説明

電流センサ一体型バッテリーターミナル

【課題】簡素な構造、軽量、且つ小型でありながら、電流の検出性能が確保され、しかもバッテリーへの組み付けが容易な電流センサ一体型バッテリーターミナルを実現する。
【解決手段】長尺且つ薄板状とされた導電体10において、バッテリー端子を保持する端子保持部11、及び、外部のケーブル配線と接続される丸端子12を形成するとともに、該端子保持部11と丸端子12の中間部位にて同導電体10を折り返して電流センサ収納部13を形成する。そして、この電流センサ収納部13にホールIC14aを一体的に収納して当該導電体10に流れる電流を検出するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等のバッテリーに通電される充放電電流を検出する電流センサを一体的に備える電流センサ一体型バッテリーターミナルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載されるバッテリーには、バッテリー端子を介して通電される充放電電流をホールIC等の磁気検出素子を用いて検出する電流センサを一体的に備える電流センサ一体型バッテリーターミナルが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の電流センサ一体型バッテリーターミナルは、バッテリー端子に直接組み付けられていることから、バッテリーターミナルと別体化されたバスバーに電流センサが一体的に設けられたもの(例えば、特許文献2参照)と比較して、ターミナルとバスバーをバッテリー(バッテリー端子)への組み付け性が向上している。しかも、該バッテリーターミナルは、電流センサを一体的に備えることから、バッテリーの近傍において電流センサが占めるスペースの省スペース化が図られている。
【0004】
そして、この電流センサ一体型バッテリーターミナルでは、磁束を集中させると共に磁場を安定化させる磁性体コアを用い、バッテリーターミナルの通電時に発生し、前記磁性体コア中に収束した磁界の磁束密度を磁気検出素子で検出することで、電流の検出性能を確保している。
【特許文献1】特開2007−214068号公報
【特許文献2】特開2005−218219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしなから、この電流センサ一体型バッテリーターミナルでは、磁束の集中と磁場の安定化のために磁性体コアを用いることから、該磁性体コアを収容するハウジング(筐体)が必要になるなど、使用部品点数が多くなるとともに構造の複雑化、重量増、及びサイズの大型化を招き、さらにそれに伴い、必然的に部品コストも上昇してしまう。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、簡素な構造、軽量、且つ小型でありながら、電流の検出性能が確保され、しかもバッテリーへの組み付けが容易な電流センサ一体型バッテリーターミナルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、長尺且つ薄板状とされた導電体において、バッテリー端子を保持する端子保持部、及び、外部のケーブル配線と接続される配線接続部を形成するとともに、該端子保持部と配線接続部の中間部位にて同導電体を折り返して電流センサ収納部を形成し、該収納部に磁気検出素子を一体的に収納して当該導電体に流れる電流を検出するようにしたこと、を要旨とする。
【0008】
同構成によれば、導電体に流れる電流の周囲に形成される磁界(磁力線)の方向が、電流センサ収納部の内部、即ち、磁気検出素子において常に同方向となって当該磁界が集中し且つ安定化するようになる。このため、電流センサ収納部に収納された磁気検出素子によって、従来技術のように磁性体コアがなくとも、該集中した磁界の磁束密度(の変化量)を高精度に検出することが可能となる。しかも、磁性体コアがないことから、構造の簡素化、軽量化、及びサイズの小型化が実現され、併せて部品コストの低減が実現される。さらに、従来のバッテリーターミナルと同様に端子保持部においてバッテリー端子に直接装着されることから、バッテリーターミナルと別体化されたバスバーに電流センサが設けられたものに比してバッテリーへの組み付け性が向上する。さらにまた、電流センサを一体的に備えることから、バッテリーの近傍において電流センサの省スペース化を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電流センサ一体型バッテリーターミナルにおいて、前記磁気検出素子は、リード端子と接続することで磁気検出部を構成するとともに、該磁気検出部を、前記収納部とともに樹脂モールドするか、又は、ケース部材に収容することで、前記収納部に一体的に収納されていること、を要旨とする。
