説明

電池モジュール

【課題】複数の発電要素を備える電池モジュールにおいて、電池モジュールを構成する各発電要素に加えられる圧力の偏りに起因する電池の劣化を抑制する。
【解決手段】正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在する電解質を有する発電要素を2つ以上備える組電池、並びに、前記組電池を2つ以上収容する密閉容器を備える電池モジュールであって、前記組電池は、2つ以上の前記発電要素を収容する、可撓性フィルムで形成された可撓性外装体を備え、前記密閉容器内に充填される流体によって、前記可撓性外装体の外部から前記発電要素を加圧可能であると共に、前記可撓性外装体の内部の圧力を調整する第一の圧力調整手段を有し、2つ以上の前記密閉容器が、該2つ以上の密閉容器の内部の圧力を調整する第二の圧力調整手段を介して連結されていることを特徴とする、電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に接続された複数の発電要素を有する電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池、燃料電池等においては、通常、複数の発電要素(単電池)を電気的に接続することで、所望の起電力や電流密度を得ている。各部材の材料や構造等の構成は電池の種類、用途等によって異なるが、電池の基本構造である発電要素は、通常、正極と、負極と、これら正極及び負極の間に介在する電解質とを有している。
電気的に接続された複数の発電要素を備える具体的な電池モジュールとしては、例えば、特許文献1〜4に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、ラミネートフィルムの外周縁部を熱融着することにより密封される発電要素と、前記ラミネートフィルムの熱融着された部分に配置され、電池内で発生したガスが所定の圧力に達したときに前記外周縁部の熱融着状態を開裂して前記ガスを外部に放出する放出機構と、を有するラミネート外装電池、該ラミネート外装電池を、電気的に並列及び/又は直列に複数個接続すると共に金属製の電池収納ケース内に収納して構成される電池モジュール、並びに、該電池モジュールを電気的に並列及び/又は直列に複数個接続して構成される組電池、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−116235号公報
【特許文献2】特開2008−288168号公報
【特許文献3】特開2010−80225号公報
【特許文献4】特開平11−317334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池は、発電要素の構造の固定、電極間の電子伝導性やイオン伝導性、等の観点から、正極、電解質、及び負極の積層方向に加圧する拘束が行われることがある。
しかしながら、上記特許文献1のように電池をラミネートフィルム製の外装体に収容した場合、外装体の内圧が上昇した際に、外装体の外部から圧力を付与し、外装体内に収容された電池(発電要素)を拘束したとしても、充分な拘束を行うことができず、電流密度のバラつきが生じ、ひいては電池の劣化を招くことがある。
また、複数の発電要素を電気的に接続する場合、一つの外装体等のケースに収容される発電要素間で、拘束圧に起因する劣化は一様に進行するとは限らず、発電要素間又は外装体等のケースごとで個体差が発生することがある。複数の発電要素を用いる場合、このような一部の発電要素又は一部のケースにおける劣化の進行が、電池全体として大きな性能低下の原因となるのを抑制することが重要である。
【0006】
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、複数の発電要素を備える電池モジュールにおいて、電池モジュールを構成する各発電要素に加えられる圧力の偏りに起因する電池の劣化を抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電池モジュールは、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在する電解質を有する発電要素を2つ以上備える組電池、並びに、前記組電池を2つ以上収容する密閉容器を備える電池モジュールであって、
前記組電池は、2つ以上の前記発電要素を収容する、可撓性フィルムで形成された可撓性外装体を備え、前記密閉容器内に充填される流体によって、前記可撓性外装体の外部から前記発電要素を加圧可能であると共に、前記可撓性外装体の内部の圧力を調整する第一の圧力調整手段を有し、
2つ以上の前記密閉容器が、該2つ以上の密閉容器の内部の圧力を調整する第二の圧力調整手段を介して連結されていることを特徴とする。
【0008】
