説明

電池用組成物

【課題】導電助剤を含む電池用組成物において、導電助剤の導電性を阻害せずに分散安定化を図ること、炭素材料である導電助剤の電解液に対する濡れ性を向上させること、並びに、本発明の電池用組成物を用いて作製される電池の電池性能を向上させること。
【解決手段】塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を含んでなる電池用組成物により解決。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を構成する電極を作製するために使用する組成物及びその製造方法に関する。特に、本発明の電極用組成物は、リチウム二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、アルカリマンガン電池、鉛電池、燃料電池、キャパシタ等に用いることができるが、特にリチウム二次電池に用いると好適である。
【0002】
又、本発明は、大電流での放電特性あるいは充電特性、サイクル特性、及び電極合剤の導電性に優れ、電極集電体と電極合剤との接触抵抗が小さい電極を具備するリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきた。これらの電子機器には、容積を最小限にし、かつ重量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される電池においても、小型、軽量かつ大容量の電池の実現が求められている。又、自動車搭載用等の大型二次電池においても、従来の鉛蓄電池に代えて、大型の非水電解質二次電池の実現が望まれている。
【0004】
そのような要求に応えるため、リチウム二次電池の開発が活発に行われている。リチウム二次電池の電極としては、リチウムイオンを含む正極活物質と導電助剤と有機バインダー等からなる電極合剤を金属箔の集電体の表面に固着させた正極、及び、リチウムイオンの脱挿入可能な負極活物質と導電助剤と有機バインダー等からなる電極合剤を金属箔の集電体の表面に固着させた負極が使用されている。
【0005】
一般的に、正極活物質としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物が用いられているが、これらは電子伝導性が低く、単独での使用では十分な電池性能が得られない。そこで、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)等の炭素材料を導電助剤として添加することで導電性を改善し、電極の内部抵抗を低減することが試みられている。とりわけ電極の内部抵抗を低減することは、大電流での放電を可能とすることや、充放電の効率を向上させる上で非常に重要となっている。
【0006】
一方、負極活物質としては、通常グラファイト(黒鉛)が用いられている。黒鉛はそれ自身が導電性を有しているものの、黒鉛とともに導電助剤としてアセチレンブラック等のカーボンブラックを添加すると充放電特性が改善されることが知られている。これは、一般に用いられる黒鉛粒子は大きいために、黒鉛単独で使用すると電極層に充填された時の隙間が多くなってしまうが、導電助剤としてカーボンブラックを併用した場合は、微細なカーボンブラック粒子が黒鉛粒子間の隙間を埋めることで接触面積が増え、抵抗が下がるためではないかと思われる。しかしながら、この場合も導電助剤の分散が不十分であると、導電効果が低減する。
【0007】
この様に、とりわけ電極の内部抵抗を低減することは、大電流での放電を可能とすることや、充放電の効率を向上させる上で非常に重要な要素の一つとなっている。
【0008】
しかしながら、導電性に優れた炭素材料(導電助剤)は、ストラクチャーや比表面積が大きいため凝集力が強く、リチウム二次電池の電極合剤形成用スラリー中に均一混合・分散することが困難である。そして、導電助剤である炭素材料の分散性や粒度の制御が不十分な場合、均一な導電ネットワークが形成さないために電極の内部抵抗の低減が図れず、その結果、活物質であるリチウム遷移金属複合酸化物やグラファイト等の性能を十分に引き出せないという問題が生じている。又、電極合剤中の導電助剤の分散が不十分である
と、部分的凝集に起因して電極板上に抵抗分布が生じ、電池として使用した際に電流が集中し、部分的な発熱及び劣化が促進される等の不具合が生ずることがある。
【0009】
又、金属箔等の電極集電体上に電極合剤層を形成する場合、多数回充放電を繰り返すと、集電体と電極合剤層の界面や、電極合剤内部における活物質と導電助剤界面の密着性が悪化し、電池性能が低下する問題がある。これは、充放電におけるリチウムイオンのドープ、脱ドープにより活物質及び電極合剤層が膨張、収縮を繰り返すために、電極合剤層と集電体界面及び、活物質と導電助剤界面に局部的なせん断応力が発生し界面の密着性が悪化するためと考えられている。そしてこの場合も、導電助剤の分散が不十分であると、密着低下が著しくなる。これは、粗大な凝集粒子が存在すると、応力が緩和されにくくなるためであると思われる。
【0010】
又、電極集電体と電極合剤間の問題として、例えば正極の集電体としてアルミニウムを用いると、この表面に絶縁性の酸化皮膜が形成され、電極集電体と電極合剤間の接触抵抗が上昇するといった問題もある。
【0011】
前述の様な電極集電体と電極合剤間の不具合に対して、いくつかの提案がなされている。例えば特許文献1及び特許文献2には、カーボンブラック等の導電剤を分散した塗膜を、電極下地層として集電極上に形成する方法が試みられているが、この場合も導電剤の分散が悪いと十分な効果が得られない。
【0012】
リチウム二次電池においては導電助剤である炭素材料の分散が重要なポイントの一つである。特許文献3、特許文献4には、カーボンブラックを溶剤に分散する際に、分散剤として界面活性剤を用いる例が記載されている。しかしながら、界面活性剤は炭素材料表面への吸着力が弱いため、良好な分散安定性を得るには界面活性剤の添加量を多くしなければならず、この結果、含有可能な活物質の量が少なくなり、電池容量が低下してしまう。又、界面活性剤の炭素材料への吸着が不十分であると、炭素材料が凝集してしまう。又、一般的な界面活性剤では、水溶液中での分散と比較して、有機溶剤中での分散効果が著しく低い。
【0013】
又、特許文献5及び特許文献6には、カーボンブラックを溶剤又は水に分散する際に、分散樹脂を添加することでカーボンスラリーの分散状態を改善し、そのカーボンスラリーと、活物質とを混合して、電極用合剤を作製する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、カーボンブラックの分散性は向上するものの、比表面積の大きな微細なカーボンブラックの分散を行う場合には大量の分散樹脂が必要となること、及び分子量の大きな分散樹脂がカーボンブラック表面を被覆してしまうこと等から、導電ネットワークが阻害され電極の抵抗が増大し、結果的にカーボンブラックの分散向上による効果を相殺してしまう場合がある。
【0014】
更に、電極材料の分散性の向上と併せて、充放電の効率を向上させる上で重要な要素としては、電極の電解液に対する濡れ性の向上が挙げられる。電極反応は、電極材料表面と電解液との接触界面で起こるため、電解液が電極内部まで浸透し電極材料が良く濡れることが重要となる。電極反応を促進させる方法としては、微細な活物質や導電助剤を用いて電極の表面積を増大させる方法が検討されているが、特に炭素材料を用いる場合は、電解液に対する濡れが悪く、実際の接触面積が大きくならないため、電池性能の向上が難しいといった問題がある。
【0015】
電極の濡れ性を改善する方法として、特許文献7には、電極中に繊維径1〜1000nmの炭素繊維を含有させることで、活物質粒子間に微細な空隙を持たせる方法が開示されている。しかしながら、通常、炭素繊維は複雑に絡み合っているため、均一な分散が難し
く、炭素繊維を混ぜるだけでは、均一な電極を作製することができない。又、同文献では、分散制御のために炭素繊維の表面を酸化処理した炭素繊維を使用する方法も挙げられているが、炭素繊維を直接、酸化処理すると、炭素繊維の導電性や強度が低下してしまうという問題がある。又、特許文献8には、炭素粉末を主剤とする負極材料に高級脂肪酸アルカリ塩の様な界面活性剤を吸着させ、濡れ性を改善する方法が開示されているが、上述したように界面活性剤は特に非水系での分散性能が十分でないことが多く、均一な電極塗膜が得られない。これらの例では、いずれも電極材料の分散性を含めたトータルでの性能としては不十分であった。
【特許文献1】特開2000−123823号公報
【特許文献2】特開2002−298853号公報
【特許文献3】特開昭63−236258号公報
【特許文献4】特開平8−190912号公報
【特許文献5】特開2003−157846号公報
【特許文献6】特表2006−516795号公報
【特許文献7】特開2005−063955号公報
【特許文献8】特開平6−60877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、導電助剤を含む電池用組成物において、導電助剤の導電性を阻害せずに分散安定化を図ること、炭素材料である導電助剤の電解液に対する濡れ性を向上させること、並びに、本発明の電池用組成物を用いて作製される電池の電池性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題は、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を含んでなる電池用組成物により解決される。
【0018】
又、本発明は、誘導体の酸性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基、及び燐酸基からなる群から選ばれる1種類以上の酸性官能基である前記電池用組成物に関する。
【0019】
又、本発明は、誘導体の塩基性基が、アミノ基である前記電池用組成物に関する。
【0020】
又、本発明は、導電助剤としての炭素材料の分散粒径(D50)が、2μm以下である前記電池用組成物に関する。
【0021】
更に、本発明は、ビニルアミド系樹脂以外のバインダー成分、を含んでなる前記電池用組成物に関する。
【0022】
又、本発明は、バインダー成分が、分子内にフッ素原子を含む高分子化合物である前記電池用組成物に関する。
【0023】
本発明は、更に、溶剤を含んでなる前記電池用組成物に関する。
【0024】
本発明は、更に、正極活物質又は負極活物質、を含んでなる前記電池用組成物に関する。
【0025】
更に、本発明は、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を溶剤に分散する電池用組成物の製造方法に関する。
【0026】
又、本発明は、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、正極活物質又は負極活物質と、を溶剤に共分散する電池用組成物の製造方法に関する。
【0027】
又、本発明は、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、正極活物質又は負極活物質と、バインダー成分と、を溶剤に共分散する電池用組成物の製造方法に関する。
【0028】
又、本発明は、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を溶剤に分散してなる分散体に、正極活物質又は負極活物質を混合する電池用組成物の製造方法に関する。
【0029】
又、本発明は、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を溶剤に分散してなる分散体に、正極活物質又は負極活物質と、バインダー成分と、を混合する電池用組成物の製造方法に関する。
【0030】
又、本発明は、
ビニルアミド系樹脂、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の処理剤、又は、
ビニルアミド系樹脂、酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の処理剤、
で、あらかじめ処理された導電助剤としての炭素材料を使用する前記電池用組成物の製造方法に関する。
【0031】
更に、本発明は、集電体上に正極合剤層を有する正極と、集電体上に負極合剤層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備するリチウム二次電池であって、正極合剤層又は負極合剤層が、前記電池用組成物を使用して形成されてなるリチウム二次電池に関する。
【0032】
更に、本発明は、集電体上に正極合剤層を有する正極と、集電体上に負極合剤層を有する負極と、リチウムを含む電解質と、を具備するリチウム二次電池であって、正極合剤層と集電体との間及び/又は負極合剤層と集電体との間に、前記電池用組成物を使用して形成してなる電極下地層を有するリチウム二次電池に関する。
【0033】
更に、本発明は、前記製造方法により製造された電池用組成物を使用して形成されてなるリチウム二次電池に関する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の好ましい実施態様によれば、導電助剤の導電性を阻害することなく、分散安定性に優れた電池組成物を得ることができる。更に、本発明の好ましい実施態様に係る電池用組成物を、リチウム二次電池等の電極に使用することにより、電極活物質及び導電助剤が、電極合剤中に均一に混合され、電極集電体と電極合剤との密着性、活物質と導電助剤との密着性、並びに電極合剤の電解液に対する濡れ性が、改善されて、電極の内部抵抗の低減を促すと共に、充放電の効率を向上することができ、電池性能を総合的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明における電池用組成物は、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を含んでなることを特徴とするが、以下にその詳細を説明する。
【0036】
<導電助剤としての炭素材料>
本発明における導電助剤としては、炭素材料が最も好ましい。炭素材料としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー、及びフラーレン等を単独で、若しくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、及びコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
【0037】
カーボンブラックとしては、気体若しくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、及び、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラック等の各種のものを単独で、若しくは2種類以上併せて使用することができる。又、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0038】
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
【0039】
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m2/g以上、1500m2/g以下、好ましくは50m2/g以上、1500m2/g以下、更に好ましくは100m2/g以上、
1500m2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m2/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
【0040】
又、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡等で測定された粒子径を平均したものである。
【0041】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、
トーカブラック#4300、#4400、#4500、及び#5500等の東海カーボン社製ファーネスブラック;
プリンテックスL等のデグサ社製ファーネスブラック;
Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA、Conductex SC ULTRA、975 ULTRA、PUER BLACK100、115、及び205等のコロンビヤン社製ファーネスブラック;
#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、及び#5400B等の三菱化学社製ファーネスブラック;
MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、及びBlackPearls2000等のキャボット社製ファーネスブラック;
Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、及びSuperP−Li等のTIMCAL社製ファーネスブラック;
ケッチェンブラックEC−300J、及びEC−600JD等のアクゾ社製ケッチェンブラック、並びに、
デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35等の電気化学工業社製アセチレンブラック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
<塩基性官能基を有する各種誘導体>
本発明における塩基性官能基を有する誘導体としては、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性基官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から1種類以上選ばれるものである。以下、塩基性官能基を有する各種誘導体、あるいは塩基官能基を有する誘導体と略す場合がある。
【0043】
とりわけ、下記一般式(2)で示されるトリアジン誘導体、又は一般式(7)で示される有機色素誘導体の使用が好ましい。
【0044】
一般式(2):
【0045】
【化1】