【0010】
同構成によれば、磁気検出素子は、リード端子と接続されて磁気検出部を構成するとともに、該磁気検出部が電流センサ収納部とともに樹脂モールドされるか、又は、ケース部材に収容されることで、電流センサ収納部に一体的に収納されているので、磁気検出素子と電流センサ収納部との位置合わせを実用的な方法で簡単に行うことができるようになる。そしてこれにより、電流センサ収納部の内部において集中する磁界の磁束密度をより確実且つ安定に検出することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電流センサ一体型バッテリーターミナルにおいて、前記磁気検出素子は、前記収納部とともに外部からの電磁気的影響を遮断するシールド部材によって包囲されていること、を要旨とする。
【0012】
同構成によれば、磁気検出素子が、電流センサ収納部とともに、地磁気を含む外部からの電磁気的影響を遮断するシールド部材によって包囲されていることから、電流センサ収納部に流れる電流の周囲に形成される磁界の磁束密度を高精度に検出することができるようになる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電流センサ一体型バッテリーターミナルにおいて、前記電流センサ収納部を前記導電体の板面に対して垂直方向に折り返して形成するとともに、前記端子保持部における端子装着方向が前記収納部の折り返し方向と垂直になるようにされていること、を要旨とする。
【0014】
同構成によれば、電流センサ一体型バッテリーターミナルが、自動車のように、通常、鉛直方向に向いたバッテリー端子に端子保持部を介して装着される場合に、電流センサ収納部の折り返し方向が水平方向に沿うようになる。そしてこれにより、検出されるべき電流センサ収納部でその折り返し方向に垂直に発生する磁界と水平方向を向く地磁気とが垂直となるため、当該地磁気が電流検出に与える妨害効果を効果的に排除できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡素な構造、軽量、且つ小型でありながら、電流の検出性能が確保され、しかもバッテリーへの組み付けが容易な電流センサ一体型バッテリーターミナルが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の電流センサ一体型バッテリーターミナル1は、金属材料を用いて長尺且つ薄板状とされた導電体10と、該導電体10に嵌合され、同導電体10に流れる電流を磁気検出素子としてのホールIC14aを用いて磁気的に検出するとともに、該ホールIC14aに電気的に接続された4本(複数本)のリード端子14b,…(図1では2本のみ図示)を介して外部に検出信号を出力する磁気検出部14とを備えている。この磁気検出部14では、前記ホールIC14aとリード端子14b,…とが樹脂モールドされて一体化されている。
【0017】
前記バッテリーターミナル1は、さらに、前記導電体10の被電流検出部(半矩形状の電流センサ収納部13)及び磁気検出部14に嵌合穴15aにて嵌合し、外部からの電磁気的影響(地磁気の影響、他の車載装置・車載機器で発生する磁気の影響)を遮断するべく前記ホールIC14aと当該電流センサ収納部13を包囲するシールド部材15を備えている。尚、本実施形態では、ホールIC14aは、ベアチップとほぼ同サイズになるようにパッケージ化された所謂CSP(チップサイズパッケージ)の形態をとっている。
【0018】
そして、図2に示すように、前記ホールIC14aは、前記磁気検出部14を樹脂材料16を用いて電流センサ収納部13とともに樹脂モールドすることで前記電流センサ収納部13に一体的に収納されている。
【0019】
図1〜図3(b)に示すように、前記導電体10には、車両のバッテリーのバッテリー端子を保持する端子保持部11、及び、外部のケーブル配線と接続される配線接続部としての丸端子12が形成されている。そして、該導電体10には、その端子保持部11と丸端子12の中間部位にて折り返されて前記電流センサ収納部13(図1参照)が形成されている。
【0020】
