0066】
こうして形成された正極活物質層14の上面には正極集電体15が積層される。このとき、ナイフコート法によって形成された正極活物質層14が硬化しないうちに、その上面に正極集電体15を積層することが好ましい。こうすることで、正極活物質層14と正極集電体15とを互いに密着させて接合することができる。また、正極活物質層14の上面は平坦に均されているため、正極集電体15を隙間無く積層することが容易となっている。以上のようにして、図1,2に示したリチウムイオン二次電池1が製造される。
【0067】
<3.本実施形態の製造方法の利点>
本実施形態のリチウムイオン二次電池1の製造方法においては、負極集電体11に負極活物質を含む塗布液を塗布して負極活物質層12を形成し、その上に固体電解質材料を含む塗布液を塗布して固体電解質層13を形成し、さらにその上に正極活物質を含む塗布液を塗布して正極活物質層14を形成している。このように各機能層の材料となる塗布液を順番に重ねているため工程数が少なく、高い生産性にてリチウムイオン二次電池1を製造することができる。
【0068】
より詳細には、格子状の凸パターンを有する負極活物質層12の形成には、吐出ヘッド40を負極集電体11に対して相対移動させるノズルスキャン法による塗布を用いているため、高いスループットにて凸パターンを形成することができる。特に、吐出ヘッド40の複数の吐出口44から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、それら複数の吐出口44を一括して相対移動させて正方格子状の凸パターンを形成しているため、負極活物質層12の形成に要する時間を顕著に短くすることができる。
【0069】
また、固体電解質層13の形成には、負極活物質層12の凸パターンに追従して均一な厚さの塗布処理を行うのに適したスピンコート法を適用している。スピンコート法であれば、負極集電体11に格子状の負極活物質層12を形成した積層体を回転させながら固体電解質材料を含む塗布液を滴下することにより、負極活物質層12の凸パターンに追従した凹凸を有する固体電解質層13を高いスループットで形成することができる。
【0070】
さらに、正極活物質層14については、下面は固体電解質層13の凹凸に追従しつつも上面は平坦であることが求められるため、ブレード62によって上面を平坦に均すナイフコート法を適用している。このナイフコート法では、固体電解質層13の凹凸を埋めつつ一様な塗布を行うことができれば十分であり、短時間のうちに処理を完了することができる。
【0071】
また、本実施形態においては、負極集電体11の表面に正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成しているため、負極活物質層12と固体電解質層13との接触面は正方格子状の凹凸面となり、それらの接触面積を増大させることができる。固体電解質層13も負極活物質層12の凸パターンに追従した凹凸を有しているため、正極活物質層14と固体電解質層13との接触面も上記と同様の正方格子状の凹凸面となり、それらの接触面積を増大させることができる。これにより、両活物質層と固体電解質層13との接触面積を増大させてリチウムイオン二次電池1における電池反応の効率を良好なものとすることができ、高出力を得ることができる。
【0072】
また、負極集電体11の表面に正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成しているため、負極集電体11と負極活物質層12との密着性が強固である。このため、負極活物質を含む塗布液を塗布した直後であっても、負極活物質層12が負極集電体11から剥がれることが防止される。
【0073】
また、負極活物質層12の凸パターンを正方格子状としているため、活物質層と固体電解質層13との接触面における凹凸の分布を均一なものとすることができる。このため、リチウムイオン二次電池1の面内における出力密度を均一にすることができ、電池反応を安定なものとすることができる。
【0074】
さらに、本実施形態の製造方法によって製造されたリチウムイオン二次電池1は薄型で折り曲げも容易である。
【0075】
<4.リチウムイオン電池の応用例>
上述したように、本実施形態の製造方法によって製造されたリチウムイオン二次電池1は、薄型である上に電池反応の効率が良好である。このようなリチウムイオン二次電池1は、例えば電気自動車(ハイブリッド電気自動車を含む)、電動アシスト自転車、電動工具、ロボットなどの機械類や、パーソナルコンピュータ、携帯電話や携帯型音楽プレイヤー、デジタルカメラやビデオカメラなどのモバイル機器、スマートICカード、ゲーム機、ポータブル型の測定機器、通信機器や玩具などの各種の電子機器に使用することが可能である。
【0076】
以下に、本発明に係るリチウムイオン二次電池1を搭載した機器の例について説明するが、これらは本実施形態のリチウムイオン二次電池1を応用しうる機器の一部を例示するものであって、本発明に係るリチウムイオン二次電池1の適用範囲がこれらに限定されるものではない。
【0077】
図14は、本発明に係るリチウムイオン二次電池1を搭載した機器の一例としての車両、具体的には電気自動車を模式的に示す図である。この電気自動車70は、車輪71と、車輪71を駆動するモータ72と、モータ72に電力を供給する電池73とを備えている。この電池73として、上記実施形態のリチウムイオン二次電池1を複数直列および並列に接続したものを電気自動車70に搭載することができる。本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、電池反応の効率が良好であるため、小型であっても高い出力を得ることができるとともに短時間の充電も可能であり、電気自動車70のような車両の駆動用電源として好適である。
【0078】
図15は、本発明に係るリチウムイオン二次電池1を搭載した機器の他の例としての電子機器、具体的にはICカード(スマートカード)を模式的に示す図である。このICカード80は、互いに重ね合わせられることでカード型のパッケージを構成する1対の筐体81,82と、該筐体内に収容される回路モジュール83および該回路モジュール83の電源となる電池84とを備えている。回路モジュール83は、外部との通信のためのループ状のアンテナ831と、アンテナ831を介した外部機器とのデータ交換および種々の演算・記憶処理を実行する集積回路(IC)を含む回路部832とを備えている。電池84としては、本実施形態のリチウムイオン二次電池1を1組または複数組備えるものを用いることができ、回路部832はこの電池84を電源として動作する。
【0079】
このような構成によれば、それ自身は電源を有さない一般的なICカードに比べて、外部機器との通信可能距離を拡張することができ、またより複雑な処理を行うことが可能となる。本発明に係るリチウムイオン二次電池1は薄型で大容量を得ることができるため、このようなカード型の機器の電源としても好適である。
【0080】
<5.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、負極集電体11の表面に正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成していたが、凸パターンは正方格子状に限定されるものではなく、他の形状であっても良い。例えば、上記実施形態においてX方向走査距離DxとY方向走査距離Dyとを異なる値とし、負極集電体11に対する吐出ヘッド40のX方向への相対移動およびY方向への相対移動を交互に繰り返して実行することにより、負極集電体11の表面に長方形の格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成するようにしても良い。
【0081】
また、図16に示すように、Y方向の相対移動量であるY方向走査距離Dyと、複数の吐出口44の配列ピッチPとを異なる値とし、負極集電体11に対する吐出ヘッド40のX方向への相対移動およびY方向への相対移動を交互に繰り返して実行することにより、負極集電体11の表面にジグザグ形状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成するようにしても良い。
【0082】
また、図17に示すように、吐出ヘッド40に列設された複数の吐出口44から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出させながら吐出ヘッド40を負極集電体11に対して正弦曲線を描くように相対移動させることにより、負極集電体11の表面に正弦曲線状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成するようにしても良い。
【0083】