【0046】
[一般式(2)中
1は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−、又は−X2−Y1−X3−であり、
2は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−、又は−NHSO2−であり、
3は、それぞれ独立に−NH−、又は−O−であり、
1は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
Pは、下記一般式(3)、(4)、又は(5)のいずれかで示される置換基であり、
Qは、−O−R2、−NH−R2、ハロゲン基、−X1−R1、又は下記一般式(3)、(4)、若しくは(5)のいずれかで示される置換基であり、
2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、
1は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基、又は下記一般式(6)で示される基であり、
1は、1〜4の整数である。
【0047】
一般式(3):
【0048】
【化2】

【0049】
一般式(4):
【0050】
【化3】

【0051】
一般式(5):
【0052】
【化4】

【0053】
〔一般式(3)〜(5)中、
4は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、−CH2−、又は−X5−Y2−X6−であり、
5は、−NH−、又は−O−であり、
6は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、又は−CH2−であり、
2は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
vは、1〜10の整数であり、
3 及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基、又はR3 とR4とで一体となって更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環残基であり、
5 、R6 、R7 、及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアリール基であり、
9は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアリール基である。〕
【0054】
一般式(6):
【0055】
【化5】

【0056】
〔一般式(6)中、
Tは、−X8−R10、又はW1であり、
Uは、−X9−R11、又はW2であり、
1、及びW2は、それぞれ独立に、−O−R20、−NH−R20、ハロゲン基、又は前記一般式(3)、(4)、若しくは(5)のいずれかで示される置換基であり、
20は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、
7は、−NH−、又は−O−であり、
8、及びX9は、それぞれ独立に、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、又は−CH2NHCOCH2NH−であり、
3は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
10、及びR11は、それぞれ独立に、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、又は置換基を有していてもよい芳香族環残基である。〕}
【0057】
一般式(2)のR1、並びに、一般式(6)のR10、及びR11で表される有機色素残基としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、及び金属錯体系色素等が挙げられる。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましい。
【0058】
一般式(2)のR1、並びに、一般式(6)のR10、及びR11で表される複素環残基及び芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラジン、トリアジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン、及びアクリドン等が挙げられる。これらの複素環残基、及び芳香族環残基は、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、及びジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、及びブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素、及びフッ素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン等で置換されていてもよい)、並びに、フェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい。
【0059】
一般式(3)及び(4)中のR3、及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基、又はR3 とR4とで一体となって更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環残基である。
【0060】
一般式(2)〜(6)のY1、Y2、及びY3は、それぞれ独立に、炭素数20以下の置換基を有していてもよいアルキレン基、アルケニレン基、又はアリーレン基を表すが、好ましくは置換されていてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は炭素数が10以下の側鎖を有していてもよいアルキレン基が挙げられる。
【0061】
一般式(7):
【0062】
【化6】

【0063】
{一般式(7)中、
Zは、下記一般式(8)、(9)、及び(10)で示される群から選ばれる少なくとも1つのものであり、
2は、1〜4の整数であり、
12は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、又は置換基を有していてもよい芳香族残基である。
【0064】
一般式(8):
【0065】
【化7】

【0066】
一般式(9):
【0067】
【化8】

【0068】
一般式(10):
【0069】
【化9】

【0070】
〔一般式(8)〜(10)中、
10は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、−CH2−、又は−X11−Y4−X12−であり、
11は、−NH−、又は−O−であり、
12は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、又は−CH2−であり、
4は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
1は、1〜10の整数であり、
13 、及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、又はR3とR4とで一体となって更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環残基であり、
15 、R16 、R17 、及びR18は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアリール基であり、
19は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアリール基である。〕}
【0071】
一般式(7)のR12で表される有機色素残基としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、及び金属錯体系色素等が挙げられる。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましい。
【0072】
又、一般式(7)のR12で表される複素環残基及び芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン、及びアクリドン等が挙げられる。これらの複素環残基及び芳香族環残基は、アルキル基(メチル基、エチル基、及びブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、及びジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、及びブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素、及びフッ素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、及びハロゲン等で置換されていてもよい)、並びに、フェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、及びハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい。
【0073】
又、一般式(8)及び(9)中のR13 、及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、又はR13 とR14とで一体となって更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環残基である。
【0074】
一般式(3)〜(5)、並びに、一般式(7)〜(9)で示される置換基を形成するために使用されるアミン成分としては、例えば、
ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジ ン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエ チルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、及び1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
【0075】
本発明の塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、又は塩基性官能基を有する塩基性官能基を有するトリアジン誘導体の合成方法としては、特に限定されるものではないが、特開昭54−62227号公報、特開昭56−118462号公報、特開昭56−166266号公報、特開昭60−88185号公報、特開昭63−305173号公報、特開平3−2676号公報、又は特開平11−199796号公報等に記載されている方法で合成することができる。
【0076】
例えば、有機色素、アントラキノン、若しくはアクリドンに、一般式(11)〜一般式(14)で示される置換基を導入した後、これら置換機とアミン成分(例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミン、若しくは4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等)を反応させることによって、合成することができる。
【0077】
一般式(11):
−SO2Cl
一般式(12):
−COCl
一般式(13):
−CH2NHCOCH2Cl
一般式(14):
−CH2Cl
【0078】
又、例えば、一般式(11)で示される置換基を導入する場合には、有機色素、アントラキノン、若しくはアクリドンをクロロスルホン酸に溶解して、塩化チオニル等の塩素化剤を反応させるが、このときの反応温度、反応時間等の条件により、有機色素、アントラキノン、若しくはアクリドンに導入する一般式(11)で示される置換基数をコントロールすることができる。
【0079】
又、一般式(12)で示される置換基を導入する場合には、まずカルボキシル基を有する有機色素、アントラキノン、若しくはアクリドンを公知の方法で合成した後、ベンゼン等の芳香族溶媒中で塩化チオニル等の塩素化剤を反応させる方法等が挙げられる。
【0080】
一般式(11)〜一般式(14)で示される置換基とアミン成分との反応時には、一般式(11)〜一般式(14)で示される置換基の一部が加水分解して、塩素が水酸基に置換することがある。その場合、一般式(11)で示される置換基はスルホン酸基となり、一般式(12)で示される置換基はカルボン酸基となるが、いずれも遊離酸のままでもよく、又、1〜3価の金属若しくは、上記のアミンと塩を形成していてもよい。
【0081】
又、有機色素がアゾ系色素である場合は、一般式(8)〜(10)、又は下記一般式(15)で示される置換基をあらかじめジアゾ成分又はカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによってアゾ系有機色素誘導体を製造することもできる。
【0082】
一般式(15):
【0083】
【化10】

