説明

電池用セパレータおよび非水電解質電池

【課題】 エネルギー密度の低下を可及的に抑制しつつ異常加熱した際の安全性を向上し、更には負荷特性も良好にした非水電解質電池と、該電池を構成し得る電池用セパレータを提供する。
【解決手段】 少なくとも150℃で実質的に変形しない繊維状物と、少なくとも150℃で実質的に変形しない無機微粒子を有する多孔質膜からなり、上記無機微粒子の全個数中における粒子径0.3μm以下の粒子の個数および粒子径1μm以上の粒子の個数が、それぞれ10%以上であることを特徴とする電池用セパレータと、該電池用セパレータを有する非水電解質電池により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境下においても安全な非水電解質電池と、該非水電解質電池を構成するための電池用セパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水電解質電池の一種であるリチウムイオン電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器の電源として広く用いられている。携帯機器の高性能化に伴ってリチウムイオン電池の高容量化が更に進む傾向にあり、安全性の確保が重要となっている。
【0003】
現行のリチウムイオン電池では、正極と負極の間に介在させるセパレータとして、例えば厚みが20〜30μm程度のポリオレフィン系の多孔性フィルムが使用されている。また、セパレータの素材としては、電池の熱暴走温度以下でセパレータの構成樹脂を溶融させて空孔を閉塞させ、これにより電池の内部抵抗を上昇させて短絡の際などに電池の安全性を向上させる所謂シャットダウン効果を確保するため、融点の低いポリエチレンが適用されることがある。
【0004】
ところで、こうしたセパレータとしては、例えば、多孔化と強度向上のために一軸延伸あるいは二軸延伸したフィルムが用いられている。このようなセパレータは、単独で存在する膜として供給されるため、作業性などの点で一定の強度が要求され、これを上記延伸によって確保している。しかし、このような延伸フィルムでは結晶化度が増大しており、シャットダウン温度も、電池の熱暴走温度に近い温度にまで高まっているため、電池の安全性確保のためのマージンが十分とは言い難い。
【0005】
また、上記延伸によってフィルムにはひずみが生じており、これが高温に曝されると、残留応力によって収縮が起こるという問題がある。収縮温度は、融点、すなわちシャットダウン温度と非常に近いところに存在する。このため、ポリオレフィン系の多孔性フィルムセパレータを使用するときには、充電異常時などに電池の温度がシャットダウン温度に達すると、電流を直ちに減少させて電池の温度上昇を防止しなければならない。空孔が十分に閉塞せず電流を直ちに減少できなかった場合には、電池の温度は容易にセパレータの収縮温度にまで上昇するため、内部短絡による発火の危険性があるからである。
【0006】
このようなセパレータの熱収縮による短絡を防止し、電池の信頼性を高める技術として、例えば、耐熱性の良好な多孔質基体と、フィラー粒子と、シャットダウン機能を確保するための樹脂成分とを有するセパレータにより電気化学素子を構成することが提案されている(特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/62153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示の技術によれば、異常過熱した際にも熱暴走が生じ難い安全性に優れた電池を提供することができる。
【0009】
しかしながら、リチウムイオン電池などの非水電解質電池に要求される特性は、今後ますます高度になると予測され、かかる電池に利用されるセパレータにおいても、このような要求に十分に応え得るように、更なる改良が求められる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エネルギー密度の低下を可及的に抑制しつつ耐短絡性を向上し、更には負荷特性も良好にした非水電解質電池と、該電池を構成し得る電池用セパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成し得た本発明の電池用セパレータは、少なくとも150℃で実質的に変形しない繊維状物と、少なくとも150℃で実質的に変形しない無機微粒子を有する多孔質膜からなり、上記無機微粒子の全個数中における粒子径0.3μm以下の粒子の個数および粒子径1μm以上の粒子の個数が、それぞれ10%以上であることを特徴とするものである。
【0012】
なお、上記の「少なくとも150℃で実質的に変形しない繊維状物」および「少なくとも150℃で実質的に変形しない無機微粒子」とは、150℃に加熱した状態における目視観察で、変形が認められない繊維状物および無機微粒子を意味している。
【0013】
また、「粒子径0.3μm以下の粒子」および「粒子径1μm以上の粒子」の粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率5000倍でセパレータ表面を観察し、20μm×15μmの視野において認められる無機微粒子から測定し、無機微粒子全個数中における「粒子径0.3μm以下の粒子」の割合および「粒子径1μm以上の粒子」の割合は、上記のSEM観察において、20μm×15μmの視野において認められる無機微粒子の全個数、粒子径0.3μm以下の粒子の個数、および粒子径1μm以上の粒子の個数を数えて算出したものである。
【0014】
また、正極、負極、非水電解液、および本発明の電池用セパレータを有する非水電解質電池も、本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エネルギー密度の低下を可及的に抑制しつつ耐短絡性を向上し、更には負荷特性も良好にした非水電解質電池と、該電池を構成し得る電池用セパレータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のセパレータは、少なくとも150℃で実質的に変形しない繊維状物と、少なくとも150℃で実質的に変形しない無機微粒子を有する多孔質膜からなるものである。本発明のセパレータは、上記のように熱収縮し難い材料で形成されており、また、従来のポリオレフィン製の多孔質フィルムセパレータのような製造時のひずみが、セパレータに残り難い製法により製造できる。よって電池内の温度が上昇した場合でも、セパレータの熱収縮が抑制され、正極と負極との接触による短絡が防止される。そのため、電池内が異常過熱した際にも、その熱暴走などが抑えられるため、安全性の高い電池となる。
【0017】
また、本発明のセパレータでは、セパレータを薄くしても、正極と負極とを良好に隔離でき、更に、特に無機微粒子の存在によって、リチウムデンドライトが発生した場合に生じ得る短絡も良好に防止できる。そのため、本発明のセパレータは、エネルギー密度の低下を可及的に抑制することができる。
【0018】
そして、本発明のセパレータは、特定の粒度分布を有する無機微粒子を用いることで、優れた耐短絡性を確保できる他、電池の負荷特性も良好なものとすることができる。
【0019】
本発明のセパレータに係る無機微粒子は、粒子径が0.3μm以下の粒子を、無機微粒子全個数中、10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上含んでいる。粒子径が0.3μm以下の粒子の個数が少なすぎると、セパレータ中における無機微粒子の充填性が低下して、セパレータの耐短絡性が低下する。他方、粒子径が0.3μm以下の粒子が多すぎると、このセパレータを用いた電池の抵抗が高くなる傾向にあることから、粒子径が0.3μm以下の粒子は、無機微粒子全個数中、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
