説明

電池用電極

【課題】電解質層にポリマー電解質を用いる電池において、エネルギー密度を維持しながら、高出力の電池を作製する手段を提供する。
【解決手段】すなわち本発明は、集電体と、前記集電体の表面に形成された、活物質および導電助剤を含む活物質層と、を有する電池用電極であって、前記活物質層における導電助剤のかさ密度が、活物質層の集電体側から電解質側に向かうに従って漸減していることを特徴とする、電池用電極によって、上記課題は解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極に関する。特に本発明は、リチウムイオン二次電池の出力密度を向上させるための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境や燃費の観点から、ハイブリッド自動車や電気自動車、さらには燃料電池自動車が製造・販売され、新たな開発が続けられている。これらのいわゆる電動車両においては、放電・充電ができる電源装置の活用が不可欠である。この電源装置としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタ等が利用される。特に、リチウムイオン二次電池はそのエネルギー密度の高さや繰り返し充放電に対する耐久性の高さから、電動車両に好適と考えられ、各種の開発が鋭意進められている。リチウムイオン二次電池は、一般に、正極活物質、導電助剤、バインダなどを含む正極活物質層が正極集電体の両面に形成された正極と、負極活物質、バインダなどを含む負極活物質層が負極集電体の両面に形成された負極とが、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
【0003】
容積あたりの容量密度またはエネルギー密度を向上させることを考慮すると、前記正極活物質層または前記負極活物質層は、集電体上にできるだけ厚く形成することが好ましい。しかしながら、特に活物質層が100μm以上の厚膜電極では、活物質層のうち、電解質層に接触する表面付近の活物質と、集電体付近の活物質とでは、異なる電極反応の条件下におかれることとなるため、前記両者の活物質に十分な性能を与え、活物質層の厚さに見合った出力の向上を得ることは困難である。
【0004】
特に、電解質層に真性ポリマー電解質やゲル電解質を用いた電池の場合、電池からの液漏れの心配がないなどの利点があるが、粘度が高いため、100μm以上の活物質層を有する厚膜電極では、ポリマー電解質やゲル電解質が活物質層中に十分に浸透せず、電極反応が効率的に行われない場合がある。
【0005】
このため、活物質層において、活物質層の空隙率を積層方向に変化させる方法が採用されている。例えば、特許文献1には、活物質層の集電体付近の部分での空隙率を比較的低く、電解質層に接触する表面付近の空隙率を比較的高くすることで、電解質液の活物質層中への浸透が効果的に行われることが記載されている。
【特許文献1】特開平9−320569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、活物質層の空隙率を積層方向に変化させるために、バインダの含有量を積層方向に変化させる方法が用いられている。すなわち、集電体付近の部分でバインダの含有量を多くして空隙率を小さくし、電解質層に接触する表面付近の部分でバインダの含有量を少なくして空隙率を大きくする。このような電極の場合、電解質液の浸透には効果があるが、集電体付近の部分ではバインダの含有量が高く、活物質の含有量が相対的に低くなってしまうので、エネルギー密度が低く、高抵抗の電極になってしまう問題がある。一方、表面付近の部分では、表面のバインダの含有量が少なくなるので、電解質によって膨潤収縮した場合に剥離しやすくなる問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上述の問題を解決し、電解質層にポリマー電解質を用いる電池において、エネルギー密度を維持しながら、高出力の電池を作製する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った。そしてその際に、電極の活物質層において、導電助剤のかさ密度の差を利用して活物質層の厚さ方向の空隙率を変化させることを試みた。その結果、活物質層中の導電助剤のかさ密度を、活物質層の集電体側から電解質側に向かって漸減させることによって、電解質の活物質層中への浸透が改善され、イオン伝導パスがスムーズになることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、集電体と、前記集電体の表面に形成された、活物質および導電助剤を含む活物質層と、を有する電池用電極であって、前記活物質層における導電助剤のかさ密度が、活物質層の集電体側から電解質側に向かうに従って漸減していることを特徴とする、電池用電極である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電池用電極の活物質層は、活物質層中の導電助剤のかさ密度が、活物質層の集電体側から電解質側に向かって漸減している。これにより、活物質層中の空隙率が集電体側から電解質側に向かって高くなる構成となるため、粘度の高いポリマー電解質を用いた場合であっても、活物質層中に電解質を効果的に浸透させることができ、高容量電池が作製されうる。また、空隙率を調整するためにバインダの含有量を増加させる必要がないため、電池の高容量化に寄与しうる。また、電解質層側の最表面層にかさ密度の高い導電助剤が含まれるため、電解質に接触することによる体積膨張に追随でき、活物質層が剥離しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、下記の形態のみに制限されることはない。
【0012】
(第1実施形態)
(構成)
本発明は、集電体と、前記集電体の表面に形成された、活物質および導電助剤を含む活物質層と、を有する電池用電極であって、前記活物質層における導電助剤のかさ密度が、活物質層の集電体側から電解質側に向かうに従って漸減していることを特徴とする、電池用電極である。
【0013】
以下、本発明の電池用電極の構造について、図面を参照して説明する。なお、本発明においては、説明の都合上、図面が誇張されており、本発明の技術的範囲は、図面に掲示する形態に限定されない。また、図面以外の実施形態も採用されうる。
【0014】
図1は、本発明の電池用電極の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示す形態の電池用電極1は、集電体2の一方の面に活物質層3が形成されてなる電極である。なお、後述するように、電池用電極の組成は主に、活物質、導電助剤およびバインダである。
【0015】
本発明の電池用電極(以下、単に「電極」とも称する)1は、図1に示すように、活物質層3において、前記活物質層における導電助剤のかさ密度が、活物質層の集電体側から電解質側に向かうに従って漸減している点に特徴を有する。
【0016】
図1に示す形態においては、導電助剤のかさ密度が、活物質層の集電体側から電解質側に向かうに従って漸減していることにより、電解質層にゲル電解質のような相対的に粘度の高い電解質を用いた場合であっても、良好な電極反応が行われうる。さらに、例えばポリマー電解質のような、イオン伝導度の低い電解質を用いた場合であっても、イオン伝導パスがスムーズになることで出力が向上しうる。また、活物質層の電解質側の部分にかさ密度の低い導電助剤を用いることによって、活物質の表面積に対する導電助剤の体積が大きくなるため、活物質層の空隙率が比較的高い場合であっても高い導電性が得られるため、低抵抗の電極が得られうる。さらに、空隙率を調整するためにバインダの含有量を増加させる必要がないため、電池のエネルギー密度が向上し、高容量の電池が作製されうる。
【0017】
本発明の電池用電極において、活物質層は、異なるかさ密度を有する導電助剤を含む層が2層以上積層された構造であってもよく、導電助剤のかさ密度が活物質層の集電体側から電解質側に連続的に減少する構造であってもよい。かさ密度を連続的に変化させることによって、活物質層の空隙率を連続的に変化させることができ、電解質をより効果的に活物質層に浸透させることができる。また、イオン伝導度の低い電解質を用いた場合も、イオン伝導パスがよりスムーズになり、電池の出力が向上しうる。一方、活物質層が、2以上の層が積層された構造をとる場合、積層数は、好ましくは2〜10層であり、より好ましくは2〜5層であり、この際、隣りあう層に含まれる導電助剤のかさ密度の差は、好ましくは0.03〜0.1g/mlであり、より好ましくは0.05〜0.1 g/mlである。
