説明

電池パック及びこれを備えた電動車

【課題】 外面に付着した水や洗浄液等の液体がトレーとカバーとの間から単電池を配置した内部空間に進入することを確実に防止できるようにしつつ、トレーに対するカバーの着脱作業を容易に行うことのできる電池パックを提供する。
【解決手段】 単電池を収容するパッケージングケースは、カバーの上側フランジ部とトレーの下側フランジ部とが重合するように構成され、下側フランジ部及び上側フランジ部の全周を覆うエッジカバーを備え、エッジカバーは、下側フランジ部と対向する第一片と、上側フランジ部と対向する第二片と、第一片及び第二片の基端同士を接続する接続部とを備え、第一片又は第二片の何れか一方に複数の雌ネジ部が形成されるとともに、下側フランジ部、上側フランジ部、及び、第一片又は第二片の何れか他方に前記雌ネジ部の配置に合わせて雄ネジ部材を挿通させるネジ挿通穴が穿設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド電気自動車(HEV)や電気自動車(EV)に搭載される電池パック及びこれを備えた電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、CO2 の排出量の少ないハイブリッド電気自動車や、CO2 を排出しない電気自動車(以下、これらを総称して電動車という)が普及しつつある。かかる電動車は、駆動モータやその他の電気系統にエネルギーを供給するエネルギー供給源として電池パックが搭載されている。
【0003】
前記電池パックは、複数の電池モジュールと、該複数の電池モジュールを収容するパッケージングケースとを備えている。
【0004】
各電池モジュールは、複数の単電池が電気的に接続された状態で一つにパッケージ化されたものである。すなわち、各電池モジュールは、複数の単電池で構成された組電池である。
【0005】
前記パッケージングケースは、電池モジュールが配置されるトレーと、該トレー上の電池モジュールを覆うカバーとで構成されている。例えば、前記トレーは、底部と、該底部の外周から起立した下側周壁部と、下側周壁部の上端から外方に延出した下側フランジ部とを備えている。該トレーは、底部上に複数の電池モジュールが平面視マトリックス状(平面視において縦横に整列させた状態)で配置されるようになっている。前記カバーは、トレーの開放部分と対応した天部と、該天部の外周から垂下する上側周壁部と、該上側周壁部の下端から外方に延出した上側フランジ部とを備えている。
【0006】
そして、上記構成のパッケージングケースは、底部上に複数の電池モジュールが配置されたトレーの開放部分をカバーで覆い、重合する下側フランジ部及び上側フランジ部に挿通したボルトに対してナットを螺合させることで、トレーとカバーとを締結するようになっている。これにより、上記構成のパッケージングケースは、トレーの下側フランジ部とカバーの上側フランジ部とが面接触し、電池モジュールを収容した内部空間が液密になるように構成されている。
【0007】
そして、上記構成の電池パックは、電動車の底部に取り付けられる。すなわち、電動車は、電気を駆動の主たるエネルギーとするため、これらに搭載される電池パックは、電気容量を確保する必要性から全体のサイズが非常に大きくなる結果、重量が非常に重くなる上に多くの領域を占有してしまう。そのため、電池パックは、走行安定性や他の構成の配置等の観点から、一般的に、車両の底部に配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−253933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、電動車に搭載される電池パックは、上述の如く、車両の底部に配置されるため、洗車や走行時の水の跳ね返りでパッケージングケースの外面に水分が付着してしまう。そのため、トレーとカバーとの間(下側フランジ部と上側フランジ部との間)の液密性を十分に確保する必要があるが、従来の電池パックは、下側フランジ部と上側フランジ部との面接触で内部空間を液密にしているため、電池パック(パッケージングケース)に掛かる液体の圧力が高い場合、下側フランジ部と上側フランジ部との間から内部空間に水分が進入する虞がある。
【0010】
すなわち、洗車やメンテナンスを行うときに、水や液状洗剤(以下、洗浄液という)を高圧で噴射させる高圧洗浄機が用いられることがあるが、従来の電池パックは、トレーの下側フランジ部とカバーの上側フランジ部との面接触で内部空間を液密にしているため、高圧な洗浄液を足回りや車体の底に吹き付けたときに、下側フランジ部と上側フランジ部との間から電池モジュールを収容した内部空間に洗浄液が進入し、該洗浄液が短絡等の原因となって電池モジュール全体又は単電池を破損させてしまう虞がある。
【0011】
また、従来の電池パックは、上記問題点に加え、電池モジュール又は単電池の点検や交換に伴うカバーの着脱作業が繁雑であるといった問題もある。すなわち、従来の電池パックは、ボルトとナットとを用いてトレーとカバーとを締結するように構成されているが、ボルトとナットとが別部材であるため、トレーとカバーとを締結する際に、複数箇所(トレー及びカバーの周囲に設定された複数の締結位置)にナットを配置しなければならず、カバーをトレーから取り外す際に、複数箇所に配置したナットを回収しなければならない。従って、従来の電池パックは、電池モジュール等の点検や交換に伴ってカバーの着脱を行う際に、非常に煩雑な作業を行わなければならないといった問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、単電池を収容するパッケージングケースが、単電池が配置されるトレーと該トレー上の単電池を覆うカバーとで構成されることを前提に、パッケージングケースの外面に付着した水や洗浄液等の液体がトレーとカバーとの間から単電池を配置した内部空間に進入することを確実に防止できるようにしつつ、トレーに対するカバーの着脱作業の煩雑さを抑制することのできる電池パック及びこれを備えた電動車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電池パックは、一つ以上の単電池と、該一つ以上の単電池を収容するパッケージングケースとを備え、前記パッケージングケースは、単電池が配置されるトレーと、該トレー上の単電池を覆うカバーとで構成され、前記トレーが下側フランジ部を備えるとともに前記カバーが上側フランジ部を備え、前記トレー上の単電池をカバーで覆った状態で前記下側フランジ部と前記上側フランジ部とが重合するように構成された電池パックにおいて、重合した下側フランジ部及び上側フランジ部の全周又は略全周を外側から覆うエッジカバーを備え、該エッジカバーは、下側フランジ部と対向する第一片と、上側フランジ部と対向する第二片と、第一片及び第二片の基端同士を接続する接続部とを備え、第一片又は第二片の何れか一方に複数の雌ネジ部が形成されるとともに、下側フランジ部、上側フランジ部、及び、第一片又は第二片の何れか他方に前記雌ネジ部の配置に合わせて雄ネジ部材を挿通させるネジ挿通穴が穿設されていることを特徴とする。