【0020】
粒子径が0.3μm以下の粒子の粒子径は、0.3μm以下であればよいが、0.03μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。粒子径の小さすぎる粒子は、製造が困難であったり、セパレータのイオン伝導の阻害要因となる虞がある。
【0021】
また、本発明のセパレータに係る無機微粒子は、粒子径が1μm以上の粒子を、無機微粒子全個数中、10%以上、より好ましくは15%以上含んでいる。粒子径が1μm以下の粒子の個数が少なすぎると、このセパレータを用いた電池の抵抗が高くなり、負荷特性が低下する虞がある。他方、粒子径が1μm以上の粒子が多すぎると、セパレータの耐短絡性が低下することがあるため、粒子径が1μm以上の粒子は、無機微粒子全個数中、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
【0022】
粒子径が1μm以上の粒子の粒子径は、1μm以上であればよいが、10μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましい。粒子径の大きすぎる粒子では、製造するセパレータの厚みの調整を難しくする虞がある。
【0023】
本発明に係る無機微粒子は、150℃で実質的に変形せず、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に後述する非水電解液や、セパレータ製造の際に使用する液状組成物に用いる溶媒に安定であり、高温状態で電解液に溶解しないものであれば、特に制限はない。高温状態とは具体的には150℃以上の温度であり、このような温度の電解液中で変形、化学的組成変化の起こらない安定な粒子であればよい。
【0024】
このような無機粒子の具体例としては、以下の粒子が挙げられ、これらを1種単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。例えば、酸化鉄、SiO(シリカ)、Al(アルミナ)、TiO、BaTiO、ZrOなどの酸化物微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカなどの鉱物資源由来物質またはそれらの人造物;などが挙げられる。また、金属微粒子;SnO、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの酸化物微粒子;カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質微粒子;などの導電性微粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、上記の非電気伝導性の無機微粒子を構成する材料)でコーティングすることで、電気絶縁性を持たせた微粒子であってもよい。これらの無機微粒子の中でも、シリカ、アルミナ、アルミナ−シリカ複合酸化物、ベーマイトが好適である。
【0025】
また、無機微粒子の形状は、球状(真球状、略球状)、ラグビーボール状、板状などのいずれでもよいが、セパレータの耐短絡性をより高める観点から、板状であることが好ましい。なお、板状の無機微粒子の場合、板の長軸方向の径がその粒子径となる。
【0026】
板状粒子の形態としては、アスペクト比が、5以上、より好ましくは10以上であって、100以下、より好ましくは50以下であることが望ましい。また、粒子の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比(長軸方向長さ/短軸方向長さ)の平均値は、3以下、より好ましくは2以下で、1に近い値であることが望ましい。
【0027】
なお、板状粒子における上記の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析することにより求めることができる。更に板状粒子における上記のアスペクト比も、SEMにより撮影した画像を、画像解析することにより求めることができる。
【0028】
これら無機微粒子の具体的な例としては、昭和電工製の微粒アルミナ「A−43−M(製品名)」、キンセイマテック社製の塊状シリカ「SQPL2(製品名)」、アドマテックス社製の球状アルミナ「アドマファイン AO−802(製品名)」、アドマッテクス社製の球状シリカ「アドマファイン SO−E3(製品名)」、河合石灰社製の板状ベーマイト「BMM(製品名)」、日本軽金属社製のアルミナ「A33F(製品名)」などが入手可能である。
【0029】
本発明に係る繊維状物は、150℃で実質的に変形せず、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に下記に詳述する非水電解液や、セパレータ製造の際に使用する液状組成物に用いる溶媒に安定であれば、特に制限はない。なお、本発明でいう「繊維状物」とは、アスペクト比[長尺方向の長さ/長尺方向に直交する方向の幅(直径)]が4以上のものを意味している。本発明に係る繊維状物のアスペクト比は、10以上であることが好ましい。
【0030】
繊維状物の具体的な構成材料としては、例えば、セルロース、セルロース変成体(カルボキシメチルセルロースなど)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など]、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの樹脂;ガラス、アルミナ、シリカなどの無機材料(無機酸化物);などが挙げられる。繊維状物は、これらの構成材料の1種を含有していてもよく、2種以上を含有していても構わない。また、繊維状物は、構成成分として、上記の構成材料の他に、必要に応じて、公知の各種添加剤(例えば、樹脂である場合には酸化防止剤など)を含有していても構わない。
【0031】
繊維状物の直径は、セパレータの厚み以下であれば良いが、例えば、0.01〜5μmであることが好ましい。径が大きすぎると、繊維状物同士の絡み合いが不足して、これらで構成されるシート状物の強度、延いてはセパレータの強度が小さくなって取り扱いが困難となることがある。また、径が小さすぎると、セパレータの空隙が小さくなりすぎて、イオン透過性が低下して、電池の負荷特性が低下する傾向にある。
【0032】
本発明のセパレータは、上記の繊維状物が多数集合して、これらの繊維状物のみによりシート状物を形成している形式のもの、例えば織布、不織布、紙といった形態のものを用い、このシート状物中に無機微粒子が含有された構成のセパレータとしてもよいし、繊維状物と無機微粒子とが均一に分散された形で含有されている構成のセパレータとしてもよい。また、上記の両者の構成を合わせた構成とすることもできる。
【0033】
セパレータ中での繊維状物の存在状態は、例えば、長軸(長尺方向の軸)の、セパレータ面に対する角度が平均で30°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましい。特に、繊維状物が、織布、不織布などのシート状物を形成している場合には、繊維状物が上記の状態で存在していることが好ましい。
【0034】
また、セパレータにシャットダウン機能を付与するために、80〜130℃で溶融する熱溶融性微粒子、または、非水電解液中で膨潤でき、かつ温度の上昇により膨潤度が増大する膨潤性微粒子を添加することが可能である。上記の熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を用いてセパレータを構成することで、高温に曝されたときにセパレータ中のイオンの透過性が低下する所謂シャットダウン機能を付与することができる。