図8,16,17に示したのは、いずれも複数の吐出口44から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、吐出ヘッド40を負極集電体11に対して相対移動させることにより、複数の吐出口44を一括して相対移動させて負極集電体11の表面に負極活物質を含む塗布液を複数線状に塗布するものである。こうして負極集電体11の表面に所定の凸パターンを有する負極活物質層12を形成することにより、負極活物質層12および正極活物質層14と固体電解質層13との接触面が凹凸面となり、それらの接触面積を増大させてリチウムイオン二次電池1における電池反応の効率を良好なものとすることができる。また、吐出ヘッド40に列設された複数の吐出口44を一括して相対移動させて負極集電体11の表面に負極活物質を含む塗布液を複数線状に塗布しているため、高いスループットにて負極活物質層12を形成することができる。
【0084】
また、負極活物質層12を形成するための塗布パターンは図18に示すようなものであっても良い。図18に示す塗布パターンにおいても、負極集電体11の表面に負極活物質を含む塗布液を複数線状に塗布している。但し、塗布の軌跡である複数の線は互いに平行ではなく、図18に示す塗布パターンは単一の吐出口を有するノズルを負極集電体11に対して相対移動させることによって描かれるものである。具体的には、単一の吐出口から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、当該ノズルを負極集電体11に対して相対移動させることにより、負極集電体11の表面に負極活物質を含む塗布液を複数線状に塗布している。このとき、それぞれが単一の吐出口を有する複数のノズルを個別に相対移動させるようにしても良いし、単一の吐出口を有する1つのノズルを繰り返して相対移動させるようにしても良い。このようにしても、負極活物質層12および正極活物質層14と固体電解質層13との接触面が凹凸面となり、それらの接触面積を増大させてリチウムイオン二次電池1における電池反応の効率を良好なものとすることができる。もっとも、上記実施形態のように、複数の吐出口44を有する吐出ヘッド40を相対移動させて塗布液を一括して塗布するようにした方が容易に高いスループットを得ることができる。
【0085】
また、負極集電体11に対する吐出ヘッド40(または単一の吐出口を有するノズル)の相対移動の方向はX方向およびY方向に限定されるものではなく、3方向以上であっても良い。また、2方向であってもそれらは垂直に限定されるものではなく、任意の角度をなすものであって良い。
【0086】
要するに、負極集電体11の表面に少なくとも第1方向および第1方向とは異なる第2方向に沿って線状に負極活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する負極活物質層12を形成する形態であれば良い。
【0087】
また、上記実施形態においては、ノズルスキャン法によって負極集電体11の表面に負極活物質層12を形成するようにしていたが、これに限定されるものではなく、ノズルスキャン法によって正極集電体15の表面に正極活物質層14を形成するようにしても良い。すなわち、吐出ヘッド40の複数の吐出口44から正極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、それら複数の吐出口44を一括して相対移動させて正方格子状の凸パターンを有する正極活物質層14を形成するようにしても良い。この場合、上記実施形態とは逆に、正極活物質層14の上にスピンコート法によって固体電解質層13を形成し、その上にナイフコート法によって負極活物質層12を形成し、さらにその上に負極集電体11を積層すれば良い。
【0088】
また、負極活物質層12と正極活物質層14との間に挟み込まれる電解質層は固体電解質に限定されるものではなく、液体の電解質であっても良い。具体的には、上記実施形態と同じく、負極集電体11の表面に少なくとも第1方向および第1方向とは異なる第2方向に沿って線状に負極活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する負極活物質層12を形成する。同様に、正極集電体15の表面に正極活物質を含む塗布液を塗布して正極活物質層14を形成する。そして、電解液を含浸させた樹脂製のセパレータ(例えば、多孔質の絶縁フィルム)を負極活物質層12と正極活物質層14との間に挟み込む。このようにしても、負極活物質層12および正極活物質層14と液体の電解質層との接触面積を増大させて電池反応の効率を良好なものとすることができる。また、上記実施形態と同様に、かかる構造のリチウムイオン二次電池を高い生産性にて製造することができる。
【0089】
また、上記実施形態においては、固体電解質層13を形成するのにスピンコート法を適用していたが、負極活物質層12の凸パターンに追従した凹凸を有する固体電解質層13を形成することが可能な塗布方法であれば他の方法であっても良く、例えばスプレーコート法や液滴法によって固体電解質材料を含む塗布液を塗布するようにしても良い。同様に、正極活物質層14の形成についてもナイフコート法に限定されるものではなく、固体電解質層13の凹部を埋めるとともに凸部を覆う一方、上面が平坦な正極活物質層14を形成することが可能な塗布方法であれば他の方法であっても良く、ノズルスキャン法やスリットコート法、バーコート法などを適用することができる。
【0090】
また、上記実施形態で例示した集電体、活物質、電解質等の材料はその一例を示したものであってこれに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池の構成材料として用いられる他の材料を使用してリチウムイオン二次電池を製造する場合においても、本発明に係る製造方法を好適に適用することが可能である。また、リチウムイオン二次電池に限らず、リチウムイオン一次電池やアルカリ電池等の他の種類の化学電池の製造に本発明に係る製造方法を適用するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、電池の製造技術に好適に適用することができ、特に低コストで小型、高出力の電池を高い生産性にて製造するのに適している。
【符号の説明】
【0092】
1 リチウムイオン二次電池
2 塗布ユニット
11 負極集電体
12 負極活物質層
13 固体電解質層
14 正極活物質層
15 正極集電体
20 ステージ移動機構
30 ステージ
38 制御部
40 吐出ヘッド
44 吐出口
70 電気自動車
80 ICカード
【技術分野】
【0001】
本発明は、活物質層間に電解質層を介在させてなるリチウムイオン二次電池などの電池の製造方法、該製造方法によって製造された電池、および、該電池を搭載する機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウムイオン電池などの化学電池を製造する方法としては、集電体としての金属箔に正極活物質および負極活物質をそれぞれ付着させたものを不織布などのセパレータを介して重ね合わせ、そのセパレータに電解液を含浸させる技術が知られている。しかしながら、電解液として揮発性の高い有機溶剤を含んだ電池は取り扱いに注意が必要であり、またさらなる小型化・高出力化が求められていることから、近年では電解液に代えて固体電解質を用いる技術が提案されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、正極活物質層、固体高分子電解質層および負極活物質層をインクジェット法によって積層し、その積層体を集電体間に挟持してなる電池において、正極活物質層と固体高分子電解質層との接触面または負極活物質層と固体高分子電解質層との接触面を凹凸とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−116248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、インクジェット方式を採用することによって、複雑な凹凸形状の正極活物質層、負極活物質層および固体高分子電解質層を形成している。そして、活物質層と固体電解質層との接触面を凹凸とすることによって、その接触面積を増大させて電池反応の効率を向上させ、電池の出力を向上させるようにしている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術には以下のような問題があった。まず第1に、インクジェット法では吐出されるインクが微量であるが故に複雑な構造を制御性よく形成することができる反面、所望の立体構造を得るためには多数回の重ね塗りを必要とするために工程数が増えて製造に長時間を要し、生産性が低いという問題がある。第2に、互いに異なる材料を含むインク(正極インク、負極インク、電解質インク)が接触することで混じり合ってしまい、活物質層と固体電解質層との境界が不鮮明となって電池としての性能を低下させてしまう可能性がある。