電池冷却構造
【課題】 組電池を構成する電池が膨張して冷却風通路の幅が変化しようとも、電池を効果的に冷却し、組電池の電池温度を均一化できる電池冷却構造を提供する。
【解決手段】 平板状の電池2,2が所定間隔を隔てた積層状に並べられた組電池1を電池ケース6内に収容し、冷却風を、電池間の隙間を通過するように送って電池を冷却する電池冷却構造において、組電池1の上流側または下流側には、冷却風の通路を遮断するように流れ制御板5が配置され、流れ制御板5には、電池間の隙間に沿う方向に延在するスリット51,51が設けられて、該スリット51を通じて流れ制御板の上流側から下流側に冷却風が流れるようにされ、スリット51と電池間隙間がそれぞれ独立し並列配置された複数の流路となるようにして、電池間の冷却風流れ方向に沿って見て、該スリットの幅Sを、電池間の隙間dの幅以下(S≦d)とする。
【解決手段】 平板状の電池2,2が所定間隔を隔てた積層状に並べられた組電池1を電池ケース6内に収容し、冷却風を、電池間の隙間を通過するように送って電池を冷却する電池冷却構造において、組電池1の上流側または下流側には、冷却風の通路を遮断するように流れ制御板5が配置され、流れ制御板5には、電池間の隙間に沿う方向に延在するスリット51,51が設けられて、該スリット51を通じて流れ制御板の上流側から下流側に冷却風が流れるようにされ、スリット51と電池間隙間がそれぞれ独立し並列配置された複数の流路となるようにして、電池間の冷却風流れ方向に沿って見て、該スリットの幅Sを、電池間の隙間dの幅以下(S≦d)とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池が組み合わされた組電池を冷却する電池冷却構造に関する。特に平板状の電池が所定間隔を隔てる積層状態で配置される組電池を冷却風により冷却する空冷式の電池冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などには、動力源として二次電池を集合させた組電池が用いられている。充電や放電の過程において、電池が過熱したり電池間の温度差が大きくなったりすると、電池の性能が低下したり、電池が損傷することが起こるため、通常、これら組電池を電池ケースに収納して、冷却風を電池ケース内に送り込んで組電池を冷却することが行われる。
【0003】
組電池に用いられる電池には、リチウムイオン電池のように、略平板状の電池があり、このような電池はその形状から角型電池と呼ばれることもある。
平板状の電池を組電池として構成する場合には、冷却風による冷却が効率的に行われるように、電池の広い面同士が対向するように、互いに所定の間隔を隔てるように平板状電池を積層状態に配置して、電池間の隙間に冷却風を送って電池を冷却することが一般的に行われている。
【0004】
そして、これら組電池の冷却にあたっては、組電池を構成する複数の電池の温度を極力均一化し、かつ、効率的に電池を冷却することが必要であり、そのために、さまざまな組電池構造や電池冷却構造が提案されるに至っている。
例えば、特許文献1には、所定間隔を隔てて配置された平板状電池の間に分配された冷却風を導いて、複数の電池が均一に冷却されるようにした組電池冷却構造が開示されている。また、特許文献2には、電池と電池の間に絶縁セパレータを挟みこんで、絶縁セパレータの凹凸形状によって冷却風通路(冷却隙間)を形成し、電池間の絶縁性を確保した組電池構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−254627号公報
【特許文献2】特開2010−153141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気自動車などに使用される組電池は、システムの軽量化や省スペース化のために、電池外装缶が薄型化される傾向にある。ここで、リチウムイオン電池のような平板状の電池で電池外装缶が薄型化されると、電池の温度変化や内部でのガスの発生などによって、電池の広い面が内圧によってふくれる傾向が顕著となりやすい。
【0007】
特許文献1に記載の組電池構造(図12に示す)のように、平板状電池と電池の間に特に電池の膨張を拘束する部材を有しない組電池構造の場合には、電池の広い面が膨張することにより、電池間の隙間が小さくなって、その隙間に空気が流れにくくなり、その隙間に隣接する電池の冷却が悪くなって、電池の均一な冷却がうまくできなくなったり、一部の電池が異常加熱したりするおそれがある。特許文献1に開示されたような電池冷却構造では、電池間の隙間の幅が、電池間に流れる冷却風の流量を直接的に規定するために、電池の膨張による冷却性の阻害と電池温度のばらつきが顕著となりやすい。電池温度にばらつきが生ずると、温度の高い電池の膨張や劣化が進行しやすくなり、電池寿命にもばらつきが生ずることになり、組電池としての寿命が短くなるので好ましくない。
【0008】
特許文献2に記載されたような、凹凸板状の絶縁セパレータを電池の間に挟みこむタイプの組電池構造であれば、電池の膨張が積極的に抑制されると共に、電池間の隙間が適切に維持され、冷却は比較的均一に行われうるが、このような組電池構造は、多数の構成部品を精度良く製造して組み付ける必要があり、製造コストが高くなるほか、電池間の隙間の寸法変化をさせないために、システムには一定の剛性や強度が必要とされて、その軽量化にも限界があった。
【0009】
即ち、本発明の目的は、組電池を構成する電池が膨張して、電池間の冷却風通路の幅が変化しようとも、電池を効果的に冷却し、組電池の電池温度の均一性を維持し、ひいては電池寿命の均一化に貢献できる電池冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、冷却風を用いた電池冷却構造において、電池間隙間に対応したスリットや貫通穴を有する流れ制御板を冷却風通路に設けて、スリット(貫通穴)と電池間隙間で構成される個々の冷却風通路を互いに独立して並列配置し、それぞれの冷却風通路において、このスリットによって冷却風を絞って風量調整を行うようにすると共に、スリットの大きさを電池間隙間の大きさ以下の大きさにすれば、電池がふくれて電池間の隙間が変化しようとも、電池温度の変化が抑制されることを発見した。そして、これを応用すれば、風量変化や、風量配分の乱れや電池温度の不均一化を防止もしくは抑制できることを知見し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、複数の平板状の電池が所定間隔の隙間を隔てた積層状に並べられた組電池を電池ケース内に収容し、電池ケース内を通流する冷却風を、電池間の隙間を通過するように送って電池を冷却する電池冷却構造であって、組電池の上流側または下流側には、冷却風の通路を遮断するように流れ制御板が配置され、流れ制御板には、電池間の隙間に沿う方向に延在するスリットが設けられて、該スリットを通じて流れ制御板の上流側から下流側に冷却風が流れるようにされると共に、電池間隙間のそれぞれに対応してスリットが設けられ、互いに対応するスリットと電池間の隙間によって形成される通気経路が、それぞれ独立し互いに並列配置される通気経路となるようにされて、電池間の隙間における冷却風流れ方向に沿って見た際に、該スリットの幅Sが、電池間の隙間の幅dと比べ、S≦dとされた電池冷却構造である。
【0012】
本発明においては、スリットの幅Sを、電池間の隙間の幅dと比べ、17%≦S/d≦70%とすることが好ましく、さらに、スリットの幅Sを、電池間の隙間の幅dと比べ、25%≦S/d≦50%とすることが特に好ましい。また本発明においては、電池間の隙間には、当該電池間隙間の幅が、隙間の初期幅の40%以下に狭まることを抑制可能なスペーサ部材が設けられることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、複数の平板状の電池が所定間隔の隙間を隔てた積層状に並べられた組電池を電池ケース内に収容し、電池ケース内を通流する冷却風を、電池間の隙間を通過するように送って電池を冷却する電池冷却構造であって、組電池の上流側または下流側には、冷却風の通路を遮断するように流れ制御板が配置され、流れ制御板には電池間隙間のそれぞれに対応して貫通穴が設けられて、該貫通穴を通じて流れ制御板の上流側から下流側に冷却風が流れるようにされると共に、互いに対応する貫通穴と電池間の隙間によって形成される通気経路が、それぞれ独立し互いに並列配置される通気経路となるようにされて、前記貫通穴の開口面積をAhとし、電池間の隙間を冷却風流れ方向に沿って見た際の断面積をAgとして、実質的にAh≦Ag とされた電池冷却構造である。ここで、貫通穴の形態はスリットのような形態に限定されず、円形や楕円形、矩形(正方形、長方形)、ひし形など多様な形態の貫通穴とできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、互いに対応して設けられるスリットと電池間隙間により、それぞれ独立し互いに並列配置される通気経路が構成される。スリットの幅Sは電池間隙間の幅d以下(すなわちS≦d)とされているために、これら独立した通気経路における冷却風の流量や流量配分を決定する通気抵抗を、各流路に設けられたスリットにより独立して調整することができる。従って、各流路への流量配分は、あらかじめスリット幅を調整しておくことにより行うことができる。
そして、各流路におけるスリットの幅Sが電池間隙間の幅dよりも小さく(S≦d)されているため、電池間隙間が電池の膨張等により変化しても、流路全体の通気抵抗に生ずる変化は限定的なものなり、冷却風の流量変化が抑制される。そして、電池間隙間の減少による電池温度の上昇も抑制される。この温度上昇抑制効果は、電池間隙間の幅が初期幅の40%〜70%になる程度に電池が膨張する条件下で特に顕著なものとなる。
【0015】
従って、本発明によれば、電池の膨張などにより電池間隙間が変化しても、各流路の流量やその配分および電池温度を実質的に維持して、電池の冷却性向上および電池温度の均一性および電池寿命の均一化に貢献できる。
【0016】
そして、さらに、スリットの幅Sと、電池間の隙間の幅dを、17%≦S/d≦70%となるようにすれば、特許文献2に示された絶縁セパレータを挟持するタイプの電池冷却構造と比較しても、冷却風の通気抵抗を同等以下にでき、電池冷却システムの冷却の効率性を高めることができる。さらに、この範囲においては、驚くべきことに、電池が膨張して電池間の隙間が狭くなると、冷却条件は同じであっても、むしろ電池の温度を下げることができる。従って、膨張した電池の温度が膨張していない電池の温度よりも逆に低くなるようになり、膨張した電池の更なる膨張や劣化が抑制され、電池寿命の均一化に大きく貢献できる。
【0017】
そして、さらに、スリットの幅Sと、電池間の隙間の幅dを、25%≦S/d≦50%となるようにすれば、特許文献2に示された絶縁セパレータを挟持するタイプの電池冷却構造と比較しても、電池温度を同等以下にでき、電池冷却システムの冷却の効率性を高めることができる。さらに、この範囲においては、特に、電池間隙間が半減するような厳しい条件下での冷却風量変化を効果的に抑制できる。
【0018】
そして、さらに、電池間の隙間に、当該電池間隙間の幅が初期幅の40%以下に狭まることを抑制可能なスペーサ部材を設けるようにすれば、本発明を適用した電池冷却システムにおける電池温度の上昇を特に効果的に抑制できる。
【0019】
また、本発明においては、電池間隙間の方向に延在するスリットを、開口面積Ahの貫通穴に置き換えても、電池間の隙間を冷却風流れ方向に沿って見た際の断面積をAgとして、実質的にAh≦Agとなるように貫通穴を設定すれば、同様の作用効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の電池冷却構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態の電池冷却構造に用いられる組電池構造と流れ制御板の構成を示す分解図である。
【図3】本発明の実施形態に用いられる流れ制御板を示す斜視図である。
【図4】電池間隙間変化に対する流量変化の関係を、スリット幅ごとに示すグラフである。
【図5】電池間隙間変化に対する電池温度変化の関係を、スリット幅ごとに示すグラフである。
【図6】電池間隙間が変化していく際の電池温度変化の最小値を、スリット幅に対して示すグラフである。
【図7】スリット幅に対する冷却風流量変化を、比較例を基準として示すグラフである。
【図8】電池間隙間の変化に対する電池温度の変化を、比較例を基準としてスリット幅ごとに示すグラフである。