【0035】
本発明のセパレータにおける上記のシャットダウン機能は、例えば、モデルセルの温度による抵抗上昇により測定することが可能である。すなわち、正極、負極、セパレータ、および非水電解液を備えたモデルセルを作製し、該モデルセルを恒温槽中に保持し、5℃/分の速度で昇温しながら上記モデルセルの内部抵抗値を測定し、測定された内部抵抗値が、加熱前(室温で測定した抵抗値)の10倍以上となる温度を、シャットダウン温度として評価することができる。
【0036】
80〜130℃で溶融する熱溶融性微粒子、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が80〜130℃である熱溶融性微粒子を含有しているセパレータでは、該セパレータが80〜130℃(またはそれ以上の温度)に曝されたときに、熱溶融性微粒子が溶融してセパレータの空隙が閉塞されるため、上記のシャットダウン機能がより確実に確保できる。よって、この場合、上記の内部抵抗上昇により評価される本発明のセパレータにおける空隙閉塞現象が発現する温度(内部抵抗値が加熱前の5倍以上となる温度)は、粒子の融点以上130℃以下となる。
【0037】
熱溶融性微粒子の構成材料の具体例としては、ポリエチレン(PE)、エチレン由来の構造単位が85モル%以上の共重合ポリオレフィン、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン誘導体(塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなど)、ポリオレフィンワックス、石油ワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。上記共重合ポリオレフィンとしては、エチレン−ビニルモノマー共重合体、より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体、またはエチレン−エチルアクリレート共重合体が例示できる。また、ポリシクロオレフィンなどを用いることもできる。熱溶融性粒子は、これらの構成材料の1種のみを有していてもよく、2種以上を有していても構わない。これらの中でも、PE、ポリオレフィンワックス、またはエチレン由来の構造単位が85モル%以上のEVAが好適である。また、熱溶融性微粒子は、構成成分として、上記の構成材料の他に、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤(例えば、酸化防止剤など)を含有していても構わない。
【0038】
なお、熱溶融性微粒子は、セパレータ内部に含まれるのみならず、セパレータの正極側面若しくは負極側面、または両面に存在することによっても、シャットダウン機能の付与が可能となる。
【0039】
熱溶融性微粒子の粒径[レーザー散乱粒度分布径(HORIBA社製「LA−920」)を用いて測定される数平均粒子径]としては、例えば、0.001μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、15μm以下、より好ましくは1μm以下であることが推奨される。
【0040】
これら熱溶融性微粒子の具体的な例としては、三井化学社製のPEエマルジョン「ケミパール(製品名) 」、中京油脂社製のPEエマルジョン「K143(製品名)」、岐阜セラック社製のPEワックスエマルジョン、住友精化社製のPE「フロービーズ(製品名) 」、東洋ペトロライト社製のワックスエマルジョン「アクアペトロ(製品名)」などが入手可能である。
【0041】
非水電解液中で膨潤でき、かつ温度の上昇により膨潤度が増大する膨潤性微粒子をセパレータが有する場合には、電池内で高温に曝されたときに、膨潤性微粒子の膨潤によって非水電解液を吸収して大きく膨張する(以下、膨潤性微粒子における温度の上昇に伴って膨潤度が増大する機能を「熱膨潤性」という)ことにより、セパレータ内のLi(リチウム)イオンの伝導性を著しく低下させるため、電池の内部抵抗が上昇し、上記のシャットダウン機能を確実に確保することが可能となる。膨潤性微粒子としては、上記の熱膨潤性を示す温度が、75〜125℃であるものが好ましい。
【0042】
このような熱膨潤性を有する膨潤性微粒子としては、例えば、架橋ポリスチレン(PS)、架橋アクリル樹脂[例えば、架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)]、架橋フッ素樹脂[例えば、架橋ポリフッ化ビニリデン(PVDF)]などが好適であり、架橋PMMAが特に好ましい。
【0043】
膨潤性微粒子の粒径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、微粒子を膨潤しない媒体(例えば水)に分散させて測定した数平均粒子径で、0.1〜20μmであることが好ましい。
【0044】
膨潤性微粒子の具体的な例として、ガンツ化成社製の架橋PMMA「ガンツパール(製品名)」、東洋インキ社製の架橋PMMA「RSP1079(製品名)」などが入手可能である。
【0045】
本発明のセパレータにおいて、シャットダウン機能を確保するにあたっては、上記熱溶融性微粒子および上記膨潤性微粒子のいずれか一方を含有していてもよく、両者を含有していてもよい。更に、熱溶融性微粒子と熱膨潤性微粒子とを複合させた複合体をセパレータに含有させることで、シャットダウン機能を確保してもよい。
【0046】
本発明のセパレータには、無機微粒子同士を結着したり、繊維状物と無機微粒子やその他の各種粒子(上記の熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子など)などとを結着したりする目的で、バインダを用いてもよい。
【0047】
バインダとしては、電気化学的に安定且つ非水電解液に対して安定で、良好に接着できるものであればよいが、例えば、EVA(酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体[スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)など]、セルロース誘導体[カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど]、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、PVDF、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、アクリル樹脂などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。なお、これらバインダを使用する場合には、後記するセパレータ形成用の液状組成物の溶媒に溶解するか、または分散させたエマルジョンの形態で用いることができる。
【0048】
これらバインダの具体的な例としては、JSR社製のSBR「TRD2001(製品名)」、日本ゼオン社製のSBR「BM400B(製品名)」などが入手可能である。
【0049】
本発明のセパレータは、独立の多孔質膜の形態を有していてもよく、電池に用いられる正極および負極の少なくとも一方と一体化した形態を有していてもよい。
【0050】
セパレータの厚みは、3μm以上、より好ましくは5μm以上であって、50μm以下、より好ましくは30μm以下であることが望ましい。セパレータが薄すぎると、短絡防止効果が小さくなったり、セパレータの強度が不十分で取り扱いが困難になることがあり、他方、厚すぎると、電池としたときのエネルギー密度が小さくなる傾向にある。
【0051】