【0014】
上記構成の電池パックによれば、重合した下側フランジ部及び上側フランジ部の全周又は略全周を外側から覆うエッジカバーを備えているため、パッケージングケースに水や洗浄液等の液体が付着しても、下側フランジ部と上側フランジ部との間に水が進入することはない。より具体的に説明すると、洗車等でカバーとトレーとの接続部分(重合する下側フランジ部及び上側フランジ部の近傍)に高圧の水や洗浄液(以下、総称して単に液体という)が吹き付けられても、エッジカバーが液体の進行(重合する下側フランジ部及び上側フランジ部の界面側への進行)を遮ることになる。これにより、高圧な液体が吹き付けられても、該液体が下側フランジ部と上側フランジ部との間から内部空間へ進入することを確実に防止できる。
【0015】
また、上述のような高圧の液体の吹き付けや、走行中の水の跳ね返り等でパッケージングケースに多量の液体(水分)が付着するが、その液体は自然な状態で付着していることになるため、エッジカバーと上側フランジ部との間やエッジカバーと下側フランジ部との間に進入することがなく、仮に、これらの間に進入したとしても、下側フランジ部と上側フランジ部との間にまで進入することはない。すなわち、パッケージングケースに付着した液体(水分)は、高圧洗浄機から噴射される液体のような高圧が作用していないため、下側フランジ部と上側フランジ部との間にまで進入することがない。
【0016】
そして、上記構成の電池パックのエッジカバーは、下側フランジ部と対向する第一片と、上側フランジ部と対向する第二片と、第一片及び第二片の基端同士を接続する接続部とを備え、第一片又は第二片の何れか一方に複数の雌ネジ部が形成されるとともに、下側フランジ部、上側フランジ部、及び、第一片又は第二片の何れか他方に前記雌ネジ部の配置に合わせて雄ネジ部材を挿通させるネジ挿通穴が穿設されているため、雌ネジ部を重合状態にある下側フランジ部及び上側フランジ部のネジ挿通穴と一致させるように、第一片と第二片との間に下側フランジ部及び上側フランジ部を介挿入した上で、第一片又は第二片の何れか他方、下側フランジ部、及び上側フランジ部に穿設されたネジ挿通穴に雄ネジ部材を挿通して雌ネジ部に螺合させることで、下側フランジ部及び上側フランジ部がエッジカバーの第一片及び第二片に挟み込まれて互いに面接触した状態で締結される。
【0017】
このように上記構成の電池パックは、複数箇所にナットを配置することなく、雄ネジ部材をネジ挿通穴に挿通して雌ネジ部に螺合させるだけで、トレーに対してカバーを取り付けることができる。また、雄ネジ部材を取り外しても該雄ネジ部材が螺合していた雌ネジ部はエッジカバーと一体的になっているため、従来のようにナットを回収する煩雑な作業を行う必要もない。
【0018】
従って、上記構成の電池パックは、パッケージングケースの外面に付着した水や洗浄液等の液体がトレーとカバーとの間から単電池を配置した内部空間に進入することを確実に防止できるようにしつつ、トレーに対するカバーの着脱作業の煩雑さを抑えることができる。
【0019】
本発明の一態様として、前記第一片又は第二片の何れか一方の下側フランジ部又は上側フランジ部と対向する面と反対側にある外面上にナットが固定され、該ナットのネジ穴で前記雌ネジ部が形成されていることが好ましい。このようにすれば、ナット(雌ネジ部)に対する雄ネジ部材の螺合を確実にすることができ、雄ネジ部材による軸線方向の締め付け力を大きくしても十分に耐えることができる。このように軸線方向の締め付け力を大きくできることで、下側フランジ部及び上側フランジ部に対するエッジカバーの第一片及び第二片よる挟み込み力が大きくできるため、下側フランジ部と上側フランジ部との面接触をより確実にでき、これらの間の液密性を高めることができる。
【0020】
本発明の他態様として、前記下側フランジ部と上側フランジ部との間にシール材が介装されていてもよい。このようにすれば、トレー(下側フランジ部)とカバー(上側フランジ部)との間の液密性をより確実に高めることができる。そして、上述の如く、重合する下側フランジ部と上側フランジ部とをエッジカバーで覆うことで、シール材に流動性を有するものを採用しても、下側フランジ部と上側フランジ部との間からシール材が外側に完全に流出してしまうことを防止でき、下側フランジ部と上側フランジ部との間のシール性(液密性)の維持を確実なものにすることができる。
【0021】
本発明の別の態様として、前記雌ネジ部は、前記第一片又は第二片の何れか一方の下側フランジ部又は上側フランジ部と対向する面と反対側で閉塞して非貫通状態で形成されていることが好ましい。このようにすれば、雌ネジ部における雄ネジ部材と螺合させる開口とは反対側から雌ネジ部と雄ネジ部材との間(ネジ山間)に液体が進入することを防止することができる。すなわち、雌ネジ部が外側で閉塞した状態になるため、第一片又は第二片の何れか一方における雌ネジ部近傍に付着した液体が該雌ネジ部内に進入することを確実に遮ることができる。これにより、下側フランジ部と上側フランジ部との間をより確実に液密にすることができる。
【0022】
本発明のさらに具体的な態様として、前記パッケージングケースは、電動車の底部に取り付け可能に構成され又は取り付けられてもよい。このようにすれば、電池パックを電動車の走行状態に支障のない適正な配置にすることができる。そして、電動車では電池パックの液密性を十分に確保する必要があるが、本発明の電池パックは、重合するトレーの下側フランジ部及びカバーの上側フランジ部の全周又は略全周が外側からエッジカバーで覆われて液密性が十分に確保されているため、電動車の底部に配置しても水分の進入を確実に防止することができる。
【0023】
そして、本発明に係る電動車は、上記何れかの電池パックを備えていることを特徴とする。かかる電動車は、駆動系を初めとする電気系統のエネルギー供給源としての電池パックに対する水等の液体の付着による故障の発生率が低くなるため、信頼性の高いものとなる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明の電池パックによれば、単電池を収容するパッケージングケースが、単電池が配置されるトレーと該トレー上の単電池を覆うカバーとで構成されることを前提に、パッケージングケースの外面に付着した水や洗浄液等の液体がトレーとカバーとの間から単電池を配置した内部空間に進入することを確実に防止できるようにしつつ、トレーに対するカバーの着脱作業の煩雑さを抑制することができるという優れた効果を奏し得る。