【0018】
また、活物質層が2以上の層が積層された構造をとる場合、各層に含まれる導電助剤は、1種類の導電助剤であっても、2種類以上を組み合わせてもよい。1つの層に2種類以上の導電助剤が含まれる場合、各層に含まれるそれぞれの導電助剤のかさ密度を、その含有量で重み付けした平均値が、集電体側の層から電解質側の層に向かって減少するようにすればよい。特に5層以上の多数の層を積層して活物質層を形成する場合は、複数の導電助剤の配合比を変化させることで空隙率の異なる層を作製することができるため、積層数に対して少ない種類の導電助剤を準備すればよく、製造コストの面で有利である。
【0019】
また、前記導電助剤の活物質層中の含有量は、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは10〜15質量%である。図1に示す電極においては、好ましくは、活物質層中での電子伝導を良好に保つため、活物質層中に含まれる導電助剤の含有量は積層方向において一定である。
【0020】
後述するように、活物質層が2以上の層が積層された構造をとる場合、電解質側の最表面層に含まれる導電助剤のかさ密度は、好ましくは0.05g/ml以下であり、より好ましくは0.04 g/ml以下であり、さらに好ましくは0.03g/ml以下である。上述の範囲であれば電解質の浸透が効果的に進行し、電池の出力が向上する。最表面層に含まれる導電助剤のかさ密度の下限値は特に限定されないが、取り扱いの観点から、好ましくは0.01g/ml以上であり、さらに好ましくは0.02g/ml以上である。このとき、最表面層の空隙率は、好ましくは30〜60%、より好ましくは40〜50 %とする。上述の範囲であれば電解質の浸透が効果的に進行し、電池の出力が向上する。
【0021】
一方、集電体に接する層に含まれる導電助剤のかさ密度は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜0.2g/mlであり、より好ましくは0.15〜0.2g/mlである。上述の範囲であれば、空隙率がより小さくなる。このとき、集電体側に接する層の空隙率は、好ましくは30〜50%、より好ましくは30〜40%とする。
【0022】
さらに、上記集電体に接する層と電解質側の最表面層との間に1以上の中間層が形成される場合、前記中間層に含まれる導電助剤のかさ密度は、好ましくは0.1g/ml以下であり、より好ましくは0.07〜0.08g/mlである。このとき、前記中間層の空隙率は、好ましくは30〜40%、より好ましくは35〜40%とする。
【0023】
集電体に接する層に含まれる導電助剤のかさ密度に対する、電解質側の最表面層に含まれる導電助剤のかさ密度の比は、好ましくは0.2〜0.4であり、より好ましくは0.2〜0.3である。かさ密度の比が上述の範囲であれば、電解質の浸透が効果的に進行し、電池の出力が向上する。
【0024】
図2は、本発明の電極の他の実施形態を示す。図2の実施形態においては、電極1の活物質層3は、複数層から形成される。この際、各層は、比較的かさ密度の小さい、好ましくはかさ密度が0.05g/ml以下の1種類の導電助剤を用い、前記導電助剤の含有量は、集電体側の層から電解質側の層に向かって漸増する。この場合、電解質側の層ほど、かさ高い導電助剤の含有量が高くなるため、活物質層を形成する各層の空隙率は、集電体側の層から電解質側の層に向かって高くなる。したがって、図1の形態と同様に、粘度の高いポリマー電解質を効果的に含浸させ、イオン伝導度の低い電解液の場合であってもイオン伝導パスがスムーズになって出力が向上する。
【0025】
図2の実施形態において、用いられうる導電助剤のかさ密度は、好ましくは0.05g/ml以下であり、より好ましくは0.04g/ml以下であり、さらに好ましくは0.03 g/ml以下である。上述の範囲であれば電解質の浸透が効果的に進行し、電池の出力が向上する。導電助剤のかさ密度の下限値は特に限定されないが、取り扱いの観点から、好ましくは0.01g/ml以上であり、さらに好ましくは0.02g/ml以上である。
【0026】
図2に示す実施形態において、最表面層の導電助剤の含有量は、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜20質量%とする。このとき、最表面層の空隙率は、好ましくは30〜60%、より好ましくは40〜50%とする。上述の範囲であれば、電解質の浸透が効果的に進行し、電池の出力が向上する。
【0027】
ここで、積層数は、好ましくは2〜10層であり、より好ましくは2〜5層であり、この際、集電体に接する層に含まれる導電助剤の含有量に対する、電解質側の最表面層に含まれる導電助剤の含有量の比は、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1〜2である。導電助剤の含有量の比が上述の範囲であれば、電解質の浸透が効果的に進行し、電池の出力が向上する。
【0028】
図2のような実施形態によれば、1種類の導電助剤を用いて、空隙率の異なる複数の層を積層した活物質層を形成することができるため、材料のコストを低く抑えることができる。
【0029】
以下、リチウムイオン二次電池に採用される場合を例に挙げて、本発明の電池用電極の構成について説明する。本発明の電池用電極は、活物質層における導電助剤のかさ密度が、活物質層の集電体側から電解質側に向かうに従って漸減している点に特徴を有する。集電体、活物質、バインダ、支持塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー、その他必要に応じて添加される化合物の選択について、特に制限はない。使用用途に応じて、従来公知の知見を適宜参照することにより、選択すればよい。また、本発明の電池用電極は、正極および負極の双方に適用可能であるが、特に反応面などを考慮して、正極に適用すると、活物質として導電性の高い材料を用いることが多い負極に比べてより顕著な効果が得られる。正極に適用する場合には、集電体および活物質として、正極用の集電体および正極活物質として作用することが知られている化合物を採用すればよい。
【0030】
[集電体]
集電体2は、アルミニウム箔、ニッケル箔、銅箔、ステンレス(SUS)箔など、導電性の材料から構成される。集電体の一般的な厚さは、1〜30μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。
【0031】
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。
【0032】
[活物質層]
集電体2上には、活物質層3が形成される。活物質層3は、充放電反応の中心を担う活物質および導電助剤を含む層である。本発明の電極が正極として用いられる場合、活物質層は正極活物質を含む。一方、本発明の電極が負極として用いられる場合、活物質層は負極活物質を含む。
【0033】
正極活物質としては、リチウム−遷移金属複合酸化物が好ましく、例えば、LiMnなどのLi−Mn系複合酸化物やLiNiOなどのLi−Ni系複合酸化物が挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。
【0034】
負極活物質としては、上記のリチウム遷移金属−複合酸化物や、カーボンが好ましい。カーボンとしては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛系炭素材料、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。
【0035】
活物質の平均粒子径は特に制限されないが、好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは0.1〜15μmであり、特に好ましくは0.1〜10μmである。ただし、これらの範囲を外れる形態もまた、採用されうる。なお、本願において活物質の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定(レーザ回折散乱法)により測定された値を採用するものとする。