特許文献1に記載の技術では所定のパターンを一回印刷する毎に乾燥を行っているが、このようにすると生産性はさらに低下し、また印刷工程ごとに形成される各層間での混じり合いは防止されるとしても、一回の印刷工程で隣接して形成される層間での混じり合いを防止することはできない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電池反応の効率が良好な電池およびこれを高い生産性にて製造することができる製造方法ならびに該電池を備える機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、電池の製造方法において、第1集電体の表面に少なくとも第1方向および前記第1方向とは異なる第2方向に沿って線状に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する第1活物質層を形成する第1活物質層形成工程と、第1活物質層が形成された第1集電体の表面に固体電解質材料を含む塗布液を塗布し、第1活物質層の凸パターンに追従した凹凸を有する電解質層を形成する電解質層形成工程と、前記電解質層の表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布し、前記電解質層の凹部を埋めるとともに前記電解質層の凸部を覆う第2活物質層を形成する第2活物質層形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る電池の製造方法において、第2活物質層の表面に第2集電体を積層する工程をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る電池の製造方法において、第1活物質層形成工程は、吐出ヘッドに列状に配設した複数の吐出口から第1の活物質を含む塗布液を吐出させながら当該吐出ヘッドを第1集電体に対して相対移動させることにより、第1集電体の表面に第1の活物質を含む塗布液を複数線状に塗布することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る電池の製造方法において、前記第1方向と前記第2方向とは直交し、前記複数の吐出口は前記第2方向に沿って前記吐出ヘッドに列設され、第1活物質層形成工程は、第1集電体に対する前記吐出ヘッドの前記第1方向への相対移動および前記第2方向への相対移動を交互に繰り返して実行させることにより、第1集電体の表面に格子状の凸パターンを有する第1活物質層を形成することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る電池の製造方法において、前記吐出ヘッドの前記第1方向への1回の相対移動量と前記第2方向への1回の相対移動量とを等しくすることにより、第1集電体の表面に正方格子状の凸パターンを有する第1活物質層を形成することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、電池の製造方法において、第1集電体の表面に少なくとも第1方向および前記第1方向とは異なる第2方向に沿って線状に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する第1活物質層を形成する第1活物質層形成工程と、第2集電体の表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布して第2活物質層を形成する第2活物質層形成工程と、第1活物質層と第2活物質層との間に電解質層を挟み込む電解質層形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、電池であって、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る電池の製造方法によって製造されている。
【0015】
また、請求項8の発明は、車両であって、請求項7の発明に係る電池を搭載することを特徴とする。
【0016】
また、請求項9の発明は、電子機器であって、請求項7の発明に係る電池と、前記電池を電源として動作する回路部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1から請求項5の発明によれば、第1集電体の表面に少なくとも第1方向および第2方向に沿って線状に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する第1活物質層を形成し、そこに固体電解質材料を含む塗布液を塗布して第1活物質層の凸パターンに追従した凹凸を有する電解質層を形成し、さらにその表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布して電解質層の凹部を埋めるとともに電解質層の凸部を覆う第2活物質層を形成するため、第1および第2活物質層と電解質層との接触面積を増大させて電池反応の効率を良好なものとすることができる。また、塗布液を順番に重ねているため工程数が少なく、高い生産性にて電池を製造することができる。
【0018】
特に、請求項3の発明によれば、吐出ヘッドに列状に配設した複数の吐出口から第1の活物質を含む塗布液を吐出させながら当該吐出ヘッドを第1集電体に対して相対移動させることにより、第1集電体の表面に第1の活物質を含む塗布液を複数線状に塗布するため、第1活物質層の形成に要する時間を顕著に短くすることができる。
【0019】
特に、請求項4の発明によれば、第1集電体の表面に格子状の凸パターンを有する第1活物質層を形成するため、第1および第2活物質層と電解質層との接触面積を効果的に増大させて電池反応の効率をより良好なものとすることができる。
【0020】
特に、請求項5の発明によれば、第1集電体の表面に正方格子状の凸パターンを有する第1活物質層を形成するため、第1および第2活物質層と電解質層との接触面における凹凸の分布を均一なものとして、出力密度を均一にすることができる。
【0021】
また、請求項6の発明によれば、第1集電体の表面に少なくとも第1方向および第2方向に沿って線状に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する第1活物質層を形成し、第2集電体の表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布して第2活物質層を形成し、第1活物質層と第2活物質層との間に電解質層を挟み込むため、第1および第2活物質層と電解質層との接触面積を増大させて電池反応の効率を良好なものとすることができる。また、製造に要する工程数が少なく、高い生産性にて電池を製造することができる。
【0022】
また、請求項7の発明によれば、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る電池の製造方法によって製造しているため、電池反応の効率を良好なものとすることができる。
【0023】
また、請求項8の発明によれば、車両の駆動用電源として請求項7の発明に係る電池を好適に使用することができる。
【0024】
また、請求項9の発明によれば、電子機器の回路部の電源として請求項7の発明に係る電池を好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る電池の製造方法によって製造されるリチウムイオン二次電池の外観斜視図である。
【図2】図1のリチウムイオン二次電池の断面図である。
【図3】負極集電体の上面に負極活物質層を形成した時点での構造を示す斜視図である。
【図4】リチウムイオン二次電池の製造手順を示すフローチャートである。
【図5】ノズルスキャン法に用いる塗布ユニットの構成を示す図である。
【図6】吐出ヘッドの内部構造を示す断面図である。
【図7】塗布ユニットによる塗布動作の手順を示すフローチャートである。
【図8】負極集電体に対して相対移動する複数の吐出口の軌跡を示す図である。
【図9】負極集電体の表面に形成された負極活物質層のパターンを示す図である。
【図10】スピンコート法に用いる回転式塗布ユニットの概略構成を示す図である。
【図11】固体電解質層を形成した時点での積層体の上面図である。
【図12】図11の積層体の縦断面図である。
【図13】ナイフコート法によって正極活物質の塗布液が塗布される様子を模式的に示す図である。
【図14】本発明に係るリチウムイオン二次電池を搭載した電気自動車を模式的に示す図である。
【図15】本発明に係るリチウムイオン二次電池を搭載したICカードを模式的に示す図である。
【図16】負極集電体に対して相対移動する複数の吐出口の軌跡の他の例を示す図である。
【図17】負極集電体に対して相対移動する複数の吐出口の軌跡の他の例を示す図である。
【図18】負極集電体への塗布パターンの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
<1.リチウムイオン電池の構造>
図1は、本発明に係る電池の製造方法によって製造されるリチウムイオン二次電池1の外観斜視図である。また、図2は図1のリチウムイオン二次電池1の断面図である。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンが電気伝導を担う二次電池(蓄電池)であり、エネルギー密度が高く、またメモリー効果が小さく、さらには繰り返しの充放電に対しても劣化が少ないという特徴を有する。リチウムイオン二次電池1は、負極集電体11の上に負極活物質層12、固体電解質層13、正極活物質層14および正極集電体15を順に積層した構造を有している。
【0028】