【図9】電池間隙間が変化していく際の電池温度変化の最小値を、比較例の温度変化を基準として、スリット幅に対して示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態の電池冷却構造における流れ制御板付近を示す断面図である。
【図11】本発明におけるスリットの他の形状例を示す図である。
【図12】従来の電池冷却構造の例を示す図である。
【図13】従来の電池冷却構造の例(比較例2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面に基づいて、本発明の電池冷却構造の実施形態について、ハイブリッド自動車用の組電池を冷却する電池冷却構造を例にして説明する。図1は本発明の電池冷却構造の第1実施形態の断面図である。また、図2は本実施形態の電池冷却構造に組み込まれる流れ制御板や組電池の構造および構成を分解図で示した図である。
【0022】
図1に示す本発明実施形態の電池冷却構造について説明する。複数の平板状電池2,2が所定間隔の隙間を隔てて積層状に配置された組電池構造体1とされて、電池ケース6の中に配置されている。平板状電池2、2は図1の紙面奥行き方向に延在するように配置されていて、電池2,2は、電池ケース6の内面や隣接する電池との間に所定の間隔(隙間)を有し、その隙間に冷却風が流れるように、スペーサや支持部材によって、箱状の電池ケース6の内部に収容、支持されている。
【0023】
電池ケース6は金属や合成樹脂により成形された中空の箱状の部材であり、電池ケース6には冷却風導入口61と冷却風導出口62が設けられて、電池ケース6の内部空間が冷却風通路となる。そして電池ケース6は、冷却風導入口61や冷却風導出口62がダクトや送風ファンなどの周辺部材と接続されて一連の冷却風通路となって、組電池の冷却に使用される。
【0024】
本実施形態では、冷却風導出口62の下流側に送風ファン(図示せず)が設けられて、図の左上の冷却風導入口61の上流側に接続される冷却風ダクト(図示せず)から、冷却風が電池ケース6の内部に流れ込み、電池2,2や電池ケース6の間の隙間を通りながら電池を冷却して、冷却風導出口62から図の右下側へと暖められた冷却風が流れ出ていく。
【0025】
本実施形態の電池冷却構造に組み込まれる組電池構造体1について説明する。図2には本実施形態の電池冷却構造の分解図を、電池ケースを省略して示しており、組電池構造体1は、電池2とホルダ部材3とエンドプレート4とが一体に組み立てられて構成されている。組電池を構成する平板状の電池2,2は、互いに所定の間隔を隔てて積層状態に配置されている。電池2,2は直列あるいは並列に電気的に接続されて組電池を構成する。本実施形態においては、電池モジュールを構成する電池はリチウムイオンバッテリーであり、電池2は平板状(扁平な直方体状)の形状となっている。電池2,2は広い平坦面が互いに対向するように積層されて、それぞれの電池の側面(広い平坦面に隣接する面)に端子が設けられている。
【0026】
電池2,2が積層状態で位置決めされて保持されるために、電池2,2の側面に対向するように、一対のホルダ部材3,3が設けられる。ホルダ部材3は電池2,2の両端の側面部全体を覆うような板状に形成されるとともに、ホルダ部材3、3には、電池の両端部21,21をそれぞれ保持する形状の保持部31,31が設けられている。本実施形態においては、保持部31は電池の両端部21を取り囲んで嵌合するような形状に、ホルダ部材本体から突出して設けられている。ホルダ部材には、電池の端子部分や固定用突起等が貫通する貫通穴Hが設けられている。ホルダ部材の貫通穴から外部に露出させた電池端子を互いに結線して、組電池として機能させる。
【0027】
積層状に位置決めされた組電池の積層方向の両端の電池の広い面に対向するように、一対のエンドプレート4、4が設けられている。エンドプレート4、4には、一対のホルダ部材3,3が取付けられて、ボルトやバンドなどによって固定され、互いに電池の固定構造を維持する働きをする。エンドプレート4,4はホルダ部材の取付けが適切に行われる限りにおいて、省略あるいは簡素化することができる。そして、電池2,2は、電池ケース6内に、ホルダ部材やエンドプレートを備えた組電池構造体1として組み込まれる。
【0028】
本実施形態においては、ホルダ部材3,3とエンドプレート4,4とは、角筒状の通気経路を構成して、冷却風通気経路の一部を構成するようにされている。このようにすれば、ホルダ部材やエンドプレートを、冷却風通路を画成する電池ケース6として兼用することができる。なお、必ずしも、ホルダ部材3,3やエンドプレート4,4によって冷却風通気経路を構成しなければならないわけではなく、もっぱら電池ケースによって通気経路を構成することもできる。
【0029】
本発明においては、電池ケース6の内部に、電池ケースの内部空間を冷却風導入口側と冷却風導出口側とに仕切り、冷却風の流れをさえぎるように、流れ制御板5が設けられている。そして、本実施形態においては、流れ制御板5は組電池の上流側の端縁部を覆うような大きさとされて、組電池よりも上流側となる位置に、組電池の端縁部と略平行となるように、電池ケース6に対して一体に取り付けられている。
【0030】
図1にその断面を、図2および図3にその斜視図を示すように、流れ制御板5には、複数のスリット51,51が電池間の隙間に沿う方向に延在して設けられている。本実施形態においては、スリット51,51は、電池間の隙間のそれぞれに対応して、1つの隙間に対して1本のスリット51が、電池間の隙間に対向する位置(即ち電池の積層方向において互いに隣接する電池の中間位置)に設けられている。また、スリット51は、電池間の隙間の長さ方向(図1における紙面奥行き方向)において、隙間の全長にわたる長さの長穴状に設けられている。
【0031】
スリット51,51は、流れ制御板5の上流側空間と下流側空間とを互いに連通するように流れ制御板5を貫通して設けられている。そして、流れ制御板5によって流れをせき止められた冷却風は、流れ制御板に設けられたスリット51を通じて、上流側から下流側に流れる。
【0032】
さらに、本実施形態においては、流れ制御板5が電池2の上流側端縁と対向する部分に凸条52,52が形成されて、凸条52の先端部が電池の上流側端縁に当接し、シールするようにされている。このような構成をとることによって、互いに対応して設けられたスリット51と電池間の隙間とによって構成される冷却風通路が、それぞれ独立した複数の冷却風通路となる。これら独立した冷却風通路は、電池ケース6の中で互いに並列に配置されて設けられることになる。そして、それぞれのスリットの幅を調整することによって、それぞれの電池間隙間を流れる冷却風の流量を独立して調整できるようになる。
【0033】
スリット51,51の幅Sは、電池間の隙間の幅d以下に(即ちS≦dとなるように)されており、各電池間の冷却風流れは、スリット51,51によって絞られて、その流量が調整される。例えば、本実施形態においては、電池間の隙間を流れる冷却風の流れ方向(図1の上下方向)に沿って見て、スリット51の幅Sが、電池間の隙間の幅dの40%(即ちS/d=0.4)にされている。
【0034】
後述するように、電池の膨張などによる電池間の隙間の変化に対して冷却風風量の変化や電池温度の変化を少なくし、電池を効果的に冷却するためには、スリット51の幅Sを電池間の隙間の幅dに対し100%以下にすればよく、より好ましくは、70%以下、特に好ましくは50%以下にすると良い。一方スリット51の幅Sが小さすぎると、冷却風の送風抵抗が大きくなるので、スリット51の幅Sは電池間の隙間の幅dの10%以上にすればよく、より好ましくは17%以上、特に好ましくは25%以上にすると良い。
【0035】
上記電池冷却構造を構成する電池ケースの製造方法は、公知の製造方法により行うことができ、例えば、電池ケース6は開口状の箱と蓋に分けたケース部材を合成樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の射出成形により形成することができる。流れ制御板5も合成樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の射出成形により形成することができ、可能であれば、電池ケース6のケース部材と一体成形してもよい。もちろん、流れ制御板5を金属板や合成樹脂の射出成形などによりケースとは別体に作成して、電池ケース組み立て時に所定位置に取り付けるようにしてもよい。
【0036】
上記電池冷却構造に組み込まれる組電池構造体1は、公知の製造方法により構成することができる。例えば、ホルダ部材3やエンドプレート4は例えば合成樹脂の射出成形により製造することができ、互いにボルトやクリップなどの締結部材を介して結合して、上記組電池構造を構成できる。強度や熱的要件等の要件に応じて、これら部材を金属部材で構成することもできる。
【0037】
電池ケースやホルダ部材やエンドプレートにおいてシール性が必要となる部位には、ゴムやエラストマや発泡樹脂などからなるシール材を備えさせることが好ましい。また、これら部材について、少なくとも一部をゴムやエラストマにより一体成形することも好ましい実施の形態である。
【0038】
完成した電池構造体1を電池ケース6内の所定位置に配置し、流れ制御板5を組み込んだ状態で電池ケースの蓋を閉じて、上記実施形態の組電池が収容された電池ケースおよび電池冷却構造が完成される。
【0039】
本発明の電池冷却構造による作用と効果を説明する。
【0040】
本発明では、上記第1実施形態のように、互いに対応して設けられたスリット51と電池間の隙間とが一連の通気経路を構成し、凸条52等によって、電池間の隙間ごとにそれぞれ独立した冷却風通路が並列配置されて構成されるようになる。従って、それぞれの通気経路に設けられたスリットの幅や大きさを調整することによって、それぞれの電池間隙間を流れる冷却風の流量を独立して調整できるようになる。電池ケース6の構成や形状の制限により、それぞれの電池間の隙間に供給される冷却風風量に差が生じやすい場合であっても、このような構成をとることにより電池間の冷却風配分のばらつきを少なくすることができて、電池温度の均一化に効果的である。
【0041】
さらに、本発明の組電池構造においては、流れ制御板に設けられたスリットの幅Sが、電池間の隙間の幅dと比べてS≦dという範囲となるようにされているので、組電池を構成する電池が膨張して冷却風通路(電池間の隙間)の幅が変化しようとも、個々の冷却風通路の通気抵抗に及ぼす影響が少なくなる。そのため、本発明によれば、冷却風の流量変化を抑制可能であり、電池膨張の影響を抑制しながら電池を効果的に冷却し、組電池の電池温度を均一化できる。
【0042】
図12に示す、特許文献1に記載されたような従来の電池冷却構造(図12として特許文献1の中の図3を引用する)においては、電池間の隙間を流れる冷却風の抵抗は、主として電池間の隙間の幅により決定し、幅が狭ければ流量が小さくなり、幅が大きければ流量が大きくなっていた。
【0043】
一方、本発明の電池冷却構造によれば、組電池の上流又は下流側に設けた流れ制御板のスリットの幅が電池間隙間以下にされているために、冷却風流れに生ずる通気抵抗の発生要因におけるスリットの寄与が大きくなっている。すなわち、本発明においては、スリットにより流れを絞って冷却風風量を調整することが可能になる。一方、電池間の隙間の大きさの変化が、冷却風風量に与える影響は相対的に小さくなり、本発明によれば、電池間の隙間が多少変化しても、冷却風風量の変化が抑制されるようになる。
【0044】
発明者は上記効果に関し、熱流体シミュレーション検討によって、スリットと電池間隙間で構成される独立流路の部分の通気抵抗、流量および電池表面温度の計算を行った。
独立流路のモデルとして、上流側に幅Sのスリットが設けられ、その下流側が電池間隙間に相当する幅dの流路とされた流路を想定し、2次元流れを仮定して前記流路の最上流と最下流の間に所定の圧力差を与えて、その際の冷却風流量を求める数値流体解析を行うと共に、所定の冷却風温度と電池の発熱量を与える熱伝導解析を前記流体解析に組み合わせて電池表面温度を求めた。そして、電池の膨張により、電池間隙間dが小さくなっていった場合の流量変化や電池表面温度の変化を求めた。
【0045】
そして、上記第1実施形態に対応する実施例として、流れ制御板に設けられたスリットの幅Sを、電池間隙間の幅(初期幅)と対比して、いろいろと変更して、上記計算を行った。なお、以下のシミュレーション結果の説明部分においては、電池間の隙間の幅を、電池が膨張する前の初期幅をd0とし、電池が膨張して狭くなっていく際の幅をdとして説明する。
一連の検討において、スリット51の幅Sについては、電池間の隙間(初期幅)d0を固定して、電池間の初期隙間の基準寸法d0を基準とするスリットの幅Sの値即ちS/d0の値が17%、34%、52%、69%、86%、100%となるような幅とした場合について熱流体シミュレーション計算を実行した。