以上のような構成を有する本発明の電池モジュールは、まず、外装体内部の圧力が上昇したとしても第一の圧力調整手段により、組電池を構成する複数の発電要素にかかる圧力を調整し、均一化することが可能である。また、密閉容器内部の圧力が上昇した場合も、第二の圧力調整手段により、各密閉容器内に収容される複数の組電池にかかる圧力を均一化することが可能である。従って、本発明によれば、一部の組電池を構成する発電要素や一部の密閉容器に収容される発電要素のみが高い内圧に晒され、電流密度の低下や劣化等が生じるのを回避することができる。また、一部の組電池又は一部の密閉容器に収容される発電要素に異常が生じた場合、第一及び/又は第二の圧力調整手段により、該異常の生じた組電池又は密閉容器の内圧状況を、他の組電池や密閉容器の内圧状況と、切り離すことが可能であり、電池全体としての異常を軽減したり、安全性を高めることができる。
【0009】
本発明の電池モジュールは、さらに、2つ以上の前記密閉容器の内部の圧力を検知する、圧力検知手段を備えていてもよい。このような構成とすることで、より精密に、また、より迅速に、前記密閉容器内の圧力を制御、管理することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の発電要素を備える電池モジュールにおいて、各発電要素に加えられる圧力の偏りに起因する電池の劣化を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電池モジュールの一形態例を示す模式図である。
【図2】本発明の電池モジュールを構成する組電池の一形態例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の電池モジュールは、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在する電解質を有する発電要素を2つ以上備える組電池、並びに、前記組電池を2つ以上収容する密閉容器を備える電池モジュールであって、
前記組電池は、2つ以上の前記発電要素を収容する、可撓性フィルムで形成された可撓性外装体を備え、前記密閉容器内に充填される流体によって、前記可撓性外装体の外部から前記発電要素を加圧可能であると共に、前記可撓性外装体の内部の圧力を調整する第一の圧力調整手段を有し、
2つ以上の前記密閉容器が、該2つ以上の密閉容器の内部の圧力を調整する第二の圧力調整手段を介して連結されていることを特徴とする。
【0013】
以下、本発明の電池モジュールについて、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は本発明の電池モジュールの一形態例を示す図であり、図2は、本発明の電池モジュールを構成する組電池の一形態例を示す図である。
図1において、電池モジュール200は、複数の密閉容器100を備えている。各密閉容器100には、可撓性外装体1に2つ以上の発電要素2が収容された組電池3が複数収容されている。密閉容器100に収容された組電池群は、密閉容器100内に充填される流体によって、可撓性外装体1の外部から発電要素2の加圧が可能である。複数の密閉容器100は、密閉容器内部の圧力を調整可能な電磁弁(第二の圧力調整手段)4を介して連結されている。また、一つの密閉容器100に収容される複数の組電池3は、図示していないが、電気的に並列接続又は直列接続されている。さらに、複数の密閉容器100に収容された、複数の組電池群は、図示していないが、電気的に並列接続又は直列接続されている。
また、各組電池3は、可撓性外装体1の内部の圧力を調整可能な圧力調整弁(第一の圧力調整手段)5を有している。
【0014】
図2は、図1の組電池3の拡大断面図である。組電池3は、複数の発電要素2を備えており、これら発電要素2は、積層されて直列接続されている。各発電要素2は、正極6と、負極7と、正極6及び負極7との間に介在する電解質8とを有している。組電池3を構成する積層された発電要素2群には、同じ密閉容器100に収容される他の組電池3との電気的な接続部である、正極端子9及び負極端子10が、一方の末端に位置する発電要素2の正極6と、他方の末端に位置する発電要素2の負極7とに設けられている。
【0015】
2つ以上の発電要素を積層した組電池は、通常、発電要素の固定のため、積層した発電要素間の電子伝導性やイオン伝導性のため、等の種々の観点から、その積層方向に加圧されて拘束される。拘束方法によってはその拘束圧が局所的に集中してしまうことがある。また、ラミネートフィルム等の可撓性フィルムからなる外装体に発電要素を収容し、外装体の外部から圧力をかけて拘束を行う場合、電池使用時の生成ガスによって外装体の内圧が上昇した際に、充分な拘束圧を発電要素にかけられないことがある。また、発電要素は、電池の使用環境や使用状況によって、積層方向に膨張することがあり、拘束圧が上昇して過度な圧力がかかってしまうことがある。
拘束圧のバラつきや過度な拘束圧は、電流密度のバラつきや構成部材の劣化の原因となる。また、拘束圧の低下は、電池抵抗値の上昇等、電池性能低下の原因となりうる。
さらに、複数の発電要素や組電池を備える電池モジュールにおいては、発電要素や組電池等の劣化は、各発電要素や組電池の使用環境に応じて異なり、例えば、上記のような拘束圧等の使用環境に起因する電池性能の低下が一部の発電要素や一部の組電池で生じたとしても、電池全体としての大きな性能低下を招く場合がある。そのため、複数の発電要素間や複数の組電池間で、使用環境を揃えることも、電池全体の性能維持のためには、重要である。