図1,2の各層を構成する材料としては、リチウムイオン二次電池の構成材料として公知のものを採用することが可能である。負極集電体11および正極集電体15は金属箔であり、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの導電性材料の箔を用いることができる。本実施形態では、負極集電体11として銅箔を用い、正極集電体15としてアルミニウム箔を採用している。また、負極活物質層12を構成する負極活物質としては、例えばチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)とグラファイトとを混合したものを用いることができ、正極活物質層14を構成する正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)およびそれらの混合物を用いることができる。さらに、固体電解質層13としては、例えばホウ酸エステルポリマー電解質を用いることができる。なお、各機能層を構成する材料はこれらに限定されるものではないことは勿論である。
【0029】
図3は、負極集電体11の上面に負極活物質層12を形成した時点での構造を示す斜視図である。同図に示すように、負極集電体11の表面には格子状の凸パターンを有する負極活物質層12が形成される。特に、本実施形態においては、負極活物質層12が正方格子状の凸パターンを有する。すなわち、負極活物質層12の縦軸方向の格子間隔と横軸方向の格子間隔とは等しく、縦軸方向と横軸方向との軸間角度は90°である。負極活物質層12の凸パターンについてはさらに後述する。
【0030】
図2に示すように、固体電解質層13は固体電解質によって形成された略一定の厚さを有する連続した薄膜である。図3に示す如き負極集電体11の表面に負極活物質層12が形成されてなる積層体表面の凹凸に追従するように、固体電解質層13は該積層体上面のほぼ全体を一様に覆っている。また、正極活物質層14は、固体電解質層13の凹部を埋めるとともに凸部を覆うような凹凸構造を下面側に有する。正極活物質層14の上面は略平坦となっている。そして、略平坦に形成された正極活物質層14の上面に正極集電体15が積層されてリチウムイオン二次電池1が構成される。このようなリチウムイオン二次電池1に適宜接続端子(タブ)を取り付けたものをケーシング内に収容して最終製品としての二次電池が形成される。
【0031】
<2.リチウムイオン電池の製造方法>
次に、上記の構成を有するリチウムイオン二次電池1の製造方法について説明する。図4は、リチウムイオン二次電池の製造手順を示すフローチャートである。まず、負極集電体11となる金属箔(本実施形態では銅箔)を準備する(ステップS1)。薄い銅箔は搬送や取り扱いが難しいので、例えば片面をガラス板等のキャリアに貼り付ける等により搬送性を高めておくようにしても良い。
【0032】
続いて、負極集電体11となる銅箔の表面に、負極活物質を含む塗布液を塗布して格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成する(ステップS2)。負極活物質を含む塗布液としては、例えば負極活物質材料としてのチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)に、導電助剤としてのアセチレンブラックまたはケッチェンブラック、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などを混合したものを用いることができる。本実施形態においては、このような負極活物質を含む塗布液をノズルディスペンス法、中でも塗布液を吐出する吐出ヘッドを塗布対象面に対して相対移動させるノズルスキャン法によって塗布するのであるが、その詳細については後述する。
【0033】
次に、負極集電体11に格子状の負極活物質層12が積層されてなる積層体の表面に対し、スピンコート法によって固体電解質材料を含む塗布液を塗布して固体電解質層13を形成する(ステップS3)。固体電解質材料を含む塗布液としては、例えば高分子電解質材料としてのポリエチレンオキシドおよび/またはポリスチレンなどの樹脂に、支持塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF4)および溶剤としてのジエチレンカーボネートなどを混合したものを用いることができる。スピンコート法によれば、負極集電体11の表面に負極活物質層12が積層されて形成される格子状の凹凸パターンであっても、その凹凸に沿って厚さ均一な固体電解質層13を形成することができる。
【0034】
次に、固体電解質層13の表面に対し、ナイフコート法によって正極活物質を含む塗布液を塗布して正極活物質層14を形成する(ステップS4)。正極活物質を含む塗布液としては、例えば正極活物質材料としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)に、導電助剤としてのアセチレンブラック、結着剤としてのスチレンブタジエンラバー(SBR)、分散剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)および溶剤としての純水などを混合したものを用いることができる。ナイフコート法によれば、固体電解質層13の表面の凹凸パターンを埋めつつも正極活物質層14の上面を平坦にすることができる。
【0035】
その後、平坦な正極活物質層14の上面に正極集電体15となる金属箔(本実施形態ではアルミニウム箔)を積層する(ステップS5)。概略、以上のような手順によって図1,2に示したリチウムイオン二次電池1が製造される。以下、各製造工程、特にステップS2の負極活物質を含む塗布液の塗布について詳細に説明する。
【0036】
<2−1.負極活物質の塗布>
図5は、ステップS2のノズルスキャン法に用いる塗布ユニット2の構成を示す図である。図5および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0037】
この塗布ユニット2では、基台21上にステージ移動機構20が設けられ、負極集電体11(若しくは負極集電体11を貼り付けたガラス板などのキャリア)を保持するステージ30がステージ移動機構20によって水平面内(XY平面内)で移動可能とされている。ステージ30の上方には吐出ヘッド40が固定設置されている。すなわち、本実施形態においては、固定設置された吐出ヘッド40に対して負極集電体11を保持するステージ30が水平面内で移動することにより、吐出ヘッド40が負極集電体11に対して相対移動することとなる。
【0038】
ステージ移動機構20は、下段からステージ30をX方向に移動させるX方向移動機構21、X方向と直行するY方向に移動させるY方向移動機構22、および、鉛直方向(Z方向)に沿った軸を中心に回転させるθ回転機構23を備える。X方向移動機構21は、モータ211にボールネジ212が接続され、さらにY方向移動機構22に固定されたナット213がボールネジ212に螺合される構造を有している。ボールネジ212の上方にはガイドレール214が固定され、モータ211が回転すると、ナット213とともにY方向移動機構22がガイドレール214に沿ってX方向に滑らかに移動する。
【0039】
Y方向移動機構22は、モータ221、ボールネジ機構およびガイドレール224を有し、モータ221が回転するとボールネジ機構によってθ回転機構23がガイドレール224に沿ってY方向に移動する。θ回転機構23は、モータ231によりステージ30をZ方向に沿った軸を中心に回転させる。以上の構成により、吐出ヘッド40はステージ移動機構20によって負極集電体11に対してX方向およびY方向に自在に相対移動されるとともに、負極集電体11に対する姿勢も変更可能とされる。
【0040】
固定設置された吐出ヘッド40には供給管422の一端が接続されている。供給管422には逆止弁421が介挿されている。供給管422の他端は二叉に分岐されており、その一方はポンプ423に接続され、他方は制御弁424を介して負極活物質を含む塗布液を貯留するタンク425に接続される。
【0041】
図6は、吐出ヘッド40の内部構造を示す断面図である。図6(a)は吐出ヘッド40をYZ平面にて切断した断面を示し、図6(b)はXZ平面にて切断した断面を示す。図6に示すように、吐出ヘッド40の内部にはバッファ空間BFとして機能する空洞が形成されており、このバッファ空間BFに供給管422を経由して送給される負極活物質の塗布液が送り込まれる。吐出ヘッド40には、バッファ空間BFから下方へと向かう複数の流路41が形設されている。複数の流路41は、Y方向に沿って等間隔で列状に設けられている。そして、各流路41の下端開口部が吐出口44を形成する。よって、吐出ヘッド40の下端面には、複数の吐出口44がY方向に沿って列設されることとなる。なお、吐出ヘッド40に設ける吐出口44の個数については特に限定されるものではなく、ステージ30の幅に応じた適宜の個数とすることができる。
【0042】
ステージ移動機構20の各モータ、ポンプ423および制御弁424は制御部38に電気的に接続されている。制御部38のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部38は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクなどを備えて構成される。制御部38のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって、塗布ユニット2の上記各構成が制御部38に制御され、負極活物質を含む塗布液の塗布処理が進行する。