【0084】
{一般式(15)中、
13は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−、又は−X14−Y5−X15−であり、
14は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−、又は−NHSO2−であり、
15は、それぞれ独立に、−NH−、又は−O−であり、
5は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
1は、上記一般式(3)、(4)、又は(5)のいずれかで示される置換基であり、
2は、−O−R24、−NH−R24、ハロゲン基、−X1−R25、又は上記一般式(3)、(4)、若しくは(5)のいずれかで示される置換基であり、
24は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、
25は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基、又は上記一般式(6)で示される基である。}
【0085】
又、本発明の塩基性官能基を有するトリアジン誘導体は、例えば、塩化シアヌルを出発原料とし、塩化シアヌルの少なくとも1つの塩素に上記一般式(8)〜(10)、又は一般式(15)で示される置換基を形成するアミン成分(例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、若しくはN−メチルピペラジン等)を反応させ、次いで塩化シアヌルの残りの塩素と種々のアミン又はアルコール等を反応させることによって得られる。
【0086】
<酸性官能基を有する各種誘導体>
本発明における酸性官能基を有する誘導体としては、酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体から選ばれる1種以上のものを使用する。以下、酸性官能基を有する各種誘導体、あるいは酸性官能基を有する誘導体と略す場合がある。
【0087】
とりわけ、下記一般式(16)で示されるトリアジン誘導体、又は一般式(19)で示される有機色素誘導体の使用が好ましい。
【0088】
一般式(16):
【0089】
【化11】

【0090】
一般式(1)中、
101は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−、又は−X103−Y101−X104−であり、
102、及びX104は、それぞれ独立に、−NH−、又は−O−であり、
103は、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−、又は−NHSO2−であり、
101は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
101は、−SO3M、−COOM、又は−P(O)(−OM)2であり、
101は、1〜3価のカチオンの一当量であり、
101は、−O−R102、−NH−R102、ハロゲン基、−X101−R101、又は−X102−Y101−Z101であり、
102は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアルケニル基であり、
101は、1〜4の整数であり、
101は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基、又は下記一般式(17)で表される基である。
【0091】
一般式(17):
【0092】
【化12】

【0093】
一般式(2)中、
201は、−NH−、又は−O−であり、
202、及びX203は、それぞれ独立に、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、又は−CH2NHCOCH2NH−であり、
201、及びR202は、それぞれ独立に、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基、又は−Y201−Z201であり、
201は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
201は、−SO3201、−COOM201、又は−P(O)(−OM2012であり、
201は、1〜3価のカチオンの一当量である。
【0094】
一般式(16)のR101、並びに、一般式(17)のR201及びR202で表される有機色素残基としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、又金属錯体系色素等が挙げられる。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましく、中でもアゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、又はジオキサジン系色素の使用が分散性に優れるため好ましい。
【0095】
一般式(16)のR101、並びに、一般式(17)のR201及びR202で表される複素環残基及び芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、又はアントラキノン等が挙げられる。とりわけ、少なくともS、N、Oのヘテロ原子のいずれかを含む複素環残基の使用が分散性に優れるため好ましい。
【0096】
一般式(16)のY101、及び一般式(17)のY201は、炭素数20以下の置換基を有していてもよいアルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表すが、好ましくは置換されていてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は炭素数が10以下の側鎖を有していてもよいアルキレン基が挙げられる。
【0097】
一般式(16)のQ101中に含まれるR102で表される置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基は、好ましくは炭素数20以下のものであり、更に好ましくは炭素数が10以下の側鎖を有していてもよいアルキル基が挙げられる。置換基を有しているアルキル基又はアルケニル基とは、アルキル基又はアルケニル基の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、若しくは臭素原子等のハロゲン基、水酸基、又はメルカプト基等に置換されたものである。
【0098】
一般式(16)のM101及び一般式(17)のM201は、1〜3価のカチオンの一当量を表し、例えば、水素原子(プロトン)、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかを表す。又、分散剤構造中にMを2つ以上有する場合、Mはプロトン、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかひとつのみでも良いし、これらの組み合わせでも良い。
【0099】
金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、又はコバルト等が挙げられる。
【0100】
4級アンモニウムカチオンとしては、一般式(18)で示される構造を有する単一化合物又は、混合物である。
【0101】
一般式(18):
【0102】
【化13】

【0103】
一般式(18)中、R301、R302、R303、及びR304は、水素、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよいアリール基のいずれかである。
【0104】
一般式(18)のR301、R302、R303、及びR304は、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。又、R301、R302、R303、及びR304が、炭素原子を有する場合、炭素数は1〜40、好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。炭素数が40を超えると電極の導電性が低下する場合がある。
【0105】
4級アンモニウムの具体例としては、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジヒドロキシエチルアンモニウム、2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアンモニウム、ラウリルアンモニウム、又はステアリルアンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
一般式(19):
【0107】
【化14】

【0108】
一般式(19)中、
401、直接結合、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−、−X402−Y−、又は−X402−Y−X403−であり、
402は、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−、又は−NHSO2−であり、
403は、−NH−、又は−O−であり、
401は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
401は、−SO3401、−COOM401、又は−P(O)(−OM4012であり、
401は、1〜3価のカチオンの一当量であり、
401は、有機色素残基であり、
401は、1〜4の整数である。
【0109】
一般式(19)のR401で表させる有機色素残基としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、又は金属錯体系色素等が挙げられる。R401で表させる有機色素残基には、一般的には色素と呼ばれていない淡黄色のアントラキノン残基を含む。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましく、中でもアゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、又はジオキサジン系色素の使用が分散性に優れるため好ましい。
【0110】
一般式(19)の式中のM401は、1〜3価のカチオンの一当量を表し、例えば、水素原子(プロトン)、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかを表す。又、分散剤構造中にMを2つ以上有する場合、M401はプロトン、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかひとつのみでも良いし、これらの組み合わせでも良い。
【0111】
金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、又はコバルト等が挙げられる。
【0112】
4級アンモニウムカチオンとしては、一般式(18)で示される構造を有する単一化合物又は、混合物である。
【0113】
一般式(18):
【0114】
【化15】

