説明

電池

【課題】溶接性に優れ、かつ、スパッタの発生による内部短絡を抑制することができる電池を提供する。
【解決手段】電池は、正極、および負極を有する巻回電極体と、正極および負極の間に設けられた電解質と、巻回電極体が収容される、鉄または鉄合金を主成分とする外装缶と負極と外装缶とを電気的に接続する第1の負極リードおよび第2の負極リードとを備える。第1の負極リードおよび第2の負極リードは、ニッケル層と銅層とを有するクラッド材であり、第1の負極リードのニッケル層の表面には、複数の凸部が設けられ、第2の負極リードのニッケル層は、外装缶と溶接され、第1の負極リードのニッケル層は、複数の凸部を介して、第2の負極リードの銅層と溶接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池に関する。詳しくは、複数の負極リードを備える電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量であると共に、高電位、高容量、高性能、長寿命などの利点を有することから、携帯機器(例えば、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、電動工具)や、電動移動体(例えば、電動自動車、電動自転車)などの電源として、リチウムイオン二次電池が広く用いられようとしている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、通常、正極リードが封口板に設けられた電極端子に接続され、負極リードが電池缶と接続されることにより、電池内部で発生した化学エネルギーを電気エネルギーとして取り出す構造を有している。
【0004】
このような構造の電池では、負極リードとしては、抵抗溶接し易いニッケルが用いられるが、電気抵抗が高いため、大電流を流すことにより負極リード自身が発熱し、その周囲のセパレータを融解し、正極−負極間でショートが発生するという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決すべく、電気抵抗が低く安価な銅が用いられるが、銅は電気抵抗が低いため、鉄や鉄合金製の電池缶と負極リードとを抵抗溶接すると、電流の逃げが生じて十分な溶接強度が得られない。このため、電池落下などの衝撃が加わった場合には、負極リードと電池缶との溶接が剥がれるという問題がある。
【0006】
そこで、負極リードとして電気抵抗の高いニッケル層を銅層に積層した2層構造または3層構造のクラッド材を用いることにより、鉄系の電池缶と負極リードとの溶接強度を高める技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、電流の取り出し効率を高めるために、負極リードを複数本にする技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−127599号公報
【特許文献2】特開2007−273258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の技術では、負極リードの溶性性が低下することがある。また、溶接時にスパッタが発生し、それがセパレータを貫通し、正極−負極間で内部短絡が発生することがある。
【0009】
したがって、本技術の目的は、溶接性に優れ、かつ、スパッタの発生による内部短絡を抑制することができる電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本技術は、
正極、および負極を有する巻回電極体と、
正極および負極の間に設けられた電解質と、
巻回電極体が収容される、鉄または鉄合金を主成分とする外装缶と
負極と外装缶とを電気的に接続する第1の負極リードおよび第2の負極リードと
を備え、
第1の負極リードおよび第2の負極リードは、ニッケル層と銅層とを有するクラッド材であり、
第1の負極リードのニッケル層の表面には、複数の凸部が設けられ、
第2の負極リードのニッケル層は、外装缶と溶接され、
第1の負極リードのニッケル層は、複数の凸部を介して、第2の負極リードの銅層と溶接され、
ニッケル層の厚さは、10μm以上200μm以下の範囲内であり、
銅層の厚さは、3μm以上210μm以下の範囲内であり、
第1の負極リードおよび第2の負極リードの総厚は、60μm以上220μm以下の範囲内であり、
第1の負極リードおよび第2の負極リードの幅は、3.5mm以上5.0mm以下の範囲内であり、
凸部の大きさは、0.1mm以上2.5mm以下の範囲内であり
凸部の高さは、0.1mm以上0.5mm以下の範囲内であり、
凸部の間隔は、0.6mm以上2.8mm以下の範囲内である電池である。
【0011】
本技術において、第1の負極リードおよび第2の負極リードのうちの一方のリードは、巻回電極体の最内周部の内側表面に溶接された内周側負極リードであり、他方のリードは、巻回電極体の最外周部の外側表面に溶接された外周側負極リードであることが好ましい。より具体的には、第1の負極リードは、巻回電極体の最内周部の内側表面に溶接された内周側負極リードであり、第2の負極リードは、巻回電極体の最外周部の外側表面に溶接された外周側負極リードであることが好ましい。巻回電極体の最内周部および最外周部にはそれぞれ、負極活物質層が形成されず、負極集電体が露出した負極集電体露出部が形成され、これらの露出部にそれぞれ内周側負極リードおよび外周側負極リードが溶接されていることが好ましい。このような構成を有する場合、第1の負極リードおよび第2の負極リードの少なくとも一方のリードが、バリが形成された表面を有するときには、バリが形成された表面が、負極とは反対側に向けられていることが好ましい。
【0012】
本技術では、第1の負極リードのニッケル層の表面に複数の凸部を形成しているので、第1の負極リードおよび第2の負極リードの溶接時におけるスパッタの発生を抑制することができる。したがって、正極−負極間で内部短絡の発生を抑制できる。
また、本技術では、第1の負極リードおよび第2の負極リードを、ニッケル層と銅層とを有するクラッド材とし、第2の負極リードのニッケル層を外装缶と溶接し、第1の負極リードのニッケル層を、複数の凸部を介して、第1の負極リードの銅層と溶接しているので、第1の負極リードと第2の負極リードとの間の溶接性と、電池缶と第2の負極リードとの間の溶接性とを向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本技術によれば、溶接性に優れ、かつ、スパッタの発生による内部短絡を抑制することができる電池を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本技術の一実施形態に係る非水電解質二次電池の構成の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図3】図3Aは、内周側負極リードおよび外周側負極リードの溶接形態および構成の一例を示す断面図である。図3Bは、内周側負極リードに設けられたプロジェクションを拡大して表す断面図である。図3Cは、プロジェクションの大きさRの定義を説明するための模式図である。
【図4】図4は、外周リードの溶接性の評価方法を説明するための斜視図である。
【図5】図5Aは、巻回電極体を両端面に水平な方向で切断したときの断面図である。図5Bは、図5AのVB−VB線に沿った断面図である。図5Cは、内周側負極リードの溶接部分を拡大して示す断面図である。図5Dは、外周側負極リードの溶接部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
[電池の構成]
図1は、本技術の一実施形態に係る非水電解質二次電池の構成の一例を示す断面図である。この非水電解質二次電池は、負極の容量が、電極反応物質であるリチウム(Li)の吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池である。この非水電解質二次電池はいわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶(外装缶)11の内部に、一対の帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回電極体20を有している。外装缶である電池缶11は、ニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)または鉄合金により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、電解液が注入され、セパレータ23に含浸されている。また、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12、13がそれぞれ配置されている。