【0016】
そこで、本発明の電池モジュールでは、まず、複数の発電要素を収容する外装体内部の圧力が上昇又は低下した場合、第一の圧力調整手段により、外装体に収容される複数の発電要素にかかる圧力調整、並びに、同じ密閉容器内に収容される組電池間の拘束圧の均一化を可能とした。さらに、第一の圧力調整手段による外装体内の圧力調整の結果として、或いは、その他原因により、密閉容器内部の圧力が上昇又は低下した場合も、第二の圧力調整手段により、各密閉容器内に収容される複数の組電池にかかる圧力を均一化することが可能である。従って、本発明によれば、一部の組電池や一部の密閉容器に収容される発電要素のみが高い内圧又は低い内圧に晒され、電流密度の低下や劣化等が生じるのを回避することができる。
また、一部の組電池又は一部の密閉容器に収容される発電要素に異常が生じた場合、第一及び/又は第二の圧力調整手段により、該異常の生じた組電池又は密閉容器の内圧状況を、他の組電池や密閉容器の内圧状況と切り離すことも可能であり、電池全体としての異常を軽減したり、安全性を高めることができる。
【0017】
以上のように、本発明によれば、電池モジュールを構成する発電要素、組電池について、個別に細やかな拘束圧の制御が可能である。
【0018】
以下、本発明の電池モジュールの各構成について、詳しく説明する。
[発電要素]
発電要素は、正極と、電解質と、負極と、がこの順で積層された構造を有する。本発明において、「発電要素の積層方向」とは、発電要素を構成する、これら正極、電解質及び負極の積層方向を意味する。
本発明の電池モジュールにおいて、発電要素は、電池の種類や用途によって、様々な構成をとり得る。例えば、一次電池でも二次電池でもよく、具体的には、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル金属水素化物電池、燃料電池、リチウムイオン電池、金属空気電池(例えば、リチウム空気電池、ナトリウム空気電池、カリウム空気電池、マグネシウム空気電池、カルシウム空気電池、亜鉛空気電池、アルミニウム空気電池、鉄空気電池等)等の空気電池、等の様々な種類の電池を用いることができる。
活物質や電解質等の発電要素を構成する材料として、電池の使用環境下における体積変化の大きいものを用いる場合、本発明により得られる既述の効果は特に大きくなるといえる。そのため、本発明は、例えば、体積変化に起因する電池の劣化が著しいことを理由に、電池材料としての使用が制限されている材料を使用可能とし、電池性能(例えば、エネルギー密度等)の向上に貢献することも期待できる。
以下、リチウムイオン電池を例に本発明の電池モジュールを説明するが、本発明の電池モジュールは以下の構成に限定されるものではない。
(正極)
正極は、リチウムイオン(伝導イオン)を吸蔵・放出可能な正極活物質を少なくとも含む正極層を備え、必要に応じて、該正極層の集電を行う正極集電体も備えていてもよいものである。正極において、通常、正極層と正極集電体は、電解質側から、正極層、正極集電体の順に積層される。
【0019】
正極層は、少なくとも正極活物質を含み、正極の反応場となる。
正極活物質としては、例えば、LiO、Li、LiCoO、LiNiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiVO、LiCrO、LiMn、LiCoMnO、LiNiMn、LiNi0.5Mn1.5、LiCoPO、LiMnPO、LiFePO等を挙げることができる。正極層における正極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましい。
【0020】
正極層は、必要に応じて、電解質、導電助剤、バインダー等を適宜含有していてもよい。
電解質としては、例えば、酸化物固体電解質や硫化固体電解質等の無機固体電解質の他、電解質ゲル等を用いることができる。具体的には、後述する電解質において説明する固体電解質や電解質ゲル等を挙げることができる。
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛等の導電性炭素材料が挙げられる。
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系バインダー成分、及び、スチレンブタジエンゴム等のゴム系バインダー成分等を挙げることができる。正極層におけるバインダー成分の含有量は、正極活物質等を安定に固定化できれば、より少ないことが好ましい。
【0021】
また、正極層の厚さは、リチウムイオン電池の構成によって大きく異なるものであり、適宜決定すればよい。
【0022】
正極集電体は、正極層の集電を行うものであり、所望の導電性(電子伝導性)を有する材料を含有する。
正極集電体の材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銅等の金属材料、カーボンファイバー、カーボンペーパー等のカーボン材料、窒化チタン等の高電子伝導性セラミックス材料等が挙げられる。
正極集電体は、多孔質構造を有していてもよいし、緻密構造を有していてもよく、例えば、箔状、板状、メッシュ状等が挙げられる。また、外装体が正極集電体としての機能を有していてもよい。
