説明

電池

【課題】衝撃が加わっても電極群の重さに関係なく負極集電体と外装缶との溶接部が破断することを防止することができる電池を提供する。
【解決手段】ニッケル水素二次電池1は、有底筒状の外装缶2と、外装缶2内に収容され、正極6及び負極4がセパレータ8を介して積層され渦巻き状に巻回されてなる電極群10と、外装缶10の底壁と電極群10との間に配置され、負極4と外装缶10の底壁とを電気的に接続する負極集電体28とを備えており、負極集電体28は、金属製の板材からなり、その中央部に設けられた馬蹄形の舌片50と、舌片50の周囲に位置付けられる負極溶接領域42とを有し、舌片50は、外装缶2の底壁と溶接され、負極溶接領域42は、負極4の負極集電タブ34と溶接されており、舌片50の厚さは、負極溶接領域42の厚さよりも薄く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装缶内の電極群の下部に負極用集電体を備えた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の電池は、携帯電話やデジタルカメラといったポータブル機器、更には、電動工具や電気自動車等の電源として広く使用されている。
【0003】
これらの電池は、一般に、正極板及び負極板の間にセパレータを介在させてこれらを巻芯に巻いて形成した環状の電極群を、負極端子を兼ねる導電性を有した外装缶内に収容し、電解液を注入したのち、外装缶の上端開口を封口体で封口することにより製造されている。この封口体は、外装缶との絶縁性を確保した状態で外装缶の開口縁に固定されている。ここで、前記封口体には、正極端子、安全弁等が取り付けられており、前記正極端子と前記正極板とは正極用集電体を介して電気的に接続される。
【0004】
一方、負極板は、外装缶と電気的に接続されるが、特に、電気自動車や電動工具などに用いられ、高率放電を必要とする電池では、負極板と外装缶の底壁とが負極用集電体を介して電気的に接続される。詳しくは、電極群を形成する際に、矩形状の負極板における長手方向の端辺部のうちの一方を予めセパレータからはみ出させた状態で巻回し、電極群の一端から負極板の端辺部を渦巻き状に突出させる。この突出した負極板の端辺部は、負極集電タブとして機能し、この負極集電タブの全体が、金属製の板材からなる負極用集電体に溶接される。そして、この負極用集電体が外装缶の底壁に溶接されることにより負極板と外装缶とが電気的に接続される。このように、負極板が負極用集電体と広い範囲で接続することにより、電池の内部抵抗は小さくなり、高率放電特性が向上する。
【0005】
このような高率放電を必要とする電池に用いられる負極用集電体としては、例えば、特許文献1に示されているような負極用集電体が知られている。特許文献1の負極用集電体は、略円形状の金属製の板材であり、その中心部に馬蹄形の切欠が設けられており、これにより舌片が形成されている。この舌片は、外装缶の底壁の内面と接合される底壁接合領域となる。また、この舌片の周辺部は、負極集電タブと溶接される負極溶接領域となっている。ここで、負極溶接領域は負極板と広範囲に強固に溶接させる必要があるので、負極用集電体としては、比較的高い強度と剛性を備えているものが用いられる。このような負極用集電体は、以下のようにして電池に組み込まれる。
【0006】
まず、負極集電タブに負極用集電体を当接し、加圧しながら溶接電流を流して抵抗溶接を行い、電極群と負極用集電体とを一体化する。この後、電極群を負極用集電体側を先頭にして外装缶内に収容する。そして、電極群の中心孔内に溶接棒を挿入し、この溶接棒で負極用集電体の舌片を外装缶の底壁に押し当て、溶接電流を流して抵抗溶接する。これにより、外装缶と負極用集電体が溶接され、外装缶と負極板とが電気的に接続される。
【0007】
ここで、電池の外装缶は、その底壁及び周壁の内面の境界部分が僅かに曲面となっていることがあり、この曲面の部分に負極集電体の外周縁が掛かると負極集電体の下面と外装缶の底壁の内面との間に微小なギャップが生じることがある。また、電池のタイプによっては、外装缶の底壁に凹部を有し底壁内面が平坦でないもの等があり、このようなタイプの電池の場合にも、負極集電体の下面と外装缶の底壁の内面との間に微小なギャップが生じる。このように、負極用集電体の下端面と外装缶の底壁の内面との間に微小なギャップが生じると、負極用集電体の下端面と外装缶の底壁の内面とは密着しなくなる。しかしながら、負極用集電体の中心部に設けられている舌片は溶接棒で押されることにより変形し、舌片と外装缶の底壁内面とは密着するので、良好な溶接部を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−32298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、電池に振動や衝撃が加わった場合、負極用集電体と外装缶との間の溶接部にその振動や衝撃が作用し、溶接部が外れる虞があるが、従来の負極用集電体は、その舌片がある程度弾性変形することにより、溶接部に作用する振動や衝撃を緩和して溶接部の破断を防止していた。