【0017】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、封口ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられている。これにより、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。封口ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0018】
巻回電極体20の中心には例えばセンターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21には、アルミニウム(Al)などよりなる正極リード25の一端部が接続されている。正極リード25の他端部は、安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されている。
【0019】
巻回電極体20の負極22には、ニッケル層と銅層とが貼り合わされたクラッドリード材からなる内周側負極リード26および外周側負極リード27が接続されている。より具体的には、巻回電極体20の内周側の負極22に、内周側負極リード26の一端部が取り付けられ、その他端部が巻回電極体20から引き出されている。巻回電極体20の外周側の負極22に、外周側負極リード27の一端部が取り付けられ、その他端部が巻回電極体20から引き出されている。巻回電極体20から引き出された内周側負極リード26および外周側負極リード27の他端部同士が重ね合わされ、電池缶内側の底面に溶接されて電気的に接続されている。内周側負極リード26は、例えば、巻回電極体20の最内周部の内側表面に溶接される。外周側負極リード27は、例えば、巻回電極体20の最外周部の外側表面に溶接される。
【0020】
図2は、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表す断面図である。以下、図2を参照しながら、二次電池を構成する正極21、負極22、セパレータ23、および電解液について順次説明する。
【0021】
(正極)
正極21は、例えば、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極活物質層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば帯状の形状を有し、その長手方向の中間部に、正極活物質層21Bに覆われず、正極集電体21Aの表面が露出した正極集電体露出部を有している。この正極集電体露出部に対して正極リード25の一端が溶接される。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んでおり、必要に応じてグラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。
【0022】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(1)、式(2)もしくは式(3)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(4)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または式(5)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c22(c1≒1,0<c2<1)、LidMn24(d≒1)あるいはLieFePO4(e≒1)などがある。
【0023】
LifMn(1-g-h)NigM1h(2-j)k ・・・(1)
(式中、M1は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0024】
LimNi(1-n)M2n(2-p)q ・・・(2)
(式中、M2は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0025】
LirCo(1-s)M3s(2-t)u ・・・(3)
(式中、M3は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0026】
LivMn2-wM4wxy ・・・(4)
(式中、M4は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0027】
LizM5PO4 ・・・(5)
(式中、M5は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0028】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、これらの他にも、MnO2、V25、V613、NiS、MoSなどのリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
【0029】
(負極)
負極22は、例えば、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。負極集電体22Aは、例えば帯状の形状を有し、その長手方向の最内周部の内側表面、および最外周部の外側表面に、負極活物質層22Bに覆われず、負極集電体22Aの表面が露出した負極集電体露出部を有している。これらの最内周部および最外周部の負極集電体露出部それぞれに対して、内周側負極リード26および外周側負極リード27の一端が溶接される。負極集電体22Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0030】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層21Bと同様の結着剤を含んで構成されている。
【0031】
なお、この二次電池では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極21の電気化学当量よりも大きくなっており、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
【0032】
また、この二次電池は、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)が、例えば4.2V以上4.6V以下、好ましくは4.25V以上4.5V以下の範囲内になるように設計されている。開回路電圧が4.25V以上4.5V以下の範囲内に設計されている場合には、開回路電圧が4.20Vの電池よりも、同じ正極活物質であっても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるので、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整される。これにより高いエネルギー密度が得られるようになっている。
【0033】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭などの炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどがある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れた特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0034】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本技術において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0035】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0036】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウム(Li)を吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0037】
スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0038】