【0115】
一般式(18)中、R301、R302、R303、及びR304は、水素、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよいアリール基のいずれかである。
【0116】
一般式(18)のR301、R302、R303、及びR304は、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。又、R301、R302、R303、及びR304が、炭素原子を有する場合、炭素数は1〜40、好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。炭素数が40を超えると電極の導電性が低下する場合がある。
【0117】
4級アンモニウムの具体例としては、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジヒドロキシエチルアンモニウム、2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアンモニウム、ラウリルアンモニウム、又はステアリルアンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
上記酸性官能基を有する各種誘導体の合成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特公昭39−28884号公報、特公昭45−11026号公報、特公昭45−29755号公報、特公昭64−5070号公報、特開2004−217842号公報等に記載されている方法で合成することができる。
【0119】
<塩基性又は酸性官能基を有する各種誘導体の効果>
上記の塩基性官能基を有する各種誘導体又は酸性官能基を有する各種誘導体(以下、塩基性又は酸性官能基を有する誘導体と略す場合がある。更に、単に誘導体と略す場合がある。)の効果のひとつとして、添加した誘導体が炭素材料表面に作用(例えば吸着)することにより、分散効果を発揮するものと考えられる。
【0120】
すなわち、塩基性又は酸性官能基を有する誘導体を溶剤中に完全ないしは一部溶解させ、その溶液中に炭素材料を添加、混合することで、これら誘導体の炭素材料への作用(例えば吸着)が進み、炭素材表面に作用(例えば吸着)した誘導体が有する塩基性官能基又は酸性官能基の極性により、炭素表面の溶剤に対する濡れが促進され、炭素材の凝集が解しやすくなるものと考えられる。
【0121】
又、後述するビニルアミド系樹脂の共鳴により生じるカチオンと上記誘導体が有する酸性官能基との相互作用、又はビニルアミド系樹脂の共鳴により生じるアニオンと上記誘導体とが有する塩基性官能基の相互作用により、炭素材料と樹脂成分との密着性が向上するとともに、炭素材料の分散安定性が更に増すと考えられる。
【0122】
更に、ビニルアミド系樹脂を介して、炭素材料とバインダー成分であるフッ素原子含有高分子化合物等との密着性も向上するため、電極集電体若しくは電極合剤中の活物質との密着性も向上すると考えられる。
【0123】
<ビニルアミド系樹脂>
本発明の電池用組成物に使用するビニルアミド系樹脂としては特に限定はされないが、例えばポリビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンのグラフト共重合体、及びビニルピロリドンとコモノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0124】
ビニルピロリドンと共重合できるコモノマーとしては、α−オレフィン、酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリル酸、硫酸ビニルナトリウム、塩化ビニル、ビニルピロリジン、トリメチルシロキシビニルシラン、プロピオン酸ビニル、ビニルカプロラクタム、メチルビニルケトン等が挙げられる。
【0125】
又、前記ビニルアミド系樹脂を有機酸又は無機酸処理による酸変性物等も用いられる。
【0126】
前記ビニルアミド系樹脂の中でも、特に、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−1-ブテン共重合体、若しくはビニルピロリドン−スチレン共重合体等のほぼ中性のビニルアミド系樹脂、又は、有機酸、若しくは無機酸で処理したポリビニルピロリドンの酸変性物が好適に用いられる。
【0127】
本発明の電池用組成物に使用するビニルアミド系樹脂がカーボンブラックの分散に効果があるのは、使用される溶媒が水又は水系溶媒、溶剤系のいずれにおいても溶媒に対する濡れ性に優れるために、カーボンブラックと溶媒との相互作用を円滑に進め、活物質同士の凝集が極めて少なくなるためであると推察される。特に極性が高い溶媒を用いる場合、分散効果が極めて高くなる。
【0128】
又、ビニルアミド系樹脂は、一般式(20)に示すような共鳴構造をとるために、酸性官能基、塩基性官能基どちらとも相互作用することが可能である。このため、先述の通り、カーボンブラック分散時に、ビニルアミド系樹脂と塩基性官能基を有する各種誘導体とを併用した場合でも、又は、ビニルアミド系樹脂と酸性官能基を有する各種誘導体とを併用した場合でも、ビニルアミド系樹脂と誘導体の官能基とが相互作用し、炭素材料と樹脂成分との密着性が向上するとともに、炭素材料の分散安定性が更に増すと考えられる。
【0129】
一般式(20):
【0130】
【化16】