【0025】
また、本発明の電動車においても、単電池を収容するパッケージングケースが、単電池が配置されるトレーと該トレー上の単電池を覆うカバーとで構成されることを前提に、パッケージングケースの外面に付着した水や洗浄液等の液体がトレーとカバーとの間から単電池を配置した内部空間に進入することを確実に防止できるようにしつつ、トレーに対するカバーの着脱作業の煩雑さを抑制することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る電池パックの全体斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る電池パックの全体平面図を示す。
【図3】同実施形態に係る電池パックの分解斜視図であって、冷却用ファンを省略した状態の分解斜視図を示す。
【図4】同実施形態に係る電池パックの部分拡大断面図であって、(a)は、重合する下側フランジ部及び上側フランジ部をエッジカバー(第一分割カバー又は第二分割カバーのみ)で覆った部分の拡大断面図を示し、(b)は、重合する下側フランジ部及び上側フランジ部を覆ったエッジカバー(第一分割カバー又は第二分割カバー)に別のエッジカバー(第三分割カバー)を被せた部分の拡大断面図を示す。
【図5】同実施形態に係る電池パックの液密性に関する説明用の断面図であって、(a)は、重合する下側フランジ部及び上側フランジ部をエッジカバー(第一分割カバー又は第二分割カバーのみ)で覆った部分に高圧な液体(洗浄液)を吹き付けた状態を示し、(b)は、重合する下側フランジ部及び上側フランジ部を覆ったエッジカバー(第一分割カバー又は第二分割カバー)に別のエッジカバー(第三分割カバー)を被せた部分に高圧な液体(洗浄液)を吹き付けた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係る電池パックについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0028】
かかる電池パックは、電動車である電気自動車(EV)に搭載されるもので、図1乃至図3に示す如く、一つ以上の電池モジュール2…と、該一つ以上の電池モジュール2…を収容するパッケージングケース3とを備えている。本実施形態に係る電池パック1は、複数の電池モジュール2…を備えており、該複数の電池モジュール2…をパッケージングケース3に収容することで一つにパッケージングするようになっている。なお、本実施形態に係る電池パック1は、パッケージングケース3と後述するエッジカバー4に特徴があるため、各図において、電池モジュール2…については簡略化して二点鎖線で示すこととする。
【0029】
各電池モジュール2…は、複数の単電池を一列に配置してパッケージ化した、いわゆる、組電池である。そして、各電池モジュール2…は、複数の単電池が電気的に接続されており、該複数の単電池によって大容量の電池を構成している。
【0030】
前記パッケージングケース3は、電池モジュール2…が配置されるトレー30と、該トレー30上の電池モジュール2を(トレー30の上部)を覆うカバー31とで構成されている。
【0031】
前記トレー30は、図3に示す如く、下側フランジ部302を備えている。すなわち、トレー30は、電池モジュール2…が配置される底部300と、該底部300の外周に対して直接的又は間接的に接続され、該底部300の外側で環状をなす下側フランジ部302とを備えている。より具体的に説明すると、本実施形態に係るトレー30は、底部300と、該底部300の外周から起立した下側周壁部301と、下側周壁部301の上端から外方に延出した下側フランジ部302とを備えている。
【0032】
前記底部300は、平面視略長方形状に形成されており、これに伴って底部300の外周から起立する下側周壁部301は、底部300の平面形状に対応して平面視長方形状をなす領域を画定するように角枠状に形成されている。そして、該電池パック1は、上述の如く、電気自動車に搭載されるため、トレー30の下側周壁部301の外面の複数箇所(本実施形態においては、五カ所)にシャーシ(図示しない)と連結するための連結用アーム303が突設されている。
【0033】
本実施形態に係るトレー30は、下側周壁部301に包囲された領域が底部300の長手方向で複数(図においては四つ)の領域A1,A2,A3,A4に区画されている。すなわち、前記トレー30は、底部300の長手方向に間隔をあけて複数の仕切部304…が設けられている。
【0034】
そして、前記下側周壁部301は、上述の如く、平面視長方形状の領域を画定するように角枠状に形成されているため、複数の仕切部304…のそれぞれは、下側周壁部301の互いに対向する一対の壁面(採番しない)に連結されている。
【0035】
前記トレー30は、仕切部304…によって区画された領域A1,A2,A3,A4のうちの一つの領域A3に対し、電池モジュール2…の充填等を制御する制御手段305(制御基板)類が収容され、残りの領域A1,A2,A4に複数の電池モジュール2…が平面視マトリックス状(縦横に整列させた状態)に配置されるようになっている。そして、本実施形態に係るトレー30は、電池モジュール2…からの電力を電気自動車の駆動モータや制御系に供給するためのケーブルを接続するコネクタ(図示しない)や、電池モジュール2…及び単電池に関する情報(充電状態等)の信号送信用のケーブル等を接続するコネクタ(図示しない)が下側周壁部301に取り付けられている。そのため、本実施形態において、前記下側周壁部301は、制御手段305を収容する領域A3を画定する部分にコネクタ(図示しない)を取り付けるためのコネクタ用貫通穴Haが穿設されている。
【0036】
下側フランジ部302は、下側周壁部301の上端全周から外方に延出している。従って、該下側フランジ部302は、無端環状をなしている。本実施形態において、前記底部300は、平面視四角形状に形成されているため、前記下側フランジ部302は、平面視角形の枠状をなしている。そして、該下側フランジ部302には、雄ネジ部材Bを挿通させる複数のネジ挿通穴H1…が穿設されている。本実施形態おいて、下側フランジ部302は、雄ネジ部材Bを挿通するためのネジ挿通穴H1が周方向に所定間隔をあけて複数穿設されている。
【0037】