【0046】
一連のシミュレーションにおいて、計算を行った系の代表的な諸元は以下のとおりである。電池間の初期隙間は3mmとし、冷却風流れ方向に沿う電池の長さは110mmとした。そして、スリットが設けられた流れ制御板の厚さは2mmとした。流れの解析は、電池上流に設けた流れ制御板の上流側から、電池間隙間の最下流部に至る区間の圧力差を55Paとして計算し、流れ場および熱伝導の場の定常解を求めた。
【0047】
また、比較例1として、電池隙間上流の流れ制御板やスリットが存在しない例(特許文献1の従来技術に相当する)を計算した。比較例1は計算結果のグラフでは「スリットなし」と表記している。
【0048】
計算結果を図4ないし図9に示す。
図4には、電池間隙間が小さくなっていく際の冷却風流量変化を、スリット幅を変更して計算した結果を示す。横軸には、電池間隙間(電池間流路幅)の変化をd/d0として示し、ここで、d0とは電池間隙間の初期幅(電池が膨張する前の電池間隙間)である。縦軸には、冷却風通路を流れる流量Qの変化をQ/Q0として示し、ここで、Q0とは電池が膨張する前の初期流量である。
【0049】
図4によれば、電池が膨張して電池間隙間が狭くなる(d/d0が小さくなる)と、冷却風流量が初期流量に比べ小さくなる(Q/Q0が小さくなる)傾向がわかる。特に、比較例1(スリットなし)においては、電池間隙間が減少するのとほぼ比例するように、流量が減少してしまうのに対し、本発明の各実施例においては、電池間隙間が減少した際の流量変化が抑制されていることがわかる。特にスリット幅をS/d0≦70%とした際には、流量変化の抑制効果が顕著なものとなり、さらに、S/d0≦50%とすれば、電池間隙間が80%に減少した際の流量変化を、比較例1と比べて1/3以下にすることができ、その効果がさらに顕著なものとなる。また、より細いスリットを設けることにより、電池間隙間がより狭くなった領域まで、流量変化抑制効果を維持できることがわかる。例えば、S/d0≦34%とすることにより、電池間隙間が40%に減少した際の流量変化を、比較例1と比べて2/3以下にすることができ、S/d0≦17%とすることにより、電池間隙間が40%に減少した際の流量変化を、比較例1と比べて1/3以下にすることができる。
【0050】
図5には、電池間隙間が小さくなっていく際の電池表面温度変化を、スリット幅を変更して計算した結果を示す。電池表面温度の変化は、電池の全表面の温度の平均値と、流入する冷却風との温度差(T)を計算し、グラフ化している。グラフの縦軸には、電池表面温度変化(T−T0)/T0を示し、ここでT0は電池が膨張する前の初期状態における電池表面温度と流入する冷却風温度の差である。電池表面温度変化(T−T0)/T0の値が正(プラス)であることは、電池隙間の幅の減少により電池表面温度が上昇したことを示し、逆に、(T−T0)/T0の値が負(マイナス)であることは、電池隙間の幅の減少により電池表面温度が下がったことを示している。なお、図5においては、S/d0が86%と100%の計算例の線が互いにほぼ重なっており、S/d0が52%と70%の計算例の線も互いにほぼ重なっている。
【0051】
図5によれば、本発明実施例によれば、驚くべきことに、電池間隙間が60%に減少するまでの間は、むしろ、電池間隙間が減少すると電池表面温度が下がる効果がある(即ち、(T−T0)/T0がマイナスとなる)ことがわかる。一方、比較例1(スリットなし)では、そのような効果が非常に弱く、電池間隙間が60%程度まで減少すると電池表面温度が上がってしまうことがわかる。
【0052】
本発明の実施例において、電池間隙間が減少すると電池表面温度が下がる効果は、以下のようなメカニズムに基づくものであると推定される。本発明実施例においては、電池間隙間dが減少しても、流量Qは維持される。ここで、電池間隙間dが減少すると、電池間の流路断面積が小さくなるため、流量Qが維持されるのであれば、冷却風の流速が増え、電池表面と冷却風の熱交換の効率が高められる。この熱交換効率の向上効果により、本発明実施例においては、電池間隙間dが減少しても、流量Qの減少が顕著となるまでの間(d/d0≧60%である間)は、電池表面温度が下がるものと推定される。
【0053】
図5に示された、電池間隙間の減少により電池表面温度が下がる効果が、スリット幅により変化する様子を図6に示す。図6では、横軸にスリット幅を電池間隙間(初期値)で規格化したS/d0を、縦軸には、図5のグラフにおける電池表面温度変化(T−T0)/T0の最小値をプロットしている。
【0054】
比較例1(スリットなし)では、電池表面温度変化の最小値は−0.5%であり、ほとんど効果が見られない一方で、本発明実施例においては、電池表面温度変化の最小値が−1%ないし−5%となっており、電池が膨張し、幅が減少した隙間に面する電池の温度がむしろ下がることがわかる。特に、スリットの幅をS/d0が10%〜70%となるように設定すれば、電池表面温度変化の最小値を−2〜−5%にすることができ、上記電池冷却効果を効果的に得ることができる。
【0055】
本発明の上記実施例において生じている、電池間隙間が減少すると電池表面温度がむしろ下がるという、顕著な電池冷却効果は、組電池の寿命延長を図る上で、非常に有用である。従来の電池冷却システムによれば、電池が膨張すると、膨張により狭くなった電池間隙間には冷却風の流れがうまく流れなくなって、その隙間に面する電池の温度が上昇し、電池の劣化やさらなる電池の膨張が進むという傾向があり、電池の膨張や劣化が加速的に進みやすかった。そのため、電池劣化や電池寿命の均一化を図ることが難しく、一部の電池の膨張・劣化により組電池全体の寿命が短くなってしまう傾向があった。
【0056】
ところが、本発明によれば、電池の膨張により、電池間隙間が小さくなると、むしろその隙間に面する電池の表面温度が下がり、電池の劣化や更なる膨張が他の電池と比べて抑制されるようになる。従って、それぞれの電池の寿命が均一化され、組電池全体の寿命も長くなる。また、電池間隙間が小さくなった際の、加速度的な電池温度上昇が抑制されるので、電池冷却システムのロバスト性も向上する。
【0057】
本発明の実施例では、スリット幅Sが小さいと、通気抵抗が大きくなって、風量が少なくなる傾向がある。図7には、スリット幅(S/d0)を変更した際の冷却風流量の変化を示す。縦軸の冷却風流量は、後述する比較例2における冷却風流量Q_HOLDERにより規格化し、Q/Q_HOLDERとして示している。ここで、比較例2とは、特許文献2に示されたような絶縁セパレータが電池間に挟持された電池冷却構造について、同様の計算を行った例である。比較例2は、図13にその計算モデルの概要を示すように、電池2,2の間の幅d0の電池間隙間の中央部に、セパレータ8,8を模した厚みd0/3の板を置いた冷却風通路が設けられ、本発明のようなスリットや流れ制御板が存在しない電池冷却構造として計算を行っている。
【0058】
図7に示すように、本発明においては、スリットの幅が大きい方が、電池冷却系の通気抵抗を低くでき、所定の圧力差(上記計算例では55Pa)に対してより多くの冷却風を流せる。また、本発明の実施例によれば、スリット幅SがS/d0≧17%となるようにされていれば、同様な諸元の比較例2と比較しても、より多くの冷却風を流すことができ(すなわち通気抵抗が低い)、電池冷却システムの負荷を低減できる。
【0059】
図8には、電池間隙間が減少していく際の電池表面温度の変化を、比較例2の電池表面温度を基準として、スリット幅ごとに示している。縦軸には、電池表面温度を比較例2の電池表面温度T_HOLDERで規格化した、T/T_HOLDERを示している。
【0060】
さらに、図9には、スリット幅によって、電池表面温度が比較例2と比べてどのように変化するかを示す。図9では、縦軸に、図8と同じく電池表面温度を比較例2の電池表面温度T_HOLDERで規格化したT/T_HOLDERを、横軸にはスリット幅をS/d0で示している。
【0061】
図9によれば、本発明の実施例においては、S/d0≧25%となる領域において、電池表面温度が比較例2と比べて低くできる(即ち、T/T_HOLDER≦100%とできる)という効果が得られ、特許文献2に示された絶縁セパレータを電池間に挟持するタイプの電池冷却構造と比較しても、電池表面温度を低くできるという利点がある。
【0062】
以上のように、スリットの幅を対応する電池間隙間の幅以下とすれば、電池冷却システムとして実用的な冷却風風量を流しながら、電池間の隙間が変化しても冷却風風量の変化を抑制可能とすることができ、電池を効果的に冷却し、組電池の電池温度の均一性を維持し、ひいては電池寿命の均一化に貢献できる。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその説明を簡略化または省略する。
【0064】
まず、流れ制御板に設けられるスリットの変更例を説明する。電池間の隙間に対応して設けられるスリットは、必ずしも上記実施形態のように1対1に対応して設けられなければならないわけではなく、1つの電池間隙間に対してそれぞれ2本もしくはそれ以上のスリットを設けて、本発明を実施することもできる。
【0065】
例えば、図10には、本発明の第2実施形態の電池冷却構造について、電池2,2と流れ制御板7の断面を示す。本実施形態においては、1つの電池間隙間に対して、2本のスリット71,72が対応するように流れ制御板7が構成されている。2本のスリット71,72は、電池間隙間の中心面に対し互いにほぼ対称となる位置に設けられており、第1のスリット71は、電池間の隙間の図示左側の電池の上流側端縁部に対向する位置に、幅S1で設けられており、第2のスリット72は、電池の隙間の図示右側の電池の上流側端縁部に対向するような位置に、幅S2で設けられている。これらスリットは第1実施形態と同じく、互いに対応する2本のスリットと1つの電池間隙間とによってそれぞれ独立した流路が構成されるようにされている。そして、2本のスリットの幅と電池間隙間の幅は、スリットの幅の合計(S1+S2)と電池間隙間の幅dの比が第1実施形態におけるスリット幅と電池間隙間幅の範囲になるように(すなわちS1+S2≦dとなるように)各スリットの幅S1,S2が決定される。
【0066】
このように、スリットの本数や形状が変化しても、電池間隙間との対応関係により、スリットの幅や開口面積を合計して、スリットの幅が電池間隙間の幅以下となるようにすれば、本発明を実施することができ、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0067】
そして、本実施形態によれば、スリット71,72と電池間隙間で構成されるそれぞれ独立した流路内部において、冷却風流れがさらに改善される。すなわち、第1のスリット71から導入される冷却風が、隙間に対し左側の電池表面に沿って流れ、第2のスリット72から導入される冷却風が、隙間に対し右側の電池表面に沿って流れるようになる。このように、それぞれの電池の表面に新規な冷却風を確実に導くことができるようになる。そのため、本実施形態によれば、電池冷却の効率性をさらに高めることができる。また、スリットの幅S1,S2を独立して調整して、隙間に対する左右の電池の冷却の程度をある程度調整することも可能となり、電池温度の均一化の面でも効果的である。
【0068】
また、上記2つの実施形態においては、スリットが連続した1つの長穴である場合を説明したが、スリットとして他の形態のものも使用可能である。例えば、複数個の長穴81、81を長軸方向に並べて連設してスリット(図11(a)参照)としたり、複数個の角穴82、82を並べて連設してスリット(図11(b)参照)としたり、多数の小さな穴83,83を、細長い領域の中に(例えばメッシュ状に)分散させて設けてスリットとしたりすることができる(図11(c)参照)。要するに、本発明においては、電池間の隙間に沿う方向に、流れ制御板に細長い領域にわたって貫通穴や通気性がある部分を設けることにより、その部分をスリットとして使用できる。
【0069】
上記実施形態の説明では、電池間の隙間に沿う方向に延在するスリットを流れ制御板に設ける発明の形態について説明したが、流れ制御板に設けられるスリットを、スリット以外の形態の貫通穴に変更して本発明をより拡張した形態で実施することもできる。本発明が発揮する作用効果は、電池間隙間で発生する通気抵抗の大きさと、流れ制御板のスリットや貫通穴で発生する通気抵抗の大きさとで、流れ制御板のスリットや貫通孔で発生する通気抵抗の寄与が大きくなることに起因している。従って、スリットと通気抵抗が同等となるような貫通穴を流れ制御板に設けて本発明を実施することもできる。
【0070】