【0131】
一般式(20)中、R501、及びR502は、水素、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよいアリール基のいずれかである。
【0132】
<中和剤>
本発明の電池組成物には中和剤を添加することも出来る。塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種類以上の誘導体を用いる場合は、中和剤として酸を用いることができ、酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種類以上の誘導体を用いる場合は、中和剤として塩基を用いることができる。
【0133】
塩基性官能基又は酸性官能基を有する誘導体の塩基性官能基又は酸性官能基の一部若しくは全部を中和することで、誘導体が吸着したカーボンブラック表面が電荷を帯び、その反発により分散性が向上する。
【0134】
酸としては、例えば、塩酸、硫酸、及び燐酸等の無機酸、並びに、蟻酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。塩基性官能基を有する誘導体に対して用いる酸の量は、使用する誘導体が有する塩基性官能基の0.1等量〜10等量が好ましい。
【0135】
塩基としては、例えば、アンモニア、LiOH、NaOH、及びKOH等の無機塩基、並びに、プロピルアミン、イソアミルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−エトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−ラウリロキシプロピルアミン、3−アミノプロパノール、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、2−ピペリジンエタノール、トリメチルアミン、エタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びトリエチルアミン等の有機塩基(アミン化合物)が挙げられる。酸性官能基を有する誘導体に対して用いる塩基の量は、使用する誘導体が有する酸性性官能基の0.1等量〜10等量が好ましい。
【0136】
<溶剤>
本発明に使用する溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、及び水等が挙げられる。
【0137】
バインダー樹脂成分の溶解性や、導電助剤である炭素材料の分散安定性を得るためには、極性の高い溶剤を使用するのが好ましい。
【0138】
例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN,N−ジエチルアセトアミド等の様な窒素をジアルキル化したアミド系溶剤、N−メチルピロリドン、ヘキサメチル燐酸トリアミド、並びに、ジメチルスルホキシド等が挙げられるが、これらに限定されない。二種類以上を併用することもできる。
【0139】
<正極活物質及び負極活物質>
本発明の組成物を正極合剤若しくは負極合剤に用いる場合は、塩基性官能基を有する各種誘導体、酸性官能基を有する樹脂、導電助剤としての炭素材料、及び溶剤以外に、少なくとも正極活物質又は負極活物質を含有させる。
【0140】
使用する正極活物質としては特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、及び導電性高分子等を使用することができる。例えば、Ti、Fe、Co、Ni、及びMn等の遷移金属の酸化物、前記遷移金属とリチウムとの複合酸化物、並びに、前記遷移金属の硫化物等の無機化合物等が挙げられる。
【0141】
具体的には、
MnO、V25、V613、及びTiO2等の遷移金属酸化物粉末;
層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、及びスピネル構造のマンガン酸リチウム等のリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末;
オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料;並びに、
TiS2、及びFeS等の遷移金属硫化物粉末;
ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、及びポリチオフェン等の導電性ポリマー等が挙げられる。
【0142】
又、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0143】
使用する負極活物質としては特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な、
金属リチウム;
リチウム合金、スズ合金、及びシリコン合金等の金属合金;
LiXFe23、LiXFe34、及びLiXWO2等の金属とリチウムの金属酸化物;
ポリアセチレン、及びポリ−p−フェニレン等の導電性高分子;並びに、
ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、及び炭素繊維等の炭素系材料が用いられる。
【0144】
<バインダー>
本発明の組成物には、更に、酸性官能基を有する樹脂以外のバインダー成分を含有させることができる。
【0145】
使用するバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等のセルロース樹脂、スチレン−ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリアニリンやポリアセチレン等の導電性樹脂等が挙げられるが、又、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体で良い。
【0146】
具体的には、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、又はビニルピロリドン等を構成単位として含む共重合体が挙げられる。
【0147】
特に、耐性面から分子内にフッ素原子を含む高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びテトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
【0148】
又、バインダーとしてのこれらの樹脂類の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000が好ましい。分子量が小さいとバインダーの耐性が低下することがある。分子量が大きくなるとバインダーの耐性は向上するものの、バインダー自体の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、凝集剤として働き、合剤成分が著しく凝集してしまうことがある。
【0149】
<本発明の組成物の用途(正又は負極合剤)>
本発明の組成物は、正極合剤又は負極合剤(以下、正又は負極合剤と略記することがある。)に用いることができる。
【0150】
正極合剤又は負極合剤に用いる場合は、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、溶剤と、を含んでなる組成物に、正極活物質又は負極活物質、及びバインダー成分を含んでなる正極又は負極合剤ペーストとして使用することが好ましい。
【0151】
電極合剤ペースト中の総固形分に占める活物質の割合は、80重量%以上、98.5重量%以下が好ましい。又、電極合剤ペースト中の総固形分に占める、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を合わせた固形分の割合は、0.5重量%以上、19重量%以下が好ましい。そして、電極合剤ペースト中の総固形分に占める、バインダー成分(ビニルアミド系樹脂以外の樹脂成分)の割合は、1重量%以上、10重量%以下が好ましい。又、電極合剤ペーストの適正粘度は、電極合剤ペーストの塗工方法によるが、一般には、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
【0152】
本発明における正又は負極合剤ペーストは、導電助剤としての炭素材料の分散性に優れるだけでなく、正又は負極活物質の凝集を緩和する効果もある。導電助剤である炭素材料の分散性が優れるため、導電助剤としての炭素材料及び正・負極活物質を溶剤に混合・分散する際のエネルギーが、炭素材料(導電助剤)の凝集物に阻害されることなく効率よく活物質に伝わり、結果的に正又は負極活物質の分散性も向上させることができるものと考えられる。
【0153】
正又は負極合剤ペーストでは、正又は負極活物質の周りに導電助剤である炭素材料粒子を均一に配位・付着させることができ、正又は負極合剤層に優れた導電性及び密着性を付与できる。又、導電性が向上することにより、導電助剤としての炭素材料の添加量を減らすことができるため、正又は負極活物質の添加量を相対的に増やすことができ、電池の大きな特性である容量を大きくすることができる。
【0154】
更に、本発明における正極合剤ペーストは、正極活物質、炭素材料(導電助剤)の凝集が極めて少ないため、集電体に塗布した際に平滑性の高い均一な塗膜を得ることができ、集電体と正極合剤との密着性が改善される。又、塩基性官又は酸性官能基を有する誘導体とビニルアミド系樹脂とが、炭素材料(導電助剤)表面に作用(例えば吸着)しているため、リチウム遷移金属複合酸化物のような正極活物質の表面と炭素材料(導電助剤)表面との相互作用が強まり、塩基性又は酸性官能基を有する誘導体もビニルアミド系樹脂も使用しない場合と比較して正極活物質と炭素材料(導電助剤)との密着性が向上する。
【0155】
又、本発明における負極合剤ペーストは、負極活物質として炭素材料系の活物質を使用した場合、添加している塩基性官又は酸性官能基を有する誘導体と、ビニルアミド系樹脂との効果により、炭素材料系活物質の凝集が緩和される。そして、負極活物質の周りに炭素材料(導電助剤)を均一に配位・付着させることができ、負極合剤層に優れた導電性及び密着性を付与できる。
【0156】
本発明の組成物は、電極下地層にも用いることができる。電極下地層に用いる場合は、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、及び溶剤とを含んでなる分散体をそのまま使用しても良いが、上記のバインダー成分(ビニルアミド系樹脂以外の樹脂成分)を追加し、電極下地ペーストとして使用することもできる。電極下地層に用いる組成物の総固形分に占める導電助剤としての炭素材料の割合は、5重量%以上、95重量%以下が好ましく、10重量%以上、90重量%以下が更に好ましい。導電助剤としての炭素材料が少ないと、下地層の導電性が保てない場合があり、一方、導電助剤としての炭素材料が多すぎると、塗膜の耐性が低下する場合がある。又、電極下地ペーストの適正粘度は、電極下地ペーストの塗工方法によるが、一般には、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
【0157】
<本発明の組成物の製造方法>
次に、本発明の組成物の製造方法について説明する。
【0158】
本発明の組成物は、例えば、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を溶剤に分散し、該分散体に、必要に応じて正極活物質、負極活物質、又は追加のバインダー成分(酸性官能基を有する樹脂以外の樹脂成分)を混合することにより、製造することができる。各成分の添加順序等については、これに限定されるわけではない。又、必要に応じて更に溶剤を追加しても良い。
【0159】
具体的には、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、を、溶剤中に完全又は一部溶解させ、その溶液中に導電助剤としての炭素材料を添加し、混合することで、塩基性又は酸性官能基を有する誘導体と、ビニルアクリル系樹脂と、を炭素材料に作用(例えば吸着)させつつ、溶剤に分散するのが好ましい。このときの分散体中における炭素材料の濃度は、使用する炭素材料の比表面積や表面官能基量等の炭素材料固有の特性値等にもよるが、1重量%以上、50重量%以下が好ましく、更に好ましくは5重量%以上、35重量%以下である。炭素材料の濃度が低すぎると生産効率が悪くなり、炭素材料の濃度が高すぎると分散体の粘度が著しく高くなり、分散効率や分散体のハンドリング性が低下する場合がある。
【0160】
塩基性又は酸性誘導体の添加量は、用いる導電助剤としての炭素材料の比表面積等により決定される。一般には、塩基性又は酸性誘導体を、炭素材料100重量部に対して、0.5重量部以上、40重量部以下、好ましくは1重量部以上、35重量部以下、更に好ましくは、2重量部以上、30重量部以下で添加する。添加量が少ないと十分な分散効果が得られず、過剰に添加しても顕著な分散向上効果は得られないことがある。
【0161】
又、導電助剤としての炭素材料を溶剤に分散するにあたり、塩基性又は酸性誘導体と、ビニルアミド系樹脂と、を添加することが好ましい。そして、導電助剤としての炭素材料を分散する時に添加するビニルアミド系樹脂の量としては、炭素材料100重量部に対して1重量部以上、200重量部以下が好ましいが、1重量部以上、100重量部以下が更に好ましい。
【0162】
又、上記塩基性又は酸性官能基を有する誘導体と、ビニルアクリル系樹脂と、を炭素材料に作用(例えば吸着)させつつ、溶剤に分散するための装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機が使用できる。
【0163】
例えば、
ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;
エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;
ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;
湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;又は、
その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0164】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、又は、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。又、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0165】
又、強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい正又は負極活物質の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
【0166】
又、追加分のバインダー成分(ビニルアミド系樹脂以外の樹脂成分)の添加方法としては、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を溶剤に分散してなる分散体を攪拌しつつ、追加のバインダー成分を固形のまま添加し、溶解させる方法が挙げられる。
【0167】
又、追加のバインダー成分を溶剤に溶解させたものを事前に作製しておき、上記分散体と混合する方法が挙げられる。又、追加のバインダー成分を上記分散体に添加した後に、上記分散装置で再度分散処理を行っても良い。
【0168】
正又は負極活物質の添加方法としては、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体と、ビニルアミド系樹脂、
と、導電助剤としての炭素材料と、を溶剤に分散してなる分散体を攪拌しつつ、正又は負極活物質を添加し、分散させる方法が挙げられる。
【0169】
又、
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を溶剤に分散するときに、正又は負極活物質の一部ないしは全量を、同時に添加して共分散処理を行うこともできる。又、このときの混合、分散を行うための装置としては、通常の顔料分散等に用いられている上述の分散装置が使用できる。
【0170】
導電助剤としての炭素材料の分散粒径は、0.03μm以上、2μm以下、好ましくは、0.05μm以上、1μm以下、更に好ましくは0.05μm以上、0.5μm以下に微細化することが望ましい。導電助剤としての炭素材料の分散粒径が0.03μm未満の組成物は、その作製が難しい場合がある。又、導電助剤としての炭素材料の分散粒径が2μmを超える組成物を用いた場合には、電極の抵抗分布のバラつきや、低抵抗化のために導電助剤の添加量を増やさなければならなくなる等の不具合が生じる場合がある。ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
【0171】
本発明の電池用組成物は、上述するように、通常は溶剤を含む分散体(液)、又はペースト等として、製造、流通、使用される。これは、導電助剤と、活物質と、塩基性又は酸性官能基を有する各種誘導体と、ビニルアミド系樹脂と、バインダー樹脂と、を乾燥粉体の状態で混合しても、導電助剤や活物質に均一に作用させることは難しく、液相法で、導電助剤や活物質を溶剤に分散することにより、導電助剤や活物質に、均一に、塩基性又は酸性官能基を有する誘導体と、ビニルアミド系樹脂と、バインダー樹脂と、を作用させることができるからである。又、以下に説明するように、集電体に電極合剤層を形成する場合には、液状の分散体をできるだけ均一に塗布してこれを乾燥させることが好ましいからである。
【0172】
しかしながら、例えば、液相法で作製した分散体を、運搬コスト等の理由から、一度溶剤を除去して乾燥粉体とすることも考えられる。そして、この乾燥粉体を適当な溶剤で再分散させて、電極合剤層の形成に用いることも考えられる。したがって、本発明の組成物は、液状の分散体に限られず、このような、乾燥粉体の状態の組成物であってもよい。
【0173】
<リチウム二次電池>
次に、本発明の組成物を用いたリチウム二次電池について説明する。
【0174】
リチウム二次電池は、集電体上に正極合剤層を有する正極と、集電体上に負極合剤層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備する。前記正極合剤層と前記集電体との間や、前記負極合剤層と前記集電体との間には、電極下地層が形成されていてもよい。
【0175】
電極について、使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が用いられるが、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅が、好ましい。又、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状のものも使用できる。
【0176】
集電体上に電極下地層を形成する方法としては、前述の電極下地ペーストを電極集電体に塗布、乾燥する方法が挙げられる。電極下地層の膜厚としては、導電性及び密着性が保たれる範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.05μm以上、20μm以下であり、好ましくは0.1μm以上、10μm以下である。
【0177】
集電体上に電極合剤層を形成する方法としては、集電体上に上述の電極合剤ペーストを直接塗布し乾燥する方法、及び集電体上に電極下地層を形成した後に電極合剤ペーストを塗布し乾燥する方法等が挙げられる。又、電極下地層の上に電極合剤層を形成する場合、集電体上に電極下地ペーストを塗布した後、湿潤状態のうちに電極合剤ペーストを重ねて塗布し、乾燥を行っても良い。電極合剤層の厚みとしては、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
【0178】
塗布方法については、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、又は静電塗装法等が挙げられる。又、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。
【0179】
<電解液>
本発明のリチウム二次電池を構成する電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。電解質としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、又はLiBPh4等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0180】
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、例えば、
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;
メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、
アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0181】
更に上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0182】
本発明の組成物を用いたリチウム二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレータとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【実施例】
【0183】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。実施例中、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ表す。カーボン分散体の粒度分布測定には、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用い、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)を求めた。但し、導電助剤としてカーボンナノファイバーを用いたカーボン分散体の分散粒度は、グラインドゲージによる判定(JIS K5600−2−5に準ず)より求めた。又、電極合剤ペーストの
分散粒度については、グラインドゲージによる判定(JIS K5600−2−5に準ず
)より求めた。カーボン分散体の粘度測定には、E型粘度計(東機産業社製「RE80型粘度計」)で、50rpmの回転速度における25℃での粘度を測定した。
【0184】
又、以下、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体は、塩基性官能基を有する誘導体と略記し、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体は、酸性官能基を有する誘導体と略記する。表中では、塩基性官能基を有する誘導体と酸性官能基を有する誘導体を併せて誘導体と略記する。
【0185】
実施例及び比較例で使用したカーボンブラック、塩基性官能基を有する誘導体、酸性官能基を有する誘導体、及びビニルアミド系樹脂を以下に示す。
【0186】
<カーボンブラック>
・デンカブラックHS−100(電気化学工業社製):
アセチレンブラック、一次粒径48nm、比表面積48m2/g。
【0187】
・デンカブラック粉状品(電気化学工業社製):
アセチレンブラック、一次粒径35nm、比表面積68m2/g。
【0188】
・デンカブラックFX−35(電気化学工業社製):
アセチレンブラック、一次粒径23nm、比表面積133m2/g。
【0189】
・トーカブラック#5500(東海カーボン社製):
ファーネスブラック、一次粒径21nm、比表面積170m2/g。
【0190】
・Super−P Li(TIMCAL社製):
ファーネスブラック、一次粒径40nm、比表面積62m2/g。
【0191】
・EC−300J(アクゾ社製):
ケッチェンブラック、一次粒径40nm、比表面積800m2/g。
【0192】
・VGCF(昭和電工社製):
カーボンナノファイバー(CNF)、繊維長10〜20μm、繊維径150nm、比 表面積13m2/g。
【0193】
<塩基性官能基を有する誘導体(A)〜(H)>
・塩基性官能基を有する色素誘導体:(A)、(B)、(C)、(H)
・塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体:(F)
・塩基性官能基を有するアクリドン誘導体:(G)
・塩基性官能基を有するトリアジン誘導体:(D)、(E)
【0194】
<酸性官能基を有する誘導体(I)〜(P)>
・酸性官能基を有する色素誘導体:(J)、(M)、(N)、(O)
・酸性官能基を有するトリアジン誘導体:(I)、(J)(K)、(L)、(P)
【0195】
【表1】