【0043】
次に、上記のような構成を有する塗布ユニット2による、負極活物質を含む塗布液の塗布動作について説明する。図7は、塗布ユニット2による塗布動作の手順を示すフローチャートである。まず、図4のステップS1にて準備した負極集電体11をステージ30の上面に載置する(ステップS21)。負極集電体11は図示を省略するクランプ機構によってステージ30の上面に固定される。
【0044】
次に、制御部38がステージ移動機構20の各モータを駆動制御してステージ30に保持された負極集電体11を塗布開始位置に移動させる(ステップS22)。塗布開始位置は、吐出ヘッド40が負極集電体11の端部直上(本実施形態では(+X)側端部の直上)となる位置であっても良いし、負極集電体11の端部よりも若干外側の上方であっても良い。そして、負極集電体11が塗布開始位置に到達した後に、吐出ヘッド40から負極活物質を含む塗布液の吐出を開始する(ステップS23)。
【0045】
吐出ヘッド40からの塗布液の吐出は、図5に示す逆止弁421、ポンプ423および制御弁424によって行われる。まず、制御部38の制御により制御弁424が開放された状態でポンプ423が吸引動作を行う。このとき、逆止弁421により吐出ヘッド40からの塗布液の逆流が防止されるため、タンク425からポンプ423へと負極活物質を含む塗布液が吸引される。次に、制御部38の制御により制御弁424が閉止され、ポンプ423が押出動作を行う。これにより、ポンプ423から吐出ヘッド40に負極活物質を含む塗布液が送給される。送給された塗布液は一旦吐出ヘッド40内のバッファ空間BFに送り込まれた後、複数の吐出口44から下方に向けて吐出される。このように吐出ヘッド40では、バッファ空間BFを介して塗布液を吐出しているため、Y方向に沿って列設された複数の吐出口44から均一な流量にて負極活物質を含む塗布液を吐出することができる。
【0046】
塗布液の吐出を開始すると同時に、制御部38がステージ移動機構20を制御してステージ30の移動を開始させる。本実施形態においては、吐出ヘッド40の複数の吐出口44から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、ステージ30がX方向およびY方向への所定距離の移動を繰り返す。すなわち、まず、制御部38はステージ移動機構20のX方向移動機構21を駆動制御してステージ30を(+X)方向に所定のX方向走査距離Dxだけ移動させ(ステップS24)、次いでY方向移動機構22を駆動制御してステージ30を(+Y)方向に所定のY方向走査距離Dyだけ移動させる(ステップS25)。続いて、制御部38は再びX方向移動機構21を駆動制御してステージ30を(+X)方向にX方向走査距離Dxだけ移動させ(ステップS26)、さらにY方向移動機構22を駆動制御してステージ30を(−Y)方向にY方向走査距離Dyだけ移動させる(ステップS27)。
【0047】
ステップS27の移動が終了した時点で負極集電体11が塗布の終了位置に到達していない場合には再度ステップS24に戻る(ステップS28)。すなわち、負極集電体11が塗布終了位置に到達するまで、ステップS24からステップS27の移動動作が繰り返される。その結果、負極集電体11の表面には負極活物質を含む塗布液が格子状に塗布されることとなる。
【0048】
図8は、負極集電体11に対して相対移動する複数の吐出口44の軌跡を示す図である。上述した移動動作の主体はステージ30であり、ステージ30に保持された負極集電体11に対する吐出ヘッド40の相対移動の向きは、必然的にステップS24からステップS27に示したステージ30の移動の向きとは逆となる。すなわち、ステップS24では負極集電体11に対して吐出ヘッド40が(−X)方向にX方向走査距離Dxだけ移動し、ステップS25では(−Y)方向にY方向走査距離Dyだけ移動する。同様に、ステップS26では負極集電体11に対して吐出ヘッド40が(−X)方向にX方向走査距離Dxだけ移動し、ステップS27では(+Y)方向にY方向走査距離Dyだけ移動する。ステップS24からステップS27を繰り返すことによって、負極集電体11に対する吐出ヘッド40のX方向への相対移動およびY方向への相対移動が交互に繰り返して実行されることとなる。その結果、図8に示すように、吐出ヘッド40の複数の吐出口44のそれぞれは負極集電体11上につづら折り状の軌跡を描くこととなる。
【0049】
本実施形態においては、Y方向における負極集電体11に対する吐出ヘッド40の1回の相対移動量であるY方向走査距離Dyと、複数の吐出口44の配列ピッチP(隣り合う吐出口44の間隔)とを等しくしている。このため、ある吐出口44の軌跡はその変曲点(X方向移動とY方向移動とが切り換わる点)において隣の吐出口44の軌跡と点接触して格子点を形成することとなる。
【0050】
また、X方向における負極集電体11に対する吐出ヘッド40の1回の相対移動量であるX方向走査距離Dxと、Y方向における1回の相対移動量であるY方向走査距離Dyとを等しくしている。このため、複数の吐出口44が負極集電体11上に描く軌跡は、図8に示す如き正方格子状のパターンとなる。
【0051】
吐出ヘッド40の複数の吐出口44から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、負極集電体11に対する吐出ヘッド40のX方向への相対移動およびY方向への相対移動を交互に繰り返して実行させることによってそれら複数の吐出口44が負極集電体11上に正方格子状の軌跡を描くように相対移動すると、負極活物質を含む塗布液は負極集電体11の表面に正方格子状に塗布されることとなる。その結果、図9に示すように、負極集電体11の表面には正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12が形成されることとなる。
【0052】
ところで、厳密に吐出ヘッド40のX方向への相対移動とY方向への相対移動とを択一的に切り換えて繰り返すと、正方格子状パターンの格子点においては隣り合う吐出口44の軌跡が重なり、塗布液が重ね塗りされることとなる。そうすると、正方格子状パターンの格子点では他の部分よりも負極活物質層12が厚く盛り上がることとなる。このような負極活物質層12の不均一な盛り上がりは、リチウムイオン二次電池1での短絡の原因となるおそれがあるため好ましくない。
【0053】
このため、本実施形態においては、吐出ヘッド40のX方向への相対移動期間とY方向への相対移動期間とを若干重ね合わせることによって、不要な塗布液の重ね塗りを防止している。具体的には、ステップS24で吐出ヘッド40が(−X)方向への相対移動を終える直前にステップS25の(−Y)方向の相対移動を開始する。同様に、吐出ヘッド40がステップS25の(−Y)方向への相対移動を終える直前にステップS26の(−X)方向の相対移動を開始する。以降、同様の手順を繰り返すことによって、図9に示すように、隣り合う吐出口44から吐出された塗布液が接触はするものの、重ね塗りされることは防止される。その結果、負極集電体11の表面に積層された負極活物質層12の厚さは均一となり、リチウムイオン二次電池1での短絡が防止される。なお、吐出ヘッド40のY方向走査距離Dyを複数の吐出口44の配列ピッチPよりも若干短くすることによって塗布液の重ね塗りを防止するようにしても良い。
【0054】
一方、ステップS28にて負極集電体11が塗布の終了位置に到達している場合には、制御部38の制御により吐出ヘッド40からの塗布液の吐出を停止するとともに、ステージ30の移動も停止する(ステップS29)。そして、負極活物質層12が積層された負極集電体11をステージ30から取り外すことによって、負極活物質の塗布処理(図4のステップS2)が完了する。
【0055】
以上のようにして、吐出ヘッド40を負極集電体11に対して相対移動させるノズルスキャン法によって負極活物質を含む塗布液の塗布処理が実行され、負極集電体11の表面には、図9に示す如き正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12が形成される。より具体的には、負極集電体11に対する吐出ヘッド40のX方向への相対移動およびY方向への相対移動を交互に繰り返して実行することにより、負極集電体11の表面に正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成している。なお、図9にも示しているように、本実施形態のノズルスキャン法による塗布処理では、凸パターンの端部は必ずしも連続した直線となっていない。しかしながら、このことは本発明においては特段のデメリットとはならない。その理由は、本発明にて、負極集電体11の表面に正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成するのは、活物質層と固体電解質層との接触面積を増大させて電池反応の効率を向上させるためであり、凸パターンの端部を厳密に連続した直線状とする必要が無いためである。