正極集電体の厚さは特に限定されない。
【0023】
正極の製造方法は、特に限定されない。例えば、正極活物質と、その他任意成分とを混合した正極材料を用いて形成することができる。具体的には、正極集電体の表面に、溶媒を含む正極材料を、圧延又は塗布して成形し、必要に応じて、乾燥処理、加圧処理、加熱処理等を施すことで正極層と正極集電体とが積層した正極を作製することができる。或いは、溶媒を含む正極材料を圧延又は塗布して成形し、必要に応じて、乾燥処理、加圧処理、加熱処理等を施した正極層を、正極集電体と重ね合わせ、適宜、加圧や加熱等を行うことで、正極層と正極集電体とが積層した正極を作製することができる。
正極材料に用いる溶媒としては、揮発性を有していれば特に限定されず、適宜選択することができる。具体的には、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。正極材料の乾燥が容易になることから、沸点が200℃以下の溶媒が好ましい。
正極材料を塗布する方法は特に限定されず、ドクターブレード法、インクジェット法、スプレー法等の一般的な方法を用いることができる。
【0024】
(電解質)
電解質は、正極と負極との間でリチウムイオン(伝導イオン)を伝導できれば、特に限定されず、電解液でもよいし、固体電解質でもよいが、電解液を用いた場合、流体による拘束圧によって、漏液し、電圧降下が生じるおそれがあるため、固体状の電解質を用いることが好ましい。
固体状の電解質としては、例えば、電解液をゲル化したもの、無機固体電解質、有機固体電解質等を用いることができる。電解液のゲル化の方法としては、例えば、非水系電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリマーを添加する方法が挙げられる。
【0025】
電解液としては、非水系電解液や水系電解液が挙げられる。非水系電解液は、支持電解質塩及び非水溶媒を含有する。
非水溶媒としては、特に限定されず、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、イソプロピオメチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコージジエチルエーテル、アセトニトリル(AcN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエトキシエタン、ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)等が挙げられる。
【0026】
また、イオン性液体を非水溶媒として用いることもできる。イオン性液体としては、例えば、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:TMPA−TFSA]、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:PP13−TFSA]、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:P13−TFSA]、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:P14−TFSA]、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:DEME−TFSA]等の脂肪族4級アンモニウム塩;1−メチル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート[略称:EMIBF]、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:EMITFSA]、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムブロマイド[略称:AEImBr]、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート[略称:AEImBF]、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:AEImTFSA]、1,3−ジアリルイミダゾリウムブロマイド[略称:AAImBr]、1,3−ジアリルイミダゾリウムテトラフルオロボラート[略称:AAImBF]、1,3−ジアリルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:AAImTFSA]等のアルキルイミダゾリウム4級塩等が挙げられる。
【0027】
支持電解質塩は、非水溶媒に対して溶解性を有し、リチウムイオン伝導性を発現するものであればよい。例えば、リチウムイオン電池の支持電解質塩としては、リチウム塩を用いることができ、具体的には、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiOH、LiCl、LiNO、LiSO等の無機リチウム塩や、CHCOLi、リチウムビスオキサレートボレート(略称 LiBOB)、LiN(CFSO(略称 LiTFSA)、LiN(CSO(略称 LiBETA)、LiN(CFSO)(CSO)等の有機リチウム塩を挙げることができる。