さらに、発明者は、流れ制御板を通過する冷却風流れの検討を行った。そして、流れ制御板に設けられた貫通穴を通過する冷却風流れの通気抵抗は、貫通穴の断面積Ahによって支配されることをつきとめた。そして、通気抵抗は、おおむね貫通穴の断面積Ahの2乗に反比例することがわかった。
【0071】
さらに、発明者は、流れ制御板の貫通穴を通過する冷却風流れの通気抵抗を、貫通穴の形状をいろいろ変更して測定した。即ち、試験装置の冷却風通路に冷却風をさえぎるように流れ制御板を設けて、流れ制御板に形状(特に貫通穴の縦横比)を変更した貫通穴を設けて、一定風量の冷却風を流して、流れ制御板の上流側と下流側の圧力差を計測して通気抵抗を測定した。試験においては、貫通穴の開口面積は200平方mm、風量は22L/分となるように行った。
【0072】
試験を行った開口穴の形状と、通気抵抗の測定結果を表1に示す。通気抵抗は、貫通穴を貫通穴Aの形状(100mm×2mmの細長い貫通穴形状)とした場合の通気抵抗で基準化して示している。
【0073】
【表1】
【0074】
測定結果によれば、貫通穴の縦横比が大きく変化しても、貫通穴の断面積が同じであれば、通気抵抗は大きく変化しないことがわかった。即ち、貫通穴の縦横比を大きく変化させても、通気抵抗に与える変化は2割以下に過ぎず、貫通穴の形状よりも貫通穴の断面積が通気抵抗に支配的であることがわかる。すなわち、断面積が同じであれば、細長いスリットも、一般形状の(例えば円形の)貫通穴も、ほぼ通気抵抗が等しくなる。
【0075】
従って、上記第一実施形態において説明された流れ制御板のスリットを、スリットと断面積が等しくされた貫通穴に置き換えても、第一実施形態と同様の作用効果が発揮されることが理解できる。貫通穴の形態はスリットのような細長い形態に限定されず、円形や楕円形、矩形(正方形、長方形)、ひし形など多様な形態の貫通穴とすることができる。
【0076】
従って、本発明は、複数の平板状の電池が所定間隔の隙間を隔てた積層状に並べられた組電池を電池ケース内に収容し、電池ケース内を通流する冷却風を、電池間の隙間を通過するように送って電池を冷却する電池冷却構造において、組電池の上流側または下流側には、冷却風の通路を遮断するように流れ制御板が配置され、流れ制御板には電池間隙間のそれぞれに対応して貫通穴が設けられて、該貫通穴を通じて流れ制御板の上流側から下流側に冷却風が流れるようにされると共に、互いに対応する貫通穴と電池間の隙間によって形成される通気経路が、それぞれ独立し互いに並列配置される通気経路となるようにされて、前記貫通穴の開口面積をAhとし、電池間の隙間を冷却風流れ方向に沿って見た際の断面積をAgとして、実質的にAh≦Agとなるような電池冷却構造という形態としても実施可能であり、第一実施形態と同様の作用効果が発揮される
【0077】
ここで、電池間の隙間の断面積Agとは、当該隙間を冷却風流れ方向に沿って見た際の隙間の断面積であり、より具体的には、電池間隙間の幅をd、電池の幅(図1の紙面奥行き方向の長さ)をWとして、Ag=d*W で求められる断面積である。
【0078】
そして、流れ制御板に設けられる貫通穴は任意の形状とすることができ、実質的にAh≦Agとなるように貫通穴を設定すれば、貫通穴部分の通気抵抗が全体の通気抵抗に対して支配的になって、流れ制御板にスリットを設けた第一実施形態と同様な作用効果を発揮しうることがわかる。
【0079】
なお、電池間の隙間に対して、複数の貫通穴が対応している場合には、それぞれの貫通穴の面積を加算して、加算した開口面積が電池間隙間の断面積よりも小さくなるようにすればよい。例えば、1つの電池間の隙間に対応する貫通穴が3つであり、それぞれの貫通穴の開口面積がA1,A2,A3であれば、3つの貫通穴の開口面積Ahを、Ah=(A1+A2+A3)で計算して、これが電池間隙間の断面積Agよりも小さくなる、すなわち、(A1+A2+A3)≦Agとなるように貫通穴の具体的寸法を決定すればよい。
【0080】
なお、互いに対応して設けられる貫通穴の開口面積Ahと電池間隙間の断面積Agとの大小は、それぞれの部位で発生する通気抵抗の大小の観点から見て、貫通穴で発生する通気抵抗が支配的となるように、実質的にAh≦Agとなっていればよい。表1に示したように、貫通穴の縦横比が1:1に近づくと通気抵抗が1〜2割程度大きくなる傾向が見られ、また、貫通穴の通気抵抗は貫通穴の開口面積の2乗に反比例するので、例えば円形や正方形状の貫通穴の開口面積Ahが電池間隙間Agの1.1倍程度であれば、実質的にAh≦Agである範囲に含まれる。
【0081】
また、第一実施形態において、スリットの幅をS、電池間の隙間をdとして、S/dの値が特定の数値範囲に入るとさらに特定の効果が得られることを示したが、これもまた、一般形状の貫通穴を設けた場合に拡張可能である。従って、貫通穴の開口面積をAh、電池間隙間の断面積をAgとする本実施形態においては、第一実施形態のS/dを、Ah/Agに置き換えることが可能であり、Ah/Agが特定の数値範囲に入ると、第一実施形態において示したような特定の効果が同様に得られる。
【0082】
即ち、17%≦Ah/Ag≦70%となるようにすれば、特許文献2に示された絶縁セパレータを挟持するタイプの電池冷却構造と比較しても、冷却風の通気抵抗を同等以下にでき、電池冷却システムの冷却の効率性を高めることができる。また、この範囲においては、電池が膨張して電池間の隙間が狭くなると、冷却条件は同じであっても、むしろ電池の温度を下げることができる。従って、膨張した電池の温度が膨張していない電池の温度よりも逆に低くなるようになり、膨張した電池の更なる膨張や劣化が抑制され、電池寿命の均一化に大きく貢献できる。
【0083】
そして、さらに、25%≦Ah/Ag≦50%となるようにすれば、特許文献2に示された絶縁セパレータを挟持するタイプの電池冷却構造と比較しても、電池温度を同等以下にでき、電池冷却システムの冷却の効率性を高めることができる。さらに、この範囲においては、特に、電池間隙間が半減するような厳しい条件下での冷却風量変化を効果的に抑制できる。
【0084】
また、スリット・貫通穴や電池間の隙間によって形成される冷却風通路を互いに独立して並列配置されたものとする際の具体的構成には、第1実施形態に示した凸条52に代えて、他の構成を採用することもできる。例えば、凸条52に代えて、流れ制御板の平板部分を電池端縁に直接接触させても良いし、流れ制御板と電池端縁の間に別部材である仕切り部材を設けてもよい。また、これら部材の接触部には、必要に応じてゴムやエラストマーや発泡樹脂などからなるシール部材を設けることが好ましい。
【0085】
また、所定の間隔の隙間を隔てて積層配置される電池の間には、適宜スペーサを挟持させて、電池の過大な膨張を抑制することも、本発明の実施において好ましい形態である。図4や図5などにおいて見られるように、電池間の隙間が過小になると(例えば、d/d0<40%の程度になると)、本発明の実施例においても、冷却風流量の減少や電池表面温度の上昇が顕著となるので、本発明を実施する際には、電池間に挟持するスペーサなどの膨張変位の制限手段を付加的に設けて、電池間の隙間が過小になることを防止するようにするのが好ましい。電池の膨張抑制部材としてのスペーサ部材としては、棒状のものやくし状のもの、板状のものなどが例示される。スペーサ部材は、電池の周りに巻き回したリング状のもの(ゴム製バンドなど)であっても良い。これらスペーサ部材は、冷却風の流れを妨げないように冷却風流れ方向に沿って配置されるようにすることが好ましい。スペーサ部材の材料は、金属や合成樹脂等の比較的硬質な材料であっても良いが、エラストマやゴムといった比較的軟質な材料であっても良い。
【0086】
このようなスペーサ部材を本発明の流れ制御板やスリットの構成と併用するようにすれば、電池間の隙間が過小になることが確実に抑制・防止できるので、本発明の効果をより確実に発揮することができる。
【0087】
また、流れ制御板を設ける位置は、組電池の上流側や下流側のいずれであっても良いが、流れ制御板が組電池の上流側にあったほうが、スリットから勢い良く吹き出す冷却風を平板状電池の表面に当てて、電池の冷却効率を高めやすくなるので、流れ制御板は、組電池の上流側に設けられることが好ましい。
【0088】
第1実施形態においては、組電池構造体1を構成するホルダ部材3やエンドプレート4を板状の部材で構成して角筒状の通気経路とする実施形態について説明したが、このように構成した場合には、これら部材を電池ケースの一部として使用することができる。ケース単独で冷却風通路を構成できる電池ケースを有する場合には、必ずしも、ホルダ部材やエンドプレートを板状とする必要はなく、組電池の構造が適切に維持可能な範囲で、棒状部材やブロック状部材、バンド部材などにより構成してもよい。また、これら部材は、適宜、分割して構成することもできる。
【0089】
また、上記実施形態の説明においては、中空箱状の電池ケース1に組電池が収容される形態について説明したが、電池ケースの実施形態は、ケース専用に成形された中空箱状のものに限定されるものではなく、電池ケースは、パネル部材やブロック部材などの複数の部材を組み合わせて構成されるものであってもよい。例えば、車体のフロアパネル上に組電池を配置して、組電池を取り囲むように、断熱パネルや電極パネルを設けて、フロアパネルや断熱パネル、電極パネルの間を冷却風通路とした電池ケースを構成するようにすることもできる。このように、本発明における電池ケースには、専用の構成部材で構成された電池ケースのほか、組電池の周辺に配置される部材を利用・兼用して構成される電池ケースを含む。
【0090】
組電池を構成する電池の種類には、一次電池、二次電池(リチウムイオンバッテリー、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池など)、二重電気キャパシタなどが例示できる。電池は、上記実施形態においては、平板状のものについて説明したが、その表面は完全に平坦である必要はなく、冷却性向上や電池外装缶の剛性向上のための凹凸条などを有する電池であってもよい。
【0091】
組電池が使用される目的・用途も、自動車用に限定されるものではなく、例えば、風力発電装置や太陽電池発電装置などにおいて発電電力を平準化する目的で二次電池が使用される用途など、広い用途に使用される組電池の冷却に本発明は活用できる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車、発電装置などに使用される大容量組電池の電池冷却構造として使用することができ、それら組電池を構成する平板状電池を効果的に冷却することができると共に、電池の膨張に対するロバスト性が高いなど、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0093】
1 組電池構造体
2 電池
3 ホルダ部材
31 保持部
4 エンドプレート
5 流れ制御板
51 スリット
52 凸条
6 電池ケース
7 流れ制御板
71,72 スリット
8 セパレータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池が組み合わされた組電池を冷却する電池冷却構造に関する。特に平板状の電池が所定間隔を隔てる積層状態で配置される組電池を冷却風により冷却する空冷式の電池冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などには、動力源として二次電池を集合させた組電池が用いられている。充電や放電の過程において、電池が過熱したり電池間の温度差が大きくなったりすると、電池の性能が低下したり、電池が損傷することが起こるため、通常、これら組電池を電池ケースに収納して、冷却風を電池ケース内に送り込んで組電池を冷却することが行われる。
【0003】
組電池に用いられる電池には、リチウムイオン電池のように、略平板状の電池があり、このような電池はその形状から角型電池と呼ばれることもある。
平板状の電池を組電池として構成する場合には、冷却風による冷却が効率的に行われるように、電池の広い面同士が対向するように、互いに所定の間隔を隔てるように平板状電池を積層状態に配置して、電池間の隙間に冷却風を送って電池を冷却することが一般的に行われている。
【0004】
そして、これら組電池の冷却にあたっては、組電池を構成する複数の電池の温度を極力均一化し、かつ、効率的に電池を冷却することが必要であり、そのために、さまざまな組電池構造や電池冷却構造が提案されるに至っている。
例えば、特許文献1には、所定間隔を隔てて配置された平板状電池の間に分配された冷却風を導いて、複数の電池が均一に冷却されるようにした組電池冷却構造が開示されている。また、特許文献2には、電池と電池の間に絶縁セパレータを挟みこんで、絶縁セパレータの凹凸形状によって冷却風通路(冷却隙間)を形成し、電池間の絶縁性を確保した組電池構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−254627号公報