【0056】
<2−2.電解質の塗布>
塗布ユニット2によって負極集電体11の表面に格子状に負極活物質層12が形成された積層体に対して固体電解質の材料を含む塗布液がスピンコート法により塗布される。図10は、ステップS3のスピンコート法に用いる回転式塗布ユニット3の概略構成を示す図である。
【0057】
負極集電体11に負極活物質層12が形成された積層体を保持するスピンベース51は、モータ52によって鉛直方向に沿った軸を中心に回転される。スピンベース51が当該積層体を保持する機構としては、負極集電体11の裏面を吸着するものであっても良いし、負極集電体11の端縁部を機械的に保持するものであっても良い。カップ53は、スピンベース51の周囲を取り囲むように設置されており、回転するスピンベース51および積層体から飛散した塗布液を受け止めて回収する。
【0058】
また、スピンベース51の上方には吐出ノズル54が設置されている。吐出ノズル54には、図示省略のポンプやタンクを備えた電解質塗布液供給機構55から固体電解質の材料を含む塗布液が供給される。電解質塗布液供給機構55から供給された固体電解質材料を含む塗布液は、吐出ノズル54からスピンベース51に保持された積層体の回転中心に吐出される。
【0059】
負極集電体11の表面に格子状に負極活物質層12が形成された積層体はスピンベース51に保持され、モータ52によって鉛直方向に沿った軸を中心に所定方向に一定速度で回転される。そして、所定の速度で回転される積層体の回転中心に吐出ノズル54から固体電解質材料を含む塗布液が吐出される。負極活物質層12が形成された負極集電体11の表面に滴下された塗布液は遠心力によって周囲に拡がり、余分な塗布液は負極集電体11の端部から振り切られる。このようにして、正方格子状に負極活物質層12が形成された負極集電体11の表面に、固体電解質材料を含む塗布液がほぼ均一な厚さにて塗布される。そして、これを硬化させることにより、負極活物質層12が形成された負極集電体11の表面に固体電解質層13が形成される。
【0060】
図11は、固体電解質層13を形成した時点での積層体の上面図である。また、図12は、図11の積層体の縦断面図である。回転式塗布ユニット3を用いたスピンコート法では、正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12が形成された負極集電体11に対しても、その凸パターンによって生じる凹凸に沿って均一な厚さの塗布処理を行うことができる。その結果、図11,12に示すように、負極活物質層12の正方格子状の凸パターンに追従した凹凸を有する固体電解質層13を形成することができる。
【0061】
形成する固体電解質層13の厚さについては任意であるが、負極活物質層12と正極活物質層14とが確実に分離され、また内部抵抗が許容値以下となるような厚さであることが必要である。固体電解質層13の厚さは、塗布液の粘度とスピンベース51の回転速度によって調整することができる。なお、表面積を増大させるために設けた負極活物質層12の凹凸の意義を滅却しないという観点からは、固体電解質層13の厚さt13が負極活物質層12の凹凸の高低差t12よりも小さいことが望ましい。
【0062】
<2−3.正極活物質の塗布>
負極活物質層12の格子状の凸パターンに追従する固体電解質層13が形成された積層体に対して正極活物質を含む塗布液がナイフコート法により塗布される。図13は、ナイフコート法によって正極活物質の塗布液が塗布される様子を模式的に示す図である。
【0063】
負極集電体11の表面に格子状の負極活物質層12およびその凸パターンに追従した固体電解質層13が形成された積層体は図示省略のステージ上に水平姿勢で静止状態に保持されている。そして、正極活物質を含む塗布液を連続して吐出するノズル61が当該積層体の上方を水平方向の矢印AR13の向きに走査移動される。これにより、固体電解質層13の凹部が塗布液によって埋められつつ固体電解質層13の凸部も塗布液によって覆われる。なお、ノズル61としては、負極集電体11の幅方向(図13の紙面と垂直な方向)に沿って延びるスリット状の吐出口を有するスリットノズルであっても良いし、当該幅方向に沿って複数の吐出口が列設されたものであっても良い。
【0064】
また、ノズル61にはブレード62が装着されている。ブレード62は、ノズル61の進行方向(矢印AR13の向き)において吐出口よりも後方側に取り付けられている。ブレード62の下端は、固体電解質層13の上端よりも上方の位置にて、ノズル61から吐出された正極活物質を含む塗布液に接触する。ブレード62がその下端を塗布液に接触させながら積層体上方を水平方向に沿って移動することにより、塗布液の上面は平坦に均される。
【0065】
このようにして、走査移動されるノズル61から正極活物質を含む塗布液を吐出しつつブレード62によって塗布液の上面を平坦に均すことにより、固体電解質層13の凹部を埋めるとともに凸部を覆う一方、上面が平坦な正極活物質層14が形成される。
【0066】
こうして形成された正極活物質層14の上面には正極集電体15が積層される。このとき、ナイフコート法によって形成された正極活物質層14が硬化しないうちに、その上面に正極集電体15を積層することが好ましい。こうすることで、正極活物質層14と正極集電体15とを互いに密着させて接合することができる。また、正極活物質層14の上面は平坦に均されているため、正極集電体15を隙間無く積層することが容易となっている。以上のようにして、図1,2に示したリチウムイオン二次電池1が製造される。
【0067】
<3.本実施形態の製造方法の利点>
本実施形態のリチウムイオン二次電池1の製造方法においては、負極集電体11に負極活物質を含む塗布液を塗布して負極活物質層12を形成し、その上に固体電解質材料を含む塗布液を塗布して固体電解質層13を形成し、さらにその上に正極活物質を含む塗布液を塗布して正極活物質層14を形成している。このように各機能層の材料となる塗布液を順番に重ねているため工程数が少なく、高い生産性にてリチウムイオン二次電池1を製造することができる。
【0068】
より詳細には、格子状の凸パターンを有する負極活物質層12の形成には、吐出ヘッド40を負極集電体11に対して相対移動させるノズルスキャン法による塗布を用いているため、高いスループットにて凸パターンを形成することができる。特に、吐出ヘッド40の複数の吐出口44から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、それら複数の吐出口44を一括して相対移動させて正方格子状の凸パターンを形成しているため、負極活物質層12の形成に要する時間を顕著に短くすることができる。
【0069】
また、固体電解質層13の形成には、負極活物質層12の凸パターンに追従して均一な厚さの塗布処理を行うのに適したスピンコート法を適用している。スピンコート法であれば、負極集電体11に格子状の負極活物質層12を形成した積層体を回転させながら固体電解質材料を含む塗布液を滴下することにより、負極活物質層12の凸パターンに追従した凹凸を有する固体電解質層13を高いスループットで形成することができる。
【0070】
さらに、正極活物質層14については、下面は固体電解質層13の凹凸に追従しつつも上面は平坦であることが求められるため、ブレード62によって上面を平坦に均すナイフコート法を適用している。このナイフコート法では、固体電解質層13の凹凸を埋めつつ一様な塗布を行うことができれば十分であり、短時間のうちに処理を完了することができる。
【0071】
また、本実施形態においては、負極集電体11の表面に正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成しているため、負極活物質層12と固体電解質層13との接触面は正方格子状の凹凸面となり、それらの接触面積を増大させることができる。固体電解質層13も負極活物質層12の凸パターンに追従した凹凸を有しているため、正極活物質層14と固体電解質層13との接触面も上記と同様の正方格子状の凹凸面となり、それらの接触面積を増大させることができる。これにより、両活物質層と固体電解質層13との接触面積を増大させてリチウムイオン二次電池1における電池反応の効率を良好なものとすることができ、高出力を得ることができる。
【0072】
また、負極集電体11の表面に正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成しているため、負極集電体11と負極活物質層12との密着性が強固である。このため、負極活物質を含む塗布液を塗布した直後であっても、負極活物質層12が負極集電体11から剥がれることが防止される。
【0073】
また、負極活物質層12の凸パターンを正方格子状としているため、活物質層と固体電解質層13との接触面における凹凸の分布を均一なものとすることができる。このため、リチウムイオン二次電池1の面内における出力密度を均一にすることができ、電池反応を安定なものとすることができる。
【0074】
さらに、本実施形態の製造方法によって製造されたリチウムイオン二次電池1は薄型で折り曲げも容易である。