詳しくは、前記端子保持部11は、相対向する一対の導体片11a,11aを備え、該導体片11a,11aによって、円柱状のバッテリー端子の側面に沿うように折曲加工されて端子挿通部11bが形成されている。そして、該端子挿通部11bに前記バッテリー端子が挿通され、さらにボルトbを貫通穴11h,11hに挿入してナットnと締結し、当該導体片11a,11a(端子挿通部11b)によって当該バッテリー端子が固定される(図2参照)。このとき、前記端子保持部11においてバッテリー端子が保持されるようになっている。
【0021】
また、図1〜図3(b)に示すように、前記磁気検出部14は、長尺とされており、第1の端部に設けられた断面矩形部14eの先端凹部14hにて、前記リード端子14b,…の接続用末端を露出させる(図3(b)参照)とともに、第2の端部にて前記電流センサ収納部13と共に前記シールド部材15の嵌合穴15aに嵌合される検出部本体14c(リード端子14bを樹脂モールドしたときに当該樹脂材料によって形成されたもの)を備えている。
【0022】
詳しくは、前記検出部本体14cの略中央部には、断面矩形部14eと同軸に且つ幅方向外方に突出するように断面矩形状の鍔部14dが形成されており、前記第2の端部から当該鍔部14dまでは、第2の端部側が低くなるように段差状且つ断面T字状とされている。そして、前記磁気検出部14は、その検出部本体14cにおいて、前記断面T字状部の一部を構成するとともに図1において下方に垂下する垂下部14fにて前記半矩形状の電流センサ収納部13に嵌合固定されている。そして、前記シールド部材15は、前記磁気検出部14の第2の端部側の段差部14gを前記電流センサ収納部13と共に嵌合することでホールIC14aを包囲している(図2参照)。さらに、このホールIC14aは、前記磁気検出部14の検出部本体14cが、前記樹脂材料16を用いて前記第2の端部側から当該鍔部14dに至るまで前記鍔部14dと同じ側面形状になるように電流センサ収納部13とともに樹脂モールドされることで前記電流センサ収納部13に一体的に収納されている。そして、このホールIC14aは、導電体10を端子保持部11と丸端子12の間で流れる電流の周囲に発生する磁界が当該ホールIC14aに対して垂直に入射するように、半矩形状とされた電流センサ収納部13の内部に配置されている。尚、この樹脂モールドによって、前記シールド部材15は、電流センサ収納部13に固定されている。
【0023】
本実施形態の電流センサ一体型バッテリーターミナル1は、以上のように構成されている。以下にその組み立て方法(製造方法)について説明する。
まず、図4(a)に示すように、ホールIC14aが実装されることで前述したホールIC14aとなる部材であって、リード端子14b,…が樹脂モールドされてなる磁気検出部製作用部材24を用意する。この部材24は、金型内の所定位置にリード端子14b,…を配置した後、当該金型内に樹脂を注入して作成されたものであるが、その他、予めリード端子14b,…が樹脂モールドされてなる成形品を市販品として購入することもできる。そして、同部材24の設置凹部24a(図6参照)内の所定部位に前記リード端子14b,…に電気的に接続されるようにホールIC14aを実装し、さらに設置凹部24a内に樹脂をポッティングして実装箇所を封止し、前記磁気検出部14を完成させる。
【0024】
次に、図4(b)に示すように。長尺且つ薄板状とされるとともに、前記端子保持部11及び丸端子12、並びに、当該端子保持部11と丸端子12の中間部位にて折り返されて前記半矩形状の電流センサ収納部13が形成された導電体10を用意する。そして、磁気検出部14の垂下部14fを前記電流センサ収納部13に嵌合固定し、両部材10,14を一体化する。
【0025】
続いて、図4(c)に示すように、前記シールド部材15を用い、前記磁気検出部14に実装されたホールIC14aが前記電流センサ収納部13と共に包囲されるように(図2参照)、同磁気検出部14の段差部14gをその嵌合穴15aにて嵌合する。
【0026】
最後に、図4(d)に示すように、以上の工程で得られたものを金型内に配置し、同金型内に樹脂を注入して前記第2の端部側(段差部14g側)から鍔部14dに至るまで、当該磁気検出部14の検出部本体14cを樹脂材料16で電流センサ収納部13とともに樹脂モールドすることによって、本実施形態の電流センサ一体型バッテリーターミナル1が得られる。
【0027】
以下に、本実施形態の電流センサ一体型バッテリーターミナル1を車両のバッテリーに組み付ける方法について説明する。
図5(a)に示すように、電流センサ一体型バッテリーターミナル1の導電体10の丸端子12に外部のケーブル配線2の末端部2aをかしめ固定する。そして、同導電体10の端子挿通部11bに車両のバッテリー3のバッテリー端子3a(図5(a)ではマイナス極側)を挿通する。尚、図5(a)においては、バッテリー端子3aは鉛直方向に向いており、その根元部には、該バッテリー端子3aを取り囲む絶縁性のリング部材3bが配置されている。