【特許文献2】特開2010−153141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気自動車などに使用される組電池は、システムの軽量化や省スペース化のために、電池外装缶が薄型化される傾向にある。ここで、リチウムイオン電池のような平板状の電池で電池外装缶が薄型化されると、電池の温度変化や内部でのガスの発生などによって、電池の広い面が内圧によってふくれる傾向が顕著となりやすい。
【0007】
特許文献1に記載の組電池構造(図12に示す)のように、平板状電池と電池の間に特に電池の膨張を拘束する部材を有しない組電池構造の場合には、電池の広い面が膨張することにより、電池間の隙間が小さくなって、その隙間に空気が流れにくくなり、その隙間に隣接する電池の冷却が悪くなって、電池の均一な冷却がうまくできなくなったり、一部の電池が異常加熱したりするおそれがある。特許文献1に開示されたような電池冷却構造では、電池間の隙間の幅が、電池間に流れる冷却風の流量を直接的に規定するために、電池の膨張による冷却性の阻害と電池温度のばらつきが顕著となりやすい。電池温度にばらつきが生ずると、温度の高い電池の膨張や劣化が進行しやすくなり、電池寿命にもばらつきが生ずることになり、組電池としての寿命が短くなるので好ましくない。
【0008】
特許文献2に記載されたような、凹凸板状の絶縁セパレータを電池の間に挟みこむタイプの組電池構造であれば、電池の膨張が積極的に抑制されると共に、電池間の隙間が適切に維持され、冷却は比較的均一に行われうるが、このような組電池構造は、多数の構成部品を精度良く製造して組み付ける必要があり、製造コストが高くなるほか、電池間の隙間の寸法変化をさせないために、システムには一定の剛性や強度が必要とされて、その軽量化にも限界があった。
【0009】
即ち、本発明の目的は、組電池を構成する電池が膨張して、電池間の冷却風通路の幅が変化しようとも、電池を効果的に冷却し、組電池の電池温度の均一性を維持し、ひいては電池寿命の均一化に貢献できる電池冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、冷却風を用いた電池冷却構造において、電池間隙間に対応したスリットや貫通穴を有する流れ制御板を冷却風通路に設けて、スリット(貫通穴)と電池間隙間で構成される個々の冷却風通路を互いに独立して並列配置し、それぞれの冷却風通路において、このスリットによって冷却風を絞って風量調整を行うようにすると共に、スリットの大きさを電池間隙間の大きさ以下の大きさにすれば、電池がふくれて電池間の隙間が変化しようとも、電池温度の変化が抑制されることを発見した。そして、これを応用すれば、風量変化や、風量配分の乱れや電池温度の不均一化を防止もしくは抑制できることを知見し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、複数の平板状の電池が所定間隔の隙間を隔てた積層状に並べられた組電池を電池ケース内に収容し、電池ケース内を通流する冷却風を、電池間の隙間を通過するように送って電池を冷却する電池冷却構造であって、組電池の上流側または下流側には、冷却風の通路を遮断するように流れ制御板が配置され、流れ制御板には、電池間の隙間に沿う方向に延在するスリットが設けられて、該スリットを通じて流れ制御板の上流側から下流側に冷却風が流れるようにされると共に、電池間隙間のそれぞれに対応してスリットが設けられ、互いに対応するスリットと電池間の隙間によって形成される通気経路が、それぞれ独立し互いに並列配置される通気経路となるようにされて、電池間の隙間における冷却風流れ方向に沿って見た際に、該スリットの幅Sが、電池間の隙間の幅dと比べ、S≦dとされた電池冷却構造である。
【0012】
本発明においては、スリットの幅Sを、電池間の隙間の幅dと比べ、17%≦S/d≦70%とすることが好ましく、さらに、スリットの幅Sを、電池間の隙間の幅dと比べ、25%≦S/d≦50%とすることが特に好ましい。また本発明においては、電池間の隙間には、当該電池間隙間の幅が、隙間の初期幅の40%以下に狭まることを抑制可能なスペーサ部材が設けられることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、複数の平板状の電池が所定間隔の隙間を隔てた積層状に並べられた組電池を電池ケース内に収容し、電池ケース内を通流する冷却風を、電池間の隙間を通過するように送って電池を冷却する電池冷却構造であって、組電池の上流側または下流側には、冷却風の通路を遮断するように流れ制御板が配置され、流れ制御板には電池間隙間のそれぞれに対応して貫通穴が設けられて、該貫通穴を通じて流れ制御板の上流側から下流側に冷却風が流れるようにされると共に、互いに対応する貫通穴と電池間の隙間によって形成される通気経路が、それぞれ独立し互いに並列配置される通気経路となるようにされて、前記貫通穴の開口面積をAhとし、電池間の隙間を冷却風流れ方向に沿って見た際の断面積をAgとして、実質的にAh≦Ag とされた電池冷却構造である。ここで、貫通穴の形態はスリットのような形態に限定されず、円形や楕円形、矩形(正方形、長方形)、ひし形など多様な形態の貫通穴とできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、互いに対応して設けられるスリットと電池間隙間により、それぞれ独立し互いに並列配置される通気経路が構成される。スリットの幅Sは電池間隙間の幅d以下(すなわちS≦d)とされているために、これら独立した通気経路における冷却風の流量や流量配分を決定する通気抵抗を、各流路に設けられたスリットにより独立して調整することができる。従って、各流路への流量配分は、あらかじめスリット幅を調整しておくことにより行うことができる。
そして、各流路におけるスリットの幅Sが電池間隙間の幅dよりも小さく(S≦d)されているため、電池間隙間が電池の膨張等により変化しても、流路全体の通気抵抗に生ずる変化は限定的なものなり、冷却風の流量変化が抑制される。そして、電池間隙間の減少による電池温度の上昇も抑制される。この温度上昇抑制効果は、電池間隙間の幅が初期幅の40%〜70%になる程度に電池が膨張する条件下で特に顕著なものとなる。
【0015】
従って、本発明によれば、電池の膨張などにより電池間隙間が変化しても、各流路の流量やその配分および電池温度を実質的に維持して、電池の冷却性向上および電池温度の均一性および電池寿命の均一化に貢献できる。
【0016】
そして、さらに、スリットの幅Sと、電池間の隙間の幅dを、17%≦S/d≦70%となるようにすれば、特許文献2に示された絶縁セパレータを挟持するタイプの電池冷却構造と比較しても、冷却風の通気抵抗を同等以下にでき、電池冷却システムの冷却の効率性を高めることができる。さらに、この範囲においては、驚くべきことに、電池が膨張して電池間の隙間が狭くなると、冷却条件は同じであっても、むしろ電池の温度を下げることができる。従って、膨張した電池の温度が膨張していない電池の温度よりも逆に低くなるようになり、膨張した電池の更なる膨張や劣化が抑制され、電池寿命の均一化に大きく貢献できる。
【0017】
そして、さらに、スリットの幅Sと、電池間の隙間の幅dを、25%≦S/d≦50%となるようにすれば、特許文献2に示された絶縁セパレータを挟持するタイプの電池冷却構造と比較しても、電池温度を同等以下にでき、電池冷却システムの冷却の効率性を高めることができる。さらに、この範囲においては、特に、電池間隙間が半減するような厳しい条件下での冷却風量変化を効果的に抑制できる。
【0018】
そして、さらに、電池間の隙間に、当該電池間隙間の幅が初期幅の40%以下に狭まることを抑制可能なスペーサ部材を設けるようにすれば、本発明を適用した電池冷却システムにおける電池温度の上昇を特に効果的に抑制できる。
【0019】
また、本発明においては、電池間隙間の方向に延在するスリットを、開口面積Ahの貫通穴に置き換えても、電池間の隙間を冷却風流れ方向に沿って見た際の断面積をAgとして、実質的にAh≦Agとなるように貫通穴を設定すれば、同様の作用効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の電池冷却構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態の電池冷却構造に用いられる組電池構造と流れ制御板の構成を示す分解図である。
【図3】本発明の実施形態に用いられる流れ制御板を示す斜視図である。
【図4】電池間隙間変化に対する流量変化の関係を、スリット幅ごとに示すグラフである。
【図5】電池間隙間変化に対する電池温度変化の関係を、スリット幅ごとに示すグラフである。
【図6】電池間隙間が変化していく際の電池温度変化の最小値を、スリット幅に対して示すグラフである。
【図7】スリット幅に対する冷却風流量変化を、比較例を基準として示すグラフである。
【図8】電池間隙間の変化に対する電池温度の変化を、比較例を基準としてスリット幅ごとに示すグラフである。
【図9】電池間隙間が変化していく際の電池温度変化の最小値を、比較例の温度変化を基準として、スリット幅に対して示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態の電池冷却構造における流れ制御板付近を示す断面図である。
【図11】本発明におけるスリットの他の形状例を示す図である。
【図12】従来の電池冷却構造の例を示す図である。
【図13】従来の電池冷却構造の例(比較例2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面に基づいて、本発明の電池冷却構造の実施形態について、ハイブリッド自動車用の組電池を冷却する電池冷却構造を例にして説明する。図1は本発明の電池冷却構造の第1実施形態の断面図である。また、図2は本実施形態の電池冷却構造に組み込まれる流れ制御板や組電池の構造および構成を分解図で示した図である。
【0022】
図1に示す本発明実施形態の電池冷却構造について説明する。複数の平板状電池2,2が所定間隔の隙間を隔てて積層状に配置された組電池構造体1とされて、電池ケース6の中に配置されている。平板状電池2、2は図1の紙面奥行き方向に延在するように配置されていて、電池2,2は、電池ケース6の内面や隣接する電池との間に所定の間隔(隙間)を有し、その隙間に冷却風が流れるように、スペーサや支持部材によって、箱状の電池ケース6の内部に収容、支持されている。
【0023】
電池ケース6は金属や合成樹脂により成形された中空の箱状の部材であり、電池ケース6には冷却風導入口61と冷却風導出口62が設けられて、電池ケース6の内部空間が冷却風通路となる。そして電池ケース6は、冷却風導入口61や冷却風導出口62がダクトや送風ファンなどの周辺部材と接続されて一連の冷却風通路となって、組電池の冷却に使用される。
【0024】
本実施形態では、冷却風導出口62の下流側に送風ファン(図示せず)が設けられて、図の左上の冷却風導入口61の上流側に接続される冷却風ダクト(図示せず)から、冷却風が電池ケース6の内部に流れ込み、電池2,2や電池ケース6の間の隙間を通りながら電池を冷却して、冷却風導出口62から図の右下側へと暖められた冷却風が流れ出ていく。
【0025】
本実施形態の電池冷却構造に組み込まれる組電池構造体1について説明する。図2には本実施形態の電池冷却構造の分解図を、電池ケースを省略して示しており、組電池構造体1は、電池2とホルダ部材3とエンドプレート4とが一体に組み立てられて構成されている。組電池を構成する平板状の電池2,2は、互いに所定の間隔を隔てて積層状態に配置されている。電池2,2は直列あるいは並列に電気的に接続されて組電池を構成する。本実施形態においては、電池モジュールを構成する電池はリチウムイオンバッテリーであり、電池2は平板状(扁平な直方体状)の形状となっている。電池2,2は広い平坦面が互いに対向するように積層されて、それぞれの電池の側面(広い平坦面に隣接する面)に端子が設けられている。
【0026】
電池2,2が積層状態で位置決めされて保持されるために、電池2,2の側面に対向するように、一対のホルダ部材3,3が設けられる。ホルダ部材3は電池2,2の両端の側面部全体を覆うような板状に形成されるとともに、ホルダ部材3、3には、電池の両端部21,21をそれぞれ保持する形状の保持部31,31が設けられている。本実施形態においては、保持部31は電池の両端部21を取り囲んで嵌合するような形状に、ホルダ部材本体から突出して設けられている。ホルダ部材には、電池の端子部分や固定用突起等が貫通する貫通穴Hが設けられている。ホルダ部材の貫通穴から外部に露出させた電池端子を互いに結線して、組電池として機能させる。