【0036】
また、正極活物質層における正極活物質の含有量は、好ましくは70〜99質量%であり、より好ましくは80〜99質量%である。負極活物質層における負極活物質の含有量は、好ましくは80〜99質量%であり、より好ましくは90〜99質量%である。
【0037】
導電助剤は、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。
【0038】
本発明で用いられうる導電助剤は、例えば、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、グラファイトなどのカーボン粉末や気相成長炭素繊維(VGCF:登録商標)などの種々の炭素繊維などが挙げられる。好ましくは、アセチレンブラックであるHS100(かさ密度0.15g/ml)、FX35(かさ密度0.05g/ml)、VGCF(棒状)(かさ密度0.04g/ml)、グラファイトであるKS6(燐片状)(かさ密度0.07g/ml)、Super−P(房状)(かさ密度0.16g/ml)、SP450(かさ密度0.1g/ml)、SP−5030(かさ密度0.07g/ml)、ケッチェンブラックであるEC300J(かさ密度0.1〜0.15g/ml)、ECP(かさ密度0.015〜0.05)などが挙げられる。
【0039】
アセチレンブラック(AB)は、1種(粉状、かさ密度0.03〜0.06g/ml)、2種(50%プレス、かさ密度0.06〜0.11g/ml)、3種(100%プレス、かさ密度0.11〜0.18g/ml)に分類される。ここで、50%プレスは粉状のものをプレスして、かさ密度が粉状のときの2倍になったものをいう。100%プレスとは、かさ密度が50%プレスのときの2倍になったものをいう。
【0040】
前記導電助剤の粒子径は、好ましくは0.01〜50μmであり、より好ましくは0.01〜20μmである。前記導電助剤の粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定の方法によって測定した値を採用する。例えば、燐片状、棒状などの形状の導電助剤の場合、粒子径は、最端部を結ぶ最長距離の大きさを採用する。
【0041】
上述の図1のような実施形態において、活物質層が2層以上から形成される場合、電解質側の最表面層に含まれる導電助剤としては、好ましくはかさ密度が0.05g/ml以下のものを選択する。中でも、電解質側の最表面層に含まれうる導電助剤としては、VGCF、FX35、ECPが好ましく、VGCFが特に好ましい。VGCFのような棒状の導電助剤を最表面層に用いることで、導電性を確保しつつ、空隙率を高くすることができる。
【0042】
ここで、導電助剤のかさ密度(g/ml)は、試料100mlを、100mlのメスシリンダーを斜めにして徐々に入れ、試料の質量を0.1g単位まで測定し、次いで試料の入ったメスシリンダーにコルク栓をした後、ゴム板上で5cmの高さから50回落下させて、圧縮された試料の体積を求め、下記式によって算出した。
【0043】
【数1】

【0044】
本発明の電極において、活物質層の厚さは、好ましくは、20〜500μmであり、より好ましくは20〜400μmであり、さらに好ましくは20〜300μmである。上述の範囲であれば、複数層から形成される活物質層が好適に作製されうる。
【0045】
さらに、活物質層を形成する各層の厚さは、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは10〜80μmであり、さらに好ましくは10〜50μmである。各層の膜厚が上述の範囲であれば、電極剥離を抑制することができる。各層の厚さが上述の範囲であれば、乾燥過程において溶液揮発時間が長くなって、厚さ方向の結着剤の偏析が生じることが少ないために、好ましい。
【0046】
上述の図1のような実施形態において、特に正極活物質層が、電解質側の第1の活物質層および集電体側の第2の活物質層から形成される場合、特に、前記第1の活物質層に含まれる導電助剤がVGCFであり、第2の活物質層に含まれる導電助剤がSuper−PまたはSP450とすると、特に電池の出力の向上に寄与できる。
【0047】
また、上述の図2のような実施形態においては、導電助剤としてはかさ密度が0.05g/ml以下、好ましくは0.03g/ml以下のものが用いられうるが、中でもVGCF、FX35、ECPが好ましい。
【0048】
活物質層3には、必要であれば、その他の物質が含まれてもよい。例えば、バインダ、支持塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が含まれうる。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
【0049】
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、合成ゴム系バインダ等が挙げられる。バインダを用いることによって、導電助剤に活物質が固着され、安定に保持されうる。
【0050】
支持塩(リチウム塩)としては、Li(CSON(LiBETI)、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0051】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。ここで、前記ポリマーは、本発明の電極が採用される電池の電解質層において用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0052】
重合開始剤は、イオン伝導性ポリマーの架橋性基に作用して、架橋反応を進行させるために配合される。開始剤として作用させるための外的要因に応じて、光重合開始剤、熱重合開始剤などに分類される。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や、光重合開始剤であるベンジルジメチルケタール(BDK)等が挙げられる。
【0053】
活物質層3に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。好ましくは、バインダの配合比は、活物質層の総質量に対して1〜5質量%である。
【0054】
(製造方法)
本発明の電池用電極の製造方法は特に制限されず、電池用電極の製造分野において従来公知の知見を適宜参照することにより、本発明の電極は製造されうる。以下、図1において、複数の層から形成される活物質層を有し、各層に含まれる導電助剤のかさ密度が活物質層の集電体側から電解質側に向かうに従って漸減している、電池用電極の製造方法を簡単に説明する。
【0055】
電極1は、例えば、それぞれ、活物質、導電助剤および溶媒を含む活物質スラリーを個々に調製し、当該活物質スラリーを、かさ密度の高い導電助剤を含む活物質スラリーから順に、集電体上に塗布し、乾燥する工程を繰り返す。各活物質スラリーは、それぞれ、1種類ずつの導電助剤を含んでもよく、2種類以上の導電助剤が含まれていてもよい。1つの活物質スラリーに2種類以上の導電助剤が含まれる場合、各導電助剤のかさ密度をその配合比で重み付けした平均値が大きい順に、それぞれの活物質スラリーを集電体上に塗布する。1種類の導電助剤を含む活物質スラリーと2種類以上の導電助剤を含む活物質スラリーとを組み合わせて積層してもよい。また、活物質スラリーごとにそれぞれ異なる複数種の導電助剤が含まれていてもよい。このとき、好ましくは、活物質スラリーを調製する溶媒として、有機溶媒と水性溶媒の少なくとも2種類の溶媒を準備し、有機溶媒を用いて調製した活物質スラリーと水性溶媒を用いて調製した活物質スラリーとが交互に塗布されるように各活物質スラリーを調製すると、複数の活物質スラリーを重ねて塗布した場合であっても、塗布工程で各層が溶解して交じり合うことを避けることができる。活物質スラリーを順次塗布、乾燥させたあと、得られた積層体をプレスすることで電極が作製されうる。
【0056】