また、セパレータの空隙率としては、乾燥した状態で15%以上、より好ましくは20%以上であって、70%以下、より好ましくは60%以下であることが望ましい。セパレータの空隙率が小さすぎると、イオン透過性が小さくなることがあり、また、空隙率が大きすぎると、セパレータの強度が不足することがある。なお、セパレータの空隙率:P(%)は、セパレータの厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、次式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P = Σaρ/(m/t)
ここで、上記式中、a:質量%で表した成分iの比率、ρ:成分iの密度(g/cm)、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm)、t:セパレータの厚み(cm)、である。
【0052】
更に、JIS P 8117に準拠した方法で行われ、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値で示されるセパレータの透気度は、10〜300secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、他方、小さすぎると、セパレータの強度が小さくなることがある。また、セパレータが独立膜の場合、その強度としては、直径が1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き破れによる短絡が発生する虞がある。
【0053】
セパレータにおける無機微粒子は、セパレータの構成成分の全体積中、20体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましい。無機微粒子の体積比率を上記のようにすることで、無機微粒子の使用による作用をより有効に発揮させることができる。
【0054】
他方、セパレータにおける無機微粒子の体積比率の上限は、セパレータの構成成分の全体積中、例えば80体積%であることが好ましい。無機微粒子の体積比率が上記上限値を超えると、セパレータを、短絡防止機能を十分に確保しつつシャットダウン機能も十分に確保できる構成とすることが困難となる。なお、セパレータにシャットダウン機能を付与しない構成とする場合には、セパレータの構成成分の全体積中における無機微粒子の体積比率は、更に高い比率、例えば95体積%以下であれば問題ない。
【0055】
また、セパレータにおける繊維状物は、セパレータの構成成分の全体積中、20体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましい。繊維状物の体積比率を上記のようにすることで、繊維状物の使用による作用をより有効に発揮させることができる。
【0056】
他方、セパレータ中の繊維状物の体積比率が大きすぎると、無機微粒子やその他の粒子(熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子など)の比率が小さくなって、これらによる作用を十分に発揮させ得ない虞があるため、セパレータの構成成分の全体積中における繊維状物の体積比率は、70体積%以下であることが好ましく、60体積%以下であることがより好ましい。
【0057】
更に、セパレータにおいて、熱溶融性微粒子および膨潤性微粒子は、これらの合計体積が、セパレータの構成成分の全体積中、10〜50体積%であることが好ましい。熱溶融性微粒子や膨潤性微粒子を上記の範囲で含有させることで、無機微粒子および繊維状物による作用を損なうことなく、良好なシャットダウン機能を確保することができる。また、バインダは、セパレータの構成成分の全体積中、1〜10体積%であることが好ましい。
【0058】
本発明のセパレータの製造方法としては、例えば、下記(I)、(II)および(III)の方法が採用できる。(I)の方法は、イオン透過性のシート状物に、無機微粒子を含む液状組成物(スラリーなど)を塗布または含浸させた後、所定の温度で乾燥する製造方法である。
【0059】
(I)の方法でいう「シート状物」には、上述の、繊維状物で構成されたシート状物(各種、織布、不織布など)が該当する。すなわち、上記例示の各材料を構成成分に含む繊維状物の少なくとも1種で構成され、これら繊維状物同士が絡み合った構造を有する不織布などの多孔質シートなどが挙げられる。より具体的には、紙、PP不織布、ポリエステル不織布(PET不織布、PEN不織布、PBT不織布など)、PAN不織布、PVA不織布などの不織布などが例示できる。
【0060】
セパレータに用いる織布や不織布の厚みとしては、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。また、織布や不織布の目付けとしては、15g/m以下であることが好ましく、10g/m以下であることがより好ましい。なお、織布や不織布の厚みは、5μm以上であることが好ましく、その目付けは、2g/m以上であることが好ましい。織布や不織布の製法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば不織布であれば、具体的には湿式、乾式、メルトブロー、スパンボンド、電荷溶融紡糸といった手法を用いることができる。
【0061】
本発明のセパレータを形成するための上記液状組成物は、無機微粒子や、必要に応じて、バインダ、熱溶融性微粒子などを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む、以下同じ)に分散または溶解させたものである。液状組成物に用いられる溶媒は、無機微粒子や、熱溶融性微粒子などを均一に分散でき、また、バインダを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフランなどのフラン類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;などの有機溶媒が好適である。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加してもよい。また、バインダが水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
【0062】
上記液状組成物では、無機微粒子や、熱溶融性微粒子、バインダなどを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましく、20〜70質量%とすることがより好ましい。
【0063】
なお、熱溶融性微粒子が単独で接着性を有する場合には、これらがバインダを兼ねることもできる。
【0064】
上記シート状物を有するセパレータの場合には、無機微粒子や熱溶融性微粒子、膨潤性微粒子などの微粒子の一部または全部が、シート状物の空隙内に存在する構造とすることが好ましい。セパレータがこのような構造を有する場合には、含有する微粒子の作用がより有効に発揮される。また、上記のシート状物が、紙、PP不織布、ポリエステル不織布などの不織布のように、繊維状物で構成されるものであって、特にその空隙の開口径が比較的大きい場合(例えば、空隙の開口径が5μm以上の場合)には、これが電池の短絡の要因となりやすい。よって、特にこの場合には、混合される微粒子の一部または全部がシート状物の空隙内に存在する構造とすることが好ましい。
【0065】
シート状物の空隙内に無機微粒子などの各種微粒子を存在させるには、例えば、上記の液状組成物をシートに含浸させた後、一定のギャップを通し、余分の液状組成物を除去した後、乾燥するなどの工程を用いればよい。
【0066】