スズ(Sn)の化合物あるいはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0039】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、MnO2、V25、V613などの酸化物、NiS、MoSなどの硫化物、あるいはLiN3などのリチウム窒化物が挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0040】
(負極リード)
図3Aは、内周側負極リードおよび外周側負極リードの溶接形態および構成の一例を示す断面図である。内周側負極リード26および外周側負極リード27は、ニッケル層(以下Ni層という。)31と銅層(以下Cu層という。)32とを貼り合わせた2層構造を有するクラッド材である。内周側負極リード26のNi層31の表面には、複数の凸部(以下プロジェクションという。)31aが設けられている。これに対して、外周側負極リード27のNi層31には、複数のプロジェクション31aは設けられておらず、平面状とされている。
【0041】
外周側負極リード27のNi層31が、電池缶11の缶底11aに溶接により取り付けられ、内周側負極リード26のNi層31が、複数のプロジェクション31aを介して、缶底11aに溶接された外周側負極リード27のCu層27に溶接されている。内周側負極リード26および外周側負極リード27の電気導電性が12m/Ω以上であることが好ましい。電気導電性が12m/Ω未満であると、大電流放電を行ったときに、ジュール熱で内周側負極リード26および外周側負極リード27が発熱し、セパレータ23が融解し、正極−負極間でショートが発生する虞がある。
【0042】
図5Aは、巻回電極体を両端面に水平な方向で切断したときの断面図である。図5Bは、図5AのVB−VB線に沿った断面図である。図5Cは、内周側負極リードの溶接部分を拡大して示す断面図である。図5Dは、外周側負極リードの溶接部分を拡大して示す断面図である。内周側負極リード26を負極集電体22Aの最内周部の内側表面Siに溶接する構成を有するときにおいて、内周側負極リード26が、バリ41が形成された表面Sを有する場合には、バリ41が形成された表面Sを負極集電体22Aとは反対側(溶接する側とは反対側)に向けるようにして、内周側負極リード26と負極集電体22Aとを溶接することが好ましい。これにより、内周側負極リード26の表面Sに形成されたバリ41が、負極集電体22Aに刺さり、負極集電体22Aの切れ(例えば箔切れ)や、負極集電体22Aとセパレータ23を貫通して、正極21と接し内部短絡を起こすことを防止できる。外周側負極リード27を負極22の最外周部の外側表面Soに溶接する構成を有するときにおいて、外周側負極リード27が、バリ41が形成された表面Sを有する場合には、バリ41が形成された表面Sを負極集電体22Aとは反対側(溶接する側とは反対側)に向けるようにして、外周側負極リード27と負極集電体22Aとを溶接することが好ましい。これにより、外周側負極リード27の表面Sに形成されたバリ41が、負極集電体22Aに刺さり、負極集電体22Aの切れ(例えば箔切れ)や、負極集電体22Aとセパレータ23を貫通して、正極21と接し内部短絡を起こすことを防止できる。
【0043】
なお、内周側負極リード26および外周側負極リード27の全体をクラッド材としてもよく、溶接部分のみをクラッド化した部分クラッド材としてもよい。内周側負極リード26を部分クラッド材とする場合、このクラッド材としては、例えば、外周側負極リード27と溶接される部分がクラッド化された部分クラッド材が挙げられる。外周側負極リード27を部分クラッド材とする場合、このクラッド材としては、内周側負極リード26と溶接される部分と、電池缶11と溶接される部分がクラッド化された部分クラッド材が挙げられる。
【0044】
Ni層31の材料としては、例えば、純ニッケルのみならず、ニッケル合金を用いることもできる。Cu層32の材料としては、純銅のみならず、銅合金を用いることもできる。
【0045】
内周側負極リード26および外周側負極リード27の構成は、同一の構成(同一の材料、総厚、各層の厚さなど)に限定されるものではなく、異なる構成を採用するようにしてもよい。
【0046】
図3Bは、内周側負極リードに設けられたプロジェクションを拡大して表す断面図である。プロジェクション31aとNi層31とは、例えば、一体成形されており、同一の材料からなる。プロジェクション31aの形成方法としては、例えばプレス加工が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0047】
プロジェクション31aの形状としては、錐体状、柱状、半球状、半楕円球状、多角形状などが挙げられるが、これらの形状に限定されるものではなく、他の形状を採用するようにしてもよい。錐体状としては、例えば、頂部が尖った錐体形状、頂部が平坦な錐体形状、頂部に凸状の曲面を有する錐体形状が挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。プロジェクション31aの配列形態としては、規則的な配列および不規則的な配列のいずれを採用するようにしてもよい。
【0048】
(Cu層の厚さ)
内周側負極リード26および外周側負極リード27のCu層32の厚さt2は、3μm以上210μm以下の範囲内にあることが好ましい。Cu層32の厚さt2が3μm未満であると、内周側負極リード26および外周側負極リード27の電気抵抗を十分に低減できず、大電流を流したときに内周側負極リード26および外周側負極リード27が発熱する。この発熱により、その周囲のセパレータ23を融解し、正極−負極間でショートが発生するおそれがある。一方、Cu層32の厚さt2が210μmを超えると、正極21、負極22およびセパレータ23をともに巻回するときに、内周側負極リード26および外周側負極リード27を丸く曲げることが困難になる。その結果、内周側負極リード26および外周側負極リード27が正極21、負極22およびセパレータ23にダメージを与え、ショートを発生させるおそれがある。なお、プロジェクション31aが表面に形成されている内周側負極リード26において、Cu層32の厚さt2とは、Cu層側の裏面とNi層31−Cu層32の界面との平坦部間の距離を意味する。ここで、裏面とは、プロジェクション31aが形成されたNi層側とは反対側の面、すなわちCu層側の面を意味し、界面とはNi層31−Cu層32の界面を意味する。
【0049】
(Ni層の厚さ)
内周側負極リード26および外周側負極リード27のNi層31の厚さt1は、10μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。Ni層31の厚さt1が10μm未満であると、抵抗溶接時に金属が十分に発熱せず、溶接が確実に行えなくなる。一方、Ni層31の厚さt1が200μmを超えると、内周側負極リード26および外周側負極リード27の抵抗を十分に低くすることができなくなる。なお、プロジェクション31aが表面に形成されている内周側負極リード26において、Ni層31の厚さt1とは、Ni層側の表面とNi層31−Cu層32の界面との平坦部間の距離を意味する。ここで、表面とは、プロジェクション31aが形成されたNi層側の面を意味し、界面とはNi層31−Cu層32の界面を意味する。
【0050】
(リード総厚)
内周側負極リード26および外周側負極リード27の総厚t(=t1+t2)は、60μm以上220μm以下の範囲内であることが好ましい。内周側負極リード26および外周側負極リード27の総厚tが60μm未満であると、内周側負極リード26および外周側負極リード27の機械的強度が低下し、衝撃を受けたときに切断されるおそれがある。一方、内周側負極リード26および外周側負極リード27の総厚tが220μmを超えると、正極21、負極22、およびセパレータ23をともに巻回するときに、内周側負極リード26および外周側負極リード27を丸く曲げることが困難になる。その結果、内周側負極リード26および外周側負極リード27が正極21、負極22、およびセパレータ23にダメージを与え、ショートを発生させるおそれがある。なお、プロジェクション31aが表面に形成されている内周側負極リード26において、総厚tとは、Ni層側の表面とCu層側の裏面との平坦部間の距離を意味する。ここで、表面とは、プロジェクション31aが形成されたNi層側の面を意味し、裏面とは、Ni層側とは反対側の面、すなわちCu層側の面を意味する。
【0051】
(リード幅)