非水電解質において、非水溶媒に対する支持電解質塩の含有量は、特に限定されないが、例えば、非水系電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.5mol/L〜3mol/Lの範囲内であることが好ましい。
【0028】
水系電解液は、支持電解質塩及び水を含有する。支持電解質塩は、水に対して溶解性を有し、リチウムイオン伝導性を発現するものであれば特に限定されず、例えば、LiOH、LiCl、LiNO、LiSO、CHCOOLi等のリチウム塩を用いることができる。
【0029】
電解液をゲル化して用いる場合、例えば、上記したようなポリマーと電解液とを混合した後、該混合液を基材上に流延塗布、乾燥し、基材から剥離した後、切断することで、ゲル状電解質膜を作製することができる。
【0030】
固体電解質としては、例えば、無機固体電解質が挙げられる。尚、無機固体電解質としては、ガラス、結晶、ガラスセラミックスのいずれでもよい。これら固体電解質を用いる場合、例えば、固体電解質を圧延又は固体電解質を溶媒と混合したスラリーを塗布、乾燥することによって、固体電解質層を作製することができる。
無機固体電解質としては、例えば、硫化物系固体電解質や酸化物系固体電解質が挙げられる。
【0031】
硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS−P化合物、LiS−SiS化合物、LiS−GeS化合物等を挙げることができる。尚、LiS−P化合物は、LiS及びPを用いた硫化物固体電解質材料を意味し、LiS及びPの比率は特に限定されない。その他の化合物についても同様である。
【0032】
酸化物系固体電解質としては、例えば、Li(XはB、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Sb及びSeよりなる群から選択される少なくとも1種であり、YはTi、Zr、Ge、In、Ga、Sn及びAlよりなる群から選択される少なくとも1種であり、a〜eは、0.5<a<5.0、0≦b<2.98、0.5≦c<3.0、0.02<d≦3.0、2.0<b+d<4.0、3.0<e≦12.0の関係を満たす)で表されるNASICON型酸化物;LiLa1−xTiO等で表されるペロブスカイト型酸化物(Li−La−Ti−O系ペロブスカイト型酸化物);LiXO−LiYO(XはSi、Ge,及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、YはP、As及びVから選ばれる少なくとも1種である)、LiXO−LiAO(XはSi、Ge,及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、AはMo及びSから選ばれる少なくとも1種である)、LiXO−LiZO(XはSi、Ge及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、ZはAl、Ga及びCrから選ばれる少なくとも1種である)、LiXO−LiBXO(XはSi、Ge,及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、BはCa及びZnから選ばれる少なくとも1種である)、並びに、LiDO−LiYO(DはB、YはP、As及びVから選ばれる少なくとも1種である)等のLISICON型酸化物;Li3+x2−v12(A、G、MおよびBは金属カチオンであり、)で表されるガーネット型酸化物等が挙げられる。
【0033】
(負極)
負極は、リチウムイオン(伝導イオン)を吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する負極層を備え、必要に応じて、負極層の集電を行う負極集電体を備えていてもよい。
リチウムイオン電池の負極活物質としては、例えば、金属リチウム;リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等のリチウム合金;スズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物等の金属酸化物;スズ硫化物、チタン硫化物等の金属硫化物;リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等の金属窒化物;並びにグラファイト等の炭素材料等を挙げることができる。
【0034】
負極層は、少なくとも負極活物質を含有してればよいが、必要に応じて、負極活物質を固定化する結着材を含有していてもよい。例えば、負極活物質として箔状の金属や合金を用いる場合には、負極層を負極活物質のみを含有する形態とすることができるが、粉末状の負極活物質を用いる場合には、負極層を負極活物質と結着材を含有する形態とすることができる。また、負極層は、導電性材料や電解質を含有していてもよい。結着材、導電性材料、電解質の種類、使用量等については、上述した正極層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0035】