また、無機微粒子として板状粒子を用いる場合には、セパレータ中での板状粒子の配向性を高め、板状粒子をセパレータ面に平行または略平行に配向させることで、デンドライトによるセパレータの突き抜けを防止して、これによる短絡の発生を良好に抑制することができる。セパレータ中での板状粒子の配向性を高めて、その機能を有効に作用させるためには、上記液状組成物を含浸させた基体において、該液状組成物にシェアや磁場をかけるといった方法を用いればよい。例えば、上記のように、液状組成物をシート状物に含浸させた後、一定のギャップを通すことで、液状組成物にシェアをかけることができる。
【0067】
セパレータの(II)の製造方法は、上記液状組成物に更に繊維状物を含有させ、これをフィルムや金属箔などの基材上に塗布し、所定の温度で乾燥した後に、該基材から剥離する方法である。すなわち、繊維状物のシート化と無機微粒子を含有させる操作を同時に行う方法である。なお、(II)の方法で使用する液状組成物は、繊維状物を含有させることが必須である点を除き、(I)の方法で用いる液状組成物と同じである。また、(II)の方法で得られるセパレータにおいても、繊維状物で形成されるシート状物の空隙内に、無機微粒子の一部または全部が存在する構造とすることが望ましい。
【0068】
セパレータの(III)の製造方法は、例えば、上記の無機微粒子および繊維状物に、更に必要に応じて熱溶融性微粒子やバインダを用いて、水または適当な溶媒に分散させたスラリー状などの液状組成物を調製し、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、スプレーコーターなどの従来公知の塗布装置を用いて、上記液状組成物を電極(正極または負極)上に塗布し、乾燥する方法である。これにより、電極と一体化した構造のセパレータを得ることができる。上記液状組成物には、例えば、(I)や(II)の製造方法について説明した液状組成物と同じものが使用できる。
【0069】
なお、本発明のセパレータは、上記の構造に限定されるものではない。例えば、無機微粒子は、個々に独立して存在していなくてもよく、互いに、または、繊維状物に、一部が融着されていても構わない。
【0070】
上記(I)〜(III)の方法によって作製されたセパレータは、乾燥後に熱処理を施し、セパレータ中に含有されている水分や、溶媒(分散媒)といった揮発成分を除去することが望ましい。これらの揮発成分を除去することで、非水電解質電池において、充放電を繰り返した際の電池特性の劣化を抑制できるため、長期信頼性に優れた非水電解質電池を提供できるようになる。水分や溶媒の残留量としては、セパレータに対して100ppm以下であることが望ましい。
【0071】
上記熱処理の温度は、セパレータ中に熱溶融性微粒子を含む場合には、多孔質層のシャットダウン温度未満の温度とする。シャットダウン温度以上の温度で熱処理を施すと、多孔質層の空孔が閉塞してしまうため、このような電極を使用した非水電解質電池は、その特性が劣るものとなる。セパレータ中に熱溶融性微粒子を含まず、膨潤性微粒子の使用によってシャットダウン機能を付与したセパレータの場合には、喩えセパレータを加熱して高温に曝しても、その後に冷却すれば膨潤性微粒子が加熱前の状態に戻るため、セパレータの特性(イオン透過性など)は損なわれない。そのため、膨潤性微粒子を有するセパレータでは、膨潤性微粒子や繊維状物を構成する樹脂の熱分解温度以下の温度であれば熱処理温度に特に制限は無い。また、熱溶融性微粒子を使用せず、シャットダウン機能を付与していないセパレータについても、熱処理温度は、例えば繊維状物の熱分解温度以下であればよい。
【0072】
具体的な熱処理温度としては、例えば、70〜140℃、また、熱処理の時間としては、例えば、1時間以上、より好ましくは3時間以上であって、72時間以下、より好ましくは24時間以下とすることが望ましい。このような熱処理は、例えば、温風循環型の恒温槽中で行うことができる。また、必要に応じて真空乾燥機を用いて減圧乾燥を行なってもよい。
【0073】
このようにして得られるセパレータは、例えば150℃での熱収縮率を5%未満とすることができ、高温下での熱収縮が生じ難いため、電池内が高温になった場合でも、正極と負極とを良好に隔離して短絡の発生を抑制することができる。なお、セパレータにおける「150℃の熱収縮率」とは、セパレータを恒温槽に入れ、温度を150℃まで上昇させて30分放置した後に取り出して、恒温槽に入れる前のセパレータの寸法と比較することで求められる寸法の減少割合を百分率で表したものである。
【0074】
本発明の非水電解質電池は、本発明のセパレータを有していれば特に制限はなく、従来公知の構成、構造が採用できる。なお、本発明の非水電解質電池には、一次電池と二次電池が含まれるが、以下には、特に主要な用途である二次電池の構成を例示する。
【0075】
非水電解質電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
【0076】
正極としては、従来公知の非水電解質電池に用いられている正極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、Li1+xMO(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mnなど)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物;LiMnなどのリチウムマンガン酸化物;LiMnのMnの一部を他元素で置換したLiMn(1−x);オリビン型LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Fe);LiMn0.5Ni0.5;Li(1+a)MnNiCo(1−x−y)(−0.1<a<0.1、0<x<0.5、0<y<0.5);などを適用することが可能であり、これらの正極活物質に公知の導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどの結着剤などを適宜添加した正極合剤を、集電体を芯材として成形体に仕上げたものなどを用いることができる。
【0077】
正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
【0078】
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
【0079】
負極としては、従来公知の非水電解質電池に用いられている負極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどの結着剤などを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる他、上記の各種合金やリチウム金属の箔を単独、もしくは集電体上に形成したものを用いてもよい。
【0080】
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、また、下限は5μmであることが望ましい。
【0081】
負極側のリード部も、正極側のリード部と同様に、通常、負極作製時に、集電体の一部に負極剤層(負極活物質を有する層)を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、この負極側のリード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体に銅製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
【0082】