【0028】
次に、図5(b)に示すように、ボルトbを前記導電体10の貫通穴11h,11hに挿入してナットnと締結し、当該導体片11a,11aによって電流センサ一体型バッテリーターミナル1をバッテリー端子3aに固定する。このように、電流センサ一体型バッテリーターミナル1がバッテリー端子3aにてバッテリー3に固定されると、前記端子挿通部11bは、前記リング部材3b上に載置された状態でバッテリー端子3aを挿通した状態となる。
【0029】
この状態で、前記導電体10を介してケーブル配線2とバッテリー端子3aとの間で充放電電流が流れ、該充放電電流の周囲に発生する磁界の磁束密度が磁気検出部14のホールIC14aによって検出され、その検出信号(充放電量信号)が当該ホールIC14aからリード端子14b,…を介して外部の制御用装置等に出力される。そして、車両内の表示装置に表示されたり、各種車載装置・車載機器の制御に供されたりする。
【0030】
以上のように、本実施形態の電流センサ一体型バッテリーターミナル1によれば、外部のケーブル配線2を導電体10に接続した後、該導電体10をバッテリー端子3aに装着しさえすれば、電流センサ一体型バッテリーターミナル1の車両のバッテリー3への組み付けが完了する。このため、従来技術(電流センサがバスバーに取り付けられるもの)のように、まず、バッテリー端子にターミナルを取り付け、次にケーブル配線2にバスバーを取り付ける。続いて該バスバーに電流センサを取り付け、さらにターミナルにバスバーと電流センサをボルト・ナットを用いて共締めして固定するといった組み付け工程をシンプル化することができる。そしてこれにより、電流センサのバッテリー3への組み付け工程(組み付け作業)の簡単化及び工数削減による低コスト化を図ることができる。
【0031】
以下に、図6を参照して、車両のバッテリー3(図5(b)参照)に組み付けられた電流センサ一体型バッテリーターミナル1において、ホールIC14aによって、当該バッテリー3の充放電時に流れる充放電電流、即ち、導電体10(電流センサ収納部13)に流れる充放電電流を磁気的に検出する方法、さらに具体的には、ホールIC14aによって、導電体10に流れる充放電電流の周囲に形成される磁界の磁束密度を電圧に変換することで、同充放電電流を検出する方法について説明する。
【0032】
図6に示すように、磁気検出素子としてのホールIC14aは、図6では図示しないリード端子14b,…と接続されるとともに、磁気検出部14(垂下部14f)に形成された設置凹部24aの底面上であって、幅方向に相対向する電流センサ収納部13,13(導電体10,10)の間の略中央位置にポッティング樹脂17によって封止された状態で配置されている。そして、ホールIC14aと電流センサ収納部13,13とは、外部からの電磁気的影響が遮断されるように、シールド部材15によって包囲されている。尚、シールド部材15と電流センサ収納部13,13とは、それらの間に前記垂下部14fを介在させて互いに電気的に絶縁されている。この状態で、前記電流センサ収納部13,13にバッテリー3の充放電電流が流れると、該電流の周囲に磁力線(磁界)m,mが発生する。詳しくは、この磁力線m,mは、ホールIC14aの表面(検出面)に対して垂直に交差し、さらにシールド部材15に入射した後は当該シールド部材15の内部を通って前記入射側と反対側に回り込み、同シールド部材15から外に抜け出て再びホールIC14aに入射するようになる。
【0033】
尚、図6においては、同図中の左側の電流センサ収納部13では、紙面より下方から上方に向けて充放電電流が流れており、右側の電流センサ収納部13では、紙面より上方から下方に向けて充放電電流が流れている。このため、充放電電流の周囲に発生する一対の磁力線m,mの向きは、図6において左側の電流センサ収納部13では、左回りとなり、右側の電流センサ収納部13では、右回りとなる(尚、充放電電流の方向が図6に示す方向と逆方向となれば、それに応じて一対の磁力線m,mの向きも逆方向となるが、ホールIC14aにおける向きは同方向のままである)。よって、電流センサ収納部13の内部、即ち、ホールIC14aにおいては、導電体10に流れる電流の周囲に形成される磁界(磁力線m)の方向が、電流センサ収納部13の内部(半矩形状の電流センサ収納部13で包囲された空間)において常に同方向となって当該磁界が集中し且つ安定化するようになる。このため、電流センサ収納部13に収納されたホールIC14aによって、従来技術のように磁性体コアがなくとも、該集中した磁界の磁束密度(の変化量)を高精度に検出することが可能となる。