内周側負極リード26および外周側負極リード27の幅wは、3.5mm以上5.0mm以下の範囲内であることが好ましい。内周側負極リード26および外周側負極リード27の幅wが3.5mm未満であると、内周側負極リード26および外周側負極リード27の電気抵抗を十分に低減できず、大電流を流したときに、内周側負極リード26および外周側負極リード27が発熱する。この発熱により、その周囲のセパレータ23を融解し、正極−負極間でショートが発生するおそれがある。また、内周側負極リード26および外周側負極リード27の機械的強度が低下し、衝撃を受けたときに切断されるおそれがある。一方、内周側負極リード26および外周側負極リード27の幅wが5.0mmを超えると、正極21、負極22、およびセパレータ23をともに巻回するときに、内周側負極リード26および外周側負極リード27を丸く曲げることが困難になる。その結果、内周側負極リード26および外周側負極リード27が正極21、負極22、およびセパレータ23にダメージを与え、ショートを発生されるおそれがあるからである。
【0052】
(プロジェクションの大きさ)
内周側負極リード26のプロジェクション31aの大きさRは、0.1mm以上2.5mm以下の範囲内であることが好ましく、0.5mm以上2.0mm以下の範囲内であることがより好ましい。プロジェクション31aの大きさRが0.1mm未満であると抵抗溶接時の加圧により、プロジェクション31aがすべて潰れてしまい、溶接強度が低下する。また、抵抗溶接時にスパッタが発生し、それがセパレータ23を貫通し、正極−負極間で内部短絡が発生する。一方、プロジェクション31aの大きさRが2.5mmを超えると、一つのプロジェクション31aに電流が集中して流れ、スパッタが発生してしまう。
【0053】
ここで、プロジェクションの大きさRは、図3Cに示すように、プロジェクション31aの高さH/2の位置での幅をいう。例えば、プロジェクション31aの底面が楕円形状である場合には、プロジェクション31aの大きさRは高さH/2の位置での短軸の長さ(短径)を意味する。また、プロジェクション31aの底面が円形状である場合には、プロジェクション31aの大きさRは高さH/2の位置での直径を意味する。
【0054】
(プロジェクションの高さ)
内周側負極リード26のプロジェクション31aの高さHは、0.1mm以上0.5mm以下の範囲内であることが好ましい。プロジェクション31aの高さHが0.1mm未満であると、抵抗溶接時の加圧により、プロジェクション31aがすべて潰れてしまい、溶接強度が低下する。また、また、抵抗溶接時にスパッタが発生し、それがセパレータ23を貫通し、正極−負極間で内部短絡が発生する。一方、プロジェクション31aの高さHが0.5mmを超えると、溶接時に溶接部分にかかる加圧が不十分になり、溶接強度が低くなる。また、抵抗溶接時にスパッタが発生し、それがセパレータ23を貫通し、正極−負極間で内部短絡が発生する。
【0055】
(プロジェクションの間隔)
内周側負極リード26のプロジェクション31aの間隔Dは、0.6mm以上2.8mm以下の範囲内であることが好ましい。プロジェクション31aの間隔Dが0.6mm未満であると、個々のプロジェクション31aに電流が集中せず、溶接強度が低下する。一方、プロジェクション31aの間隔Dが2.8mmを超えると、溶接時に電極棒との接触が不十分になり、スパッタが発生し、それがセパレータ23を貫通し、正極−負極間で内部短絡が発生する。ここで、プロジェクション31aの間隔Dは、隣り合うプロジェクション31aの頂部間の最短の間隔である。
【0056】
(セパレータ)
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ23としてしは、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜を単層で、またはそれらを複数積層したもの用いることができる。特に、セパレータ23としては、ポリオレフィン製の多孔質膜が好ましい。ショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるからである。また、セパレータ23としては、ポリオレフィンなどの微多孔膜上に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの多孔性の樹脂層を形成したものを用いてもよい。
【0057】
(電解液)
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
【0058】
溶媒としては、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの環状の炭酸エステルを用いることができ、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンのうちの一方、特に両方を混合して用いることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。
【0059】
溶媒としては、また、これらの環状の炭酸エステルに加えて、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸メチルプロピルなどの鎖状の炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。高いイオン伝導性を得ることができるからである。
【0060】
溶媒としては、更にまた、2,4−ジフルオロアニソールあるいは炭酸ビニレンを含むこと好ましい。2,4−ジフルオロアニソールは放電容量を向上させることができ、また、炭酸ビニレンはサイクル特性を向上させることができるからである。よって、これらを混合して用いれば、放電容量およびサイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0061】
これらの他にも、溶媒としては、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシドあるいはリン酸トリメチルなどが挙げられる。
【0062】
なお、これらの非水溶媒の少なくとも一部の水素をフッ素で置換した化合物は、組み合わせる電極の種類によっては、電極反応の可逆性を向上させることができる場合があるので、好ましい場合もある。
【0063】
電解質塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C654、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiC(SO2CF33、LiAlCl4、LiSiF6、LiCl、ジフルオロ[オキソラト−O,O']ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボレート、あるいはLiBrなどが挙げられる。中でも、LiPF6は高いイオン伝導性を得ることができると共に、サイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0064】
(作用)
この一実施形態に係る二次電池では、充電を行うと、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して、負極活物質層22Bに含まれるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料に吸蔵される。次に、放電を行うと、負極活物質層22B中のリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料に吸蔵されたリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。
【0065】
[電池の製造方法]
次に、本技術の一実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法の一例について説明する。
まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを帯状の正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成し、帯状の正極21を形成する。この際、帯状の正極集電体21Aの長手方向の中間部に、正極活物質層21Bに覆われず、正極集電体21Aの表面が露出する正極集電体露出部を形成する。
【0066】