電極は、上記の正極と上記の負極とを、本発明のセパレータを介して積層した積層体や、更にこれを巻回した巻回電極体の形態で用いることができる。なお、巻回電極体においては、セパレータに割れや無機微粒子などの微粒子の脱落などの欠陥が生じ易く、また、ラミネートフィルム外装体や角形の外装缶を用いる場合などでは、巻回電極体を更に扁平状に押しつぶしたような形状にして用いるため、セパレータの欠陥が特に生じ易い。セパレータに上記のような欠陥が生じた巻回電極体を用いて構成した電池では、その特性が劣るものとなる。しかし、本発明のセパレータでは、喩え上記のような扁平状の巻回電極体を構成しても、上記の欠陥が生じ難いため、信頼性に優れた非水電解質電池を構成することができる。
【0083】
非水電解液としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸メチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールサルファイト、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの1種のみからなる有機溶媒、あるいは2種以上の混合溶媒に、例えば、LiClO 、LiPF 、LiBF 、LiAsF 、LiSbF 、LiCFSO 、LiCFCO 、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などのリチウム塩から選ばれる少なくとも1種を溶解させることによって調製したものが使用される。このリチウム塩の電解液中の濃度としては0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
【0084】
また、上記の有機溶媒の代わりに、エチル−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、へプチル−トリメチルアンモニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、ピリジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、グアジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミドといった常温溶融塩を用いることもできる。
【0085】
更に、上記の非水電解液にPVDF、PVDF−HEP、PAN、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、主鎖あるいは側鎖にエチレンオキシド鎖を含む架橋ポリマー、架橋したポリ(メタ)アクリル酸エステルといった公知のゲル電解質形成可能なホストポリマーを用いてゲル化した電解質を用いることもできる。
【0086】
本発明の非水電解質電池は、従来公知の非水電解質電池が用いられている各種用途と同じ用途に適用することができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0088】
実施例1
水1000g、無機微粒子としてシリカ粉砕品1000g、およびバインダとしてSBRラテックス(無機微粒子100質量部に対してSBR固形分が3質量部)を容器入れ、スリーワンモーターで1時間攪拌して分散させ、均一なスラリーを得た。なお、シリカ粉砕品の粒度分布は、D10=0.284μm、D50=0.589μm、D90=1.343μmであった。このスラリー中に、厚みが15μmのPET製不織布を通し、引き上げ塗布によりスラリーを塗布した後、乾燥して、厚みが20μmのセパレータを作製した。
【0089】
作製したセパレータ表面を倍率5000倍にてSEM観察した。このとき、20μm×15μmの視野において確認できる粒子径0.3μm以下の無機微粒子および粒子径1μm以上の無機微粒子の、無機微粒子全個数中の割合は、それぞれ、20%、15%であった。
【0090】
上記のセパレータについて、無機微粒子であるシリカの比重を2.2g/cm、バインダの比重を1g/cm、PETの比重を1.38g/cmとして算出した無機微粒子の体積含有率は、33.8%である。
【0091】
実施例2
無機微粒子を、大粒子径の板状ベーマイト(D10=0.393μm、D50=0.959μm、D90=1.767μm、アスペクト比10)500gと、小粒子径の板状ベーマイト(D10=0.132μm、D50=0.355μm、D90=1.030μm、アスペクト比20)500gとを混合したものに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。なお、SEM観察により、大粒子径の板状ベーマイトおよび小粒子径の板状ベーマイトについて、その形状が板状であることを確認した。
【0092】
また、上記のセパレータについて、実施例1と同じ条件でのSEM観察により求めた粒子径0.3μm以下の無機微粒子および粒子径1μm以上の無機微粒子の、無機微粒子全個数中の割合は、それぞれ13%、31%であった。
【0093】
上記のセパレータについて、無機微粒子であるベーマイトの比重を3.0g/cm、バインダの比重を1g/cm、PETの比重を1.38g/cmとして算出した無機微粒子の体積含有率は、32.6%である。
【0094】
実施例3
無機微粒子を、大粒子径の板状ベーマイト(D10=0.393μm、D50=0.959μm、D90=1.767μm、アスペクト比10)800gと、小粒子径の板状ベーマイト(D10=0.132μm、D50=0.355μm、D90=1.030μm、アスペクト比20)500gとを混合したものに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0095】
上記のセパレータについて、実施例1と同じ条件でのSEM観察により求めた粒子径0.3μm以下の無機微粒子および粒子径1μm以上の無機微粒子の、無機微粒子全個数中の割合は、それぞれ11%、42%であった。
【0096】
また、上記のセパレータについて、無機微粒子であるベーマイトの比重を3.0g/cm、バインダの比重を1g/cm、PETの比重を1.38g/cmとして算出した無機微粒子の体積含有率は、33.1%である。
【0097】
実施例4
無機微粒子を、大粒子径の板状ベーマイト(D10=0.393μm、D50=0.959μm、D90=1.767μm、アスペクト比10)200gと、小粒子径の板状ベーマイト(D10=0.132μm、D50=0.355μm、D90=1.030μm、アスペクト比20)800gとを混合したものに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0098】
上記のセパレータについて、実施例1と同じ条件でのSEM観察により求めた粒子径0.3μm以下の無機微粒子および粒子径1μm以上の無機微粒子の、無機微粒子全個数中の割合は、それぞれ20%、28%であった。
【0099】
また、上記のセパレータについて、無機微粒子であるベーマイトの比重を3.0g/cm、バインダの比重を1g/cm、PETの比重を1.38g/cmとして算出した無機微粒子の体積含有率は、31.3%である。
【0100】
実施例5
無機微粒子を、板状アルミナ(D10=0.426μm、D50=1.412μm、D90=2.107μm、アスペクト比25)570gと、小粒子径の板状ベーマイト(D10=0.132μm、D50=0.355μm、D90=1.030μm、アスペクト比20)430gとを混合したものに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0101】
上記のセパレータについて、実施例1と同じ条件でのSEM観察により求めた粒子径0.3μm以下の無機微粒子および粒子径1μm以上の無機微粒子の、無機微粒子全個数中の割合は、それぞれ11%、56%であった。
【0102】