【0034】
また、図6(図1)においては、電流センサ収納部13を導電体10の板面に対して垂直方向に折り返して形成するとともに、端子保持部11における端子装着方向が前記電流センサ収納部13の折り返し方向と垂直になるようにされている。これによれば、本実施形態の自動車用バッテリーのように、鉛直方向に向いたバッテリー端子3aに電流センサ一体型バッテリーターミナル1が端子保持部11を介して装着される場合に、電流センサ収納部13の折り返し方向が水平方向に沿うようになる。そしてこれにより、検出されるべき電流センサ収納部13でその折り返し方向に対して垂直に発生する磁力線(磁界)mと水平方向を向く地磁気とが垂直となる(直角に交差する)ため、当該地磁気が電流検出に与える妨害効果を効果的に排除できる。具体的には、自動車用バッテリーにおける地磁気の強度(磁束密度)は、0.03mT(ミリテスラ)程度である。一方、当該自動車用バッテリーの充放電電流は約10Aであり、この場合は、電流センサ一体型バッテリーターミナル1で検出される磁界の磁束密度は数mTであって、(地磁気の磁束密度/検出される磁界の磁束密度)は、1/100以下となって殆ど電流検出への影響はないといえる。ところが、自動車用バッテリーの仕様が変更される等して、充放電電流が1A〜2Aとなると、前記(地磁気の磁束密度/検出される磁界の磁束密度)は、1/10程度になるため、このような場合には、地磁気がホールIC14aによる電流検出に影響を及ぼす状況が想定されることから、図6(図1)に示した構成が有効となる。
【0035】
本実施形態の電流センサ一体型バッテリーターミナル1によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)導電体10に流れる充放電電流の周囲に形成される磁界(磁力線m)の方向が、電流センサ収納部13の内部、即ち、ホールIC14aにおいて常に同方向となって当該磁界が集中し且つ安定化するようになる。このため、電流センサ収納部13に収納されたホールIC14aによって、従来技術のように磁性体コアがなくとも、該集中した磁界の磁束密度(の変化量)を高精度に検出することが可能となる。しかも、磁性体コアがないことから、構造の簡素化、軽量化、及びサイズの小型化が実現され、併せて部品コストの低減が実現される。さらに、従来のバッテリーターミナルと同様に端子保持部11においてバッテリー端子3aに直接装着されることから、バッテリーターミナルと別体化されたバスバーに電流センサが設けられたものと比較してバッテリーへの組み付け性が向上する。さらにまた、本実施形態のバッテリーターミナル1は、ホールIC14a(電流センサ)を一体的に備えることから、バッテリー3の近傍において電流センサの省スペース化を図ることができる。
【0036】
(2)ホールIC14aは、リード端子14bと接続されることで、樹脂材料からなる検出部本体14cとともに磁気検出部14を構成するとともに、該磁気検出部14が電流センサ収納部13とともにさらに樹脂モールドされることで、電流センサ収納部13に一体的に収納されている。このため、ホールIC14aと電流センサ収納部13との位置合わせを実用的な方法で簡単に行うことができるようになる。そしてこれにより、電流センサ収納部13の内部において集中する磁界の磁束密度をより確実且つ安定に検出することが可能となる。
【0037】
(3)ホールIC14aが、電流センサ収納部13とともに、地磁気を含む外部からの電磁気的影響を遮断するシールド部材15によって包囲されていることから、当該外部からの電磁気的影響が効果的に排除され、電流センサ収納部13に流れる充放電電流の周囲に形成される磁界の磁束密度を高精度に検出することができるようになる。
【0038】
(4)外部からの電磁気的影響を遮断するシールド部材15は、樹脂モールドされることで、電流センサ収納部13に固定されているので、シールド部材15を安定に電流センサ収納部13に固定することができる。これにより、外部からの電磁気的影響をより確実且つ安定に遮断することができるようになる。
【0039】
尚、上記実施形態は以下のように変形してもよい。
・上記実施形態では、磁気検出素子としてホールIC14a(ホール素子)を用いたが、これに限られず、磁界の磁束密度を精度よく検出しうるものであれば、その他の磁気検出素子、例えば、GMR(giantmagnetoresistive)素子を用いることも可能である。