また、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを帯状の負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成し、帯状の負極22を作製する。この際、帯状の負極集電体22Aの長手方向の両端部に、負極活物質層22Bに覆われず、負極集電体22Aの表面が露出する負極集電体露出部を形成する。
【0067】
次に、帯状の正極21に形成された正極集電体露出部に正極リード25を溶接により取り付ける。溶接方法としては、例えば、超音波溶接法、抵抗溶接法を用いることができる。次に、帯状の負極22の一端部に形成された負極集電体露出部に内周側負極リード26を溶接により取り付けるとともに、その他端部に形成された負極集電体露出部に外周側負極リード27を溶接により取り付ける。溶接方法としては、例えば、超音波溶接法、抵抗溶接法を用いることができる。なお、内周側負極リード26および外周側負極リード27としてCu層のみからなるものを使用した場合、抵抗溶接では電極棒と内周側負極リード26および外周側負極リード27とが同質金属となってしまうので、高温を発生することができず溶接が困難となる。
【0068】
次に、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回する。これにより、中間部から正極リード25が引き出され、内周側から負極リード26が引き出され、外周側から外周側負極リード27が引き出された巻回電極体20が得られる。
【0069】
次に、巻回電極体20から引き出された正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接する。次に、巻回電極体20から引き出された内周側負極リード26および外周側負極リード27の先端部同士を、電池缶11の内側の缶底表面で、外周側負極リード27の先端部が下側となり、内周側負極リード26が上側となるようにして重ね合わせる。この際、内周側負極リード26および外周側負極リード27それぞれのNi層側の表面が、缶底側を向くようにして、両リードの先端部同士を重ね合わせる。次に、重ね合わせた内周側負極リード26および外周側負極リード27の先端部同士と、外周側負極リード27の先端部と電池缶11の缶底とを溶接する。溶接方法としては、例えば、超音波溶接法、抵抗溶接法を用いることができる。
【0070】
次に、巻回電極体20を一対の絶縁板12、13で挟み電池缶11の内部に収納する。次に、巻回電極体20を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。次に、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16を、封口ガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が得られる。
【0071】
本技術の一実施形態に係る非水電解質二次電池は、負極リードを2本備えているので、負極リードを1本備える従来の非水電解質二次電池よりもサイクル特性や高率放電特性を高めることができる。
【0072】
内周側負極リード26および外周側負極リード27の材料として、電気抵抗が低い銅を使用しているため、大電流を流したときにも、内周側負極リード26および外周側負極リード27の発熱を抑制することができる。したがって、内周側負極リード26および外周側負極リード27の周囲のセパレータ23が融解し、正極−負極間でショートが発生することを抑制できる。
【0073】
内周側負極リード26および/または外周側負極リード27にバリ41がある場合には、このバリ41を負極集電体22Aの最内周部の内側表面Siおよび/または最外周部の外側表面Soとは反対側となるようにして、内周側負極リード26および/または外周側負極リード27を負極集電体22Aに取り付けることが好ましい(図5A〜図5D参照)。これにより、内周側負極リード26および/または外周側負極リード27のバリ41が、負極集電体22Aに刺さり、負極集電体22Aの切れ(例えば箔切れ)や、負極集電体22Aとセパレータ23を貫通して、正極21と接し内部短絡を起こすことを防止できる。
【0074】
鉄系の電池缶11と、2層構造クラッド材である外周側負極リード27のNi層とを抵抗溶接した場合には、十分な溶接強度を得ることができる。
【0075】
複数のプロジェクション31aが形成された内周側負極リード26のNi層31と、外周側負極リード27のCu層32とを抵抗溶性した場合には、負極リード同士の溶接強度を向上することができる。したがって、リード間の剥がれによる電池性能の低下を抑制することができる。
【0076】
複数のプロジェクション31aを内周側負極リード26のNi層31の表面に形成することにより、缶底溶接時におけるスパッタの発生を抑制することができる。したがって、スパッタがセパレータ23を貫通し、正極−負極間で内部短絡を起こすことを抑制できる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0078】
本実施例において、負極リードの総厚t、Ni層の厚さt1、およびCu層の厚さt2は以下のようにして測定したものである。
総厚tはミツトヨ製のマイクロメーターにて測定した。Ni層の厚さt1、およびCu層の厚さt2は切断して、トプコン製の工具顕微鏡で断面を観察しながらそれぞれの厚みを測定した。表面にプロジェクションが形成されている負極リードについては、プロジェクション形成前の状態にて、負極リードの総厚t、Ni層の厚さt1、およびCu層の厚さt2を測定した。
なお、このようにして測定した総厚t、Ni層の厚さt1、およびCu層の厚さt2はそれぞれ、プロジェクション形成後の以下の部分の厚さに等しい(図3A参照)。すなわち、負極リードの総厚tは、プロジェクション形成後における表面と裏面との平坦部間の距離と等しい。Ni層の厚さt1は、プロジェクション形成後における表面と界面との平坦部間の距離に等しい。Cu層の厚さt2は、プロジェクション形成後における裏面と界面との平坦部間の距離に等しい。ここで、表面とは、負極リードの両主面のうち、プロジェクションが形成された側の面を意味し、裏面とは、それとは反対側の面を意味し、界面とは、Ni層−Cu層の界面を意味する。
【0079】
また、プロジェクションの直径R、高さH、および間隔Dは以下のようにして測定したものである。
プロジェクションの直径R、高さH、および間隔Dは切断して、トプコン製の工具顕微鏡で断面を観察しながら測定した。
【0080】
(サンプル1)
(内周側負極リードの作製)
まず、Ni層とCu層とが貼り合わされたクラッド材を作製した。次に、Ni層側が凸になるようにプレス加工により複数のプロジェクションを形成した。これにより、以下の構成を有する内周側負極リードが得られた(図3A、図3B参照)。
Ni層の厚さt1:5μm
Cu層の厚さt2:60μm
Cu層とNi層の総厚t(=t1+t2):65μm
リード幅w:4.0mm
プロジェクションの形状:略半球状
プロジェクションの直径R:0.6mm
プロジェクションの高さH:0.2mm
プロジェクションの間隔D:0.75mm
【0081】
まず、Ni層とCu層とが貼り合わされたクラッド材を作製した。これにより、以下の構成を有する外周側負極リードが得られた(図3A参照)。
総厚
Ni層の厚さt1:5μm
Cu層の厚さt2:60μm
Cu層とNi層の総厚t(=t1+t2):65μm
リード幅w:4.0mm
【0082】
(サンプル2)
内周側負極リードおよび内周側負極リードの総厚tを70μm、Ni層の厚さt1を10μm、Cu層の厚さt2を60μmとする以外は、サンプル1と同様にして内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0083】
(サンプル3〜7)
内周側負極リードおよび内周側負極リードの総厚tを55μm〜230μm、Ni層の厚さt1を10μm、Cu層の厚さt2を45〜220μmとする以外は、サンプル1と同様にして内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0084】
(サンプル8〜13)
内周側負極リードおよび外周側負極リードの総厚tを65μm〜240μm、Ni層の厚さt1を20μm、Cu層の厚さt2を45〜220μmとする以外は、サンプル1と同様にして内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0085】
(サンプル14〜18)
内周側負極リードおよび外周側負極リードの総厚tを202μm〜225μm、Ni層の厚さt1を10μm、Cu層の厚さt2を45〜220μmとする以外は、サンプル1と同様にして内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0086】