【0027】
積層状に位置決めされた組電池の積層方向の両端の電池の広い面に対向するように、一対のエンドプレート4、4が設けられている。エンドプレート4、4には、一対のホルダ部材3,3が取付けられて、ボルトやバンドなどによって固定され、互いに電池の固定構造を維持する働きをする。エンドプレート4,4はホルダ部材の取付けが適切に行われる限りにおいて、省略あるいは簡素化することができる。そして、電池2,2は、電池ケース6内に、ホルダ部材やエンドプレートを備えた組電池構造体1として組み込まれる。
【0028】
本実施形態においては、ホルダ部材3,3とエンドプレート4,4とは、角筒状の通気経路を構成して、冷却風通気経路の一部を構成するようにされている。このようにすれば、ホルダ部材やエンドプレートを、冷却風通路を画成する電池ケース6として兼用することができる。なお、必ずしも、ホルダ部材3,3やエンドプレート4,4によって冷却風通気経路を構成しなければならないわけではなく、もっぱら電池ケースによって通気経路を構成することもできる。
【0029】
本発明においては、電池ケース6の内部に、電池ケースの内部空間を冷却風導入口側と冷却風導出口側とに仕切り、冷却風の流れをさえぎるように、流れ制御板5が設けられている。そして、本実施形態においては、流れ制御板5は組電池の上流側の端縁部を覆うような大きさとされて、組電池よりも上流側となる位置に、組電池の端縁部と略平行となるように、電池ケース6に対して一体に取り付けられている。
【0030】
図1にその断面を、図2および図3にその斜視図を示すように、流れ制御板5には、複数のスリット51,51が電池間の隙間に沿う方向に延在して設けられている。本実施形態においては、スリット51,51は、電池間の隙間のそれぞれに対応して、1つの隙間に対して1本のスリット51が、電池間の隙間に対向する位置(即ち電池の積層方向において互いに隣接する電池の中間位置)に設けられている。また、スリット51は、電池間の隙間の長さ方向(図1における紙面奥行き方向)において、隙間の全長にわたる長さの長穴状に設けられている。
【0031】
スリット51,51は、流れ制御板5の上流側空間と下流側空間とを互いに連通するように流れ制御板5を貫通して設けられている。そして、流れ制御板5によって流れをせき止められた冷却風は、流れ制御板に設けられたスリット51を通じて、上流側から下流側に流れる。
【0032】
さらに、本実施形態においては、流れ制御板5が電池2の上流側端縁と対向する部分に凸条52,52が形成されて、凸条52の先端部が電池の上流側端縁に当接し、シールするようにされている。このような構成をとることによって、互いに対応して設けられたスリット51と電池間の隙間とによって構成される冷却風通路が、それぞれ独立した複数の冷却風通路となる。これら独立した冷却風通路は、電池ケース6の中で互いに並列に配置されて設けられることになる。そして、それぞれのスリットの幅を調整することによって、それぞれの電池間隙間を流れる冷却風の流量を独立して調整できるようになる。
【0033】
スリット51,51の幅Sは、電池間の隙間の幅d以下に(即ちS≦dとなるように)されており、各電池間の冷却風流れは、スリット51,51によって絞られて、その流量が調整される。例えば、本実施形態においては、電池間の隙間を流れる冷却風の流れ方向(図1の上下方向)に沿って見て、スリット51の幅Sが、電池間の隙間の幅dの40%(即ちS/d=0.4)にされている。
【0034】
後述するように、電池の膨張などによる電池間の隙間の変化に対して冷却風風量の変化や電池温度の変化を少なくし、電池を効果的に冷却するためには、スリット51の幅Sを電池間の隙間の幅dに対し100%以下にすればよく、より好ましくは、70%以下、特に好ましくは50%以下にすると良い。一方スリット51の幅Sが小さすぎると、冷却風の送風抵抗が大きくなるので、スリット51の幅Sは電池間の隙間の幅dの10%以上にすればよく、より好ましくは17%以上、特に好ましくは25%以上にすると良い。
【0035】
上記電池冷却構造を構成する電池ケースの製造方法は、公知の製造方法により行うことができ、例えば、電池ケース6は開口状の箱と蓋に分けたケース部材を合成樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の射出成形により形成することができる。流れ制御板5も合成樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の射出成形により形成することができ、可能であれば、電池ケース6のケース部材と一体成形してもよい。もちろん、流れ制御板5を金属板や合成樹脂の射出成形などによりケースとは別体に作成して、電池ケース組み立て時に所定位置に取り付けるようにしてもよい。
【0036】
上記電池冷却構造に組み込まれる組電池構造体1は、公知の製造方法により構成することができる。例えば、ホルダ部材3やエンドプレート4は例えば合成樹脂の射出成形により製造することができ、互いにボルトやクリップなどの締結部材を介して結合して、上記組電池構造を構成できる。強度や熱的要件等の要件に応じて、これら部材を金属部材で構成することもできる。
【0037】
電池ケースやホルダ部材やエンドプレートにおいてシール性が必要となる部位には、ゴムやエラストマや発泡樹脂などからなるシール材を備えさせることが好ましい。また、これら部材について、少なくとも一部をゴムやエラストマにより一体成形することも好ましい実施の形態である。
【0038】
完成した電池構造体1を電池ケース6内の所定位置に配置し、流れ制御板5を組み込んだ状態で電池ケースの蓋を閉じて、上記実施形態の組電池が収容された電池ケースおよび電池冷却構造が完成される。
【0039】
本発明の電池冷却構造による作用と効果を説明する。
【0040】
本発明では、上記第1実施形態のように、互いに対応して設けられたスリット51と電池間の隙間とが一連の通気経路を構成し、凸条52等によって、電池間の隙間ごとにそれぞれ独立した冷却風通路が並列配置されて構成されるようになる。従って、それぞれの通気経路に設けられたスリットの幅や大きさを調整することによって、それぞれの電池間隙間を流れる冷却風の流量を独立して調整できるようになる。電池ケース6の構成や形状の制限により、それぞれの電池間の隙間に供給される冷却風風量に差が生じやすい場合であっても、このような構成をとることにより電池間の冷却風配分のばらつきを少なくすることができて、電池温度の均一化に効果的である。
【0041】
さらに、本発明の組電池構造においては、流れ制御板に設けられたスリットの幅Sが、電池間の隙間の幅dと比べてS≦dという範囲となるようにされているので、組電池を構成する電池が膨張して冷却風通路(電池間の隙間)の幅が変化しようとも、個々の冷却風通路の通気抵抗に及ぼす影響が少なくなる。そのため、本発明によれば、冷却風の流量変化を抑制可能であり、電池膨張の影響を抑制しながら電池を効果的に冷却し、組電池の電池温度を均一化できる。
【0042】
図12に示す、特許文献1に記載されたような従来の電池冷却構造(図12として特許文献1の中の図3を引用する)においては、電池間の隙間を流れる冷却風の抵抗は、主として電池間の隙間の幅により決定し、幅が狭ければ流量が小さくなり、幅が大きければ流量が大きくなっていた。
【0043】
一方、本発明の電池冷却構造によれば、組電池の上流又は下流側に設けた流れ制御板のスリットの幅が電池間隙間以下にされているために、冷却風流れに生ずる通気抵抗の発生要因におけるスリットの寄与が大きくなっている。すなわち、本発明においては、スリットにより流れを絞って冷却風風量を調整することが可能になる。一方、電池間の隙間の大きさの変化が、冷却風風量に与える影響は相対的に小さくなり、本発明によれば、電池間の隙間が多少変化しても、冷却風風量の変化が抑制されるようになる。
【0044】
発明者は上記効果に関し、熱流体シミュレーション検討によって、スリットと電池間隙間で構成される独立流路の部分の通気抵抗、流量および電池表面温度の計算を行った。
独立流路のモデルとして、上流側に幅Sのスリットが設けられ、その下流側が電池間隙間に相当する幅dの流路とされた流路を想定し、2次元流れを仮定して前記流路の最上流と最下流の間に所定の圧力差を与えて、その際の冷却風流量を求める数値流体解析を行うと共に、所定の冷却風温度と電池の発熱量を与える熱伝導解析を前記流体解析に組み合わせて電池表面温度を求めた。そして、電池の膨張により、電池間隙間dが小さくなっていった場合の流量変化や電池表面温度の変化を求めた。
【0045】
そして、上記第1実施形態に対応する実施例として、流れ制御板に設けられたスリットの幅Sを、電池間隙間の幅(初期幅)と対比して、いろいろと変更して、上記計算を行った。なお、以下のシミュレーション結果の説明部分においては、電池間の隙間の幅を、電池が膨張する前の初期幅をd0とし、電池が膨張して狭くなっていく際の幅をdとして説明する。
一連の検討において、スリット51の幅Sについては、電池間の隙間(初期幅)d0を固定して、電池間の初期隙間の基準寸法d0を基準とするスリットの幅Sの値即ちS/d0の値が17%、34%、52%、69%、86%、100%となるような幅とした場合について熱流体シミュレーション計算を実行した。
【0046】
一連のシミュレーションにおいて、計算を行った系の代表的な諸元は以下のとおりである。電池間の初期隙間は3mmとし、冷却風流れ方向に沿う電池の長さは110mmとした。そして、スリットが設けられた流れ制御板の厚さは2mmとした。流れの解析は、電池上流に設けた流れ制御板の上流側から、電池間隙間の最下流部に至る区間の圧力差を55Paとして計算し、流れ場および熱伝導の場の定常解を求めた。
【0047】
また、比較例1として、電池隙間上流の流れ制御板やスリットが存在しない例(特許文献1の従来技術に相当する)を計算した。比較例1は計算結果のグラフでは「スリットなし」と表記している。
【0048】
計算結果を図4ないし図9に示す。
図4には、電池間隙間が小さくなっていく際の冷却風流量変化を、スリット幅を変更して計算した結果を示す。横軸には、電池間隙間(電池間流路幅)の変化をd/d0として示し、ここで、d0とは電池間隙間の初期幅(電池が膨張する前の電池間隙間)である。縦軸には、冷却風通路を流れる流量Qの変化をQ/Q0として示し、ここで、Q0とは電池が膨張する前の初期流量である。
【0049】
図4によれば、電池が膨張して電池間隙間が狭くなる(d/d0が小さくなる)と、冷却風流量が初期流量に比べ小さくなる(Q/Q0が小さくなる)傾向がわかる。特に、比較例1(スリットなし)においては、電池間隙間が減少するのとほぼ比例するように、流量が減少してしまうのに対し、本発明の各実施例においては、電池間隙間が減少した際の流量変化が抑制されていることがわかる。特にスリット幅をS/d0≦70%とした際には、流量変化の抑制効果が顕著なものとなり、さらに、S/d0≦50%とすれば、電池間隙間が80%に減少した際の流量変化を、比較例1と比べて1/3以下にすることができ、その効果がさらに顕著なものとなる。また、より細いスリットを設けることにより、電池間隙間がより狭くなった領域まで、流量変化抑制効果を維持できることがわかる。例えば、S/d0≦34%とすることにより、電池間隙間が40%に減少した際の流量変化を、比較例1と比べて2/3以下にすることができ、S/d0≦17%とすることにより、電池間隙間が40%に減少した際の流量変化を、比較例1と比べて1/3以下にすることができる。
【0050】
図5には、電池間隙間が小さくなっていく際の電池表面温度変化を、スリット幅を変更して計算した結果を示す。電池表面温度の変化は、電池の全表面の温度の平均値と、流入する冷却風との温度差(T)を計算し、グラフ化している。グラフの縦軸には、電池表面温度変化(T−T0)/T0を示し、ここでT0は電池が膨張する前の初期状態における電池表面温度と流入する冷却風温度の差である。電池表面温度変化(T−T0)/T0の値が正(プラス)であることは、電池隙間の幅の減少により電池表面温度が上昇したことを示し、逆に、(T−T0)/T0の値が負(マイナス)であることは、電池隙間の幅の減少により電池表面温度が下がったことを示している。なお、図5においては、S/d0が86%と100%の計算例の線が互いにほぼ重なっており、S/d0が52%と70%の計算例の線も互いにほぼ重なっている。
【0051】