【0040】
・上記実施形態では、電流センサ一体型バッテリーターミナル1を自動車に搭載されたバッテリーに設けた。しかしこれに限られず、その他の車両、例えば、電車やオートバイに搭載されたバッテリーに設けることもできるし、さらにその他の電気機器(家庭用電気機器、産業用電気機器)に搭載され、バッテリーターミナルを介して外部との配線接続を行う必要があるバッテリーに設けることも勿論可能である。
【0041】
・上記実施形態では、磁気検出部14は、リード端子14bが樹脂モールドされてなる部材に、ホールIC14aを実装し、さらにこれを樹脂モールドした形態のものとした。しかしこれに限られず、該磁気検出部14は、インモールド成形により、ホールIC14aとリード端子14bとが予め一体化されてなる形態のものでもよい。これによれば、ホールIC14aとリード端子14bを樹脂モールドする回数が1回減り、製造工程をシンプル化することができる。さらにこれによれば、ホールIC14aは、リード端子14bとインモールド成形により一体化されて磁気検出部14を構成しているので、ホールIC14aに対する防水性能が高められる。
【0042】
・上記実施形態では、ホールIC14aは、樹脂モールドされたリード端子14bに接続し、さらに樹脂を用いてリード端子14bと一体化した。しかしこれに限られず、ホールIC14aは、リード端子14bとジャンパーピン等によって半田で接続した上で、当該リード端子14bとインモールド成形によって一体化することも可能である。
【0043】
・上記実施形態では、ホールIC14aは、該ホールIC14aを搭載した磁気検出部14を電流センサ収納部13とともに樹脂モールドすることで、導電体10の電流センサ収納部13に一体的に収納した。しかしこれに限られず、ホールIC14aは、該ホールIC14aを搭載した磁気検出部14及び電流センサ収納部13をケース部材(樹脂材料16に代用されるハウジング)に収容することで電流センサ収納部13に一体的に収納することも可能である。
【0044】
・上記実施形態では、ホールIC14aは、所謂CSP(チップサイズパッケージ)の形態とした。しかしこれに限られず、ホールIC14aとして所謂ベアチップのものを用いることも可能である。
【0045】
・上記実施形態では、リード端子14bとして通常の線材を集合させた形態のものを用いたが、これに限られず、リード端子14bとしては、所謂リードフレームの形態のものを用いることもできる。
【0046】
・上記実施形態では、外部のケーブル配線2と接続される端子接続部をケーブル配線2の末端部2aをかしめ固定する丸端子12としたが、これに限られず、同端子接続部は、ケーブル配線2の末端部2aとねじ止めにより固定される形態であってもよい。
【0047】
・上記実施形態では、シールド部材15は、樹脂モールドによって電流センサ収納部13に固定した。しかしこれに限られず、シールド部材15は、電流センサ収納部13とともにケース部材(樹脂材料16に代用されるハウジング)に収容することで、当該電流センサ収納部13に固定してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、導電体10の電流センサ収納部13が備える折り返し形状を角張った半矩形状としたが、これに限られず、例えば、角に丸みのあるU字形状とすることもできる。
【0049】
さらに、前記した実施形態および変形例より把握できる技術的思想について以下に記載する。
○請求項2に記載の電流センサ一体型バッテリーターミナルであって、前記磁気検出素子は、インモールド成形によりリード端子と一体化されて磁気検出部を構成しており、該バッテリーターミナルは、自動車等の車両に搭載されたバッテリーに設けられるものである電流センサ一体型バッテリーターミナル。
【0050】
同構成によれば、磁気検出素子が、インモールド成形によってリード端子と一体化されて磁気検出部を構成しているので、磁気検出素子に対する防水性能が高められる。この結果、自動車等の車両のバッテリーに使用される場合に、雨水に対する耐久性が高められ、有用となる。
【0051】
○請求項3に記載の電流センサ一体型バッテリーターミナルにおいて、前記シールド部材は、樹脂モールドするか、又は、ケース部材に収容することで、前記収納部に固定されている電流センサ一体型バッテリーターミナル。
【0052】
同構成によれば、外部からの電磁気的影響を遮断するシールド部材は、樹脂モールドされるか、又は、ケース部材に収容されることで、電流センサ収納部に固定されているので、シールド部材を安定に電流センサ収納部に固定することができる。これにより、外部からの電磁気的影響をより確実に遮断することができるようになる。