(サンプル19〜21)
サンプル10と同様にして内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0087】
(サンプル22)
内周側負極リードおよび外周側負極リードをサンプル10の内周側負極リードと同様にして得た。
【0088】
(サンプル23)
まず、内周側負極リードをサンプル10の外周側負極リードと同様にして得た。次に、外周側負極リードをサンプル10の内周側負極リードと同様にして得た。
【0089】
(サンプル24)
内周側負極リードおよび外周側負極リードをサンプル10の外周側負極リードと同様にして得た。
【0090】
(サンプル25〜28)
内周側負極リードのCu層表面のプロジェクションの直径Rを0.05mm〜3.0mmとする以外は、サンプル10と同様にして内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0091】
(サンプル29〜32)
内周側負極リードのCu層表面のプロジェクションの高さHを0.07mm〜0.6mmとする以外は、サンプル10と同様にして内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0092】
(サンプル33〜36)
内周側負極リードのCu層表面のプロジェクションの間隔Dを0.5mm〜3.0mmとする以外は、サンプル10と同様にして内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0093】
(電気導電性)
上述のようにして得られたサンプル1〜36の内周側負極リードおよび外周側負極リードの電気導電性を以下の式により求めた。その結果を表2に示す。
電気導電性[m/Ω]=ニッケルの電気導電率(14300000m-1Ω-1)×幅w(m)×厚みt1(m)+銅の電気導電率(59600000m-1Ω-1)×幅w(m)×厚みt2(m)。
なお、この式ではプロジェクションの存在は無視している。
【0094】
次に、上述のようにして求めた内周側負極リードおよび外周側負極リードの電気導電性を用いて、以下の基準で内周側負極リードおよび外周側負極リードの電気導電性を評価した。その結果を表2に示す。
○:電気導電性が12m/Ω以上である。
×:電気導電性が12m/Ω未満である。
なお、電気導電性が12m/Ω未満であると、大電流放電(環境温度23℃、電流値60Aで80秒放電)を行ったときに、ジュール熱で内周側負極リードおよび外周側負極リードが発熱し、セパレータが融解し、正極−負極間でショートが発生する虞がある。
【0095】
(組立性)
上述のようにして得られたサンプル1〜36の内周側負極リードおよび外周側負極リードの組立性を以下のようにして評価した。
【0096】
まず、上述のようにして得られたサンプル1〜36の内周側負極リードおよび外周側負極リードを用いて、巻回電極体を以下のようにして作製した。
【0097】
正極を以下のようにして作製した。まず、LiCoO2粉末(正極活物質)91重量部と黒鉛粉末(導電助剤)6重量部およびポリフッ化ビニルデン(結着剤)3重量部の混合物をN−メチル−2−ピロリドンに分散して正極合剤スラリーを作製した。次に、この正極合剤スラリーを、厚さ20μmを有する帯状のアルミ箔(正極集電体)に塗布し、乾燥させた後、ローラープレス機によりプレスして帯状の正極とした。この際、帯状のアルミニウム箔の長手方向の中間部に、アルム箔が露出する露出部(集電体露出部)を形成した。次に、アルミニウム箔の露出部に正極リードを超音波溶接で固定した。
【0098】
負極を以下のようにして作製した。まず、不活性ガス雰囲気中で焼成した後、平均粒径20μmに粉砕した炭素材料(負極活物質)を90重量部とポリフッ化ビニルデン(結着剤)を10重量部混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンに分散して負極合剤スラリーを作製した。次に、この負極合剤スラリーを、厚さ15μmを有する帯状の銅箔(負極集電体)に塗布し、乾燥後、ローラープレス機によりプレスして帯状の負極とした。この際、帯状の銅箔の長手方向の両端部に、アルム箔が露出する露出部(集電体露出部)を形成した。次に、帯状の銅箔の両端部のうちの一方の露出部に内周側負極リードを超音波溶接により固定し、その他方の露出部に外周側負極リードを超音波溶接により固定した。
【0099】
次に、正極と、微多孔性ポリプロピレンフィルム(25μm厚)からなるセパレータと、負極とを積層してから渦巻状に多数回巻回させたのち、巻き終わり部分を粘着テープで固定することにより、巻回電極体を形成した。
【0100】
次に、上述のようにして作製した巻回電極体を解体し、正極、負極、およびセパレータを目視で確認し、以下の基準でダメージを評価して、これを組立性の評価とした。
○:正極、負極、およびセパレータのいずれにも切れが発生していない。
×:正極、負極、およびセパレータのいずれかに切れが発生している。
【0101】
(溶接性)
上述のようにして得られたサンプル1〜36の内周側負極リードと外周側負極リードの溶接性を評価した。具体的には、(a)リード間の溶接性、(b)電池缶−リード間の溶接性を以下のようにして評価した。
【0102】
まず、缶底(一端面)の側が閉鎖されているのに対してそれとは反対側の上端の側(他端面)が開放されている、円筒形状を有する、両表面にNiメッキを施した鉄製の電池缶(φ18mm、高さ67mm)を準備した。次に、この電池缶内側の缶底中央部で外周側負極リードの一端部と内周側負極リードの一端部とを、外周側負極リードの一端部が下側となり、内周側負極リードの一端部が上側となるようにして重ね合わせた。この際、サンプル1〜18、22〜36では、外周側負極リードおよび内周側負極リードそれぞれのNi層側の表面が、缶底側を向くようにして、両リードの一端部同士を重ね合わせた。サンプル19では、内周側負極リードのCu層側の表面、および外周側負極リードのNi層側の表面が、缶底側を向くようにして、両リードの一端部同士を重ね合わせた。サンプル20では、内周側負極リードのNi層側の表面、および外周側負極リードのCu層側の表面が、缶底側を向くようにして、両リードの一端部同士を重ね合わせた。サンプル21では、外周側負極リードおよび内周側負極リードそれぞれのCu層側の表面が、缶底側を向くようにして、両リードの一端部同士を重ね合わせた。次に、重ね合わせた両リードの一端部同士と、外周側負極リードの一端部と電池缶の缶底とを抵抗溶接により溶接した。
【0103】
次に、電池缶の缶底を固定し、内周側負極リードの両端部のうち、缶底に溶接されていない他端部を缶底に対して垂直の方向に引っ張って(図4中、矢印aの方向)、内周側負極リードの一端部を外周側負極リードの一端部から引き剥がした。次に、外周側負極リードの両端部のうち、缶底に溶接されていない他端部を缶底に対して垂直の方向に引っ張って(図4中、矢印bの方向)、外周側負極リードの一端部を缶底から引き剥がした。
【0104】
(a)リード間の溶接性
次に、上述のようにして引き剥がした後の内周側負極リードを目視により確認し、以下の基準で内周側−外周側負極リード間の溶接性を評価した。その結果を表2に示す。
○:引き剥がした後の内周側負極リードに穴あき、および破断の少なくとも一方がある。
×:引き剥がした後の内周側負極リードに穴あきも、破断もない。
【0105】
(b)電池缶−リード間の溶接性
次に、上述のようにして引き剥がした後の外周側負極リードを目視により確認し、以下の基準で電池缶−外周側負極リード間の溶接性を評価した。その結果を表2に示す。
○:引き剥がした後の外周側負極リードに穴あき、および破断の少なくとも一方がある。
×:引き剥がした後の外周側負極リードに穴あきも、破断もない。
【0106】
(スパッタ)
上述のようにして得られたサンプル1〜36の内周側負極リード、外周側負極リード、および電池缶の間のスパッタ発生の有無を以下のようにして評価した。まず、上述の溶接性の評価と同様にして、電池缶の缶底に内周側負極リードおよび外周側負極リードの一端部を溶接した後、両負極リード間の引き剥がし、および外周側負極リードと電池缶との間の引き剥がしを行った。次に、上述のようにして引き剥がした後の内周側負極リード、外周側負極リード(缶底側の負極リード)、缶底を顕微鏡により確認し、以下の基準でスパッタ発生の有無を評価した。その結果を表2に示す。ここでスパッタとは、溶融金属の飛び散りや爆発、またはその痕跡のことを指す。