前記カバー31は、上側フランジ部312を備えている。すなわち、カバー31は、トレーの開放部分と対向する天部310と、該天部310の外周に対して直接的又は間接的に接続され、該天部310の外側で環状をなす上側フランジ部312とを備えている。より具体的に説明すると、本実施形態に係るカバー31は、前記トレー30の開放部分と対応した天部310と、該天部310の外周から垂下する上側周壁部311と、該上側周壁部311の下端から外方に延出した上側フランジ部312とを備えている。前記天部310は、トレー30の開放部分と対応して平面視略長方形状に形成されている。そして、本実施形態に係る電池パック1は、電池モジュール2…の充放電に伴って発生する熱を放熱(冷却)するための冷却用ファンFを備えている(図1及び図2参照)。
【0038】
前記冷却用ファンFは、天部310に取り付けられる。これに伴い、前記カバー31は、天部310に吸気用の開口Haと排気用の開口Hbが形成されている。本実施形態に係るカバー31は、天部310が長方形状に形成されているため、前記吸気用の開口Ha及び排気用の開口Hbが天部310上の対角位置に形成されている。本実施形態に係る電池パック1は、冷却用ファンFとして吸引ブロアが採用されている。これに伴い、前記カバー31は、冷却用ファンFが排気用の開口Hbに対応して取り付けられるようになっている。
【0039】
そして、上側フランジ部312は、上側周壁部311の下端全周から外方に延出している。従って、該上側フランジ部312は、下側フランジ部302と同様に、無端環状をなしており、当該カバー31でトレー30の上部開口を覆った状態で、下側フランジ部302と重合するようになっている。そして、該上側フランジ部312には、雄ネジ部材Bを挿通させる複数のネジ挿通穴H2が穿設されている。本実施形態おいて、上側フランジ部312は、雄ネジ部材Bを挿通するためのネジ挿通穴H2が周方向に所定間隔をあけて複数穿設されている。すなわち、上側フランジ部312は、重合したトレー30の下側フランジ部302のネジ挿通穴H1…の配置に対応するように、複数のネジ挿通穴H2…が穿設されている。
【0040】
該上側フランジ部312のネジ挿通穴H2は、下側フランジ部302のネジ挿通穴H1と対応した配置になっている。これにより、下側フランジ部302と上側フランジ部312とを重合させた状態で、下側フランジ部302のネジ挿通穴H1と上側フランジ部312のネジ挿通穴H2とが重なり合って連通状態になるように構成されている。
【0041】
本実施形態に係る電池パック1は、下側フランジ部302を備えたトレー30と、上側フランジ部312を備えたカバー31とでパッケージングケース3が構成されることを前提に、上記構成に加え、重合した下側フランジ部302及び上側フランジ部312の全周又は略全周を外側から覆うエッジカバー4を備えている。
【0042】
かかるエッジカバー4は、下側フランジ部302と対向する第一片40(40a,40b,40c)と、上側フランジ部312と対向する第二片41(41a,41b,41c)と、第一片40(40a,40b,40c)及び第二片41(41a,41b,41c)の基端同士を接続する接続部42(42a,42b,42c)とを備えている。
【0043】
本実施形態に係るエッジカバー4は、図2及び図3に示す如く、複数に分割されている。すなわち、本実施形態に係るエッジカバー4は、複数の分割カバー4a,4b,4cで構成されており、各分割カバー4a,4b,4cを重合する下側フランジ部302及び上側フランジ部312を覆うように配置することで、各分割カバー4a,4b,4cで周方向に連続して下側フランジ部302及び上側フランジ部312の全周を覆った状態になるように構成されている。
【0044】
より具体的に説明すると、本実施形態に係るトレー30の底部300及びカバー31の天部310は、上述の如く、平面視長方形状に形成され、下側フランジ部302及び上側フランジ部312が平面視四角型の環状をなしているため、本実施形態に係るエッジカバー4は、重合した下側フランジ部302及び上側フランジ部312の長辺部分を覆うための分割カバー(以下、この分割カバーを第一分割カバーという)4a…と、重合した下側フランジ部302及び上側フランジ部312の短辺部分を覆うための分割カバー(以下、この分割カバーを第二分割カバーという)4b…と、重合した下側フランジ部302及び上側フランジ部312の角部分を覆うための分割カバー(以下、この分割カバーを第三分割カバーという)4c…とで構成されている。なお、本実施形態に係る電池パック1は、重合した下側フランジ部302及び上側フランジ部312の一方の長辺部分の途中位置に段差部Pが形成されている。そのため、重合した下側フランジ部302及び上側フランジ部312の長辺部分の一方を覆う第一分割カバー4a…は、段差部Pを境にして複数(二つ)に分けられている。
【0045】
第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、及び第三分割カバー4c…は、図3に示す如く、何れも、下側フランジ部302と対向する第一片40(40a,40b,40c)と、上側フランジ部312と対向する第二片41(41a,41b,41c)と、第一片40(40a,40b,40c)及び第二片41(41a,41b,41c)の基端同士を全長に亘って接続する接続部42(42a,42b,42c)とを備えている。
【0046】
そして、第一分割カバー4a…及び第二分割カバー4b…は、第一片40(40a,40b)及び第二片41(41a,41b)が帯板状に形成されており、前記接続部42(42a,42b)が第一片40(40a,40b)の長手方向と直交する方向(短手方向)の一端(基端)と第二片41(41a,41b)の長手方向と直交する方向(短手方向)の一端(基端)とを全長に亘って接続している。
【0047】
これに対し、第三分割カバー4c…は、第一片40(40c)及び第二片41(41c)が平面視鈎型(L字状)に形成されており、接続部42(42c)が第一片40(40c)の外側に位置する幅方向の一端(基端)と第二片41(41c)の外側に位置する幅方向の一端(基端)とを全長に亘って接続している。なお、第三分割カバー4c…は、下側フランジ部302及び上側フランジ部312の四隅に配置されるため、四つ設けられているが、本実施形態において、底部300の長手方向の一端側に配置される二つの第三分割カバー4c…は、鈎型をなす第一片40(40a,40b,40c)及び第二片41(41a,41b,41c)の一方の片が他方の片よりも長く形成されている。
【0048】
このように、第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、及び第三分割カバー4c…は、第一片40(40a,40b,40c)の基端と第二片41(41a,41b,41c)の基端同士が接続部42(42a,42b,42c)によって接続されることで、第一片40(40a,40b,40c)の基端と第二片41(41a,41b,41c)の基端との間が接続部42(42a,42b,42c)によって閉塞された状態になっている。