はじめに、所望の活物質、導電助剤、および必要に応じて他の成分(例えば、バインダ、支持塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー、重合開始剤など)を、溶媒中で混合して、活物質スラリーを調製する。活物質スラリー中に配合される各成分の具体的な形態については、上記の本発明の電極の構成の欄において説明した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、正極を作製するにはスラリー中に正極活物質を添加するが、負極を作製するにはスラリー中に負極活物質を添加すべきであることは当然である。
【0057】
溶媒の種類や混合手段は特に制限されず、電極製造について従来公知の知見が適宜参照されうる。有機溶媒の一例を挙げると、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどが用いられうる。有機溶媒を用いて活物質スラリーを調製する場合、バインダとして、好ましくは、PVdFや、アクリル系樹脂、SBRなどの点結着型バインダを用いる。バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を採用する場合には、NMPを溶媒として用いるとよい。
【0058】
水性溶媒としては、例えば、SBR、アクリル系樹脂、PTFEなどが挙げられる。水性溶媒を用いて活物質スラリーを調製する場合、バインダとしては、好ましくは、SBR、アクリル系樹脂などの点結着型バインダを用いる。
【0059】
続いて、活物質層3を形成するための集電体2を準備する。本工程において準備する集電体の具体的な形態については、上記の本発明の電極の構成の欄において説明した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0060】
続いて、上記で調製した活物質スラリーを、上記で準備した集電体2の表面に塗布し、塗膜を形成する。
【0061】
活物質スラリーを塗布するための塗布手段も特に限定されないが、例えば、自走型コータなどの一般的に用いられている手段が採用されうる。ただし、塗布手段として、インクジェット方式、ドクターブレード方式、またはこれらの組み合わせを用いると、薄い層が形成されうるとともに、導電助剤の種類や含有量を変化させた2以上の活物質スラリーの多段階塗布が可能になる。
【0062】
その後、集電体の表面に形成された塗膜を乾燥させる。これにより、塗膜中の溶媒が除去される。
【0063】
塗膜を乾燥させるための乾燥手段も特に制限されず、電極製造について従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、加熱処理が例示される。乾燥条件(乾燥時間、乾燥温度など)は、活物質スラリーの塗布量やスラリーの溶媒の揮発速度に応じて適宜設定されうる。
【0064】
その後、上記で準備した塗膜をプレスする。プレス手段については、特に限定されず、従来公知の手段が適宜採用されうる。プレス手段の一例を挙げると、カレンダーロール、平板プレスなどが挙げられる。
【0065】
上述の方法によれば、多数の層を積層して活物質層を作製する場合であっても、プレス工程が1回で済むため、工程の簡略化が可能になり、製造コストが抑えられる。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態では、上記の第1実施形態の電池用電極を用いて、電池を構成する。
【0067】
すなわち、本発明の第2実施形態は、正極、電解質層、および負極がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層を有する電池であって、前記正極および前記負極の少なくとも一方が本発明の電極である、電池である。本発明の電極は、正極、負極、双極型電極のいずれにも適用されうる。本発明の電極を、少なくとも1つの電極として含む電池は、本発明の技術的範囲に属する。ただし、好ましくは、電池を構成する電極の全てが本発明の電極である。かような構成を採用することにより、電池の容量および出力を効果的に向上させうる。
【0068】
本発明の二次電池の構造としては、特に限定されず、形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。また、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。
【0069】
本発明では、積層型(扁平型)電池構造を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点では有利である。
【0070】
したがって、以下の説明では、本発明の(内部並列接続タイプ)リチウムイオン二次電池及び双極型(内部直列接続タイプ)のリチウムイオン二次電池につき図面を用いてごく簡単に説明するが、決してこれらに制限されるべきものではない。
【0071】
図3は、本発明のリチウムイオン電池の代表的な一実施形態である、扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池(以下、単に非双極型リチウムイオン二次電池、または非双極型二次電池ともいう)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
【0072】
図3に示すように、本実施形態の非双極型リチウムイオン二次電池10では、電池外装材22に高分子−金属を複合したラミネートフィルムを用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、発電要素(電池要素)17を収納し密封した構成を有している。ここで、発電要素(電池要素)17は、正極集電体11の両面に正極(正極活物質層)12が形成された正極板、セパレータ層13、および負極集電体14の両面(発電要素の最下層および最上層用は片面)に負極(負極活物質層)15が形成された負極板を積層した構成を有している。この際、一の正極板片面の正極(正極活物質層)12と前記一の正極板に隣接する一の負極板片面の負極(負極活物質層)15とがセパレータ層13を介して向き合うようにして、正極板、セパレータ層13、負極板の順に複数積層されている。
【0073】
これにより、隣接する正極(正極活物質層)12、セパレータ層13、および負極(負極活物質層)15は、一つの単電池層16を構成する。したがって、本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、単電池層16が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素(電池要素;積層体)17の両最外層に位置する最外層正極集電体11aには、いずれも片面のみに正極(正極活物質層)12が形成されている。なお、図3と正極板と負極板の配置を変えることで、発電要素(電池要素)17の両最外層に最外層負極集電体(図示せず)が位置するようにし、該最外層負極集電体の場合にも片面のみに負極(負極活物質層)15が形成されているようにしてもよい。
【0074】
また、上記の各電極板(正極板及び負極板)と導通される正極タブ18および負極タブ19が、正極端子リード20および負極端子リード21を介して各電極板の正極集電体11及び負極集電体14に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられ、上記熱融着部に挟まれて上記の電池外装材22の外部に露出される構造を有している。
【0075】
図4は、本発明のリチウムイオン電池の他の代表的な一実施形態である双極型の扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池(以下、単に双極型リチウムイオン二次電池、または双極型二次電池とも称する)の全体構造を模式的に表わした概略断面図である。
【0076】