【0010】
ところで、最近の電池においては、更なる高容量化が望まれており、斯かる高容量化に伴い、電極群の重量が増加している。このように、電極群が重くなった電池を落下させた場合、従来よりも強い衝撃が溶接部に加わることがある。そして、負極用集電体は、上述したように比較的剛性が高いので、その一部である舌片もある程度高い剛性を備えていることから、舌片が追従できないほどの衝撃が作用した場合には、溶接部が外れ、負極板と負極端子との電気的接続が断たれる虞がある。
このような高容量化にともなう不具合に対しては、溶接部の溶接強度を高めることで対応していた。
【0011】
しかしながら、溶接強度を高めるには、外装缶と負極用集電体との間により大きい溶接電流を流し、高出力で溶接をしなければならず、その結果、外装缶に孔があくなどの溶接不良が起きやすくなり、歩留まりが低下するといった問題が生じていた。
また、電極群の重さは、型式毎に異なるため、型式毎に最適な溶接条件を調整する必要があり、製造効率の低下も招いていた。
【0012】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、衝撃が加わっても電極群の重さに関係なく負極集電体と外装缶との溶接部が破断することを防止することができる電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によれば、有底筒状の外装缶と、前記外装缶に収容され、正極及び負極がセパレータを介して積層されてなる電極群と、前記外装缶の底壁と前記電極群との間に配置され、前記負極と前記外装缶の前記底壁とを電気的に接続する負極集電体とを備える電池であって、前記負極集電体は、金属製の板材からなり、前記外装缶の底壁と電気的に接合された舌片状の底壁接合領域と、前記底壁接合領域の周囲を囲んだ状態で前記底壁接合領域の基部に連なり、前記負極と電気的に接合された負極接合領域と、前記負極接合領域の剛性よりも前記底壁接合領域の剛性を低くする低剛性化手段とを有することを特徴とする電池が提供される。
【0014】
好ましくは、前記低剛性化手段は、前記底壁接合領域の厚さを前記負極接合領域の厚さよりも薄くしてなる構成とする。
【0015】
より好ましくは、前記低剛性化手段は、前記底壁接合領域の全体に亘って分布された多数の貫通孔を含む構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電池においては、負極用集電体が、負極接合領域の剛性よりも舌片状の底壁接合領域の剛性を低くする低剛性化手段を有しているので、底壁接合領域は柔軟性を有しており、より変形し易くなっている。このため、負極用集電体の底壁接合領域は、比較的強い衝撃が溶接部に作用しても、十分に追従でき、有効に衝撃を緩和し、溶接部の破断を防止することができる。このため、電池に衝撃が加わっても電池内部の電気的接続が断たれることを防ぐことができる。そして、このように、本発明に係る電池の負極用集電体は、十分な緩衝特性を備えているので、従来よりも重い電極群を採用する場合であっても溶接部の溶接強度を高める必要はなく、溶接不良が起き難くなり、電池製造における歩留まりが改善される。更に、電池の高容量化にともない電極群の重量が増加しても、溶接条件を一定とすることが可能となるので、電池の製造効率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る円筒形のニッケル水素二次電池の断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る負極用集電体を示した平面図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2中のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る負極用集電体を示した平面図である。
【図6】図5中のVI−VI線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る電池を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
本発明が適用される第1の実施形態の電池として、例えば、図1に示す直径32.3mm、高さ58.4mmの円筒型ニッケル水素二次電池1(以下、電池1という)に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0019】