負極集電体は、負極層の集電を行うものであり、所望の導電性(電子伝導性)を有する材料を含有する。
負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されない。例えば、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、及びメッシュ状等が挙げられる。また、外装体が負極集電体としての機能を有していてもよい。
【0036】
負極の製造方法は特に限定されない。例えば、箔状の負極活物質と負極集電体とを重ね合わせて加圧する方法が挙げられる。また、別の方法として、負極活物質と結着材とを含有する負極材料を調製し、該負極材量を基材上又は負極集電体上に塗布又は圧延し、乾燥する方法を挙げることができる。
【0037】
発電要素は、上記のような正極、電解質、及び負極を積層したものであり、組電池は、2つ以上の発電要素と、これら発電要素を収容する可撓性外装体とを備えるものである。次に、組電池について説明する。
【0038】
[組電池]
組電池は、複数の発電要素が、可撓性外装体に収容された構成を有している。
1つの組電池を構成する複数の発電要素は、通常、電気的に接続される。すなわち、並列接続又は直列接続される。発電要素間の電気的接続の方法や、1つの組電池を構成する発電要素の数は、特に限定されず、電池モジュールに要求される起電力や電流密度等に応じて、適宜設定すればよい。発電要素は、例えば、図2のように、隣接する2つの発電要素の正極と負極とが接触するように積層することで、直列接続することができる。このように発電要素を積層して直列接続する場合には、可撓性外装体の外部からの流体による圧力によって、発電要素同士の積層方向にも拘束圧がかかることとなり、発電要素間の電気的接続状態も良好に維持することができる
【0039】
複数の発電要素を収容する可撓性外装体は、可撓性フィルムから形成されており、外装体の内部に収容された発電要素に可撓性外装体の外部からの流体による圧力を伝達し、発電要素をその積層方向に拘束することができる。可撓性フィルムは、上記のように圧力を伝達できるものであれば特に限定されず、典型例として、ラミネートフィルムが挙げられる。ラミネートフィルムとしては、種々の電池の外装体として利用されているものから適宜選択して用いることが可能であり、例えば、アルミ層の一方の表面(外装体の外部側)に、耐衝撃性や材料補強を目的とした樹脂層(例えば、ポリエチレンテレフタレートやナイロン等)、が設けられ、他方の表面(外装体の内部)には、外装体の密封を目的とした接着層(例えば、ポリオレフィン製)が設けられたものが挙げられる。
【0040】
可撓性外装体の内部のガス雰囲気は特に限定されず、例えば、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気等にすることができる。尚、上記ガス雰囲気は、上記構成のリチウムイオン電池以外の電池の場合には、電池の性質に合わせて適宜選択すればよく、例えば、酸素含有ガス雰囲気にしてもよい。
【0041】
可撓性外装体には、可撓性外装体内部の圧力を調整する第一の圧力調整手段が設けられている。例えば、電池の主反応や副反応の結果として、ガスが生成したり、発電要素が膨張したりして、可撓性外装体内部の圧力が上昇した場合、第一の圧力調整手段により、可撓性外装体の内圧を逃がすことができる。複数の可撓性外装体がそれぞれ圧力調整手段を有しているため、各可撓性外装体の状態に応じて、圧力調整手段を作動させることで、各可撓性外装体の内圧を制御することができ、複数の組電池を有する電池モジュール全体として、発電要素にかかる圧力を均一化したり、最適化したりして、電池性能を維持又は向上させることができる。
第一の圧力調整手段としては、可撓性外装体の内圧を調整可能であれば特に限定されず、例えば、可撓性外装体の内圧がある値以上になった場合に、弁が開いて可撓性外装体内の圧力を逃がすことが可能な圧力調整弁等が挙げられる。具体的には、背圧弁、場合によっては減圧弁等が挙げられる。
組電池において、第一の圧力調整手段の位置、数等は特に限定されず、適宜設定すればよい。
【0042】
本発明の電池モジュールにおいては、複数の組電池が1つの密閉容器内に収容され、該密閉容器内に充填される流体(ガスなど)によって、可撓性外装体を介して発電要素が拘束される。
1つの密閉容器内に収容される複数の組電池は、通常、電気的に接続される。すなわち、並列接続又は直列接続される。組電池間の電気的接続の方法や、1つの密閉容器内に収容される組電池の数は、特に限定されず、電池モジュールに要求される起電力や電流密度等に応じて、適宜設定すればよい。組電池は、例えば、図2のように、組電池の両端に位置する正極と負極に、それぞれ正極端子と負極端子を配設し、可撓性外装体の外部に突出させ、該端子によって、他の組電池と電気的に接続することができる。
次に、組電池を収容する密閉容器について説明する。
【0043】
[密閉容器]
密閉容器には、複数の組電池が収容されると共に、組電池を構成する発電要素に可撓性外装体の外部から圧力を負荷する流体が充填される。