図4に示すように、本実施形態の双極型リチウムイオン二次電池30は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素(電池要素)37が、電池外装材42の内部に封止された構造を有する。図4に示すように、本実施形態の双極型二次電池30の発電要素(電池要素)37は、1枚または2枚以上で構成される双極型電極34でセパレータ層35を挟み、隣合う双極型電極34の正極(正極活物質層)32と負極(負極活物質層)33とが対向するようになっている。ここで、双極型電極34は、集電体31の片面に正極(正極活物質層)32を設け、もう一方の面に負極(負極活物質層)33を設けた構造を有している。すなわち、双極型二次電池30では、集電体31の片方の面上に正極(正極活物質層)32を有し、他方の面上に負極(負極活物質層)33を有する双極型電極34を、セパレータ層35を介して複数枚積層した構造の発電要素(電池要素)37を具備してなるものである。
【0077】
隣接する正極(正極活物質層)32、セパレータ層35および負極(負極活物質層)33は、一つの単電池層(=電池単位ないし単セル)36を構成する。従って、双極型二次電池30は、単電池層36が積層されてなる構成を有するともいえる。また、セパレータ層35からの電解液の漏れによる液絡を防止するために単電池層36の周辺部にはシール部(絶縁層)43が配置されている。該シール部(絶縁層)43を設けることで隣接する集電体31間を絶縁し、隣接する電極(正極32及び負極33)間の接触による短絡を防止することもできる。
【0078】
なお、発電要素(電池要素)37の最外層に位置する正極側電極34a及び負極側電極34bは、双極型電極構造でなくてもよく、集電体31a、31b(または端子板)に必要な片面のみの正極(正極活物質層)32または負極(負極活物質層)33を配置した構造としてもよい。発電要素(電池要素)37の最外層に位置する正極側の最外層集電体31aには、片面のみに正極(正極活物質層)32が形成されているようにしてもよい。同様に、発電要素(電池要素)37の最外層に位置する負極側の最外層集電体31bには、片面のみに負極(負極活物質層)33が形成されているようにしてもよい。また、双極型リチウムイオン二次電池30では、上下両端の正極側最外層集電体31a及び負極側最外層集電体31bにそれぞれ正極タブ38および負極タブ39が、必要に応じて正極端子リード40及び負極端子リード41を介して接合されている。但し、正極側最外層集電体31aが延長されて正極タブ38とされ、電池外装材42であるラミネートシートから導出されていてもよい。同様に、負極側最外層集電体31bが延長されて負極タブ39とされ、同様に電池外装材42であるラミネートシートから導出される構造としてもよい。
【0079】
また、双極型リチウムイオン二次電池30でも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素(電池要素;積層体)37部分を電池外装材(外装パッケージ)42に減圧封入し、正極タブ38及び負極タブ39を電池外装材42の外部に取り出した構造とするのがよい。この双極型リチウムイオン二次電池30の基本構成は、複数積層した単電池層(単セル)36が直列に接続された構成ともいえるものである。
【0080】
上記した通り、非双極型リチウムイオン二次電池と双極型リチウムイオン二次電池の各構成要件および製造方法に関しては、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)が異なることを除いては、基本的には同様である。また、本発明の非双極型リチウムイオン二次電池および/または双極型リチウムイオン二次電池を用いて、組電池や車両を構成することもできる。
【0081】
[リチウムイオン二次電池の外観構成]
図5は、本発明に係るリチウムイオン電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な非双極型あるいは双極型のリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0082】
図5に示すように、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素(電池要素)57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素(電池要素)57は、正極タブ58及び負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素(電池要素)57は、先に説明した図3あるいは図4に示す非双極型あるいは双極型のリチウムイオン二次電池10、30の発電要素(電池要素)17、37に相当するものであり、正極(正極活物質層)12、32、セパレータ層13、35および負極(負極活物質層)15、33で構成される単電池層(単セル)16、36が複数積層されたものである。
【0083】
なお、本発明のリチウムイオン電池は、図3、4に示すような積層型の扁平な形状のものに制限されるものではなく、巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
【0084】
また、図5に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではなく、正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図5に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0085】
本発明のリチウムイオン電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0086】
以下、本実施形態のリチウムイオン二次電池10、30、50を構成する部材について簡単に説明する。ただし、電極を構成する成分については上記で説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。また、本発明の技術的範囲が下記の形態のみに制限されることはなく、従来公知の形態が同様に採用されうる。
【0087】
[電解質層]
電解質層13、35を構成する電解質としては、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。特に、本願発明の電極の効果は、電解質にポリマー電解質を用いたときに効果が高い。
【0088】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiBETI等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
【0089】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
【0090】
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HEP)、ポリ(メチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系高分子には、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0091】
イオン伝導性を有する高分子としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体のようなポリアルキレンオキシド系高分子が挙げられる。
【0092】
リチウムイオン伝導性の低い高分子としては、例えば、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)が挙げられる。
【0093】
なお、電解質層13、35が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層17にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
【0094】
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。従って、電解質層13、35が真性ポリマー電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。本願発明の電極は、特に、ポリエチレンオキシド(PEO)などのポリマー電解質を用いて電池を作製すると、出力、容量の向上の効果が顕著である。
【0095】
ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0096】
[絶縁層]