図1に示したように、電池1は、導電性を有する容器として外装缶2を備える。外装缶2の一端は開口し、他端は周壁30と一体の底壁32により閉塞されている。外装缶2内には、発電要素として、負極板4、正極板6及び電解質としてのアルカリ電解液(図示せず)が収容されている。
【0020】
これら負極板4及び正極板6は、セパレータ8を介して渦巻き形状に巻回されることで略円筒形状の電極群10を形成している。なお、電極群10の中心には、巻回する際に用いた巻芯を抜くことにより形成された中心貫通孔11を備えている。電極群10の最外周はセパレータ8の一部により覆われている。ただし、電極群10の両端においては、負極板4及び正極板6の一部がセパレータ8からそれぞれはみ出している。ここで、電極群10の一端側にはみ出した負極板4の一部は、負極集電タブ34として機能し、他端側にはみ出した正極板6の一部は正極集電タブ36として機能する。そして、電極群10は、負極集電タブ34側の端部を底壁32側にして外装缶2内に収容されている。
【0021】
電極群10の他端側では、正極集電タブ36に金属製の正極用集電体12の円板部14が溶接されている。そして、円板部14の板面上には、正極リード16の基端が溶接されている。そして、この正極リード16の先端は、金属製の封口板18の所定の位置に溶接されている。また、円板部14の中央には、電解液を外装缶内に導入するための注液口38が設けられている。
【0022】
ここで、正極板6は、導電性を有する正極基板と正極基板に保持された正極合剤とを含む。正極基板は、例えば、3次元の網目状構造を有した矩形状のニッケル多孔体からなる。正極基板は、その長手方向の端辺部のうちの一方が、その全長に亘って圧縮され緻密にされている。この緻密にされた圧縮部分が正極集電タブ36となる。そして、この正極集電タブ36を除き、ニッケル多孔体の孔内に正極合剤が充填される。正極合剤は、主成分としての正極活物質、つまり、水酸化ニッケル粉末と、結着剤と、必要に応じて導電剤等とを含む。
【0023】
正極集電体12の上部には、電気絶縁性を有する樹脂からなる絶縁スペーサ40が配置されている。この絶縁スペーサ40は、円板形状をなし、その中央には、電解液を外装缶10内へ導入可能な導入口43が設けられている。そして、絶縁スペーサの所定位置には、正極リード16を通すスリット44が設けられている。この絶縁スペーサ40は、電極群10の正極6もしくは負極4の一部が、他極と接続された正極リード16、外装缶2等に接触し、内部短絡を起こすことを防止する働きをする。
【0024】
封口板18は円板形状をなし、例えばナイロン樹脂製の環状の絶縁ガスケット20を介して、外装缶2の開口端に固定されている。封口板18は、中央にガス抜き孔22を有し、封口板18の外面には、ガス抜き孔22を閉塞するように弾性を有する弁体24が配置されている。更に、封口板18の外面には、弁体24を覆うフランジ付きの円筒形状の正極端子26が取り付けられている。
【0025】
正極端子26は、封口板18及び正極用集電体12を介して正極板6と電気的に接続されている。一方、封口板18、絶縁ガスケット20、弁体24及び正極端子26は安全弁を備えた封口体を構成し、この封口体により外装缶2の開口端が密閉されている。
【0026】
一方、電極群10の一端と外装缶2の底壁32の内面との間には、金属製の円板形状の負極用集電体28が配置されている。負極用集電体28は、負極集電タブ34に溶接されるとともに、外装缶2の底壁32の内面に溶接されている。従って、負極板4と外装缶2とは、負極用集電体28を介して電気的に接続され、外装缶2は負極端子としての機能を備えている。
【0027】
ここで、負極板4は、導電性の負極基板と、この負極基板に保持された負極合剤とを含む。負極基板は、例えば、矩形状のパンチングメタルシートからなる。そして、負極基板の両面には、その長手方向の端辺部のうちの一方の全長に亘る範囲を除き、負極合剤の層が形成されている。つまり、負極基板は、前記一方の端辺部に負極合剤の層が形成されずにパンチングメタルシートが露出した部分を有しており、この部分が負極集電タブ34となる。
【0028】
前記負極合剤層は、主成分としての水素吸蔵合金粉末と、結着剤と、必要に応じて導電剤等とを含む。水素吸蔵合金粉末は、負極活物質としての水素を電気化学的に吸蔵又は放出可能である。
【0029】
図2は、電池1に用いられる負極用集電体28を示す平面図である。