【0049】
そして、エッジカバー4(各分割カバー4a,4b,4c)は、上記形態にすることで、縦断面形状(接続部42(42a,42b,42c)に接続された基端を基準とする第一片40(40a,40b,40c)又は第二片41(41a,41b,41c))の延出方向に広がった面上であって、第一片40(40a,40b,40c)、第二片41(41a,41b,41c)、及び接続部42(42a,42b,42c)の全てを通る面上での断面形状)がU字状又はコの字状に形成される。本実施形態に係るエッジカバー4(分割カバー4a,4b,4c)は、接続部42(42a,42b,42c)の縦断面形状が円弧状をなしており、全体の縦断面形状が略U字状に形成されている。
【0050】
本実施形態に係るエッジカバー4は、図4(a)及び図4(b)に示す如く、複数の分割カバー4a,4b,4cで重合した下側フランジ部302及び上側フランジ部312の全周を覆う際、隣り合う分割カバー4a,4b,4c同士が近接又は重なるように配置される。本実施形態に係るエッジカバー4は、第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、及び第三分割カバー4c…をパッケージングケース3の周囲に配置するときに、図4(b)に示す如く、第三分割カバー4c…の第一片40(40c)及び第二片41(41c)が、第一分割カバー4a…及び第二分割カバー4b…の第一片40(40a,40b)及び第二片41(41a,41b)の長手方向の端部を外側から覆った状態になるように配置される。
【0051】
そして、重合した下側フランジ部302及び上側フランジ部312の長辺部分の一方を覆う二つの第一分割カバー4a…同士については、図2に示す如く、長手方向の端部同士が近接(接触)するように配置される。
【0052】
かかるエッジカバー4は、図4(a)及び図4(b)に示す如く、第一片40(40a,40b,40c)又は第二片41(41a,41b,41c)の何れか一方に、下側フランジ部302及び上側フランジ部312の周方向に間隔をあけて複数の雌ネジ部43…が形成されるとともに、上側フランジ部312、下側フランジ部302、及び、第一片40(40a,40b,40c)又は第二片41(41a,41b,41c)の何れか他方には、第一片40(40a,40b,40c)又は第二片41(41a,41b,41c)の何れか一方に形成された雌ネジ部43…の配置に合わせて雄ネジ部材Bを挿通させるネジ挿通穴H3が穿設される。該エッジカバー4に設けられる雌ネジ部43…及びネジ挿通穴H3は、下側フランジ部302及び上側フランジ部312に穿設されたネジ挿通穴H1,H2の配置に対応している。
【0053】
本実施形態に係るエッジカバー4は、下側フランジ部と対向する第一片40(40a,40b,40c)に複数の雌ネジ部43…が形成され、上側フランジ部312と対向する第二片41(41a,41b,41c)にネジ挿通穴H3が穿設されている。すなわち、本実施形態に係るエッジカバー4は、上述の如く、複数に分割されているため、第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、及び第三分割カバー4c…の第一片40(40a,40b,40c)に雌ネジ部43…が複数形成されるとともに、第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、及び第三分割カバー4c…の第二片41(41a,41b,41c)にネジ挿通穴H3…が複数穿設されている。これにより、該エッジカバー4は、第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、及び第三分割カバー4c…を重合する下側フランジ部302及び上側フランジ部312の周囲に配置することで、パッケージングケース3の周囲に所定間隔をあけて複数の雌ネジ部43…及びネジ挿通穴H3が配置されるようになっている。
【0054】
なお、本実施形態に係るエッジカバー4は、上述の如く、第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、及び第三分割カバー4c…をパッケージングケース3の周囲に配置するときに、第三分割カバー4c…の第一片40(40c)及び第二片41(41c)が、第一分割カバー4a…及び第二分割カバー4b…の第一片40(40a,40b)及び第二片41(41a,41b)の長手方向の端部を外側から覆った状態になるように構成されているため、第一分割カバー4a及び第二分割カバー4bの第一片40(40c)の両端部(第三分割カバー4cに覆われる部分)には、雌ネジ部43(ナット44)が設けられずに単なる貫通穴H’が第二片41のネジ挿通穴H3と同心で穿設され、第三分割カバー4cの両端部(第一分割カバー4a及び第二分割カバー4bと重なる端部)にネジ挿通穴H3及び雌ネジ部43…が形成されている(図3参照)。
【0055】
本実施形態において、前記雌ネジ部43…はナット44…のネジ穴によって構成されている。すなわち、第一片40(40a,40b,40c)は、下側フランジ部302と対向する面と反対側にある外面上にナット44…が固定(溶接)され、該ナット44…のネジ穴で前記雌ネジ部43…が形成されている。これに伴い、第一片40(40a,40b,40c)はナット44…のネジ穴に対応した貫通穴Hが穿設されている。なお、本実施形態において、一般的なナット44を採用しているため、前記雌ネジ部43は貫通状態に形成されている。
【0056】
そして、本実施形態に係る電池パック1は、トレー30上に電池モジュール2…及び制御手段305を配置した後、カバー31でトレー30の上部開放部分を覆い、トレー30の下側フランジ部302にカバー31の上側フランジ部312を重ね合わせた状態(重合させた状態)にされる。本実施形態においては、トレー30の開放部分をカバー31で覆う前(下側フランジ部302と上側フランジ部312とを重合させる前)に、下側フランジ部302の上面上にシール材が塗布され、該シール材上に上側フランジ部312が重ね合わされる。
【0057】