【0196】
【表2】

【0197】
【表3】

【0198】
【表4】

【0199】
<ビニルアミド系樹脂>
・ポリビニルピロリドン(A1−1)
ISPジャパン社製 PVP K−30
・アルキル化ポリビニルピロリドン(A1−2)
ISPジャパン社製 アグリマー AL−10LC
・N−ビニル−2−ピロリドンとメタクリル酸メチルとのコポリマー(A1−3)
・N−ビニル−2−ピロリドンとマレイン酸とのコポリマー(A1−4)
・N−ビニル−2−ピロリドンとN−ビニルアセトアミドとのコポリマー(A1−5)
・ポリN−ビニルアセトアミド(A2−1)
昭和電工製 PNVA GE191
・N−ビニルアセトアミドとアクリロニトリルとのコポリマー(A2−2)
・N−ビニルアセトアミドとアクリルアミドとのコポリマー(A2−3)
【0200】
[N−ビニル−2−ピロリドンとメタクリル酸メチルとのコポリマー(A1−3)の調整]
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、N−ビニル−2−ピロリドン80部とメタクリル酸メチル20部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部をN−メチルピロリドン100部に溶解した溶液を、滴下槽から2時間かけて滴下して、その後3時間、同じ温度で攪拌を続けた。固形分測定により95%以上が反応したことを確認し反応を終了し、固形分50%のN−ビニル−2−ピロリドンとメタクリル酸メチルとのコポリマー(A1−3)溶液を得た。得られたビニルアミド系樹脂(A1−3)の重量平均分子量(Mw)は30000であった。
【0201】
[N−ビニル−2−ピロリドンとマレイン酸とのコポリマー(A1−4)の調整]
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、N−ビニル−2−ピロリドン80部とマレイン酸20部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部をN−メチルピロリドン100部に溶解した溶液を、滴下槽から2時間かけて滴下して、その後3時間、同じ温度で攪拌を続けた。固形分測定により95%以上が反応したことを確認し反応を終了し、固形分50%のN−ビニル−2−ピロリドンとマレイン酸とのコポリマー(A1−4)溶液を得た。得られたビニルアミド系樹脂(A1−4)の重量平均分子量(Mw)は30000であった。
【0202】
[N−ビニル−2−ピロリドンとN−ビニルアセトアミドとのコポリマー(A1−5)の調整]
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、N−ビニル−2−ピロリドン50部とN−ビニルアセトアミド50部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部をN−メチルピロリドン100部に溶解した溶液を、滴下槽から2時間かけて滴下して、その後3時間、同じ温度で攪拌を続けた。固形分測定により95%以上が反応したことを確認し反応を終了し、固形分50%のN−ビニル−2−ピロリドンとN−ビニルアセトアミドとのコポリマー(A1−5)溶液を得た。得られたビニルアミド系樹脂(A1−5)の重量平均分子量(Mw)は30000であった。
【0203】
[N−ビニルアセトアミドとアクリロニトリルとのコポリマー(A2−2)の調整]
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、N−ビニル−2−ピロリドン80部とアクリロニトリル20部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部をN−メチルピロリドン100部に溶解した溶液を、滴下槽から2時間かけて滴下して、その後3時間、同じ温度で攪拌を続けた。固形分測定により95%以上が反応したことを確認し反応を終了し、固形分50%のN−ビニルアセトアミドとアクリロニトリルとのコポリマー(A2−2)溶液を得た。得られたビニルアミド系樹脂(A2−2)の重量平均分子量(Mw)は30000であった。
【0204】
[N−ビニルアセトアミドとアクリルアミドとのコポリマー(A2−3)の調整]
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、N−ビニル−2−ピロリドン80部とアクリルアミド20部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部をN−メチルピロリドン100部に溶解した溶液を、滴下槽から2時間かけて滴下して、その後3時間、同じ温度で攪拌を続けた。固形分測定により95%以上が反応したことを確認し反応を終了し、固形分50%のN−ビニルアセトアミドとアクリルアミドとのコポリマー(A2−3)溶液を得た。得られたビニルアミド系樹脂(A2−3)の重量平均分子量(Mw)は30000であった。
【0205】
<バインダー>
・ KFポリマーW#1100(クレハ社製):
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、重量平均分子量約28万。
・ PTFE 30−J(三井・デュポンフロロケミカル社製):
60%ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)水系分散体
・ BM−400B(日本ゼオン社製):
40%スチレンブタジエンゴム(SBR)水系分散体
【0206】
<塩基性官能基又は酸性官能基を有する誘導体、及び/又はビニルアミド系樹脂で表面処理されたカーボンの調整>
表5に示す組成及び処理方法に従って、塩基性官能基又はは酸性官能基を有する誘導体、及び/又はビニルアミド系樹脂によるカーボンの表面処理を行った。ビニルアミド系樹脂の使用量は、固形分換算で表記した。
【0207】
[表面処理カーボン(1)]
導電助剤となるアセチレンブラック(デンカブラック粉状品、一次粒径35nm、比表面積68m2/g、電気化学工業社製)100部、塩基性官能基を有する誘導体(E)2
部、及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を0.3部仕込み、アトライターにて処理することで表面処理カーボン(1)を得た。
【0208】
[表面処理カーボン(2)]
ニーダーに、導電助剤となるアセチレンブラック(デンカブラックFX−35、一次粒径23nm、比表面積133m2/g、電気化学工業社製)100部、酸性官能基を有する誘導体(O)3部、及びNMPを156部仕込み、混練処理を行った。得られた処理物を乾燥、粉砕し、表面処理カーボン(2)を得た。
【0209】
[表面処理カーボン(3)]
ニーダーに、導電助剤となるケッチェンブラック(EC−300J、比表面積800m2/g、アクゾ社製)100部、塩基性官能基を有する誘導体(H)7部、ビニルアミド系樹脂(A2−3)8部、及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を268部仕込み、混練処理を行った。
【0210】
得られた処理物をヘキサン1000部中に添加して攪拌した後、凝集物を濾取、乾燥、粉砕して表面処理カーボン(3)を得た。
【0211】
[表面処理カーボン(4)]
導電助剤となるファーネスブラック(Super−P Li、一次粒径40nm、比表面積62m2/g、TIMCAL社製)100部、塩基性官能基を有する誘導体(G)5部、及びNMPを0.3部仕込み、アトライターにて処理することで表面処理カーボン(4)を得た。
【0212】
[表面処理カーボン(5)]
ニーダーに、導電助剤となるファーネスブラック(トーカブラック#5500、一次粒径21nm、比表面積170m2/g、東海カーボン社製)100部、塩基性官能基を有する誘導体(D)6部、ビニルアミド系樹脂(A1−1)4部、及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を268部仕込み、混練処理を行った。
【0213】
得られた処理物をヘキサン1000部中に添加して攪拌した後、凝集物を濾取、乾燥、粉砕して表面処理カーボン(5)を得た。
【0214】
<表面処理の有無によるカーボンの濡れ性評価>
分散剤処理前の各種カーボン及び、各種分散剤処理カーボンを80℃で10時間減圧乾燥した。続いて乾燥物をメノウ製の乳鉢で粉砕した後、更に80℃で12時間減圧乾燥した。得られた乾燥物を再度メノウ製乳鉢で粉砕した後、錠剤成型器(Specac社製)にて500kgf/cm2で荷重をかけ、カーボンのペレットを作製(直径10mm、厚
0.5mm)した。このペレットにマイクロシリンジにて、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1混合した液滴を落とし、液滴がペレットに浸透する時間を測定した。この測定を各サンプルとも5回行い、それらの平均浸透時間が1秒未満であったものを「◎」、1秒以上、5秒未満であったものを「○」、5秒以上、10秒未満であったものを「△」、10秒以上であったものを「×」とした。
【0215】
カーボンの濡れ性評価の結果を表5に示した。
【0216】
【表5】