○:内周側負極リード、外周側負極リード、缶底いずれの間にもスパッタが発生していない。
×:内周側負極リード、外周側負極リード、缶底いずれかの間にスパッタが発生している。
【0107】
表1は、サンプル1〜36の内周側負極リードおよび外周側負極リードの構成を示す。
【表1】

【0108】
表2は、サンプル1〜36の内周側負極リードおよび外周側負極リードの評価結果を示す。
【表2】

【0109】
表1、表2から以下のことがわかる。
サンプル1、2の評価結果から、Ni層の厚さt1が10μm未満であると、リード間の溶接性、および電池缶−リード間の溶接性が低下する傾向にある。
【0110】
サンプル3〜7の評価結果から、Ni層厚みを10μmに固定して、Cu層厚みを変化させた場合、Cu層厚みが45μmのときにリードの電気導電性が12m/Ω未満となっている。一方、総厚tが220μmを超えると、組立性が低下する傾向にある。
【0111】
サンプル8〜13の評価結果から、Ni層厚みを20μmに固定して、Cu層厚みを変化させた場合、Cu層厚みが45μmのときにリードの電気導電性が12m/Ω未満となっている。一方、総厚tが220μmを超えると、組立性が低下する傾向にある。
【0112】
サンプル14〜18の評価結果から、Ni層厚みを200μmに固定して、Cu層厚みを変化させた場合、Cu層厚みが2μmのときにリードの電気導電性が12m/Ω未満となっている。一方、総厚tが220μmを超えると、組立性が低下する傾向にある。
【0113】
サンプル19の評価結果から、内周側負極リードの缶底側の層がCu層であると、リード間の溶接性が低下する傾向にある。サンプル20の評価結果から、外周側負極リードの缶底側の層がCu層であると、缶−リード間の溶性性が低下する傾向にある。サンプル21の評価結果から、内周側負極リードの缶底側の層がCu層であり、かつ、外周側負極リードの缶底側の層がCu層であると、缶−リード間の溶性性が低下する傾向にある。
【0114】
サンプル22の評価結果から、外周側負極リードにプロジェクションを形成すると、スパッタが発生する傾向にある。サンプル23の評価結果から、外周側負極リードにプロジェクションを形成すると、内周側負極リードに対するプロジェクション形成の有無に関わらず、リード間の溶接性が低下し、かつ、スパッタが発生する傾向にある。サンプル24の評価結果から、内周側負極リードにプロジェクションが形成されていないと、リード間の溶接性が低下し、かつ、スパッタが発生する傾向にある。
【0115】
サンプル25〜28の評価結果から、内周側負極リードのプロジェクションの直径Rが0.1mm未満であると、リード間の溶接性が低下する傾向にある。一方、内周側負極リードのプロジェクションの直径Rが2.5mmを超えると、スパッタが発生する傾向にある。
【0116】
サンプル29〜32の評価結果から、内周側負極リードのプロジェクションの高さHが0.1mm未満であると、リード間の溶接性が低下し、かつ、スパッタが発生する傾向にある。一方、内周側負極リードのプロジェクションの高さHが0.5mmを超えると、リード間の溶接性が低下し、かつ、スパッタが発生する傾向にある。
【0117】
サンプル33〜36の評価結果から、内周側負極リードのプロジェクションの間隔Dが0.6mm未満であると、リード間の溶接性が低下する傾向にある。一方、内周側負極リードのプロジェクションの高さHが2.8mmを超えると、リード間の溶接性が低下し、かつ、スパッタが発生する傾向にある。
【0118】
以上の評価結果を総合すると、内周側負極リードの構成を以下のようにすることが好ましい。
総厚tは、60μm以上220μm以下の範囲内にすることが好ましい。
Ni層の厚さt1は、10μm以上200μm以下の範囲内にすることが好ましい。
Cu層の厚さt2は、3μm以上210μm以下の範囲内にすることが好ましい。
リードの電気導電性は12m/Ω以上にすることが好ましい。
内周側負極リードおよび外周側負極リードの缶底側の層は、Ni層であることが好ましい。
内周側負極リードおよび外周側負極リードのうち、内周側負極リードのみにプロジェクションを形成することが好ましい。
内周側負極リードのプロジェクションの直径Rは、0.1mm以上2.5mm以下の範囲内であることが好ましい。
内周側負極リードのプロジェクションの高さHは、0.1mm以上0.5mm以下の範囲内であることが好ましい。
内周側負極リードのプロジェクションの間隔Dは、0.6mm以上2.8mm以下の範囲内であることが好ましい。
【0119】
(サンプル37〜41)
リードの幅wを3.0mm〜5.5mmの範囲内で変更すること以外は、サンプル10と同様にしてサンプル37〜41の内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0120】
(電気導電性)
上述のようにして得られたサンプル37〜41の内周側負極リードと外周側負極リードの電気導電性を、上述のサンプル1〜36と同様にして測定した。その結果を表3に示す。
【0121】
次に、上述のようにして求めたリードの電気導電性を用いて、上述のサンプル1〜36と同様の基準で内周側負極リードおよび外周側負極リードの電気導電性を評価した。その結果を表3に示す。
【0122】
(組立性)
上述のようにして得られたサンプル37〜41の内周側負極リードと外周側負極リードの組立性を、上述のサンプル1〜36と同様にして評価した。その結果を表3に示す。
【0123】
表3は、サンプル37〜41の内周側負極リードおよび外周側負極リードの構成、ならびに評価結果を示す。
【表3】

【0124】
表3から以下のことがわかる。
内周側負極リードおよび外周側負極リードの幅wが、3.5mm未満であると、導電性が低下する傾向にある。一方、内周側負極リードおよび外周側負極リードの幅wが、5.0mmを超えると、組立性が低下する傾向にある。
以上により、内周側負極リードおよび外周側負極リードの幅wは3.5μm以上5.0以下の範囲内であることが好ましい。
【0125】
(サンプル42)
サンプル10と同様にして内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0126】
(サンプル43)
まず、総厚tを70μm、Ni層の厚さt1を10μm、Cu層の厚さt2を60μmとする以外は、サンプル42と同様にして内周側負極リードを得た。次に、総厚tを80μm、Ni層の厚さt1を30μm、Cu層の厚さt2を50μm、幅wを5.0mmとする以外は、サンプル42と同様にして外周側負極リードを得た。
【0127】
(サンプル44)
まず、総厚tを100μm、Ni層の厚さt1を50μm、Cu層の厚さt2を50μmとする以外は、サンプル42と同様にして内周側負極リードを得た。次に、総厚tを100μm、Ni層の厚さt1を10μm、Cu層の厚さt2を90μmとする以外は、サンプル42と同様にして外周側負極リードを得た。
【0128】
(電気導電性)
上述のようにして得られたサンプル42〜44の内周側負極リードと外周側負極リードの電気導電性を、上述のサンプル1〜36と同様にして測定した。その結果を表6に示す。
【0129】
次に、上述のようにして求めたリードの電気導電性を用いて、上述のサンプル1〜36と同様の基準で内周側負極リードおよび外周側負極リードの電気導電性を評価した。その結果を表6に示す。
【0130】
(組立性)
上述のようにして得られたサンプル42〜44の内周側負極リードと外周側負極リードの組立性(総厚)を、上述のサンプル1〜36と同様にして評価した。その結果を表6に示す。
【0131】
(溶接性)
上述のようにして得られたサンプル42〜44の内周側負極リードと外周側負極リードの溶接性を、上述のサンプル1〜36と同様にして評価した。その結果を表6に示す。
【0132】
(スパッタ)
上述のようにして得られたサンプル42〜44の内周側負極リードと外周側負極リードのスパッタ発生の有無を、上述のサンプル1〜36と同様にして評価した。その結果を表6に示す。
【0133】
表4は、サンプル42〜44の内周側負極リードの構成を示す。
【表4】

【0134】
表5は、サンプル42〜44の外周側負極リードの構成を示す。
【表5】

【0135】
表6は、サンプル42〜44の内周側負極リードおよび外周側負極リードの評価結果を示す。
【表6】

【0136】
表4〜表6から以下のことがわかる。
総厚tを60μm以上220μm以下、Ni層の厚さt1を10μm以上200μm以下、Cu層の厚さt2を3μm以上210μm以下の範囲内に保持しながら、それらの厚さを内周側負極リードと外周側負極リードとでそれぞれ独立に変化させても、導電性や溶接性などの特性の低下を招くことがない。