そして、重合状態にある下側フランジ部302及び上側フランジ部312のネジ挿通穴H1,H2にエッジカバー4のネジ挿通穴H3を一致させるように、エッジカバー4(第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、第三分割カバー4c…)の第一片40(40a,40b,40c)と第二片41(41a,41b,41c)との間に重合状態にある下側フランジ部302及び上側フランジ部312を介挿入した上で、第二片41(41a,41b,41c)、下側フランジ部302、及び上側フランジ部312に穿設されたネジ挿通穴H1,H2,H3に雄ネジ部材Bを挿通し、第一片40(40a,40b,40c)の雌ネジ部43…に螺合させる。これにより、下側フランジ部302及び上側フランジ部312がエッジカバー4の第一片40(40a,40b,40c)及び第二片41(41a,41b,41c)に挟み込まれて互いに面接触した状態で締結される。
【0058】
この状態で電池モジュール2…を収容した内部空間が液密な状態の電池パック1が完成する。そして、完成した電池パック1は、車体(シャーシ)に対して固定されることになる。なお、冷却用ファンFやコネクタ等の取り付け、配線系の接続は、車体(シャーシ)への搭載の前であって、トレー30をカバー31で閉じる前に予め行われるか、トレー30をカバー31で閉じた後に行われる。
【0059】
本実施形態に係る電池パック1は、以上の通りであり、このような構成にすることで、走行時の水の跳ね返りや洗車によってパッケージングケース3に水や洗浄液等(以下、総称して単に液体という)の液体が付着しても、下側フランジ部302と上側フランジ部312との間に水が進入することはない。
【0060】
より具体的に説明すると、図5(a)及び図5(b)に示す如く、洗車等でカバー31とトレー30との接続部分(重合する下側フランジ部302及び上側フランジ部312の近傍)に液体が吹き付けられても、エッジカバー4が液体の進行(重合する下側フランジ部302及び上側フランジ部312の界面側への進行)を遮ることになる。これにより、高圧な液体が吹き付けられても、該液体が下側フランジ部302と上側フランジ部312との間から内部空間へ進入することを確実に防止できる。
【0061】
また、上述のような高圧の液体の吹き付けや、走行中の水の跳ね返り等でパッケージングケース3に多量の液体(水分)が付着するが、その液体は自然な状態で付着するため、エッジカバー4と下側フランジ部302との間やエッジカバー4と上側フランジ部312との間に進入することがなく、仮に、これらの間に進入したとしても、下側フランジ部302と上側フランジ部312との間にまで進入することはない。すなわち、パッケージングケース3に付着した液体(水分)は、高圧洗浄機から噴射される液体のような高圧が作用していないため、下側フランジ部302と上側フランジ部312との間にまで進入することがない。
【0062】
そして、本実施形態において、下側フランジ部302と上側フランジ部312との間にシール材を介装しているため、シール材によっても下側フランジ部302と上側フランジ部312との間の液密性が高められていることから、下側フランジ部302と上側フランジ部312との間への液体の進入がより確実に防止される。その上、本実施形態に係る電池パック1は、重合する下側フランジ部302と上側フランジ部312とをエッジカバー4で覆っているため、下側フランジ部302と上側フランジ部312との間に介装したシール材が流動性を有するものであっても、下側フランジ部302と上側フランジ部312との間からシール材が外側に完全に流出してしまうことを防止でき、下側フランジ部302と上側フランジ部3120との間のシール性(液密性)を確実に維持できる。
【0063】
そして、上記構成の電池パック1のエッジカバー4は、下側フランジ部302と対向する第一片40(40a,40b,40c)と、上側フランジ部312と対向する第二片41(41a,41b,41c)と、第一片40(40a,40b,40c)及び第二片41(41a,41b,41c)の基端同士を全長に亘って接続する接続部42(42a,42b,42c)とを備え、第一片40(40a,40b,40c)に下側フランジ部302及び上側フランジ部312の周方向に間隔をあけて複数の雌ネジ部43…が形成されるとともに、上側フランジ部312、下側フランジ部302、及び、第二片41(41a,41b,41c)に、第一片40(40a,40b,40c)に形成された雌ネジ部43…の配置に合わせて雄ネジ部材Bを挿通させるネジ挿通穴H3が穿設されているため、雌ネジ部43…を重合状態にある下側フランジ部302及び上側フランジ部312のネジ挿通穴H1,H2と一致させるように、第一片40(40a,40b,40c)と第二片41(41a,41b,41c)との間に重合状態にある下側フランジ部302及び上側フランジ部312を介挿入した上で、第二片41(41a,41b,41c)、下側フランジ部302、及び上側フランジ部312に穿設されたネジ挿通穴H3に雄ネジ部材Bを挿通して雌ネジ部43…に螺合させることで、下側フランジ部302及び上側フランジ部312がエッジカバー4の第一片40(40a,40b,40c)及び第二片41(41a,41b,41c)に挟み込まれて互いに面接触した状態で締結される。
【0064】
このように上記構成の電池パック1は、複数箇所のそれぞれに独立したナットを配置することなく、雄ネジ部材Bをネジ挿通穴H1,H2,H3に挿通して雌ネジ部43…に螺合させるだけで、トレー30に対してカバー31を取り付けることができる。特に、本実施形態においては、前記第一片40(40a,40b,40c)の下側フランジ部302と対向する面と反対側にある外面上にナット44…が連設(溶接)され、該ナット44…のネジ穴で前記雌ネジ部43…が形成されているため、ナット44…(雌ネジ部43…)に対する雄ネジ部材Bの螺合を確実にすることができ、雄ネジ部材Bによる軸線方向の締め付け力を大きくしても十分に耐えることができる。
【0065】
このように軸線方向の締め付け力を大きくできることで、下側フランジ部302及び上側フランジ部312に対するエッジカバー4の第一片40(40a,40b,40c)及び第二片41(41a,41b,41c)よる挟み込み力が大きくできるため、下側フランジ部302と上側フランジ部312との面接触をより確実にでき、これらの間の液密性を高めることができる。また、本実施形態においては、上述の如く、前記下側フランジ部302と上側フランジ部312との間にシール材が介装されているため、トレー30(下側フランジ部302)とカバー31(上側フランジ部312)との間の液密性をより確実に高めることができる。
【0066】
そして、本実施形態に係る電池パック1は、雄ネジ部材Bを取り外しても該雄ネジ部材Bが螺合していた雌ネジ部43…がエッジカバー4と一体的になっているため、従来のようにナットの回収を行う必要もない。
【0067】
従って、本実施形態に係る電池パック1は、パッケージングケース3の外面に付着した水や洗浄液等の液体がトレー30とカバー31との間から電池モジュール2…を配置した内部空間に進入することを確実に防止できるようにしつつ、トレー30に対するカバー31の着脱作業を容易に行うことができる。