また、上記のセパレータについて、無機微粒子であるαアルミナの比重を3.98g/cm、ベーマイトの比重を3.0g/cm、バインダの比重を1g/cm、PETの比重を1.38g/cmとして算出した板状アルミナの体積含有率は25.6%、板状ベーマイトの体積含有率は6.4%であり、以上より全無機微粒子の体積含有率は32.0%である。
【0103】
実施例6
無機微粒子を、球状アルミナ(D10=0.242μm、D50=0.487μm、D90=1.06μm)249gと、大粒子径の板状ベーマイト(D10=0.393μm、D50=0.959μm、D90=1.767μm、アスペクト比10)751gとを混合したものに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0104】
上記のセパレータについて、実施例1と同じ条件でのSEM観察により求めた粒子径0.3μm以下の無機微粒子および粒子径1μm以上の無機微粒子の、無機微粒子全個数中の割合は、それぞれ11%、40%であった。
【0105】
また、上記のセパレータについて、無機微粒子であるアルミナの比重を3.98g/cm、ベーマイトの比重を3.0g/cm、バインダの比重を1g/cm、PETの比重を1.38g/cmとして算出した球状アルミナの体積含有率は6.2%、板状ベーマイトの体積含有率は24.9%であり、以上より全無機微粒子の体積含有率は31.1%である。
【0106】
実施例7
無機微粒子を、球状アルミナ(D10=0.242μm、D50=0.487μm、D90=1.06μm)406gと、塊状シリカ(D10=0.284μm、D50=0.589μm、D90=1.343μm)594gとを混合したものに変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0107】
上記のセパレータについて、実施例1と同じ条件でのSEM観察により求めた粒子径0.3μm以下の無機微粒子および粒子径1μm以上の無機微粒子の、無機微粒子全個数中の割合は、それぞれ18%、11%であった。
【0108】
また、上記のセパレータについて、無機微粒子であるアルミナの比重を3.98g/cm、シリカの比重を2.2g/cm、バインダの比重を1g/cm、PETの比重を1.38g/cmとして算出した球状アルミナの体積含有率は6.6%、シリカの体積含有率は26.5%であり、以上より全無機微粒子の体積含有率は33.1%である。
【0109】
実施例8〜14
スラリー調製時に、熱溶融性微粒子としてPE微粒子(平均粒子径0.6μm、融点118℃)250gを更に加えた以外は、実施例1〜7と同様にしてセパレータを作製した。
【0110】
実施例8〜14のセパレータについて、実施例1と同じ条件でのSEM観察により求めた粒子径0.3μm以下の無機微粒子および粒子径1μm以上の無機微粒子の、無機微粒子全個数中の割合を、表1に示す。また、実施例8〜14のセパレータについて、PE微粒子の比重を1g/cmとした以外は、実施例1〜7のセパレータと同様にして求めた無機微粒子の体積含有率も、表1に併記する。
【0111】
比較例1
水1000g、無機微粒子として球状シリカ1000g、およびバインダとしてSBRラテックス(無機微粒子100質量部に対してSBR固形分が3質量部)を容器入れ、スリーワンモーターで1時間攪拌して分散させ、均一なスラリーを得た。なお、球状シリカの粒度分布は、D10=0.396μm、D50=0.874μm、D90=1.205μmであった。また、球状シリカをSEM観察し、その形状が球状であることを確認した。
【0112】
上記のスラリー中に、厚みが15μmのPET製不織布を通し、引き上げ塗布により、スラリーを塗布した後、乾燥して、厚みが20μmのセパレータを作製した。
【0113】
上記のセパレータについて、実施例1と同じ条件でのSEM観察により求めた粒子径0.3μm以下の無機微粒子および粒子径1μm以上の無機微粒子の、無機微粒子全個数中の割合は、それぞれ、7%、28%であった。
【0114】
上記のセパレータについて、無機微粒子であるシリカの比重を2.2g/cm、バインダの比重を1g/cm、PETの比重を1.38g/cmとして算出した無機微粒子の体積含有率は、28.5%である。
【0115】
比較例2
無機微粒子を球状アルミナ(D10=0.242μm、D50=0.487μm、D90=1.06μm)1000gに変更した以外は、比較例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0116】
上記のセパレータについて、実施例1と同じ条件でのSEM観察により求めた粒子径0.3μm以下の無機微粒子および粒子径1μm以上の無機微粒子の、無機微粒子全個数中の割合は、それぞれ13%、8%であった。
【0117】
また、上記のセパレータについて、無機微粒子であるアルミナの比重を4.0g/cm、バインダの比重を1g/cm、PETの比重を1.38g/cmとして算出した無機微粒子の体積含有率は、28.2%である。
【0118】
比較例3
無機微粒子を、実施例1で用いたシリカ粉砕品から、沈降分離により微粉を分離したもの(D10=0.487μm、D50=0.959μm、D90=1.587μm、アスペクト比10)1000gに変更した以外は、比較例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0119】
上記のセパレータについて、実施例1と同じ条件でのSEM観察により求めた粒子径0.3μm以下の無機微粒子および粒子径1μm以上の無機微粒子の、無機微粒子全個数中の割合は、それぞれ3%、53%であった。
【0120】
また、上記のセパレータについて、無機微粒子であるシリカの比重を2.2g/cm、バインダの比重を1g/cm、PETの比重を1.38g/cmとして算出した無機微粒子の体積含有率は、28.6%である。
【0121】
表1に、実施例1〜14および比較例1〜3のセパレータの構成を示す。また、実施例1〜14および比較例1〜3のセパレータについて、下記の方法により透気度を測定し、更に、熱溶融性微粒子を含有させた実施例8〜14のセパレータについて、下記のシャットダウン特性評価を行った。これらの結果を、セパレータの空隙率と合わせて表2に示す。
【0122】
<セパレータの透気度>
JIS P 8117に準拠した方法で測定され、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値によりセパレータの透気度を評価した。
【0123】
<セパレータのシャットダウン特性>
4cm×4cmの大きさに切断された各セパレータ片を、端子付きの2枚のステンレス板で挟み込みアルミラミネートフィルムの袋に挿入し、非水電解液を注入した後、端子の先を袋の外に出した状態で袋を封止して試験用の試料とした。ここで、非水電解液としては、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比1:2で混合した溶媒にLiPFを1.2mol/lの濃度で溶解させた溶液を用いた。上記試料を恒温槽に入れ、接点抵抗計により、上記端子に1kHzの交流を印加したときの抵抗値を測定しながら、室温から毎分1℃の割合で温度上昇させて加熱し、内部抵抗の温度変化を求めた。そして、抵抗値が室温での値の10倍以上となった時の温度を、セパレータのシャットダウン温度とした。
【0124】
【表1】

【0125】
【表2】

【0126】
更に、実施例1〜14および比較例1〜3のセパレータについて、下記の方法により耐短絡性を評価した。これらの結果は表3に示す。
【0127】
<耐短絡性>