図5によれば、本発明実施例によれば、驚くべきことに、電池間隙間が60%に減少するまでの間は、むしろ、電池間隙間が減少すると電池表面温度が下がる効果がある(即ち、(T−T0)/T0がマイナスとなる)ことがわかる。一方、比較例1(スリットなし)では、そのような効果が非常に弱く、電池間隙間が60%程度まで減少すると電池表面温度が上がってしまうことがわかる。
【0052】
本発明の実施例において、電池間隙間が減少すると電池表面温度が下がる効果は、以下のようなメカニズムに基づくものであると推定される。本発明実施例においては、電池間隙間dが減少しても、流量Qは維持される。ここで、電池間隙間dが減少すると、電池間の流路断面積が小さくなるため、流量Qが維持されるのであれば、冷却風の流速が増え、電池表面と冷却風の熱交換の効率が高められる。この熱交換効率の向上効果により、本発明実施例においては、電池間隙間dが減少しても、流量Qの減少が顕著となるまでの間(d/d0≧60%である間)は、電池表面温度が下がるものと推定される。
【0053】
図5に示された、電池間隙間の減少により電池表面温度が下がる効果が、スリット幅により変化する様子を図6に示す。図6では、横軸にスリット幅を電池間隙間(初期値)で規格化したS/d0を、縦軸には、図5のグラフにおける電池表面温度変化(T−T0)/T0の最小値をプロットしている。
【0054】
比較例1(スリットなし)では、電池表面温度変化の最小値は−0.5%であり、ほとんど効果が見られない一方で、本発明実施例においては、電池表面温度変化の最小値が−1%ないし−5%となっており、電池が膨張し、幅が減少した隙間に面する電池の温度がむしろ下がることがわかる。特に、スリットの幅をS/d0が10%〜70%となるように設定すれば、電池表面温度変化の最小値を−2〜−5%にすることができ、上記電池冷却効果を効果的に得ることができる。
【0055】
本発明の上記実施例において生じている、電池間隙間が減少すると電池表面温度がむしろ下がるという、顕著な電池冷却効果は、組電池の寿命延長を図る上で、非常に有用である。従来の電池冷却システムによれば、電池が膨張すると、膨張により狭くなった電池間隙間には冷却風の流れがうまく流れなくなって、その隙間に面する電池の温度が上昇し、電池の劣化やさらなる電池の膨張が進むという傾向があり、電池の膨張や劣化が加速的に進みやすかった。そのため、電池劣化や電池寿命の均一化を図ることが難しく、一部の電池の膨張・劣化により組電池全体の寿命が短くなってしまう傾向があった。
【0056】
ところが、本発明によれば、電池の膨張により、電池間隙間が小さくなると、むしろその隙間に面する電池の表面温度が下がり、電池の劣化や更なる膨張が他の電池と比べて抑制されるようになる。従って、それぞれの電池の寿命が均一化され、組電池全体の寿命も長くなる。また、電池間隙間が小さくなった際の、加速度的な電池温度上昇が抑制されるので、電池冷却システムのロバスト性も向上する。
【0057】
本発明の実施例では、スリット幅Sが小さいと、通気抵抗が大きくなって、風量が少なくなる傾向がある。図7には、スリット幅(S/d0)を変更した際の冷却風流量の変化を示す。縦軸の冷却風流量は、後述する比較例2における冷却風流量Q_HOLDERにより規格化し、Q/Q_HOLDERとして示している。ここで、比較例2とは、特許文献2に示されたような絶縁セパレータが電池間に挟持された電池冷却構造について、同様の計算を行った例である。比較例2は、図13にその計算モデルの概要を示すように、電池2,2の間の幅d0の電池間隙間の中央部に、セパレータ8,8を模した厚みd0/3の板を置いた冷却風通路が設けられ、本発明のようなスリットや流れ制御板が存在しない電池冷却構造として計算を行っている。
【0058】
図7に示すように、本発明においては、スリットの幅が大きい方が、電池冷却系の通気抵抗を低くでき、所定の圧力差(上記計算例では55Pa)に対してより多くの冷却風を流せる。また、本発明の実施例によれば、スリット幅SがS/d0≧17%となるようにされていれば、同様な諸元の比較例2と比較しても、より多くの冷却風を流すことができ(すなわち通気抵抗が低い)、電池冷却システムの負荷を低減できる。
【0059】
図8には、電池間隙間が減少していく際の電池表面温度の変化を、比較例2の電池表面温度を基準として、スリット幅ごとに示している。縦軸には、電池表面温度を比較例2の電池表面温度T_HOLDERで規格化した、T/T_HOLDERを示している。
【0060】
さらに、図9には、スリット幅によって、電池表面温度が比較例2と比べてどのように変化するかを示す。図9では、縦軸に、図8と同じく電池表面温度を比較例2の電池表面温度T_HOLDERで規格化したT/T_HOLDERを、横軸にはスリット幅をS/d0で示している。
【0061】
図9によれば、本発明の実施例においては、S/d0≧25%となる領域において、電池表面温度が比較例2と比べて低くできる(即ち、T/T_HOLDER≦100%とできる)という効果が得られ、特許文献2に示された絶縁セパレータを電池間に挟持するタイプの電池冷却構造と比較しても、電池表面温度を低くできるという利点がある。
【0062】
以上のように、スリットの幅を対応する電池間隙間の幅以下とすれば、電池冷却システムとして実用的な冷却風風量を流しながら、電池間の隙間が変化しても冷却風風量の変化を抑制可能とすることができ、電池を効果的に冷却し、組電池の電池温度の均一性を維持し、ひいては電池寿命の均一化に貢献できる。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその説明を簡略化または省略する。
【0064】
まず、流れ制御板に設けられるスリットの変更例を説明する。電池間の隙間に対応して設けられるスリットは、必ずしも上記実施形態のように1対1に対応して設けられなければならないわけではなく、1つの電池間隙間に対してそれぞれ2本もしくはそれ以上のスリットを設けて、本発明を実施することもできる。
【0065】
例えば、図10には、本発明の第2実施形態の電池冷却構造について、電池2,2と流れ制御板7の断面を示す。本実施形態においては、1つの電池間隙間に対して、2本のスリット71,72が対応するように流れ制御板7が構成されている。2本のスリット71,72は、電池間隙間の中心面に対し互いにほぼ対称となる位置に設けられており、第1のスリット71は、電池間の隙間の図示左側の電池の上流側端縁部に対向する位置に、幅S1で設けられており、第2のスリット72は、電池の隙間の図示右側の電池の上流側端縁部に対向するような位置に、幅S2で設けられている。これらスリットは第1実施形態と同じく、互いに対応する2本のスリットと1つの電池間隙間とによってそれぞれ独立した流路が構成されるようにされている。そして、2本のスリットの幅と電池間隙間の幅は、スリットの幅の合計(S1+S2)と電池間隙間の幅dの比が第1実施形態におけるスリット幅と電池間隙間幅の範囲になるように(すなわちS1+S2≦dとなるように)各スリットの幅S1,S2が決定される。
【0066】
このように、スリットの本数や形状が変化しても、電池間隙間との対応関係により、スリットの幅や開口面積を合計して、スリットの幅が電池間隙間の幅以下となるようにすれば、本発明を実施することができ、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0067】
そして、本実施形態によれば、スリット71,72と電池間隙間で構成されるそれぞれ独立した流路内部において、冷却風流れがさらに改善される。すなわち、第1のスリット71から導入される冷却風が、隙間に対し左側の電池表面に沿って流れ、第2のスリット72から導入される冷却風が、隙間に対し右側の電池表面に沿って流れるようになる。このように、それぞれの電池の表面に新規な冷却風を確実に導くことができるようになる。そのため、本実施形態によれば、電池冷却の効率性をさらに高めることができる。また、スリットの幅S1,S2を独立して調整して、隙間に対する左右の電池の冷却の程度をある程度調整することも可能となり、電池温度の均一化の面でも効果的である。
【0068】
また、上記2つの実施形態においては、スリットが連続した1つの長穴である場合を説明したが、スリットとして他の形態のものも使用可能である。例えば、複数個の長穴81、81を長軸方向に並べて連設してスリット(図11(a)参照)としたり、複数個の角穴82、82を並べて連設してスリット(図11(b)参照)としたり、多数の小さな穴83,83を、細長い領域の中に(例えばメッシュ状に)分散させて設けてスリットとしたりすることができる(図11(c)参照)。要するに、本発明においては、電池間の隙間に沿う方向に、流れ制御板に細長い領域にわたって貫通穴や通気性がある部分を設けることにより、その部分をスリットとして使用できる。
【0069】
上記実施形態の説明では、電池間の隙間に沿う方向に延在するスリットを流れ制御板に設ける発明の形態について説明したが、流れ制御板に設けられるスリットを、スリット以外の形態の貫通穴に変更して本発明をより拡張した形態で実施することもできる。本発明が発揮する作用効果は、電池間隙間で発生する通気抵抗の大きさと、流れ制御板のスリットや貫通穴で発生する通気抵抗の大きさとで、流れ制御板のスリットや貫通孔で発生する通気抵抗の寄与が大きくなることに起因している。従って、スリットと通気抵抗が同等となるような貫通穴を流れ制御板に設けて本発明を実施することもできる。
【0070】
さらに、発明者は、流れ制御板を通過する冷却風流れの検討を行った。そして、流れ制御板に設けられた貫通穴を通過する冷却風流れの通気抵抗は、貫通穴の断面積Ahによって支配されることをつきとめた。そして、通気抵抗は、おおむね貫通穴の断面積Ahの2乗に反比例することがわかった。
【0071】
さらに、発明者は、流れ制御板の貫通穴を通過する冷却風流れの通気抵抗を、貫通穴の形状をいろいろ変更して測定した。即ち、試験装置の冷却風通路に冷却風をさえぎるように流れ制御板を設けて、流れ制御板に形状(特に貫通穴の縦横比)を変更した貫通穴を設けて、一定風量の冷却風を流して、流れ制御板の上流側と下流側の圧力差を計測して通気抵抗を測定した。試験においては、貫通穴の開口面積は200平方mm、風量は22L/分となるように行った。
【0072】
試験を行った開口穴の形状と、通気抵抗の測定結果を表1に示す。通気抵抗は、貫通穴を貫通穴Aの形状(100mm×2mmの細長い貫通穴形状)とした場合の通気抵抗で基準化して示している。
【0073】
【表1】
【0074】
測定結果によれば、貫通穴の縦横比が大きく変化しても、貫通穴の断面積が同じであれば、通気抵抗は大きく変化しないことがわかった。即ち、貫通穴の縦横比を大きく変化させても、通気抵抗に与える変化は2割以下に過ぎず、貫通穴の形状よりも貫通穴の断面積が通気抵抗に支配的であることがわかる。すなわち、断面積が同じであれば、細長いスリットも、一般形状の(例えば円形の)貫通穴も、ほぼ通気抵抗が等しくなる。
【0075】
従って、上記第一実施形態において説明された流れ制御板のスリットを、スリットと断面積が等しくされた貫通穴に置き換えても、第一実施形態と同様の作用効果が発揮されることが理解できる。貫通穴の形態はスリットのような細長い形態に限定されず、円形や楕円形、矩形(正方形、長方形)、ひし形など多様な形態の貫通穴とすることができる。
【0076】
従って、本発明は、複数の平板状の電池が所定間隔の隙間を隔てた積層状に並べられた組電池を電池ケース内に収容し、電池ケース内を通流する冷却風を、電池間の隙間を通過するように送って電池を冷却する電池冷却構造において、組電池の上流側または下流側には、冷却風の通路を遮断するように流れ制御板が配置され、流れ制御板には電池間隙間のそれぞれに対応して貫通穴が設けられて、該貫通穴を通じて流れ制御板の上流側から下流側に冷却風が流れるようにされると共に、互いに対応する貫通穴と電池間の隙間によって形成される通気経路が、それぞれ独立し互いに並列配置される通気経路となるようにされて、前記貫通穴の開口面積をAhとし、電池間の隙間を冷却風流れ方向に沿って見た際の断面積をAgとして、実質的にAh≦Agとなるような電池冷却構造という形態としても実施可能であり、第一実施形態と同様の作用効果が発揮される
【0077】
ここで、電池間の隙間の断面積Agとは、当該隙間を冷却風流れ方向に沿って見た際の隙間の断面積であり、より具体的には、電池間隙間の幅をd、電池の幅(図1の紙面奥行き方向の長さ)をWとして、Ag=d*W で求められる断面積である。
【0078】
そして、流れ制御板に設けられる貫通穴は任意の形状とすることができ、実質的にAh≦Agとなるように貫通穴を設定すれば、貫通穴部分の通気抵抗が全体の通気抵抗に対して支配的になって、流れ制御板にスリットを設けた第一実施形態と同様な作用効果を発揮しうることがわかる。