シール部(絶縁層)43としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0097】
[タブ]
タブ(正極タブ18、38および負極タブ19、39)の材質は、特に制限されず、バイポーラ電池用のタブとして従来用いられている公知の材質が用いられうる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等が例示される。なお、正極タブ18、38と負極タブ19、39とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。なお、本実施形態のように、最外層集電体(31a、31b)を延長することによりタブ(18、38、19、39)としてもよいし、別途準備したタブを最外層集電体に接続してもよい。
【0098】
(第3実施形態)
第3実施形態では、上記の第2実施形態の電池を用いて組電池を構成する。
【0099】
本発明の組電池は、本発明のリチウムイオン二次電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。なお、本発明の組電池では、本発明の非双極型リチウムイオン二次電池と双極型リチウムイオン二次電池を用いて、これらを直列に、並列に、または直列と並列とに、複数個組み合わせて、組電池を構成することもできる。
【0100】
また、図6は、本発明に係る組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図6Aは組電池の平面図であり、図6Bは組電池の正面図であり、図6Cは組電池の側面図である。
【0101】
図6に示すように、本発明に係る組電池300は、本発明のリチウムイオン二次電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成し、この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池300を形成することもできる。図6Aは、組電池の平面図、図6Aは正面図、図6Cは側面図を示しているが、作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個の非双極型ないし双極型のリチウムイオン二次電池を接続して組電池250を作製するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0102】
(第4実施形態)
第4実施形態では、上記の第2実施形態の電池10、または第3実施形態の組電池300を搭載して車両を構成する。
【0103】
本発明の車両は、本発明のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。本発明の高容量正極を用いると高エネルギー密度の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、本発明のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。本発明のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【0104】
図7は、本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。
【0105】
図7に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。本発明の組電池を搭載した車両としては、図7に示すような電気自動車のほか、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車などに幅広く適用できるものである。
【実施例】
【0106】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例に示す形態のみに制限されるわけではない。
【0107】
<実施例1>
<正極の作製>
正極活物質であるニッケル酸リチウム(LiNiO)(平均粒子径15μm)(70質量%)、導電助剤であるかさ密度0.07g/mlのKS6(平均粒子径5μm)(20質量%)およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(10質量%)を混合し、次いでスラリー粘度調製用溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、第1の正極活物質スラリーを調製した。
【0108】
次いで、前記LiNiO(平均粒子径15μm)(70質量%)、導電助剤であるかさ密度0.15g/mlのHS100(平均粒子径0.05μm)(20質量%)、およびPVdF(10質量%)を混合し、NMPを適量添加して、第2の正極活物質スラリーを調製した。
【0109】
一方、正極用の集電体として、アルミニウム箔(厚さ:20μm)を準備した。準備した集電体の一方の表面に、上記で調製した第2の正極活物質スラリーを、自走式コーター、またはダイコータを用いて目付け量20mg/cmで塗布し、塗膜を形成させ、この塗膜を乾燥させた。
【0110】
次いで、上記で作製した塗膜の上に、上述の第1の正極活物質スラリーを、自走式コーターまたはダイコータを用いて目付け量20mg/cmで塗布し、塗膜を形成させ、この塗膜を乾燥させた。
【0111】
得られた積層体を、プレス機を用いてプレスした。第1の正極活物質スラリーの層(以下、第1正極活物質層と称する)の膜厚が87μm、第2の正極活物質スラリーの層(以下、第2正極活物質層と称する)の膜厚が85μmであった。
【0112】
<負極の作製>
負極活物質であるハードカーボン(平均粒子径:20μm)(90質量部)、およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(10質量部)を混合し、次いでスラリー粘度調製溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散して、負極活物質スラリーを調製した。
【0113】
一方、負極用の集電体として、銅箔(厚さ:10μm)を準備した。準備した集電体の一方の表面に、上記で調製した負極活物質スラリーを塗布し、乾燥させて塗膜を得た。得られた塗膜をプレスすることにより、負極活物質層を有する負極を形成した。
【0114】
<比較例1>
第1の正極活物質スラリー中の導電助剤として、かさ密度0.15g/mlのHS100(平均粒子径0.05μm)を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、各電極を作製した。第1正極活物質層の厚さは86μmであり、第2正極活物質層の厚さは85μmであった。
【0115】
<実施例2−1>
第1の正極活物質スラリー中の導電助剤として、かさ密度0.04g/mlのVGCF(平均粒子径15μm)を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、各電極を作製した。第1正極活物質層の厚さは86μmであり、第2正極活物質層の厚さは86μmであった。
【0116】
<実施例2−2>
第1の正極活物質スラリー中の導電助剤として、かさ密度0.04g/mlのVGCF(平均粒子径15μm)を用い、第2の正極活物質スラリー中の導電助剤としてかさ密度0.16g/mlのSuper−P(平均粒子径40nm)を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、各電極を作製した。第1正極活物質層の厚さは86μmであり、第2正極活物質層の厚さは86μmであった。
【0117】
<実施例2−3>
第1の正極活物質スラリー中の導電助剤として、かさ密度0.04g/mlのVGCF(平均粒子径15μm)を用い、第2の正極活物質スラリー中の導電助剤としてかさ密度0.10g/mlのSP450(平均粒子径1μm以下)を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、各電極を作製した。第1正極活物質層の厚さは86μmであり、第2正極活物質層の厚さは86μmであった。
【0118】
<比較例2>