【0068】
なお、本発明に係る電池パックは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0069】
すなわち、上記実施形態において、電動自動車(EV)に搭載される電池パック1について説明したが、これに限定されるものではなく、ハイブリッド電気自動車(HEV)に搭載される電池パックであってもよい。すなわち、電池パック1は、電気エネルギーで駆動する電動車の電源(エネルギー源)として採用されればよい。
【0070】
上記実施形態において、パッケージングケース3内に複数の単電池を一つにパッケージングした電池モジュール2を複数収容した電池パック1について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、パッケージ化されていない単電池をパッケージングケース3内に収容したものであってもよい。すなわち、本発明は、パッケージングケース3内に一つ以上の単電池を収容したものに適用することができる。
【0071】
上記実施形態において、エッジカバー4を複数に分割して第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、及び第三分割カバー4c…で構成したが、これに限定されるものではなく、エッジカバー4を第一片40(40a,40b,40c)、第二片41(41a,41b,41c)及び接続部42(42a,42b,42c)を備えた二つの分割カバーで構成してもよいし、第一片40(40a,40b,40c)、第二片41(41a,41b,41c)及び接続部42(42a,42b,42c)を備えた単一なエッジカバーで構成してもよい。
【0072】
但し、エッジカバー4は、パッケージングケース3(下側フランジ部302及び上側フランジ部312)の全周を覆う必要があるため、上述の如く、単一な構成にする場合、一部を分断させることは言うまでもない。また、この場合においては、分断した位置とは異なる位置に可撓性を持たせるか、或いはヒンジ構造を設けることが好ましい。このようにすれば、可撓性を有する部分又はヒンジ構造を支点にしてその両側の間隔を広げることができるため、パッケージングケース3(下側フランジ部302及び上側フランジ部312)の全周にエッジカバー4を容易に配置することができる。
【0073】
上記実施形態において、下側フランジ部302と上側フランジ部312との間にシール材を介装したが、これに限定されるものではなく、例えば、上側フランジ部312の下面と下側フランジ部302の上面とを直接面接触させるようにしてもよい。このようにしても雄ネジ部材Bの締め付け作用で下側フランジ部302と上側フランジ部312との間を液密にすることができる。但し、より液密性を高めるには、上記実施形態と同様に、下側フランジ部302と上側フランジ部312との間にシール材を介装することが好ましいことは言うまでもない。
【0074】
上記実施形態において、エッジカバー4(第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、第三分割カバー4c…)の第一片40(40a,40b,40c)に雌ネジ部43…を設け、該エッジカバー4(第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、第三分割カバー4c…)の第二片41(41a,41b,41c)にネジ挿通穴H3を穿設するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、エッジカバー4(第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、第三分割カバー4c…)の第一片40(40a,40b,40c)にネジ挿通穴H3を穿設し、該エッジカバー4(第一分割カバー4a…、第二分割カバー4b…、第三分割カバー4c…)の第二片41(41a,41b,41c)に雌ネジ部43…を設けるようにしてもよい。
【0075】
上記実施形態において、第一片40(40a,40b,40c)にナット44…を連設(溶接)し、該ナット44…のネジ穴で雌ネジ部43…を構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第一片40(40a,40b,40c)に直接ネジ穴(タップ穴)を穿設しても勿論よい。また、上述の如く、第二片41(41a,41b,41c)に雌ネジ部43…を設ける場合も同様である。
【0076】
上記実施形態において、トレー30の底部300が長方形状をなし、これに対応してカバー31の天部310が長方形状をなすパッケージングケース3について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、トレー30の底部300が正方形状をなし、これに対応してカバー31の天部310も正方形状をなすものであってもよい。また、トレー30の底部300やカバー31の天部310が長方形状や正方形状等の角形状をなすもので限定されるものでもなく、底部300や天部310が非矩形状のものであってもよい。
【0077】
上記実施形態において、パッケージングケース3の内部空間を区画したが、これに限定されるものではなく、パッケージングケース3の内部空間が区画されていないものであってもよい。また、電池パック1は、パッケージングケース3内に制御手段305が収容されたものに限定されるものではなく、パッケージングケース3内に電池モジュール2…のみを収容し、制御手段305等を別のケースに収容したものであっても勿論よい。
【0078】
上記実施形態において、底部300の外周から起立した下側周壁部301の上端に下側フランジ部302が連設されたトレー30と、天部310の外周から垂下した上側周壁部311の下端に上側フランジ部312が連設されたカバー31とで構成されたパッケージングケース3について説明したが、パッケージングケース3はこれに限定されるものではなく、例えば、トレー30が上記実施形態と同様の形態で形成されることを前提に、天部310の外周に直接上側フランジ部312が連設されて全体がプレート状をなすカバー31を採用し、カバー31でトレー30上の電池モジュール2…を覆った状態で、下側フランジ部302と上側フランジ部312とが重合するように構成されたものや、カバー31が上記実施形態と同様の形態で形成されることを前提に、底部300の外周に直接下側フランジ部302が連設されて全体がプレート状をなすトレー30を採用し、カバー31でトレー30上の電池モジュール2…を覆った状態で、下側フランジ部302と上側フランジ部312とが重合するように構成されたものであってもよい。