【0217】
<カーボン分散体の作成>
表6に示す組成に従って、カーボン分散体の作成を行った。ビニルアミド系樹脂の使用量は、固形分換算で表記した。
【0218】
[カーボン分散体(1)]
デンカブラック粉状品 10部、塩基性誘導体(A)0.2部、ビニルアミド系樹脂(A1−1)の50%溶液 0.6部、水89.2部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、カーボン分散体(1)を得た。
【0219】
[カーボン分散体(2)〜カーボン分散体(39)]
カーボン分散体(1)と同様にして、表6に示す組成になるように分散し、カーボン分散体(2)〜(39)を得た。
【0220】
【表6】

NMP:N−メチル−2−ピロリドン
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
PTFE:ポリテトラフルオロエタン
【0221】
【表7】

カーボン分散体(25)〜(28)、(38)の粒度はグラインドゲージによる判定。
【0222】
<リチウム二次電池用正極合剤ペーストの調製>
[実施例1〜5、7〜14、比較例1、2]
先に調製したカーボン分散体50部(カーボンブラック量として5部)に対して、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマーW#1100、クレハ社製)、N−メチル−2−ピロリドンを高速ディスパーで混合した後に、正極活物質としてコバルト酸リチウムLiCoO2(HLC−17、平均粒径9.28μm、比表面積0.54m2/g、本荘ケミカル社製)90部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=90/5/5)とした。(表8を参照)
【0223】
[実施例6、比較例3]
先に調製したカーボン分散体50部(カーボンブラック量として5部)に対して、バインダーとしてポリテトラフルオロエタンPTFE(PTFE 30−J、三井・デュポンフロロケミカル社製)、水を高速ディスパーで混合した後に、正極活物質としてコバルト酸リチウムLiCoO2(HLC−17、平均粒径9.28μm、比表面積0.54m2/g、本荘ケミカル社製)90部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=90/5/5)とした。(表8を参照)
【0224】
[実施例9〜14、比較例4]
正極活物質としてコバルト酸リチウムLiCoO2(HLC−17、平均粒径9.28μm、比表面積0.54m2/g、本荘ケミカル社製)90部に対して、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマーW#1100、クレハ社製)、N−メチル−2−ピロリドンをプラネタリーミキサーにより混練した後に、先に調製したカーボン分散体50部(カーボンブラック量として5部)を加え更に混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=90/5/5)とした。(表8を参照)
【0225】
[実施例15〜20、比較例5〜7]
分散剤(塩基性又は酸性官能基を有する誘導体、ビニルアミド系樹脂)、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマー、クレハ社製)、N−メチル−2−ピロリドンを高速ディスパーで混合撹拌した後に、正極活物質としてコバルト酸リチウムLiCoO2(HLC−17、平均粒径9.28μm、比表面積0.54m2/g、本荘ケミカル社製)90部、カーボンブラック5部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=90/5/5)とした。(表9を参照)
【0226】
[比較例8、9]
バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマー、クレハ社製)、N−メチル−2−ピロリドンを高速ディスパーで混合撹拌した後に、正極活物質としてコバルト酸リチウムLiCoO2(HLC−17、平均粒径9.28μm、比表面積0.54m2/g、本荘ケミカル社製)90部、カーボンブラック5部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダー=90/5/5)とした。(表9を参照)
【0227】
[実施例21]
先に調製したカーボン分散体90部(カーボンブラック量として9部)に対して、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマーW#1100、クレハ社製)、N−メチル−2−ピロリドンを高速ディスパーで混合した後に、正極活物質としてマンガン酸リチウムLiMn24(CELLSEED S−LM、平均粒径12μm、比表面積0.48m2/g、日本化学工業社製)85部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=85/9/6)とした。(表10を参照)
【0228】
[実施例22、23、比較例11]
先に調製したカーボン分散体90部(カーボンブラック量として9部)に対して、バインダーとしてポリテトラフルオロエタンPTFE(PTFE 30−J、三井・デュポンフロロケミカル社製)、水を高速ディスパーで混合した後に、正極活物質としてマンガン酸リチウムLiMn24(CELLSEED S−LM、平均粒径12μm、比表面積0.48m2/g、日本化学工業社製)85部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=85/9/6)とした。(表10を参照)
【0229】
[実施例24]
先に調製したカーボン分散体40部(カーボンブラック量として4部)に対して、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマーW#1100、クレハ社製)5部、N−メチル−2−ピロリドンを高速ディスパーで混合した後に、正極活物質としてニッケル酸リチウムLiNiO2(田中化学研究所社製)91部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=91/4/5)とした。(表10を参照)
【0230】
[実施例25、26、13]
先に調製したカーボン分散体40部(カーボンブラック量として4部)に対して、バインダーとしてポリテトラフルオロエタンPTFE(PTFE 30−J、三井・デュポンフロロケミカル社製)、水を高速ディスパーで混合した後に、正極活物質としてニッケル酸リチウムLiNiO2(田中化学研究所社製)91部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=91/4/5)とした。(表10を参照)
【0231】
[実施例27]
先に調製したカーボン分散体40部(カーボンブラック量として4部)に対して、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマーW#1100、クレハ社製)5部、N−メチル−2−ピロリドンを高速ディスパーで混合した後に、正極活物質としてリン酸鉄リチウムLiFePO4(平均粒径3.6μm、比表面積15m2/g、 TIAN JIN STL ENERGY TECHNOLOGY社製)91部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=91/4/5)とした。(表10を参照)
【0232】
[実施例28、29、比較例15]
先に調製したカーボン分散体40部(カーボンブラック量として4部)に対して、バインダーとしてポリテトラフルオロエタンPTFE(PTFE 30−J、三井・デュポンフロロケミカル社製)、水を高速ディスパーで混合した後に、正極活物質としてリン酸鉄リチウムLiFePO4(平均粒径3.6μm、比表面積15m2/g、 TIAN JIN STL ENERGY TECHNOLOGY社製)91部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=91/4/5)とした。(表10を参照)
【0233】
[比較例10]
バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマー、クレハ社製)6部、N−メチル−2−ピロリドンを高速ディスパーで混合撹拌した後に、正極活物質としてマンガン酸リチウムLiMn24(CELLSEED S−LM、平均粒径12μm、比表面積0.48m2/g、日本化学工業社製)85部、カーボンブラック9部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダー=85/9/6)とした。(表10を参照)
【0234】
[比較例12]
バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマー、クレハ社製)5部、N−メチル−2−ピロリドンを高速ディスパーで混合撹拌した後に、正極活物質としてニッケル酸リチウムLiNiO2(田中化学研究所社製)91部、カーボンブラック4部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダー=91/4/5)とした。(表10を参照)
【0235】
[比較例14]
バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマー、クレハ社製)5部、N−メチル−2−ピロリドンを高速ディスパーで混合撹拌した後に、正極活物質としてリン酸鉄リチウムLiFePO4(平均粒径3.6μm、比表面積15m2/g、 TIAN JIN STL ENERGY TECHNOLOGY社製)91部、カーボンブラック4部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、正極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダー=91/4/5)とした。(表10を参照)
【0236】
【表8】

NMP:N−メチル−2−ピロリドン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
PTFE:ポリテトラフルオロエタン
【0237】
【表9】

NMP:N−メチル−2−ピロリドン
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
【0238】
【表10】

NMP:N−メチル−2−ピロリドン
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
PTFE:ポリテトラフルオロエタン
【0239】
<リチウム二次電池用負極合剤ペーストの調製>
[実施例30、39、比較例16、20]
先に調製したカーボン分散体20部(カーボンブラック量として2部)に対して、バインダーとしてスチレンブタジエンゴムSBR(BM−401B、日本ゼオン社製)、水を高速ディスパーで混合した後に、負極活物質としてメソフェーズカーボン(MCMB 6−28、平均粒径5〜7μm、比表面積4m2/g大阪ガスケミカル社製)93部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、負極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=93/2/5)とした。(表11を参照)
【0240】
[実施例31〜38、40〜43、比較例18、19、21、22]
先に調製したカーボン分散体20部(カーボンブラック量として2部)に対して、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマーW#1100、クレハ社製)、N−メチル−2−ピロリドンを高速ディスパーで混合した後に、負極活物質としてメソフェーズカーボン(MCMB 6−28、平均粒径5〜7μm、比表面積4m2/g大阪ガスケミカル社製)93部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、負極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=3/2/5)とした。(表11を参照)
【0241】
[比較例17]
バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDF(KFポリマー、クレハ社製)5部、N−メチル−2−ピロリドンを高速ディスパーで混合撹拌した後に、負極活物質としてメソフェーズカーボン(MCMB 6−28、平均粒径5〜7μm、比表面積4m2/g大阪ガスケミカル社製)93部、カーボンブラック2部を加えプラネタリーミキサーにより混練し、負極合剤ペースト(固形分比率;60%、固形分組成比率;活物質/カーボンブラック/バインダーと分散剤=93/2/5)とした。(表11を参照)
【0242】
【表11】