第1の正極活物質スラリー中の導電助剤として、かさ密度0.15g/mlのHS100(平均粒子径0.05μm)を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、各電極を作製した。第1正極活物質層の厚さは86μmであり、第2正極活物質層の厚さは87μmであった。
【0119】
<実施例3>
正極活物質であるLiNiO(平均粒子径15μm)(75質量%)、導電助剤であるかさ密度0.04g/mlのVGCF(平均粒子径15μm)(15質量%)およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(10質量%)を混合し、次いでスラリー粘度調製用溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、第1の正極活物質スラリーを調製した。
【0120】
次いで、前記LiNiO(平均粒子径15μm)(85質量%)、導電助剤であるかさ密度0.04g/mlのVGCF(平均粒子径15μm)(5質量%)、およびPVdF(10質量%)を混合し、NMPを適量添加して、第2の正極活物質スラリーを調製した。
【0121】
一方、正極用の集電体として、アルミニウム箔(厚さ:20μm)を準備した。準備した集電体の一方の表面に、上記で調製した第2の正極活物質スラリーを、自走式コーター、またはダイコータを用いて目付け量20mg/cmで塗布し、塗膜を形成させ、この塗膜を乾燥させた。
【0122】
次いで、上記で作製した塗膜の上に、上述の第1の正極活物質スラリーを、自走式コーター、またはダイコータを用いて目付け量20mg/cmで塗布し、塗膜を形成させ、この塗膜を乾燥させた。
【0123】
得られた積層体を、プレス機を用いてプレスし、第1正極活物質層の膜厚が86μm、第2正極活物質層の膜厚が87μmであった。
【0124】
負極を実施例1と同様の手法で調製した。
【0125】
<比較例3>
前記第1の活物質スラリー、および前記第2の正極活物質スラリー中のニッケル酸リチウム、VGCF、およびPVdFの質量比を、80:10:10としたこと以外は、上記の実施例3と同様の手法により、各電極を作製した。第1正極活物質層の厚さは86μmであり、第2正極活物質層の厚さは87μmであった。
【0126】
<実施例4−1>
正極活物質であるLiNiO(平均粒子径15μm)(85質量%)、導電助剤であるかさ密度0.04g/mlのVGCF(平均粒子径15μm)(10質量%)およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(5質量%)を混合し、次いでスラリー粘度調製用溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して第1の正極活物質スラリーを調製した。
【0127】
前記LiNiO(85質量%)、導電助剤であるかさ密度0.16g/mlのSuper−P(平均粒子径40nm)(10質量%)、およびPVdF(5質量%)を混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、第2の正極活物質スラリーを調製した。
【0128】
一方、正極用の集電体として、アルミニウム箔(厚さ:20μm)を準備した。準備した集電体の一方の表面に、上記で調製した第2の正極活物質スラリーを、自走式コーター、またはダイコータを用いて目付け量20mg/cmで、塗布して塗膜を形成させ、この塗膜を乾燥させた。この塗膜の上に、上述の第2の活物質スラリーを同様にしてさらに2回、塗布し、乾燥させた。その後、さらに、第1の正極活物質スラリーを同様に塗布して3層の塗膜を積層した。
【0129】
得られた積層体を、プレス機を用いてプレスし最表面層から第1正極活物質層〜第6正極活物質層を形成した。第1正極活物質層〜第6正極活物質層の膜厚が、それぞれ、48μm、48μm、50μm、50μm、51μm、51μmとなった。
【0130】
負極は、実施例1と同様に作製した。
【0131】
<実施例4−2>
LiNiO(平均粒子径15μm)(85質量%)、導電助剤であるかさ密度0.07g/mlのKS6(平均粒子径5μm)(10質量%)およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(5質量%)を混合し、次いでスラリー粘度調製用溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して中間層の正極活物質スラリーを調製した。
【0132】
集電体に、実施例4−1と同様の第2の正極活物質スラリー、上述で調製した中間層の正極活物質スラリー、および実施例4−1の第1の正極活物質スラリーをそれぞれ2回ずつ、この順で塗布、乾燥して積層体を形成し、その後プレスした。第1正極活物質層〜第6正極活物質層の膜厚が、それぞれ、48μm、50μm、50μm、51μm、51μm、51μmであった。
【0133】
負極は、実施例1と同様に作製した。
【0134】
<比較例4>
ニッケル酸リチウム(LiNiO)(平均粒子径15μm)(85質量%)、導電助剤であるかさ密度0.16g/mlのSuper−P(平均粒子径40nm)(10質量%)およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(5質量%)を混合し、次いでスラリー粘度調製用溶媒であるNMPを適量添加して第1の正極活物質スラリーを調製した。
【0135】
同様に、ニッケル酸リチウム、Super−P、およびPVdFの質量比を、72:10:18として、中間層の正極活物質スラリーを調製した。
【0136】
同様に、ニッケル酸リチウム、Super−P、およびPVdFの質量比を、60:10:39として、第2の正極活物質スラリーを調製した。
【0137】
集電体に、上記の第2の正極活物質スラリー、中間層の正極活物質スラリー、および第1の正極活物質スラリーをそれぞれ2回ずつ、この順で塗布、乾燥して積層し、その後プレスした。第1正極活物質層〜第6正極活物質層の膜厚は、それぞれ、48μm、49μm、50μm、50μm、50μm、51μmであった。
【0138】
負極は、実施例1と同様に作製した。
【0139】
<試験用セルの作製>
試験用セルの正極および負極として用いるために、上記の各実施例および比較例で作製した正極および負極を、ポンチを用いて打ち抜いた。
【0140】
さらに、セパレータとしてポリプロピレン微多孔膜(厚さ:20μm)を準備した。また、電解質として、ポリエチレンオキシド(PEO)系ポリマー(分子量約8500、粘度4000Pa・s)にリチウム塩であるLiBETIを1.0Mの濃度に溶解させたものを準備した。
【0141】
上記で得られた負極、セパレータ、および正極をこの順に積層し、セパレータにポリマー電解質を注入した。次いで、負極および正極にそれぞれ電流取り出し用端子(正極にはアルミニウム端子、負極にはニッケル端子)を接続し、電流取り出し用端子が外部に露出するように電池要素をアルミニウム製のラミネートフィルム中に入れ、ラミネートフィルムの開口部を減圧下で封止して、試験用セルを作製した。
【0142】
<試験用セルの電池特性の評価>
上記の各実施例および比較例について試験用セルを作製し、初充電とガス抜きを実施した。それぞれの試験用セルを定電流充電(CC)し、その後4.2Vまで定電圧(CV)で、合計15時間充電した。次にラミネートを開封し、常温でガス抜きを行なった。ガス抜きは電池を容器中の平板上に置き、重しを上面に載せて容器内を減圧することにより行なった。
【0143】
その後、作製した試験用セルについて、活物質理論容量から算出した1C,2C,5C電流値により満充電から10秒間の放電を行い、10秒後の電位と電流値から抵抗値を算出し、出力の指標とした。エネルギー密度(Wh/kg)は電池容量(Ah)と平均電圧(V)の積を試験セル重量(kg)で割り、出力密度(W/kg)は電流値(A)と平均電圧(V)の積を試験セル重量で割り算出した。
【0144】
実施例1については比較例1を1としたときの、実施例2−1〜2−3においては比較例2を1としたときのl、実施例3では比較例3を1としたときの、実施例4−1および4−2については比較例4を1としたときの、試験用セルの比出力を、下記の表1に示す。
【0145】
【表1−1】

【0146】
【表1−2】

【0147】