【0079】
すなわち、トレー30及びカバー31の少なくとも何れか一方に電池モジュール2…を収容する空間が形成され、カバー31でトレー30上の電池モジュール2…を覆った状態で、下側フランジ部302と上側フランジ部312とが重合するように構成されたものであればよい。このようにしても、重合する下側フランジ部302及び上側フランジ部312の全周又は略全周をエッジカバー4で覆うことで、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0080】
上記実施形態において、雌ネジ部43を貫通状態で形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、前記雌ネジ部43は、第一片40(40a,40b)の下側フランジ部302と対向する面と反対側で閉塞して非貫通状態で形成されてもよい。具体的には、上記実施形態と同様に第一片40(40a,40b)にナット44を固定し、ナット44のネジ穴で雌ネジ部43を形成する場合には、ナット44に袋ナットを採用し、上述の如く、第一片40(40a,40b)に直接雌ネジ部43を形成する場合には、第一片40に非貫通穴を穿設して内周に雌ネジを形成する(タップを立てる)ようにしてもよい。また、第一片40(40a,40b)に変えて第二片41(41a,41b)に雌ネジ部432を設ける場合も同様である。
【0081】
このようにすれば、雌ネジ部43における雄ネジ部材Bと螺合させる開口とは反対側から雌ネジ部43と雄ネジ部材Bとの間(ネジ山間)に液体が進入することを防止することができる。すなわち、雌ネジ部43が外側で閉塞した状態になるため、第一片40(40a,40b)又は第二片41(41a,41b)の何れか一方における雌ネジ部43近傍に付着した液体が該雌ネジ部43内に進入することを確実に遮ることができる。これにより、下側フランジ部302と上側フランジ部312との間をより確実に液密にすることができる。
【0082】
上記実施形態において、電動車の底部に取り付けられる電池パック1について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、電動車の底部以外の雨水や洗浄液等の液体が付着する部位に取り付け可能又は取り付けられる電池パック1であってもよい。なお、言うまでもないが、連結アーム303の形状や配置は、電動車に応じて適宜変更されることは言うまでもない。
【0083】
上記実施形態において、エッジカバー4に対して複数の雌ネジ部43を周方向で所定間隔をあけて一列に配置したが、これに限定されるものではなく、例えば、複数の雌ネジ部43を周方向と直交する方向で複数列に配置してもよい。この場合において、下側フランジ部302、上側フランジ部312、及びエッジカバー4(第二片41(41a,41b,41c)に対して雌ネジ部43の配置に対応させて複数のネジ挿通穴H1,H2,H3を穿設することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1…電池パック、2…電池モジュール、3…パッケージングケース、4…エッジカバー、4a…第一分割カバー(分割カバー)、4b…第二分割カバー(分割カバー)、4c…第三分割カバー(分割カバー)、30…トレー、31…カバー、40…第一片、41…第二片、42…接続部、43…雌ネジ部、44…ナット、300…底部、301…下側周壁部、302…下側フランジ部、303…連結用アーム、304…仕切部、305…制御手段、310…天部、311…上側周壁部、312…上側フランジ部、A1,A2,A3,A4…領域、F…冷却用ファン、H,H’…貫通穴、Ha…コネクタ用貫通穴、H1,H2,H3…ネジ挿通穴、B…雄ネジ部材、Ha…吸気用の開口、Hb…排気用の開口、P…段差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の単電池と、該一つ以上の単電池を収容するパッケージングケースとを備え、前記パッケージングケースは、単電池が配置されるトレーと、該トレー上の単電池を覆うカバーとで構成され、前記トレーが下側フランジ部を備えるとともに前記カバーが上側フランジ部を備え、前記トレー上の単電池をカバーで覆った状態で前記下側フランジ部と前記上側フランジ部とが重合するように構成された電池パックにおいて、重合した下側フランジ部及び上側フランジ部の全周又は略全周を外側から覆うエッジカバーを備え、該エッジカバーは、下側フランジ部と対向する第一片と、上側フランジ部と対向する第二片と、第一片及び第二片の基端同士を接続する接続部とを備え、第一片又は第二片の何れか一方に複数の雌ネジ部が形成されるとともに、下側フランジ部、上側フランジ部、及び、第一片又は第二片の何れか他方に前記雌ネジ部の配置に合わせて雄ネジ部材を挿通させるネジ挿通穴が穿設されていることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記第一片又は第二片の何れか一方の下側フランジ部又は上側フランジ部と対向する面と反対側にある外面上にナットが固定され、該ナットのネジ穴で前記雌ネジ部が形成されている請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記下側フランジ部と上側フランジ部との間にシール材が介装されている請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記雌ネジ部は、前記第一片又は第二片の何れか一方の下側フランジ部又は上側フランジ部と対向する面と反対側で閉塞して非貫通状態で形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の電池パック。
【請求項5】
前記パッケージングケースは、電動車の底部に取り付け可能に構成され又は取り付けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の電池パック。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載された電池パックを備えたことを特徴とする電動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−64449(P2012−64449A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207960(P2010−207960)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(508110205)株式会社リチウムエナジージャパン (32)
【Fターム(参考)】