負極用集電体28は、その中心部46の周囲であって、電極群10の負極集電タブ34と相対する部分に位置付けられた負極溶接領域42を有している。この負極溶接領域42には、電極群10の負極用集電タブ34が抵抗溶接される。また、図3を併せて参照すると、負極用集電体28の負極溶接領域42には、バーリング加工により、電極群10側に突出する環状突起44が複数形成されている。この環状突起44は、負極用集電体28と負極集電タブ34とを抵抗溶接する際に、負極集電タブ34に食い込み、負極用集電体28と負極板4との溶接強度の向上に寄与する。この負極溶接領域42は、負極集電タブ34と広範囲に亘って強固に溶接させる必要があるので、比較的高い強度と剛性を備えている必要がある。よって、負極溶接領域42の厚さは、従来用いられている負極用集電体28と同等の厚さに設定される。具体的には、0.4mmに設定される。
【0030】
一方、負極用集電体28の中心部46には、馬蹄形の切欠48が設けられており、これにより舌片50が形成されている。この舌片50は、外装缶2の底壁32の内面と抵抗溶接される部分(底壁接合領域)である。ここで、舌片50は、図4から明らかなように、その厚さが、周囲の負極溶接領域42の厚さよりも薄く設定されている。本実施形態においては、0.2mmに設定されている。このように、舌片50が負極溶接領域42よりも薄いと、この舌片50の部分は、負極溶接領域42よりも剛性が相対的に低くなり、より柔軟になる。このため、舌片50は、電池に振動や衝撃が加えられても、電極群10の動きに十分追従し、外装缶2の底壁32と舌片50との間の溶接部へ作用する衝撃を緩和することができる。このため、溶接部の破断を有効に防止することができる。
【0031】
この負極用集電体28は、打ち抜き加工及びプレス加工により製造することができる。つまり、打ち抜き加工により舌片50を形成し、プレス加工により舌片50の厚さを所定厚さまで薄くする。
【0032】
上述した電池1は、例えば以下のようにして作製することができる。
負極板4及び正極板6をセパレータ8を介して巻回して渦巻形状の電極群10を得る。この電極群10の両端に負極用集電体28及び正極用集電体12をそれぞれ溶接した後、電極群10を外装缶2内に挿入する。この後、外装缶2を抵抗溶接用の受け型(図示せず)に載置するとともに、正極用集電体12の注液口38を介して電極群の中心貫通孔11に電極棒(図示せず)を挿入し、負極用集電体28の舌片50を外装缶2の底壁32の内面に押し付け、前記受け型と前記溶接棒との間に溶接電流を流し、底壁と舌片とを溶接する。この後、絶縁スペーサ40のスリット44に正極用集電体12に溶接された正極リード16を挿通するとともに、絶縁スペーサを電極群10の上部所定位置に配置する。そして、正極リード16の先端を封口板18に溶接する。この後、アルカリ電解液を絶縁スペーサの導入口43及び正極用集電体の注液口38を介して外装缶2内に注入し、外装缶2の開口端内に絶縁ガスケット20を介して封口板18を配置した状態にて開口端縁をかしめ加工し、ニッケル水素二次電池が作製される。
【0033】
上述したニッケル水素二次電池では、負極用集電体28の負極溶接領域42と、負極集電タブ34とが広範囲に亘って接合されているため、負極用集電部材28は良好な集電性を有し、電池の内部抵抗が低い。しかも、負極用集電体28の負極溶接領域42は、剛性が高いので、電極群と強固に接続することができる。
【0034】
一方、この電池1に対して、落下や振動等に起因して衝撃が加わったときには、負極溶接領域42よりも相対的に剛性が低い舌片50が柔軟に追従して外装缶と舌片との間の溶接部に作用する衝撃を緩和する。
【0035】
これらの結果として、このニッケル水素二次電池1は、通常使用時は高率放電特性に優れ、衝撃が作用したときでも信頼性が確保される。
【0036】
(第2の実施形態)
本発明が適用される第2の実施形態の電池は、負極用集電体の形態が変更された点のみで第1の実施形態の電池と相違する。よって、第2の実施形態について説明するにあたり、既に説明した構成部材及び部位と同一の機能を発揮するものについては同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
図5は、第2の実施形態に係る電池が備える負極用集電体52を示す。
負極用集電体52の舌片50には、その全体に多数の貫通孔54が設けられている。この貫通孔54は、図6に示すように、負極用集電体52の厚さ方向に貫通している。なお、この舌片50は、周囲の負極溶接領域42と同じ厚さを有しているが、多数の貫通孔54が舌片50の全体に亘って設けられることにより、舌片50の剛性は周囲の負極溶接領域42の剛性よりも相対的に低くなっている。このため、舌片50はより柔軟となり、外装缶2の底壁32との溶接部において優れた緩衝作用を発揮する。
ここで、多数の貫通孔54は、打ち抜き加工により舌片50と同時に形成される。
【0038】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、舌片の厚さを負極溶接領域よりも薄くし、且つ、多数の貫通孔を形成しても構わない。つまり、舌片が負極溶接領域よりも相対的に剛性が低くなる構造を含んでいればよい。