実施例1と比較例1の結果を比較すると、正極活物質層における正極活物質の含有量は変化しないため、電池のエネルギー密度は変化しないが、実施例1では、最表面層である第1の正極活物質層の空隙率が増加し、ポリマー電解質の含浸性が向上するため、比較例1に比べて出力密度が向上する。
【0148】
実施例2−1〜2−3と比較例2の結果を比較すると、正極活物質層における正極活物質の含有量は変化しないため、電池のエネルギー密度は変化しないが、実施例2ー1〜2−3では、最表面層である第1の正極活物質層の空隙率が増加するため、ポリマー電解質の含浸性が向上するため、比較例2に比べて出力密度が向上する。特に、最表面層である第1の正極活物質層の導電助剤にVGCFを用いると、空隙率が大きくなり、出力密度がより高まることがわかる。
【0149】
実施例3と比較例3の結果を比較すると、2層の合計の活物質量は変化しないので、エネルギー密度に変化はないが、実施例3では、最表面層である第1の正極活物質層においてかさ高い導電助剤の含有量が多いため、空隙率が高くなるが、導電性は確保されるため、出力密度が増加する。
【0150】
また、実施例4−1、4−2と比較例4を比較すると、バインダの含有量を変化させて空隙率を変化させた比較例4では、相対的に活物質の含有量が少なくなるため、出力密度が低下する。一方、実施例4−1、4−2では、エネルギー密度、出力密度ともに良好な値が得られる。
【0151】
このように、本発明の電極は、従来、活物質層の厚さを厚くした場合に困難であった、活物質層の集電体付近の部分までのポリマー電解質の十分な含浸を可能とし、その結果、電池の出力特性の向上に有効に寄与しうる。さらに、本発明の電極は、活物質層中の活物質の含有量を高い値に維持したまま、活物質層の空隙率を制御するため、高エネルギー密度の電池が作製されうる。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明の電池用電極の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の電池用電極の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明のリチウムイオン電池の代表的な一実施形態である積層型の扁平な非双極型リチウムイオン二次電池の概要を模式的に表した断面概略図である。
【図4】本発明のリチウムイオン電池の代表的な他の一実施形態である積層型の扁平な双極型リチウムイオン二次電池の概要を模式的に表した断面概略図である。
【図5】本発明に係るリチウムイオン電池の代表的な実施形態である積層型の扁平なリチウムイオン二次電池の外観を模式的に表した斜視図である。
【図6】本発明に係る組電池の代表的な実施形態を模式的に表した外観図であって、図6Aは組電池の平面図であり、図6Bは組電池の正面図であり、図6Cは組電池の側面図である。
【図7】本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。
【符号の説明】
【0153】
1 電極、
2 集電体、
3 活物質層、
10 非双極型リチウムイオン二次電池、
11 正極集電体、
11a 最外層正極集電体、
12、32 正極(正極活物質層)、
13、35 電解質層、
14 負極集電体、
15、33 負極(負極活物質層)、
16、36 単電池層(=電池単位ないし単セル)、
17、37、57 発電要素(電池要素;積層体)、
18、38、58 正極タブ、
19、39、59 負極タブ、
20、40 正極端子リード、
21、41 負極端子リード、
22、42、52 電池外装材(たとえばラミネートフィルム)、
30 双極型リチウムイオン二次電池、
31 集電体、
31a 正極側の最外層集電体、
31b 負極側の最外層集電体、
34 双極型電極、
34a、34b 最外層に位置する電極、
43 シール部(絶縁層)、
50 リチウムイオン二次電池、
250 小型の組電池、
300 組電池、
310 接続治具、
400 電気自動車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体の表面に形成された、活物質および導電助剤を含む活物質層と、を有する電池用電極であって、
前記活物質層における導電助剤のかさ密度が、活物質層の集電体側から電解質側に向かうに従って漸減していることを特徴とする、電池用電極。
【請求項2】
第1の活物質層と、
集電体と前記第1の活物質層との間に介在する第2の活物質層と、
を少なくとも有し、前記第1の活物質層における導電助剤のかさ密度が、前記第2の活物質層における導電助剤のかさ密度より低いことを特徴とする、請求項1に記載の電池用電極。
【請求項3】
前記第1の活物質層の導電助剤のかさ密度が0.01〜0.05g/ml以下である、請求項2に記載の電池用電極。
【請求項4】
集電体と、前記集電体の表面に形成された、活物質およびかさ密度が0.01〜0.05g/mlの導電助剤を含む活物質層と、を有する電池用電極であって、
前記活物質層における導電助剤の含有量が、活物質層の集電体側から電解質側に向かうに従って漸増していることを特徴とする、電池用電極。
【請求項5】
前記活物質層の厚さが、20〜500μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池用電極。
【請求項6】
前記活物質層が、2以上の層から形成され、各層の厚さが、それぞれ10〜100μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池用電極。
【請求項7】
前記導電助剤が、炭素材料を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電池用電極。
【請求項8】
活物質、導電助剤、および溶媒を含む活物質スラリーを、かさ密度が異なるn(ここでnは2以上の整数である)種の導電助剤を用いてn種調製する段階と、
集電体の表面に、含まれる導電助剤のかさ密度が大きい順に、前記活物質スラリーを塗布してn層からなる塗膜を形成する段階と、
前記塗膜を積層方向にプレスする段階と、
を含む電池用電極の製造方法。
【請求項9】
活物質、かさ密度の異なるm(ここでmは2以上の整数である)種の導電助剤、および溶媒を含む活物質スラリーを、各導電助剤の配合比を変化させてn(ここでnは2以上の整数である)種調製する段階と、
集電体の表面に、前記導電助剤の配合比で重みづけしたかさ密度の平均値が大きい順に、前記活物質スラリーを塗布してn層からなる塗膜を形成する段階と、
前記塗膜を積層方向にプレスする段階と、
を含む電池用電極の製造方法。
【請求項10】
前記活物質スラリーを塗布する段階が、インクジェット方式を用いて行われる、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
正極、電解質層、および負極がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層を有するリチウムイオン二次電池であって、
前記正極または前記負極の少なくとも一方が、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電池用電極である、リチウムイオン二次電池。
【請求項12】
前記電解質層が、液体電解質、ゲル電解質、または真性ポリマー電解質を含む、請求項11に記載の電池。
【請求項13】
前記電解質層が、真性ポリマー電解質を含む、請求項12に記載の電池。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池を用いた組電池。
【請求項15】
請求項11〜13のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池、または請求項14に記載の組電池を搭載した車両。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−4181(P2009−4181A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162916(P2007−162916)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】