【0137】
(サンプル45)
サンプル10と同様にして内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0138】
(サンプ46)
Cu層の表面に厚さ20μmのNi層をさらに貼り合わせて、Ni層、Cu層、Ni層の3層構造のクラッドリード材とする以外は、サンプル45と同様にして正極側負極リードおよび正極側負極リードを得た。
【0139】
(サンプル47)
Ni層に代えてAl層を用いる以外はサンプル45と同様にして、内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0140】
(サンプル48)
Cu層に代えてAl層を用いる以外はサンプル45と同様にして、内周側負極リードおよび外周側負極リードを得た。
【0141】
(溶接性)
上述のようにして得られたサンプル45〜48の内周側負極リードと外周側負極リードの溶接性を、上述のサンプル1〜36と同様にして評価した。その結果を表8に示す。
【0142】
(スパッタ)
上述のようにして得られたサンプル45〜48の内周側負極リードと外周側負極リードのスパッタ発生の有無を、上述のサンプル1〜36と同様にして評価した。その結果を表8に示す。
【0143】
(電極棒の貼り付き)
上述のようにして得られたサンプル45〜48の内周側負極リードと外周側負極リードを電池缶に抵抗溶接するときに、電極棒の貼り付きがあるか否かを以下のようにして確認した。
まず、缶底(一端面)の側が閉鎖されているのに対してそれとは反対側の上端の側(他端面)が開放されている、円筒形状を有する、両表面にNiメッキを施した鉄製の電池缶(φ18mm、高さ67mm)を準備した。次に、この電池缶内側の缶底中央部で外周側負極リードの一端部と内周側負極リードの一端部とを、外周側負極リードの一端部が下側となり、内周側負極リードの一端部が上側となるようにして重ね合わせた。この際、外周側負極リードおよび内周側負極リードそれぞれのNi層側の表面が、缶底側を向くようにして、両リードの一端部同士を重ね合わせた。次に、電極棒を内周側負極リードの表面に押し当て、重ね合わせた両リードの一端部同士と、外周側負極リードの一端部と電池缶の缶底とを抵抗溶接により溶接した。この際、内周側負極リードと電極棒との間に貼り付きが発生しているか否かを確認した。その結果を表8に示す。なお、表8中において、「○」印、「×」印は以下の確認結果を示す。
○:内周側負極リードと電極棒との間に貼り付きが発生しなかった。
×:内周側負極リードと電極棒との間に貼り付きが発生した。
【0144】
【表7】

【0145】
【表8】

【0146】
表7、表8から以下のことがわかる。
サンプル45の評価結果から、内周側負極リードおよび外周側負極リードを、Ni層およびCu層の2層構造とすることで、優れた溶接性が得られるとともに、スパッタの発生および電極棒の貼り付きも抑えることができる。
サンプル46の評価結果から、内周側負極リードおよび外周側負極リードを、Ni層、Cu層およびNi層の3層構造とすると、電極棒の貼り付きが発生する傾向にある。
サンプル47の評価結果から、内周側負極リードおよび外周側負極リードを、Al層、およびCu層の2層構造とすると、リード間、および缶−リード間の溶性性が低下する傾向にある。
サンプル48の評価結果から、Ni層、およびAl層の2層構造とすると、リード間の溶性性が低下する傾向にある。
以上により、内周側負極リードおよび外周側負極リードの構造としては、Ni層およびCu層の2層構造を採用することが好ましい。
【0147】
以上、本技術の実施形態について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0148】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0149】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0150】
上述の実施形態では、2つ負極リードを備える電池の例について説明したが、本技術はこれに限定されるものではなく、3つ以上の負極リードを備える電池、すなわち複数の負極リードを備える電池に本技術は適用可能である。
【0151】
また、上述の実施形態では、リチウムイオン電池に対して本技術を適用した例を示したが、本技術は電池の種類に限定されるものではなく、複数の負極リードを備える電池であれば適用可能である。例えば、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウム−二酸化マンガン電池、リチウム−硫化鉄電池などの各種電池に対して本技術を適用可能である。
【0152】
また、上述の実施形態では、二次電池に対して本技術を適用した例を示したが、本技術は電池の種類に限定されるものではなく、複数の負極リードを備える電池であれば適用可能であり、一次電池に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0153】
11 電池缶
11a 缶底
12、13 絶縁板
14 電池蓋
15 安全弁機構
15A ディスク板
16 熱感抵抗素子
17 ガスケット
20 巻回電極体
21 正極
21A 正極集電体
21B 正極活物質層
22負極
22A 負極集電体
22B 負極活物質層
23 セパレータ
24 センターピン
25 正極リード
26 内周側負極リード
27 外周側負極リード
31 銅層
32 ニッケル層
33 プロジェクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、および負極を有する巻回電極体と、
上記正極および上記負極の間に設けられた電解質と、
上記巻回電極体が収容される、鉄または鉄合金を主成分とする外装缶と
上記負極と上記外装缶とを電気的に接続する第1の負極リードおよび第2の負極リードと
を備え、
上記第1の負極リードおよび上記第2の負極リードは、ニッケル層と銅層とを有するクラッド材であり、
上記第1の負極リードのニッケル層の表面には、複数の凸部が設けられ、
上記第2の負極リードのニッケル層は、上記外装缶と溶接され、
上記第1の負極リードのニッケル層は、上記複数の凸部を介して、上記第2の負極リードの銅層と溶接され、
上記ニッケル層の厚さは、10μm以上200μm以下の範囲内であり、
上記銅層の厚さは、3μm以上210μm以下の範囲内であり、
上記第1の負極リードおよび上記第2の負極リードの総厚は、60μm以上220μm以下の範囲内であり、
上記第1の負極リードおよび上記第2の負極リードの幅は、3.5mm以上5.0mm以下の範囲内であり、
上記凸部の大きさは、0.1mm以上2.5mm以下の範囲内であり
上記凸部の高さは、0.1mm以上0.5mm以下の範囲内であり、
上記凸部の間隔は、0.6mm以上2.8mm以下の範囲内である電池。
【請求項2】
上記第1の負極リードおよび上記第2の負極リードのうちの一方は、上記巻回電極体の最内周部の内側表面に溶接された内周側負極リードであり、他方は、上記巻回電極体の最外周部の外側表面に溶接された外周側負極リードであり、
上記第1の負極リードおよび上記第2の負極リードの少なくとも一方が、バリが形成された表面を有する場合、
上記バリが形成された表面が、上記負極とは反対側に向けられている請求項1記載の電池。
【請求項3】
上記第1の負極リードおよび上記第2の負極リードの一端部同士が、重ね合わされて外装缶の内側底面に溶接されている請求項1記載の電池。
【請求項4】
上記第2の負極リードのニッケル層と、上記外装缶との溶接、および、上記第1の負極リードのニッケル層と、上記第2の負極リードの銅層との溶接は、抵抗溶接である請求項1記載の電池。
【請求項5】
上記第1の負極リードは、上記巻回電極体の内周側の負極に取り付けされた内周側負極リードであり、
上記第2の負極リードは、上記巻回電極体の外周側の負極に取り付けられた外周側負極リードである請求項1記載の電池。
【請求項6】
上記第1の負極リードおよび上記第2の負極リードの電気導電性が、12m/Ω以上である請求項1記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−16328(P2013−16328A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147668(P2011−147668)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】