NMP:N−メチル−2−ピロリドン
SBR:スチレンブタジエンゴム
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
【0243】
<電極下地用ペーストの調製>
[実施例44、45、比較例23、25]
カーボン分散体100部(カーボンブラック量として10部)に、ポリフッ化ビニリデン(KFポリマーW#1100、クレハ社製)のN−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分10%)95部を加え、高速ディスパーにて混合撹拌し、導電性下地層用ペーストとした。(表12、13を参照)
【0244】
[比較例24、26]
ガラス瓶にN−メチル−2−ピロリドン175部、ポリフッ化ビニリデン(KFポリマーW#1100、クレハ社製)10部、及び導電助剤となるカーボンブラック10部を加え、更にメディアとしてジルコニアビーズを添加した後に、ペイントシェーカーで分散し、導電性下地層用ペーストとした。(表12、13を参照)
【0245】
【表12】

NMP:N−メチル−2−ピロリドン
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
【0246】
【表13】

NMP:N−メチル−2−ピロリドン
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
【0247】
<リチウム二次電池用正極の作製>
[実施例1〜29、比較例1〜15]
先に調製した各種正極合剤ペーストを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥し、ロールプレス等による圧延処理を行い、厚さ80μmの正極合剤層を作製した。(表8〜10を参照)
【0248】
[実施例44、比較例23、24]
先に調製した電極下地層ペーストを、厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥し、厚さ2μmの電極下地層を作製した。つづいて、電極下地層上に比較例7で調製した正極合剤ペーストをドクターブレードで塗布した後、減圧加熱乾燥し、ロールプレス等による圧延処理を行い、厚さ80μmの正極合剤層を作製した。(表12を参照)
<リチウム二次電池用負極の作製>
[実施例30〜43、比較例16〜22]
先に調製した各種負極合剤ペーストを、集電体となる厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥し、ロールプレス等による圧延処理を行い、厚さ80μmの負極合剤層を作製した。(表11を参照)
[実施例45、比較例25、26]
先に調製した各種電極下地層ペーストを、厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥し、厚さ2μmの電極下地層を作製した。次に、電極下地層上に比較例16で調製した負極合剤ペーストをドクターブレードで塗布した後、減圧加熱乾燥し、ロールプレス等による圧延処理を行い、厚さ80μmの負極合剤層を作製した。(表13を参照)
【0249】
<リチウム二次電池正極評価用セルの組み立て>
先に作製した正極を、直径9mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極及び対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製 #2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1に混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝仙社製 HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグロ−ボックス内で行い、セル組み立て後、所定の電池特性評価を行った。
【0250】
<リチウム二次電池負極評価用セルの組み立て>
先に作製した負極を、直径9mmに打ち抜き作用極とし、先に作製した比較例6の正極合剤層(厚さ80μm)を対極として、作用極及び対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製 #2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1に混合した混合溶媒にLiPF6 を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝仙社製 HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグロ−ボックス内で行い、セル組み立て後、所定の電池特性評価を行った。
【0251】
<リチウム二次電池正極特性評価>
[充放電サイクル特性 実施例1〜26、比較例1〜13]
作製した電池評価用セルを室温(25℃)で、充電レート0.2C、1.0Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.2V)で満充電とし、充電時と同じレートの定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクル(充放電間隔休止時間30分)とし、このサイクルを合計20サイクル行い、充放電サイクル特性評価(評価装置:北斗電工社製SM−8)を行った。又、評価後のセルを分解し、電極塗膜の外観を目視にて確認した。評価結果を表14〜16に示した。
【0252】
[充放電サイクル特性 実施例27〜29、44、比較例14、15、23、24]
作製した電池評価用セルを室温(25℃)で、充電レート0.2C、1.0Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.5V)で満充電とし、充電時と同じレートの定電流で放電下限電圧2.0Vまで放電を行う充放電を1サイクル(充放電間隔休止時間30分)とし、このサイクルを合計20サイクル行い、充放電サイクル特性評価(評価装置:北斗電工社製SM−8)を行った。又、評価後のセルを分解し、電極塗膜の外観を目視にて確認した。評価結果を表16に示した。
【0253】
[直流内部抵抗測定 実施例5、6、18、21、22、24、25、27、28、比較例2、3、9、10、11、12、13、14、15]
作製した電池評価用セルを室温(25℃)、充電レート0.2Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.2V)で満充電とし、0.1C、0.2C、0.5C、1.0Cのレートの定電流で5秒放電後、電池電圧を測定した。電流値に対し電圧値をプロットし、得られた直線関係の傾きを内部抵抗とした。評価結果を表14〜表16に示すが、正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いた場合については、実施例5の内部抵抗測定値を100としたときの相対値として示した。正極活物質としてマンガン酸リチウムを用いた場合については、実施例21の内部抵抗測定値を100としたときの相対値として示した。又、正極活物質としてニッケル酸リチウムを用いた場合については、実施例24の内部抵抗測定値を100としたときの相対値として示した。又、極活物質としてリン酸鉄リチウムを用いたものについては、実施例27の内部抵抗測定値を100としたときの相対値として示した。
【0254】
【表14】

【0255】
【表15】

【0256】
【表16】

【0257】
表6〜表10、及び表14〜表16から分かるように、実施例では、塩基性又は酸性性官能基を有する誘導体とビニルアミド系樹脂とを使用することで、導電助剤であるカーボンブラックの分散性が向上したため、比較例に比べて正極合剤ペーストでの分散性及び経時安定性が向上した。又、比較例に比べて、内部抵抗の低下傾向が見られるとともに、電池容量及び、20サイクル容量維持率が向上した。
【0258】
又、本発明の電極下地層を設けた電極(実施例44)では、密着性の向上が見られた(表12参照)。
【0259】
<リチウム二次電池負極特性評価>
[充放電サイクル特性 実施例30〜43、45、比較例16〜22、25、26]
作製した電池評価用セルを室温(25℃)、充電レート0.2C、1.0Cの定電流定電圧充電(上限電圧0.5V)で満充電とし、充電時と同じレートの定電流で電圧が1.5Vになるまで放電を行う充放電を1サイクル(充放電間隔休止時間30分)とし、このサイクルを合計20サイクル行い、充放電サイクル特性評価(評価装置:北斗電工製SM−8)を行った。又、評価後のセルを分解し、電極塗膜不良の有無を目視にて確認した。評価結果を表13、表17に示した。
【0260】
【表17】

【0261】
表6、表7、表11、表13、表17から分かるように、実施例では、塩基性又は酸性官能基を有する誘導体とビニルアミド系樹脂を使用することで、導電助剤であるカーボンブラックの分散性が向上したため、比較例に比べて負極合剤ペーストでの分散性及び経時安定性が向上した。又、比較例に比べて、電池容量及び、20サイクル容量維持率が向上した。
【0262】
又、本発明の電極下地層を設けた電極(実施例39)では、密着性の向上が見られた(表13参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を含んでなる電池用組成物。
【請求項2】
誘導体の酸性官能基が、カルボキシル基、スルホン酸基、及び燐酸基からなる群から選ばれる1種類以上の酸性官能基である請求項1記載の電池用組成物。
【請求項3】
誘導体の塩基性基が、アミノ基である請求項1記載の電池用組成物。
【請求項4】
導電助剤としての炭素材料の分散粒径(D50)が、2μm以下である請求項1〜3いずれか記載の電池用組成物。
【請求項5】
更に、ビニルアミド系樹脂以外のバインダー成分、を含んでなる請求項1〜4いずれか記載の電池用組成物。
【請求項6】
バインダー成分が、分子内にフッ素原子を含む高分子化合物である請求項5記載の電池用組成物。
【請求項7】
更に、溶剤、を含んでなる請求項1〜6いずれか記載の電池用組成物。
【請求項8】
更に、正極活物質又は負極活物質、を含んでなる請求項1〜7いずれか記載の電池用組成物。
【請求項9】
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を溶剤に分散する電池用組成物の製造方法。
【請求項10】
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、正極活物質又は負極活物質と、を溶剤に共分散する電池用組成物の製造方法。
【請求項11】
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、正極活物質又は負極活物質と、バインダー成分と、を溶剤に共分散する電池用組成物の製造方法。
【請求項12】
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を溶剤に分散してなる分散体に、正極活物質又は負極活物質を混合する電池用組成物の製造方法。
【請求項13】
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、又は、
酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体、
と、ビニルアミド系樹脂と、導電助剤としての炭素材料と、を溶剤に分散してなる分散体に、正極活物質又は負極活物質と、バインダー成分と、を混合する電池用組成物の製造方法。
【請求項14】
ビニルアミド系樹脂、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の処理剤、又は、
ビニルアミド系樹脂、酸性官能基を有する有機色素誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の処理剤、
で、あらかじめ処理された導電助剤としての炭素材料を使用する請求項9〜13いずれか記載の電池用組成物の製造方法。
【請求項15】
集電体上に正極合剤層を有する正極と、集電体上に負極合剤層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備するリチウム二次電池であって、前記正極合剤層又は前記負極合剤層が、請求項8記載の電池用組成物を使用して形成されてなるリチウム二次電池。
【請求項16】
集電体上に正極合剤層を有する正極と、集電体上に負極合剤層を有する負極と、リチウムを含む電解質と、を具備するリチウム二次電池であって、正極合剤層と集電体との間及び/又は負極合剤層と集電体との間に、請求項1〜7いずれか記載の電池用組成物を使用して形成してなる電極下地層を有するリチウム二次電池。
【請求項17】
請求項10〜14いずれか記載の製造方法により製造された電池用組成物を使用して形成されてなる請求項15又は16記載のリチウム二次電池。

【公開番号】特開2010−61996(P2010−61996A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226522(P2008−226522)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】