実施例1〜14または比較例1〜3のセパレータを直径23mmの円形に打ち抜き、該セパレータ片を、18mmの円形に打ち抜いた金属リチウムを貼り付けたステンレス板の金属リチウム側と18mmの円形に打ち抜いた銅箔とで挟み込み、ステンレス製のセル中央に設置した。ここで、セル内部に非水電解液として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比1:2で混合した溶媒に、LiPFを1.2mol/lの濃度で溶解させた溶液を注入し、ステンレス板上部より巻きばねで均一に加重した状態で完全に蓋をした。なお、このセルについて、銅箔側と金属リチウム側とは、電気的に絶縁された状態にあり、金属リチウム側を正極、銅箔側を負極として、それぞれに端子を接続した。
【0128】
このように作成されたモデルセルについて、電流値の上限を60mAとして、0mAから6mA/6minの割合で上昇させながら銅箔上へLi電析を行い、短絡が確認された時点の電流を短絡電流とした。すなわち、短絡電流が大きいほど、セパレータの耐短絡性が優れているといえる。
【0129】
実施例15
<負極の作製>
負極活物質である黒鉛95質量部と、バインダであるPVDF5質量部とをNMPを溶剤として均一になるように混合して負極合剤含有ペーストを調整した。この負極合剤含有ペーストを、銅箔からなる厚さ10μmの集電体の両面に、活物質塗布長が表面320mm、裏面260mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って全厚が142μmになるように負極合剤の厚みを調整し、幅45mmになるように切断して、長さ330mm、幅45mmの負極を作成した。さらにこの負極の銅箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。
【0130】
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO:85質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック10質量部と、バインダであるPVDF5質量部とを、NMPを溶剤として均一になるように混合して、正極合剤含有ペーストを調整した。このペーストを、集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、活物質塗布長が、表面320mm、裏面260mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って全厚が150μmになるように正極合剤層の厚みを調整し、その後裁断して、長さ330mm、幅43mmの正極を作製した。更にこの正極のアルミニウム箔の露出部にタブを溶接して、リード部を形成した。
【0131】
<電池の組み立て>
上記のようにして得られた正極と負極とを、幅47mmにスリットした実施例1のセパレータを介して渦巻状に巻回して巻回電極体とした。この巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、ラミネートフィルム外装材内に装填し、電解液(エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを1:2の体積比で混合した溶媒に、LiPFを1mol/lの濃度で溶解させた溶液)を注入し、真空封止を行って非水電解質電池を作製した。
【0132】
実施例16〜28および比較例4〜6
セパレータを実施例2〜14または比較例1〜3のものに変更した他は、実施例15と同様にして非水電解質電池を作製した。
【0133】
実施例15〜28および比較例4〜6の非水電解質電池について、下記の充放電効率評価、負荷特性評価および耐短絡性評価を行った。結果を表3に示す。
【0134】
<充放電効率>
実施例15〜28および比較例4〜6の非水電解質電池について、0.2Cでの定電流充電(4.2Vまで)と4.2Vでの定電圧充電による充電(定電流充電と定電圧充電の合計時間15時間)の後、3.0Vまで0.2Cで放電を行い、充放電効率(充電容量に対する放電容量の割合を百分率で示したもの)を求めた。なお、充放電効率はそれぞれ電池10個の平均値として求めた。
【0135】
<負荷特性>
0.2Cでの定電流充電(4.2Vまで)と4.2Vでの定電圧充電による充電(定電流充電と定電圧充電の合計時間15時間)の後、3.0Vまで所定電流値で放電を行い、そのときの放電容量を、充放電効率評価の際に求めた0.2C放電での放電容量で除したものを百分率で表して、電池の負荷特性を評価した。なお、放電時の電流値は、1Cと2Cとした。
【0136】
【表3】

【0137】
表3より次のことが分かる。実施例15〜28の非水電解質電池では、負荷特性はいずれも2Cでの放電容量が0.2Cでの放電容量の85〜92%と高い値であり、かつ、これらの非水電解質電池に用いたセパレータ(実施例1〜14のセパレータ)は、短絡電流がいずれも60mAを超えており、高い耐短絡性を備えていることが確認できた。
【0138】
なお、実施例1〜14のセパレータでは、上記の通り、短絡電流が60mAを超えているが、これらの結果から、実施例1〜14のセパレータを用いた非水電解質電池(例えば、実施例15〜28の非水電解質電池)では、10Cの電流値で充電しても短絡が生じないと推測される。
【0139】
また、実施例15〜28の非水電解質電池は、正極、負極およびセパレータを重ね合わせて渦巻状に巻回し、更に扁平状に押しつぶした形状の巻回電極体を有しているが、実施例15〜28の非水電解質電池では、充放電効率および負荷特性が良好に評価できており、上記のような形態の巻回電極体であっても、セパレータの欠陥に基づく短絡が生じていない。よって、本発明のセパレータは、巻回電極体(特に扁平状の巻回電極体)を有する電池に用いても、優れた信頼性を確保できることが分かる。
【0140】
一方、比較例4〜6の非水電解質電池においては、2Cでの放電容量が0.2Cでの放電容量の87〜91%であり負荷特性は良好であるものの、これらの電池に用いたセパレータ(比較例1〜3のセパレータ)は、短絡電流が18〜30mAと低く、このようなセパレータを有する電池も、実施例1〜14の電池に比べると耐短絡性が劣っているといえ、負荷特性と耐短絡性とが、良好に両立できていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも150℃で実質的に変形しない繊維状物と、少なくとも150℃で実質的に変形しない無機微粒子を有する多孔質膜からなり、
上記無機微粒子の全個数中における粒子径0.3μm以下の粒子の個数および粒子径1μm以上の粒子の個数が、それぞれ10%以上であることを特徴とする電池用セパレータ。
【請求項2】
無機微粒子が、シリカ、ベーマイトまたはアルミナである請求項1に記載の電池用セパレータ。
【請求項3】
無機微粒子の一部または全部が、繊維状物で構成されたシート状物の空隙内に存在している請求項1または2に記載の電池用セパレータ。
【請求項4】
繊維状物で構成されたシート状物は、織布または不織布である請求項3に記載の電池用セパレータ。
【請求項5】
80〜130℃で溶融する粒子を更に有している請求項1〜4のいずれかに記載の電池用セパレータ。
【請求項6】
正極、負極、非水電解液および請求項1〜5のいずれかに記載の電池用セパレータを有することを特徴とする非水電解質電池。
【請求項7】
電池用セパレータが、正極および負極の少なくとも一方と一体化している請求項6に記載の非水電解質電池。


【公開番号】特開2008−210541(P2008−210541A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43445(P2007−43445)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】