【0053】
○請求項4に記載の電流センサ一体型バッテリーターミナルであって、自動車に搭載されたバッテリーに設けられるものである電流センサ一体型バッテリーターミナル。
同構成によれば、自動車では、通常、鉛直方向に向いたバッテリー端子に導電体の端子保持部が取り付けられるので、電流センサ一体型バッテリーターミナルを自動車用バッテリーに取り付けた場合に、導電体の電流センサ収納部の折り返し方向が水平方向に沿うようになる。そしてこれにより、電流センサ収納部で発生する検出されるべき磁界(の方向)と水平方向を向く地磁気(の方向)とが垂直となるため、当該地磁気が電流検出に与える妨害効果を排除できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る電流センサ一体型バッテリーターミナルの全体構成(分解状態)を示す立体図。
【図2】本発明の実施形態に係る電流センサ一体型バッテリーターミナルの全体構成(組立状態)を示す立体図。
【図3】(a)は、本発明の実施形態に係る電流センサ一体型バッテリーターミナルの上面図(図2のA方向矢視図)、(b)は、同バッテリーターミナルの側面図(図2のB方向矢視図)。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の実施形態に係る電流センサ一体型バッテリーターミナルの組み立て方法を説明する立体図。
【図5】(a)は、本発明の実施形態に係る電流センサ一体型バッテリーターミナルに外部のケーブル配線を接続するとともに、同バッテリーターミナルを車両のバッテリーのバッテリー端子に固定する状態を示す立体図、(b)は、同電流センサ一体型バッテリーターミナルがバッテリーに組み付けられた状態を示す立体図。
【図6】本発明の実施形態に係る電流センサ一体型バッテリーターミナルの電流検出部位(電流センサ収納部)における充放電電流の方向及び該電流の周囲に形成される磁力線の方向を示す図であり、図3のC−C線方向断面図。
【符号の説明】
【0055】
1…電流センサ一体型バッテリーターミナル、2…ケーブル配線、3…バッテリー、3a…バッテリー端子、10…導電片(導電体)、11…端子保持部、12…丸端子(配線接続部)、13…電流センサ収納部、14…磁気検出部、14a…ホールIC(磁気検出素子)、14b…リード端子、15…シールド部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺且つ薄板状とされた導電体において、バッテリー端子を保持する端子保持部、及び、外部のケーブル配線と接続される配線接続部を形成するとともに、該端子保持部と配線接続部の中間部位にて同導電体を折り返して電流センサ収納部を形成し、該収納部に磁気検出素子を一体的に収納して当該導電体に流れる電流を検出するようにした電流センサ一体型バッテリーターミナル。
【請求項2】
請求項1に記載の電流センサ一体型バッテリーターミナルにおいて、
前記磁気検出素子は、リード端子と接続することで磁気検出部を構成するとともに、該磁気検出部を、前記収納部とともに樹脂モールドするか、又は、ケース部材に収容することで、前記収納部に一体的に収納されている電流センサ一体型バッテリーターミナル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電流センサ一体型バッテリーターミナルにおいて、
前記磁気検出素子は、前記収納部とともに外部からの電磁気的影響を遮断するシールド部材によって包囲されている電流センサ一体型バッテリーターミナル。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電流センサ一体型バッテリーターミナルにおいて、
前記電流センサ収納部を前記導電体の板面に対して垂直方向に折り返して形成するとともに、前記端子保持部における端子装着方向が前記収納部の折り返し方向と垂直になるようにされている電流センサ一体型バッテリーターミナル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−193708(P2009−193708A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30538(P2008−30538)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】