可撓性外装体の外部から発電要素を拘束する流体(以下、拘束流体ということがある)は、発電要素を拘束することができればよく、気体の他、液体も用いることができ、通常、常圧以上とする。拘束流体の圧力は、常圧(すなわち、大気圧)以上であることが好ましく、特に0.05MPa〜1MPa程度であることが好ましい。
拘束流体の種類は、特に限定されず、例えば、気体としては、空気(大気)、酸素、窒素、アルゴン、二酸化炭素等を用いることができる。
【0044】
本発明の電池モジュールは、上記のような複数の組電池が収容された密閉容器を複数有している。複数の密閉容器は、これら密閉容器内の圧力を調整可能な第二の圧力調整手段を介して、連結されている。例えば、上記第一の圧力調整手段により可撓性外装体内の気体(拘束流体)が密閉容器内に放出された結果、一部の密閉容器内の圧力が上昇した場合、第二の圧力調整手段を介して連結された複数の密閉容器間で上昇した圧力を分散させ、密閉容器内の圧力上昇を緩和することができる。その結果、複数の密閉容器内の環境を均一化することができ、一部の密閉容器に収容された組電池のみが高圧環境に晒されるのを回避し、電池の劣化を抑制することができる。一方、一部の密閉容器内の圧力が低下し、該密閉容器に収容された組電池群に充分な拘束圧が付与できなくなった場合、第二の圧力手段を介して連結された複数の密閉容器から、圧力が低下した密閉容器へと気体(拘束流体)を流し、圧力低下を緩和することもできる。
さらには、例えば、一部の組電池内の圧力又は一部の密閉容器内の圧力に異常が生じたり、或いは、一部の組電池又は一部の密閉容器に収容された発電要素に圧力以外の異常が生じ、電池モジュール全体として性能低下を招くような状態の場合、該組電池又は該密閉容器に収容された組電池群を、第二の圧力調整手段、さらには、第一の圧力調整手段により、他の組電池や他の組電池群から、隔離することによって、電池モジュール全体としての劣化や異常状態の拡大の回避、電池性能低下の軽減が可能である。また、電池の安全性を向上することもできる。
【0045】
第二の圧力調整手段としては、密閉容器の内圧を調整可能であれば特に限定されず、配置位置も特に限定されない。例えば、密閉容器に設置してもよいし、複数の密閉容器を連結する配管上に設置してもよいし、密閉容器及び配管上の両方に設置してもよい。具体的な第二の圧力調整手段としては、例えば、該圧力調整手段を介して連結された複数の密閉容器の一部において、内圧の上昇が検知された場合に、弁が開いて、内圧が上昇した密閉容器から他の密閉容器へ圧力を逃がすことが可能な電磁弁等が挙げられる。具体的には、二方弁、三方弁等が挙げられる。
【0046】
本発明の電池モジュールは、第二の圧力調整手段による圧力調整の精密性、応答性等を向上させるため、第二の圧力調整手段で連結された複数の密閉容器の内部の圧力を検知する圧力検知手段を設けることもできる。圧力検知手段により検知された密閉容器内の圧力に応答して、第二の圧力調整手段が作動することによって、一部の密閉容器内の圧力が過度に上昇するのをより確実に回避することができる。具体的な圧力検知手段としては、例えば、圧力センサー、圧力検知バルブ等が挙げられる。
複数の密閉容器は、上記のように第二の圧力調整手段を介して密閉容器の内部空間が連結されていると共に、通常、各密閉容器に収容された組電池群が、電気的に接続されている。すなわち、複数の組電池群が、並列接続又は直列接続されている。組電池群間の電気的接続の方法や、電池モジュールを構成する組電池群(密閉容器)の数は、特に限定されず、電池モジュールに要求される起電力や電流密度等に応じて、適宜設定すればよい。
【符号の説明】
【0047】
1…可撓性外装体
2…発電要素
3…組電池
4…第2の圧力調整手段
5…第1の圧力調整手段
6…正極
7…負極
8…電解質
9…正極端子
10…負極端子
100…密閉容器
200…電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在する電解質を有する発電要素を2つ以上備える組電池、並びに、前記組電池を2つ以上収容する密閉容器を備える電池モジュールであって、
前記組電池は、2つ以上の前記発電要素を収容する、可撓性フィルムで形成された可撓性外装体を備え、前記密閉容器内に充填される流体によって、前記可撓性外装体の外部から前記発電要素を加圧可能であると共に、前記可撓性外装体の内部の圧力を調整する第一の圧力調整手段を有し、
2つ以上の前記密閉容器が、該2つ以上の密閉容器の内部の圧力を調整する第二の圧力調整手段を介して連結されていることを特徴とする、電池モジュール。
【請求項2】
2つ以上の前記密閉容器の内部の圧力を検知する、圧力検知手段を備える、請求項1に記載の電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−45555(P2013−45555A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181518(P2011−181518)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】