【実施例】
【0039】
1.円筒型ニッケル水素二次電池の組み立て
(実施例1)
図2に示した形状の負極用集電体28を用いて、図1に示した構成の直径32.3mm、高さ58.4mmのニッケル水素二次電池を実施例1として1000個組み立てた。なお、負極用集電体28は、ニッケルメッキ鋼板からなり、その直径は30.0mmとした。舌片50は、幅7.0mm、長さ5.8mm、厚さ0.2mmとした。負極溶接領域42の厚さは、0.4mmとした。また、負極溶接領域42には、バーリング加工により、直径2mmの貫通孔をあけてその周縁部に高さ0.5mmの環状突起を10個設けた。
【0040】
(実施例2)
図5に示した負極用集電体を用いたこと以外は、実施例1と同様なニッケル水素二次電池を実施例2として組み立てた。なお、実施例2の舌片50は、厚さ0.4mmとし、全体に設けた多数の貫通孔54の直径は、0.5mmとした。
【0041】
(比較例1)
舌片の厚さを負極溶接領域と同じ厚さとし、舌片に貫通孔をあけなかったこと以外は、実施例1と同様なニッケル水素二次電池を比較例1として組み立てた。
【0042】
2.電池の評価
上述した実施例1、実施例2及び比較例1の各電池について、活性化処理を施した後、20Aで放電させたときの電圧を測定した。この後、1mの高さから50回落下させてから、再度、20Aで放電させたときの電圧を測定した。このとき、落下後に電圧測定不能であった電池を故障電池とし、その個数を計数した。そして、式(1)に示す故障発生率を求め、その結果を表1に示した。
故障発生率(%)=(故障電池の個数/電池作製総数)×100・・・(1)
【0043】
【表1】

【0044】
3.評価結果
表1から次のことが明らかである。
(1)舌片の剛性を周囲の負極溶接領域の剛性よりも低くした負極集電体を備えた実施例1、2の電池と舌片の剛性が負極溶接領域の剛性と同等である負極集電体を備えた比較例1の電池とを比較すると、実施例1、2は、比較例1に比べて故障発生率が極めて低いことがわかる。これは、実施例1、2の電池では、外装缶の底壁と舌片との間の溶接部に衝撃が作用しても、舌片が柔軟に追従し、衝撃を有効に緩和しているためと考えられる。このため、電池に衝撃が加わっても故障しない電池となっている。
【0045】
これに対し、比較例1の電池は、舌片の剛性が周囲の負極溶接領域の剛性と同等であるので、衝撃に対し、十分追従することができず、緩衝作用が低くなっていると考えられる。このため、電池に衝撃が加わると、溶接部に破断が生じ、電池に故障が発生した。
【0046】
(2)このことから、負極集電体の舌片を負極溶接領域よりも薄くする、あるいは、舌片に多数の貫通孔を設けることにより、その剛性を低くすることは、舌片の柔軟性が増し、衝撃に対する緩衝作用が向上するので、電池の故障発生率低下に寄与することがわかる。
【符号の説明】
【0047】
1 ニッケル水素二次電池
2 外装缶
4 負極板
6 正極板
8 セパレータ
10 電極群
12 正極用集電体
28 負極用集電体
34 負極集電タブ
36 正極集電タブ
42 負極溶接領域
46 中心部
50 舌片
54 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の外装缶と、
前記外装缶に収容され、正極及び負極がセパレータを介して積層されてなる電極群と、
前記外装缶の底壁と前記電極群との間に配置され、前記負極と前記外装缶の前記底壁とを電気的に接続する負極集電体と
を備える電池であって、
前記負極集電体は、金属製の板材からなり、
前記外装缶の底壁と電気的に接合された舌片状の底壁接合領域と、
前記底壁接合領域の周囲を囲んだ状態で前記底壁接合領域の基部に連なり、前記負極と電気的に接合された負極接合領域と、
前記負極接合領域の剛性よりも前記底壁接合領域の剛性を低くする低剛性化手段とを有することを特徴とする電池。
【請求項2】
前記低剛性化手段は、
前記底壁接合領域の厚さを前記負極接合領域の厚さよりも薄くしてなることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記低剛性化手段は、
前記底壁接合領域の全体に亘って分布された多数の貫通孔を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−134108(P2012−134108A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287456(P2010−287456)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(510206213)FDKトワイセル株式会社 (36)
【Fターム(参考)】