【0079】
なお、電池間の隙間に対して、複数の貫通穴が対応している場合には、それぞれの貫通穴の面積を加算して、加算した開口面積が電池間隙間の断面積よりも小さくなるようにすればよい。例えば、1つの電池間の隙間に対応する貫通穴が3つであり、それぞれの貫通穴の開口面積がA1,A2,A3であれば、3つの貫通穴の開口面積Ahを、Ah=(A1+A2+A3)で計算して、これが電池間隙間の断面積Agよりも小さくなる、すなわち、(A1+A2+A3)≦Agとなるように貫通穴の具体的寸法を決定すればよい。
【0080】
なお、互いに対応して設けられる貫通穴の開口面積Ahと電池間隙間の断面積Agとの大小は、それぞれの部位で発生する通気抵抗の大小の観点から見て、貫通穴で発生する通気抵抗が支配的となるように、実質的にAh≦Agとなっていればよい。表1に示したように、貫通穴の縦横比が1:1に近づくと通気抵抗が1〜2割程度大きくなる傾向が見られ、また、貫通穴の通気抵抗は貫通穴の開口面積の2乗に反比例するので、例えば円形や正方形状の貫通穴の開口面積Ahが電池間隙間Agの1.1倍程度であれば、実質的にAh≦Agである範囲に含まれる。
【0081】
また、第一実施形態において、スリットの幅をS、電池間の隙間をdとして、S/dの値が特定の数値範囲に入るとさらに特定の効果が得られることを示したが、これもまた、一般形状の貫通穴を設けた場合に拡張可能である。従って、貫通穴の開口面積をAh、電池間隙間の断面積をAgとする本実施形態においては、第一実施形態のS/dを、Ah/Agに置き換えることが可能であり、Ah/Agが特定の数値範囲に入ると、第一実施形態において示したような特定の効果が同様に得られる。
【0082】
即ち、17%≦Ah/Ag≦70%となるようにすれば、特許文献2に示された絶縁セパレータを挟持するタイプの電池冷却構造と比較しても、冷却風の通気抵抗を同等以下にでき、電池冷却システムの冷却の効率性を高めることができる。また、この範囲においては、電池が膨張して電池間の隙間が狭くなると、冷却条件は同じであっても、むしろ電池の温度を下げることができる。従って、膨張した電池の温度が膨張していない電池の温度よりも逆に低くなるようになり、膨張した電池の更なる膨張や劣化が抑制され、電池寿命の均一化に大きく貢献できる。
【0083】
そして、さらに、25%≦Ah/Ag≦50%となるようにすれば、特許文献2に示された絶縁セパレータを挟持するタイプの電池冷却構造と比較しても、電池温度を同等以下にでき、電池冷却システムの冷却の効率性を高めることができる。さらに、この範囲においては、特に、電池間隙間が半減するような厳しい条件下での冷却風量変化を効果的に抑制できる。
【0084】
また、スリット・貫通穴や電池間の隙間によって形成される冷却風通路を互いに独立して並列配置されたものとする際の具体的構成には、第1実施形態に示した凸条52に代えて、他の構成を採用することもできる。例えば、凸条52に代えて、流れ制御板の平板部分を電池端縁に直接接触させても良いし、流れ制御板と電池端縁の間に別部材である仕切り部材を設けてもよい。また、これら部材の接触部には、必要に応じてゴムやエラストマーや発泡樹脂などからなるシール部材を設けることが好ましい。
【0085】
また、所定の間隔の隙間を隔てて積層配置される電池の間には、適宜スペーサを挟持させて、電池の過大な膨張を抑制することも、本発明の実施において好ましい形態である。図4や図5などにおいて見られるように、電池間の隙間が過小になると(例えば、d/d0<40%の程度になると)、本発明の実施例においても、冷却風流量の減少や電池表面温度の上昇が顕著となるので、本発明を実施する際には、電池間に挟持するスペーサなどの膨張変位の制限手段を付加的に設けて、電池間の隙間が過小になることを防止するようにするのが好ましい。電池の膨張抑制部材としてのスペーサ部材としては、棒状のものやくし状のもの、板状のものなどが例示される。スペーサ部材は、電池の周りに巻き回したリング状のもの(ゴム製バンドなど)であっても良い。これらスペーサ部材は、冷却風の流れを妨げないように冷却風流れ方向に沿って配置されるようにすることが好ましい。スペーサ部材の材料は、金属や合成樹脂等の比較的硬質な材料であっても良いが、エラストマやゴムといった比較的軟質な材料であっても良い。
【0086】
このようなスペーサ部材を本発明の流れ制御板やスリットの構成と併用するようにすれば、電池間の隙間が過小になることが確実に抑制・防止できるので、本発明の効果をより確実に発揮することができる。
【0087】
また、流れ制御板を設ける位置は、組電池の上流側や下流側のいずれであっても良いが、流れ制御板が組電池の上流側にあったほうが、スリットから勢い良く吹き出す冷却風を平板状電池の表面に当てて、電池の冷却効率を高めやすくなるので、流れ制御板は、組電池の上流側に設けられることが好ましい。
【0088】
第1実施形態においては、組電池構造体1を構成するホルダ部材3やエンドプレート4を板状の部材で構成して角筒状の通気経路とする実施形態について説明したが、このように構成した場合には、これら部材を電池ケースの一部として使用することができる。ケース単独で冷却風通路を構成できる電池ケースを有する場合には、必ずしも、ホルダ部材やエンドプレートを板状とする必要はなく、組電池の構造が適切に維持可能な範囲で、棒状部材やブロック状部材、バンド部材などにより構成してもよい。また、これら部材は、適宜、分割して構成することもできる。
【0089】
また、上記実施形態の説明においては、中空箱状の電池ケース1に組電池が収容される形態について説明したが、電池ケースの実施形態は、ケース専用に成形された中空箱状のものに限定されるものではなく、電池ケースは、パネル部材やブロック部材などの複数の部材を組み合わせて構成されるものであってもよい。例えば、車体のフロアパネル上に組電池を配置して、組電池を取り囲むように、断熱パネルや電極パネルを設けて、フロアパネルや断熱パネル、電極パネルの間を冷却風通路とした電池ケースを構成するようにすることもできる。このように、本発明における電池ケースには、専用の構成部材で構成された電池ケースのほか、組電池の周辺に配置される部材を利用・兼用して構成される電池ケースを含む。
【0090】
組電池を構成する電池の種類には、一次電池、二次電池(リチウムイオンバッテリー、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池など)、二重電気キャパシタなどが例示できる。電池は、上記実施形態においては、平板状のものについて説明したが、その表面は完全に平坦である必要はなく、冷却性向上や電池外装缶の剛性向上のための凹凸条などを有する電池であってもよい。
【0091】
組電池が使用される目的・用途も、自動車用に限定されるものではなく、例えば、風力発電装置や太陽電池発電装置などにおいて発電電力を平準化する目的で二次電池が使用される用途など、広い用途に使用される組電池の冷却に本発明は活用できる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車、発電装置などに使用される大容量組電池の電池冷却構造として使用することができ、それら組電池を構成する平板状電池を効果的に冷却することができると共に、電池の膨張に対するロバスト性が高いなど、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0093】
1 組電池構造体
2 電池
3 ホルダ部材
31 保持部
4 エンドプレート
5 流れ制御板
51 スリット
52 凸条
6 電池ケース
7 流れ制御板
71,72 スリット
8 セパレータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平板状の電池が所定間隔の隙間を隔てた積層状に並べられた組電池を電池ケース内に収容し、電池ケース内を通流する冷却風を、電池間の隙間を通過するように送って電池を冷却する電池冷却構造であって、
組電池の上流側または下流側には、冷却風の通路を遮断するように流れ制御板が配置され、流れ制御板には、電池間の隙間に沿う方向に延在するスリットが設けられて、該スリットを通じて流れ制御板の上流側から下流側に冷却風が流れるようにされると共に、
電池間隙間のそれぞれに対応してスリットが設けられ、互いに対応するスリットと電池間の隙間によって形成される通気経路が、それぞれ独立し互いに並列配置される通気経路となるようにされて、
電池間の隙間における冷却風流れ方向に沿って見た際に、該スリットの幅Sが、電池間の隙間の幅dと比べ、S≦dとされた電池冷却構造。
【請求項2】
スリットの幅Sが、電池間の隙間の幅dと比べ、17%≦S/d≦70%とされた請求項1に記載の電池冷却構造
【請求項3】
スリットの幅Sが、電池間の隙間の幅dと比べ、25%≦S/d≦50%とされた請求項2に記載の電池冷却構造
【請求項4】
電池間の隙間には、当該電池間隙間の幅が、隙間の初期幅の40%以下に狭まることを抑制可能なスペーサ部材が設けられた、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電池冷却構造。
【請求項5】
複数の平板状の電池が所定間隔の隙間を隔てた積層状に並べられた組電池を電池ケース内に収容し、電池ケース内を通流する冷却風を、電池間の隙間を通過するように送って電池を冷却する電池冷却構造であって、
組電池の上流側または下流側には、冷却風の通路を遮断するように流れ制御板が配置され、流れ制御板には電池間隙間のそれぞれに対応して貫通穴が設けられて、該貫通穴を通じて流れ制御板の上流側から下流側に冷却風が流れるようにされると共に、
互いに対応する貫通穴と電池間の隙間によって形成される通気経路が、それぞれ独立し互いに並列配置される通気経路となるようにされて、
前記貫通穴の開口面積をAhとし、電池間の隙間を冷却風流れ方向に沿って見た際の断面積をAgとして、実質的にAh≦Agとされた電池冷却構造。
【請求項1】
複数の平板状の電池が所定間隔の隙間を隔てた積層状に並べられた組電池を電池ケース内に収容し、電池ケース内を通流する冷却風を、電池間の隙間を通過するように送って電池を冷却する電池冷却構造であって、
組電池の上流側または下流側には、冷却風の通路を遮断するように流れ制御板が配置され、流れ制御板には、電池間の隙間に沿う方向に延在するスリットが設けられて、該スリットを通じて流れ制御板の上流側から下流側に冷却風が流れるようにされると共に、
電池間隙間のそれぞれに対応してスリットが設けられ、互いに対応するスリットと電池間の隙間によって形成される通気経路が、それぞれ独立し互いに並列配置される通気経路となるようにされて、
電池間の隙間における冷却風流れ方向に沿って見た際に、該スリットの幅Sが、電池間の隙間の幅dと比べ、S≦dとされた電池冷却構造。
【請求項2】
スリットの幅Sが、電池間の隙間の幅dと比べ、17%≦S/d≦70%とされた請求項1に記載の電池冷却構造
【請求項3】
スリットの幅Sが、電池間の隙間の幅dと比べ、25%≦S/d≦50%とされた請求項2に記載の電池冷却構造
【請求項4】
電池間の隙間には、当該電池間隙間の幅が、隙間の初期幅の40%以下に狭まることを抑制可能なスペーサ部材が設けられた、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電池冷却構造。
【請求項5】
複数の平板状の電池が所定間隔の隙間を隔てた積層状に並べられた組電池を電池ケース内に収容し、電池ケース内を通流する冷却風を、電池間の隙間を通過するように送って電池を冷却する電池冷却構造であって、
組電池の上流側または下流側には、冷却風の通路を遮断するように流れ制御板が配置され、流れ制御板には電池間隙間のそれぞれに対応して貫通穴が設けられて、該貫通穴を通じて流れ制御板の上流側から下流側に冷却風が流れるようにされると共に、
互いに対応する貫通穴と電池間の隙間によって形成される通気経路が、それぞれ独立し互いに並列配置される通気経路となるようにされて、
前記貫通穴の開口面積をAhとし、電池間の隙間を冷却風流れ方向に沿って見た際の断面積をAgとして、実質的にAh≦Agとされた電池冷却構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−150977(P2012−150977A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8525(P2011−8525)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】
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