【0075】
<4.リチウムイオン電池の応用例>
上述したように、本実施形態の製造方法によって製造されたリチウムイオン二次電池1は、薄型である上に電池反応の効率が良好である。このようなリチウムイオン二次電池1は、例えば電気自動車(ハイブリッド電気自動車を含む)、電動アシスト自転車、電動工具、ロボットなどの機械類や、パーソナルコンピュータ、携帯電話や携帯型音楽プレイヤー、デジタルカメラやビデオカメラなどのモバイル機器、スマートICカード、ゲーム機、ポータブル型の測定機器、通信機器や玩具などの各種の電子機器に使用することが可能である。
【0076】
以下に、本発明に係るリチウムイオン二次電池1を搭載した機器の例について説明するが、これらは本実施形態のリチウムイオン二次電池1を応用しうる機器の一部を例示するものであって、本発明に係るリチウムイオン二次電池1の適用範囲がこれらに限定されるものではない。
【0077】
図14は、本発明に係るリチウムイオン二次電池1を搭載した機器の一例としての車両、具体的には電気自動車を模式的に示す図である。この電気自動車70は、車輪71と、車輪71を駆動するモータ72と、モータ72に電力を供給する電池73とを備えている。この電池73として、上記実施形態のリチウムイオン二次電池1を複数直列および並列に接続したものを電気自動車70に搭載することができる。本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、電池反応の効率が良好であるため、小型であっても高い出力を得ることができるとともに短時間の充電も可能であり、電気自動車70のような車両の駆動用電源として好適である。
【0078】
図15は、本発明に係るリチウムイオン二次電池1を搭載した機器の他の例としての電子機器、具体的にはICカード(スマートカード)を模式的に示す図である。このICカード80は、互いに重ね合わせられることでカード型のパッケージを構成する1対の筐体81,82と、該筐体内に収容される回路モジュール83および該回路モジュール83の電源となる電池84とを備えている。回路モジュール83は、外部との通信のためのループ状のアンテナ831と、アンテナ831を介した外部機器とのデータ交換および種々の演算・記憶処理を実行する集積回路(IC)を含む回路部832とを備えている。電池84としては、本実施形態のリチウムイオン二次電池1を1組または複数組備えるものを用いることができ、回路部832はこの電池84を電源として動作する。
【0079】
このような構成によれば、それ自身は電源を有さない一般的なICカードに比べて、外部機器との通信可能距離を拡張することができ、またより複雑な処理を行うことが可能となる。本発明に係るリチウムイオン二次電池1は薄型で大容量を得ることができるため、このようなカード型の機器の電源としても好適である。
【0080】
<5.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、負極集電体11の表面に正方格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成していたが、凸パターンは正方格子状に限定されるものではなく、他の形状であっても良い。例えば、上記実施形態においてX方向走査距離DxとY方向走査距離Dyとを異なる値とし、負極集電体11に対する吐出ヘッド40のX方向への相対移動およびY方向への相対移動を交互に繰り返して実行することにより、負極集電体11の表面に長方形の格子状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成するようにしても良い。
【0081】
また、図16に示すように、Y方向の相対移動量であるY方向走査距離Dyと、複数の吐出口44の配列ピッチPとを異なる値とし、負極集電体11に対する吐出ヘッド40のX方向への相対移動およびY方向への相対移動を交互に繰り返して実行することにより、負極集電体11の表面にジグザグ形状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成するようにしても良い。
【0082】
また、図17に示すように、吐出ヘッド40に列設された複数の吐出口44から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出させながら吐出ヘッド40を負極集電体11に対して正弦曲線を描くように相対移動させることにより、負極集電体11の表面に正弦曲線状の凸パターンを有する負極活物質層12を形成するようにしても良い。
【0083】
図8,16,17に示したのは、いずれも複数の吐出口44から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、吐出ヘッド40を負極集電体11に対して相対移動させることにより、複数の吐出口44を一括して相対移動させて負極集電体11の表面に負極活物質を含む塗布液を複数線状に塗布するものである。こうして負極集電体11の表面に所定の凸パターンを有する負極活物質層12を形成することにより、負極活物質層12および正極活物質層14と固体電解質層13との接触面が凹凸面となり、それらの接触面積を増大させてリチウムイオン二次電池1における電池反応の効率を良好なものとすることができる。また、吐出ヘッド40に列設された複数の吐出口44を一括して相対移動させて負極集電体11の表面に負極活物質を含む塗布液を複数線状に塗布しているため、高いスループットにて負極活物質層12を形成することができる。
【0084】
また、負極活物質層12を形成するための塗布パターンは図18に示すようなものであっても良い。図18に示す塗布パターンにおいても、負極集電体11の表面に負極活物質を含む塗布液を複数線状に塗布している。但し、塗布の軌跡である複数の線は互いに平行ではなく、図18に示す塗布パターンは単一の吐出口を有するノズルを負極集電体11に対して相対移動させることによって描かれるものである。具体的には、単一の吐出口から負極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、当該ノズルを負極集電体11に対して相対移動させることにより、負極集電体11の表面に負極活物質を含む塗布液を複数線状に塗布している。このとき、それぞれが単一の吐出口を有する複数のノズルを個別に相対移動させるようにしても良いし、単一の吐出口を有する1つのノズルを繰り返して相対移動させるようにしても良い。このようにしても、負極活物質層12および正極活物質層14と固体電解質層13との接触面が凹凸面となり、それらの接触面積を増大させてリチウムイオン二次電池1における電池反応の効率を良好なものとすることができる。もっとも、上記実施形態のように、複数の吐出口44を有する吐出ヘッド40を相対移動させて塗布液を一括して塗布するようにした方が容易に高いスループットを得ることができる。
【0085】
また、負極集電体11に対する吐出ヘッド40(または単一の吐出口を有するノズル)の相対移動の方向はX方向およびY方向に限定されるものではなく、3方向以上であっても良い。また、2方向であってもそれらは垂直に限定されるものではなく、任意の角度をなすものであって良い。
【0086】
要するに、負極集電体11の表面に少なくとも第1方向および第1方向とは異なる第2方向に沿って線状に負極活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する負極活物質層12を形成する形態であれば良い。
【0087】
また、上記実施形態においては、ノズルスキャン法によって負極集電体11の表面に負極活物質層12を形成するようにしていたが、これに限定されるものではなく、ノズルスキャン法によって正極集電体15の表面に正極活物質層14を形成するようにしても良い。すなわち、吐出ヘッド40の複数の吐出口44から正極活物質を含む塗布液を連続的に吐出しつつ、それら複数の吐出口44を一括して相対移動させて正方格子状の凸パターンを有する正極活物質層14を形成するようにしても良い。この場合、上記実施形態とは逆に、正極活物質層14の上にスピンコート法によって固体電解質層13を形成し、その上にナイフコート法によって負極活物質層12を形成し、さらにその上に負極集電体11を積層すれば良い。
【0088】
また、負極活物質層12と正極活物質層14との間に挟み込まれる電解質層は固体電解質に限定されるものではなく、液体の電解質であっても良い。具体的には、上記実施形態と同じく、負極集電体11の表面に少なくとも第1方向および第1方向とは異なる第2方向に沿って線状に負極活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する負極活物質層12を形成する。同様に、正極集電体15の表面に正極活物質を含む塗布液を塗布して正極活物質層14を形成する。そして、電解液を含浸させた樹脂製のセパレータ(例えば、多孔質の絶縁フィルム)を負極活物質層12と正極活物質層14との間に挟み込む。このようにしても、負極活物質層12および正極活物質層14と液体の電解質層との接触面積を増大させて電池反応の効率を良好なものとすることができる。また、上記実施形態と同様に、かかる構造のリチウムイオン二次電池を高い生産性にて製造することができる。
【0089】
また、上記実施形態においては、固体電解質層13を形成するのにスピンコート法を適用していたが、負極活物質層12の凸パターンに追従した凹凸を有する固体電解質層13を形成することが可能な塗布方法であれば他の方法であっても良く、例えばスプレーコート法や液滴法によって固体電解質材料を含む塗布液を塗布するようにしても良い。同様に、正極活物質層14の形成についてもナイフコート法に限定されるものではなく、固体電解質層13の凹部を埋めるとともに凸部を覆う一方、上面が平坦な正極活物質層14を形成することが可能な塗布方法であれば他の方法であっても良く、ノズルスキャン法やスリットコート法、バーコート法などを適用することができる。
【0090】
また、上記実施形態で例示した集電体、活物質、電解質等の材料はその一例を示したものであってこれに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池の構成材料として用いられる他の材料を使用してリチウムイオン二次電池を製造する場合においても、本発明に係る製造方法を好適に適用することが可能である。また、リチウムイオン二次電池に限らず、リチウムイオン一次電池やアルカリ電池等の他の種類の化学電池の製造に本発明に係る製造方法を適用するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、電池の製造技術に好適に適用することができ、特に低コストで小型、高出力の電池を高い生産性にて製造するのに適している。
【符号の説明】
【0092】
1 リチウムイオン二次電池
2 塗布ユニット
11 負極集電体
12 負極活物質層
13 固体電解質層
14 正極活物質層
15 正極集電体
20 ステージ移動機構
30 ステージ
38 制御部
40 吐出ヘッド
44 吐出口
70 電気自動車
80 ICカード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1集電体の表面に少なくとも第1方向および前記第1方向とは異なる第2方向に沿って線状に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する第1活物質層を形成する第1活物質層形成工程と、
第1活物質層が形成された第1集電体の表面に固体電解質材料を含む塗布液を塗布し、第1活物質層の凸パターンに追従した凹凸を有する電解質層を形成する電解質層形成工程と、
前記電解質層の表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布し、前記電解質層の凹部を埋めるとともに前記電解質層の凸部を覆う第2活物質層を形成する第2活物質層形成工程と、
を備えることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の電池の製造方法において、
第2活物質層の表面に第2集電体を積層する工程をさらに備えることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法において、
第1活物質層形成工程は、吐出ヘッドに列状に配設した複数の吐出口から第1の活物質を含む塗布液を吐出させながら当該吐出ヘッドを第1集電体に対して相対移動させることにより、第1集電体の表面に第1の活物質を含む塗布液を複数線状に塗布することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の電池の製造方法において、
前記第1方向と前記第2方向とは直交し、
前記複数の吐出口は前記第2方向に沿って前記吐出ヘッドに列設され、
第1活物質層形成工程は、第1集電体に対する前記吐出ヘッドの前記第1方向への相対移動および前記第2方向への相対移動を交互に繰り返して実行させることにより、第1集電体の表面に格子状の凸パターンを有する第1活物質層を形成することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の電池の製造方法において、
前記吐出ヘッドの前記第1方向への1回の相対移動量と前記第2方向への1回の相対移動量とを等しくすることにより、第1集電体の表面に正方格子状の凸パターンを有する第1活物質層を形成することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項6】
第1集電体の表面に少なくとも第1方向および前記第1方向とは異なる第2方向に沿って線状に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する第1活物質層を形成する第1活物質層形成工程と、
第2集電体の表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布して第2活物質層を形成する第2活物質層形成工程と、
第1活物質層と第2活物質層との間に電解質層を挟み込む電解質層形成工程と、
を備えることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の電池の製造方法によって製造された電池。
【請求項8】
請求項7記載の電池を搭載することを特徴とする車両。
【請求項9】
請求項7記載の電池と、
前記電池を電源として動作する回路部と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
第1集電体の表面に少なくとも第1方向および前記第1方向とは異なる第2方向に沿って線状に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する第1活物質層を形成する第1活物質層形成工程と、
第1活物質層が形成された第1集電体の表面に固体電解質材料を含む塗布液を塗布し、第1活物質層の凸パターンに追従した凹凸を有する電解質層を形成する電解質層形成工程と、
前記電解質層の表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布し、前記電解質層の凹部を埋めるとともに前記電解質層の凸部を覆う第2活物質層を形成する第2活物質層形成工程と、
を備えることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の電池の製造方法において、
第2活物質層の表面に第2集電体を積層する工程をさらに備えることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法において、
第1活物質層形成工程は、吐出ヘッドに列状に配設した複数の吐出口から第1の活物質を含む塗布液を吐出させながら当該吐出ヘッドを第1集電体に対して相対移動させることにより、第1集電体の表面に第1の活物質を含む塗布液を複数線状に塗布することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の電池の製造方法において、
前記第1方向と前記第2方向とは直交し、
前記複数の吐出口は前記第2方向に沿って前記吐出ヘッドに列設され、
第1活物質層形成工程は、第1集電体に対する前記吐出ヘッドの前記第1方向への相対移動および前記第2方向への相対移動を交互に繰り返して実行させることにより、第1集電体の表面に格子状の凸パターンを有する第1活物質層を形成することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の電池の製造方法において、
前記吐出ヘッドの前記第1方向への1回の相対移動量と前記第2方向への1回の相対移動量とを等しくすることにより、第1集電体の表面に正方格子状の凸パターンを有する第1活物質層を形成することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項6】
第1集電体の表面に少なくとも第1方向および前記第1方向とは異なる第2方向に沿って線状に第1の活物質を含む塗布液を塗布して所定の凸パターンを有する第1活物質層を形成する第1活物質層形成工程と、
第2集電体の表面に第2の活物質を含む塗布液を塗布して第2活物質層を形成する第2活物質層形成工程と、
第1活物質層と第2活物質層との間に電解質層を挟み込む電解質層形成工程と、
を備えることを特徴とする電池の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の電池の製造方法によって製造された電池。
【請求項8】
請求項7記載の電池を搭載することを特徴とする車両。
【請求項9】
請求項7記載の電池と、
前記電池を電源として動作する回路部と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−113974(P2012−113974A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262156(P2010−262156)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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